宴会も終わりが近づいていた。
誰に言われるでもなく、皆騒ぐのを止め思い思いに語り合う。それはいつもの博麗神社の宴だった。
ただ神社の主である巫女だけがその輪に入らずにいるのを私は知っていた。広場から少し離れて軒下で皆を眺めている。
「いい子の巫女さんはもうおねむの時間かしら?」
「……少し寒くなったなと思っただけよ」
「スベっちゃったかしら」
景気づけにからかってやろうと思ったのに。巫女の表情は依然冴えない。
ただ二人何をするでもなく宴を眺める。
いつもの様に魔理沙を筆頭に宴会は最後の盛り上がりに入っていた。
「霊夢~。ほら、紅葉!」
萃香が、その力で集めた紅葉を見せにやって来た。山になった紅葉の落ち葉は秋の終わりを告げていた。
「あら綺麗ね。焼き芋でもしようかしら」
「えー焼き芋!?やったー」
「皆には内緒よ。宴会が終わった後ね」
萃香はにっこりと笑って宴会へ戻っていった。あの調子ならすぐにでもバレてしまうだろうな。
「本当に花より団子ねぇ。元気が無いのはお腹が減ってた所為?」
「……秋も終わりねと思っただけよ」
「そうね。もう冬はすぐそこね」
「紫に同意されると気持ち悪いわね」
遠く、打ち上げ花火の音が聞こえた。全く、あの白黒ときたら季節感もあったもんじゃないわ。
◆
目覚めると初雪が降っていた。
冥界にも雪が降っただろうかと考えたが、降らないよりは楽しかろうと思い考えるのは止めた。
夜の月明かりがうっすらと反射して、部屋を照らした。私は幽々子を起こしてやろうと思った。
「別に珍しいものでもないわよ……」
「つれないわねぇ」
「だって紫は冬になると居ないんだもの。そりゃ珍しいかもしれないわね」
そういえば私は冬眠を先送りにしていた。別に理由なんて無いが何となくそうしていた。
「嘘吐き紫」
「何よそれ」
知らない、といって幽々子は布団に潜ってしまった。私も対抗して追い出しにかかる。
「サンタクロースでも待ってるんでしょう?」
そうかも知れない。
◆
冬の香霖堂にはいつも誰かしらが買い物でもないのに居座っていた。
というのも香霖堂にはストーブがあるからだが、そのもっぱらは誰かさんに占領されている。
「用途が間違ってるんじゃない?霖之助さんの眼も当てにならないわね」
「失礼な。これは副次効果というやつさ」
「『魔理沙ホイホイ』に改名ね」
「あぁ、紅魔館の門番が泣いて喜ぶ一品さ」
霖之助さんと他愛無い雑談をしていると噂の捕獲対象が現れた。私は素早く身を隠す。
「よう香霖。ちょっと頼みがあるんだが」
「何度来てもアレは非売品だぞ」
霖之助さんは例のストーブをどうしても手放したくないらしい。
「……別に欲しかないぜ。それより修理して貰いに来たんだ」
そう言って魔理沙は小さな袋を取り出した。
「外の世界の物らしいんだが」
「ふむ……名前は『使い捨てカイロ』、用途は暖房。使い捨てというだけあってもう暖かくはなるまい」
「何だ。味気ないもの作るんだな」
要らないから売ってやるよと捨て台詞を残して魔理沙は帰っていった。
霖之助さんは何ともいえない表情で使い捨てカイロを眺めている。
「流石に売り物にはならないんじゃない?」
「確かに売り物にはならないが……それより余計な気を使うんじゃない。君らしくも無い」
視線を使い捨てカイロに注いだままで呟くように霖之助さんが言った。
「あら。別にそんなつもりじゃなかったわ」
「………まぁいいさ。君が思うような所は無かったし、これからも無いからね。わかったらウチに張り付くのは止めてくれよ」
「霖之助さん。あのストーブ、叩き壊してあげてもいいのよ?」
視線を合わせないままに剣呑な言葉のぶつけ合いが続く。
このストーブは境界だった。壊せばその本当の意味がわかってしまう。
「……魔理沙は間違っているな。使い捨てだからこそ用途が明快という利点がある」
「そうかも知れないわ」
◆
阿礼ちゃんはいつも通り家で何やら執筆活動に専念していた。
先日一仕事終えて少し肩の荷が降りたという所だろう。しかし折角女の子なのだから掃除ぐらいはして欲しい。
部屋には大量の紙が投げ散らかされており、着物も皺が目立っている。
「阿求、あなた食事は?」
「まだです」
「しょうがないわね、何か作るわ」
阿求は天下の大妖怪である私に食事を作らせる数少ない人間の一人だった。
「あなたってどうもお世話したくなるのよねぇ」
「そりゃどうも」
二人で遅い夕食を取りながら、私はその数を数えてみた。
「あんまり思い出せないわ。やぁねぇ」
「妖怪は長生きですからね。そんなもんでしょう」
「阿求なら全部覚えてられるかしら?」
「どうでしょうね。やっぱり記憶ですから永久には残りませんよ」
だから人は本を書くのだろうと阿求は言った。人間は忘れるからこそ大事な事だけを残し、後世へ繋げられるのだと。
「私は今の幻想郷は素晴らしい世界だと思います」
ただし。
「人間と妖怪の境界を誤らなければ、の話ですが」
「どういう事かしら?」
「人と妖怪は今まで一定の距離を保ってきました。しかし人と妖怪はこれからぐっと近づいていくでしょう」
阿求の話を聞きながら、私は何気なく彼女の書いた幻想郷縁起を手に取った。
そこには今の幻想郷にはいささか不釣合いな脅威としての私達が綴られている。
「人間と妖怪の境界が曖昧になるという事は、幻想郷のルール……妖怪退治をする人間と人を襲う妖怪という構図が
変わるという事です」
「境界が消えた先にあるのは名前の無い混じり合いね」
スペルカードルールはいうなれば運動会の赤組白組。その程度の無邪気な分別に過ぎない。
「人と妖怪の対立が消えた先にあるのは妖怪と妖怪の対立なのではないか。私はそれだけを恐れています」
そう言って阿求は味噌汁の残りを静かに啜り、合掌してみせた。
「どうもご馳走様でした、紫」
「徹夜は体に毒よ。ほどほどにしておきなさい」
そうですね、と阿求は笑う。先ほどの未来を憂う賢者の顔は何処へやら、あどけない表情が刹那く見えた。
また来るわと言い残して振り向いた背に阿求はこう言った。
「私はそれほど心配してはいませんよ。ここには貴方と巫女が居るんですから」
果たしてそうなのだろうか。
◆
日付が変わろうかという夜遅くにも関わらず博麗神社には明かりが点いていた。
「こんばんわ霊夢。こんな時間まで夜更かしかしら?」
「……あんたこそまだ起きてたの」
外で雪が舞い始めていた。
「……何をしているの?実はあなたも冬眠の準備中だったりとか」
「明日が宴会だからその準備よ。全く、寒いんだから家でじっとしてなさいっての」
ぶつぶつと不平を言いながら準備を続ける。以外とマメな所がさっきの誰かさんと対象的だ。
「あら。一人より二人の方が暖かくていいじゃない」
「なら一人で準備する方の身にもなって欲しいもんだわ……そうだ!あんたの分が足りないじゃない」
「え、私?」
不意に話を降られてつい驚いてしまう。
「てっきりもう寝てるんじゃないかって勘定に入れてなかったのよね……」
「別に気にしないわ」
「私が気にするのよ」
何故そこまで気にかけるのか私にはわからない。この巫女はいつも私を不思議がらせる。
「居ないよりは居てくれた方がいいのよ」
「あら嬉しいわ。夜更かしもしてみるものね」
霊夢はわざとらしくため息をついた。
「目を離すと何してるんだか分からないからよ」
二人でゆっくりと降る雪を肴に酌み交わす。
「……今年は眠らないの?」
珍しく霊夢が私に問う。
「親友のお化けが怖いから添い寝してくれないと眠れないの」
「何馬鹿なこと言ってるんだか」
彼女は笑った。私も笑った。
私はぼんやりと考えていた。
私の望む幻想郷の先を。霖之助さんは。阿求は。
隣に居る博麗霊夢は、どんな幻想郷を望むだろう。
「らしくないわね。スキマ妖怪さんはもうおねむの時間かしら?」
「……少し考え事をしてただけよ」
「だかららしくないって言ってんの」
最後の一杯をぐいっと飲み干して言ってみせた。
「考えなんて。勘で決めればいいのよ」
「思いっきりらしいわね、霊夢」
「AかB。適当に決めなさい、あんたが決められないなら私が決めたげる」
選択肢はたったの二つ。様々な思いが一本の境界で区切られる。思いが右へ左へと錯綜する。
「決まったわ」
「紫は何考えてるかわかんないからなぁ。難しそうね……おでこ貸しなさい」
「え」
ぐっと霊夢の顔が近づいて、私のおでこと今日和した。
「…………Cね」
彼女は何事も無かったかのように離れて言った。
「AかBかって聞いといてCってのも無いんじゃない?」
「大方あんたが捻くれ者だからでしょう」
「そうかも知れないわ」
「そうよ。私の勘に間違いは無いわ」
霊夢は自身たっぷりに微笑む。
全く霊夢の勘は正しかった。先ほどの境界は彼女によっていとも容易く壊されてしまったのだから。
私は家に戻る事にした。藍でも捕まえて眠るとしよう。
「答えはCね。覚えておくわ」
「明日も来るんでしょう?私一人がお酒無しなんて許さないから」
「はいはい」
先ほど空けた一升瓶を見て私は苦笑する。不公平だから空けようと言ったのは私ではない。
「5時からだからね。忘れずに来るのよ」
「覚えておくわ」
「そんな事くらい忘れないでよ」
「私は絶対に忘れません」
「ところでさっきのAとBって何だったの?」
「忘れたわ」
本当にAとBの内容は忘れてしまった。だが別に構わないだろう。私の答えはCなのだから。
霖之助さんに謝りに行こう。
「前から思ってたけど、あなたってサンタクロースみたいね」
サンタクロースがすごいのは子供の一番欲しいものを全部知っている所だ。
「クリスマスはまだまだ先よ。それに私はどっちかっていうと貰う側なんじゃない?」
「じゃあお礼に私からプレゼントね。答えはCよ」
私は巫女のおでこにそっと口付けた。
誰に言われるでもなく、皆騒ぐのを止め思い思いに語り合う。それはいつもの博麗神社の宴だった。
ただ神社の主である巫女だけがその輪に入らずにいるのを私は知っていた。広場から少し離れて軒下で皆を眺めている。
「いい子の巫女さんはもうおねむの時間かしら?」
「……少し寒くなったなと思っただけよ」
「スベっちゃったかしら」
景気づけにからかってやろうと思ったのに。巫女の表情は依然冴えない。
ただ二人何をするでもなく宴を眺める。
いつもの様に魔理沙を筆頭に宴会は最後の盛り上がりに入っていた。
「霊夢~。ほら、紅葉!」
萃香が、その力で集めた紅葉を見せにやって来た。山になった紅葉の落ち葉は秋の終わりを告げていた。
「あら綺麗ね。焼き芋でもしようかしら」
「えー焼き芋!?やったー」
「皆には内緒よ。宴会が終わった後ね」
萃香はにっこりと笑って宴会へ戻っていった。あの調子ならすぐにでもバレてしまうだろうな。
「本当に花より団子ねぇ。元気が無いのはお腹が減ってた所為?」
「……秋も終わりねと思っただけよ」
「そうね。もう冬はすぐそこね」
「紫に同意されると気持ち悪いわね」
遠く、打ち上げ花火の音が聞こえた。全く、あの白黒ときたら季節感もあったもんじゃないわ。
◆
目覚めると初雪が降っていた。
冥界にも雪が降っただろうかと考えたが、降らないよりは楽しかろうと思い考えるのは止めた。
夜の月明かりがうっすらと反射して、部屋を照らした。私は幽々子を起こしてやろうと思った。
「別に珍しいものでもないわよ……」
「つれないわねぇ」
「だって紫は冬になると居ないんだもの。そりゃ珍しいかもしれないわね」
そういえば私は冬眠を先送りにしていた。別に理由なんて無いが何となくそうしていた。
「嘘吐き紫」
「何よそれ」
知らない、といって幽々子は布団に潜ってしまった。私も対抗して追い出しにかかる。
「サンタクロースでも待ってるんでしょう?」
そうかも知れない。
◆
冬の香霖堂にはいつも誰かしらが買い物でもないのに居座っていた。
というのも香霖堂にはストーブがあるからだが、そのもっぱらは誰かさんに占領されている。
「用途が間違ってるんじゃない?霖之助さんの眼も当てにならないわね」
「失礼な。これは副次効果というやつさ」
「『魔理沙ホイホイ』に改名ね」
「あぁ、紅魔館の門番が泣いて喜ぶ一品さ」
霖之助さんと他愛無い雑談をしていると噂の捕獲対象が現れた。私は素早く身を隠す。
「よう香霖。ちょっと頼みがあるんだが」
「何度来てもアレは非売品だぞ」
霖之助さんは例のストーブをどうしても手放したくないらしい。
「……別に欲しかないぜ。それより修理して貰いに来たんだ」
そう言って魔理沙は小さな袋を取り出した。
「外の世界の物らしいんだが」
「ふむ……名前は『使い捨てカイロ』、用途は暖房。使い捨てというだけあってもう暖かくはなるまい」
「何だ。味気ないもの作るんだな」
要らないから売ってやるよと捨て台詞を残して魔理沙は帰っていった。
霖之助さんは何ともいえない表情で使い捨てカイロを眺めている。
「流石に売り物にはならないんじゃない?」
「確かに売り物にはならないが……それより余計な気を使うんじゃない。君らしくも無い」
視線を使い捨てカイロに注いだままで呟くように霖之助さんが言った。
「あら。別にそんなつもりじゃなかったわ」
「………まぁいいさ。君が思うような所は無かったし、これからも無いからね。わかったらウチに張り付くのは止めてくれよ」
「霖之助さん。あのストーブ、叩き壊してあげてもいいのよ?」
視線を合わせないままに剣呑な言葉のぶつけ合いが続く。
このストーブは境界だった。壊せばその本当の意味がわかってしまう。
「……魔理沙は間違っているな。使い捨てだからこそ用途が明快という利点がある」
「そうかも知れないわ」
◆
阿礼ちゃんはいつも通り家で何やら執筆活動に専念していた。
先日一仕事終えて少し肩の荷が降りたという所だろう。しかし折角女の子なのだから掃除ぐらいはして欲しい。
部屋には大量の紙が投げ散らかされており、着物も皺が目立っている。
「阿求、あなた食事は?」
「まだです」
「しょうがないわね、何か作るわ」
阿求は天下の大妖怪である私に食事を作らせる数少ない人間の一人だった。
「あなたってどうもお世話したくなるのよねぇ」
「そりゃどうも」
二人で遅い夕食を取りながら、私はその数を数えてみた。
「あんまり思い出せないわ。やぁねぇ」
「妖怪は長生きですからね。そんなもんでしょう」
「阿求なら全部覚えてられるかしら?」
「どうでしょうね。やっぱり記憶ですから永久には残りませんよ」
だから人は本を書くのだろうと阿求は言った。人間は忘れるからこそ大事な事だけを残し、後世へ繋げられるのだと。
「私は今の幻想郷は素晴らしい世界だと思います」
ただし。
「人間と妖怪の境界を誤らなければ、の話ですが」
「どういう事かしら?」
「人と妖怪は今まで一定の距離を保ってきました。しかし人と妖怪はこれからぐっと近づいていくでしょう」
阿求の話を聞きながら、私は何気なく彼女の書いた幻想郷縁起を手に取った。
そこには今の幻想郷にはいささか不釣合いな脅威としての私達が綴られている。
「人間と妖怪の境界が曖昧になるという事は、幻想郷のルール……妖怪退治をする人間と人を襲う妖怪という構図が
変わるという事です」
「境界が消えた先にあるのは名前の無い混じり合いね」
スペルカードルールはいうなれば運動会の赤組白組。その程度の無邪気な分別に過ぎない。
「人と妖怪の対立が消えた先にあるのは妖怪と妖怪の対立なのではないか。私はそれだけを恐れています」
そう言って阿求は味噌汁の残りを静かに啜り、合掌してみせた。
「どうもご馳走様でした、紫」
「徹夜は体に毒よ。ほどほどにしておきなさい」
そうですね、と阿求は笑う。先ほどの未来を憂う賢者の顔は何処へやら、あどけない表情が刹那く見えた。
また来るわと言い残して振り向いた背に阿求はこう言った。
「私はそれほど心配してはいませんよ。ここには貴方と巫女が居るんですから」
果たしてそうなのだろうか。
◆
日付が変わろうかという夜遅くにも関わらず博麗神社には明かりが点いていた。
「こんばんわ霊夢。こんな時間まで夜更かしかしら?」
「……あんたこそまだ起きてたの」
外で雪が舞い始めていた。
「……何をしているの?実はあなたも冬眠の準備中だったりとか」
「明日が宴会だからその準備よ。全く、寒いんだから家でじっとしてなさいっての」
ぶつぶつと不平を言いながら準備を続ける。以外とマメな所がさっきの誰かさんと対象的だ。
「あら。一人より二人の方が暖かくていいじゃない」
「なら一人で準備する方の身にもなって欲しいもんだわ……そうだ!あんたの分が足りないじゃない」
「え、私?」
不意に話を降られてつい驚いてしまう。
「てっきりもう寝てるんじゃないかって勘定に入れてなかったのよね……」
「別に気にしないわ」
「私が気にするのよ」
何故そこまで気にかけるのか私にはわからない。この巫女はいつも私を不思議がらせる。
「居ないよりは居てくれた方がいいのよ」
「あら嬉しいわ。夜更かしもしてみるものね」
霊夢はわざとらしくため息をついた。
「目を離すと何してるんだか分からないからよ」
二人でゆっくりと降る雪を肴に酌み交わす。
「……今年は眠らないの?」
珍しく霊夢が私に問う。
「親友のお化けが怖いから添い寝してくれないと眠れないの」
「何馬鹿なこと言ってるんだか」
彼女は笑った。私も笑った。
私はぼんやりと考えていた。
私の望む幻想郷の先を。霖之助さんは。阿求は。
隣に居る博麗霊夢は、どんな幻想郷を望むだろう。
「らしくないわね。スキマ妖怪さんはもうおねむの時間かしら?」
「……少し考え事をしてただけよ」
「だかららしくないって言ってんの」
最後の一杯をぐいっと飲み干して言ってみせた。
「考えなんて。勘で決めればいいのよ」
「思いっきりらしいわね、霊夢」
「AかB。適当に決めなさい、あんたが決められないなら私が決めたげる」
選択肢はたったの二つ。様々な思いが一本の境界で区切られる。思いが右へ左へと錯綜する。
「決まったわ」
「紫は何考えてるかわかんないからなぁ。難しそうね……おでこ貸しなさい」
「え」
ぐっと霊夢の顔が近づいて、私のおでこと今日和した。
「…………Cね」
彼女は何事も無かったかのように離れて言った。
「AかBかって聞いといてCってのも無いんじゃない?」
「大方あんたが捻くれ者だからでしょう」
「そうかも知れないわ」
「そうよ。私の勘に間違いは無いわ」
霊夢は自身たっぷりに微笑む。
全く霊夢の勘は正しかった。先ほどの境界は彼女によっていとも容易く壊されてしまったのだから。
私は家に戻る事にした。藍でも捕まえて眠るとしよう。
「答えはCね。覚えておくわ」
「明日も来るんでしょう?私一人がお酒無しなんて許さないから」
「はいはい」
先ほど空けた一升瓶を見て私は苦笑する。不公平だから空けようと言ったのは私ではない。
「5時からだからね。忘れずに来るのよ」
「覚えておくわ」
「そんな事くらい忘れないでよ」
「私は絶対に忘れません」
「ところでさっきのAとBって何だったの?」
「忘れたわ」
本当にAとBの内容は忘れてしまった。だが別に構わないだろう。私の答えはCなのだから。
霖之助さんに謝りに行こう。
「前から思ってたけど、あなたってサンタクロースみたいね」
サンタクロースがすごいのは子供の一番欲しいものを全部知っている所だ。
「クリスマスはまだまだ先よ。それに私はどっちかっていうと貰う側なんじゃない?」
「じゃあお礼に私からプレゼントね。答えはCよ」
私は巫女のおでこにそっと口付けた。
ただ、少し気持ちが先行し過ぎて、書き手の気持ちが読み手に伝わりづらいなと思いました。
特に会話の部分。正直意味分かりませんでした。東方っぽいっていえば東方っぽいんですが、これはあくまで人に読ませる文章です。ゲームの中の会話に意味はいりませんが(ZUNも意味ないと言っているし)、SSで完全に意味の分からない台詞回しは良くないと思います。
意味不明な台詞でも、あとあと意味が分かるようにするのがSSの東方っぽさだと思うので、東方の『雰囲気』だけではだめだと思います。
あと、最近どこでも言っていますが(w)、地の文の書き出しはスペースを空けましょう。この作品はなぜか段落の書き出しだけ空けて、後の地の文は空けてないので。
〇〇〇〇〇〇。
「〇〇〇〇〇〇〇」
〇〇〇〇、〇〇〇〇〇〇.
〇〇〇。
ですよ。