ぼうは、と森近霖之助は水煙草を吐き出した。
古道具・外来道具萬扱(よろずあつかい)、香霖堂。
霖之助の店に、今日も客はない。
人間の里から遠く離れ、人に害なす瘴気が漂う魔法の森。
その入り口に店を構えているのだから当たり前だが、気にした様子もない。
丁寧な装飾の施された水煙草をでん、と吸え、ぷかり、ぷかり煙を燻らしている。
商売人としては失格だろうが、暢気で気だるい、よき初秋であった。
風が、肌に心地よく涼しい。
「失礼したぜ」
扉が蹴破られる音と共に、煙と暢気が外に逃げていった。
どすどす、と足音高く店に入ってきたのは、先の尖った黒い帽子で金髪をまとめた少女。
同じく魔法の森に居を構える、霧雨魔理沙であった。
「魔理沙。失礼したぜ、というなら扉は蹴破らないで欲しいな」
「ああはいはい、今度からそうするぜ。ともかく、篭ってないで神社に来いよ。外から道具が流れ着いたんだ」
霖之助の抗議もどこ吹く風、魔理沙は用件を手早すぎるほど手早く伝えた。
ここ幻想郷で神社といえば基本的には博麗神社である。
幻想郷を幻想郷足らしめる、外の世界との結界を維持する最重要地点であり、そこには外の世界から人や物が流れ着く。
古道具よりもむしろ外来の道具を主に商う(といっても、売れたためしはないのだが)霖之助にとっては、馴染み深い場所である。
「なら、霊夢や君が持ってきてくれよ。いつもはそうしているだろう?」
「それがなぁ……まぁ、百聞は一見にしかず、だ。とっとと乗れよ」
魔理沙は一瞬顔をしかめると、親指を背後に突き出す。
そこには、彼女の魔法の箒があった。
術師や妖怪がうごめく幻想郷。
空を飛ぶものは珍しくないが、その中でも速い部類に入る、魔理沙自慢の逸品である。
やれやれ、と呟いて、霖之助は煙草に点けた火を消した。
魔理沙とは長い付き合いである。
こちらの都合お構いなしで大暴れする彼女の性格を考えれば、粘ったところで強引に連れ出されるだけだろう。
ならば、面倒なことになる前に自分から出るか、と。
商売気が一切ない商売人、森近霖之助にそう思わせる程度に、霧雨魔理沙はイケイケである。
「これは……」
博麗神社の外れ。
霖之助は絶句していた。
その後ろでは、この神社の巫女、博麗霊夢がうんざりした表情を浮かべ、なぜか魔理沙は高笑いしていた。
霖之助とて、幻想郷に生きる存在である。
魔法や化け物の類など日常の部類だし、驚くことなどない。
幻想郷では珍しい科学の産物も、外来の道具を扱う商売上見慣れている。
では、なぜ霖之助は驚きの表情を浮かべているのか。
「……大きいな」
目の前の鉄塊が、ただただ巨大だからである。
高さは少女である霊夢、魔理沙はおろか霖之助の遥か上を行く2メートル。
長さに至っては8メートルはあろうか。
よくもまぁ、広くはない博麗神社裏に収まったものだと感心する威容であった。
「んで、こいつぁなんなんだ、霖之助」
「そんなのはどうでもいいから、とっとと引き取って頂戴、霖之助さん」
弾む魔理沙と沈む霊夢。
対照的な二人の声を聞きながら、霖之助は静かに目の前の鉄塊を見た。
印象としては魚に似ている。
頭が細く、胴で膨らんで尻がまた細い。
流線型の楕円に、四角い尾びれが付いている。
しかし、神秘の幻想郷とはいえ、鉄の魚など聞いたことはない。
じっ、と霖之助はそれを視た。
「ふうむ……解った」
霖之助には、一つ能力がある。
目の前の少女達のように弾幕をはれるわけではないが、己の性分には見合った能力だと思っている。
曰く、道具の名前と用途が解る程度の能力。
人間の作ったものであれば、いかなものも一見で見破る眼力こそが、道具屋香霖堂主人の力であった。
「何だよ何だよもったいぶるなよ!」
「これは、RDS-220。開発コードイワン」
身を乗り出して目を輝かせる魔理沙を尻目に、霖之助は呟くように告げた。
「通称はツァーリ・ボンバ……用途は、戦争に勝つこと」
「それって……」
青ざめた霊夢に、霖之助は険しい表情で頷く。
「つまり、兵器だ」
「面倒ねぇ……」
「僕は引き取らんよ、店にも家にも置く場所がない」
「お前ら、もっとやる気出せよ!」
ツァーリ・ボンバ対策本部と書かれた張り紙を、社殿に高く掲げつつ魔理沙が吼えた。
答えるのも面倒、という表情で、霊夢と霖之助はため息をついた。
何につけても派手好きな魔理沙は、この異様な兵器に当てられ、躁にでも入ったようだ。
一刻も早く邪魔な鉄塊を退けたい霊夢と、優雅な午後の水煙草を邪魔された霖之助とのテンションの差は、顕著であった。
「で、霖之助さん。これ、どう使うのかしら」
「……」
「またか霖之助! まっったく!! もって!!! 使えないぜ!!!!」
森近霖之助の能力は、問答無用である。
人間の作った道具であれば、例えそれが古代の神器だろうと名前と用途を当てる。
だが、解るのはあくまで名前と用途のみ。
どうすればその道具が使用可能なのか、どのような状況で使うのか、使ったらどうなるのか。
肝心要のその部分は、一切不明瞭なのだ。
先に吸っていた水煙草も、水を通して煙の夾雑物を抜くというどおりが解らず、とある妖怪に丸々教えてもらった、という裏がある。
毎回毎回、外来の道具を扱うたびにこうなるのだから、魔理沙のまたか呼ばわりもあながち非道とは言えないだろう。
「しかしまぁ、用途が解っているのはありがたいわね」
「どういうことだ?」
「兵器ってことは、何がしか危ういものってことよ。慎重に扱う必要があるわ。なんかやな予感するし」
「霊夢の言うとおりだね。広く見識を集め、慎みの上に慎みをかさねて対処する必要がある」
霊夢の勘は当たる。
数多の異変を解決してきた博麗の巫女であるが、思慮や分別ではなく、ただただ直感にしたがって進むだけで事件の真相にたどり付いて来た。
故に。
「めんどくさいぜ。こう、どーんと吹っ飛ばそう」
「止めなさい。行くわよ、魔理沙。霖之助さんは留守番よろしく」
「乗りかかった船だ。面倒だが、引き受けるよ」
魔理沙のこの提案を却下したこともまた、幻想郷の必然だったといえよう。
RDS-220ツァーリ・ボンバ
1961年10月30日、ソヴィエト連邦北方、ノヴァヤゼムリャにて投下実験が行われた。
その破壊力はTNT爆弾換算で50メガトン、広島型原爆にして3300個分。
爆発した火球のみで半径4.6キロ、一次放射線の致死半径6.6キロ、爆風による人員殺傷半径23キロ、致命的な熱線の効果半径58キロ。
爆発の様子は1000キロの彼方からでも観測可能であり、発生した衝撃波は地球を三周した。
米ソ軍拡最大の狂気、人類史上最強の単一兵器である。
「ネズミ取りは、またまともに機能していないようね。本当に黒猫でも飼おうかしら」
言葉の内容に反して、薄紫の服を着込んだ少女は不愉快そうな顔はしていなかった。
手入れなどしていないはずなのに、膝裏まで伸びた紫の髪には艶が乗っている。
突如現れた黒紅二人組みに驚いた様子もなく、古ヘブライ語で記された魔術書から目線を上げようともしない。
ここは紅魔館大図書館。
うずたかく本が山をなし、四方も八方も知識が積み上げられた、魔女の要塞である。
「ああ、あの門番か。うるさかったのでぶっ飛ばしたぜ」
「咲夜には事情を話して、通してもらったわ。ていうか美鈴に喧嘩を吹っかける意味、あったのかしら?」
「むろん、なんとなくだぜ」
「やれやれね……」
ぱたん、と読みかけの魔術書を閉じ、魔女はようやく視線を上げた。
彼女の名はパチュリー・ノーレッジ。
陰陽五行を自在に操り、一週間少女の異名を持つ、紅魔館の食客にして頭脳である。
とりあえず手近なところから、ということで二人が選んだのはパチュリーであった。
紅魔館は幽界にあるわけでもなし、迷いの竹林が守るでもなし、ましてや複雑怪奇な理屈で神隠されているマヨヒガにあるわけでもない。
普通に飛んでいけばするりするりと届く、幻想郷においてはまともな場所なのである。
加えて、たまに人間を呼んでパーティーをする程度には開放的であり、図書館に引きこもっているパチュリーとも、片や巫女片や魔法使いである二人は面識があった。
霊夢は暇つぶしに、パチュリーが収集している外来の本を読み漁る程度の。
魔理沙は図書館を深夜襲撃し、魔術書を自分が死ぬまで借りていく程度の仲ではあったが。
「まぁ、というわけでね。紅魔館の頭脳にお知恵を拝借願いたいというわけ」
「……」
「なんだ、黙り込んで。やっぱこうも引きこもっていたんじゃ、最新の情報には疎いってワケか?」
図書館とはいうモノの、実質パチュリーの巨大な書斎である。
分厚いマホガニーで作られた円卓に三人は腰を下ろし、いつの間にか用意されていた紅茶を飲みながら、話しをはじめた。
博麗神社に突如出現した、外の世界の異物ツァーリ・ボンバ
その説明を聞いたとたん、パチュリーは軽く眉をしかめ、沈黙。
ここぞとばかりに魔理沙がはやし立てるが、気にした様子もなく、しかめ面のままカップを置いた。
ぱん、と拍手を打つと、パチュリーのカップは消えうせ、代わりに分厚い書物が置かれていた。
「本当にここの従者の手品は面白いな。種を教えて欲しいものだぜ」
「教えてもらったからと言って、あなたに時間停止術は難しいと思うわ。術でもないし……うん、これね」
先ほどから突如消えて現れる紅茶は、紅魔館の従者、十六夜咲夜の仕業である。
時間を操る程度の能力を持つ彼女は、かのようにして姿を現すことなく、給仕を行う。
完璧で瀟洒なメイド、と呼ばれる所以である。
とまれ、ぺらりぺらりと書物をめくっていたパチュリーの指が止まり、二人の前に書物が晒される。
パチュリー自筆の、魔術文字を駆使した術書ではなく、外の世界の書物らしい。
四段に組まれた日本語の合い間に、色鮮やかな写真が挿入されている。
「おお、こんな感じだぜ、アレは。よく判ったな」
「えっと……ばくだん?」
「そう。容器に爆薬を装填して信管を取り付けた兵器。通常は航空機から落下させることで運用を行う」
パチュリーの指先には、読み上げたとおりの文面が書かれていた。
パチュリーコレクションの中でも自慢の一冊、講談社日本語大百科(1989年版)。
豊富なヴィジュアルと内容、一冊にまとめたハンディさ。
分冊形式の百科事典に、内容の詳しさでは劣るものの、ちょっとした調べ物には丁度よい。
バランスの取れた事典である。
「要するに、そこの白黒がたまに投げつけてくる、キノコ魔法が凄くなったものだと思えばいいわ」
「キノコ魔法とは失礼なヤツだぜ。ま、確かにキノコを触媒に使ってはいるけどな」
「あー、確かに魔理沙の魔法は、いやに爆発したり炸裂したりするのが多いわね」
「私の日符や火符に近いかもしれないけれどね。要するにどーん、となるの」
彼女達の共通項は、なにも少女である、ということだけではない。
弾幕。
巫女である霊夢ならば結界術、封印術。
魔法使いである魔理沙ならば、独自に研究した魔術。
そして五行に通じるパチュリーは、木火土金水日月の七曜を操る精霊魔術。
その成果を一種の美学と共に纏め上げ、スペルカードとよばれる符に込め、戦う。
霊夢本人がくみ上げた異変解決のルールに興じ、弾の嵐を掻い潜ること。
それもまた、幻想郷少女に共通の事例である。
「どーん、となるのか。下手に手を出さなくて正解だったぜ」
「止めたのは私、手を出しそうだったのは魔理沙。それで、この爆弾とやらは、どのくらい危ないの?」
「さぁ?」
さらりと、パチュリーは言い捨てた。
がくん、と机に突っ伏した魔理沙が、急速に体を起こして詰め寄る。
「さぁ、ってお前」
「私は魔女。別に兵器の研究家じゃないわ。外の魔法は、陰陽五行とは系統が違うもの。でもまぁ、この本から察するに、十人二十人は簡単に死ぬらしいわね」
「やれやれ……物騒なモノね、本当に。とっととどかしたいわ」
「言っておくけど、私は引き取らないわよ。さっきも言ったけど専門外なの。ロケットに使えるものでもなさそうだし」
「まだ研究してたのか」
「秘密よ」
紅魔館の主であり、パチュリーの親友でもあるレミリア・スカーレットは、月に執心している。
月面まで到達可能なロケットの開発を命じたのは、永夜異変の直後だったか。
以来ちまちまと外の世界の資料を集めてはいるものの、どうにも面倒が多く、研究は難儀していた。
ロケットは推進剤を安定して噴射し、空を飛ぶものである。
同じ火を扱う技術にしても、瞬間的に爆発し、物と人を破壊する爆弾とは、目的も技術も根本的に異なるのだ。
「ま、名前がわかっただけでも儲けものだぜ。とりあえず、役には立ったな」
「なら、早く帰って頂戴。さもないとウチの猫をけしかけるわよ」
「そいつぁ勘弁だな」
「まったくよ。ただでさえ、今日の魔理沙はなんかテンションがおかしいのに。咲夜とやりあうなんて余計な面倒、ごめんだわ」
霊夢も魔理沙も、空のカップを机に置いた。
巫女と魔法使いと魔女の集会は、どうやらお開きになるらしい。
「んじゃ、またなんかあったら来るぜ。なんかなくても来るぜ」
「何かあっても来ないでよ。あなたが来ると対応が面倒なの」
「ちょっと魔理沙、次は竹林抜けよ。グズグズしないでよ!」
既に図書館と扉に手をかけている霊夢が、大声を張り上げる。
うへぇ、と一声呻いて、魔理沙も扉の向こうに消えた。
紅魔館大図書館には、いつものように静けさが戻る。
「まったく……」
パチュリーはため息を一つつくと、百科事典を棚に戻した。
乱入者に乱された読書と研究の空気を、早く取り戻さなければ。
もう少し調べれば、確実に核爆弾の項目にたどり着いていたであろうが、そうは生らなかった。
結局、幻想郷において異変を解決するのは、巫女とその騒がしい友人、ということなのだろう。
「姫はお会いになりませんよ」
永遠亭、客間。
出迎えたのは豊かな銀髪を三つに編んで背中に流し、青と赤に分かれた服を着込んだ女性である。
少女というには、少々肉が豊かに過ぎる。
黒い瞳には落ち着きの色が見え、物腰には余裕が漂う。
永遠亭主人、蓬莱山輝夜の側近にして万能の天才。
蓬莱の薬屋八意永琳である。
「あー、姫はいらん」
「いらんのか」
「あいつに今回の件を話してどうにかなるか? 手がかりになりそうだったハクタクハーフもさっぱりだったし」
即答した魔理沙に思わず突っ込んだ霊夢だったが、そういわれると黙るしかない。
紅魔館から永遠亭に向かう途中、人間の里に立ち寄った。
目的は町外れの寺子屋である。
そこで教師をしている上白沢慧音は英知の瑞獣白澤の血を引いており、幻想郷の歴史全てを読み、書き直す能力を持つ。
その力を期待しての里来訪であったが、結果から言えば空振りである。
ハクタクは王の側にあり、歴史と英知に富む。
逆に言えば、知っていることは全て歴史がらみであり、百年以上前に外の世界から隔離され、技術進歩の歴史から取り残された幻想郷のハクタクには、爆弾は専門外だったのだ。
「広島がどうの長崎がどうのゲルニカがドレスデンが、と言っていたが、正直よくわからん。わからんが」
「慧音も、爆弾の歴史は人死にしかない、とは言っていたわけよ」
「そこで、何故永遠亭に?」
音もなくふすまが開かれ、二足で歩く兎が、盆に茶と菓子を載せて現れた。
しずしずとした足取りで、永琳と二人が対峙する机に歩み寄ると、茶を置いて一礼。
釣られて礼をした二人を特に気に留めた様子もなく、イナバは給仕をして去っていく。
「ほう、鹿の子か。旨そうだぜ。食っていいか?」
「どうぞ。お客にいただいてもらうために、茶菓子というのは出しますからね」
「んで、あんたのところに来た理由なんだけどさ」
小躍りしつつ茶菓子に挑む魔理沙を尻目に、霊夢は用件を切り出した。
永琳も心なしかほっとした様子で、視線を霊夢に向けた。
「結構前になるけど、なんか展覧会をしてたじゃない、月の」
「ええ、月都万象展ですね」
「月のウサギのついた餅は、徹頭徹尾普通の餅だったな」
「その時、月の武器も展示してたわよね。片手持ちの重砲とか、戦車とか。その中に、爆弾もあったじゃない。ブルトンだかジャリだかアルトーだかクノーだか」
「シュルレアレスムは関係ないぜ。正確には超小型プランク爆弾だぜ。あとジャリはダダじゃないか?」
「……プランク爆弾がどうかしたの?」
脱線に脱線を重ねる二人の会話に、初めて永琳の余裕が崩れた。
こほん、と霊夢は咳を払い、どこかに行った会話の糸を取り戻す。
「そうそう、プランク爆弾。うちの神社に爆弾が流れ着いて、ああいうモノを持っているあんたらなら詳しいかなと思ったわけよ」
「爆弾、ねぇ。ここには似合わないものね」
「外から幻想入りしたのよ。おかげで、原理原則がサッパリで、どう処したものか悩んでる、ってわけ」
「とはいっても、私達も百年単位で引きこもってましたから。直接には解りかねますよ」
「別にそれでもいいぜ。なにやら人死が出るらしい道具なんざいらんし、安全に処分するやり方が知りたい、ってだけなんだ。あと危険度」
パチュリーとの会合で、爆弾が危険な物品であることは認識できた。
では、どの程度危険なのか。
人のいないところで爆発させてしまえばいいのか、はたまた地下深くに封印するべきなのか。
危険度の高さによって、対処に仕方は大きく変わる。
魔術全盛の幻想郷において、曲りなりとも科学技術に知識があるのは、月人の邸のみであり、それゆえの永遠亭訪問であった。
「危険度、か……。地上人の技術がどこまで上がっているか、又聞きに推測を重ねた程度だけど、それでもいいの?」
「ないよりは全然ましよ。つくづく、幻想郷と技術は相性が悪いの。その推測すら出来ないんだから」
「では。月人の技術はそれなり以上に優秀なの。私がいたころは人間の技術は児戯に等しく、空を抜けて月に届くことなど想像もできなかった。が、ウドンゲの話によれば人類は40年ほど前に月面に到達、月人と戦争状態になったの。その程度には、人類の技術は発展している、ということね」
「長いぜ……」
「ロケットによる月面到達という事実のみ鑑みても、計算機による誘導慣性、航空力学、燃料学、弾道学など種々の学問の発展が必要。その技術から可能な兵器を逆算すれば、射程5000キロから10000キロ程度の精密弾道弾、かしらね。サイズと外見から見て、あなたの神社にたどり着いたものは弾道ミサイルではないでしょうけど、その弾頭に使用されているのは同じ技術だと推測できるわ」
茶菓子も食い終わり、茶を啜りながらボヤく魔理沙を置いてけぼりにして永琳の講義は進む。
魔理沙とは対照的に、霊夢は永琳の言葉を聞き流しはしない。
用語はさっぱり解らない。
外の世界における魔術と同じように、幻想郷における科学は一部の者たちだけの神秘だ。
が、異変解決こそが博麗の巫女の存在理由なれば、楽園の暢気な巫女なりの真剣さで聞く必要もあるのだ。
「さて。弾道ミサイルというのは非常にお金がかかるの。大きいし、打ち上げるのは難しいし。それに見合ったコストパフォーマンス……戦争においては敵の死者数や施設の破壊率ということだけど……を達成するには、強力で広域な破壊力を持った爆弾を搭載する必要があるわ」
「……どのくらい死ねば、その高いミサイルとやらに似合うの?」
「都市一つ、人口にして百万人、熱線・放射線・放射能物質・衝撃波その他諸々合わせて半径20キロ程度を殲滅、というところかしら。恐らく、それがあなたの神社に流れ着いた爆弾の破壊力ね」
さらり、と口から出た永琳の結論が、場に沈黙を与える。
幻想郷の人間、妖怪、妖精、亡霊、ともあれ言葉を喋る存在全てを合わせても、万は越えないだろう。
半径二十キロの円を描けば、幻想郷のほぼ全てが収まる。
要するに。
永琳の言葉が本当ならば、今博麗神社の裏に鎮座する鋼鉄の魚は、幻想郷を破滅させるだけの力があるのだ。
そして、八意永琳は天才である。
霊夢にとっては既に遠い話であるこの爆弾の技術さえ、月人の中ですら天才と呼ばれた永琳にとっては、なお児戯なのだろう。
なにしろ、永琳は死なない薬を完成させる技術と知識を有しているのだ。
だから。
まるで事務仕事の報告のように味気ない永琳の推測は、多分事実でしかない。
嘘をつけ、といいかけた言葉が、喉の奥に飲み込まれる。
それが、嘘であってほしいという願望でしかないことに、気付いてしまったからだ。
「とはいっても」
「なんだ!」
「これは普通の精密誘導弾に搭載されるであろう弾頭の破壊力を推測したものよ。わざわざ幻想郷に入るほど気の狂った兵器なら、もっと極端な性能でもおかしくないわね」
「……洒落にならんぜ、これは……」
魔理沙の口調からちゃらけた気配が抜け、苦鳴がもれた。
幻想郷と外の世界を隔てる結界は、いわば外でいらなくなったとされた存在を取り込むフィルターのようなものである。
兵器が不要になるには、そもそもまっとうに機能しないか、老朽化・陳腐化し通用しなくなるか、もしくは過剰な威力とコストにより運用不可と判断されるか。
その三つのどれかだ、と。
永琳は衝撃を受けた風でもなく、付け加えた。
「……最初の二つならまだいいが、三つ目だと」
「最悪……」
「……だな」
そして、霊夢の勘は三つ目だと告げていた。
永琳が数字として述べた、爆発による幻想郷消滅。
それを遥かに上回る狂気が、あの爆弾には詰め込まれていると、博麗の巫女の直感がわめき散らしている。
「ずいぶんお二方、顔色が悪いわね。気付けの薬でも出します?」
「結構だぜ。胡蝶の夢に遊んでいる場合じゃ、無いようだからな」
「そうね。……冷静ね、蓬莱人。死なない余裕?」
「推測を述べろ、といわれたからその通りにしただけよ。理論では人間は死なないわ。理論に裏打ちされた実力で、人間は死ぬの。兵器というのは、その具現ね」
霊夢の頭の隅に、無視できないほどの熱が生まれた。
が、ここで永琳に食ってかかったところで、あの爆弾が消えてなくなるわけではない。
思えば、霊夢が関わり解決してきた数多の異変。
どれも幻想郷全体を巻き込むものであったが、すぐさま人が死ぬ類のものでも、ここまであからさまに殺伐としたものでもなかった。
異変の主は皆、霊夢の定めたスペルカードルールに則って、正々堂々己のわがままを通そうとしたのだ。
そこには一種の遊戯性がある。
だが、永琳が突きつけた、冷徹な殺傷の気配にはそれがない。
ひどく本気で、現実的で、凍り付いている。
「これだから学者先生ってのはいやなのよ……」
「申し訳ありません」
「あんたがイヤなヤツだってのは、ようよう知ってるわよ。心にもない謝罪、しないで」
「それに危険度の推定っていう依頼は、充分すぎるほど果たしてくれたからな。感謝するぜ」
ここまで事態が判明すれば、悠長に情報を集めている場合ではない。
爆弾の動作原理が解らないということは、作動してしまえば止める手段はない、ということでもある。
腰を浮かせた二人に、永琳が声をかけた。
「お役に立てたかしら」
「ま、十分だぜ。あと、私もお前がイヤなやつっていう意見には賛成だ。勘違いするなよ?」
「胡散臭がられるのには慣れてるわ。夜道で迷わないよう、気をつけてね」
返事もせずに消えていく二人の背中を見つめながら、永琳は一つ、息を吐いた。
皮肉と文句の応酬が、幻想郷の流儀である。
二人も、二度と永遠亭に顔すら見せぬ、というわけではなかろう。
中秋月でも上がれば、月見酒の宴に誘われる未来が、目に見えるようでもある。
だが、永遠異変で対峙した時のゆるい余裕が、今の二人には欠けていることが気にかかった。
必至も真面目も、あの二人には似合わぬ気配である。
「永琳? 客でも来たのかしら?」
「あ、姫。例の二人組みが、少し」
「ああ、あの騒がしい連中ね。顔を出さないでよかったわ。付きまとわれたら色々疲れそうだもの」
「そうですね。本当は疲れたいんじゃないですか?」
心を少し遊ばせている間に、永琳の主が客間まで足を伸ばしていた。
くああ、とあくびを一つして、奥の間に消えていく。
「ま、疲れるのも面白し、疲れずもまた、ってところよ。どっちにしろ楽しめれば、それでいいのよ」
「なんとも素晴らしい快楽主義で」
しずしずと輝夜の背中に付き従い、永琳も永遠亭に消えていく。
客間には、空の茶碗と茶菓子皿だけが残っていた。
「まるで通夜の帰りだね」
律儀に社殿兼ツァーリ・ボンバ対策本部(筆:霧雨魔理沙)で待っていた霖之助が、帰ってきた二人にかけた言葉はそれだった。
「下手打つと、幻想郷自体の葬式だぜ」
「ま、ね。勘弁してほしいわ」
外套のように陰気をまとい、夜を高速で切り裂いて帰ってきた二人を霖之助なりに心配しての通夜である。
冗談か軽口で切りかえして欲しいところだったが、二人の表情は和らぐどころか深刻の色を増している。
「解ったのかい?」
「ああ、流石は月の天才だ。色々知っていやがったよ」
「推論だとは言ってたけどね。あの女、嘘はつかないでしょうよ。こと研究学問の類には」
ぶつくさぶつくさ、と毒を吐いた後、霊夢は手短に調査結果を説明した。
曰く。
ツァーリ・ボンバは幻想郷消滅すらありえる、危険な爆弾ではないか、と。
「やれやれ、引き取らなくて正解だったな。香霖堂は道具屋であって、兵器商人じゃないんだ」
「そんなのに鞍替えされたら、ほいほい遊びに行けなくなるじゃないか。面倒だぜ」
「うう、寒い。霖之助さん、お茶を入れてください。棚の三段目に急須ありますから」
「自分でやれよ」
「立ってるものは親でも使え、っていうでしょ」
色気の欠片もない胡坐で、社殿に腰を下ろしやりあう二人を横目に、霖之助は茶を入れた。
ようやく、通夜の顔ではなくなってきた。
事態は確かに深刻だが、それを解決する心までこわばっては、うまくいかないだろう。
茶を啜り、下らん話しを合い間に入れていけば、さらに気もまぎれるだろう。
そんな風に考えながら、霖之助も板張りの社殿に胡坐をかいた。
「で、だ。どうするよ」
「断固、封印よ」
「だろうね。放っておいて勝手に爆発されては困る」
「で、どうやるよ」
「魔理沙の術で、大穴でも掘って埋める? その上にあたしが封印施して」
「いい案だが……確実ではないかもしれんね。鬼だの天狗だのが暴れたとき、どれだけ深く掘っても、安心は出来ないと思うよ」
霖之助の言葉に、魔理沙と霊夢が呻いた。
二人共通の知人である、幻想郷唯一の鬼は天蓋すら砕く。
いかに地面を掘り下げようと、問答無用で吹き飛ばしそうだ。
「萃香は注意を聞きそうもないしな。ついでで、適当に喧嘩を売りそうでもあるぜ」
「そこまで喧嘩っ早い子でもないけどね。つい、というのはあるでしょうね」
幻想郷は、外の世界にいらなくなった存在が流れ着く。
人の世には強力すぎる狐狸妖怪が、両の指では足らぬ数いるのが幻想郷だ。
人外の戦いは、そのとばっちりも人外である。
隕石を砕き、山を吹き飛ばすことも日常茶飯事である。
「こうして考えると、狭いなぁ、幻想郷」
「冥界だろうと中有の道だろうと、行くやつは行くしね。あたしらが言う台詞じゃないけど」
「これは……地上での封印は現実的ではない、かな?」
「そうねぇ」
霖之助の言葉に、いる筈のない四人目が答えた。
声のした方向を振り返れば、ずっぱりと空間自体が切り取られ、そこから伸びた白い手が急須から器用に茶を入れている。
「ゲェ、スキマ!」
驚愕する魔理沙の目の前で、腕から肩が、肩から胸が、そして全身がするすると抜き出す。
真夜中で、しかも屋内だというのに薄桃の日傘を射し、同じく薄桃の衣に濃紫の上着を合わせている。
金髪を柔らかな帽子で包み、唇には気味の悪い笑み。
「相も変わらず神出鬼没ね、紫」
「お褒めに預かり光栄至極。お茶貰うわね」
「飲んでから言うなよ」
「君が言うなよ、魔理沙」
境界という概念を操り、幻想郷と外界の切断にも大きく絡む大妖怪。
人呼んで、神隠しの主犯境界に潜む妖怪幻想の妖怪
八雲紫は、威厳の欠片も無くずずず、と茶を啜っていた。
「色々動いてたみたいじゃない、二人とも?」
「壁に耳ありスキマに眼あり、かよ。油断も隙もないぜ」
「こういう生き物に、隙とか可愛いものを期待するほうが無駄よね。期待できるのはスキマだけよ」
うん、巧いこと言ったと頷きつつ、霊夢が二杯目の茶を入れる。
霖之助はぼりぼりと耳の後ろを掻きつつ、紫に声をかけた。
「あのですね、八雲さん」
「何かしら?」
にやにや、とかにたにた、という類の笑みではないが、霖之助は気おされた。
博麗結界を維持する霊夢の勤めと、結界の根本に関わる紫の能力。
霊夢が香霖堂に入り浸るうちに、いつのまにか霖之助と紫は知り合いとはいえる仲になっていた。
であるが、森近霖之助は八雲紫がそれほど得意ではない。
胡散臭いというか、不吉というか。
気が置けないのだ。
「今、霊夢が言ったのを聞いて思ったんですが、あなたがあの爆弾を持っていってくれませんかね」
「あら、賢い。私が提案するより早く、あなた方のほうから言い出すなんて」
「おい霖之助、こいつにアレはやばいぜ。鬼に金棒だ。だよな、霊夢」
気が置けないのは魔理沙も同じだった。
故に、霊夢に同意を求めたのだが。
「ああ、その手があったわね。紫、持ってってよ」
「おい! そいつぁどういう意味だ?」
「もちろん、日ごろの行いよねぇ」
霊夢はすばやく、霖之助の提案を支持した。
予想を外され食って掛かる魔理沙と、気味の悪い微笑みを浮かべ、冗談とも本気とも付かぬ繰言を述べる紫。
暢気が戻ったのはいいが、紫の乱入で今度は緩みすぎた。
霖之助は耳の後ろを掻き掻き、話の筋を戻すべく声をかけた。
「まぁ日ごろの行いはさておき。地上にこの爆弾を置いておけない以上、あなたの境界に頼るぐらいしか、手は無い」
「あら、さておかないでよ」
「さておくわよ。霖之助さんの言うとおり、あれはあんたの胡散臭いスキマに送ってよ」
「ちょっと待てよ。三人で話しを進めるなって!」
固まりつつある話に、魔理沙が水を差す。
「こいつは妖怪だぜ? お前の商売は妖怪をぶん殴ることだろ、霊夢?」
「あたしの商売は博麗神社巫女よ。小憎らしいことに、このスキマ妖怪とは結界つながりで知り合い。さらに不愉快なことに結界術の師匠でもある」
「暇になったときに突然やってくるだけの、臨時講師だけどね」
「自分で言うな。ていうか、何が問題なのよ?」
「問題だろ? 誰かにアレを預けるのは、使われるかもしれない、ってことだぜ?」
「使わないわよ」
「使わないわね」
「使わないな」
「だから三人で団結するなよ!」
霖之助、霊夢、そして紫。
三人は同時に、爆弾の私的使用の危険を否定した。
一人追い詰められる形になった魔理沙は、さらに会話の温度を上げていく。
「そんなに使わないって言うなら、根拠を出せよ、根拠を!」
「紫はわざわざ結界を張る程度には、幻想郷維持に熱心。境界の弄り方では、どんな存在も消せる化け物中の化け物で、爆弾に頼らなくても幻想郷は消せる。使う理由が一番無いわけ」
「加えて彼女のスキマに介入できる存在は、幻想郷にいるかどうかだ。外の世界の知識にも詳しい。爆弾の管理者としてこれ以上の適材はいないだろう?」
立て板に水とは、この時の霊夢と霖之助の語りを言うのだろう。
ぐ、と返しの言葉に詰まった魔理沙は、思わず視線を落とした。
「ま、起動させることも出来るけどね。高と低の境界を弄って気圧計を誤作動させてもいいし、疎と密の結界を弄って起爆用の原爆を臨界させてもいいし」
「せっかく話がまとまりかけているのに、不安になるようなこといわないでよね」
「冗談なのにねぇ。作動原理を理解している以上、作動させないことも自由自在です」
「日ごろの行いだぜ」
「日ごろの行いは、さておくんじゃなかったの?」
「んで、送ってくれるわけ、紫?」
脱線しかけた会話を、霊夢の一言が戻す。
「どうしようかしら」
「そこは頷いておけよ。だから信用が無いんだぜ?」
「冗談よ。お預かりしますわ」
胡散臭い。
紫の顔に浮かんだ、満面の笑みを見て、三人が思ったのはそれだった。
「んじゃ、またね」
するするとスキマに飲み込まれながら、紫は消えた。
後には音の残照だけが残る。
既にツァーリ・ボンバはスキマに送られ、博麗神社裏はスッキリとした風景を取り戻している。
八メートルの鉄塊が、幅一メートル歩かないかの隙間に飲み込まれる光景は、常識を超越していた。
が、紫のインチキぶりを目にするのが初めてなわけでも無し、誰も驚きはしなかった。
「しかし、本当にこれでよかったのか?」
「ま、ボケているようで悪巧みの好きな妖怪だからね。頭は回るでしょ、無駄に。点け込まれるような無様は……」
「そうじゃなくてさ。結局、あいつのインチキスキマに頼っただけなんじゃないか? 私らは何もしてないじゃないか」
そういわれると、霊夢に返す言葉は無かった。
今回は、巫女の力も、天才の勘も、危機を脱する切り札にはなりえなかった。
スペルカードルールに則り、相手を打ち負かせば勝ちではない。
博麗の結界術で封印したところで、少しでも作動すれば幻想郷が終わる爆弾相手では足りぬ。
自分達がしたのは、知人をたずね話しを聞いただけではないか。
「僕は思うんだが」
唇を噛みかけたところで、霖之助が空を見上げて呟いた。
月はもはや中天を過ぎ、今日という日が終わるのも近いだろう。
「腐れ縁を掘り返して色々聞いて回ったから、八雲紫という幻想郷の鬼札を引いたんだ。僕はぼう、と社殿に座ってただけだが、君らは動いた。最終的にけりをつけたのが君たちでなくても、その結果を引っ張り出したのは……」
「私たち、か」
「フォローどうも、霖之助さん」
みなまで言わせず、二人は霖之助の言葉を切った。
なにか、恥ずかしかったのだ。
遮られてみると、霖之助もつん、と鼻の奥に血が集まるのを感じた。
なにか、恥ずかしかったのだ。
「ま、何事も無くてよかったぜ。何事かあったら終わりだったんだろうけどな」
「しかし……夜も遅いわね。二人ともどうするの」
「僕は帰るよ。いい加減、店を開けっ放しというのも腰の据わりが悪い」
「開けてところで、どうせ客なんぞ来ないだろ?」
「はいはい、魔理沙は泊まりね。別にいいけど、朝はあんた担当よ」
そろそろ博麗神社の社殿が見えてきた。
霖之助は神社を外れ、二人は神社に入る。
「おう、気をつけて帰れよ」
「ああ、お疲れ様」
術を収めているわけではないので、霖之助は徒歩で闇へと消えていった。
「しかし……疑問だぜ」
「なによ」
社殿の扉を閉めながら、霊夢は背後に答えた。
魔理沙は既に、我が物顔で肘枕をし、寝そべっていた。
「あれだけ強力な武器なんだ、使えばいいじゃないか。幻想入りする理由が解らないぜ」
「強すぎるから幻想入りしたのかもしれないでしょ。鶏を割くのに牛刀を使う、って言葉もあるわよ」
「帯に短し襷に流し、か」
「意味違うわよ」
いつもの間抜けたやり取りのせいで、霊夢は言いかけた言葉を飲み込めた。
あれが山ほどあれば、人類という概念が幻想に入ってもおかしくないわね、という台詞は。
流石に言いたくはなかったので、有り難いといえば有り難い。
「はいはい、布団敷くからいったん退いて」
「しかし、色々回ってわけのわからん話を聞いて。疲れたぜ」
「だから手早く寝るのよ。ていうか、妙にテンション高いから疲れるのよ。魔理沙はもう少し落ち着きなさいよね」
「いやだぜ」
社殿の上には、幻想の夜が広がる。
こうして、幻想郷に流れ着いた最強の単体兵器は、いずことも知れぬ場所へと消えた。
幻想郷は全てを受け入れる。
が、受け入れるには危うすぎるものも、またあったという。
そういうお話である。
信管の活性化もクソもないから、緊迫感はないがそこが幻想郷らしくて良かったと思う。
あーあ、もうすぐ自走無反動砲も退役か・・・好きな兵器が幻想郷入りするのは嬉しいような悲しいような・・・
こういう時は気の許せないとかが正しいはず。
キャラの味はよく出ていたと思う。最後の人類が幻想になる、の件はよかった。
そこに至るまでしっかり書かれていたのが好感触でした。
というか幻想郷の広さって大体どの位なのかな?
いずれ全ての兵器まで向こうに行って貰いたいものだ。
それにしても60式引退は初耳です…
人類ごと幻想行きは勘弁願いたいですね
↓半径20kmというと狭く感じるかも知れませんがおよそ東京ドーム27,000個
神奈川県の半分を覆うので十分な広さかと
ごめんなさい、とても面白い話でした。
考えてみれば幻想郷システムは、今回のような何ともしがたい代物がやってくる可能性もあるんですよね。
そのうちゆかりんが幻想郷行きとスキマ送りの分別フィルターをつけてくれるといいなぁ……
誤字
帯に短し襷に流し
帯に短し襷に長し
>第百二十二期
季では?
>点け込まれる
突け込まれるでは?
二つ↓の方、ツァーリ・ボンバは原爆・水爆・原爆のトリプルハイブリッド構造ですが、普通の水爆も原爆とのハイブリッドなので、これも水爆に分類して良いと思います。