紅魔館に電気が通ってる設定です。
太陽が憎たらしいと思った事はないだろうか.
暑い日差しを降り注ぎ、私は何も悪くないわよ見たいな何食わぬ顔で天高く出ている太陽を霖之助は、これほど憎たらしいと思った事がない。
霖之助は今日、紅魔館にクーラーという外の世界のアイテムを持っていかなければならないのだが、不幸にも幻想郷で一番暑い日と後に呼ばれる日に持っていかなくてはならなくなったのだ。
暑い暑いなどと考えると余計に暑くなるという言葉があるが、それが本当なのかどうかさえ分からない。
(……)
霖之助が香霖堂を出て早1時間。
クーラーを荷車に乗せて引いているので楽なのは楽なのだが、どうも疲れるというより暑いという感情が先に出てくる。
幻想郷は今は夏である。何処かの向日葵をこよなく愛する妖怪は好きであろう夏。
一歩一歩大地を踏みしめ引いていくのだが、いかんせん魔法の森はとても険しい。
ちゃんとした道はあるのだが、それでも険しいのだ。
獣道みたいなものだ。
荷車を引きながら行けば、それ即ち重いリュックを持ちながら登山するのに等しい。
(……)
無駄な事を考えずに足を馬車馬の如く動かすことしかできない。
香霖堂を出た最初の頃は、霖之助は暑い暑い神様なんて嫌いだ、などと考えていたが今では無我の境地に達しかけている。
(……っん?)
前方に荒い道を走っている人影を見かけ霖之助は眉を細め前方を射抜くように見る。
「――あっ! 見つけました!」
華人服とチャイナドレスを足して二で割ったような淡い緑色を主体とした衣装。 髪は赤く腰まで伸ばしたストレートヘアーにしており、側頭部を編み上げてリボンを付けて垂らしている。
眼の色は青がかった灰色のような瞳
トレードマークは頭に被っている帽子、それに付いている星型の飾りには『龍』
「咲夜さんに迎えに行くように言われましたので迎えに来ましたっ!」
走っている女性……それは紅魔館の門番である紅美鈴その人であった。
霖之助は一瞬だけだが呆然としてしまう、が、直ぐに頭を降り思い浮かんだ言葉が……
(――助かった)
まさに天からの助けとはこの事を指すだろうと思えた。
今の霖之助にとって彼女は神様のような存在であった。
「お疲れのようですね。私にお任せください」
美鈴は霖之助に荷車に乗るように指示する。
何をするつもりなのだと、疑問に思ったが此処は従ったほうがよいであろうと思い、美鈴の指示のまま荷車に乗り重い腰を下ろす。
霖之助は1時間ぶりに腰を下ろせたので、勢い良くふぅーっと息をついた。
そして美鈴は荷車を取ってを持って。
「それじゃあ行きますよ~!」
そう言うと美鈴は霖之助とクーラーを載せた荷車を荒い道を進んでいく。
霖之助が押していたときよりも速いペースである。
頬に当たる風が気持ち良く、今はこの風を堪能するのも悪くないと霖之助は思えた。
「到着でーす!」
美鈴に押してもらって30分ほど経っただろうか。
目の前には眼が痛くなりそうなぐらい紅い館、紅魔館が目の前に広がっていた。
霖之助は荷車から降り立ち、美鈴に頭を下げて礼を言う
「すまない。本当に助かった」
「いえいえ、咲夜さんに言われたので、それに私って体を動かすのが好きですから」
美鈴は両手と目の前に突き出しブンブンと横に振る。
謙遜な態度である。が、しかしながらそれが美鈴の良いところである。
「そうか、しかし何時来ても此処は眼が悪くなりそうだ」
「慣れればどうって事はありませんよ。どうですか? お嬢様に取り入りますので、お嬢様に仕えてみたらどうですか?」
フフっと美鈴は笑いながら問いかけてくる。
「御免蒙るよ。僕は今の自分に満足しているからね」
霖之助も笑いながら答える。
美鈴はどうやら何を言うのか分かっていたらしい。
先ほどの答えで口元に手を当てて先ほどより大きく笑い出している。
「それで、このクーラーを何処に持っていけばいいのかな?」
霖之助は荷車に載っているクーラーをポンポンと叩きながらどうするのかと美鈴に聞く。
「――それなら私が運ぶので問題ありませんよ。店主さんは咲夜さんからお金を貰ってください。そろそろ来ると思いますので」
流石は紅魔館に長年門番していることだけあるのだろうか。
メイド長である十六夜咲夜があと少しで来ると言う事を自身満々に言った。
「そうそう、荷車は置いていってください。明日そちらに運んでおきますので」
「悪いね……どうだい? 僕の店の店員になるというのは?」
霖之助は笑いながら美鈴に問いかける。
「御免蒙ります。今の私に満足していますので」
美鈴も笑いながら答える。
お互い笑いながら同じような質問をして同じような答えで返す。
霖之助と美鈴は少しの間笑いあっていた。
「美鈴。何をしているの? 早く運びなさいな」
噂と言うものは人を呼び寄せる魔術のようなものなのだろうか。
咲夜は紅魔館の敷地内からゆっくりとした動作で歩いてきた。
美鈴の予想は当たっていたようだ。
「あ、咲夜さん! 分かりました。お嬢様の部屋に持っていけばいいんですね?」
「そうよ、任せたわ」
美鈴は荷車からクーラーを軽々と抱きかかえ、足を踏みしめ紅魔館の敷地内に入っていく。
霖之助はそんな美鈴に一つ言っておきたい言葉があった。
「――君なら大歓迎だ。荷車を明日僕の店に運んでくれるついでに寄っていくといい、今日の礼だ。一つだけ商品を無料にしよう」
美鈴は振り向くと笑いながら頭を下げた。
霖之助も美鈴からの返事が伝わったので大きく頷いた。
美鈴は頭を下げた後、紅魔館に入っていった。
紅魔館にクーラーを送り届けて次の日から、霖之助が経営する香霖堂に、常連客が1名追加されたのだった。
地下だから不要なのかもしれませんが。
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続きマダー?
ただ未完のような締め方というか、短くて少しあっさりしすぎな気がします
でも大好き