初投稿です イチャイチャはしません 短いショートショート
……ついに明日になってしまった。聖バレンタイン。
この国では、人にチョコレートを渡すのが普通だという認識がある。そしてその渡す相手は友達であったり、家族であったり……好きな人だったり。大体友達に渡すのが主流だが、やはりこの日に渡すチョコレートには少なからず特別な意味がある。
さて、ここにあるのはチョコレート。丸い。箱は無難に紺色の四角いやつで、包装紙は、ちょっと頑張ってピンクのキラキラしたやつ。いやあ、これくらいは大丈夫よね。ピンクだからって、そんな、ええ。
このチョコレートは蓮子にあげるつもりのものだ。……私は蓮子が好きだ。恋愛感情で。loveの方ね。だから明日このチョコを渡して、そのあといい感じになったら告白してみるつもりだ。バレンタインに告白は鉄板よね。
作戦は完璧。まず蓮子を「一緒に帰ろう」と誘う。蓮子は確実に乗ってくるだろう。そして誘ったら、人通りの少ない道を通り、そこでチョコを渡す。チョコを渡すくらいなら大丈夫だろう。気味悪がられたりしない。そして……うーん、どうしようか。その場で食べたりするかなあ? ここは蓮子次第だからわからない。まあいいわ。そんで渡したら、告白…する。
大丈夫、自信を持ちなさいメリー。蓮子と私は親友よ。蓮子だって前そう言っていたじゃない! 親友なんだからチョコを渡すくらい普通よ。ええ、普通。全くおかしくない。おかしくなんかない。
告白も大丈夫。おかしくはないわ。恋愛感情を持つのは人の自由! 縛られてなんかない。私は無宗教で蓮子も無宗教寄りだから、同性愛に嫌悪感を示したりはしないはず。ええ、無宗教だもの。そんな決まりはないわ!
……無宗教なのにバレンタインには便乗するのね。なんか私矛盾してる? いや、そういうことじゃない! 大丈夫よ、だってこのバレンタインにチョコを渡す習慣はこの国でできたのだから、そういう宗教とかは関わってないしセーフ。あれよ、なにか神様とかを崇めてなければセーフ!
というか、同性愛の何がいけないのよ! 子供をつくれないから? バカみたい。性交を悪いものだって決め付けて禁じたくせに何言ってんだか! 何? 「いれるもの」と「いれられるもの」でペアだと考えたの? 安直! 反吐が出る!
変な宗教がなければ、嫌悪感を抱く人も同性愛を奇特なものだと考える人もここまで増えなかったのよ。確かに男女ペアじゃないと子供はできないわよ? そんで、そのペアから外れて非生産的な組み合わせをするやつは馬鹿に見えるかもしれない。ええわかる。わかるわよ!
でも嫌悪感を抱かなくてもいいじゃない! ふざけないで! そうね、私から見たらあなた達の方が気持ち悪いわ! 自分たちには理解出来ないからって、そんな除け者にして。普通なの! これは普通! 恋愛感情を持つのは、相手が誰だろうと普通なの!
宗教の選択にも自由があるのに、そんなただの人間ふぜいが言ったこと書いたことを信じて、語り継いで。ああ気持ち悪い! 虫唾が走る!
……少し熱くなってしまった。こんなことをしている場合ではないのに。蓮子のことでも考えて落ち着こう…。
ふふ、やっぱり蓮子のことを考えると口元が勝手に緩む。そういや前、蓮子と一緒にいるときにこうなって蓮子に注意されたっけ。あの時の蓮子可愛かったなあ。ちょっと苦笑いをしたあと、いたずらっぽく二カッと笑って…よく似合っていた。クリスマスだったかな?
確かそのあとは一緒にケーキを買いに行って、私はショートケーキとレアチーズケーキ、蓮子はガトーショコラ2つを買ったのよね。それで半分こしたりして、蓮子が自分のフォークで切り分けたから少し形は歪だったけど、凄く嬉しかったのをよく覚えている。
他には、大晦日にお蕎麦を作って、一緒に食べて、そのあとテレビを見ながらカウントダウンして。今年も一緒に不思議なことを探そうねとか言って。その時ゆびきりしたから三日くらい小指だけ洗わなかったりした。
あとは、節分かな。鬼を探しに行こう! とかいって、神社をぐるぐる見て回っていたっけ。それと……ああ、もう2時だ。そろそろ寝ないと授業に集中できなくなってしまう。今日はもう寝よう。続きはまたあとで……
「やっほーメリー。おはよう…って、なにその顔。昨日ちゃんと寝た?」
失敗した。実はあのあと、明日することを考えてしまって眠れなくなったのだ。結局寝たのは3時半くらいになってからだったか…。
そして案の定蓮子に指摘される。はあ…。
「ほらほら、眠いのはわかるけど時間は待ってくれないのよ。はい頑張ってー」
蓮子に背中を押されながら教室へ向かう。いつもなら心の中で狂喜乱舞して、思わず何故か焦ってしまい蓮子になにやってんの、とか言われるが、今は尋常ではない眠気のせいでそこまで頭が回らない。
でもいつもとは違う向きに頭が回転するから、たまにならこの状態もいいかもしれない…と、考えているうちに目的の教室についた。しかし、蓮子はその隣の教室での授業を受けるのでここでお別れだ。
黒板に数字や記号がつらつらと書かれていくのをぼーっと眺めながら、私は全く関係のないことを考えていた。
明日、蓮子に告白する。文字だけだと軽いものだが、その意味は私にとってとても重いものだ。この大学内で、私には蓮子くらいしか話す人がいない。それゆえ、もし蓮子に拒否されてしまったら私はどうしようもなくなって、大学にいられなくなるだろう。
いや、しかし大丈夫だ。蓮子が拒むことはない。蓮子は不思議なものを探している。だったら私は不思議なものにカウントされるからだ。境界が見えて、蓮子が好きで。これ以上不思議なものがこの世にあるのだろうか?
そんな自分の探し求めているものに逆に求められたら、断るわけないだろう。そうだ、絶対そうだ。断るわけがない。
それにあわせて無宗教だ。もう断られる理由を探すほうが難しい。嫌悪感も抱かずにそのまま受け入れてくれるだろう。気持ち悪いだなんて絶対に思われない! そんな偏見を蓮子は持っていない!
それに、もし。もし何か問題があって告白までいけなくてもチョコは渡せるのだ。バレンタインにチョコといったら、やっぱりそういうことも少しは考えるだろう。私は考える。だから蓮子も考える。うん。それだけでも大きな進歩になる。
チョコを渡すだけなら確実にそんなひどいことは考えられないはず。同性にチョコを渡しただけなのに気持ち悪いとか間違っているとか考える人はいない。なぜならそれは普通のことだから。箸を使ってお蕎麦を食べたり、うどんを食べたりすることを気持ち悪いという人はいない。そういうことだ。
気持ち悪くなんかない。間違ってなんかない。気も狂ってない。間違ってるって言う方が間違ってるんだ。ただ人を好きになっただけなのに、間違ってるわけがない。なんで気持ち悪いって言うのかがわからない。気持ち悪い。
とにかく、大丈夫だ。不安要素など1つもない。成功する。大丈夫。私は幸せになれる。大丈夫…。
そんなことを思っていたら、いつの間にか授業は終わっていて、みんな他の教室に行ったり帰ったりしているところだった。今日は1コマだけだ。私も帰ろう…
「あ、来た。授業ちゃんと受けたー? 寝てないよね?」
正門前で蓮子と合流して帰路につく。駅までは同じ道だから、それまでは一緒に歩いて帰る。
「そういやさぁ、明日バレンタインだよね。誰かに渡す予定とかある?」
! 驚いた。まさか蓮子からバレンタインのネタを振ってくるとは。思わず動揺してしまい、蓮子に笑われる。どうやら蓮子はその反応で私に本命がいると思ったらしく、相手が誰なのかしつこく訪ねてきた。
「動揺したってことはつまりそういうことでしょお? 教えなさいよぉ」
「いないって。それにもし仮にいたとしても教えないわ」
「え~? 教えてよお、少しぐらいいいじゃない、私とメリーの仲よ?」
やめてほしい。今言うのは流石に出来ない。その仲だって本当のことを言ったら、一瞬で塵になってしまうかもしれないのに。せめて明日にしてほしい。
「ふーん…まあそこまで言いたくないならいいわ。でも、いいなあ。好きな人がいるって。面白そうだし。」
「あ、明日告白するの? もしかして。いいねぇ、ロマンチックねぇ! 成功したら教えてよ!」
「応援してるから! どんな人が相手でもメリーの選んだ人なら間違いないだろうし。困ったら相談とかしてね、相手になるから。」
「じゃあ、私こっちだから! また明日ね!」
次の日、チョコは自分で食べた。何故か少ししょっぱかった。
……ついに明日になってしまった。聖バレンタイン。
この国では、人にチョコレートを渡すのが普通だという認識がある。そしてその渡す相手は友達であったり、家族であったり……好きな人だったり。大体友達に渡すのが主流だが、やはりこの日に渡すチョコレートには少なからず特別な意味がある。
さて、ここにあるのはチョコレート。丸い。箱は無難に紺色の四角いやつで、包装紙は、ちょっと頑張ってピンクのキラキラしたやつ。いやあ、これくらいは大丈夫よね。ピンクだからって、そんな、ええ。
このチョコレートは蓮子にあげるつもりのものだ。……私は蓮子が好きだ。恋愛感情で。loveの方ね。だから明日このチョコを渡して、そのあといい感じになったら告白してみるつもりだ。バレンタインに告白は鉄板よね。
作戦は完璧。まず蓮子を「一緒に帰ろう」と誘う。蓮子は確実に乗ってくるだろう。そして誘ったら、人通りの少ない道を通り、そこでチョコを渡す。チョコを渡すくらいなら大丈夫だろう。気味悪がられたりしない。そして……うーん、どうしようか。その場で食べたりするかなあ? ここは蓮子次第だからわからない。まあいいわ。そんで渡したら、告白…する。
大丈夫、自信を持ちなさいメリー。蓮子と私は親友よ。蓮子だって前そう言っていたじゃない! 親友なんだからチョコを渡すくらい普通よ。ええ、普通。全くおかしくない。おかしくなんかない。
告白も大丈夫。おかしくはないわ。恋愛感情を持つのは人の自由! 縛られてなんかない。私は無宗教で蓮子も無宗教寄りだから、同性愛に嫌悪感を示したりはしないはず。ええ、無宗教だもの。そんな決まりはないわ!
……無宗教なのにバレンタインには便乗するのね。なんか私矛盾してる? いや、そういうことじゃない! 大丈夫よ、だってこのバレンタインにチョコを渡す習慣はこの国でできたのだから、そういう宗教とかは関わってないしセーフ。あれよ、なにか神様とかを崇めてなければセーフ!
というか、同性愛の何がいけないのよ! 子供をつくれないから? バカみたい。性交を悪いものだって決め付けて禁じたくせに何言ってんだか! 何? 「いれるもの」と「いれられるもの」でペアだと考えたの? 安直! 反吐が出る!
変な宗教がなければ、嫌悪感を抱く人も同性愛を奇特なものだと考える人もここまで増えなかったのよ。確かに男女ペアじゃないと子供はできないわよ? そんで、そのペアから外れて非生産的な組み合わせをするやつは馬鹿に見えるかもしれない。ええわかる。わかるわよ!
でも嫌悪感を抱かなくてもいいじゃない! ふざけないで! そうね、私から見たらあなた達の方が気持ち悪いわ! 自分たちには理解出来ないからって、そんな除け者にして。普通なの! これは普通! 恋愛感情を持つのは、相手が誰だろうと普通なの!
宗教の選択にも自由があるのに、そんなただの人間ふぜいが言ったこと書いたことを信じて、語り継いで。ああ気持ち悪い! 虫唾が走る!
……少し熱くなってしまった。こんなことをしている場合ではないのに。蓮子のことでも考えて落ち着こう…。
ふふ、やっぱり蓮子のことを考えると口元が勝手に緩む。そういや前、蓮子と一緒にいるときにこうなって蓮子に注意されたっけ。あの時の蓮子可愛かったなあ。ちょっと苦笑いをしたあと、いたずらっぽく二カッと笑って…よく似合っていた。クリスマスだったかな?
確かそのあとは一緒にケーキを買いに行って、私はショートケーキとレアチーズケーキ、蓮子はガトーショコラ2つを買ったのよね。それで半分こしたりして、蓮子が自分のフォークで切り分けたから少し形は歪だったけど、凄く嬉しかったのをよく覚えている。
他には、大晦日にお蕎麦を作って、一緒に食べて、そのあとテレビを見ながらカウントダウンして。今年も一緒に不思議なことを探そうねとか言って。その時ゆびきりしたから三日くらい小指だけ洗わなかったりした。
あとは、節分かな。鬼を探しに行こう! とかいって、神社をぐるぐる見て回っていたっけ。それと……ああ、もう2時だ。そろそろ寝ないと授業に集中できなくなってしまう。今日はもう寝よう。続きはまたあとで……
「やっほーメリー。おはよう…って、なにその顔。昨日ちゃんと寝た?」
失敗した。実はあのあと、明日することを考えてしまって眠れなくなったのだ。結局寝たのは3時半くらいになってからだったか…。
そして案の定蓮子に指摘される。はあ…。
「ほらほら、眠いのはわかるけど時間は待ってくれないのよ。はい頑張ってー」
蓮子に背中を押されながら教室へ向かう。いつもなら心の中で狂喜乱舞して、思わず何故か焦ってしまい蓮子になにやってんの、とか言われるが、今は尋常ではない眠気のせいでそこまで頭が回らない。
でもいつもとは違う向きに頭が回転するから、たまにならこの状態もいいかもしれない…と、考えているうちに目的の教室についた。しかし、蓮子はその隣の教室での授業を受けるのでここでお別れだ。
黒板に数字や記号がつらつらと書かれていくのをぼーっと眺めながら、私は全く関係のないことを考えていた。
明日、蓮子に告白する。文字だけだと軽いものだが、その意味は私にとってとても重いものだ。この大学内で、私には蓮子くらいしか話す人がいない。それゆえ、もし蓮子に拒否されてしまったら私はどうしようもなくなって、大学にいられなくなるだろう。
いや、しかし大丈夫だ。蓮子が拒むことはない。蓮子は不思議なものを探している。だったら私は不思議なものにカウントされるからだ。境界が見えて、蓮子が好きで。これ以上不思議なものがこの世にあるのだろうか?
そんな自分の探し求めているものに逆に求められたら、断るわけないだろう。そうだ、絶対そうだ。断るわけがない。
それにあわせて無宗教だ。もう断られる理由を探すほうが難しい。嫌悪感も抱かずにそのまま受け入れてくれるだろう。気持ち悪いだなんて絶対に思われない! そんな偏見を蓮子は持っていない!
それに、もし。もし何か問題があって告白までいけなくてもチョコは渡せるのだ。バレンタインにチョコといったら、やっぱりそういうことも少しは考えるだろう。私は考える。だから蓮子も考える。うん。それだけでも大きな進歩になる。
チョコを渡すだけなら確実にそんなひどいことは考えられないはず。同性にチョコを渡しただけなのに気持ち悪いとか間違っているとか考える人はいない。なぜならそれは普通のことだから。箸を使ってお蕎麦を食べたり、うどんを食べたりすることを気持ち悪いという人はいない。そういうことだ。
気持ち悪くなんかない。間違ってなんかない。気も狂ってない。間違ってるって言う方が間違ってるんだ。ただ人を好きになっただけなのに、間違ってるわけがない。なんで気持ち悪いって言うのかがわからない。気持ち悪い。
とにかく、大丈夫だ。不安要素など1つもない。成功する。大丈夫。私は幸せになれる。大丈夫…。
そんなことを思っていたら、いつの間にか授業は終わっていて、みんな他の教室に行ったり帰ったりしているところだった。今日は1コマだけだ。私も帰ろう…
「あ、来た。授業ちゃんと受けたー? 寝てないよね?」
正門前で蓮子と合流して帰路につく。駅までは同じ道だから、それまでは一緒に歩いて帰る。
「そういやさぁ、明日バレンタインだよね。誰かに渡す予定とかある?」
! 驚いた。まさか蓮子からバレンタインのネタを振ってくるとは。思わず動揺してしまい、蓮子に笑われる。どうやら蓮子はその反応で私に本命がいると思ったらしく、相手が誰なのかしつこく訪ねてきた。
「動揺したってことはつまりそういうことでしょお? 教えなさいよぉ」
「いないって。それにもし仮にいたとしても教えないわ」
「え~? 教えてよお、少しぐらいいいじゃない、私とメリーの仲よ?」
やめてほしい。今言うのは流石に出来ない。その仲だって本当のことを言ったら、一瞬で塵になってしまうかもしれないのに。せめて明日にしてほしい。
「ふーん…まあそこまで言いたくないならいいわ。でも、いいなあ。好きな人がいるって。面白そうだし。」
「あ、明日告白するの? もしかして。いいねぇ、ロマンチックねぇ! 成功したら教えてよ!」
「応援してるから! どんな人が相手でもメリーの選んだ人なら間違いないだろうし。困ったら相談とかしてね、相手になるから。」
「じゃあ、私こっちだから! また明日ね!」
次の日、チョコは自分で食べた。何故か少ししょっぱかった。
でも後書きはイラっとしました。
なにか、フィクションを読んだ後じゃないような独特の読後感がありました。
後書きの言いたいことはなんとなく分かりますが、そのまま受けとる人もやっぱりいます。
これを味として残すなら万人受けは厳しいと思います。
僕は好きですけどね。