「メリー、見てみてこれ、狐を捕まえたのよ」
「こーん…………」
蓮子に呼び出されて校舎裏側の人気の無い場所。
尻尾を掴み掲げられる狐が居た。
美しい金色の毛並み。シャープな体のフォルム。
小さい顔に高い鼻。どこか理知的な印象を抱かせる鋭い瞳。
「凄いよねメリー、この狐、尻尾が九本もあるのよ!」
「こーん…………」
っていうかこれ、藍だ。
私は即座に妖力会話接続要求を投げ、プロトコルには全二重通信方式を採用。
SYN、SYN/ACK、ACK、コネクション確立。通話開始。音声を使用しない妖力通信だ。
(はぁ!? なんであんた捕まっちゃってんの!?)
(ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! 許してください紫様!)
(ごめんなさいじゃないでしょ! これどうするつもり!?)
(ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! 助けてください紫様!)
(九尾の狐ともあろう者が霊力さえ使えない一般人に! って言うか蓮子に! 何で捕まるのよ!)
(木に油揚げが吊るされていたんです! 長岡でしか手に入らないウルトラ油揚げだったんです!)
(それって蓮子の罠よね?)
(巧妙な罠でした)
(ただの逆さ吊りトラップよね?)
(死に掛けましたよ)
(あなたバカなの?)
「ねね、スッゴク綺麗だよね! 九尾の狐なんてびっくりだよねメリー!」
「まあ、――ええ、そうね。確かに綺麗だけど」
(なんで外界に来てる訳? 幻想郷の仕事はどうしたのよ!)
(天魔様に、紫様を呼んでくるように言われまして)
(寝てたでしょ?)
(はい寝てました)
(この時間は非接続状態だって知ってるでしょ?)
(はい知っています。蓮子様と一緒だという事も知っています)
(蓮子とちゅっちゅするために来てるの、知ってるでしょ?)
(知っています。仕事を放りだしてでも毎日ちゅっちゅしてるのも、知ってます)
(じゃあなんで来たの?)
(だから、天魔様に呼ばれまして)
(何の用件よ! 後にしてって言えなかったの!?)
(……紫様、覚えがある筈ですよ?)
(何を偉そうに! 私の手を煩わせておきながら!)
この間、わずか0.5秒。
「きっとその狐、腹黒いわよ」
「ええ!? なんて!?」
「綺麗だけど、見た目に惑わされちゃダメよ」
「そ、そうなの? なんで?」
「どこかで飼い主の悪口も言ってるかも」
「ちょ、ちょっと、メリーさーん?」
(今日は年末の帳簿締め切りの日です。それで報告書を天魔様に提出したんです。
そうしたら突っ込まれました。雑費が¥30,000、実額と合わないんですよ)
(え、そうなの。そ、そう。ふぅん。それで、調査をしろって天魔に言われたわけね?)
(違います。調査なら私がしました。あちこち駆けずり回って大変でしたよ紫様)
(あらご苦労様。それで原因は、……分かったのかしら?)
(分かりました)
(流石私の式ね。優秀だわ。今日帰ったら人里で油揚げを買ってあげ――、)
(紫様、白状するなら今の内ですよ。全てわかってるんですからね)
(あら、何が分かってるっていうのかしら? 勘定科目の不整合くらい計算し直せば見つかるでしょう?)
(そうですね。いつも通り“河童皿データセンタ”へ問い合わせて、ログを出力しました。
1年のレコードを全て抽出してもらって、総数3億レコードにも及びました。
それを一つずつ調べるわけです。かなりの労働でしたよ)
(藍?)
(なんでしょうか)
(取引をしましょう)
(いいですよ)
(聞き分けが良い部下で助かるわ)
「ねえ蓮子、ところでその狐をどうするつもりなの?」
「そりゃ、ケージを買って家で飼うか、狐鍋にするか、解剖するか」
「可哀そうよ蓮子。離してあげない?」
「えー? だって九尾だよ? 何か特別な“力”があってもおかしくないよ」
「じゃあもし特別な能力を持ってたとしても、蓮子はそれを調べられるのかしら?」
「あ、そうだね。じゃあ国立異能力研究センターに引き渡すのもいいかもね。
近頃は“能力”の研究も進んでるみたいだし、きっと有益な材料になるよ」
「こーん…………」
(あなたは、私の記録をごまかす。私は、あなたを助ける)
(シンプルでいいですね。私も死にたくないですから)
(で、あなたの調査の結果を聞きましょうか)
(雑費勘定科目が不正に操作されていないかレコードを調べました。その結果、数レコードが見つかりました。
しかし、全て週次の帳簿整理で、河童のオペレーターさんが操作する時期と重なっていました。
そのため、週次作業上の操作ミスをオペレーターさんが隠そうとしたものだと。
それで結果年次締切で不整合が出てしまったと、そう思ったんです。
事実、結果的にはこれでもつじつまが合います)
(ええ、その後あなたは?)
(私はさらに、その日の入館履歴を調べました。C6F9-G05ラックの開錠履歴を調べました。
その結果、週次作業の際の時間帯、まさしくそのレコードが発生する時間帯に。
紫様がピンポイントで、勘定操作DBコンソールであるMDB06を使用していた記録が見つかりました)
(MDB06の操作ログは調べた?)
(はい調べました)
(おかしい所は無かったはずよ)
(はい。紫様は3レコードほどログを参照し、5分ほどでログアウトしています。
その操作は閲覧アカウントだったので、内部情報に変更はありません)
(じゃあ――、)
(しかし、その時刻に紫様が河童皿DCへ来ていたことは事実です)
(ふふふ、証拠にはならないわ)
(そして私は、当時紫様を見た者はいないか、オペレーターさんに尋ねました。
オペレーターさんだけでも400人を超えます。ですが片っ端から聞きました。
その結果、紫様がMDB06へ操作を行った動画が見つかったのです)
(いいえ、おかしいわ。あれはコントロールルームから内部接続で使ったはずよ。
河童のコマンダさんに掛け合って使わせてもらったの。だから記録は残っていないわ)
(その河童のコマンダさんが、記録を取っていたんです)
(なんと)
(リモートデスクトップを記録する動画ソフトです。
コマンダさんが自主的に作業証跡を残していたんです。
ログイン履歴はコマンダで残りますが、口に戸は立てられません。
あとは簡単です。紫様が操作した履歴から動画を見るだけです)
(やられたわ。さすが河童皿DCね。すばらしい対応だわ)
「うーん、分かったわ。じゃあ蓮子、引き渡す前に私にもその狐、だっこさせてよ。
見れば見るほど綺麗な毛並みね。顔だって小さい美人さんだわ。
鳴き声だって綺麗に違いないし、きっと特別なのね。ね? 良いでしょ蓮子」
「いいよ。噛まれない様にね。まあこの子凄く大人しいから心配ないと思うけれど」
(それでちょっとこれは私の興味のために聞きたいのですが)
(ええ良いわよ。なにかしら)
(そこまで操作して手に入れた¥30,000を、何に使ったのですか?)
(そりゃ、蓮子とのデートに)
(は? デート?)
(そそ。こっちの私の財布が寂しくなっちゃってね。それで)
(余ったんですよね?)
(いいえ綺麗に使ったわ)
(1円も残らなかったんですか?)
(うん)
(一日で?)
(ええ)
(結構大金ですよね?)
(まあね)
(一番大きな出費は?)
(宿泊代。そこらのうす汚いホテルは嫌だったの)
(はあ、……お盛んですね)
(素晴らしい一日になったわ)
(……では紫様、軽く腕を噛むので、タイミングを合わせてくださいね)
(ええ、それじゃ、せーのっ)
(せーのっ)
「あイタッ!」
「わ!? 大丈夫メリー!?」
「大丈夫。甘噛みされただけよ」
「傷見せてみなさい。……あら、本当に甘噛みだったのね」
「うん、でも蓮子、狐逃がしちゃったわ。ごめんなさい」
「心配ご無用よ。遠隔操作で電撃を与えるようにしてあるから」
「え? 電撃?」
「うん。薄いチップにスタンガン機能があるのよ。えいっ」
「こおおおおぉぉおおぉぉおおおおおぉぉぉおおおおぉぉぉん!?」
「あっちね。行きましょうメリー」
「え、ええ」
(藍、大丈夫?)
(…………)
(らーん、応答しなさーい)
(…………ピピッ! 接続がタイムアウトしました。NO SIGNAL)
(あらら、電気ショックで気絶しちゃったみたいね)
意識が戻れは接続は回復する為、そのままにして蓮子と走る。
20メートルほど行ったところに白煙を細く上げて倒れる藍が居た。
心なしか金色の毛並みが四方に広がり、フグみたいな見かけになっている。
「ああ、かわいそうに!」
「ちょっと、強すぎたかな」
私は藍を抱き上げ、体に貼られている筈のチップを探した。
だが、見つからない。チップなどどこにも貼られていないのだ。
「ちょっと蓮子! 流石にやり過ぎよ! ひどいじゃない!」
「ご、ごめん、反省する」
「チップはどこに貼ったの!? 取ってあげましょうよ!」
「そんな事言われましても」
「埋め込んだの!? まさか注射器で!?」
「いんや。油揚げに挟んだ」
「え? お腹の中?」
「極小だから、排泄物と一緒に出てくるよ」
(ピピッ! 接続が回復しました。通話を再開します。――う、うう、ゆかり、さま?)
(聞いた藍!? 食べた油揚げにチップが埋め込まれていたの! 吐き出しなさい!)
(うう、イヤ、です)
(どうして!?)
(ウルトラ油揚げを、吐くくらいなら――)
(バカ言ってんじゃないわよ!)
(電撃の方がマシ、です)
(あなたが死んだら私の粉飾疑惑を誰が撤回するのよ!)
(絶対に吐きませんよ。うぐぐ、ウルトラ油揚げは、――私が守るッ!)
私は藍の尻尾を掴み、逆さ吊りにして背中を叩いた。
「吐け! 吐くのよ! さあ早く!」
「ちょ、ちょっとメリー!? いきなりそんな」
「蓮子は黙ってて! さあ吐け! 吐き出せこのバカ狐!」
「うぐぐぐ! 吐きませんッ! ウルトラ油揚げは私の物ですッ!」
「ぎゃあああああああしゃべったああああああ!?」
「ぎゃあああああああしゃべったああああああ!?」
蓮子がいきなりテンションを上げて、藍の頬を両手で挟み込んだ。
「ねえ今あなた喋ったよね!? 吐きませんって言ったよね!?」
「……こーん」
藍の頭を上下に揺さぶる蓮子。
「お願い! 喋って! 何でもいいから! 人語を喋れる狐がいたんだ!?」
「こ、お、お、お、ん、ん、ん」
(ちょっとあんた、なに喋ってるワケ!? 死にたいの!?)
(ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! ついつい!)
(いいこと!? もう二度と喋るんじゃないわよ! フォローしきれないからね!?)
(はい、大丈夫です! もう喋りませんから! 絶対喋りませんから!)
そこで蓮子は藍の瞳を見詰め、至近距離でこう言った。
「喋ったらウルトラ油揚げ100枚あげるから!」
「こんにちは蓮子様。ご機嫌うるわしゅう。私は藍と言います以後お見知りおきを」
「うおおおおおおおいいいいいいいおまええええええ!?」
結局この後、私が幻想郷で大妖怪をやっている事も。
博麗大結界の存在も、幻想郷の事も、全部蓮子にバレました。
めでたしめでたし。
「こーん…………」
蓮子に呼び出されて校舎裏側の人気の無い場所。
尻尾を掴み掲げられる狐が居た。
美しい金色の毛並み。シャープな体のフォルム。
小さい顔に高い鼻。どこか理知的な印象を抱かせる鋭い瞳。
「凄いよねメリー、この狐、尻尾が九本もあるのよ!」
「こーん…………」
っていうかこれ、藍だ。
私は即座に妖力会話接続要求を投げ、プロトコルには全二重通信方式を採用。
SYN、SYN/ACK、ACK、コネクション確立。通話開始。音声を使用しない妖力通信だ。
(はぁ!? なんであんた捕まっちゃってんの!?)
(ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! 許してください紫様!)
(ごめんなさいじゃないでしょ! これどうするつもり!?)
(ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! 助けてください紫様!)
(九尾の狐ともあろう者が霊力さえ使えない一般人に! って言うか蓮子に! 何で捕まるのよ!)
(木に油揚げが吊るされていたんです! 長岡でしか手に入らないウルトラ油揚げだったんです!)
(それって蓮子の罠よね?)
(巧妙な罠でした)
(ただの逆さ吊りトラップよね?)
(死に掛けましたよ)
(あなたバカなの?)
「ねね、スッゴク綺麗だよね! 九尾の狐なんてびっくりだよねメリー!」
「まあ、――ええ、そうね。確かに綺麗だけど」
(なんで外界に来てる訳? 幻想郷の仕事はどうしたのよ!)
(天魔様に、紫様を呼んでくるように言われまして)
(寝てたでしょ?)
(はい寝てました)
(この時間は非接続状態だって知ってるでしょ?)
(はい知っています。蓮子様と一緒だという事も知っています)
(蓮子とちゅっちゅするために来てるの、知ってるでしょ?)
(知っています。仕事を放りだしてでも毎日ちゅっちゅしてるのも、知ってます)
(じゃあなんで来たの?)
(だから、天魔様に呼ばれまして)
(何の用件よ! 後にしてって言えなかったの!?)
(……紫様、覚えがある筈ですよ?)
(何を偉そうに! 私の手を煩わせておきながら!)
この間、わずか0.5秒。
「きっとその狐、腹黒いわよ」
「ええ!? なんて!?」
「綺麗だけど、見た目に惑わされちゃダメよ」
「そ、そうなの? なんで?」
「どこかで飼い主の悪口も言ってるかも」
「ちょ、ちょっと、メリーさーん?」
(今日は年末の帳簿締め切りの日です。それで報告書を天魔様に提出したんです。
そうしたら突っ込まれました。雑費が¥30,000、実額と合わないんですよ)
(え、そうなの。そ、そう。ふぅん。それで、調査をしろって天魔に言われたわけね?)
(違います。調査なら私がしました。あちこち駆けずり回って大変でしたよ紫様)
(あらご苦労様。それで原因は、……分かったのかしら?)
(分かりました)
(流石私の式ね。優秀だわ。今日帰ったら人里で油揚げを買ってあげ――、)
(紫様、白状するなら今の内ですよ。全てわかってるんですからね)
(あら、何が分かってるっていうのかしら? 勘定科目の不整合くらい計算し直せば見つかるでしょう?)
(そうですね。いつも通り“河童皿データセンタ”へ問い合わせて、ログを出力しました。
1年のレコードを全て抽出してもらって、総数3億レコードにも及びました。
それを一つずつ調べるわけです。かなりの労働でしたよ)
(藍?)
(なんでしょうか)
(取引をしましょう)
(いいですよ)
(聞き分けが良い部下で助かるわ)
「ねえ蓮子、ところでその狐をどうするつもりなの?」
「そりゃ、ケージを買って家で飼うか、狐鍋にするか、解剖するか」
「可哀そうよ蓮子。離してあげない?」
「えー? だって九尾だよ? 何か特別な“力”があってもおかしくないよ」
「じゃあもし特別な能力を持ってたとしても、蓮子はそれを調べられるのかしら?」
「あ、そうだね。じゃあ国立異能力研究センターに引き渡すのもいいかもね。
近頃は“能力”の研究も進んでるみたいだし、きっと有益な材料になるよ」
「こーん…………」
(あなたは、私の記録をごまかす。私は、あなたを助ける)
(シンプルでいいですね。私も死にたくないですから)
(で、あなたの調査の結果を聞きましょうか)
(雑費勘定科目が不正に操作されていないかレコードを調べました。その結果、数レコードが見つかりました。
しかし、全て週次の帳簿整理で、河童のオペレーターさんが操作する時期と重なっていました。
そのため、週次作業上の操作ミスをオペレーターさんが隠そうとしたものだと。
それで結果年次締切で不整合が出てしまったと、そう思ったんです。
事実、結果的にはこれでもつじつまが合います)
(ええ、その後あなたは?)
(私はさらに、その日の入館履歴を調べました。C6F9-G05ラックの開錠履歴を調べました。
その結果、週次作業の際の時間帯、まさしくそのレコードが発生する時間帯に。
紫様がピンポイントで、勘定操作DBコンソールであるMDB06を使用していた記録が見つかりました)
(MDB06の操作ログは調べた?)
(はい調べました)
(おかしい所は無かったはずよ)
(はい。紫様は3レコードほどログを参照し、5分ほどでログアウトしています。
その操作は閲覧アカウントだったので、内部情報に変更はありません)
(じゃあ――、)
(しかし、その時刻に紫様が河童皿DCへ来ていたことは事実です)
(ふふふ、証拠にはならないわ)
(そして私は、当時紫様を見た者はいないか、オペレーターさんに尋ねました。
オペレーターさんだけでも400人を超えます。ですが片っ端から聞きました。
その結果、紫様がMDB06へ操作を行った動画が見つかったのです)
(いいえ、おかしいわ。あれはコントロールルームから内部接続で使ったはずよ。
河童のコマンダさんに掛け合って使わせてもらったの。だから記録は残っていないわ)
(その河童のコマンダさんが、記録を取っていたんです)
(なんと)
(リモートデスクトップを記録する動画ソフトです。
コマンダさんが自主的に作業証跡を残していたんです。
ログイン履歴はコマンダで残りますが、口に戸は立てられません。
あとは簡単です。紫様が操作した履歴から動画を見るだけです)
(やられたわ。さすが河童皿DCね。すばらしい対応だわ)
「うーん、分かったわ。じゃあ蓮子、引き渡す前に私にもその狐、だっこさせてよ。
見れば見るほど綺麗な毛並みね。顔だって小さい美人さんだわ。
鳴き声だって綺麗に違いないし、きっと特別なのね。ね? 良いでしょ蓮子」
「いいよ。噛まれない様にね。まあこの子凄く大人しいから心配ないと思うけれど」
(それでちょっとこれは私の興味のために聞きたいのですが)
(ええ良いわよ。なにかしら)
(そこまで操作して手に入れた¥30,000を、何に使ったのですか?)
(そりゃ、蓮子とのデートに)
(は? デート?)
(そそ。こっちの私の財布が寂しくなっちゃってね。それで)
(余ったんですよね?)
(いいえ綺麗に使ったわ)
(1円も残らなかったんですか?)
(うん)
(一日で?)
(ええ)
(結構大金ですよね?)
(まあね)
(一番大きな出費は?)
(宿泊代。そこらのうす汚いホテルは嫌だったの)
(はあ、……お盛んですね)
(素晴らしい一日になったわ)
(……では紫様、軽く腕を噛むので、タイミングを合わせてくださいね)
(ええ、それじゃ、せーのっ)
(せーのっ)
「あイタッ!」
「わ!? 大丈夫メリー!?」
「大丈夫。甘噛みされただけよ」
「傷見せてみなさい。……あら、本当に甘噛みだったのね」
「うん、でも蓮子、狐逃がしちゃったわ。ごめんなさい」
「心配ご無用よ。遠隔操作で電撃を与えるようにしてあるから」
「え? 電撃?」
「うん。薄いチップにスタンガン機能があるのよ。えいっ」
「こおおおおぉぉおおぉぉおおおおおぉぉぉおおおおぉぉぉん!?」
「あっちね。行きましょうメリー」
「え、ええ」
(藍、大丈夫?)
(…………)
(らーん、応答しなさーい)
(…………ピピッ! 接続がタイムアウトしました。NO SIGNAL)
(あらら、電気ショックで気絶しちゃったみたいね)
意識が戻れは接続は回復する為、そのままにして蓮子と走る。
20メートルほど行ったところに白煙を細く上げて倒れる藍が居た。
心なしか金色の毛並みが四方に広がり、フグみたいな見かけになっている。
「ああ、かわいそうに!」
「ちょっと、強すぎたかな」
私は藍を抱き上げ、体に貼られている筈のチップを探した。
だが、見つからない。チップなどどこにも貼られていないのだ。
「ちょっと蓮子! 流石にやり過ぎよ! ひどいじゃない!」
「ご、ごめん、反省する」
「チップはどこに貼ったの!? 取ってあげましょうよ!」
「そんな事言われましても」
「埋め込んだの!? まさか注射器で!?」
「いんや。油揚げに挟んだ」
「え? お腹の中?」
「極小だから、排泄物と一緒に出てくるよ」
(ピピッ! 接続が回復しました。通話を再開します。――う、うう、ゆかり、さま?)
(聞いた藍!? 食べた油揚げにチップが埋め込まれていたの! 吐き出しなさい!)
(うう、イヤ、です)
(どうして!?)
(ウルトラ油揚げを、吐くくらいなら――)
(バカ言ってんじゃないわよ!)
(電撃の方がマシ、です)
(あなたが死んだら私の粉飾疑惑を誰が撤回するのよ!)
(絶対に吐きませんよ。うぐぐ、ウルトラ油揚げは、――私が守るッ!)
私は藍の尻尾を掴み、逆さ吊りにして背中を叩いた。
「吐け! 吐くのよ! さあ早く!」
「ちょ、ちょっとメリー!? いきなりそんな」
「蓮子は黙ってて! さあ吐け! 吐き出せこのバカ狐!」
「うぐぐぐ! 吐きませんッ! ウルトラ油揚げは私の物ですッ!」
「ぎゃあああああああしゃべったああああああ!?」
「ぎゃあああああああしゃべったああああああ!?」
蓮子がいきなりテンションを上げて、藍の頬を両手で挟み込んだ。
「ねえ今あなた喋ったよね!? 吐きませんって言ったよね!?」
「……こーん」
藍の頭を上下に揺さぶる蓮子。
「お願い! 喋って! 何でもいいから! 人語を喋れる狐がいたんだ!?」
「こ、お、お、お、ん、ん、ん」
(ちょっとあんた、なに喋ってるワケ!? 死にたいの!?)
(ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! ついつい!)
(いいこと!? もう二度と喋るんじゃないわよ! フォローしきれないからね!?)
(はい、大丈夫です! もう喋りませんから! 絶対喋りませんから!)
そこで蓮子は藍の瞳を見詰め、至近距離でこう言った。
「喋ったらウルトラ油揚げ100枚あげるから!」
「こんにちは蓮子様。ご機嫌うるわしゅう。私は藍と言います以後お見知りおきを」
「うおおおおおおおいいいいいいいおまええええええ!?」
結局この後、私が幻想郷で大妖怪をやっている事も。
博麗大結界の存在も、幻想郷の事も、全部蓮子にバレました。
めでたしめでたし。
一度、ラストまで考えぬいた作品とか読んでみたいです。
というか早く長編ry
ゆかりんもゆかりんで思わずにやけてしまった。
蓮子とちゅっちゅするためとかすげー欲望。
恐れ入りました(作者さんに)。
いい具合の壊れ方で面白いし
コーヒー吹いた、なんてありきたりなことはいいません。
鼻水がディスプレイに飛びました。
面白かったです!
長編の続きお待ちしてます。
こうゆう緩い感じ、嫌いじゃないっす
…よしちょっと新潟行ってくる
長編より、するっと読めて良かったです。
・・・現金三十万相当のまとまったお金が雑費でごまかせるのだろうか・・・?(結局わかってない