ガラッ
「いらっしゃいませー。」
人間の里にある貸し本屋、鈴奈庵である。店である以上お客が来るのは当然だが今日はいつもと違った。
「お迎えにあがりました。」
「ええ・・・はい?」
そこにいたのはメイド服に身を包んだ少女だった。そして自分を迎えに来たという。状況を飲み込めない子鈴にメイドが口を開く。
「ちょっと来てもらえるかしら。」
「あの、でもお店が・・・」
「こんな店で一日店番するよりも稼げますよ。」
「え、ちょ・・・あ~れ~」
半ば連れ去られるように店を出て行った子鈴だったがこれが事件の発端になるとはだれも思わなかった。
「紅魔館に行ってきたんだって?」
「はい」
「何してきたの?」
「えーっと・・・書庫みたいな所に通されて、そこにいた人に本をたくさん渡されて音読してくれって・・・」
「私が読んだ文をその人。パチュリーさんっていうんですけど・・・その人が紙に写してました。」
咲夜に紅魔館に招待された数日後、薄暗い鈴奈庵の中はかしましい声が響いていた。
「それでどうなったんだ?」
「10冊くらい読んだ後、疲れただろうから帰っていいって言われたので咲夜さんという方からお金とおかしを貰って帰りました。」
「ふーん、要するに翻訳の仕事ね。」
「パチュリーも役に立つのが見つかったって思ってるんだろうな。」
「でも子鈴は普通の人間なんだから、もうあんなところにもう行っちゃだめよ。」
「でもお茶とかおかし出してくれましたよ。」
「あのねぇ・・・それが罠だったり吸血鬼の妹に見つかって芥子粒になりでもしたら私が悲しいじゃない。いい、もう行っちゃだめよ!」
「わかりました・・・」
「あの狸といい、子鈴を利用しようとする連中がいるのはゆゆしき問題ね。」
「狸って?」
「ああ、子鈴は知らなくてもいいのよ。」
「?」
「ははは、それは変わった事だな、幻想郷じゃ本を扱う所も少ないし、変わった客も来るだろ?」
「最近は山の神様やお寺の方も良く来ますね。」
「へぇ、どんなお借りて行くの?」
「お勧めを聞いてそれを借りる感じですね、最近はお得意様ですよ。」
「新しい客層が出来ていいじゃないか、妖怪は年とらないから一生ものだぞ。」
「そうですね。」
何気ない日常、しかしこの瞬間も何かがうごめいていた。
同日、紅魔館
「パチュリー様、何をなさっているのですか?」
普段から本に置かれたハンカチのように図書館に埋もれて本を読んでいる事が多いパチュリーだが今回は机に向かって何やら書き物をしていた。
「あの子の音読文と原文を照らし合わせて文字の解読しているのよ。」
「あの貸本屋の子ですか?」
「咲夜、教えてくれてありがとね、おかげで進まなかった研究が進みそうよ。」
「それはよかったです。あの本ってどんな内容だったんですか?」
「魔術書は一冊だけで後は料理本に出納長に夢の国の歩き方、船の設計図ね。」
「魔術書や夢の国はともかく後は残念でしたね。」
「そうでもないわ。」
いつも不機嫌な顔をしているが作業がはかどったからなのかうっすら笑みを浮かべているように見える。
「あら、その指どうしたんですか?」
咲夜がパチュリーの指の細いカサブタがあるのに気付く。言われて初めて気がついたのかパチュリーが傷を見る。
「ページでちょっと切ったみたいね。」
「無理はなさらないでくださいね。」
「自分のことは自分で分かってるわよ、今日だってこれで寝るつもりで・・・」
ばたん
「パチュリー様?パチュリー様!」
パチュリーは自分が倒れたのだと自覚する間もなく意識が遠のいていった。
「あら、子鈴じゃない、神社に来るなんて珍しい。」
それから数日が経ち普段は霊夢の方から菘庵に訪れる事が多いが今日は珍しく子鈴の方から博麗神社を訪ねていた。
「えへへ、実は珍しい本が入ったので霊夢さんに見せようと思って。」
「押しつけに貸し本代は払わないわよ。」
「最近お世話になる事が多いのでタダですよ。」
「まったく・・・あなたもほどほどほどにしときなさいよ。」
そう言って最近の妖書本絡みの事件を思い出す。
「でも霊夢さんはいつも助けてくれるじゃないですかー」
「事件の原因を自覚してる?まぁいいわ、ここまで疲れたでしょう、お茶でも飲んできなさい。」
「あ、ありがとうございます。」
しばらく談笑した後、霊夢は暗くなると危ないからと子鈴を帰らせた。
その夜、霊夢は子鈴が持ってきた本を読んでいた。
「意外に面白いわね・・・でもランプももったいないしそろそろ寝ようかな。」
そろそろ寝ようとランプに手を伸ばした時。
「痛っ・・・」
指に痛みが走った。霊夢が親見ると傷口に沿って血がにじむのが見える。拭く物を取ろうとした時指を本に押し付けてしまった。
「いけない」
本に血の跡が付いてしまった、文には触れていないが少し目立つ。
「うーん・・・明日返す時謝らなくちゃ・・・」
次の日、霊夢は本を返すためスズナ庵を訪れていた
「いらっしゃい、霊夢さん」
「本返しに来たわよ、ごめん、ちょっと汚しちゃったわ」
「どうしたんですか。」
「夜に見てたら、指切っちゃって本に血がついちゃった。」
「ちょっと見せてもらえますか?」
「ええ、ここよ・・・あれ?」
霊夢が示したページには何の痕跡もなかった。
「おかしいわね」
パラパラと他のページも見るが異常はない
「なにもないならいいじゃないですか。」
「暗い時に見たのなら何か見間違えたのかもしれません。」
「そうかなぁ。」
「そうですよ。」
あっはっはと和やかに終わった今日、その次の日
神社に遊びに来た魔理沙が倒れている霊夢を発見した。
「霊夢、体調はどうだ?」
「ダメね、二日くらいたったけどろくに体力が戻らないわ。」
「霊夢もか。」
「私もって・・・他に倒れた人いるの?」
「ああパチュリーに聖それに早苗も倒れたらしい。」
「・・・何か起きてる?」
「正直みんな何が起きてるか分かってない。でもお寺の連中は殺気立ってるし諏訪子にも会ったがアレはいけない、祟る目だ。」
「・・・あいつらに喧嘩を売るなんてよほどの考えなしか強いかね。」
「私は子鈴が怪しいと思う。」
「ちょっと、どうして子鈴が怪しいのよ。」
「話を聞くとみんな鈴奈庵で本を借りた後倒れてるんだ。怪しまない方がおかしいさ、霊夢、お前もそうなんじゃないのか?」
「・・・」
子鈴の持ってきた本で夜、指を切った事を思い出す。
「鈴奈庵自体はどうなの?」
「悪いが最近行ってない、研究が忙しくてな。」
「しかしこの事に連中が気付くとあいつら単細胞だからな、襲撃するかもしれん、この後様子を見に行くつもりなんだ。」
「私も行く・・・」
霊夢は布団をはねのけようとするが力が入らない。
「場合によっては子鈴たちを隠れさせるかもしれないが大丈夫だよ。霊夢はさっさと体直せばいい。」
「気をつけなさいよ。」
「ああ。」
「パッチェ、具合はどう?」
紅魔館のパチェリーの私室、広い室内だがドアと机とベットに続く道以外は本に埋め尽くされている、本人以外は入らないこの場所に久々に2人以上が足を踏み入れていた。
パチュリーのベットの脇に備え付けられた椅子に座りレミリアがパチェリーを見舞っている。
「それどころじゃないわ。」
ベットに横になっているパチェリーは普段から悪い顔色を更に悪くさせている。
「前に女の子に本を読んでもらったでしょう?」
「ああ、本屋の子だっけ?」
「その子の読んだ文に召喚の呪文があったの・・・」
「・・・ふーん、それで私に何をさせたいの?」
「あの子の様子を見てきてほしいの・・・」
「このまま行って何もなかったら無駄骨ね。」
「確証はないわ、でも私の状況もそうだし最近巫女が倒れたそうじゃない・・・何かが起きてる。」
「しょうがないわね、友人の頼みを聞くくらい造作もない事よ。」
「・・・ありがと。」
「どういたしまして。」
「パチュリー様どうでしたか?」
「咲夜、フランはどうしてる?」
「え、地下でホブゴブリンで遊んでなさいましたよ。」
「連れてきて、咲夜も来なさい。」
「?どこへいかれるのですか?」
「鈴奈庵っていうとこ。」
「子鈴、いるかー?」
夕方、普段から人のいない鈴奈庵だが今日はいつも以上に静寂に包まれていた。
いつもは客がいなくても店内で何らかの作業をしているがその音も聞こえない。
「いない・・・か。」
店内を見回りいつも子鈴が座っている机を見るとレコード台の隣りに「日記」と書かれた本が置いてあった。
「そう言えばあいつ新年から日記つけてるとか言ってたな。」
何の気なしに日記を手に取りパラパラとめくる、内容は三日坊主の典型のようなとびとびの日記だがある日を境に毎日つけられている。
朝起きたら机の上に変なものがいた、本に封印されていた妖怪らしい、紅魔館でお手伝いをしたときに私が呪文を唱えたから復活できたそうだ。
お礼にとお金が埋まってる場所を教えてくれた、明日霊夢さんに見せて封印してもらおう。
魔理沙は子鈴が霊夢にこんな妖怪を見せたという覚えはない、あるなら話題に出るはずだからだ。
それから日記が進むとだんだんおかしくなっていく。
名前を聞いたらほんでいいと言ってた変な名前
教えてもらった通りににわとりで儀式をする、本当に雨が降った。
血を洗うのが大変だった。おこずかいがなくなってしまったしもうできないかな。
(確かその日は雨が降った)
お母さんを呼ぶためには霊力の高い人が必要らしい、霊夢さんの事を離したら喜んでくれた、霊夢さんは力をかしてなんてしてくれないといったらまかせておけといってくれた。
明日、新しい本が入ったから霊夢さんに見せに行こう。庭に埋めた肉がくさり始めたのか最近くさい、ばれる前にごみをもやすついでに焼いてしまおう、たべればよかったかな。
(日付の次の日に霊夢が倒れた・・・)
霊夢さんがたおれたらしい、大丈夫かな。でもお母さんが出てくるために必要な事だから仕方ないといってくれた、最近頭がぼうっとするかぜかなと言ったら薬の作り方を教えてくれた、あした試してみよう。
そして昨日の日付
準備がすべて整ったお母さんが来れば世の中は楽しくなるらしい教えてもらった薬を飲むよりも楽しくなるのだろうか、生臭いちト臓物のにおいこの子は良くやっているはなんだかおいしくなってきたの最近日記を書く事がたのしく感じて読み返すと今までとこれからの私が変わるのが追体験できるよう霊力の高いものを見つけるのが骨だったが子鈴の顔が広くて助かった負けるわけはないが面倒なことになりそうだないふできったじぶんのちよりもれいむさんのちがのみたいっとおもうのはけんぜんなんだとほんはいったあたたかいちを飲んだ時、れいむさんおにくをかんだときどんな世界が広がるのだろう扉を開く日はもうすぐ、忌々しいスキマも含めて何人かが感づいているかもしれない、早く済ませてしまおう。みんなみてておみせもまりささんもおとうさんもおかあさんももれいむさんもほかのにとたちもせんせいもまみさんもおかあさんがくればしあわせになれるわたしはとってもたのしいです。
「・・・なんだ・・・これは・・・!」
狂気にまみれた日記それを見ていた時急に背中に視線を感じた。
「!!?」
後ろを振り向くが誰もいない。
「いらっしゃいませー」
「!」
首を戻すと子鈴が目の前にいた、数日前と変わらない姿。しかし魔理沙には全てが異様に見えた。
「だめですよー魔理沙さん、人の日記は見ちゃだめです。」
日記を胸に抱きとめる子鈴はいつもの晴れるような笑顔だが
その目は沼のように濁っていた。
「うわあああ!!」
魔理沙は慌てて後ろに下がりはっけ炉を構えるが撃っていいのかどの程度手加減すればいいのかが頭をよぎる、その逡巡に子鈴が手を伸ばし魔理沙を押し倒す
「っ痛っ!」
後ろの本棚に倒れ込み硬い背表紙の角に頭を打つ。痛みで逸らした目を前に向けると魔理沙の胸に乗っかるようにしている子鈴が見えた。右手が視界の外にあったのでそこに目を向けると、小さいナイフが光っていた。
「!っ」
魔理沙がナイフを突きたてようとした子鈴を手で思い切り払いのけた、手に痛みが走り、本棚に子鈴が叩きつけられる。
確認しようと立とうとした魔理沙がひどい虚脱感に襲われる。
「え・・・あ・・・?」
(魔力が、ほとんどない・・・?)
手の甲には切ったような傷が付いていた。
(さっき当たってたのか・・・魔力がごっそり持ってかれた・・・?)
「うぐぅ・・・」
相手のルールがわからない上この状況はまずいと思いとにかく逃げようとしたが全身がうまく動かない。
「魔理沙さん虫みたいですよ。」
ズリズリと店の玄関を目指すが、子鈴がすたすたと歩き魔理沙の目の前に立つ。
「霊夢さんの前に魔理沙さんでもいいかな。」
抑揚のない声でそうつぶやくと魔理沙に向かってナイフを振り上げた。
(あ・・・死んだ・・・)
そう覚悟した瞬間
ガキン
金属音が響く
いつの間にか魔理沙と子鈴の間に赤い槍が割り込まれていた。赤い槍、魔理沙はこれに覚えがあった。
「レミ・・・リア・・・?」
「逃げようと這いつくばってるなんてまるで蟲ね、潰してもいいかしら?」
「・・・良く言うぜ・・・」
子鈴は怪訝な顔をしナイフを戻そうとするが戻らない、レミリアが槍を巧みに操り子鈴のナイフを刃先で押している、ナイフを引こうとすれば引き、押せばそのまま押す、高等な技術だが巨大な槍と果物ナイフで行っているのは滑稽に見える。そしてその奇妙な均衡はあっさりと崩れた。レミリアが槍を動かし槍の腹を子鈴の横につけるとブンっと投げ飛ばす。
「でも今日の私は心優しいの、這いつくばる蟲にも慈悲をあげるわ、咲夜。」
「はいお嬢様。」
魔理沙の横にメイド服の少女が現れる。そして魔理沙を抱き起こすと壁にもたれるように置く。
「すまん・・・」
「今回は何?お嬢様の話を聞いてもわけがわからないんだけど。」
「私もよくわからないんだ。」
「まぁそれも終わりみたいね。」
咲夜がレミリアに目を向けると決着はついたようだった、片手で子鈴をぶら下げて壁に押し付けている、そして。
「くあっ」
レミリアは子鈴の喉元に歯を突き立てた。
「んっ・・・ちゅ・・・」
子鈴はしばらく手足をばたつかせて抵抗したが次第に静かになりパタリ動かなくなった。
「お嬢様これを。」
咲夜が駆け寄り、レミリアが差し出された布に口をつけると
「ありがと」
レミリアが布をぬぐう。白い布が赤く染まる。
「レミリア、お前なんて事を・・・」
「血を吸って落としただけよ、吸血鬼になんかしてないわ。」
「咲夜にやらせたら手足の腱を切ってただろうしね、穏便でしょ。」
確かに咲夜はともかく吸血鬼の力で殴られたら子鈴はひとたまりもないだろう。レミリア自体は子鈴をこれ以上どうにかする意思がないようだったので魔理沙は安堵の表情を浮かべる。
「早く子鈴にも手当をしないと・・・。」
首筋の噛み跡から流れた血が服を赤黒く染めて行く、このまま放置すれば命にかかわるかもしれない。
「だめよ。」
その時、子鈴の体から黒い靄のようなものが染み出て形を作り始める。
「ほら、出てきた。」
「何だこいつは・・・」
「さぁ、黒幕じゃない?黒靄かも。」
「そんなこと言ってる場合じゃないだろ。」
「フラーン、あれなら遊んでいいわよ。」
「はーい」
その瞬間黒い靄が砕け散った。
「お姉さま、壊れちゃった。」
魔理沙が声が聞こえた方を見るとそこにはレミリアの妹、フランドールが立っていた。異形の羽についた宝玉が薄く輝き小脇に大きなカエルが抱えられている。
「・・・フラン、その手に持ってるものは何?」
「お外で待たされてる時に見つけたの、かわいいでしょ。」
「ばっちいから戻してきなさい。」
「えーでも・・・きゃ」
会話中、咲夜がフランの手を引き店内に引き寄せる。
次の瞬間フランのいた道に巨大な穴が開いた。
「えっ」
店の玄関を吹き飛ばしていつの間にか砕けた靄は再び一つになり店外に逃げて行った。
「あいつ逃げたぞ。」
「ああ、そうね。」
「追わないのか?」
「フランは行くだろうし私は後でいいわ。」
フランは咲夜に埃を払われながら黒い靄が出て行ったほうを見つめる。
「♪」
咲夜を手で払うと猛スピードで黒い靄を追いかける。
「破壊じゃ死なないのかな・・・じゃあ死にたくなるまで刻んであげようっと♪」
「子鈴を医者に見せないと・・・」
「怪我なら咲夜が何とかするし美鈴が医者を呼んでくるから落ち着きなさい。」
「意外と用意がいいな。」
「パチェのお気に入りだからね、医者が来たら私もあっちに行くわ。」
「フラン様だけ先に行かせてよかったので?」
「止めても聞く子じゃないし。フランが負けるなんてありえない、心配なのはあの黒い靄の方ね。」
「?・・・なんでだ?」
「ここで死んでおけばよかったのに。」
そう言ってレミリアがいつのまにか店内をのぞき込んでいたネズミを睨む。
ネズミはすぐに逃げ、しばらくすると遠くで爆音が響いた。
猛スピードで空をかけながら黒い靄の思考は焦りに満ちていた
(くそっなんでこんな目に)
(もうすぐ呼び出せたのに)
ぐるぐると思考が廻る中で次の衝撃が黒い靄を襲う。
黒い靄を取り囲むように地面が隆起し、道をふさぐと次の瞬間後ろから光線が放たれた。
さっきの奴が追いついたのかと思い後ろに意識を向けるが違う。
自分が取り囲まれていると分かったのは無数の攻撃が降り注いだからだ
巨大な錨と拳が、無数の石の蛇と巨大な柱が、そしてまるで昼のように輝く無数の光弾
が一点に降り注いだ。
「結局あの後どうなったんだ?」
「みんなで袋叩きにして消し飛ばしたらしいわ。」
「うへぇ。」
「フランも喜んでたわよ、久々にめいっぱい暴れられたから。」
あの事件から数日後、博麗神社でレミリアを交えたお茶会が開催されていた。
「結局そいつが何をしたかったのか、何を呼び出そうとしたのかは分からずじまい、浅学な妖怪や泥くさい神にとっては報復の方が重要みたいだからしょうがないわね。」
「要するに、子鈴が読んだ呪文でそいつが現れて何かを呼び出そうとしてたと。」
「そうらしいわ、その本には「呼びだしたるもの」の召喚方法しか書いてなかったらしいし。」
「呼びだせる奴を呼び出す呪文?まどろっこしいわね。」
「パチェは罠と言ってたわ。」
「罠?」
「つまりその本を作ったのはあの黒い靄でこうしないとこの世界にこれないんじゃないかって、世界からつまはじきにされた哀れな奴がこの世界に残した精一杯の罠、でも書かれた文字もわかる人がいない、いずれ本も消えて何もできなくなるはずだった。」
「それを私が読んだから出てきたと。」
そう子鈴が言う、首筋の包帯が痛々しい。
「気に病むことはないわ、私は面白かったし。」
「あんたが言うセリフじゃないわね、元凶はあなた達よ、どう落とし前付ける気?」
「怪我をした人間の治療費や店の修理代はうちが出したわよ。」
「そうレミリアさん達を責めないでください、私が悪いんですから。」
「子鈴も少し反省してよね。」
「はーい・・・」
子鈴はしょぼんとうなだれながら神社を出て行った。
「子鈴帰っちゃったぞ、いいのか霊夢。」
咲夜の煎れた紅茶に砂糖を入れながら霊夢が答える
「ひねくれものが殊勝な事でいいじゃない。」
「?」
「危険な事に巻き込むなら許さないけどね。」
神社からの帰り道、階段の下で子鈴は知った顔に出会った。ふわりとした服の魔女。
「あ、あの」
「パチェリーよ。」
「あの、パチェリーさん、あの・・・すみません・・・」
「いいのよ、私が悪いんだし。子鈴、あなた魔術とかに興味ない?」
「え?」
「ほら、知識ないと今回みたいな事が起きるでしょ、危険だからと遠ざかるよりももっとその力を活かしたいと思わない?」
「ほら、また翻訳頼みたいし・・・ダメ?」
「はい!私からもお願いします。」
子鈴はぺこりと頭を下げる
「ありがとう、あと・・・ごめんね・・・」
「いらっしゃいませー。」
人間の里にある貸し本屋、鈴奈庵である。店である以上お客が来るのは当然だが今日はいつもと違った。
「お迎えにあがりました。」
「ええ・・・はい?」
そこにいたのはメイド服に身を包んだ少女だった。そして自分を迎えに来たという。状況を飲み込めない子鈴にメイドが口を開く。
「ちょっと来てもらえるかしら。」
「あの、でもお店が・・・」
「こんな店で一日店番するよりも稼げますよ。」
「え、ちょ・・・あ~れ~」
半ば連れ去られるように店を出て行った子鈴だったがこれが事件の発端になるとはだれも思わなかった。
「紅魔館に行ってきたんだって?」
「はい」
「何してきたの?」
「えーっと・・・書庫みたいな所に通されて、そこにいた人に本をたくさん渡されて音読してくれって・・・」
「私が読んだ文をその人。パチュリーさんっていうんですけど・・・その人が紙に写してました。」
咲夜に紅魔館に招待された数日後、薄暗い鈴奈庵の中はかしましい声が響いていた。
「それでどうなったんだ?」
「10冊くらい読んだ後、疲れただろうから帰っていいって言われたので咲夜さんという方からお金とおかしを貰って帰りました。」
「ふーん、要するに翻訳の仕事ね。」
「パチュリーも役に立つのが見つかったって思ってるんだろうな。」
「でも子鈴は普通の人間なんだから、もうあんなところにもう行っちゃだめよ。」
「でもお茶とかおかし出してくれましたよ。」
「あのねぇ・・・それが罠だったり吸血鬼の妹に見つかって芥子粒になりでもしたら私が悲しいじゃない。いい、もう行っちゃだめよ!」
「わかりました・・・」
「あの狸といい、子鈴を利用しようとする連中がいるのはゆゆしき問題ね。」
「狸って?」
「ああ、子鈴は知らなくてもいいのよ。」
「?」
「ははは、それは変わった事だな、幻想郷じゃ本を扱う所も少ないし、変わった客も来るだろ?」
「最近は山の神様やお寺の方も良く来ますね。」
「へぇ、どんなお借りて行くの?」
「お勧めを聞いてそれを借りる感じですね、最近はお得意様ですよ。」
「新しい客層が出来ていいじゃないか、妖怪は年とらないから一生ものだぞ。」
「そうですね。」
何気ない日常、しかしこの瞬間も何かがうごめいていた。
同日、紅魔館
「パチュリー様、何をなさっているのですか?」
普段から本に置かれたハンカチのように図書館に埋もれて本を読んでいる事が多いパチュリーだが今回は机に向かって何やら書き物をしていた。
「あの子の音読文と原文を照らし合わせて文字の解読しているのよ。」
「あの貸本屋の子ですか?」
「咲夜、教えてくれてありがとね、おかげで進まなかった研究が進みそうよ。」
「それはよかったです。あの本ってどんな内容だったんですか?」
「魔術書は一冊だけで後は料理本に出納長に夢の国の歩き方、船の設計図ね。」
「魔術書や夢の国はともかく後は残念でしたね。」
「そうでもないわ。」
いつも不機嫌な顔をしているが作業がはかどったからなのかうっすら笑みを浮かべているように見える。
「あら、その指どうしたんですか?」
咲夜がパチュリーの指の細いカサブタがあるのに気付く。言われて初めて気がついたのかパチュリーが傷を見る。
「ページでちょっと切ったみたいね。」
「無理はなさらないでくださいね。」
「自分のことは自分で分かってるわよ、今日だってこれで寝るつもりで・・・」
ばたん
「パチュリー様?パチュリー様!」
パチュリーは自分が倒れたのだと自覚する間もなく意識が遠のいていった。
「あら、子鈴じゃない、神社に来るなんて珍しい。」
それから数日が経ち普段は霊夢の方から菘庵に訪れる事が多いが今日は珍しく子鈴の方から博麗神社を訪ねていた。
「えへへ、実は珍しい本が入ったので霊夢さんに見せようと思って。」
「押しつけに貸し本代は払わないわよ。」
「最近お世話になる事が多いのでタダですよ。」
「まったく・・・あなたもほどほどほどにしときなさいよ。」
そう言って最近の妖書本絡みの事件を思い出す。
「でも霊夢さんはいつも助けてくれるじゃないですかー」
「事件の原因を自覚してる?まぁいいわ、ここまで疲れたでしょう、お茶でも飲んできなさい。」
「あ、ありがとうございます。」
しばらく談笑した後、霊夢は暗くなると危ないからと子鈴を帰らせた。
その夜、霊夢は子鈴が持ってきた本を読んでいた。
「意外に面白いわね・・・でもランプももったいないしそろそろ寝ようかな。」
そろそろ寝ようとランプに手を伸ばした時。
「痛っ・・・」
指に痛みが走った。霊夢が親見ると傷口に沿って血がにじむのが見える。拭く物を取ろうとした時指を本に押し付けてしまった。
「いけない」
本に血の跡が付いてしまった、文には触れていないが少し目立つ。
「うーん・・・明日返す時謝らなくちゃ・・・」
次の日、霊夢は本を返すためスズナ庵を訪れていた
「いらっしゃい、霊夢さん」
「本返しに来たわよ、ごめん、ちょっと汚しちゃったわ」
「どうしたんですか。」
「夜に見てたら、指切っちゃって本に血がついちゃった。」
「ちょっと見せてもらえますか?」
「ええ、ここよ・・・あれ?」
霊夢が示したページには何の痕跡もなかった。
「おかしいわね」
パラパラと他のページも見るが異常はない
「なにもないならいいじゃないですか。」
「暗い時に見たのなら何か見間違えたのかもしれません。」
「そうかなぁ。」
「そうですよ。」
あっはっはと和やかに終わった今日、その次の日
神社に遊びに来た魔理沙が倒れている霊夢を発見した。
「霊夢、体調はどうだ?」
「ダメね、二日くらいたったけどろくに体力が戻らないわ。」
「霊夢もか。」
「私もって・・・他に倒れた人いるの?」
「ああパチュリーに聖それに早苗も倒れたらしい。」
「・・・何か起きてる?」
「正直みんな何が起きてるか分かってない。でもお寺の連中は殺気立ってるし諏訪子にも会ったがアレはいけない、祟る目だ。」
「・・・あいつらに喧嘩を売るなんてよほどの考えなしか強いかね。」
「私は子鈴が怪しいと思う。」
「ちょっと、どうして子鈴が怪しいのよ。」
「話を聞くとみんな鈴奈庵で本を借りた後倒れてるんだ。怪しまない方がおかしいさ、霊夢、お前もそうなんじゃないのか?」
「・・・」
子鈴の持ってきた本で夜、指を切った事を思い出す。
「鈴奈庵自体はどうなの?」
「悪いが最近行ってない、研究が忙しくてな。」
「しかしこの事に連中が気付くとあいつら単細胞だからな、襲撃するかもしれん、この後様子を見に行くつもりなんだ。」
「私も行く・・・」
霊夢は布団をはねのけようとするが力が入らない。
「場合によっては子鈴たちを隠れさせるかもしれないが大丈夫だよ。霊夢はさっさと体直せばいい。」
「気をつけなさいよ。」
「ああ。」
「パッチェ、具合はどう?」
紅魔館のパチェリーの私室、広い室内だがドアと机とベットに続く道以外は本に埋め尽くされている、本人以外は入らないこの場所に久々に2人以上が足を踏み入れていた。
パチュリーのベットの脇に備え付けられた椅子に座りレミリアがパチェリーを見舞っている。
「それどころじゃないわ。」
ベットに横になっているパチェリーは普段から悪い顔色を更に悪くさせている。
「前に女の子に本を読んでもらったでしょう?」
「ああ、本屋の子だっけ?」
「その子の読んだ文に召喚の呪文があったの・・・」
「・・・ふーん、それで私に何をさせたいの?」
「あの子の様子を見てきてほしいの・・・」
「このまま行って何もなかったら無駄骨ね。」
「確証はないわ、でも私の状況もそうだし最近巫女が倒れたそうじゃない・・・何かが起きてる。」
「しょうがないわね、友人の頼みを聞くくらい造作もない事よ。」
「・・・ありがと。」
「どういたしまして。」
「パチュリー様どうでしたか?」
「咲夜、フランはどうしてる?」
「え、地下でホブゴブリンで遊んでなさいましたよ。」
「連れてきて、咲夜も来なさい。」
「?どこへいかれるのですか?」
「鈴奈庵っていうとこ。」
「子鈴、いるかー?」
夕方、普段から人のいない鈴奈庵だが今日はいつも以上に静寂に包まれていた。
いつもは客がいなくても店内で何らかの作業をしているがその音も聞こえない。
「いない・・・か。」
店内を見回りいつも子鈴が座っている机を見るとレコード台の隣りに「日記」と書かれた本が置いてあった。
「そう言えばあいつ新年から日記つけてるとか言ってたな。」
何の気なしに日記を手に取りパラパラとめくる、内容は三日坊主の典型のようなとびとびの日記だがある日を境に毎日つけられている。
朝起きたら机の上に変なものがいた、本に封印されていた妖怪らしい、紅魔館でお手伝いをしたときに私が呪文を唱えたから復活できたそうだ。
お礼にとお金が埋まってる場所を教えてくれた、明日霊夢さんに見せて封印してもらおう。
魔理沙は子鈴が霊夢にこんな妖怪を見せたという覚えはない、あるなら話題に出るはずだからだ。
それから日記が進むとだんだんおかしくなっていく。
名前を聞いたらほんでいいと言ってた変な名前
教えてもらった通りににわとりで儀式をする、本当に雨が降った。
血を洗うのが大変だった。おこずかいがなくなってしまったしもうできないかな。
(確かその日は雨が降った)
お母さんを呼ぶためには霊力の高い人が必要らしい、霊夢さんの事を離したら喜んでくれた、霊夢さんは力をかしてなんてしてくれないといったらまかせておけといってくれた。
明日、新しい本が入ったから霊夢さんに見せに行こう。庭に埋めた肉がくさり始めたのか最近くさい、ばれる前にごみをもやすついでに焼いてしまおう、たべればよかったかな。
(日付の次の日に霊夢が倒れた・・・)
霊夢さんがたおれたらしい、大丈夫かな。でもお母さんが出てくるために必要な事だから仕方ないといってくれた、最近頭がぼうっとするかぜかなと言ったら薬の作り方を教えてくれた、あした試してみよう。
そして昨日の日付
準備がすべて整ったお母さんが来れば世の中は楽しくなるらしい教えてもらった薬を飲むよりも楽しくなるのだろうか、生臭いちト臓物のにおいこの子は良くやっているはなんだかおいしくなってきたの最近日記を書く事がたのしく感じて読み返すと今までとこれからの私が変わるのが追体験できるよう霊力の高いものを見つけるのが骨だったが子鈴の顔が広くて助かった負けるわけはないが面倒なことになりそうだないふできったじぶんのちよりもれいむさんのちがのみたいっとおもうのはけんぜんなんだとほんはいったあたたかいちを飲んだ時、れいむさんおにくをかんだときどんな世界が広がるのだろう扉を開く日はもうすぐ、忌々しいスキマも含めて何人かが感づいているかもしれない、早く済ませてしまおう。みんなみてておみせもまりささんもおとうさんもおかあさんももれいむさんもほかのにとたちもせんせいもまみさんもおかあさんがくればしあわせになれるわたしはとってもたのしいです。
「・・・なんだ・・・これは・・・!」
狂気にまみれた日記それを見ていた時急に背中に視線を感じた。
「!!?」
後ろを振り向くが誰もいない。
「いらっしゃいませー」
「!」
首を戻すと子鈴が目の前にいた、数日前と変わらない姿。しかし魔理沙には全てが異様に見えた。
「だめですよー魔理沙さん、人の日記は見ちゃだめです。」
日記を胸に抱きとめる子鈴はいつもの晴れるような笑顔だが
その目は沼のように濁っていた。
「うわあああ!!」
魔理沙は慌てて後ろに下がりはっけ炉を構えるが撃っていいのかどの程度手加減すればいいのかが頭をよぎる、その逡巡に子鈴が手を伸ばし魔理沙を押し倒す
「っ痛っ!」
後ろの本棚に倒れ込み硬い背表紙の角に頭を打つ。痛みで逸らした目を前に向けると魔理沙の胸に乗っかるようにしている子鈴が見えた。右手が視界の外にあったのでそこに目を向けると、小さいナイフが光っていた。
「!っ」
魔理沙がナイフを突きたてようとした子鈴を手で思い切り払いのけた、手に痛みが走り、本棚に子鈴が叩きつけられる。
確認しようと立とうとした魔理沙がひどい虚脱感に襲われる。
「え・・・あ・・・?」
(魔力が、ほとんどない・・・?)
手の甲には切ったような傷が付いていた。
(さっき当たってたのか・・・魔力がごっそり持ってかれた・・・?)
「うぐぅ・・・」
相手のルールがわからない上この状況はまずいと思いとにかく逃げようとしたが全身がうまく動かない。
「魔理沙さん虫みたいですよ。」
ズリズリと店の玄関を目指すが、子鈴がすたすたと歩き魔理沙の目の前に立つ。
「霊夢さんの前に魔理沙さんでもいいかな。」
抑揚のない声でそうつぶやくと魔理沙に向かってナイフを振り上げた。
(あ・・・死んだ・・・)
そう覚悟した瞬間
ガキン
金属音が響く
いつの間にか魔理沙と子鈴の間に赤い槍が割り込まれていた。赤い槍、魔理沙はこれに覚えがあった。
「レミ・・・リア・・・?」
「逃げようと這いつくばってるなんてまるで蟲ね、潰してもいいかしら?」
「・・・良く言うぜ・・・」
子鈴は怪訝な顔をしナイフを戻そうとするが戻らない、レミリアが槍を巧みに操り子鈴のナイフを刃先で押している、ナイフを引こうとすれば引き、押せばそのまま押す、高等な技術だが巨大な槍と果物ナイフで行っているのは滑稽に見える。そしてその奇妙な均衡はあっさりと崩れた。レミリアが槍を動かし槍の腹を子鈴の横につけるとブンっと投げ飛ばす。
「でも今日の私は心優しいの、這いつくばる蟲にも慈悲をあげるわ、咲夜。」
「はいお嬢様。」
魔理沙の横にメイド服の少女が現れる。そして魔理沙を抱き起こすと壁にもたれるように置く。
「すまん・・・」
「今回は何?お嬢様の話を聞いてもわけがわからないんだけど。」
「私もよくわからないんだ。」
「まぁそれも終わりみたいね。」
咲夜がレミリアに目を向けると決着はついたようだった、片手で子鈴をぶら下げて壁に押し付けている、そして。
「くあっ」
レミリアは子鈴の喉元に歯を突き立てた。
「んっ・・・ちゅ・・・」
子鈴はしばらく手足をばたつかせて抵抗したが次第に静かになりパタリ動かなくなった。
「お嬢様これを。」
咲夜が駆け寄り、レミリアが差し出された布に口をつけると
「ありがと」
レミリアが布をぬぐう。白い布が赤く染まる。
「レミリア、お前なんて事を・・・」
「血を吸って落としただけよ、吸血鬼になんかしてないわ。」
「咲夜にやらせたら手足の腱を切ってただろうしね、穏便でしょ。」
確かに咲夜はともかく吸血鬼の力で殴られたら子鈴はひとたまりもないだろう。レミリア自体は子鈴をこれ以上どうにかする意思がないようだったので魔理沙は安堵の表情を浮かべる。
「早く子鈴にも手当をしないと・・・。」
首筋の噛み跡から流れた血が服を赤黒く染めて行く、このまま放置すれば命にかかわるかもしれない。
「だめよ。」
その時、子鈴の体から黒い靄のようなものが染み出て形を作り始める。
「ほら、出てきた。」
「何だこいつは・・・」
「さぁ、黒幕じゃない?黒靄かも。」
「そんなこと言ってる場合じゃないだろ。」
「フラーン、あれなら遊んでいいわよ。」
「はーい」
その瞬間黒い靄が砕け散った。
「お姉さま、壊れちゃった。」
魔理沙が声が聞こえた方を見るとそこにはレミリアの妹、フランドールが立っていた。異形の羽についた宝玉が薄く輝き小脇に大きなカエルが抱えられている。
「・・・フラン、その手に持ってるものは何?」
「お外で待たされてる時に見つけたの、かわいいでしょ。」
「ばっちいから戻してきなさい。」
「えーでも・・・きゃ」
会話中、咲夜がフランの手を引き店内に引き寄せる。
次の瞬間フランのいた道に巨大な穴が開いた。
「えっ」
店の玄関を吹き飛ばしていつの間にか砕けた靄は再び一つになり店外に逃げて行った。
「あいつ逃げたぞ。」
「ああ、そうね。」
「追わないのか?」
「フランは行くだろうし私は後でいいわ。」
フランは咲夜に埃を払われながら黒い靄が出て行ったほうを見つめる。
「♪」
咲夜を手で払うと猛スピードで黒い靄を追いかける。
「破壊じゃ死なないのかな・・・じゃあ死にたくなるまで刻んであげようっと♪」
「子鈴を医者に見せないと・・・」
「怪我なら咲夜が何とかするし美鈴が医者を呼んでくるから落ち着きなさい。」
「意外と用意がいいな。」
「パチェのお気に入りだからね、医者が来たら私もあっちに行くわ。」
「フラン様だけ先に行かせてよかったので?」
「止めても聞く子じゃないし。フランが負けるなんてありえない、心配なのはあの黒い靄の方ね。」
「?・・・なんでだ?」
「ここで死んでおけばよかったのに。」
そう言ってレミリアがいつのまにか店内をのぞき込んでいたネズミを睨む。
ネズミはすぐに逃げ、しばらくすると遠くで爆音が響いた。
猛スピードで空をかけながら黒い靄の思考は焦りに満ちていた
(くそっなんでこんな目に)
(もうすぐ呼び出せたのに)
ぐるぐると思考が廻る中で次の衝撃が黒い靄を襲う。
黒い靄を取り囲むように地面が隆起し、道をふさぐと次の瞬間後ろから光線が放たれた。
さっきの奴が追いついたのかと思い後ろに意識を向けるが違う。
自分が取り囲まれていると分かったのは無数の攻撃が降り注いだからだ
巨大な錨と拳が、無数の石の蛇と巨大な柱が、そしてまるで昼のように輝く無数の光弾
が一点に降り注いだ。
「結局あの後どうなったんだ?」
「みんなで袋叩きにして消し飛ばしたらしいわ。」
「うへぇ。」
「フランも喜んでたわよ、久々にめいっぱい暴れられたから。」
あの事件から数日後、博麗神社でレミリアを交えたお茶会が開催されていた。
「結局そいつが何をしたかったのか、何を呼び出そうとしたのかは分からずじまい、浅学な妖怪や泥くさい神にとっては報復の方が重要みたいだからしょうがないわね。」
「要するに、子鈴が読んだ呪文でそいつが現れて何かを呼び出そうとしてたと。」
「そうらしいわ、その本には「呼びだしたるもの」の召喚方法しか書いてなかったらしいし。」
「呼びだせる奴を呼び出す呪文?まどろっこしいわね。」
「パチェは罠と言ってたわ。」
「罠?」
「つまりその本を作ったのはあの黒い靄でこうしないとこの世界にこれないんじゃないかって、世界からつまはじきにされた哀れな奴がこの世界に残した精一杯の罠、でも書かれた文字もわかる人がいない、いずれ本も消えて何もできなくなるはずだった。」
「それを私が読んだから出てきたと。」
そう子鈴が言う、首筋の包帯が痛々しい。
「気に病むことはないわ、私は面白かったし。」
「あんたが言うセリフじゃないわね、元凶はあなた達よ、どう落とし前付ける気?」
「怪我をした人間の治療費や店の修理代はうちが出したわよ。」
「そうレミリアさん達を責めないでください、私が悪いんですから。」
「子鈴も少し反省してよね。」
「はーい・・・」
子鈴はしょぼんとうなだれながら神社を出て行った。
「子鈴帰っちゃったぞ、いいのか霊夢。」
咲夜の煎れた紅茶に砂糖を入れながら霊夢が答える
「ひねくれものが殊勝な事でいいじゃない。」
「?」
「危険な事に巻き込むなら許さないけどね。」
神社からの帰り道、階段の下で子鈴は知った顔に出会った。ふわりとした服の魔女。
「あ、あの」
「パチェリーよ。」
「あの、パチェリーさん、あの・・・すみません・・・」
「いいのよ、私が悪いんだし。子鈴、あなた魔術とかに興味ない?」
「え?」
「ほら、知識ないと今回みたいな事が起きるでしょ、危険だからと遠ざかるよりももっとその力を活かしたいと思わない?」
「ほら、また翻訳頼みたいし・・・ダメ?」
「はい!私からもお願いします。」
子鈴はぺこりと頭を下げる
「ありがとう、あと・・・ごめんね・・・」
他所のssで見そうな文章でした。起こったことやセリフだけを書くやり方だと、小説というより報告書か仕事のメモか何か読んでいるような感じがしてしまうため、情景や細かな仕草の描写を挟むとぐっと良くなると思います。
それと黒い霧は何が目的だったのか、一体何を召還しようとしたのかわかりにくかったので今回はこの点数で失礼いたします。次回もがんばってください。
小鈴の名前は間違えないでほしいなあ。
単に小鈴のファンとしてのお願いですが。
あと内容ももう少し充実させてください。
内容の面白さだけ考慮してこの点数で。
あとはもう少しSSらしい書き方を学んでみると良いかと思います。
あとはもう少し情緒やしぐさなんかの描写がほしいところです
SSでならこれくらいでもいいと思います。
是非諦めずに次回作を、期待しています。