まだ日が半分と昇らない頃だろうか。
季節は冬。
人里から見渡す幻想郷は何処も白く雪に包まれている。
今年は例年に比べて積雪や寒さも若干弱く、今日の様に陽の姿が完全に確認出来る日も少なくはなかった。
人間の里もその陽の光に誘われるかの様に外に出る人の数が目に見えて多かった。
そんな人間の里の中を、一つの人影が歩いていた。
背の丈は15.6程度の少年くらいだろうか、白基調の着物と、同じく白の布の様なモノで顔を隠すかの様にしながら、けれど時折そっと周りを見回すかの様に視線を左右に向けながら里の中へと歩いていた。
体付きと僅かに見える顔立ちから、辛うじてその人影は女性であるという事は分かった。
その様子を他の人間達はちらりと視線を向けはするものの、特に気にする事もなく歩き出したり、会話を再開したりしていた。
暫く歩いていた彼女の耳に、複数の子供の声の様なモノが聞こえてきた。
見れば丁度すぐ傍の建物の中で、子供達が机に向かって何やら書き物をしているようだ。
建物の入り口には"寺子屋"と書かれた看板が下げられており、その看板を見ている間にもまた二人の子供が中へと入っていった。
「こらっ!遅刻だぞお前達!」
と、建物の中から女性の声が聞こえてきた。
もう一度傍の窓から覗いてみると、どうやらさっきの子供達が女性に怒られているようだった。
怒っている女性は子供達の先生のようだ。
さっきの言葉を聞く限り、子供達は時間に遅れてしまったのだろう。
叱られた二人は「ごめんなさい」と言うと、先生は「よし、じゃあ続けるからお前達も座りなさい」と部屋の中にある黒い板の様なモノの前に戻った。
「じゃあ……ん?」
何かを察知したかの様にこちらを見た先生とばちりと目が合ってしまう、これはいけない。
彼女は窓から首を引っ込めると、足早にその場を去ろうとした。
その様子に先生も後を追おうとするのだが、「せんせー、はやくやろうよー!」と生徒の言われてしまい、仕方ない、とまた元いた場所に戻っていった。
次に彼女がいたのは人間の里から少し離れたところにある一軒のお店だった。
名を「香霖堂」
外の世界の道具等を売っているらしいのだが、使用方法が分からなかったり興味がない人が多かったりとあまり客足はないようだ。
彼女自身、興味があったわけではないのだが、他に建物があるわけでもないので取りあえず中に入ってみる事にした。
からんころん、と来客を示す音が響く。
店内は割としっかり清掃がされているらしく、ゴミの様なモノは落ちていない。
並んである商品の中には黒ずんでいるものもあったが、これは恐らく元からなのだろう。
にしても、人が入ってきたというのに奥からは誰一人として出てくる様子がなかった。
留守にしているのだろうか?それにしては不用心だ、と彼女は思った。
しかしせっかくなので、彼女は店内を少し見てみる事にした。
少しは面白いモノもあるだろう、そう思って彼女は一人、宝探しを始めた。
――――
一体どれほどの時間が経っていたのだろうか。
宝探しに夢中になっていた彼女がふと外を見ると、既に陽は沈みかけていた。
時間にして2.3時間と言ったところだろうか、随分と遊んでしまったみたいだ。
それにしても此処の店主はいったい何処にいっているのだろうか?
そう考えた矢先、からんころん、と扉の鐘がなった。
入ってきた人物は、身長はかなり高く、けれど少しひょろりとした男性だった。
彼は彼女の存在に気付くと、「おや、今日は店は閉めていたんだが……看板をかけ忘れたかな?」と、言いながら店の奥へと向かっていく。
「まぁせっかくのお客様だ、じっくり品定めしていってくれ」
それだけ言うと、彼は店の奥、恐らく居住空間となっている場所へ行ってしまった。
品定めも何も、既に店内はあらかた見た後なんだけれど……
彼女はそう思った。
「あぁ、お茶でも飲むかいって……あれ?」
再び彼が店の方へと戻ってきた時、既に彼女の姿はなかった。
「出て行った様な音は聞こえなかったんだけどな」等と考えている彼が、店の中から一つだけ商品が無くなっている事に
気付くのはもう少し後の事だった。
最後に彼女が訪れたのは、石階段を登ったところにある神社、博麗神社だった。
香霖堂から博麗神社は少し距離があった、その為彼女が着く頃には辺りは既に真っ暗な闇に包まれていた。
いつもなら此処には絶対と言って良いほど近づく事はない。
何故ならそれは――
「こんな時間に何の用かしら?」
物音一つなかった空間に、突如として人の声が響く。
振り返ればそこにはこの神社の巫女がいた。
この寒い冬の夜に脇の開いた巫女服といういつもの格好だ。
「季節はずれのお月見よ、悪いかしら?」
口を少しつり上げ、笑みを表す。月が照らす彼女のその様子は、どことなく幻想的に思えた。
「人の神社で良いも悪いもないわね」
彼女の返答に、巫女は呆れたようにため息をつきながら彼女に近づいていく。
そんな巫女を尻目に、彼女は頭上に輝く月を見上げた。
その拍子に、彼女が頭を纏っていた布が落ち、白い髪と白い肌が顕わになる。
「で、一体どういう目的で人里に降りてきたのかしら?黒幕さん?」
巫女が彼女――レティ・ホワイトロックに尋ねる。
レティは「何の事かしら?」と笑って答えてみせた。
「とぼけないで、目撃者もいるのよ」
その巫女の言葉に、「なんだ、やっぱり気付かれてたのね」とレティは思った。
少しの沈黙、そしてレティは口を開いた。
「別にどうって理由はないわ、ただ毎年同じように雪を降らせるだけじゃ飽いてしまうでしょう?私の妖怪としての存在意義は確かにその程度かもしれないけれど、ただそれだけじゃ酷く私の存在がちっぽけに見えるじゃない」
レティの話しを、巫女は何も言わずただ黙って聞いていた。
その巫女をちらりと見て、レティは話しを続けた。
「だから私は探したわ、もっと有意義な私の存在意義を。もっとも、見つからなかったけれどね」
再び、沈黙が訪れた。
先ほどよりも長く、けれど実際はほんの少しの時間の沈黙。
それを破ったのも、レティだった。
「……なんてね、嘘よ。ただの気まぐれだわ」
クスクス、と笑ってレティは少しだけ、神社の方へと向かい、巫女の横を通り過ぎる。
「飽いていたのは本当、けれど私の存在意義にそれ以上のモノは無いわ。私自身そう思っているし、それでいいと思っているもの」
こつん、と履き物で地面を叩く。
そうしてから気付いたが、此処には雪が積もっていないところもあるようだった。
そして三度目の沈黙……それを破ったのは巫女の方だった。
「ま、里の人間に危害を加えないのであれば何もしないわ、別に退治しろと言われた訳でもないしね」
はぁ、とため息をつきながら歩き、賽銭箱の隣へと腰掛ける。
「私から言えるのはこれだけよ、存在意義ってのは探すモノじゃないわ、自分で作るモノよ」
巫女の言葉に、レティはキョトンとした様子で巫女を見つめた。
巫女はと言うと、何らしくない事言ってるんだか、と顔を押さえていた。その様子はまるで白黒の魔法使いのようだ。
その様子にレティは、フッと口を緩めて、「そうかもしれないわね」と答えて賽銭箱を挟んで霊夢の隣へと腰掛けた。
――――
暫くの間、二人は頭上の月をずっと眺めていた。
言葉を交わす事もなく、ただ静かに。
「……そろそろ行くわ、遅くまで邪魔したわね」
そう言ってレティは、スッと腰を上げた。
「あぁ、後これ、香霖堂の店主に返しておいてもらえる?」
レティが取り出したのは小さな氷の結晶のキーホルダーだ。
香霖堂を出る際、手に持っていたモノをうっかり持ってきてしまったのだ。
「……えぇ、渡しておくわ」
巫女はそれを受け取ると、自分の隣にそっと置いた。
「……それじゃ」
「泊まっていけば?」
レティの言葉を遮って、巫女は突然そんな事を言い出した。
レティは一瞬呆気にとられたが、苦笑して、
「遠慮しておくわ、寝ている間に退治でもされたら困るもの」
と返した。
「そう」と巫女は素っ気ない受け方をすると「それじゃあね」と言って神社の中へと姿を消していった。
レティはその姿を見送って、そっとその場から飛び立った。
「……ありがとう」
そう、微かな声で礼を残して。
作者様ご本人が後書きで触れていますが、確かにちょっと散漫な印象を受けたかな?
でもこれはこれでアリだとも思うのですよ。
なによりちょっとこいしちゃん成分の入ったレティが妙に可愛らしい。
もっときまぐれを起こして、あちこちウロウロして欲しかった位です。
これがスタート。頑張って、でも肩の力を抜いてこれからも物語を創作なさって下さい。
まあたまには自分探しとかやってみたくなるときもある。
悩めるレティさんと巫女の会話がいい雰囲気出してました。
冬ぐらいは人肌恋しくもなったんだろうか。
ともあれ今後に期待。
長さに関してはもっとあっていいと思います。
何処が駄目なのか、といわれますと判断に困る程度なのですが、
どうにも読みにくい印象を受けます。
多分、次のような点が妙であるかと思われます。
まず、作者様も気づいているようですが、
説明的な文章が多く、テンポを悪くしていると思います。
次に、文章の書き方がごちゃごちゃしている印象を受けます。
倒置的表現などが多すぎるのではないでしょうか。
また、地の文が時々ぶつ切りな印象を受けます。
視点が神の視点と三人称一元描写で切り替わっても文体が変わらない点が問題なのでしょうかね。
私も素人ですのであまり参考にはならないと思いますが記述させていただきました。
初投稿お疲れ様でした。次も頑張ってください。