「ルナ姉、少し落ち着きなよ。さっきから窓開けたり閉めたりしてるよ」
「ああ、うん。落ち着いてるわよ?」
何故こんなにルナサが落ち着き無くしているのか、理由はここ一週間の予定に有る。元々先週の休日には鈴仙と会う予定だったのだが、永遠亭から使者が来て言った「鈴仙が急病の為、来れなくなった」という理由で流れてしまった。それ以来、何とはなしに会う機会を失ってしまったルナサは毎日こんな様子であった。そんな姉を見かねた妹達は、2人を会わせようとこう提案した。
「日頃お世話になっている鈴仙が病気と聞いた為、お見舞いに窺いました。ってね!」
「はい、果物の詰め合わせ~」
「う、あ、でも…」
「はいはい、いいから行く!そんな様子じゃ料理もさせられないもん」
「いってらっしゃ~い」
「い、いってきます…」
「迷った…」
鈴仙と知り合ってから何度か永遠亭には訪れていたルナサだが、その度にここで迷ってしまい、いつも…
「やっぱり来たのね」
彼女に案内してもらっていた。因幡てゐ。鈴仙との関係上あまり友好的ではないが、なんだかんだ言って案内はしてはいた。
「ああ、よかった。お見舞いに来たんだけどまた迷ってしまって…」
「帰って。鈴仙は貴女に会わない」
「え?」
ばしっと何かを叩く音。果物篭が落ちる。何が起きたか理解できない様子のルナサに、苛立つ様にてゐが捲し立てる。
「帰って!貴女の、所為でっ…くっ!」
そう言い残し、姿を消すてゐ。ルナサはその気配がすっかり消えてしまってから、漸く何を言われたのかを考え始めた。
「会わない?…いや、それよりも…私の、所為…?それって…」
呆然としながら落ちた果実を見つめるその目は、遥か上空に広がる雨雲のように光を薄くしていた。
昼過ぎから空を侵食し始めた雲は、幻想郷が紅く染まる前に空を覆い尽くし、日が完全に沈む頃には冷たい雨を降らせていた。
何時もどこからか演奏が聞こえるはずの屋敷では、今日に限ってまったく音を発していなかった。一番の真面目さんであるルナサがいなくなると、逆に五月蝿くなりそうなものだが、正直一番騒がしいのは長女が怒鳴る時なので、よくよく考えれば理解は出来た。
「メル姉ー、十巻はー?」
「え~と?あぁ、ほら、テーブルの上~」
「あんがとー」
メルランは絨毯に寝そべって時折膝を曲げながら、リリカはソファの背もたれに足を乗せて、二人で本を散らかしながら読んでいた。叱る人が居なければこの有様である。因みに、彼女達が読んでいるのは、以前に紅魔館での演奏時に報酬としてもらった『家政婦は狗!~紅き館の悲劇。その時計台が十二時の鐘を鳴らす時、紅き姉妹が最後を告げる!儚い少女が図書館に隠した秘密とは?あと門番に出番はない!?』である。全二十二巻完結。作者は熊田☆こぁ。「明らかにミステリーなタイトルなのに唯の漫画、図書館に置く価値無しよ」「全巻通して、小悪魔が目立ちすぎ。タイトルだとメインは私じゃないのかしら?」「ちょ、私本当に出番ないんですかぁ~?」等、様々な波紋を呼んだ迷作である。
そうこうしている内にどうやら全巻読み終わったらしいメルランは、絨毯から上半身を起こし暫く呆けた後に、壁にかかった時計を見て思いついたように切り出した。
「姉さん遅いわね~」
ルナサはお昼を過ぎてから出かけた。何時も通り竹林で迷っていたとしても、何もなければもう帰っていてもいいだけの時間であった。
「あー…お泊まりじゃない?」
正直、口うるさい姉がいない方がリリカとしては有り難かった。偶には羽目を外したくなるのが人(?)の性だ。「さが」だよ、「せい」じゃないよ?
「あらまぁ、姉さんったら大胆~」
「いや、私はそこまではー」
丁度そんな話をしていると玄関の方から音がした。どうやら泊まりはなかったようだねとメルランに言いながら、リリカは少し口うるさい姉を迎えに行くことにした。こんなにだらけている所を見つかるとお叱りを受けるかもしれない。今のうちに機嫌をとっておくに限る。
「お帰りなさいルナ姉、遅かったじゃない…ルナ姉?」
「………」
「リリカ~やっぱり姉さ~ん?」
ルナサは傘を持って行かなかったから、濡れて来るのは解る。それにしても濡れ過ぎだとは思ったが、それよりも気になるのは動かず俯いたままでいることだ。
「メル姉、お風呂の準備しておいて」
「え~?偶にはリリカが~」
「いいから、お願い」
「リリカ?」
結局その後、風呂に入れてる間にリリカが夕食の準備をし、風呂から上がったルナサに食べるように言ったが、「ごめん」と言い残して自分の部屋へ走っていってしまった。
姉の様子を聞いたメルランは「そう」と言い、台所に向かいお茶を二杯淹れてルナサの部屋へ行ってしまった。二杯、ということは自分には来るなってことだ。リリカはそう理解しながらも、少し悔しかった。唯それと同時に少しだけ、歳の近い姉を誇らしくも思った。
こん こん
「姉さん、入るわよ?」
扉を開けた先には暗い部屋の中、膝を抱えベッドに座り込むルナサの姿があった。それは何時もの姉とは違い、あまりにも小さく見えた。
「姉さん、体が冷えるといけないからお茶淹れてきたわ~ほら?」
「メル…」
「…!」
久しぶりに、本当に久しぶりにそう呼ばれた。あれは、そう、レイラがまだ私たちを生み出して間もない頃。私はメル、リリカはリリィ、そう呼んでいた、まだまだ先の運命を知らない時のこと。精神的に弱っているからか、若しくは今思いだしたのか。
「メル…鈴仙ね、私の所為だったの…私の音で鈴仙は鬱の手前かそのものにまでなった。当然よね、会うたびに演奏していたもの…そして多分、過去に囚われたんだ…」
「姉さん…」
ルナサの音は精神に作用する。聞き続ければ鬱に至るのは事実だ。有り得ない話ではない。
「そんなつもりじゃなかった…ただ、鈴仙に私の音を聞いて欲しかった…好きだって言ってくれたから、レイラと同じく好きだって…!レイラ、そうよ、もしかしてレイラも同じように…」
「!」
ぱん!
暗い部屋に一つだけ音が響いた。ボロボロと大きな涙を零しながら、メルランはルナサを見つめていた。許せなかった。妹を、ルナサ自身を蔑ろにする、そんな言葉が。だからぶったのだ。
「ふざけないで!レイラは、最後のときも幸せそうに笑っていたのよ!?姉さんの所為でも、まして誰のせいでもない!大体、それなら私の音の方がよっぽど危険じゃないの!だけどレイラは皆の、姉さんの、私の、リリカの音を聞いていた、だから…!」
「…そう、ね。ごめんなさい…どうかしてるわ私…レイラにも謝らなきゃ」
メルランに諭されて少しだけ微笑んだルナサは、しかし再び表情を暗くして呟いた。
「でも鈴仙はに関しては間違いなく私…だから私とは会ってくれない…ううん、会える筈がない…自分が許せないもの…」
「姉さん…鈴仙のことが好きなのね?」
再び膝を抱えるルナサを抱きしめるメルランは薄く開いた扉の隙間を見る。その向こうで二人の話を聞いていたリリカは音を立てないように家を出ていった。
最初に目に映ったのは天井。ついで横を向くと本を読む師の姿だった。
「…師匠…」
「目覚めたのね…意識ははっきりしているかしら?」
「はい、大丈夫です」
あの後、駆けつけた永琳によって鎮静剤が打たれ、ウサギ達の手によってここに運ばれていた鈴仙は一週間近くうなされ続け、漸く目覚めた。
「何があったか…話せる?」
一度目を瞑り気持ちを落ち着けた上で、ポツリポツリと、鈴仙は語りだした。
「最初は…ほんの少し声が聞こえただけでした、なんて言ってるか判らない位の。…次に聞こえたのは名前。呼ばれた気がして振り返っても誰もいなくて、またてゐの悪戯かなって思って…でも日を追うごとに声ははっきりしてきて、あの時に至っては月から助けてくれ、置いて行かないでくれって…そう聞こえたんです」
鈴仙の様子を見ていた永琳は深く溜息を吐き、こう切り出した。
「うどんげ、気付いているんでしょう?なにが原因が」
強い瞳で見つめる永琳。鈴仙はそれから逃げるように目を逸らした。
「解りません」
「うどんげ」
「解りません!」
「鈴仙!………どうして?ただ貴女の能力で波長を変えるだけじゃない…」
「…出来ません。私がそれをしたら、ルナサの能力が私しか治せない事になる。そうなれば彼女の妹を追い込んだのが彼女自身であるということになる。実際はどうだか解らないけど、ルナサがこの考えに思い至ったら、きっと傷つく。だから私はなんでもないんです」
永琳には、そう語った鈴仙の瞳が少し弱々しく、少し優しく見えた。
「鈴仙、ルナサのことが好きなのね?」
困ったように笑ってみせた鈴仙。永琳は自分の弟子が少しだけ成長したことを理解した。そんな矢先、急に廊下が騒がしくなった。
「敵襲!敵襲!」
一方、ルナサはメルランと共にレイラの墓を訪れていた。
「レイラ、ごめんね…私、貴女の事少しずつ忘れてるみたい。だから馬鹿な事考えちゃったわ…そんなわけないのに…嘘、苦手だったもんね。ねぇメルラン」
「うん、ふふ。そういえば姉さんの誕生日のとき、私たちサプライズパーティーしようと準備してたのに、レイラったら口滑らしちゃって~」
「あぁ、あったあった。レイラがリリカに怒られて…リリカは?」
思い出話に花を咲かせていたルナサだったが、そこで思いだした。色々ありすぎて余裕がなかったのか、すっかり忘れていた。
「リリカなら遅れてくるわっと、噂をすれば…ね~」
そう言って茂みの方を見るメルランにつられて、ルナサが目を向けた先には…
「連れてきたよ、ルナ姉」
メルランの言葉通りにリリカ、そしてその後ろには鈴仙がいた。
時は戻って鈴仙が目覚めて間もない頃、永遠亭の玄関にはてゐ、そしてリリカがいた。
「帰って」
そう言ってすぐに立ち去ろうとするてゐ。しかし簡単には引き下がれないリリカは縋る様に言葉を放つ。
「お願い、鈴仙を出して。駄目なら一言でいいから言わせて」
「よくここまで来れたわね」
よくよく見ると、リリカの体には傷がたくさん付いていた。竹林にも妖怪はいる。慣れていない者なら、迷った揚げ句に妖怪に襲われることもある。実際よく辿り着けたものだと思っているともう一人入ってくるものがいた。
「私が連れてきたんだよ」
そう言って現れたのは、蓬莱人形、藤原妹紅だった。ポケットに手を突っ込んだ何時ものスタイルで続けて言った。
「竹林が騒がしかったんで、また里の人間でも迷ったかと思っていってみれば、そいつが妖怪どもに追われてたんでね。助けてやったら永遠亭を知ってるかって言うからさ、連れてきてやったんだ。余計なお世話かもしれないが一言くらいいいだろ?事情は知らんがそいつは帰らんぞ、それは覚悟してる目だ」
「…っ!関係ない!鈴仙はあいつの所為で!」
「あら、騒がしいと思ったらなに?騒霊に妹紅?どういう組み合わせかしら?」
そこに現れたのは永遠の姫君、蓬莱山輝夜。少しだけ眠そうに、しかし妹紅を見つけたことで少しだけ面白そうに、笑っていた。
「私は案内しただけだ、こんな所すぐ出るよ馬鹿輝夜」
「所構わず喧嘩を売るのね…空気を読みなさいな。この場の主役は私たちじゃないわ、鈍感妹紅。ほら、茶でも出すからこっち来なさい」
「わぁかってるよ!ったく……おい、兎!お前もだ」
「ちょ!なんでっ……!れい、せん」
亭内に入っていく輝夜と妹紅を振り返ったてゐは、その向こう側に永琳に付き添われた鈴仙を見つけて何も言えなくなってしまった。
「ごめんね、そして有難う、てゐ。でもこれはわたしの問題だから。私が解決しなきゃならないの」
「…わかった。でも一つだけ約束して」
「うん」
「ここが貴女の家だから、私たちは貴女の…家族だから、絶対戻ってきてね」
「うん、ありがと」
そうして去っていくてゐ。永琳も鈴仙の状態を確認して戻っていった。残ったのは二人だけ。
「…ルナサはどうしてるの?」
「泣いてたよ、自分が許せないって…」
「そっか…」
少しだけ俯く鈴仙。リリカは鈴仙が何故こんな表情をするのか解らなかった。自分が持っている情報だけで考えれば、鈴仙はただルナサの能力で鬱になって、そのことで会いたくないんだと思っていた。が、この表情はつまり…
「貴女、レイラのことまで気付いているの?」
「…うん」
リリカは姉達の会話を聞いていたので、それについて間違いを正すことも出来たが敢えてせずに、こう聞いた。
「…ねえ、ルナ姉の事、好き?」
「…うん、好きだよ。誰に対する感情とも違う、ルナサに対してだけの感情。私はルナサが好き」
「そう……なら、私についてきて。ルナ姉に会わせる」
「…わかった。いくよ」
こうして二人は再びここで出会った。その立役者たるリリカは傷と疲れでいっぱいいっぱいだったが。
「リリカ、傷だらけじゃない…」
「姉さん、リリカは私が見てるから、姉さんはここで待っててね」
「うん、頼むわね…」
「鈴仙、姉さんの所に行ったげて」
「でも貴女が…」
「私は大丈夫、ほら早く」
ルナサをこの場にとどめて歩き出すメルラン。鈴仙を送り出しその場にとどまるリリカ。愛すべき姉の為に動いた二人は満足気に笑っていた。擦れ違うメルランと鈴仙。メルランは耳元で鈴仙だけに聞こえるように呟いた。
「姉さんを泣かせた責任は後回しにしとくわ」
メルランにもリリカにも、後で謝っておかなければいけないな、そう考えながら再び歩き出す鈴仙。少しずつ近づくルナサとの距離。五メートル、四、三、二。目の前に、いる。俯き、申し訳なさそうな顔をするルナサ。対して鈴仙もどんな顔をすべきか解らず、下を向いていた。長い、長い沈黙。何から切り出そう、何も言えない。いや、何を言っても事実は変わらない、そう思い何も言えない鈴仙を見て、ルナサが漸くその重い口を開く。
「私、ね…鈴仙とはもう会えないと思った…私の能力の所為で精神を病んだとしたら、きっと永琳さんが気付く…そうしたらきっと鈴仙は私と会ってくれないって…」
「…私がおかしくなったのは月の波長の所為!だからルナサの所為じゃない!」
「ううん、解ってるの。そしてそれならばレイラもそうなんだ、って思った」
「だめ!それは…」
「鈴仙、顔を上げて…?」
リリカから話を聞いた時点でそこまで考えてしまった事は想像できていた。だからルナサに悲しい顔をさせたのは私。そう思って顔を上げた鈴仙の目に映ったのは、しかし、悲しみを持ちながらも微笑んでみようとするルナサであった。
「違うの…レイラは、私たち全員の音を聞いて、そして笑いながら眠ったから…そこに嘘はなかったって、思いだしたから…私はもう大丈夫だから、もう無理しないでいいの…貴女はもう私と二人きりでは会わない方が…」
「よ、よかった~」
よかった、どういう意味だろう。あぁそうか、もう私と会わなくていいんだからそりゃいいよね。そこまで考えてルナサは最後にその顔を見て別れようとした。晴れ晴れとしていて、愛嬌があり飾りっ気のない何時も見ていた大好きな人の顔。
鈴仙はそのルナサの表情を見てどうやら勘違いしているらしいことに気付き、慌ててこう接ぐ。
「つまり、妹さんのことで自分を責めてはいないんだね?」
「ええ、そう、だけど…」
「ねぇルナサ、私の能力は教えたよね~」
「えぇ~と、狂気を操る程度の能力、よね?」
「そう、それは即ち物事の波長を操ることに他ならない。色も、物も、者も、もちろん音も。全ての波長を操るとゆうこと。短い波長を長く、長い波長を短く。まぁ、まだまだ未熟な私じゃあ、自分よりも圧倒的高位の存在や概念までには干渉できないけど」
そう少しだけ誇らしげに語り笑う鈴仙に、ルナサは言われた事を考えるより先に、あぁこの笑顔が好きなんだ。そう考えていた。それから漸く言われた事を考え始める。波長を操る、音、短、長。つまり…
「自分自身の波長を操れば、ルナサの音を聞き続けても影響を受けない」
「じゃあ…」
「うん!また今まで通り会えるよ~」
今まで通り会える、しかも鈴仙もそれを望んでいる。これほど嬉しいことはない。ルナサは自然と、涙を流さずにはいられなかった。
「あ、あれ~?泣いてる?ちょ、え~とごめんね?何か駄目だったかな~?」
「ちがっ…うの…嬉しいの…また、鈴仙と一緒に…」
「ルナサ…うん、私も嬉しいよ」
そう言ってルナサを抱きしめる鈴仙。それは泣き止むまで、暫く続いた。
漸くルナサが泣き止んだ頃、鈴仙は頬を掻きながらルナサの手を取り、目を見つめなが
ら話し始めた。
「あ~、ちょっといいかな。言いたいことがあるんだ~」
「…ええ。でも私も言いたいことあるんだけど…」
「駄目。先に私の話聞いて」
「は、はい…」
鈴仙の強い瞳にただならぬ決意を感じ、思わず譲ってしまった。その鈴仙はといえば、赤面、深呼吸、胸に手を当てる、と言った行為を数回繰り返し、漸く話を始めた。
「あのね、ルナサはさ、ヴァイオリン上手いし、料理も上手だし…その~、スタイルいいし…わ、笑った顔が、すっごく綺麗で…何より家族を大事にする優しい心を持ってる。だから、だからそんなルナサが、私は、大好きです」
言い切った、そんな達成感と、拒否されたらどうしようという感情を、まぜこぜにした表情で目を瞑る鈴仙。そんな鈴仙に今度はルナサが語りだす。
「私、鈴仙に憧れてた…明るくって元気で、皆に愛されてるし…グラマーだし…何よりすっごく表情が可愛いし…他人を思いやる気持ちを持ってる。私もそんな鈴仙が好き、大好きよ」
話してる途中から鈴仙は少しずつ表情を変えていった。驚き、苦笑して、照れて、最後には少しだけ涙を浮かべて、ルナサを見た。ルナサもまたその瞳に雫を湛えながら、やっぱり笑っていた。
「おお、いい雰囲気!いっけールナ姉」
「リリカ~あんまりはしゃぐとばれるわよ~」
またもや以前のように茂みに隠れて二人の様子を見守っている。が、今回は元々いたし、お膳立てをしたのはリリカとメルランである。よって今回は、自分達を忘れて二人の世界を作ってしまったのがいけない、ということで堂々と覗いているのである。
「くっ、鈴仙がそいつが好きっていうなら…」
「あらあら、うどんげったらこんな所で大胆ねぇ」
「ほら見た?妹紅!あんたと半獣みたいね!うふ」
「な!慧音は、う、す、好きだけど…そんなんじゃ…」
いつの間にか永遠亭の面々もこの場に集まっていた。しかも一人増えている。せっかく自分が奔走してこんな絶好のチャンスを作ったってのに、こんな騒がしい奴らがいたら、またばれるのが目に見えているから小声で話しかけた。
「ちょっと!あんたら待ってるんじゃなかったの?」
「あら~私はそんなこと言ってないわよ~あの場の主役じゃないってだけで、ね~永琳」
「はい、姫。私たちは家族を見守りに来ただけです」
「ま、こんな奴らなんだよ。諦めろちびっ子」
「あんたも何でいるんだよ!それこそ無関係だろー!」
「面白そうだったからつい」
「あ・ん・た・ら~~~」
一方その頃、ルナサと鈴仙はさらに二人の世界を進めていた。告白もすんで晴れて恋人同士、というわけで…とりあえず仲の良い友人からさらに一歩先に行くには…と言う話し合いの元、ある結論に至った。
「て、照れるわ…」
「あ~はは…そうだね~」
「心の準備は出来たわ…よ、よろしく…」
そう言って目を瞑るルナサ。顔を真っ赤にして愛しい人の動きを待った。鈴仙は意を決してルナサの肩を掴み、顔を近づけていく。まさに目と鼻の先まで互いの顔が近づいたその瞬間。付近の茂みから突然叫び声が聞こえた。
「邪魔すんな~~~~!!!!………あ」
そう言って立ち上がったのはリリカだった。どうやら自分のやってしまった事に気付いたようで、気まずそうな顔で立ち尽くしていた。
「はぁ、またなのね…」
「そだね~」
見つかった瞬間に皆一斉に逃げ出した。苦笑と共にお互いのターゲットを定め走り出そうとする。瞬間、鈴仙はルナサの肩を掴み振り向かせて互いの距離をゼロにする。
「まて~!ししょ~!姫~!て~ゐ!ついでに妹紅さ~ん!」
自分の唇に手を当てて、少しだけ惚けて、ルナサもまた走り出した。
「こら~!リリカ、メルラ~ン!」
後日談
正式に恋人同士となったルナサと鈴仙は、これ以降急速に距離を縮め、泊まりのデートもするようになり、互いの家族にまで呆れられる次第となった。
また所構わず幸せオーラを発している為に、多くの報われぬ恋に悩む幻想郷の少女達のイライラを募らせ、最終的には告白ブームを巻き起こし、沢山のバカップルを生み出す発端となるのだが…それはまた別の話である。
コレが読みたいw
鈴仙がルナサを意識したのが少々唐突に感じたけど、その後の展開がGJ!
メインの2人も良かったけど、姉妹達や永遠亭の皆さんがより魅力的だった。作品の空気が凄く良かった。
ただ内容に対してひとつひとつの描写が短く、メルランがルナサをはたくシーンなど盛り上がるべき場面でもあっさりと読み進めてしまう為、いまひとつ感動するというところまで行きませんでした。
素人意見で申し訳ないのですが、それぞれの場面の描写をさらに丁寧に行い、物語全体に重厚さができれば、よりよい作品に仕上がったのでしょうか。
「よりよい作品に仕上がったのではないでしょうか。」の誤りです。
たいへん失礼いたしました。
てゐもよい子でした。