Coolier - 新生・東方創想話

紅魔館の主は誰だ 後編

2007/08/28 13:16:44
最終更新
サイズ
16.95KB
ページ数
1
閲覧数
850
評価数
18/50
POINT
2280
Rate
9.04






私は、あいつを超えよう。
あいつを超えて、館主をのっとろう。
そのためには……努力をしなければならない。
あいつに勝る知性、あいつに勝る気品。








「パチュリー、どうすれば気品って出るの」
「自分で考えなさい。それだからいつまでたっても何にもできないの」
私は、一気に頭に血が昇り、
パチュリーにつかみかかりそうになり、
しかし拳を固く握り締めて、その場にとどまった。
手のひらに爪が食い込み、血が流れた程度で済んだ。
パチュリーは、私を見てくる。
見てくる、見てくる、見てくる。
見てくる。
「妹様、貴方はすぐそうやって人を頼りにして自分から動かない。だからいつまでたっても同じ失敗ばかりする。何にも進歩していないの」
「…………」
手のひらに爪が食い込む。
血がぽたぽた流れる。
最近、人を食べてないなあ。
壊してもいないのでストレスがたまる。
なのにこの魔女はさらにストレスを溜めるような事を言ってくる。
偉そうなのだ、この魔女は。
でも恐い。
怒らせると手がつけられない。
パチュリーは、私を、見てくる。
見てくる、見て、見て、見てくる。
陰気な眠そうな目で、見てくる。
興味深げに、ただ、見てくる。
観察してくる。
パチュリーは凄い。
パチュリーは、見ている。
観察している。
パチュリーは見ているから、凄いのかもしれない。
パチュリーは、見てくる。
私も、パチュリーを見よう。
見てみると、パチュリーは、本に目を落としていた。
ページを捲った。
眠そうに目を擦る。
眠いなら眠ればいいのになんで目を擦ってページを捲る?
パチュリーも、実は、私と同じなのかもしれない。
パチュリーも、偉くなりたいのかもしれない。
誰にも負けたくないから、眠い目を擦って知識を仕入れているのかもしれない。
違うのかもしれない。
そうかもしれない。
違うかもしれない。
私も見てみよう。
あいつを、観察してみよう。
私は、図書館を出た。
そして、かなり勇気が要ったが、
あいつの部屋に行った。
あいつは、とくに機嫌が悪いでもなく、良いでもないようだった。
私がこの前暴力を振るった事を忘れているのだろうか。
そんなわけはないだろう。
淡々とした目つきで私を見てきた。
「どうしたの?」
「入っていい?」
「どうぞ」
私は入った。
数歩進んで、扉を閉めるのを忘れていた事に気がつく。
慌てて閉めようとしたら、勝手に扉が閉まった。
あいつが魔法を使ったのだ。
私は、不安な気持ちであいつの部屋を見回した。
いろいろ、整っている。
あいつは、このいろいろ整っている部屋で寝ていたり、
紅茶を飲んだりしているのか。
私はどうだろうか。
私の部屋は宇宙である。
つまり汚いという事だった。
汚いとは気品がないということだ。
部屋の掃除をしようと決めた。
あいつは自分で自分の部屋を掃除したりはしない。
咲夜にやらせている。
でも私は自分でやろう。
そうすることで、私は掃除をしている、
という点ではあいつに勝っているということになる。
「なにやらいろいろ考えこんでるわね、フラン」
「うん」
あいつは、私を見てくる。
観察しているのか。私を。
「フラン。どうして、私、この前あんなに機嫌が悪かったのか、分かる?」
「え?」
突然、あいつは言い出した。
「フラン。覚えてないの? 貴方、私を押し倒したでしょ。ほっぺたも引っ叩いたでしょ」
「あ……」
私はうつむいた。
何やらすごい嫌な気持ちになった。
怒りの気持ちじゃなかった。
悲しみの気持ちに近いものだった。
盗み見ると、あいつは、紅茶をひどく上品な飲み方をした。
白い喉が、ごくごく動いて、きれいだった。
私はこのひとを、殴った。
私はこんなに美しい人を殴った。
あいつの動きは洗練されている。隙がない。
私はどうだろう。
がさつだ。
何故なら私は何も考えていなかったからだ。
いつもぽーっとしてたから、馬鹿だったのだ。
何も考えていない私の動きは、
当然のごとく無駄が多い、と思う。
ん?
なんで私は自分の動作のことなんて気にしているんだろう。
あいつがカップを机に置いた音に、私は現実に引き戻された。
「私が何故怒っていたかというとね。メイドたちを、壊したからなの。貴方が何かを壊せば、かならず私は知ることが出来るの。私だけじゃなくて、咲夜も、パチュリーも、中国も、館内で命が壊れたことを感じることが出来るの。なぜなら、みんな、命が大事なものだと思っているからなの」
あいつの言っている事は難しくてよくわからない。
でも、大事なことなんだ、ということは、感じた。
あいつが私に一番伝えたいことなんだ、とも思った。
私は気づいていなかったが、
真剣に聴いていた。
「その大事な命をあなたが壊してしまう。だから、みんな怒ったの。私も不機嫌だったの……でも、一番不機嫌だったのは、フランなのよね? フラン。不機嫌だったから、いいんだよね。命を壊しても、いいんだよね?」
私は頭の中を必死に整理しようとした。
「私が言いたい事は、それだけ。悪かったわね、いきなり何やら難しいこと言い出して」
………。
私は、あいつの部屋から無言で、出た。
そして、扉を閉めて、あいつから私が見えなくなったなと思うと、
ため息が出た。
私はしばらく、あいつの部屋の前に突っ立っていた。
あいつの言っている事は、毎度毎度、難しい。
命とは、何だろう。
私も、そういえば、命だった。
忘れていた。
私は、命を壊してきた。
私は、自分の命を壊されるのが恐いのに、
問答無用に命を壊してきた。
死ぬのが恐いのは、
パチュリーが、教えてくれた。
あんな思いを、私はみんなにさせている。
私は、部屋に篭もった。
そして、私は自分の心の中に、篭もる。








「違います、こうやるんです」
きれいな身のこなしの中国が、羨ましい、
というふうなことを思うようになった。
あいつは、きれいだった。
私はあいつよりきれいに動きたい。
思いついたのは、
中国のきれいさだった。
中国の動きのきれいさと、
あいつの動きのきれいさを盗めば、
私はあいつに勝てる。そう思う。
「こうですって」
中国が、見本を見せる。
私は真似する。
「違います、そうじゃないです」
中国の分際で、弱いくせに私にそういうのだ。
私は苛立った。
壊したくなるほどじゃないけど、腹が立った。
中国の分際で私に命令するとはどういうことなのか?
私は多分、顔を真っ赤にして、
格下の中国の命令を我慢して、
中国のきれいな動きを真似していただろう。
こんなことして本当に中国みたいに、
きれいに動けるようになるんだろうか。
「毎日やるんです! 毎日、苦しくても面倒臭くても、やるんです! お嬢様に勝ちたいのなら、やるのです!」
中国はいったん身が入ると、熱血教師になる。
うっとおしい。
でも我慢しなければ、あいつに勝てない。
「こうです! そうです! できるじゃないですか!」
ほめられた。
そのとき、とてつもない快感が私の体をぬるくぬるく、満たした。
昇天するような、そんな気持ちになった。
中国のことを好きになりそうになる。
それから、私は毎日、中国のところへいくことになる。
やっぱり私はほめられるのが大好きだ。
何度も止めたいと思った。
三ヶ月たっても、全然うまくならないこともあった。
たまに中国と手合わせして、
中国に鳩尾とかどつかれて、すごく痛かった。
痛すぎて気持ち悪くなって、吐いたこともある。
でも私はやめなかった。
たまに中国がほめてくれると、やる気が倍増する。
それに何より、
あいつに勝ちたいから。
あいつに勝つ。
あいつに勝つ。
あいつに勝つ。
紅魔館は、私が館主になるんだ。
紅魔館の主であるあいつの後継者は、私だ。
咲夜じゃない。
いや、咲夜なんて目じゃないんだ。
咲夜を悠々と通り越して、
あいつを超えるんだ。
そういう思いで、私は中国にどつかれたりほめてもらったりした。
思えば、私は完全に中国に操作されていたなあ。
あとになって、そう思うことになる。








廊下を歩く。
なにやらひそひそ話が聞こえる。
妖精メイドだ。
「みたみた? アレが、中国様の真似をして、武道やってるんだよ」
「みたみた。まじ、必死だよね、すげー様になっていないし。やっぱキチガイだよねえ」
「中国様も、なんであんなアレに教えるんだろ? 無駄なのに」
「武道なんてやってどうするんだよって感じよね」
「いよいよ気が狂ったのよね、きっと、アレは」
私は、胸が焼けつくようだった。
「お嬢様に嫉妬しているんだよ、アレは。どうやらお嬢様に勝る気品を持ちたいとかいう理由らしい」
「無理だっつー話よねー」
「才能が違うよ、根本的に才能が」
「大体何よ、あのなよなよした動き」
なよなよした動き?
なよなよした動きだったのか私は。
苦しくなってきた。
胸が苦しくなってきたよ……。
私は、才能がない?
あいつは、才能があるから、のしあがったのか?
じゃあ、私は、何をしていたのか、ということになる。
私は、才能がないから駄目なのか?
あいつみたいにきれいになれないのか?
あいつに、勝てないのかな?
私なんかが、館主になれるわけないのか。
あいつが思い浮かぶ。
あいつは、本当にきれいだった。
見れば見るほど、可愛い、きれいで、魅力的で、妖しい美しさがある。
思えば、武道なんてやって、可愛くなんてなるはずがない。
私のようなキチガイ女がやって、どうなる。
変に厳めしくなるだけなんじゃないのか。
全然、魅力なんてできっこ、ないん、だ。
息が、荒くなる。
悔しい。
悲しい。
悔しい。悔しい、悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。
私の存在は、無意味? 無意味。
そうなの?
嫌だよ、無意味じゃ嫌だよ!
もうひとりの私が叫んだ。
嫌だ! 私だって、頑張ってるのに!
まだ努力が足りないの?
努力してる。
でも努力が足りないの?
才能がないの?!
どうなの!
壊したい、このメイドたち、
勝手なことを言ってて、ムカつくし、壊したい!
壊す壊す!
結果、壊れたのは、私の片方の羽だった。
物凄く痛くて、血が噴出した。
壊しては、駄目。
命。
あいつが言っていた命。
壊しては駄目……。
命の代わりに私の羽が壊れた。
私の羽は、メイドの命よりも軽い。
命より重いものなんて、ないんだ。
あいつはそういってた。
なぜ?
私のことをひどくいう従者の命の方が、
私のきれいな宝石みたいな羽の方が軽いの?
ねえ、お姉様。ねえ。
私は部屋に帰った。
部屋に閉じこもった。
自分の心の中に篭もって、涙を流す。
今日は羽が痛いなあ。
ベッドが血で濡れた。
でもその血を見てて、思う。
この血が流れて、
私が痛い目にあっている代わりに、
命が二つ助かったのだ。
ちょっと嬉しい。
ちょっとあいつの言っていたことが、分かった気がした。








また、ひそひそ声が聞こえる。
私がトイレに入っていたときだった。
「ほんと、無駄なのに」
とか、言ってた。
私は、虚ろな気持ちになって聞いていた。
きっと、私の顔は、あいつとは比べ物にならないほど、
醜悪で生気のないものだったろう。
と、また誰かがトイレに入ってくる。
二人連れのようだった。
「パチュリー様、最近妹様が、お変わりになられてきてますね」
咲夜の声。
「そうみたいね」
パチュリーの声。
「妹様、身のこなしがとても美しくなっていましたわ。なんか、こう、目に気迫みたいなものを感じますし」
「ん。咲夜はやっぱりよく見てるわね」
「よく見なくても、気づきますって。気づかないのは馬鹿だけです。なんか、落ち着いてきていますよね、妹様。優雅というのではないんですが、なんというか、こう、いいんですよね……」
「動きがおおらかになったっていいたいんでしょう? 動きが優しくなった」
「そう! そうです。なんというか、無駄がなくなりましたよね。今まで色々な方向に当り散らして言ってるって感じだったのに。今は、一つのことにすっと行く感じですわ。なんか、本当に中国じみて来ている、ええ、もちろんいい意味で」
「あの子は、負けたくないのよ。貴方に」
「え? 私?」
「ええ。あの子、貴方が次期館主になると思っている」
「え、そうなのですか」
「ありえないでしょ? 妹様以外誰が次期館主になるっていうのよね」
「ええ。それはとんだ……第一私メイド長だし。お嬢様がいなくなるなんて考えられないけど、いなくなったら、私は妹様専用のメイドになるし。妹様、多少やんちゃですけど、私は十分しつけする自信ありましたし」
「咲夜が押さえつけられなくても私がいるし。ねえ? それなのに、あの子、勘違いしちゃって。まあ、その勘違いが、あの子を自分から動くいい薬になったわ」
「たぶん、お嬢様にきついこと言われたんでしょうね」
「ね。私もきついことしたし」
「ええー? 何をしたのですか。あまりひどいことをしないで下さい。案外、デリケートなんですよ」
「分かってるわよ。ふふふふふ」
「なんか、楽しそうですねえ。ええ。とっても」
私は、ふわっと軽くなって、
嬉しくて、嬉しくて、飛び上がりたくて、
トイレを壊しそうになったけど、
ぐっと堪えて。
咲夜たちがいなくなってから、
私は部屋に篭もる。
部屋に篭もって、自分の心の中に篭もり、眠った。
と、勿論その前に、武道の練習をするのを忘れるわけがない。
毎日私より大きな鏡の前に立って、
あいつの仕草の真似をしてみたり、
極上の笑顔はどうしたらできるのか、研究したり、した。
お部屋の片付けと模様替えも、
自分の脳髄を最大限にフル回転させて、
完璧な部屋に仕上げた。
シンプルな部屋になったと私は思う。
咲夜が片付けに来たがるが、拒んだ。
見せたくない、まだ。
私が次期館主になるまでね!
ここは、館主の部屋になるのだ。
「咲夜……中国……パチュリー……お姉様」
私は、ベッドに倒れこんで、天井を見る。
天井には、大きな紅い月が浮かんでいる。
もちろん私の魔法だ。
紅い月は、そう いえば、あいつも好きなんだった。
「咲夜……お姉様……パチュリー……中国」
私は、いつからか、モノを壊さなくなっていた。
「咲夜、パチュリー、中国。お姉様、お姉様、お姉様」
その代わり、お姉様たちのことが、
パチュリーのことが、咲夜のことが、中国のことが……、
彼女たちがいつも何を考えているのか、
何を感じているのか、
少しだけ知りたいと思うようになっていた。
「お姉様、パチュリー……中国、咲夜」








レミリアは、唸っていた。
「うーん」
窓の外から、中国と一緒になって武道とやらをやっている妹を、見る。
なんか、気迫がこちらまで伝わってくる。
あの小さな体から、明らかに、何かが湧き出ている。
カリスマ。
レミリアの脳裏にその言葉が掠めた。
「うーんむ」
よーく目を凝らす。
妹が立っている。
背筋がぴんと真っ直ぐで、
なんか、柔らかい強さのようなものが見え隠れする。
いい背中だなあ……。
「んー」
「何を唸っているんですか」
「フランが最近、やばい」
「え?」
「フランのカリスマが見える……とうとう、ここまで来た」
「……はい」
「咲夜…………」
「はい」
「今までありがとう」
「……………」
咲夜は、答えなかった。
咲夜は、無表情だった。
レミリアは、自らの心に、静かな水が満ちたような感触がした。
目を瞑る。
咲夜。
パチュリー。
中国。
メイドたち。
そして……フランドール。
完璧だよ。
私の紅魔館は、完璧だよ。
このメンバーたちを思い浮かべれば。
このメンバーたちの笑顔を思い浮かべれば。
何一つ、不安なんてない。
レミリアは、そう思った。








「レミィ! いい加減にしなさい!」
パチュリーが、あいつを揺する。
あいつは、目を閉じていた。
パチュリーを、咲夜が必死に抱きとめる。
「お嬢様、お嬢様、お嬢様」
中国が必死に、あいつの胸に手のひらを乗せて、治療している。
あいつを、みんなで囲っている。
霊夢とか、魔理沙とか、他にも亡霊とか、いた。
不意に、あいつの体が浮き上がった。
あいつは、私の目の前に降り立った。
しかし、このあいつは、みんなには見えていないようだった。
私にだけ、このあいつが見える。
あいつが二人いる。
ひとりは、ベッドで眠っている……安らかに眠っているあいつ。
もうひとりは、ここにこうして、目の前に立って、安らかに笑っているあいつ。
悔しいほどきれいだった。
きれいなくせに、しかも透き通っていた。
あいつごしに、倒れているあいつが見える。
倒れているあいつには、もうあいつの魂はない。
なぜなら、私の目の前にこうして立ってほほ笑んでいるからだ。
噂だと思っていた。
噂にすらなっていないと鼻で笑っていた。
あいつは、本当に病気だった。
これは噂じゃなかった。
あいつは、目の前のあいつは、
私にだけしか見えないあいつは、言うのだ。
聞こえない音をその唇から零すのだ。
「フランドール・スカーレット。紅魔館の館主レミリア・スカーレットが、貴方に、私の地位を継承する。貴方のカリスマは、私を凌駕した」
とあいつは言う。
カリスマ?
それが何になる。
お姉様。
お姉様、あなたが死んでしまうのに、
カリスマも何も、ない。
周りの霊夢たちは、
眠っているお姉様の体を撫でたり擦ったり、叫んだりしている。
もうそこにお姉様の魂はないのに。
私の目の前のお姉様がいう。
「フランドール。館主は貴方の望みだったでしょう? 私は、ね。貴方が本当に頑張ってるところを見てて、嬉しかったよ……嬉しかったのよ」
そんなことどうでもいい。
早くそこで眠っているお姉様に入ってさっさと起きてよ。
「それは無理なの。もう、分かってるくせに」
お姉様はお茶目に言う。
私の頭をなでるお姉様。
とても、お姉様の手は冷たかった。
でも、温かい。
私は声にならない悲鳴を上げた。
千切れていた羽が治っている。
お姉様が癒してくれたのだ。
私は、もうお姉様が見えなくなりそうだった。
目が、にじんできて、お姉様が見えなくなりそう。
「紅魔館は、フラン。貴方が守るのよ。紅魔館の全てを貴方が守るのよ。咲夜を、パチュリーを、中国を、メイドたちを、守るのよ。大丈夫。貴方なら出来る。私を超える貴方なんだから。貴方に出来ない事なんて、ないわよ」
涙を拭いたら、
またお姉様が見えるようになった。
お姉様は、存在感がだんだんなくなってきていた。
「あーあ。私は悪いことしたから、地獄行きねえ。人間もたくさん殺した」
「いやだよう……」
さらにお姉様が薄くなる。
「でも、楽しかったわ……すごく……」
「いやだよう……」
「フランはいい子になったし、ねえ」
お姉様の白い頬に、雫が一つ流れた。
それを見て、
私は強烈にお姉様のことが愛しくなった。
愛しくて、たまらない。
「いやだよう!」
叫んだら、みんな一斉にこちらを向いた。
しかし、そんなことはどうでも良かった。
「いやだよいやだよ! お姉様!」
「フラン、最期に抱かせて頂戴」
「いやだよう……」
お姉様が、私を抱き締める。
柔らかい、でも、何か物足りない感触。
私も、お姉様を抱き締めた。
大好きなひとを抱き締める。
憧れだったひとを抱き締める。
抱き締めたら。
抱き締めたら。
お姉様。
お姉様。
抱き締めたら。
消えてしまった。








エピローグ








「魔理沙が侵入しました!」
中国は、どうも魔理沙が苦手らしいな、
と咲夜は舌打ちした。
というか、
魔理沙はしょっちゅう来るので、
おそらく対中国用に何か作戦でも立てているのだろう。
狡猾な魔女め。
また本でも盗む気か?
しかし、と咲夜はにやにやする。
あと二秒もしないで魔理沙の悲鳴が聞こえるだろう。
そう思うと、
にやにやが止まらないのだ。
「うわー!」
ほらね。
見ると、図書館の入り口で、
魔理沙が「お嬢様」に首を引っつかまれて、
ぶらさがっていた。
そのお嬢様は紅い服を着ていて、金髪だった。
フランドールお嬢様。現紅魔館館主。
正直に言おう、このお方に勝てる人間はおろか、妖怪もいない。
知性を身につけたこのお方に、勝てる者は皆無である。
八雲の紫さえどうにかできるんじゃないかと期待できるもの。
完全に武道の動きをモノにしたお嬢様は、
その背筋のよさを見せ付けるように屹立し、
魔理沙を面白そうに見つめている。
「お、おう、妹君か」
「魔理沙、こんにちは」
「お、おう」
「紅茶でも飲もうよ、魔理沙」
そこで、フランお嬢様が私に言う。
「紅茶」
「かしこまりました」
0秒で用意する。
「じゃ、パチュリーにちょっと場所を借してもらおう」
フランお嬢様は、図書館のドアを壊したりはせず、
そーっとそーっと丁寧に開けた。
それから魔理沙の方を見て、
「いらっしゃいませ、紅魔館へ」
と、心がぶっ壊れるような笑みを零した。








END………
すみません!

感想の方で私が不適切なことを言っていたところを消したかったんですが、
作品そのものをデリートしてしまいました。

皆様方の意見・感想も消えてしまいました。
本当に申し訳ありません。

あー、マジ最悪。自己嫌悪。
ほんとすみません……。
ライス
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.1030簡易評価
1.無評価ライス削除
ほんとすみませんとしか。
3.無評価名前が無い程度の能力削除
違和感が強く、頭を傾げましたが、最後まで読む程には面白かったのだと思います。

あーまんじゅう怖くない。
4.90nsb削除
まず最初に後編のコメントをみてなんだこの酷評の嵐はと、
どんなアレな作品かとある意味楽しみにしながら読んだのですが、
前編を読んだところで、あれ普通におもしろいじゃんこれ。
さて後編はどうかなとwktkしていたらいきなり後編が消えていて
非常に焦りましたw
すぐに復活したのでほっとしましたが。

中国中国云々は、平のメイドまで中国と呼ぶのは行き過ぎた感がありましたが、
それ以外の人達が呼ぶのには全く問題ないと思います。
中国という愛称は二次設定物ですが、これは二次創作ですし、
作者が美鈴のことを中国で呼ばれていると思ったらそれはそれで
いいのではないでしょうか。
またフランドールの狂気とか性格について米で書かれてましたが、
フランドールって原作でも少々気がふれている程度しか書かれておらず、
狂気なんて言葉は一切ありません。(少なくとも紅魔のおまけtextには)
前編のむかついたからメイドを壊しちゃうだだっこような、それくらいのもので
あっても全然問題ないと思うのです。

酷評してる人は少し「二次設定の東方」にひっぱられすぎだと感じました。
あと最近の風潮なのか、美鈴=中国と呼ばれることに拘りすぎかと・・・
東方の二次創作は細かい設定があまりないからこそ、色々な人の幻想郷が楽しめる、
そういうものだと思います。

これからも期待してます。
5.70名前ガの兎削除
面白い、話の骨組みはしっかりしてると思うしフラン様の動きもいいと思う。

が、それを支える脇キャラ いきなり病気で死んでしまうレミリア様と少し説明が少なすぎる感はある。
自分の中にある結末を急ぐあまりに流れを速くしてしまったのかねぇ、書き込み量を増やせばもっと面白くなると自分は思う。

読めるレベルの面白さはあったし自己嫌悪レベルの失敗なんて人生で何回もするもんだし、ウダウダしないで次作に取り掛かれば良いと思うよ。
(゚∀゚)オヂサンは物語を書ける人を応援します。
7.100名前が無い程度の能力削除
むしろよかったかと。私的にはこういう話も有りかな、と思いました。誰かを超えたいと本当に思った時、あがくものですよね?
9.60名前が無い程度の能力削除
悪口メイドさんは後で咲夜かチュリーあたりに壊れない程度に痛い目にあってると空想中
10.60名前が無い程度の能力削除
もうちょっと流れと見せ場が欲しかったですー
13.70三文字削除
フランの狂気を前面に出そうとして少々鼻につくところや、レミリア病死の説明不足などの欠点は有るものの、全体的に面白く読めました。
他の方も言っておられるように、もう少し書き込みの量を増やしていけば良かったと思います。
酷評にめげずに頑張ってください。
16.100名前が無い程度の能力削除
なぜこんな酷評・・・?
普通によいとおも
17.50ボカァ好きです、この話削除
説明不足な感が否めませんが、
スラスラと頭に入ってくる構成で読みやすかったです。

『紅魔館は、フラン。貴方が守るのよ。紅魔館の全てを貴方が守るのよ。咲夜を、パチュリーを、中国を、メイドたちを、守るのよ。』

ここの部分で、美鈴ではなく中国だったのだけが私的に非常に惜しまれます。
あわれ中国w
19.100鬼干瓜削除
面白かったですよ。なんでこんな荒れて(ry

でもやっぱ中国は気になるな・・・。
ほとんどのSSで『中国』ってあだ名は若干蔑みがちに使われてますからね。
その辺に引きずられて、シリアス話に中国が使われると美鈴好きな人にとっては「えー・・」って感じになる要因になりえますからね、アレは。
まぁ一番引きずられてるのは俺だけど。
20.80削除
あれ? あれれ?

と少々思うところはありましたが、話自体は面白いと思います。

書き終わった後に読み返して違和感がないかとか、色々推敲してみるとよいかもしれません。
22.10名前が無い程度の能力削除
 反魂さんのレスが消えちゃったので今さら蒸し返すようで何ですが。
 相手に指摘や批評を求めるのであれば、相応に作品を練り上げてからそうするべきだったと私は思います。

 話の筋自体は斬新で面白かったのですが、違和感の強さがそれを打ち消してしまっているように感じました。確かに二次創作での解釈は自由ですが、それでも間違えてはいけない部分を間違えているという気がしてなりません。そして前のレスで言われているように全体的に説明不足で、「ただ書きたいことを書いた」だけという感が非常に強く出ているように思われます。
 評価を纏めると、某氏の言葉を借りれば「非常に惜しい」というところになります。もっと面白く、もっと人の目をひきつけられる題材なのに此処で止めてしまったことが悔やまれる作品でした。

 次回に期待しています。
24.無評価ライス削除
みなさん本当にありがとうございます。
もう、ホントに嬉しいです。まじで。
なんか、このページに来るのが凄く恐かったです。
でも、勇気出してきて良かった。

中国。
これはもう、本当に気をつけます。



このページ、一回消えてしまったんですけど、
酷評は確かに辛かったですけど、
でも、的を射ていました。


ていうか、私、本当に傲慢でした。
すみません。
本当に面白くて心に残る小説を描けるようになったら、
そのときにやっと周りに口を出す事が出来るんだと思いました。
それまでは、
無口に黙って腕を練り上げたいと思います。

消えてしまった(消してしまった)人たちのレスも、
きちんと私は覚えていますので。

読んでくださったがた、ありがとうございました。
あー。なんかほっとした。ホントにめげそうだったんで。


あー、まんじゅう怖くない。
28.無評価名前が無い程度の能力削除
今更な感はあるものの、消えちゃったコメントで中国に違和感を
覚えた書いた者なんですが、その理由がわかりました。

中国ってのはある意味「蔑称」じゃないですか。
上のものがそれで呼ぶだけならまだしも、下のもの(メイド)が
中国と呼ぶだけでなく、それに「様」を付けてるのが違和感を
生み出してると思います。
様を付けて発言内容的にも美鈴を侮辱しているわけではないのに、
「中国」と呼ぶ。
たとえるなら「バカ様、キチガイ様」とか呼んでるような感じで、
これが非常に大きな違和感を生み出しているのだと思います。
29.50名前が無い程度の能力削除
蔑称では無く、愛称・呼び名・あだ名という考えもあるよ
30.50名前が無い程度の能力削除
今後に期待かな
正直に言うと好きな書き方じゃないんだけど、それを差し引いても良かった
31.30名前が無い程度の能力削除
なんでデリート? 落ち着けって話?
酷評された程度でデリートするという感情がわからないし
酷評されたコメント消したかったという意思だったら失礼すぎるし
批評自体あんまり気にすることでもないだろうと思うが、そこは人それぞれか
状況が良くわからないけどそこそこ楽しめたので次作に期待
32.無評価ライス削除
デリートは、意図的にやったのではないです。
じぶんのレスが不適切だったので、
じぶんのレスを消そうとしたのですが、
誤って作品自体を消してしまったという……すみませんでした。
38.80Admiral削除
レミリアが亡くなるという結末がちょっと悲しいですが、楽しめました。
47.100名前が無い程度の能力削除
なんでお前たちはいつもそうなんだ
素直に面白いって言いなさいよ


おもしろかった
53.90名前が無い程度の能力削除
フランが好きな私としては、フランが少しキチガイで残念でした。でもキチガイという設定にすることによって、最後の生まれ変わったフランが輝くんですよね。
だから過程はどうあれ生まれ変わったフランは最高でした。
こういう「色々な事があったが、最後は〇〇になった」系のストーリーは好きですね。

それと、やはり美鈴と中国の使い分けは大事ですね。ギャグじゃなければ基本、中国は使用しなくて良いと思います。
55.60閑古鳥削除
ストーリーのプロットは巣ばらしと思うますが、それを表現するところが惜しい、と感じました