次の瞬間、おびただしい数の弾が慧音目掛けて降り注いできた。
不意を突かれた慧音だったが、弾速と弾密度、軌道を見極め避け切れないと判断すると素早く着弾地点の外へと逃げる。
「まだいたのか、宵闇の妖怪」
そう呟くと慧音は上空へ飛び上がり周囲を見回す。だがそこにあるのは先程までの弾幕が嘘のように静まり返っている夜の闇。
奇襲を仕掛けてくるつもりか、と周囲を警戒する慧音
ここで慧音の頭に一つの疑問が浮かぶ。さきほどの弾幕はいったい誰のものなのか、と。
先程の弾幕はルーミアの実力として考えることの出来ない弾幕だったのだ。
敵を狙う弾、逃げ道を塞ぐ弾さらにはダミー弾、高速弾と低速弾が織り交ぜられた弾幕であり、慧音の持つ知識の中でもかなり高度な部類に入る。
(この森にこんな強力な妖怪がいたとは…)
慧音は明日からの警備を真面目にしようと思ったのであった。
次の瞬間、背後から2本のレーザーが放たれる。
「!?」慧音は素早くそれが[ムーンライトレイ]だという事を理解した。そして見えない敵がルーミアであることも。
いや、理解した『つもり』だった。なぜならその閉じることの無いレーザーが閉じてきたのだから!
「なっ…!」
あわてて回避行動をとるが間に合わない。片方のレーザーを左腕に受ける。
迫り来る追撃弾を必死でかわすが明らかに動きが鈍くなっている慧音。腕に傷を負ったことよりも知識に無い攻撃を受けた事に動揺してしまったのだ。
すぐさま反撃に移ろうとするものの、そのたびに被弾し攻撃できない。すでにルーミアの反撃速度は尋常ではなくなっていた。
それは慧音が高速弾を打ち込もうと攻撃モーションに移った時、すでにルーミアの高速弾が目の前に迫ってきている。
もはや予知の領域、迂闊に攻撃すれば致命傷を受けかねない。
慧音は「詰み」に嵌ってしまったのだ。
際限なく繰り出される弾幕、左右から自分を撃ち落としに来るそれを紙一重のところで回避する慧音。
だが予測しきれない弾を食らってしまい、痛みと悔しさで顔をゆがめる。
本来、慧音は弾がどんな軌道をとり、どのタイミングで自分に当たるのかを経験したことのある弾幕に重ねることで予測するタイプなのだ。
それ故敵の攻撃を自分の反射神経のみで回避する「気合避け」は苦手としている。
しかし今宵の戦いは弾道を予測する暇が無い。向かってくる弾を只避ける、反撃したくても出来ない。先程までのルーミアとは明らかに桁が違う。
弾の嵐を避け続ける慧音は反撃の機会を待つ。すでに体中に被弾しているがそれでも待ち続ける。
慧音は一つの可能性に掛けていた。そのうちルーミアの体力は底を尽くのではないかという可能性に。
普段あれだけまったりとした弾幕しか張らないルーミアが、これほどまでに凶悪な弾幕を休み無く張り続けるのは無理がある
「エクストラ化かもしれない」自分の頭の中でようやく出た結論を呟く慧音。すでに全身傷だらけで体は悲鳴を上げている。
ルーミアの表情がかなり厳しくなってきていることを確認し、ひたすらガス欠を待つ。
余力の無いルーミアであれば自分の攻撃を当てることが出来るかもしれない。わずかな可能性に賭けることにした。
そんな状態が数分ほど続いた後、急にルーミアの弾幕が止まった。
「くそー、こうなったらこれで決めてやる~!」
呼吸を整えるルーミア、その一瞬の隙を慧音は見逃さなかった。
「食らえッ、[幻想郷伝説]!」
慧音が力を振り絞って放った弾幕スペルはとっておきの大技である。守りを固めつつ詠唱を終えていたのだ。
あっという間にルーミアの周囲をレーザーで取り囲み、弾を撃ち込んでゆく。
しかし今日のルーミアはいつもとは違う。
「無駄なのだー」
笑みを浮かべながら余裕たっぷりにレーザーをかいくぐり弾をかわし慧音を撃ち落とす――はずだった。
体が思ったように動かない。弾幕を長時間張り続けたことで体を動かせるエネルギーすら残っていなかったのだ。
「あ、あれ?」
眼前に迫るスペル、動かない体、結果は誰が見ても明らかだった。
慧音が目を覚ますと自分の家の中だった。
体には誰かが手当てをしてくれた形跡がある。ちょっと雑だが。
ぼんやりとした頭で昨夜の記憶を探り、昨日は自分の家まで帰れなかったことを思い出す。
気を失ったルーミアにリボンの封印を施し、その上に上白沢流封印(首まで土に埋める)を施したたところまでしか記憶が残っていない。
起き上がろう、と思ったが体が反応しない。それどころか悲鳴を上げる。
「……今日はお休みにしよう、あれだけ頑張ったんだからバチは当たらないはず」
そう言うと慧音は布団にもぐりこみ、二度目の寝息をかきはじめたのだった。
不意を突かれた慧音だったが、弾速と弾密度、軌道を見極め避け切れないと判断すると素早く着弾地点の外へと逃げる。
「まだいたのか、宵闇の妖怪」
そう呟くと慧音は上空へ飛び上がり周囲を見回す。だがそこにあるのは先程までの弾幕が嘘のように静まり返っている夜の闇。
奇襲を仕掛けてくるつもりか、と周囲を警戒する慧音
ここで慧音の頭に一つの疑問が浮かぶ。さきほどの弾幕はいったい誰のものなのか、と。
先程の弾幕はルーミアの実力として考えることの出来ない弾幕だったのだ。
敵を狙う弾、逃げ道を塞ぐ弾さらにはダミー弾、高速弾と低速弾が織り交ぜられた弾幕であり、慧音の持つ知識の中でもかなり高度な部類に入る。
(この森にこんな強力な妖怪がいたとは…)
慧音は明日からの警備を真面目にしようと思ったのであった。
次の瞬間、背後から2本のレーザーが放たれる。
「!?」慧音は素早くそれが[ムーンライトレイ]だという事を理解した。そして見えない敵がルーミアであることも。
いや、理解した『つもり』だった。なぜならその閉じることの無いレーザーが閉じてきたのだから!
「なっ…!」
あわてて回避行動をとるが間に合わない。片方のレーザーを左腕に受ける。
迫り来る追撃弾を必死でかわすが明らかに動きが鈍くなっている慧音。腕に傷を負ったことよりも知識に無い攻撃を受けた事に動揺してしまったのだ。
すぐさま反撃に移ろうとするものの、そのたびに被弾し攻撃できない。すでにルーミアの反撃速度は尋常ではなくなっていた。
それは慧音が高速弾を打ち込もうと攻撃モーションに移った時、すでにルーミアの高速弾が目の前に迫ってきている。
もはや予知の領域、迂闊に攻撃すれば致命傷を受けかねない。
慧音は「詰み」に嵌ってしまったのだ。
際限なく繰り出される弾幕、左右から自分を撃ち落としに来るそれを紙一重のところで回避する慧音。
だが予測しきれない弾を食らってしまい、痛みと悔しさで顔をゆがめる。
本来、慧音は弾がどんな軌道をとり、どのタイミングで自分に当たるのかを経験したことのある弾幕に重ねることで予測するタイプなのだ。
それ故敵の攻撃を自分の反射神経のみで回避する「気合避け」は苦手としている。
しかし今宵の戦いは弾道を予測する暇が無い。向かってくる弾を只避ける、反撃したくても出来ない。先程までのルーミアとは明らかに桁が違う。
弾の嵐を避け続ける慧音は反撃の機会を待つ。すでに体中に被弾しているがそれでも待ち続ける。
慧音は一つの可能性に掛けていた。そのうちルーミアの体力は底を尽くのではないかという可能性に。
普段あれだけまったりとした弾幕しか張らないルーミアが、これほどまでに凶悪な弾幕を休み無く張り続けるのは無理がある
「エクストラ化かもしれない」自分の頭の中でようやく出た結論を呟く慧音。すでに全身傷だらけで体は悲鳴を上げている。
ルーミアの表情がかなり厳しくなってきていることを確認し、ひたすらガス欠を待つ。
余力の無いルーミアであれば自分の攻撃を当てることが出来るかもしれない。わずかな可能性に賭けることにした。
そんな状態が数分ほど続いた後、急にルーミアの弾幕が止まった。
「くそー、こうなったらこれで決めてやる~!」
呼吸を整えるルーミア、その一瞬の隙を慧音は見逃さなかった。
「食らえッ、[幻想郷伝説]!」
慧音が力を振り絞って放った弾幕スペルはとっておきの大技である。守りを固めつつ詠唱を終えていたのだ。
あっという間にルーミアの周囲をレーザーで取り囲み、弾を撃ち込んでゆく。
しかし今日のルーミアはいつもとは違う。
「無駄なのだー」
笑みを浮かべながら余裕たっぷりにレーザーをかいくぐり弾をかわし慧音を撃ち落とす――はずだった。
体が思ったように動かない。弾幕を長時間張り続けたことで体を動かせるエネルギーすら残っていなかったのだ。
「あ、あれ?」
眼前に迫るスペル、動かない体、結果は誰が見ても明らかだった。
慧音が目を覚ますと自分の家の中だった。
体には誰かが手当てをしてくれた形跡がある。ちょっと雑だが。
ぼんやりとした頭で昨夜の記憶を探り、昨日は自分の家まで帰れなかったことを思い出す。
気を失ったルーミアにリボンの封印を施し、その上に上白沢流封印(首まで土に埋める)を施したたところまでしか記憶が残っていない。
起き上がろう、と思ったが体が反応しない。それどころか悲鳴を上げる。
「……今日はお休みにしよう、あれだけ頑張ったんだからバチは当たらないはず」
そう言うと慧音は布団にもぐりこみ、二度目の寝息をかきはじめたのだった。
ひでぇや