―注意―
・初投稿&初SSです。お見苦しい点が多々あります。
・しかも続きます。
・二次設定、三次設定、俺設定が大量にあります。
・世界史に詳しくない残念な作者です。
ではどうぞ。
―以下本文―
紅魔館。
ぽかぽかとした初夏の、ほどよい(屋敷の主人的には悪い)天気のいつも通りのある日。
「今日こそは通さなぎゃああああ!!」
…ある意味、いつも通りの悲鳴といつも通りの爆音。
はあぁぁ、と肺の中の空気を吐ききるかのような、深いため息をついて門のほうへ向かう一人の人影。
言わずと知れた、泣く子も黙る紅魔館の完全にして瀟洒なメイド長、十六夜咲夜だ。
「美鈴、貴女一体何回吹き飛ばされれば気が済むのかしら?」
「うぅ、面目ないです…」
門だったものの破片に埋もれた、赤い髪の女性―紅美鈴―。
黒白鼠こと霧雨魔理沙の恋の魔砲「マスタースパーク」によって見事に吹き飛ばされた門のがれきをどかしつつ、そう言ってにへら、と笑う。
全く、この紅魔館を守る門番のそれも仮にもそのトップがこんな実力でいいのだろうか。
―ふ、と疑問に思う。
彼女は私が紅魔館に来る前からここの門番をしているらしい。それこそ、何年、いや何百年か知れないが。
その間ずっといまのこんなザマだったんだろうか?
いや、だとしたらなんで解雇されないんだろう?
「…でもまぁ、いいじゃないですか。パチュリー様も妹様も喜んでらっしゃいますし」
もはや岩の塊である瓦礫を片手で持ち上げながらまた、人畜無害な笑顔でそんなことを言う美鈴。
「…それは、まぁ、そうなんだけど。こうも毎回毎回門を完膚なきまでに破壊されたらうちの財政が火の車になっちゃうのよ」
「…面目次第も御座いません」
大人しくうなだれる門番長を見て、どうも先ほどの疑問が大きくなる。
やっぱり、この人懐っこい門番が「門番」というどうしても戦闘することの増える職についている事と、それを知った上で解雇なり何な
りされない事が不思議でならなかった。
「というわけでお嬢様。美鈴の門番っぷりがあまりにも目に余るのでどうにかしていただきたいのですが。主にうちの財政事情を助ける意味で」
夜。
レミリアは私室でいつも通り、咲夜と二人で紅茶を楽しんでいた。
だいたいは咲夜がその日あったことの報告を簡単に済ませた後、チェスをしたり咲夜の新作お菓子を楽しんだりして就寝するのだが、今
日はちょっと違っていた。
お茶を済ませ、ティーセットを片づけて部屋に戻ってきた咲夜が、魔理沙の襲撃の報告ののちにこう言ったのだ。
「あら。あの門番が魔理沙相手に突破されることなんてよくあることではないかしら。貴女からもきつく言っているのだし、当主が自ら手を煩わせる程の問題でもないと思うのだけれど?」
威厳たっぷりに、言い放つレミリア
「このままだとハンバーグ用のひき肉買うお金も無くなりますよ」
「うー!」
ハンバーグ>>>>>(越えられない壁)>>>>カリスマ
「…でも、あの子以上の門番なんてこの幻想郷、いえ、この世界全土を探してみてもいないわよ」
たっぷり10分間床に寝転がって手足をばたつかせながら駄々をこね、疲れたのか我に返ったのかどうにか椅子に座りなおすとそう言い切った。
この言葉に咲夜は少し面食らった。そして少し鼻血が出ていた。否、鼻から忠誠心が吹き零れていた。
「お嬢様がそこまで全幅の信頼を置いているとは、少し妬けますわね」
時を止めて鼻にティッシュを詰めたために少し鼻越えになった咲夜がややうらやましそうに言う。
「あら?私は貴女にも全幅の信頼を寄せているわよ?…あぁ、だから鼻血を出すなスカートにしがみつくな顔を入れるな!」
またもやたっぷり10分後。
レミリアにグングニられて冷静さを取り戻した咲夜が、今日の昼感じた疑問を口にした。
「何故、美鈴に門番を任せているのですか?そして何故そこまで信頼しておられるので?確かに彼女はいい子ですがどうも戦闘向きでは
ないような気がするのですが…性格的な意味で」
この質問に、レミリアは少し考え込むそぶりを見せて、数瞬後、口を開いた。
「あの子が言わないことを私が言うのもアレなんだけど…まぁ、いいわ。教えてあげる。私があの子に門番を任せるほどに信頼している理由を」
「何から話そうかしらね。そう、あれは幻想郷に来る前の事―――
こちらの歴史でいう16世紀中ごろ。ヨーロッパの、どこか。
まだ魔女狩りの手の届かぬこの地に、紅魔館はあった。
レミリアの父、先代のスカーレット卿はこの付近を統括していた。
しかしそれは暴力と恐怖によるものではなく、住民たちはこの紅い屋敷にすむ領主をちょっと変わったやさしい方と敬っていた。
そんな平和な紅魔館の門前には、まだ紅髪の門番はいなかった。
そんなある日。
「異端審問官が、この町に?」
あぁ、とため息ながらに話す館の主。
そのそばには、長く美しい紅髪を後ろでまとめた、長身のメイド。
そう、先代メイド長、紅美鈴だ。
メイドと主人という立場の違いがありながら、このように話ができるのは、長年の信頼か、友情か。
「魔女狩りなどと…本当に忌まわしい。キリストの名のもとに何の罪もない人々を抹殺するなどと…これだから人間は…っ」
ぎりりぃ、と歯噛みする音が聞こえる。
「しかし、なんでまたこんな辺鄙なところにわざわざ。…まさか、我々の存在が?」
吸血鬼。
もちろんそれはキリスト教―ローマ教皇庁にとって忌むべきものであり、抹殺すべきものである。
「いや、そこまではまだ分かっていないが…。だが、町の人たちに何もなければそれでいい。適当に賄賂でも掴ませてお引き取りいただ
くさ。それに、」
そこでいったん話しを区切ると、手にしたブランデーをあおる。
「…万が一のため、最悪の事態は、想定してある。やつらが来る当日、君はここに残っててくれ。留守を任せたい」
「かしこまりました、わが主」
恭しく頭を下げる美鈴。だが、内心はとてもとても穏やかではいられなかった。
―当日。
荷馬車に多少の物品と酒とやや多めの金品を積み、出発するスカーレット卿。
「ちちうえー。町に行くのなら、お土産を、ぬいぐるみがいいです!」
「おねえさまだけはずるい!わたしにもねー!」
それを見送る、二人の愛娘と、メイド達。
まだ幼い二人には、ただの町へのおでかけ、にしか見えなかったのだろう。
けれでも、美鈴にはどうしても。
いってらっしゃいませ、と笑顔で見送り、ぴょんぴょん跳ねて父上に甘える二人笑顔でたしなめながらも。
―どうしても、どうしようもなく、死地へと赴く様にしか見えなかった。
・初投稿&初SSです。お見苦しい点が多々あります。
・しかも続きます。
・二次設定、三次設定、俺設定が大量にあります。
・世界史に詳しくない残念な作者です。
ではどうぞ。
―以下本文―
紅魔館。
ぽかぽかとした初夏の、ほどよい(屋敷の主人的には悪い)天気のいつも通りのある日。
「今日こそは通さなぎゃああああ!!」
…ある意味、いつも通りの悲鳴といつも通りの爆音。
はあぁぁ、と肺の中の空気を吐ききるかのような、深いため息をついて門のほうへ向かう一人の人影。
言わずと知れた、泣く子も黙る紅魔館の完全にして瀟洒なメイド長、十六夜咲夜だ。
「美鈴、貴女一体何回吹き飛ばされれば気が済むのかしら?」
「うぅ、面目ないです…」
門だったものの破片に埋もれた、赤い髪の女性―紅美鈴―。
黒白鼠こと霧雨魔理沙の恋の魔砲「マスタースパーク」によって見事に吹き飛ばされた門のがれきをどかしつつ、そう言ってにへら、と笑う。
全く、この紅魔館を守る門番のそれも仮にもそのトップがこんな実力でいいのだろうか。
―ふ、と疑問に思う。
彼女は私が紅魔館に来る前からここの門番をしているらしい。それこそ、何年、いや何百年か知れないが。
その間ずっといまのこんなザマだったんだろうか?
いや、だとしたらなんで解雇されないんだろう?
「…でもまぁ、いいじゃないですか。パチュリー様も妹様も喜んでらっしゃいますし」
もはや岩の塊である瓦礫を片手で持ち上げながらまた、人畜無害な笑顔でそんなことを言う美鈴。
「…それは、まぁ、そうなんだけど。こうも毎回毎回門を完膚なきまでに破壊されたらうちの財政が火の車になっちゃうのよ」
「…面目次第も御座いません」
大人しくうなだれる門番長を見て、どうも先ほどの疑問が大きくなる。
やっぱり、この人懐っこい門番が「門番」というどうしても戦闘することの増える職についている事と、それを知った上で解雇なり何な
りされない事が不思議でならなかった。
「というわけでお嬢様。美鈴の門番っぷりがあまりにも目に余るのでどうにかしていただきたいのですが。主にうちの財政事情を助ける意味で」
夜。
レミリアは私室でいつも通り、咲夜と二人で紅茶を楽しんでいた。
だいたいは咲夜がその日あったことの報告を簡単に済ませた後、チェスをしたり咲夜の新作お菓子を楽しんだりして就寝するのだが、今
日はちょっと違っていた。
お茶を済ませ、ティーセットを片づけて部屋に戻ってきた咲夜が、魔理沙の襲撃の報告ののちにこう言ったのだ。
「あら。あの門番が魔理沙相手に突破されることなんてよくあることではないかしら。貴女からもきつく言っているのだし、当主が自ら手を煩わせる程の問題でもないと思うのだけれど?」
威厳たっぷりに、言い放つレミリア
「このままだとハンバーグ用のひき肉買うお金も無くなりますよ」
「うー!」
ハンバーグ>>>>>(越えられない壁)>>>>カリスマ
「…でも、あの子以上の門番なんてこの幻想郷、いえ、この世界全土を探してみてもいないわよ」
たっぷり10分間床に寝転がって手足をばたつかせながら駄々をこね、疲れたのか我に返ったのかどうにか椅子に座りなおすとそう言い切った。
この言葉に咲夜は少し面食らった。そして少し鼻血が出ていた。否、鼻から忠誠心が吹き零れていた。
「お嬢様がそこまで全幅の信頼を置いているとは、少し妬けますわね」
時を止めて鼻にティッシュを詰めたために少し鼻越えになった咲夜がややうらやましそうに言う。
「あら?私は貴女にも全幅の信頼を寄せているわよ?…あぁ、だから鼻血を出すなスカートにしがみつくな顔を入れるな!」
またもやたっぷり10分後。
レミリアにグングニられて冷静さを取り戻した咲夜が、今日の昼感じた疑問を口にした。
「何故、美鈴に門番を任せているのですか?そして何故そこまで信頼しておられるので?確かに彼女はいい子ですがどうも戦闘向きでは
ないような気がするのですが…性格的な意味で」
この質問に、レミリアは少し考え込むそぶりを見せて、数瞬後、口を開いた。
「あの子が言わないことを私が言うのもアレなんだけど…まぁ、いいわ。教えてあげる。私があの子に門番を任せるほどに信頼している理由を」
「何から話そうかしらね。そう、あれは幻想郷に来る前の事―――
こちらの歴史でいう16世紀中ごろ。ヨーロッパの、どこか。
まだ魔女狩りの手の届かぬこの地に、紅魔館はあった。
レミリアの父、先代のスカーレット卿はこの付近を統括していた。
しかしそれは暴力と恐怖によるものではなく、住民たちはこの紅い屋敷にすむ領主をちょっと変わったやさしい方と敬っていた。
そんな平和な紅魔館の門前には、まだ紅髪の門番はいなかった。
そんなある日。
「異端審問官が、この町に?」
あぁ、とため息ながらに話す館の主。
そのそばには、長く美しい紅髪を後ろでまとめた、長身のメイド。
そう、先代メイド長、紅美鈴だ。
メイドと主人という立場の違いがありながら、このように話ができるのは、長年の信頼か、友情か。
「魔女狩りなどと…本当に忌まわしい。キリストの名のもとに何の罪もない人々を抹殺するなどと…これだから人間は…っ」
ぎりりぃ、と歯噛みする音が聞こえる。
「しかし、なんでまたこんな辺鄙なところにわざわざ。…まさか、我々の存在が?」
吸血鬼。
もちろんそれはキリスト教―ローマ教皇庁にとって忌むべきものであり、抹殺すべきものである。
「いや、そこまではまだ分かっていないが…。だが、町の人たちに何もなければそれでいい。適当に賄賂でも掴ませてお引き取りいただ
くさ。それに、」
そこでいったん話しを区切ると、手にしたブランデーをあおる。
「…万が一のため、最悪の事態は、想定してある。やつらが来る当日、君はここに残っててくれ。留守を任せたい」
「かしこまりました、わが主」
恭しく頭を下げる美鈴。だが、内心はとてもとても穏やかではいられなかった。
―当日。
荷馬車に多少の物品と酒とやや多めの金品を積み、出発するスカーレット卿。
「ちちうえー。町に行くのなら、お土産を、ぬいぐるみがいいです!」
「おねえさまだけはずるい!わたしにもねー!」
それを見送る、二人の愛娘と、メイド達。
まだ幼い二人には、ただの町へのおでかけ、にしか見えなかったのだろう。
けれでも、美鈴にはどうしても。
いってらっしゃいませ、と笑顔で見送り、ぴょんぴょん跳ねて父上に甘える二人笑顔でたしなめながらも。
―どうしても、どうしようもなく、死地へと赴く様にしか見えなかった。
続き期待しています
素晴らしいですね。
美鈴の過去話は好きです。