Coolier - 新生・東方創想話

身内がしでかそうとしていることを注意すべきかそれとも温かく見守るべきか悩む事だってあるじゃない。

2010/07/04 18:20:22
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「さっさささく、さくさくささっ、ささくくさくさく」
「落ち着いてくださいパチュリー様、いきなりどうしたんですか。クッキーでも食べたいんですか」
「アレは粉が気管支にすごいダメージを与えるのでダメ。あなたは私を殺す気?」
「いきなり冷静になられてもこちらも対処に困りますわ」
「さくさくさくさく」
「あぁめんどくさい」

 紅魔館でいつものように仕事をしていた咲夜の元に、息せき切ってやってきたのはパチュリーだ。
珍しい事もあるものだと、咲夜は何とかなだめようとする。

「いいですかパチュリー様、落ち着いてください。深呼吸しましょうか、まず」

 さくさく呟きながらこくこくと頷くパチュリー。

「すってー」
「むぎゅー」
「はいてー」
「むきゅー」
「すってー」
「むぎゅー」
「はいてー」
「むきゅー」
「はい、すってーはいてーすってーはいてー」
「むぎゅーむきゅーむぎゅーむきゅー」
「すってーすってー」
「むぎゅーむぎゅー」
「すってーすってーすってーすってー」
「むぎゅーむぎゅーむ……ぎゅー、む……ぎ……ゅ……」
「はいここでブブゼラー」
「ブブブブオォォォン!! ブオォォォォォォ!!」

 低い低い、羽虫の群れが襲い来るような音が紅魔館中に響き渡る。やがて肺活量の限界に
達したパチュリーは息を整えてから言った。

「”吸い続けたら過呼吸で死んでまうがな!!” というツッコミを前提としての見事なフェイク、
時事ネタ的にも素晴らしいボケだわ、ゼェ、ハァ」
「お褒めに預かり光栄ですわ」

 瀟洒に一礼する咲夜。

「でも、時事ネタって劣化も激しいのよね。この作品を書いた作者が一年後、いや半年後には後悔
している光景が目に浮かぶようだわ」
「……仰る事がいまひとつ理解できかねます」
「いいのよ、そんな事はどうでも」

 うるせぇよ。

「ところで、落ち着きを取り戻したみたいですね。さて、どうなさったんですかパチュリー様」

 ようやく話ができると安堵する咲夜の目の前で、パチュリーの雰囲気が変化する。

「いい、これから私が言う事を、落ち着いていくのよ」

 いつものむきゅらっとした表情でなく、浮かぶ真剣みに咲夜も少し圧倒されつつ、静かに頷いた。

「レミィがね、新しいスペカを開発してるのだけれど……そのスペルカードがとんでもないのよ。
おおっぴらに口にするのもはばかられるから、耳を貸して頂戴」
「は」

 たいていの事に動じない、動かない大図書館がここまで言う事なら余程のことだろう。咲夜は
おとなしく耳を傾ける。

「そのスペルカードって言うのはね――」

 咲夜の耳に、小さくそのスペルカードを告げたのだろう。その瞬間、咲夜の鼻腔から致死量を
遙かに超えると思われる鮮血が瀑布のように迸り、辺りを朱に染めた。

「ひっ……、……あら?」

 驚いて一歩引いたパチュリー。ところがその視界はいつもの紅魔館である。

「また時を止めて始末したのね。驚かせないで」
「ずびばぜん」

 ただ、鼻に詰めたティッシュのみが鮮血の惨事を物語っていた。

「女の子には月に一度あるサプライズパーティ的イベントみたいなものと思っていただければ」
「……明日はストロベリータルトね。まぁそんなことはどうでもいい。事の重大さがわかったようね」

 重々しい雰囲気を漂わせたパチュリーに、こちらも真剣な表情で頷く咲夜。どうやらレミリアが
新開発したスペルカードとは相当に問題があるらしい。あるいは危険なのか。

「どうする、咲夜? まかり間違って人前でそんなスペルカードを使われたら……」
「ならばまず、我々の手で件のスペルカードに対処いたしましょう!」
「ああ! やはりあなたならそう言ってくれると思ってたわ。よろしい、その方向でいきましょう」

 がっしとお互い硬い握手をかわす。









「……なんなのよ。さっきの妙な音といい、気になって部屋から出てみたら珍しいカップリングが
出来上がってたりといい」

 ほんの少し不機嫌そうな雰囲気を漂わせつつ、件の問題だらけの新スペルカードを思いついた
レミリア。ふたりの眼前に歩を進めるや言い放ち、ふわあと可愛らしくあくびをした。カリスマが
駄々漏れである。

「レミィ……ッ!」
「お嬢様……ッ!」
「な、なによ」

 血走った目の親友と従者に迫られ、引きつった顔で数歩下がる。

「新しいスペルカードを作られたということですが……!」
「おん? 耳聡いね。ええ、つい今しがた出来たところよ」
「レミィ!」

 自信満々に言い放つレミリアに詰め寄るパチュリー。

「それ、その、そのスペルカード、いいい、一体誰を相手にして使う気?」

 その質問の真意が見えずに小首を傾げたレミリアだが、他ならぬ親友の言葉、素直に考えて言う。

「そうねぇ……順当に言えば霊夢かしら」
「なっ」

 狼狽するパチュリーに、そっと耳打ちする咲夜。

「ご安心くださいパチュリー様。今霊夢を逆海老反りに縛り上げて吊るしておきましたわ。”おいしく
たべてね(はぁと)→愛するゆかりんへ”の張り紙と一緒に」
「グッジョブ」

 それに気付かずレミリアは腕組みしつつ、まだ言葉を続ける。

「それか、そうね。もうじき魔理沙がどーせパチェんところに吶喊かけて来るでしょうから、私が直々
に相手してやってもいいかな」
「にっ」

 驚くパチュリーにもう一度咲夜が耳打ち。

「ご安心くださいパチュリー様。今魔理沙を亀甲縛りにして折りたたみトランクに入れ、アリス家
玄関に放置してきましたわ。”絶対開けるんじゃないぜ。魔理沙より”の張り紙とともに」
「ディモールト・ベネ」

 時を止め危機を未然に防ぐ。十六夜咲夜、時を止める能力を振る活用すればこの程度朝飯前で
ある。と、そんな親指を立てるパチュリーと微笑む咲夜を睨みつけるレミリア。

「なにこそこそしてるのよ」
「こそこそだなんて……。それより大事な話があるわ、レミィ」
「う、うん?」

 いきなり居住まいを正し、真剣な表情をされたから驚くレミリア。傍にいる咲夜を見れば、こちら
も堅い表情。というかさっきからふたりに色々ペースを乱されっぱなしである。とりあえず大事と
あらば親友の話に耳を傾ける。

「新しいスペルカードだけれど、いきなり他人に使うのは良いとは思えないわ。ねぇ、レミィ」
「ん?」
「もしかしたらそれには大きな間違いがあるかもしれない。もし霊夢や魔理沙の前で失敗をしたら、
そう、きっとレミィの心に大きな傷がついてしまうわ。親友として、それは耐えられない」

 沈痛な表情で見事な芝居を打つパチュリー。咲夜もあわせて重く頷く。心の中はとても見せられた
ものではないというのに。しかし、レミリアはころっとそれに騙されてしまう。

「そ、そうかな? そうかもしれないわね」

 その言葉が引き金となる。

「そうよ! その通りなのよ!」
「ええ、お嬢様。いきなり他人に見せるなんてはしたないですわ!」
「え、え、そう、かな?」
「ですからお嬢様。まず身内である私たちの前でご披露するのが賢明だと思われますわ」
「ええ。私たちの前でなら安心じゃない」

 誘導の言葉を打ち放ち、にこやかに、爽やかに、レミリアの言葉を待つふたり。その結果。

「そう……ね。じゃあそうしましょうか」
「いよォッシャァ―――――――――――――――ッッッ!」
「ブブブブオォォォン!! ブオォォォォォォ!!」

 レミリアの肯定の声に合わせ生まれたのは、奇声を上げて天に向かってガッツポーズをする瀟洒な
メイドとブブゼラを吹きまくる喘息持ちの魔法使いである。

「いっえーいっ!」
「ひゃふーぅっ!」

 仕舞いにはあろうことかハイタッチ、アンダータッチ。ついでにお互いパイタッチ。咲夜の細い指が
意外に豊満なパチュリーの乳房を鷲掴みにし、パチュリーの細な指が咲夜の掴んでちょっと足りない
微妙な胸のラインを這い回る。見詰め合う背景に点描まで飛んで、紅魔館を桃魔館に変える勢いで
ある。が、流石に当主がレミリア・ローズピンクだのになるのは受け入れがたかったようだ。

「うるさいよおまえら! あと、えっちなのはいけないと思います!」
「申し訳ありません」
「ごめんなさい、レミィ……こほん」

 レミリアが可愛い声で怒鳴れば、すぐさま完璧なメイドと静かな魔法使いが顕在化し、しとやかに
謝罪の一礼。もうテンションのジェットコースターにほとほと疲れ果てたのか、レミリアは重そうな
溜息をつく。

「それではお嬢様、そのスペルカード、ぜひ今披露して頂けますでしょうか」
「実験台になってあげるわ。だから見せてみなさいよ、レミィ」

 そこに自信満々な、というかなんだか怪しい雰囲気を纏ったふたりの声。流石に覚悟を決めて、
レミリアも真剣な顔を向けた。

「……ならばお望みどおり使ってあげるわ。その目に焼き付けなさい、私の新スペルカード。名を、
”悪魔「レミリア……」
「おっけいレミィカモ――――――――――ォンッ!! ははは、っはっ、はじま、始まるのよ! 
今から始まるの! 夜のっ、夜の御伽噺! 真っ赤な夜の御伽噺よ! ゆっくり優しく隠されたページ
を白く柔らかい、可憐な指でめくって! そうすれば現れるわ! おっおおっ、御伽噺の主役、栗鼠
ちゃんが! そして栗ちゃんが! ふたりで目指すのよ! 紡がれる冒険譚! 行くの? 行くの?? 
行っちゃうのね!? 天へ、どこまでも!! 真っ赤な夜の、遥か高みを目指すちっちゃな栗と栗鼠の
大冒険なのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「イエスウィーキャンイエスタカスクリニック! そうなんですよ!! 小さく美しい指を果敢に操り
お嬢様の真っ赤なヴァージンロードを疾走するミニクーパー、ナンバーは9292! ミニクーパーが
9292! ヴぁ、ヴァージンロードを一直線に! クーパーが! 9292が! ああああ、ヴァージン
ロードがくにくにくぱぁ!!」
「「”クスコ王国の、初代皇帝の名前”、っイェ―――――ィ!」」

 ハイタッチアンダータッチパイタッチ。見詰め合って点描。桃魔館再び。

「え、ちょ、おまえたち?」
「さぁ見せなさいレミィはやいとこ栗と栗鼠さんを!」
「お嬢様のくにくにくぱぁ! くにくにくぱぁ!」
「いやわけわかんないよ!! ええい!!」

 もうなんか目は血走り今にも顔のどこかから血でも吹き出しそうなほど真っ赤な顔をしたふたりが
色欲を司る大悪魔アスモデウスさえドン引きしそうなほどの勢いで迫り来る。焦りつつもレミリア、
スカートの中に手を突っ込んだ。



「これでどうだ!」

 レミリアはそのままドロワを脱ぎ捨てるとかなんとかそういう暴挙に出るかと思いきや、掲げる
のはスペルカード。

「え、なんでそんなとこから」
「咲夜がドロワーズにポケットを作ってくれたからよ! こうすれば大事なものを無くさないでしょう!」

 一瞬だけ素に戻ったパチュリーが咲夜のほうを振り向く。そこに自信満々の表情。もっとも実際は
主を思ってのものではない。洗濯物として出されるレミリアの衣類。その中には当然ドロワーズも
ある。だが咲夜は瀟洒なメイドゆえ直接ドロワーズをくんかくんかするようなことは決してない。だが、
それにポケットをつけておけば、意外と色々なことに頓着しないレミリア。つい中に入れたものを忘れて
しまうことはよくある。その品物を間違って洗わないよう取り出せば、それにはレミリアの移り香。咲夜
はこれをお嬢様のスメル、略して”おゼル”と名づけて楽しんでいるのであった。閑話休題。

「おゼル……」
「咲夜?」
「あぁいえ」

 放心している咲夜といぶかしむパチュリーをよそに、怒気をふつふつと沸き立たせるレミリア。

「あんた達がなにをどう思ってるか知らないけれど、このスペルカードで目にもの見せてくれるわ!!」
「ですから今すぐオナ……え?」
「どうしたの咲夜……ん?」

 掲げるオゼるたっぷりのカードをくんかくんかすべく顔を近づけていた咲夜。そこに刻まれた文字
に目を見開いて驚く。それに気付いたパチュリーもまた。そして、ふたりして驚きの声を上げる。

「おおお、お嬢様? お嬢様の新開発したスペルカードの名は……!」
「……”悪魔『レミリアひとりエッt」
「あ゛ぁ゛ン?」

 睨む真紅の眼光は刃よりも鋭くふたりを貫く。怒気は既に部屋全てを支配し、まさに悪のカリスマ
全開。その一言一言で二人の命の火を揉み消すように、レミリアはそのスペルカードの名を宣言した。






























「……その沸いた脳みそごと消し飛べ。”悪魔『レミリアストレッチ』”



 炸裂する紅の霊力に、瀟洒なメイドと七曜の魔法使いが飲み込まれていった。
 どうもみなさんはじめまして! パめく凡人です! 喚く狂人? かかったな、それは俺の本体よ!



 まぁそんなことはともかく、ふと思いついたネタがどう考えても喚く狂人氏が書くようなネタだったので、
氏に許しをいただいてこんな事になりました次第でございます。

 はぁ、ブブゼラ吹くパチュリーさんのAAはなんであんなに可愛いんだ。白でした。
パめく凡人
[email protected]
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コメント



0.1590簡易評価
1.100削除
カオスだなwww
面白かった。GJ!
3.100喚く削除
この文中のギャグのセンスは私に無いものだから見習いたい
4.100名前が無い程度の能力削除
携帯で読んでPC起動して100点入れに来た
ブブゼラで完全敗北、ひっでえ下ネタもグッドでした
6.100名前が無い程度の能力削除
とりあえずクッキーのくだりでクスッと来てしまい、ブブゼラで吹いたww
その後も失速すること無くオチまで持っていく手腕に感嘆しました。
7.70名前が無い程度の能力削除
久々に桃魔館を見た
忌々しきブブゼラもパッチェさんのAAを生み出すのに
貢献したことについてだけは評価したいと思う
9.10名前が無い程度の能力削除
喚く氏リスペクトってことで壊れギャグというのは想像がつきました。
でもこの壊れ方は方向性がちょっと違うのでは。
最初は軽めだけれども真面目な雰囲気で始め、オチで全部ぶっ壊すという爽快感が喚く氏の持ち味だと思うのですが、
この作品ではキャラクターに下ネタ言わせてぶっ壊しているだけのように感じました。
正直に言って後半のネタはすごく不愉快です。オチを弱めているだけにしか見えません。

白氏なりのアレンジだと言われるならば、今回は空回りでしたねとしか言いようがないです。
10.100名前が無い程度の能力削除
ひとりえっtというかむしろ咲夜さんとぱっちゅさんがふたりエッt
13.70名前が無い程度の能力削除
πターッチ!!
20.80名前が無い程度の能力削除
衣久「これはフィーバーですね」
21.90名前が無い程度の能力削除
独自の雰囲気を出しつつ、最後は喚く氏風でよかったとおもいます
23.80名前が無い程度の能力削除
ブブゼラぱっちぇさんの可愛さは異常
24.80名前が無い程度の能力削除
あのAAかw
26.80名前が無い程度の能力削除
はっは!起き上がり予想たぁなめられたもんだ!4Dで移動起き上g………ダイアモンドダスト……だと…?
ゲフッ
33.100名前が無い程度の能力削除
逆海老反りは背骨、循環器系を中心に凄く体に負担が掛かります。
発見されるまで放置したら間違いなく体に障害残るし、生命の危険もかなりの確率で発生します。

……ごめんなさい、カオス過ぎてこんな所にしか突っ込めませんでした。
38.100名前が無い程度の能力削除
誰か衛生兵はいないかー?
こいつを後送してやれー!
43.70名前が無い程度の能力削除
うーん、よくない事とは思いますがどうしても喚く氏の作風と比べてしまいます。 したら上にもありますが 爽快感 などが気になります。 パチュリーと咲夜のやりとりは素晴らしかったです
45.100名前が無い程度の能力削除
咲夜さんとぱっちぇさんが桃色過ぎるw
48.80名前が無い程度の能力削除
いやそのオチは無理があるだろw

SSに直接関係ないですが、最後の「白でした。」がパチュリーのパンツの色じゃないことに気づかせてくれた>>9氏に感謝
56.100名前が無い程度の能力削除
         __,,,,....,,,_    _
   ,.ヘ.__''"´  、    .ト`>)`ヽ
  く   \|-─< ̄ ̄八 ー'   ノ、 /\
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