丸い窓の向こうにちらりと目を向けると、そこには薄曇りの夜天にただ月だけが輝いていた。
彼女と世界から逃げ出した時節は中秋の頃であり今は季節として真逆の候であることは理解しながらも、その凛とした影は私をノスタルジーに浸らせる。
「――永琳」
ふと振り返れば、執務室の入口に私の姫が立っていた。何時の間に居たのであろうか。この子は時として私の理解の範疇外の位置に優々と立つから困る。
「鈴仙が、動かないの」
そんな姫はしかし、今は悲しみと後悔の念にその顔を曇らせていた。
「チューブの練りからしを一気飲みさせたら、そのまま白目をむいて……」
「えっ」
∩∩∩
「処置はしておきました。大きなショックを受けただけなので、そのうち目を覚ますでしょう。二、三週間程療養すれば、博麗神社に滞納金を徴収しに行かすことができる程度には回復するかと」
「そう、よかったわー」
簡素な病室にはベッド上で「無理です、そんなところ、入れちゃ嫌です」と寝言を呟きうなされるウドンゲ。それを囲むように輝夜、てゐ、そして私が安物のチェアーに座る。病室の外には野次馬のウサギが大勢たむろしていたが、まぁ、放っておいてもいいだろう。
事の顛末は簡単だ。輝夜の思いつきで突如開催されたからし入りシュークリームロシアンルーレットでウドンゲがハズレを引いただけということ。それが平生のロシアンルーレットと異なっていたのは、テーブルに並ぶシュークリームの内の一つにシュー生地からチューブが一本飛び出ていた少々無骨なものが目立っていたということだ。
「鈴仙は、自らチューブが挟まれたシュークリームを手に取ったの……。私、鈴仙があんなに頑張る子だって、知らなかったから……」
そう言っててゐは顔を伏せて黙ってしまった。肩が少し震えている。おそらく笑いを堪えているのだろう。悪魔かコイツは。
「大丈夫よ、てゐ。鈴仙はこう見えて、とっても強い子なんだから……」
輝夜が慈しみの声をかけ、朧月のように柔らかな手つきで鈴仙の頬を撫でた。そのたおやかさに共鳴するかのように「そんなところにかけないでくださいぃ。あぁ、私、もう……」という声が鈴仙の口から零れる。……この子、チューブからし一本でいったいどんなプレイを繰り広げたのだろうか。誰も録画をしていなかったことが非常に悔やまれる。言ってくれれば、私がカメラを引き受けたのだが。
「鼻血を拭きなさい、永琳。ところで、この状況は少し芳しくないのではないかしら?」
よく気がつく子だ。私は鼻孔をウドンゲのブラウスで押さえる。
現在私は人里をターゲットとした新薬の販売プランを進めている。怪しいクスリなどではなく、純粋な滋養強壮薬品だ。名称は『BIN! BIN! BIN!』とする予定だがウドンゲが涙ながらに反対しているので今後変更があるかもしれない。皐月に販売の開始を予定しており、それまでにモニター実験と広告を十分に経過させておく必要があるのだが……、輝夜の指摘通り、ウドンゲ抜きで進行するには少し厳しいであろう。
「姫はビジネスなんかに煩わなくてもいいのよ? ご心配は無用です」
「そう。じゃあこの際、バイトを雇ってみてはどうかしら。それならスケジュール破綻もどうにか抑えられるんじゃない?」
イマイチ上手に日本語が聞こえていないようだ。今宵は輝夜の耳掃除に尽力しようか。太ももに輝夜の頭の重みを感じて迎える朝日。なんともステキじゃないか。それだけで千年は生ける。
しかし、アルバイトか。悪い考えではない。こちらが要求するスキルは非常に高いものとなるが、なんと言ってもここは幻想郷。妖怪の山にカチコミを仕掛けて返す刀で紅魔の蔵書を借りパクする人間が普通と称される社会だ。ウサギの散歩をする傍らにモニターを捕縛するというハードミッションを任せられるルナティックな人妖もそれなりに思い当たる。
「……悪い考えではないわね」
「でしょう? ふふっ」
赤ペンで百点と書かれた算数のテストを手に持って見せてくれた小学五年生のような笑顔でこちらを見る輝夜。より深い紅に染まるウドンゲのブラウス。
デメリットも幾つかあるが、輝夜の笑顔という宝石の前ではそれはペットボトルのキャップにも劣る。天秤に乗せる必要性がゼロだ。
「一ヶ月ほど、アルバイトを雇ってみましょうか」
「流石は永琳、判断が早いわね。……そろそろ出てきなさい、新聞記者さん?」
「あやや、バレていましたか」
輝夜の足元近くのベッド下からニョキリと顔を出すブン屋、射命丸文。気付かれていないとでも思っていたのか、滑稽なことであるってコラさっさと出てこい輝夜のお御足にそんなに近付けるのは世界中で私だけなんださっさと出てこないと団子にするぞこのカラス。
「おおかた、『永遠亭の不審兎からしに屈す!』なんて記事を書こうとしていたんでしょう。そんなことよりも、もっと有意義なことにインクを使いなさい」
「あや、有意義なこととはなんでしょうか。姫さまには何かお考えがあるようですが、お聞かせ願いませんでしょうか?」
「いいわ、メモをとりなさい。」
一呼吸置き、輝夜は切り出した。
「一週間後の今日、十四時から永遠亭特設ステージにおいて永遠亭職員採用面接を行います。期間は四週間、時給は千五百円。食事も支給するし部屋だって貸し与えましょう。労働時間は応相談。仕事内容は、まぁ、営業とメイドとモルモットを足して三で割ったようなものね。応募資格は女の子であること。やる気のある女の子であれば、誰にでもチャンスがあるわ!」
「ふむふむ」
自らのプランを熱っぽく語る輝夜。かわいい。
「今言った要件を求人広告として明日から五日間あなたの新聞に載せなさい」
「了解です」
「そして、この採用面接では、一般観覧者の入場を許可します」
「ほう……?」
……なるほど、エンターテインメントを好む輝夜らしいことだ。
「入場料は無料、観覧者には全員にお茶とお菓子くらいは出しましょう。永遠亭までの道のりが不安な者は、里の東門に来なさい。案内役を遣わせるわ」
「ふむふむふむ」
「今言った内容を先ほどの欄とは別にイベント広告として明日から五日間新聞に掲載しなさい。デザインはあなたに任せるわね」
「分かりました」
「それと、当日の司会役も貴女にお願いするわ。以上コミコミで、報酬額は五万円で如何かしら?」
「イベント当日に我が文々。新聞の宣伝をさせて頂けるのなら、そちらの額でよろしいですよ」
「交渉成立ね」
私が思った以上にそれっぽい話が出来上がったようである。どうやら単なる思い付きの余興というわけではなさそうだ。コストの面では過剰な部分もあるが、私が小言を挟む程のことではないだろう。彼女も私の自慢の教え子。千円札一枚を片手にパチンコ店に踏み込みブルーレイディスクレコーダーを一台小脇に抱えて凱旋してくる程度の会計学は教授してある。今回は、彼女の好きにさせてみよう。
その後一刻程打ち合わせをして、カラスは西の空に飛び去っていった。
その後ろ姿を少しの間見送った後、輝夜はくるりとこちらに振り向き、満月のように綺麗に笑った。
∩∩∩
「レディースエーンドジェントルメンっ! これより、永遠亭職員採用面接を開催いたします!!」
「「「「「「「「「「Yeah!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」
カラスのマイクを通した一声を皮切りにボルテージを爆発させるオーディエンス。
良く晴れた如月の午後、竹やぶを切り開いて作られた特設ステージには三百を超える人妖が集まっていた。
ステージから一望するに、半数が人間、もう半数が人間以外といったところか。流石は幻想郷、人妖構わず頭のネジがはずれている者が多くてなによりだ。会場には既に酒盛りを始めているグループも見受けられた。ヤンチャな新成人もビックリなフリーダム空間であるが、イベントの空気としては上々だ。
「なお、このイベントは文々。新聞の協賛で行われております。皆様、文々。新聞を何卒、何卒よろしくお願いします!!!」
「うるさいよぉー! さっさと進行しなぁー!」
酒盛りをしていたグループの中心にいた鬼の幼女が大声を張り、会場はドッと笑いに包まれる。幼女に怒鳴られた女子中学生のような司会者は、マイクを握りながら静かにヘコんでいた。いとおかしいパワーバランスである。
「で、ではここで、主催者の蓬莱山輝夜さんよりご挨拶を頂きたいと思います!」
幼女に弄られるJCを眺めるのも雅ではあるが、輝夜という月の前にはスッポンにも劣る光景だということは明白であろう。どんちゃん騒ぎ真っ最中だった聴衆は、輝夜がステージの中央に立つだけで、ほんの少しずつ、静寂という言葉を思い出していった。息をのむ音が聞こえる。そう、これこそが姫の前に居る者達の態度としてふさわしい……。
「あの、八意さん、その、弓矢をしまってください……」
なんと。私としたことが、何時の間にやら会場に向けて弓矢を引絞っていたようだ。会場が固唾を呑むのも無理はない。だがしかし、輝夜が喋ろうとしてるのにギャーギャー騒いでる者がいたら、ショットウェイヴをぶっ放したくもなるのも当然だろう。私が責められる道理は無い。
おっと、そんなことより今は輝夜の挨拶だ。拝聴あるのみ。
「……見て頂いたように、永琳は少し、マッドサイエンティストの気があるわ」
あ、あれ? 輝夜?
「もちろん、薬師としての腕は超一流だし、医術やその他の学問においても、比類無き天才であるということは、周知のことでしょう。けれど、彼女は少し、人として大切な部分が欠落している……」
か、輝夜―?
「彼女の過酷な要求に耐えきれず、当亭一番の働き手、鈴仙は体と心を壊してしまった」
ウドンゲを壊したのは貴女が飲ませたチューブからしでしょうが。
「私が求めるのは、そんな永琳の要求に応えきれる、勇者。腕っぷしだけではなく、負けん気だけでもなく、かといえばお料理を作るだけが能じゃない、心・技・体を磨いた、本物の勇者!」
「おおぉ……」という声が会場に満ちる。
「自信が無い者は今すぐ去りなさい! 自信がある者は十分に魅せなさい! 物見遊山で来た者は意識を改めなさい! 今日、この地で、私たちは歴史の生き証人となる! トップ・オブ・トップスの誕生の瞬間に立ち会うのよ!! さぁ、覚悟はできたかしら!!?」
「「「「「「「「「「Yeah!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」
「よろしい。それでは、有意義な時間をすごしましょう。私からの挨拶は以上よ」
なかなかに見事な演説であった。これでは、鈴仙が壊れた真の理由を私が今ここでブチ撒けたとしても誰も聞く耳を持たないであろう。
挨拶を終えた輝夜が50メートル走を九秒で走り終えた小学五年生のような笑顔で審査員席に戻ってくる。かわいい。先ほどの私に対する人権侵害は、まぁ、大目に見てあげるとしようか。
「輝夜さん、どうもありがとうございました。それでは、ルールの説明に移ります。当面接は個人面接です。自信のある方から順次、ステージの中央に出てきて下さい。そして、志望動機の説明、自己PR、からしシュークリームを食べてのリアクション芸の三つを行って下さい。また、審査員から随時質問が為されますので、そちらにもお答えください。審査員の輝夜さん、八意さん、てゐさんの内誰かお一方でも不合格だと判断すれば、スイッチ一つで即座にボッシュートです。足元のパネルが開き、媚薬とウナギで満たされた落とし穴に真っ逆さまですので、ご注意をお願いします。なお、落とし穴内の映像につきましては後日DVDとして通信販売を行います。この『落とし穴内ウフフDVD』に関する詳細につきましては明日以降の文々。新聞をご覧下さい」
射命丸の説明に呼応しどよめく場内。そして、次第に沸き起こる拍手の波。今日も幻想郷は平和である。
「それでは、面接を開始します!」
場内の熱気は最高潮。天文密葬法の応用で北風を届かないようにしているのだが、そのような小細工は必要なかったかもしれない。かく言う私も、少々の興奮を覚えていた。意気揚々と歩み出てきた少女を指先一つでウナギの海にたたき落とすなんて、心が躍るじゃないか。
だがしかし、そのような劣情をもってして面接を取り行うというのは参加者に失礼であろう。今の私に必要なものは厳格さと優雅さ。この劇場において、勇者に立ちはだかる魔女であることが私の役目だ。両脇に座る輝夜とてゐは、押し寄せてくるワクワクにただただ身を預けている。そういった少女らしさは彼女たちの美徳であるが、面接官全員が恋に恋するお年頃ではイケナイ。生きていく上では顔色一つ変えずに少女をウナギまみれにしなければならない瞬間が確かにあるのだ。この催しを通して、彼女たちにそのことを教えてあげるのも悪くないだろう。
さぁ、始めようか。
「一番槍はこの方!博麗霊夢さんっ!!」
「どーも」
ほう。霊夢とは、少し意外ね。
彼女は全てに対して関心など持っていないはずなのだが……、どうしたのだろうか。
「えーと、志望動機?お金が貰えてご飯も貰えると聞いt」
ガタンッ!
「……霊夢さん、ボッシュートです」
舐めとんのか、アイツは。
「スイッチを押した八意さん、不合格の理由は?」
「……彼女は少し、あけすけね。営業をするのにあの態度は頂けないわ。もう少し搦め手を考えられる子だったら、有力な候補だったかもしれないわね」
ああいった物怖じしない子は嫌いではない。しかし、自分の助手になるよりもウナギに絡まれている方がずっとお似合いであろうことは明白だ。気の強い巫女には触手プレイ、と古来から相場が決まっているのである。
はい、次ー。
「さて! なんともしょっぱい一番槍が作りだしたこの微妙な空気を打破する第二の挑戦者は果たしてどなたでしょう!?」
「私で、よろしいかしら」
「え……、咲夜さん!? あ、失礼しました。どうぞ中央へ!」
瀟洒にたなびくメイド服に私は我が目を疑った。
十六夜咲夜、だと? 彼女は永遠の幼女に命を捧げる完全で瀟洒なロリコンの長ではないか。それがなぜ、この場にいる?
「……あなたは純然たる紅魔の狗であったはず。そのようなあなたがこの場にいる理由、お聞かせ願ってもいいかしら?」
「はい。こちらに伺ったのは、偏にレミリアお嬢様の命令ゆえです。曰く、当館の従者の素晴らしさを永遠亭の連中にも味わってもらいなさい、とのことです。」
「……なるほど」
つまりあの幼女は「永遠亭の鈴仙なんかよりもウチの咲夜の方が断然有能なんだからねっ」という自慢をしたいが為に彼女を送り込んできたのだろう。会場を見ると、チャイニーズのさす傘の下でレミリア・スカーレットがこちらを見下すように笑いながらヨーグルトサンデーをハモハモと頬張っていた。凄まじいカリスマだ。
「事情は分かったわ。それで、勤務時間はどうするつもり? あなたがいなくなれば紅魔館は一週間でピンクジャングルに成り果てるでしょう?」
「はい、ですので私は、永遠亭と紅魔館のダブルワークを希望します。具体的には、九時から二十一時までは永遠亭で働き、二十一時から翌朝九時までは紅魔館で働きたいと思っております」
頑張るなぁ。
「休憩時間については御心配に及びません。御存知かもしれませんが、私は少々時間を操ることができますので、プライベートタイムは自在に作りだすことができますわ。いかがでしょうか」
いかがでしょうか、と言われれば、確かに問題は無い。彼女は、その気になれば六、七時間程時間を止めて主のスカートの中でノンレム睡眠に浸ることが可能な、いわゆるホンモノだ。レミリアに忠誠を誓ったままウチで働くというのはよろしくないが、所詮はアルバイト、そこを責めるのは少しお門違いだろう。むしろ、レミリアの命の下で動く咲夜の仕事ぶりは非常に信頼できるものだ。十二時間という限られた時間内でも、十分な成果を発揮してくれるだろうことは想像に難くない。
「貴女、私の足を舐めろと言われて舐めることができる?」
「九時から二十一時までの間でしたら、勿論そういったお世話も含め、なんだってやらせて頂きますわ」
輝夜からのキラーパスを薄い胸で華麗にトラップ。上手いものである。拗ねたような顔をする輝夜だが、その手はボッシュートスイッチに掛かかってはいない。輝夜もまた、咲夜の有用性を理解しているのだ。
からしシュークリームなど出すまでもない。彼女は合格ラインを完璧に超越している。
だが、しかし、
「咲夜、あなたはそれでいいのかしら?」
「はい?」
私は、問う。
「主の下を離れて別の者のために従事する……。あなたはそれでいいのかと言っているのよ」
「勿論、問題はありませんわ。それがお嬢様のご意思ですから」
「完全で瀟洒な従者の意見は聞いてないわ。私は十六夜咲夜という、一人の少女に聞いているのです」
「……?」
ストライクゾーンこそ違えど、私も彼女もカリスマの傍らに控える者。どうしようもなく、シンパシーが走る。
「十二時間も、主の匂いを嗅げないのよ?」
「ッ!」
瀟洒な笑顔が凍る。
そう、匂い。匂いなのである。白昼の下で主から放たれるライズボールや他所の家から打ちこまれるカットサーブに澄ました顔でオーバーヘッドをカマした後の夕方には主の枕へのダイブが不可欠。主の匂いは、激務をさばく我々にとってはどのようなアロマも敵わない最上のエリクサーなのだ。それを抜きに働くことは、控えめに言って生き地獄だ。給水ポイントも無しに東京から箱根まで走りきれるほど我々は強くない。主の側に立ち主の匂いをスンスンするからこそ、我等は懐刀として剣呑な光を放ち続けられるのだ。ふと咲夜の顔を見ると、とても優しい目をしていた。あれは主のベッドメイキングの際に着衣を脱いで下半身にシーツを巻きつける、いわゆる「ミロのヴィーナスごっこ」を経験した者でないとできない目だ。
そして、少女はフッと笑みを零す。
「……貴女に虚勢は通じないようね、永琳」
「ガマンはお肌に悪い、というだけよ。養生しなさい、咲夜」
そうして私はスイッチを押す。
ガタンッ!
彼女は、妹を見る姉のような穏やかな笑顔を浮かべながら落ちていった。
……まったく、私の方が随分と年上だというのに。
遠い先の未来、もし吸血鬼がいなくなって彼女だけが生き残ってしまっていたならば、彼女と二人で輝夜を護って生きていくのも悪くはないかもしれない。もっとも、彼女は拒否するに決まっているだろうが。
「お師匠さま、次にいきますよ」
左手からてゐが私に声を掛ける。いけない、少し内面世界に浸りすぎたようだ。会場を見ると、観覧者が皆一体となって『スメルズ・ライク・ティーン・スピリット』を合唱していた。非常にハイな状態で「how low!」と連呼している。ステージ上の瀟洒なドラマにあてられたのだろう。狂しい連中である。その渦の中でレミリア・スカーレットは満足げにクスクスと笑っていた。私はほんの少しだけ、咲夜がこの吸血鬼を慕っている理由が分かった気がした。
さぁ、次に移ろう。
「さて! 次の志望者は……」
「はい、私ー」
そう言ってふわりふわりとステージに飛んできたのは、
「幽々子さんッ!?」
白玉楼の当主、西行寺幽々子であった。
「観覧に徹するつもりだったのだけれどね。少し、会場の空気を読んで出て来ました」
優雅な所作でステージの中央に立ちながらも、その表情には静かな憤りが見えた。
「コホン。あのねぇ」
……あ、展開が読めたわ。
「さっきからちっともからしシュークリームの出番が無いじゃない! ステージの隅で山になっているその洋菓子は出オチ用なの!? そんなの私許せない! このまま出番が無いようならば、私が全て頂きます!! ほら、文ちゃん! 早く持ってきて!!」
やっぱり……。
「あのね幽々子、そのシュークリームはちゃんと審査に使用するし、余ったらスタッフがおいしく頂くから……」
「嘘よ! いいとこ畑の肥料行きだわ! このシュークリームは庭にばら撒かれるためにこんなにサクサクに生まれてきたわけじゃないの! いくわよ!! シュゥゥゥクリィィィィィィム、イート・インッ!!!」
輝夜からの説明もゴッドバレーばりの気合に満ちた幽々子には届かない。射命丸からシュークリ―ムを分捕り、そして、
「いただきます!!!」
一口で呑みこんだ。
って……え? ……一口??
「遅いわ! 文ちゃん! 幻想郷最速のスピードでジャンジャン持って来なさい!!」
「は、はい!」
高速で幽々子とシュークリームの並ぶ机との間を往復する烏天狗。その一瞬でシュークリームを胃に納める幽々子。わんこ蕎麦の達人がドン引きする程のスピード。それが一秒ごとに加速していっているのだ。ステージ上に巻き起こる風、場内を包む闘気、次第に湧き上がる歓声、会場のスピーカーから鳴り響く『ボーダーオブライフ』、ついに発動する幻想風靡。それらを背景に神速を超えた手つきでシュークリームを食べ続ける幽々子の姿は、まさに戦神であった。
「なにこれ……」
てゐが呟く。まったく同感である。
いつのまにか会場は割れんばかりのYUYUKOコールに包まれていた。
というかあれ、どうやって一口で呑みこんでるんだ。シュークリームのサイズは控えめに言ってもテニスボールより大きいのに。一度あの身体にメスを入れてみる必要があるかもしれない。
「……永琳、落としてあげないの?」
「まぁ、彼女の言うことも一理あるわ。食べきるまでは待ってあげましょう」
そう、彼女の言葉はただの世迷い事などではない。食べ物を一種のネタとして扱うことは確かに褒められたことではないのだ。
彼女は死の力を持つ亡霊の姫だ。命を頂くという行為に対しなにか思うところがあるのだろう。この劇場に警鐘を鳴らしたくなる気持ちも分からなくはない。
そんな彼女の文句を封殺するような狭い器など、私は持っていない。彼女のやっていることは暴走ではなく芯の通った主張なのだから。
「ごちそうさまでした!!!」
そして遂に彼女は千のシューを完食する。最高潮に達する声援は冥界に達するほどのマキシマムボリュームだ。物理的に耳が痛い。
……さて、そろそろ閉演にとりかかろうか。
「あなたの雄姿、しかと見せて頂きました。……一応聞きます。今の行為は永遠亭で働くためのPR?」
「いいえ、ただそこに不憫なシュークリームがあったから、よ。アルバイトをする気なんてサラサラ無いわ」
「そう、分かりました。覚悟はできている、ということですね」
「ええ、デザートはウナギの踊り食いね」
剛毅な亡霊だ。見ているこちらが気持良い。
だがしかし、ケジメはつけなければならないのだ。
「言い忘れてましたが、穴の中で泳いでるウナギは全て蓬莱の薬を飲ませたものです。あなたがどうしようと、決してなくなりはしないわよ?」
「ぇ、うそ、なに、それ、怖」
ガタンッ!
「えぇ、もちろん嘘です」
以前永遠亭に立ち寄ったマッシブな老剣士風の旅芸人が酔った勢いで意気揚々と語ってくれた持ちネタ、『蓬莱人が夢に出てくる度に庭師の布団に潜り込んで来る西行寺幽々子』はしっかりと私の脳に保管されていた。彼のトークは私たちに愛想笑いを要求するだけのお寒いものだったが、情報としてはホットなものであったようだ。今度我が亭に来た際には愛想笑いだけでなくちゃんとツッコミもしてあげよう。額にメスの二、三本でも突き立ててやれば満足をしてもらえるだろうか。
ふとPAブースを見ると、そこでは妖夢がオロオロと困惑していた。可愛いものである。彼女があの旅芸人のように自らの主の弱点を嬉々として語ることができる程に主を信頼するようになるまでには、まだまだ長い時間が必要なことだろう。
さて、次だ。っとその前に……
「えー、会場の皆さんに説明をさせて頂きます。先程幽々子が完食したシュークリームですが、あの全てにからしが入っているわけではありません。事前にあの内の十個のシューにはからしが注入されていましたが、残りのものは中身が空でした。それらは、志望者が現れた場合随時からしを入れていくために用意された予備用のシューです。よって、食べ残りが生じた場合はそれらにカスタードを入れて皆さんにお配りをする予定です。我々永遠亭は、食べ物を粗末にしない団体であることをご理解頂ければ幸いです。また、我が亭のキッチンにはまだシューが三千個程残っていることをこの場を以てお知らせします」
昨晩、イベント前日で興奮した輝夜がどうしても眠れなくなってしまったため羊を数える替わりにシューを作っていたら、いつのまにかキッチンから溢れる程のシューを作りだしていたのだ。月の姫の暇つぶしは当たり前のようにギネス記録を粉々にするから恐ろしい。そのエネルギーをもっと有意義なことに使えば輝夜は偉人になれると思う者もいるだろうが、そういう考えに流されないところが彼女の魅力の一つと言える。力があるからこそ動かないという理念は間違ったものではない。マンションの建築現場で範馬勇次郎が鉄筋を運搬する姿なんて誰も見たくはないだろう。
さて、イメージ戦略も完璧だ。次に移ろう。
「さぁ! 次なる挑戦者は!?」
「私よ!」
……やはり来たか。
「やる気十分ですね! さぁ中央へどうぞ! メディスンさん!」
メディスン・メランコリー。製薬に欠かすことのできない毒を提供し、私の研究を幾度となく助けてくれた可愛らしい妖怪である。フリフリのドレスと甘い香りをいつも纏っている七歳児のようなその姿は、ぺドでなくとも思わず頬を緩ませてしまうこと受け合いのスウィートポイズンだ。
しかし、彼女はいつもの可愛らしいスマイルを崩落させ、今は怒りの表情を浮かべていた。
「姫さまも永琳も酷いよ! 鈴仙が倒れたのなら、こんな茶番を開く前にわたしに声を掛けるべきなんじゃないの!? わたしは永遠亭の住人ではないけど、今まで研究のお手伝いはたくさんやってきたよ!?」
その通りだ。彼女はこれまで大変よく働いてくれている。鈴仙が倒れる以前から、彼女は当亭の非正規職員待遇であったことは誰もが認めてくれていることだろう。そのような彼女が怒るのも当然だ。しかし――
「メディスン、あなたの働きにはいつも感謝をしているわ。けれど、この際ハッキリと言います。……あなたは、営業には向いていないのです」
私の口から発せられた言葉に目を見開くメディスン。少しの罪悪感が私の胸にチクリと刺さる。しかし、彼女の為にも言っておかなければなるまい。私やてゐならば彼女と共に仕事をしていても害は無いが、一般人を彼女に近付けるのは好ましいことではない。こんなに可愛らしい姿をしているが、彼女はどうしようもなく“毒”を振りまく存在なのだ。ここで私が口を噤んでは彼女も彼女の周りの者も皆が不幸になってしまうだろう。心を鬼にせよ、八意永琳。時には残酷な真実を伝えなければいけない場面もある。
「なん……で……? わたし、毒が漏れないようにコントロールできるよ?」
「……」
「誰と触れあったって、蝕んだりしないよ?」
「……」
「鈴仙みたいな誘い受けも満足にできない兎よりもよっぽど――」
「それよ!」
「え?」
ズビシっと指差す私を見てメディスンが目をまん丸にする。
私は少しだけ天を仰ぐ。あぁ、天然って、恐ろしいことだわ。
「メディスン、あなたは確かに自身に大量の毒を有していながら、それが漏れ出ないようにコントロールしている。それはもちろん知っているし、高く評価してるわ。けれど、あなたはそうやって毒を溜め込み、そのせいで、毒のある言葉ばかり言うようになってしまったのよ!」
「ふぇ? 永琳、なに言ってるの? ついにボケちゃったの?」
「ホラそれぇ!!」
そうなのである。信じられないことだが、彼女は自身の体内から物理的な毒を吐かないようセーブし過ぎた結果、精神的な毒を吐くようになったのだ。毒妖怪のこの進化に賢者と呼ばれた私でも当初は驚きを隠せなかった。十五種類もの毒を一晩で揃えてくれた彼女のためにビーフシチューを作りその後で頭を撫でてあげた時に言った言葉が「永琳、暖かい……。おばあちゃんみたい……」である。死ぬかと思った。その一件以来、この子の言葉の節々には色とりどりの毒が含まれるようになっていった。言いたいことも言えないこんな世の中でも彼女は堂々とポイズンなのだ。取引相手を前にしてそんな態度は宜しい筈がない。
「メディスン、あなたは研究の助手としては非常に有能。しかし、今回求められる技能には営業力も含まれているの。あなたはその点において大きなマイナスポイントを抱えていると判断し、事前に声をかけることはしませんでした。私は常々あなたを可愛がっていますが、一人の面接官としてあなたを特別扱いすることはありません」
「……そっか」
落ち込んだように顔を伏せるメディスン。オーディエンスからは「Oh……」という嘆きの溜息が聞こえる。アメリカのホームドラマにおいて愛娘がパパに叱られた時のような切ない空気が漂う。私の胸にも一抹の物哀しさが去来する。が、これはいつかメディスンがぶつからないといけなかった問題だ。……これを機に、彼女は成長をすればいい。
「そういうことだから、メディスン――」
「永琳らしく、ないよ」
フッと顔を上げてメディスンが私の顔を見る。その顔に浮かぶのは、怒りでも悲しみでも無く、覚悟だった。
「永琳の評価したわたしは過去のわたしでしょ? 今のわたしじゃないでしょ!? 今、このステージに上がったわたしを見てよ、永琳!」
覇気が奔る。
その眼には、光。
そんなメディスンを見て観客達からは驚きの声が響き、そして拍手が巻き起こる。
「ふふっ。永琳、貴女の負けね。彼女はただの子供ではなく、ひとりのチャレンジャーだわ。正面から、彼女の想いをブツけてもらいましょう?」
輝夜がフワリとこちらに笑いかける。
……まったく、この八意永琳ともあろう者が、どうやら相手を過小評価してしまっていたようだ。情けない。
メディスンは、私が思っていたよりもずっとずっと成長しているではないか。苦言を呈した私の目を真っ直ぐ見つめるその顔は、子供のそれではない。説教をして、はいバイバイだなんて行為が許されるわけがないだろう。
緩んでしまいそうになる口を真一文字に結び、私はメディスンを正視する。
私は採用面接官。彼女は採用志望者だ。
本気で、向き合おう。
「分かりました。それでは……、メディスン・メランコリーの面接を始めます」
「はいっ!」
メディスンの顔に浮かぶのはやる気に満ちた笑顔。良い顔だ。
「まずは志望動機と、簡単な自己PRをお願いします」
「はい! わたしが貴亭に志望した理由は自身の特徴である毒をより世の中の為に活用したいと思ったからです! わたしは多種多様な毒やクスリを操ることができ、漢方の精製から芸能スキャンダルの生成まで幅広い分野で活躍することができると自負しています!」
「なるほど、研究補助の仕事については力があるものと見受けます。では、営業分野についてはどうですか?」
「はい! そちらの分野でも物怖じせず自信を持って仕事をこなせると思っています!」
「分かりました。では、射命丸さん、亭からシューを持ってきてください」
さて、ここからが本番である。
固唾を飲む会場から一陣の風が勢いよく飛び立ち、その十秒後に風がスカートをはためかせながら降り立つ。
その手にあるのは、予備として用意してあったシュー。
「射命丸さん、シューにからしを注入してください」
誰かが、ゴクリと唾を飲んだ。
カラスがチューブを押し、シューの重みがどんどん増していく。たっぷり三秒を使ってからしを注入させたシュークリームの存在感はあたかも怒り心頭のフグのようだ。常人ならば、触ることすら忌避するだろう。
「メディスン、あなたはそのからし入りシュークリームを――魅力ある商品として、我々三人を客と見立て売り込んでみてください」
会場から「なん……だと……!?」という声が聞こえた。
私とて観客の気持ちは理解できる。ゴスロリ幼女がクリームもどきで顔をベタベタにしながら涙目になる姿を見れば、確かに万人がホクホクになれるだろう。しかし、今この場で見なければいけないのはメディスンのトークセンス。彼女がどれだけ商品を売り込めるかを見極めるのが最重要事項だ。涙目のメディスンならばどのような相手もコロリと落とすのは想像に難くないが、戸口訪問の度に口にからしシュークリームを詰め込む幼女だなんて幾らなんでもシュールすぎる。彼女に求められるのは、思わず耳を傾けてしまうだけの会話力だ。
「分かり……ました!」
カラスからシュークリームを受け取るメディスン。迸る闘気。
さぁ、あなたの成長、見せてもらうわよ。
「サァ! 本日オススメする商品はコチラッ! “からし入りシュークリーム”!! 皆さん驚かないでください? なんとコチラの商品、永遠亭のお姫様が作ったという由緒ある品なんです! 見て下さいこのシューの艶! 綺麗ですねー、輝いてますねー。深い味わいのお菓子としては勿論、お部屋に置くだけで彩りがワッと増す、インテリアとしても最上級の品です。これまでのシュークリームでしたら、少し時間を置いただけで消費期限を迎えてしまいインテリアとしての役割を果たすことなどできませんでした。しかし、このシュークリームは違います! シューに内包されているのが従来のカスタードクリームではなくからしというハイエンドモデル! からしの防腐効果により従来の品の倍の消費期限を実現し、かつ、アリルイソチオシアネートという成分の働きにより食中毒予防の効果も備えています!」
一オクターブ高くしたメディスンの声が会場狭しと響き渡る。驚きだ。女子三日会わずれば刮目して見よ、とはまさにこのことか。
「こちらのシュークリームに、今回はなんと胃薬もお付けします! もしお腹を壊してしまった場合もこれで安心ですね! こちら、シュークリームと胃薬の二点を合わせまして、お値段はなんと、二十円! 二十円でのご提供です! ただし、この低価格には条件があります。ご購入の際に二年間、永遠亭の置き薬システムにご契約して頂く必要があります。しかし、そうして頂くだけで、二十円! 大変お買い得となっています! こちらの商品は限定三千個! 今すぐ、お買い求めください!!」
すげぇ。ツッコミどころは多々あれど、それを気にさせない程に流れるセールストークは圧巻ものだ。客席からは歓声と共に祝福の雨の如くメディスンのもとへ二十円が投げ込まれている。霊夢が見たら鼻血を噴きだしそうな光景だ。しかしそれも仕方が無いであろう。彼女のパフォーマンスはそれだけの勢いを有していた。百点満点ではないが、及第点を突破していることは誰の目にも明らかである。メディスンの顔には笑顔。自信があるのだろう。では、その態度に答えてあげようか。
「見事でした、メディスン。欠点を指摘するとすれば、私たち三人をターゲットに絞ったトークではなかった、という点が上げられます。テレビの前の大勢を相手とする商売では今の喋り方で正解ですが、目の前にいる個人を相手とするならばよりパーソナルなトークが必要。相手を褒める。相手の相談に乗ってあげる。ある程度相手を自分のペースに乗せたのであれば、そういったように相手と会話をすることも大切なのです。ただ自分が喋るだけでは、七十点というところでしょうか」
「そう、ですか。……分かりました。至らない点があり、申し訳ありませんでした」
笑顔を引き締め頭を下げるメディスン。少し、落ち込んでしまったようだ。まったく、そのような必要は無いというのに。彼女が七十点であればウドンゲは四十点だ。彼女が頭を下げるのならば、あの赤点ギリギリのへにょり耳は三点頭立をしなくてはいけなくなる。いくら私でもそこまでしてパンモロを見たいとは思わない。厳格な事で噂を立てられる私だが、決して鬼ではないのだ。
「顔を上げて、メディスン。そうね、じゃあ、今この場で私たち三人を良い気分にさせるような、褒め言葉を一つ言ってみてもらえるかしら? それが良ければ、あなたは合格よ」
メディスンの顔がパァっと明るくなる。可愛いものだ。さぁ、彼女のラストシュートに注目しよう。
「お三方とも、お歳の割にとっても可愛らしいですねっ!! いったいどんな魔法を使ってるんでs」
ガタンッ!
「……メディスンさん、ボッシュートです。スイッチを押したのは、……お三方ともですか」
……言ってはいけないことが、世の中にはあるのだ。
「女の子に対して、年齢の話は厳禁です。彼女はそれを知らなかった。残念ですが仕方が無いでしょう」
私のコメントに客席から「女の子って……」という呟きが聞こえる。なんだ? 私が女の子だということがそんなにおかしいのか? 私はバレンタインデイの前日、輝夜のためにチョコレートケーキを作っていた筈が気付いたらウェディングケーキを作っていた程の乙女だぞ? 少女であることに異論があるヤツがいるのなら前に出てきてほしい。懇切丁寧にハチの巣にしてあげるから。
おそらく、こういった乙女の機微はメディスンにはまだ分からないのだろう。彼女は思春期にすら未到達の濁りなき幼女だ。それは仕方が無い。彼女はこれから、ゆっくりとジレンマに満ちたオトナの心を学んでいけば良い。なに、ポテンシャルの高さは今日のステージで十分に証明されている。時間さえかければ、いや、恋の一つでもすれば一気に開花してくれるだろう。その時には、是非とも彼女と一緒に新しいビジネスを始めたいものだ。乙女の心を解するほどに成長した彼女ならば、きっと歴史に残る程にへビーな媚薬を精製してくれるだろう。その日が今から楽しみだ。
さて、次の志望者は……
∩∩∩
その後も多くの挑戦者が現れ、そして落ちていった。
式に布団を追い出されて来たスキマ妖怪が落ちた。ステージの中央で言った台詞が「藍が布団を洗濯しちゃったの。今日一日だけ泊めて」である。いったいどうやったらこの場をユースホステル集客コンテストと勘違いできるんだあの万年寝太郎は。
無意識にやってきたラブリービジターが落ちた。ステージの中央で言った台詞が「ここどこ?」である。無意識にも程がある。
酔った勢いでやってきたちっこい鬼が落ちた。カラス相手に突如始めやがった「下から脱いでいく野球拳」には正直私もテンションが上がったが、鬼がドロワーズに指を掛けた時点で落とさざるをえなかった。苦渋の決断だ。
秋までやることが無いから来たと言い放った姉妹神が落ちた。あんなにテンション低い神様に営業をさせる勇気は私には無い。
月の姉妹の姉の方が落ちた。あなたは本業をしっかりしなさいよお願いだから。
地味な自分を変えたいから来たと言い放った……、えと、なんだっけあの子。まぁとにかく、雲山じゃない方の子が落ちた。彼女が魅せてくれたマリンバによる『剣の舞』の高速演奏はプリズムリバーもスタンディングオベーションの名演であったが、それはウチの仕事となんの関係も無い。
自信満々の天人に雷が落ちた。ステージ中央に立つなり「落とさないでよ? 落とさないでよ? 絶対に落とさないでよ!?」と言いだした彼女があまりにも面倒くさかったので放っておいて二十分間の休憩時間をアナウンスした後輝夜とてゐとコーヒーブレイクをしていたらいつの間にか焦げた桃ができていた。世の中には空気の読める方がいるものだなぁ。
∩∩∩
「えー! 志望者の方―! 志望者の方はもういらっしゃいませんかー!?」
そしてこのザマである。志望者二十一名の内合格者はゼロ。予想だにしない展開に全米が泣かずともカラスが必死で鳴く。それもそうだろう。寒空の下三時間もイベントを行った結果が「誰も合格しませんでした」ではあんまりだ。観客達はと見ると幸せそうな顔で甘いシュークリームに舌鼓を打っていたり二次会場所を話し合っていたりとステージ上の惨状なぞなんのそのである。足を運んで頂いたお客様方は既に十分に笑い、満足しているようで重畳ではある。しかし募集を任されたカラスからすれば合格者ゼロという結果はどうしたって涙目ものだ。フリーペーパーは親しみやすさと確かな結果の両方を示してこそ価値があるもの。五日間の告知でこれだけの志望者と観客を集めた点は評価できるが、そんなものは広告欄に「参加者には私に寝技をかける権利が与えられます」の一文を添えれば済む話だ。量だけを得るならば簡単でもそれに質を伴わせるとなると仕事は途端にハイレベルになる。今、カラスは自らの自費出版新聞の等級を決める瀬戸際に立っているのだ。
「今なら! 志望者の方に私と一日デートする権利を付与しますよ! どなたか、いらっしゃいませんかー!」
ダメだこりゃ。彼女は自ら新聞の格を落としている。その必死な姿に好感を持つ者はいるかもしれないが、一日デートが一日密着取材と同義であることに気付いていない者はいまい。誰が好き好んであのカラスにディナーを奢ったその翌朝の朝刊の一面に自分の口説き文句を掲載されたいと思うのか。「文、君の髪はブラックオニキスより美しい……」なんて言葉が四コマ漫画の横に鎮座するなんて考えただけでも涙が止まらない。
これはもう、潮時かもしれない。
これ以上ステージを引き延ばせばあのカラスは更にアウトなことを言い出す可能性がある。彼女はカメラ片手に回避不可能の禁忌に突撃する程の仕事の鬼だ。十八歳未満の方がいらっしゃるこの場では不適切な我が身の切り売りを条件に志望者を募ることは十分に考えられる。ストップをかけてあげるのが、今の私にできる唯一の善行だろう。
合格者ゼロという結果は私としても物哀しいのだが、醜態を晒し続けるよりはマシだ。これにて閉会と――
「はいっ!!」
!?
「い、今志望表明をされた方がいらっしゃいましたよね!? えと、どちらにいらっしゃいますか!? ステージまで進み出てください!」
「ここですよ、ブンヤさん」
そう言って声の主は薄紫色の豊かな髪を揺らしながら私たち審査員三名の横を通りステージへ進み出た。
「え……!? れ、鈴仙さん!!?」
ステージ中央に立ったのは我が弟子、鈴仙・優曇華院・イナバ。
馬鹿な……、なぜ彼女がここにいる?
「ウドンゲ? あなた、どうしてここに……?」
私はシンプルに質問をする。
一週間ぶりに言葉を交わす彼女の顔はとても溌剌としていた。
あり得ない、とまでは言わないが、常識的に考えておかしい。
彼女は今朝診察を行った時ですらいまだ意識を取り戻していなかったのだ。ここまでの元気を有するなど、非常に不自然なことである。
……なにかが、おかしい。
なにか、私の知らないところで事態が進んでいるかのような、そんな違和感を感じる。
「先程、ようやく目が覚めたのです。ご心配をおかけして本当に申し訳ありませんでした」
「先程って……。あなた、一週間も寝たきりだったじゃない。目覚めてすぐにこんなところに来られる体力など無い筈よ?」
「その点につきまして、もう一つ師匠に謝らないといけないことがあります」
ウドンゲは一つ息を吸い、ハッキリとした口調で
「師匠が新しく作った滋養強壮薬品を飲ませて頂きました」
言った。
その瞬間、私は全てを理解した。
両隣を見ると、輝夜とてゐがニヤニヤと笑っていた。
「……新しく作った滋養強壮薬品とはもしかして、皐月に発売開始予定の『BIN! BIN! BIM!』のことかしら、ウドンゲ?」
「は、はい。名称はまだ仮決定だったとは思いますが、ソレのことです。開発が完了しているとはいえ、売り出し準備中の薬を勝手に飲んでしまって、申し訳ありませんでした」
私の説明口調めいた台詞に慌てるウドンゲ。どうやら当たりのようだ。
何も知らされていなかったのは私だけ、ということか。
まったく……、無駄に派手なイベントだと思っていたが、そういうことだったのか。私に黙って……、しょうがない子たちだ。
「けれど……、ソレを飲んだおかげで私はすっかり元気になれました! 明日からでも仕事に復帰できます。だから師匠、アルバイトを採る必要なんて無いんですよ! 私、がんばりますから!」
気丈に声を張りグッと拳を握って主張するウドンゲに会場から拍手が贈られる。人間達からはイマイチ好かれていないウドンゲだが、今の熱意溢れる彼女の姿を見て胸が熱くならない者は少ないだろう。実際、彼女の言葉は曇りの無い心からの本音だと判断できる。台本があったとしても、ウドンゲはそれに記されている台詞を感情たっぷりに言える器用な兎などではないからだ。
会場全体が見事にウドンゲの一挙手一投足に注目している。
このシナリオを書いた誰かさんの思惑通りの展開だろう。
私は誰にも分からない程微かに、苦笑を漏らす。
「うーん、でも鈴仙、本当に頑張れるの? 病み上がりで体力無いくせに大きな態度だけとられてもコチラとしては迷惑なだけなんだけどねぇ」
一方私の左側から役を演じることなど朝飯前の詐欺兎が飄々とした態度で悪役の台詞を放つ。その姿には一種の貫録すら感じられる。
「明日からでも仕事できるくらいに元気になったって言うのなら……、からし入りシュークリームくらい、食べれるよねぇ?」
「……ぇ?」
ウドンゲの表情が固まった。
てゐが審査員席のテーブル下からシュークリームを取り出す。
……? なにやら空気がおかしい。
ウドンゲの顔から先程までの覇気が消えている。
いや、覇気が消えたというよりも、突然のことで戸惑ってしまった、という表情か?
嫌な予感がする。
……まさか、この腹黒兎。
「そんじゃ、食べてもらいましょうか。からし入りシュークリームちゃんを」
「……!」
ウドンゲの顔には大量の冷汗。
確定だ。この腹黒兎、シナリオに書いてないイベントを進行させてやがる。エンディングの中で唐突に新たな敵が現れるような展開では、どんなクソゲープレイヤーだって呆然ものだろう。ウドンゲの頭の中が真っ白になるのも無理は無い。
そんなへにょり耳兎の顔を見て笑顔を滲ませるてゐ。
サディスティックというより、これはもうサタニックとしか形容ができない表情だ。
ウサ耳を生やした悪魔が審査員席からステージの中央へ歩いてゆき、シュークリームをウドンゲに渡す。
……ウドンゲ、腕が震えてるじゃないの。
「じょ、上等よ! これくらい、ペロリだわ!」
一週間前、あなたソレでコロリと逝っちゃったじゃない。大見得を張るんじゃないわよ。
「……輝夜様、師匠、そして会場の皆さん、……見ていてください!」
ちょっと、本気なの?
「よしなさいウドンゲ! 病み上がりの身体でそんなトラウマを食べようものならあなた――」
「止めないでください、師匠。これは、私の本気を示す絶好の場です。信じて、ください」
煌めく不退転の意思に私はどうしようもなく言葉を呑みこむ。
輝くような胆力が、確かに見える。
律義な彼女の事だ。シナリオ通りの展開で観客を沸かせることに罪悪感を覚えたが故の行動であることは想像に難くない。
このイベントの開催のきっかけが自分にあるという自責の念もあるのかもしれない。
演技ではなく、本気だということの証明。
ケジメをつけるという覚悟。
プレッシャーが会場を包む。
目を見張る。
悠々と料理をするウドンゲではない。溌剌と弾幕ごっこをするウドンゲではない。
私の知っているウドンゲでは、ない。
こちらを見るウドンゲの眼は、覚悟を決めたチャレンジャーのそれであった。
武者震いのする手でからしシュークリームを目前に運ぶ。
そんな彼女の姿には誇りすら感じられて、まるで――
「勇者」
声が聞こえた。
その声の発生源である私の右方50センチメートル先に顔を向けると、そこには月の姫がいた。
「私が求めるのは、腕っぷしだけではなく、負けん気だけでもなく、かといえばお料理を作るだけが能じゃない、心・技・体を磨いた、本物の勇者」
クスリと笑って、姫は言った。
「私は、嘘なんて言ってないでしょう?」
輝夜、あなた――
「いきますっ!!!」
ステージ中央でウドンゲが大声を張る。
水を打ったように静まる会場。
私が彼女に目を向けたその瞬間に、ガブリと一口。
続けて勢いよく、二口、三口、四口、五口、六口……、
そして、完食。
「…………………………ろう、れすか?」
呂律の回らないウドンゲが一言を発した瞬間に、会場は割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。
「ぶ、ブ、ブラボー! ブラボーです!! 病み上がりという身でありながらこの気概!! 素晴らしいです!! 感動です!!」
カラスがマイク越しに大声を出し続ける。その間も決して鳴ることの止まない拍手。ウドンゲの目から涙が止まらないのはきっとからしのせいだけではないだろう。会場のお客の中にもそんな彼女に釣られて貰い泣きをしている者が多々見受けられる。
かく言う私の胸にも熱い何かが揺らめく。
……あの臆病なウドンゲが、よくがんばったものだ。
「決まり、ね」
マイクを持って輝夜が言葉を紡ぎだした。
「からし入りシュークリームなんていうギャグアイテムを以ってしてこのようなドラマを生み出したことは称賛に値するわ。鈴仙、見事よ。貴女の代わりの人材を探すためのイベントだったけれど、結果的には貴女の有能さを証明するための劇場になっちゃったわねぇ」
「はい、ありがとうございます。かぐやさま」
「あぁ、無理しないで。わざわざ喋らなくていいわ」
そう言って輝夜は身体を観客席に向けた。
「お集まりの皆さん! 私達は、鈴仙の代わりのアルバイトを採らないことにするわ! このイベントの趣旨に反する結果だけれど、許して頂けないかしら?」
よりいっそう大きな拍手が会場を包む。文句を言いだす者など、誰ひとりいない。
「ありがとうございます! ……なんだか我が亭内の騒動をわざわざ皆さんにお見せしただけのような結果になって、心苦しいわ。お詫びと言ってはなんなのだけれど、鈴仙が飲んだ滋養強壮薬を皆さんにプレゼントしたいと思います。永琳、幾つ程用意できるかしら?」
……まったくこの子は、そこまでするとは。
「五十個、ですね。既に瓶詰めもされていますので、今すぐに用意することができますよ、姫?」
「それじゃあ、限定五十名にプレゼントをさせてもらうわ。帰りの際には受付でシュークリームを包むから、薬を飲んでみたいとご希望の方はそれを渡す際に一言申し出て頂戴ね」
「「「「「「「「「「Yeah!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」
「それでは、これにて永遠亭職員採用面接は終わりです! 長時間のお付き合い、ありがとうございました!」
輝夜に呼応した観客の歓声が夕焼けに照らされた世界に響きわたる。どの顔にも満足の色が見てとれた。イベントは成功したと見て間違いない。輝夜が閉会宣言をしたにも関わらずその場で宴会を続けるグループもあるが、まぁ、放っておいてあげても罰は当たらないだろう。
「永琳?」
「はいはい。ウドンゲ、薬を持ってくるわよ? 手伝いなさい」
「了解です、師匠! ほら、てゐ! アンタも手伝って」
「しょーがないなー」
さて、今やるべきことはモニターの確保だ。ちんたらしていたらせっかくの機会が台無しになってしまう。
いざ、夕日に向かってひとっ飛びだ。
∩∩∩
夜の帳の向こうからどんちゃん騒ぎの音が聞こえる。
イベントが終了してから既に五時間近く経過したというのに、いまだ特設会場では宴会が続けられているようだ。如月の二十二時に野外で宴会をするだなんて、どれだけクレイジーな連中なんだろうか。それとも彼らは風邪などひかないのか。だとしたらここはなんとも薬の商売をし辛い地だ。
一人で笑い、肩をすくめて緑茶を一口啜る。
新薬の宣伝とモニター確保を目的とした輝夜の企みは見事に成功したと言って良いだろう。
用意できた五十本のサンプルの内三十本は里人の手に渡り、そして追跡調査の了承も好意的に得られた。明日からは経過を観測するために里に通う毎日が始まる。降って湧いたような忙しい日々のスタートだが、それは嬉しい誤算と言って良い。
いや、輝夜にとっては計算通り、か。
まさか輝夜が私に内緒でここまでの展開を考えていたとは思わなかった。
子供らしさの抜けないプリンセスである彼女だが、時としてその考えは私でも追い切れない。今回はそのことの良い証明になったと言えよう。
……もしかしたら、だが、
彼女の目的は新薬の宣伝とモニター確保などではなく、なにかもっと別のところにあったのかもしれない。
例えば、ウドンゲに対する好感度アップ。
例えば、シナリオを書いて役を与えた際にてゐがどの程度の逸脱行動をとるかの見極め。
例えば……、いや、やめよう。これ以上考えを巡らせたところであの子の考えを完全に把握することは無理だ。考える範囲を広げれば広げる程、輝夜を過大評価していってしまうだけだろう。蓬莱の薬を飲んだ理由が「退屈だったから」という彼女だ。深遠な智謀を張り巡らせるだなんて、彼女のキャラクターではない。
……案外、色々な人妖の色々な行動を見たかっただけ、という行動原理かもしれない。
それが一番、彼女らしい。
「ふぅ……」
追跡調査用の調査シートを書きあげ、一息をつく。これで明日の準備は完了だ。
緑茶を啜る。
目を瞑り、今日会った多種多様な人妖の顔を思い出す。
彼女達はなんともルナティックでブリリアントでアレであった。
ウチで働かせるには不安要素がたっぷり過ぎるが、彼女達は非常に魅力的な存在であることは認めざるを得ない。退屈な時はあの内から適当にピックアップして亭にゲストとして招き入れ一緒に食事をするのも悪くないかもしれない。
輝夜という月には劣るが、しかし、彼女達の輝きもまた瞼の裏から離れないものではあった。
この幻想郷という土地に住む者達の面白味を実感できたのが、もしかしたら今日一番の収穫だったかもしれない。
目を開け、また一口緑茶を啜る。
外からは素っ頓狂な喚き声が間断無く聞こえる。
「――永琳」
振り返れば執務室の入口に私の姫がいた。宴会に参加していた彼女は随分とアルコールを摂取したようでその肌は健康的な朱に染まっていた。
しかし、その表情に浮かんでいるのは悲しみと後悔の念であった。
「皆が、動かないの」
……は?
「からしシュークリームを一気食いしたら、そのまま白目をむいて……」
え、なに? この子なにを言ってるの?
「え? あの、ちょっと待って輝夜。それ、どういう状況? 皆で宴会していたんじゃないの?」
「それがね? 酔った天人が、実はあのからしシュークリームは全然辛くないんじゃないのー? とか言い出して、それに皆同調しだしてね? そこまで言うから私がからしシュークリームを用意したら、皆が一気に食べだしてそのままバタバタと……」
アホかあいつらは……。
「……倒れたのは何名?」
「二十五名」
今日の面接志望者よりも多いじゃねーか。
私は盛大に溜息を吐く。
ルナティックな蛮行の末にバタンキューとは自業自得もいいところだが、死因が「からしシュークリームの一気食い」の二十五名をひとりひとり裁判にかける閻魔のことを思うと流石に心苦しい。
仕方ない、救助してやろうか。一等高価な座薬を打ち込んでやれば大抵の少女は飛び起きるだろう。まったく、明日からは外回りの仕事が始まるというのに、厄介なことだ。医者としては相応しくない態度であることは自覚しているが、からしにノックダウンされた二十五匹のアホの尻に座薬を沈める作業というのはどうにもモチベーションが上がらない。
「おねがい、永琳……。皆を助けてあげて……」
「……!!」
輝夜……! 上目遣いで懇願だなんて……! そんな……! そんな……!!
「永琳? 鼻血が凄いわよ?」
「あ、あら? やる気を出し過ぎちゃったようね。ごめんなさい」
「ふふっ、頼もしい限りだわ」
気が付けば私のモチベーションは天元突破をしていた。なんか今なら頑張れば月の都の一つや二つは建て替えられそうな気がする。ステータス異常に陥った二十五の命を救うだなんて朝飯前だ。一般的な賢者でもイオナズンでとどめを刺した後にザオリクを二十五回使えばそれで完了という三十分もかからない簡単なお仕事である。月の賢者と呼ばれた私が万全のコンディションであるのだから、きっと三分もかかるまい。
さて、愛する姫に頼られていることであるし、サクサクっと救助に向かおうか。
余裕を持って四十の座薬を装填し、踵を鳴らして部屋の出口へ。目指すは愛すべき幻想郷のおもしろ生物たちのお尻のホールだ。
ふと丸い窓の向こうにちらりと目を向けると、そこには満天の星々が輝いていた。
そのキラキラとした光の一粒一粒があまりにも眩しく見えたので私は思わず笑ってしまった。
そんな私を見て輝夜も笑ったように見えたのは、きっと気のせいなどではないだろう。
あとDVDください
つ一万円
一つだけ、誤字を。
写命丸でなくて射命丸ですね
↑ある意味真理ですね、わかりますwww
おもしろかったです
鈴仙は愛されていますねぇ
あとDVDください、十万で
射命丸ゥゥゥゥゥウウウゥゥ!
あ、誤字報告です。
×写命丸
◯射命丸
ウナギまみれのゴスロリ幼女が見たいんです
言いたいことはたくさんありますが、とりあえず3点だけ。
・この姫様、恐ろしく出来る…!
・メディかわいいよメディ!
・少女たちに座薬を詰めるお仕事は私に任せてください!
この幻想郷はアホばっかですね。
あと、DVD一枚お願いします!三十万円程で。
中古を待つか
そうすればDVDがとんでもないことになったのに!!
メディ可愛いよメディ! こんなにメディに萌えたのは初めてだ! 俺の養子にならないか?
プチのほうがもうギャグにしか見えなくなったじゃないかどうしてくれる馬鹿野郎wwwwwwwwww
あと小学5年生のこだわりは何なんだwwwww
だが全編通して爆笑した。この事実は覆らない!
いいlunaticだったぜ・・・
>その一軒以来
一件かな?
誤字が気になったけど非常に笑ったw
あと永琳先生、お尻のホールへの突貫は勘弁してあげてw
DVDものすごく欲しいんですけど、お金が無い! チクショウ!
そして何気にメディスンかわええ
最初から最後まですごくすごく面白かったです。
永琳いいキャラだw
思考がルナティックに飛んでいるけど、姫様が可愛いなら問題ないね。
姫の可愛さだけが友達だな
が、あとがきの「写命丸」がまだそのままですよ
点数は上で入れてしまっているのでフリーレスにて
見たくないwwwwwそれは見たくないwwww
なぜウ○フが禁止ワードなんだ!
と思ったけど、あれか、黒r(ry
あ、DVDのオークションいつですかぁ?
(マジで驚いた)
この永琳はひどい。
計算高い姫様最高!
落ち込んでたに笑いすぎて嫌なことを忘れてしまった。
輝夜もかっこよかった。
楽しい時間をありがとうございました
しかしウドンゲの胃がストレスで心配だwww
なんとも腹筋を痛めるSSだぜ。
メディは営業以前に人形だからモルモットとして向いてない気がするなぁ。
ホンマ姫様のカリスマは天井知らずやでぇ
そんな大したハードルじゃねぇッスからwwww
もぐもぐ……(パタリ
いつ落ちるか、いつ落ちるかと思ってたら、綺麗にオチよったww
姫様かっこええ。
こう、バリバリのカリスマでなく、にじみ出るようなカリスマがあるのがかっこええ。
この永遠亭はルナティックすぎるww
健気なうどんげとメディ最高だ。
こんな感じの作品をもっと読んでみたい。