※注意※
スカーレットさんが頭おかしいです。
キャラ崩壊してます。
フランドールは、気が狂っていた。
495年間家に閉じ込められていたから狂ったのではない。気が狂っていたから、外に出してもらえなかったのだ。
しかし、そんな彼女でも、ほんのつい最近ここ2、3日くらいは家の中を歩き回る事は許可してもらっているらしい。
その理由としては、フランドールは巫女と魔法使いの影響で落ち着いてきたから、らしい。
その証拠に、ここ2、3日は特に何も破壊していない様だ。
それどころか、彼女は普通に館の住民と接している。例えば、姉と雑談したり、メイドに紅茶を頼んだり、来客に挨拶を交わしたり、などなど。
彼女と会話した者はみんな、特別彼女の気が狂っていると思わなかっただろう。きっと、彼女を見た全員が、こう思っただろう。
彼女の気が狂っていると誰かが嘘をついている、と。
しかし、それは違う。フランドール・スカーレットは間違いなく気が狂っている。
「お姉様の残り汁…。 うふふ…」
気が狂っている。間違いなく、気が狂っている。
フランドールは実の姉が入った後のお湯に入って光悦としたら表情になっていた。どう考えても頭おかしい。
もちろん、フランドールは浴槽の残り湯で喜ぶような妖怪などではない。むしろ、下賤な行為を嫌う誇り高き吸血鬼である。
しかし、そんな誇りなど関係ないと言わんばかりに、お風呂のお湯を堪能していた。
「あー、五臓六腑に染み渡るぅー…」
フランドールの頭はおかしい。誰の目から見ても明らかだった。
だが、そんなフランドールにも悩み事があった。
「はぁ…。 お姉様を泣かせたい…。 カリスマで満ち溢れたお姉様の綺麗な顔を色々な液体でぐっちゃぐちゃにしたいよぉ…」
悩み事は、姉の泣き顔を見たいというものだった。
もちろん、いつも高飛車で高圧的な姉の弱った姿を見たいという可愛いレベルのものではない。なんかもう邪神とか呼べそうな真っ黒な感情だった。
「お姉様どうやったら泣いてくれるかな…」
そんな真っ黒な欲望を満たすべくフランドールは普段使わない頭をフル回転させる。湯船に浸かりながら腕を組んで首を傾げて考えた。
しかし、なかなかいい案が出ない。
よくよく考えてみると、姉が泣いたところなど一度も見たことがなかったのだ。
おやつをフランドールに取られた時も、パチュリーと喧嘩した時も、咲夜が寝込んだ時も、巫女に負けた時も泣いた事はなかった。
そもそも、姉は悲しんだり辛かったりした事などあるのだろうか。フランドールは、姉が怒っている姿は見たことがあるが、悲しんでいる姿は見たことがなかったのだ。
「…。 どうしたらいいのか分からないや…。 でも、お姉様の泣き顔、見たいなぁ…」
フランドールは、悩んだ。悩んで考え抜いた。
しかし、姉を泣かせる妙案は思いつかない。
彼女は湯船に顔の半分を沈めて口から空気を吐いてブクブクさせる。
そんな事をしても、いい案が浮かぶわけではないが気晴らしにはなるだろう。
そうして5分くらい経っただろうか。フランドールは一つ思いついた。
「あっ、そうだ!! 分からない時は聞けばいいんだよねっ!」
彼女は顔を半分沈めていた湯船から一気に立ち上がり、水しぶきを撒き散らしながら浴槽から飛び出した。
そして、風呂場の扉を乱暴に開けて、適当に体を拭いて服を着て愛用の帽子をかぶって図書館へと向かった。
その途中、可愛らしい妖精メイドがいたのでスカートの中を覗いておいた。白だった。写真に収めた。
ーーーーー
「お姉様を泣かせたい」
「帰れ」
動かない大図書館ことパチュリーはフランドールに、にべもない言葉を発した。それどころか一瞥もせずに読書を続ける。
パチュリーはいつも冷静で紅魔館の頭脳的ポジションである。よく触手を出すのに使われる。
そんな彼女は普段から他人より読書を優先される傾向にあり、周りもそれを理解している。
しかし、来て早々帰れなどという態度を取られたフランドールは面白くない気分になった。
ちなみに、フランドールに自分の発した言葉がパチュリーに帰れと言われた要因であるという自覚はない。
「ねぇねぇパチュリー。どうしたらいいかな?」
フランドールは、めげずに声をかける。しかし、パチュリーは無視。
何度かフランドールが声をかけるが、パチュリーは全て無視。
パチュリーは面倒なことに巻き込まれたくないと思っていたので、無視する事を決め込んでいた。
どうせ、子供っぽいフランドールのことだ。無視し続けたらそのうち飽きて帰るだろう。我慢しないといけないのは煩さだけ、とパチュリーは高を括っていた。
が、しかし、その認識は甘かった。
「えいっ!」
「…。 えっ?」
フランドールが何か言った。
その次の瞬間、パチュリーは股間に一抹の風を感じた。
風と言ってもここは地下の大図書館。そうそう簡単に風など起こらないはずだ。
しかし、現にパチュリーの股間に風が起きた。なぜ、風が起こったのか。
「パチュリーのパンツ壊しちゃった。てへぺろ」
パチュリーのパンツがフランドールの力によってキュッとしてドカーンされたから風が起こった。
パチュリーはその事実を認識してから一瞬で顔が赤くなるのを自覚した。
「なにしてるの!?」
「うふふ、パチュリーの赤面かわいいね。 食べちゃいたい」
「なに言ってるの!?」
「パチュリーって、いつも暗い表情してたから、恥ずかしがってる表情ってすごくギャップがあってかわいい。 蹂躙したい」
フランドールはカメラをスカートの中から取り出してパチュリーを撮り始めた。
突然の行動にパチュリーは咄嗟に顔を両手で覆った。
それで恥ずかしさが紛れるわけではないが、少なくとも赤面した表情を取られることは無いだろう。これで、フランドールが写真を撮るのは諦めるはずだとパチュリーは考えた。
「ねぇ、パチュリー…。 狙ってるの?」
しかし、パチュリーの思惑は外れた。フランドールはカメラの連射機能を使ってフラッシュをたきまくってパチュリーを撮りまくっていた。パチュリーが顔を隠す前よりすごい勢いだった。
「ふ、フラン、や、やめて…」
「うふふ、パチュリー、何を恥ずかしがってるの? それはもしかして私を誘ってるの?」
「何を言ってるのよ…」
「ノーパンのまま顔だけ隠して弱々しい声で震えるように懇願するなんて、誘ってるとしか言いようがないよね! つまり、私がこのままパチュリーを襲っても合意だよね!」
「ひっ!?」
「パチェチュッチュレロレロ」
パチュリーは、恐怖した。
何を言われているのか分からなかったし、何をされるのかも分からなかった。
パチュリーは、気がついたら大図書館の天上を見ていた。
何か、色々なものを失っていくのを感じたが、ただ涙を流すことしかできなかった。
フランドールが去ってから約一時間後、大図書館の真ん中でノーパンのままミニスカのメイド服を着せられたパチュリーが、すすり泣いていたのを小悪魔によって発見された。
ーーーーー
「お姉様を泣かせたい」
「妹様!?」
フランドールはパチュリーを無理矢理コスプレさせて泣くまで写真を取り続けたところで、ようやく姉を泣かせたかったのを思いだした。
そして、その方法を普段役に立つ事がなさそうな門番に聞きに来ていた。
「あの、妹様、お嬢様を泣かせたいのはなぜですか?」
しがない門番は、喧嘩でもしたのだろうかと考えていた。
しかし、事実はそんな甘っちょろくない。邪神もびっくりな単なる欲望である。
「どうしてってそれは、お姉様の泣き顔がかわいいに決まってるからじゃない。 だって、あのカリスマよ。 あの凛々しい顔が恐怖に引きっつって壊れていくと思うと…。 うふふ」
「…」
これはヤバい。なんとかして止めなければお嬢様に色んな意味で危機が訪れる。ここは門番の意地を見せる時だと門番は思った。
しかし、具体的にどうしたらいいのかは、さっぱりわからなかった。何かいい案はないかと頭を悩ますが無駄なようで、考えが浮かばない。
「ねぇ、何かお姉様を泣かせるいい手段はないかな?」
「う、うーんと…。 そ、そうですねぇ…」
「そうだ! お姉様が寝ている棺桶を外に放置して、朝になったら起こすってのはどうかな?」
「ダメですよ! 泣く以前に日光で気化しちゃいますから!」
「じゃあ、銀のナイフでぶっさして、杭で心臓を打つ!」
「死んじゃいますって!」
「ぶー、じゃあ、どうすればいいの?」
「そ、それは…」
門番は、悩んだ。お嬢様を泣かすなど許されないだろうし、そもそも、お嬢様を泣かす手段など思いつかない。
だが、そんなことではこの暴れん坊の妹君は納得しないだろう。
そんな事を考えながらチラチラと顔色を確認していたら、フランドールが舌なめずりをして門番の目の前に立って見上げてきた。
「ねぇ、門番さんっておっぱい大っきいよね?」
「ふぇ?」
「…。 うふふ、パチュリーのよりずっと大っきい。 ほんと、さっきからチラチラとこっちを見てきて、何を期待してるんだか…」
「あ、あの、妹様?」
「うふふ」
門番は、一抹の風を胸に感じた。
要は、ブラジャーをフランドールの能力によって破壊されたのだ。
しかし、門番はその事実を認識しきれていない。
「へ?」
「ねぇ、おっぱい揉ませて」
「ファ!?」
そこで門番は初めて自分のブラジャーがなくなっていることに気がついた。
誰がやったのか。もちろん、目の前のフランドールに他ならない。
門番は、本能的に後ずさった。それをフランドールは息を荒くしながら手をワキワキさせて追い詰めていく。
「い、妹様! 何かお気に召さないことがあったのでしたら謝ります!」
「逆よ。あなたのおっぱい気に入ったの。 中華まんもみもみ」
「や、やめませんか? ここ、外ですし…」
「うふふ。 外だからいいんじゃない。 興奮するでしょ?」
「ひっ」
門番は、逃げ出した。今まで居眠りや敗北をして門をくぐられた事はあったが、自ら門から逃げ出すのは初めてだった。
門番として、決して逃げない。門番は今までその誇りを胸に戦ってきた。しかし、それもこの恐怖の前には無意味だった。
吸血鬼から逃げられるはずもなく、門番はあっけなく捕まった。
捕まった後、門番は暴れたが力の差は歴然で、一瞬で抑え込まれた。
その後、色々されたが、門番は星をただ眺めることしか出来なかった。
夜が明けてからノーブラの門番が目に光を失ってしゃがみこんでいるのを見張りの妖精メイドによって発見された。
ーーーーー
「お姉様を泣かせたい」
「あらあら、妹様いけませんよ」
門番のおっぱい。通称もんぱいを揉みしだいたフランドールは、メイド長の咲夜へ直接部屋に尋ねて相談に来ていた。
咲夜はもう寝る準備をし終えたところだったらしく、にゃんこ模様の寝間着姿であった。
しかし、流石は瀟洒な従者と言われるだけあって、そんな状態でも嫌な顔一つせずに対応している。
「どうしてー?」
「イタズラはいけません」
咲夜はフランドールの身長に合わせてしゃがみ、じっと目を見ながら諭すような声で言った。
寝る前だったのにも関わらず、優しそうな微笑みも忘れないあたり人間でメイド長を任されているのにも納得できる。
「イタズラじゃないよ」
「では、お嬢様に構って欲しいのですか?」
「ち、違うよ! お姉様が普段見せない泣き顔が見たいだけだよ!」
「ふふふっ、そうですか」
咲夜は必死に否定するフランドールの頭を優しく撫でる。
なんだか子供扱いされていると感じたフランドールはむくれつらになった。
「あら、申し訳ありません。 撫でられるのはお嫌でしたか?」
「そうだよ。 子供じゃないんだから」
「そうですか。 では子供ではない妹様…。 いえ 、フランドール様はきっと人を泣かすなどといった子供じみたイタズラなど決してしないでしょう。 子供でなければ、そんな低レベルな事はしませんよね?」
「うぐっ…」
「では、大人なフランドール様、お休みなさいませ」
咲夜はそれだけ言うと、立ち上がってフランドールに背を向けた。
フランドールは、咲夜のパジャマの裾をきゅっと掴んで行かせないようにした。そして、上目遣いにじっと見つめる。
「フランドール様、人間の私はもう眠たいのです。 今寝なければ明日に支障が出てしまいます」
「咲夜って、すごい意地悪なんだね…」
「あらあら、意地悪だと思われてしまいましたわ。 悲しいです」
「…。 そういえば、咲夜って泣かないよね? 悲しいのに泣かないの?」
「そうですね。 もっと悲しかったら泣くかもしれません」
フランドールは舌なめずりをした。このメイドを泣かすことができたらきっと姉も泣かせるだろう。今まで、パチュリーと門番にあんなことやこんなことをした時泣いていたから、咲夜に同じことをしたら泣くかもしれない。
フランドールはそう考えた。
「うふふ、咲夜って、すごく優しい笑顔をするよね?」
「ふふふっ、ありがとうございます」
「その時の唇に吸い付きたい」
フランドールは、咲夜に飛びついた。吸血鬼の身体能力から言って、ほぼゼロ距離の人間を逃がすことはない。
しかし、飛びついた先の咲夜は消えていた。代わりにふかふかの枕があった。フランドールは、枕とキスすることになった。
フランドールは何が起きたのか分からずしばらく枕を抱きしめていたら、頭を小突かれた。
「めっ!」
フランドールは咲夜に人差し指で頭を小突かれた。
どうやら、時を止めてフランドールから逃げ、そのままだと壁に当たったりして怪我をしてはいけないから枕を代わりに置いたのだろう。
そんな事はどうでもいい。それよりも、咲夜の怒り方だ。
唇を奪いに来た相手に、めっ、の一言と少し小突くだけで済ましてしまった。
これには流石のフランドールもびっくりで、きょとんとした表情で咲夜を見ることしかできなかった。
「もう、おませさんはいけませんよ」
「あ、はい」
「ふふふっ、分かっていただけたら結構です」
またフランドールは咲夜に頭を撫でられたが、今回は抗議の目を向けることができなかった。
フランドールは凄い気恥ずかしさを覚えて、俯いてしまった。
「大丈夫ですよ。 お嬢様は妹様の事を考えていらっしゃいますよ。 だから、イタズラなどなさらなくても、お嬢様は妹様に構ってくださいますよ」
「う…。そ、そんなんじゃないんだけどね!」
「ふふふっ、そうですか」
「本当だよ!」
「そうですか」
「…。 信じてないよね?」
「いえいえ、信じてますよ」
フランドールは、逃げ出した。
これ以上咲夜といると変になりそうだったので、咲夜の部屋から出て行って地下室へ逃げ込んだ。
咲夜は逃げるフランドールに向かってお休みなさいとだけ言ってベッドへ向かった。
ーーーーー
「お姉様を泣かせたい」
「本人がいる前で言うことじゃないわね」
フランドールは地下室で頭を冷やしていたら、本命の姉がやってきたのだ。
吸血鬼は本来夜の生物なので、人間の咲夜より夜更かしである。
「お姉様ってかわいいよね」
「フランほどではないわ」
「もー、お世辞ばっかり」
「そうでもないわよ」
レミリアが地下室にやってくることは、フランドールが閉じ込められていた時からあったことだ。
そして、変な会話もよくしていた。お互いに褒めあったり、突拍子もないことをいきなり言ったり、などなど。なので、泣かせたいと宣言してもいつも通りなのだ。
「ねえ、お姉様って、少女趣味?」
「どういうことよ」
「だって、館にいるのみんな女の子じゃん。 門番もパチュリーも咲夜も妖精メイドも」
「あぁ」
紅魔館は確かに女の子ばっかりだ。格好を気にするレミリアが、ガタイのいい男を雇ったりしないのはフランドールには不思議だった。
もしかしたら、男に嫌な思い出があるのかもしれない。その理由を聞けば姉を泣かせるヒントになるかもしれないとフランドールは考えた。
「なんで、少女ばかりがこの館に住んでいるのかって、それは私がかわいいと思った子を雇ってるからに決まってるじゃない」
「そ、そうなの」
フランドールの思惑は外れた。
ただ単にレミリアが女の子大好きだっただけだった。
本当に女の子が好きなのか、レミリアは羽を大きく広げてニタリという笑みを浮かべていた。心なしか息も荒い気がする。
フランドールはちょっと引いた。
「ほんとあの子たちかわいいわぁ…」
「あ、あのー…」
「あぁ、もちろんフランは別格よ。 私が一番愛してるのは貴女だから安心していいわ」
「えっと、ありがとう?」
「あら、信じてないの? わかったわ。 証拠をとってくるから待ってて」
レミリアは一人早合点して地下室を飛び出て行った。
フランドールはちょっと気持ち悪かった姉に呆気にとられていたので、声を掛けることができなかった。
だが、フランドールは姉がいない今こそ姉を泣かせるために落ち着くチャンスだと思いなおして深呼吸をする。
姉が少女趣味だと分かって少しびっくりしたが、自分も似たようなものだと言い聞かせ心を落ち着かせる。
お姉様をきっと泣かせてみせると決意を胸にフランドールは地下室の扉を睨みつけた。
「待たせたわね!」
地下室の扉が壊れそうな勢いで開けられた。姉が来たと思い、ぎゅっと握りこぶしを作る。
しかし、勢いよく開けられた扉には姉ではなく箱状の何かが現れた。扉から入るかどうかギリギリの大きさの箱だった。
「ほら! フランのアルバムと成長記録よ!」
箱の後ろからレミリアの声が聞こえた。どうやら、あの箱の中身全部がアルバムと成長記録らしい。
どう見てもあの箱はクローゼットなみのでかさはあった。
「お、お姉様? 多すぎない?」
「えっ、これここ最近十年分よ?」
「マジか」
フランドールは驚きのあまり真顔になった。
「さぁ! 見ましょう!」
「うん」
あまりの衝撃に姉を泣かせることが頭から抜け落ちてしまったのか、フランドールは素直に言われたとおり、アルバムを開いた。
するとそこには、自分の寝顔、着替えている姿、食事の時スープを零して驚いている表情、本を読んでいる時の横顔、姉の残り汁で光悦としている表情、etc…、が写っていた。
もちろん全てフランドールの写真である。
「えっ、これ、私、撮られてるの気づいてないよね?」
「そうね、フランの自然な姿を写真に収めたかったのよ」
「う、うん…」
大丈夫、フランドール。お姉様はおかしくない。別に盗撮くらい、残り汁で喜んでた自分に比べればかわいいものだ、とフランドールは自分に言い聞かせた。
それより、残り汁で喜こんでたのを気づかれていたのかと焦ったが、わざわざ写真に収めてアルバムに載せて見せてくるくらいだから、姉は気にしてないだろう、とフランドールは自分に言い聞かせた。
言い聞かせながら、アルバムを静かに閉じた。
「あら、もうアルバムはいいの?」
「う、うん。 それより、成長記録見せてほしいな」
フランドールは、アルバムをこれ以上見ると変なものが出てきそうだから、見たくなかった。
だから、さっさと次の物に手をつけたのだ。
自分の成長記録など少し気恥ずかしい気がしたが、この危ないアルバムよりはマシだろうとフランドールは思っていた。
「はい、これが成長記録よ」
「ありがとう」
フランドールは一冊の成長記録を受け取ったが、その表紙がおかしい。
表紙には、第120季2月10日から第120季2月17日と書いてある。つまり、この成長記録は一週間分しかない。
ちなみにこの記録帳はパチュリーの図書館にある本並みの厚さがある。
この記録帳で誰かを殴ったら殺れそうだ。
「ね、ねぇ、お姉様、これ、私の成長記録だけなんだよね?」
「もちろん」
大丈夫、フランドール。お姉様はおかしくない。きっと、大好きなお姉様の愛がいっぱい詰まってるのだ、とフランドールは自分に言い聞かせながら、記録帳を開いた。
ーーーーーーーーーー
2月10日、午後5時
フランドールの身体的成長。
身長、0.01021mm上昇
体重、0.015kg減少
健康状態、総合的に良好
血圧、80〜114吸血鬼hg
血中魔力、5429吸血鬼bcg
平均的な吸血鬼の成長速度よりやや遅め。
ーーーーーーーーーー
…。
普通の成長記録だ。変なところは特にない。
フランドールは安堵した。安堵して、読み進めていった。
ーーーーーーーーーー
胸囲、0.00000003um上昇
腰周り、0.00000035um上昇
おしり、0.000001um上昇
肌のはり、0.0000001モチモチ減少
肌のツヤ、0.00054ツヤツヤ減少
月経、約二週間と三時間後
ーーーーーーーーーー
…。
気持ち悪いとフランドールは思った。だけど、別にスリーサイズや月経を記録するくらい、変なことではないとフランドールは自分に言い聞かせた。
言い聞かせて読み進めた。
ーーーーーーーーーー
午後5時過ぎ、フランが起床。
とりあえず、ベッドの匂いを嗅ぐ。匂い的に少し甘酸っぱい汗の香りを確認、健康である証拠だ。匂いから察するに月経は周期通りきていない。素晴らしい。今日は自家発電の形跡なし。少し汗を確認するために舐めてみたが、匂い同様健康。問題なし。
午後5時13分、フランの着替え。
ぷくっとした柔らかそうな肌。肌の色は良好、いつも通り問題なし。一人で着替えられるようになってから今日で半年が過ぎた。妹の成長を喜びつつ、私の手から離れていくようで少しさみしくなった。もちろん、フランが脱いだパジャマの匂いを確認。ベッドと同じ匂いである。問題なし。
etc…
ーーーーーーーーーー
「うわぁぁぁぁああああああ!!」
「フラン?」
「えっ、なにこれ!? 気持ち悪!気持ち悪い!」
「あら、どうしたのかしら?」
「どうしたのかしら、じゃねーよ!」
「そんなに声を荒げるなんて、レディらしくないわよ」
「お姉様のストーカーじみた行為よりはマシだよ!」
「そんな事ないわ、もっと読み進めればきっと私の深い愛をフランは理解してくれるはずだわ」
「いやいや、おかしいよ。 匂いとか嗅がないよ普通」
「健康診断の一種よ」
「えー…」
「全部フランの為よ」
「わ、私のため…。 えへへ…」
「ほら、読み進めて」
「うん!」
フランドールは姉の言葉を信じた。大好きな姉。そんな姉が妹である自分に嘘などつくはずがないとフランドールは自分に言い聞かせた。
ーーーーーーーーーー
午後5時45分フランがトイレ。
まずは匂いを確認。基本だ。水洗後なのではっきりとは分からないが、独特のアンモニア臭が僅かに香る。健康な証だ。…
ーーーーーーーーーー
「ふっざけんな!!!」
「フラン?」
フランドールは、激昂した。今まで自分は他人の下着を破壊したり、恥辱に塗れた女の子の写真を撮ったり、おっぱい揉んだりしたが、流石におしっこの匂いを嗅ぎ始めるとは思わなかった。
「おしっこの残り香を嗅ぐとか頭おかしいんじゃないの!?」
「えっ、検尿知らないの?」
「いやいやいやいや、これ検尿って感じじゃないでしょ!?」
「いや、検尿よ」
検尿。確かに尿で健康検査をするのはそこまでおかしな話ではない。
そう考えると別に不思議じゃない気がしてきたフランドールだった。
「検尿…。 うん、検尿ね…」
フランドールは、自分に言い聞かせた。
ーーーーーーーーーー
午後6時フランとご飯。
軽いフレンチトーストと紅い紅茶だった。フランは少し急いで食べたのか、柔らかそうな頬っぺたに食べカスをつけていた。咲夜が取ろうとしたが、私が急いで代わりに取る。そして食べる。フランの味がした。健康状態は良好。基本である匂いも問題なし。今日も一日楽しいな。
ーーーーーーーーーー
「日記か!」
「フラン?」
「日記じゃんこれ! お姉様の日記になってるじゃん!」
「フランの食べカス美味しかったわよ」
「聞いてねぇわ」
「ほら、続き続き」
続き、と言われてもこの記録帳の時期のフランドールはまだ毎日を地下室でダラダラと過ごしているだけだった。
この時期のフランドールは、ご飯の時紅魔館のみんなと一緒に食べていたが、それ以外の時間は基本的に地下室で誰かが来るのを待っていたか一人で遊んでいたかの二択だった。
なので、フランドールは、これの続きは面白くないだろうなと思いながらページをめくった。
ーーーーーーーーーー
午後7時25分 フランの地下室暮らし
フランドールは本を読んでいた。ベッドに寝転び、足をパタパタさせながら読んでいた。これはやばい。かわい過ぎる。とりあえず、写真に収めておいた。パンツを確認。色、ポジション、柄、総合布面積は完璧。基本である匂いも問題なし。すこし舐めておいた。ひゃんっとフランが呻いたので素早く隠れる。味は健康的だった。
ーーーーーーーーーー
「おぃ、お姉様」
「レディが胸ぐらをつかんではいけないわ」
「あの変な、ねとぉっとした奴はお前の仕業か。 毎回すげェ怖かったんだからな」
「ふふっ、フランは怖がりね」
「いいから一発殴らせろ」
「暴力はいけないわ。 騙されたと思って最後まで読んで」
フランドールは、振り上げた拳を力なく下ろした。ぶん殴りたかったが、姉が自分を謀ることはしないだろうとフランドールは自分に言い聞かせた。
ーーーーーーーーーー
パンツは衛生上最も注意すべき箇所である。そのため、非常に入念なチェックが求めらるのであるって、けーねが言ってた
ーーーーーーーーーー
「慧音が言ってたら仕方ないね」
「そうよ、これは必要なことだってわかってくれた?」
「うん!」
「ほら、続き続き」
ーーーーーーーーーー
8時10分フランのブラジャー
今日は月に一度のフランのブラジャーソムリエタイムだ。一週間前はパンツ、二週間前はナプキン、その前は靴下である。
ーーーーーーーーーー
「お姉様、すごく読みたくない」
「騙されたと思って読んで」
「いや、嫌な予感しかしないし」
「ほら、この関連項目を読んで」
これは新手のセクハラではないかとフランは思ったが、大好きな姉がそんな愚かなことをするはずがないと自分に言い聞かせた。
そして、姉の指差す部分を読んでみた。
ーーーーーーーーーー
※フランのブラジャーソムリエとは。
フランのおっぱいの成長を感じるため、かつフランの健康状態を確認する行為の一つである。まず、基本である匂いを確認する。そして、味を確認。そこからフランの健康状態を察する。次に試着。そこからフランのおっぱいの成長具合を目だけでなく肌で感じる。決して変態的な意味はない。
ーーーーーーーーーー
「お姉様」
「どうしたの?」
「タヒね」
「あら、別に普通よ。 貴女のブラジャーを誰が買ってると思ってるの?」
「咲夜」
「そうだけど、サイズは誰が測るのよ」
「…。 あ、そっか」
「でしょ? これは必要な行為なのよ」
「うん…。 そうだね」
ーーーーーーーーーー
フランのブラジャーを持ち出す。全部で十着。全てをベッドの上で広げると、凄まじく壮観だった。私はその感動が冷めない内に、基本である匂いを嗅ぐ。フランのブラジャーの匂いは太陽のような香りを放っていた。それは、私の目の前にまるで花畑が広がるほど芳醇な香りで、私を異世界へと誘ってゆく。少し興奮したが落ち着いてもう一度匂いを嗅ぐ。素晴らしい。流石フラン。続いて味だ。少し舐める。素晴らしい。興奮する。私は湿ったそれを秘所に当て…
ーーーーーーーーーー
「うわぁああああああああああああ!!!」
「フラン?」
「気持ち悪い! 気持ち悪い!!」
「あら、そうかしら?」
「お姉様がこんな変態だったなんて信じられない!」
「落ち着いて、フラン」
「落ち着けるか!」
フランドールは近くにあったものをレミリアに投げつける。地下室にあるものなので、枕とかベッドとか、後は持っていた記録帳くらいしか投げる物はなかったが。
投げつけられたレミリアは特に何も言わず、落ち着いている。
「ダメよ、フラン。物は大切に扱いなさい」
「うっさい! 私の部屋から出ていけー!!!」
「全部貴女の為なのよ」
フランドールは物を投げつけるのを止めた。
そして、優しい微笑みをする姉をじっと見つめる。
「…。 私の為?」
「そうよ」
「私の為か…。 それなら仕方ないよね! えへへ…」
フランドールは、両頬っぺを両手で挟んでやんやんと言いながら、腰をクネクネさせる。
フランドールはチョロかった。
「フラン、一つお願いがあるんだけどいいかしら?」
「なぁに?」
「ちょっと健康を確かめるためにフランの涙が必要なの」
「え? 泣けって言うの? 嫌よ」
「フランの為よ」
「…。 じゃあ仕方ないよね!」
フランドールは、満面の笑みで姉を見る。
今まで、変態的な事をされていたのに、気持ち悪い姉だと思っていたのに、フランドールは自分の為と言われると嬉しくてたまらなくなる。
フランドールは、姉が大好きだったのだ。
「じゃあ、いい声で泣いて…。 私の可愛い可愛いフラン…。 うふふ」
フランドールは、気が狂っていた。
あまりにも姉が好き過ぎて、姉の言うことなら何でも聞いてしまうのだ。
それがどんなに理不尽でも、意味がわからなくても、気持ちが悪くても…。
スカーレットさんが頭おかしいです。
キャラ崩壊してます。
フランドールは、気が狂っていた。
495年間家に閉じ込められていたから狂ったのではない。気が狂っていたから、外に出してもらえなかったのだ。
しかし、そんな彼女でも、ほんのつい最近ここ2、3日くらいは家の中を歩き回る事は許可してもらっているらしい。
その理由としては、フランドールは巫女と魔法使いの影響で落ち着いてきたから、らしい。
その証拠に、ここ2、3日は特に何も破壊していない様だ。
それどころか、彼女は普通に館の住民と接している。例えば、姉と雑談したり、メイドに紅茶を頼んだり、来客に挨拶を交わしたり、などなど。
彼女と会話した者はみんな、特別彼女の気が狂っていると思わなかっただろう。きっと、彼女を見た全員が、こう思っただろう。
彼女の気が狂っていると誰かが嘘をついている、と。
しかし、それは違う。フランドール・スカーレットは間違いなく気が狂っている。
「お姉様の残り汁…。 うふふ…」
気が狂っている。間違いなく、気が狂っている。
フランドールは実の姉が入った後のお湯に入って光悦としたら表情になっていた。どう考えても頭おかしい。
もちろん、フランドールは浴槽の残り湯で喜ぶような妖怪などではない。むしろ、下賤な行為を嫌う誇り高き吸血鬼である。
しかし、そんな誇りなど関係ないと言わんばかりに、お風呂のお湯を堪能していた。
「あー、五臓六腑に染み渡るぅー…」
フランドールの頭はおかしい。誰の目から見ても明らかだった。
だが、そんなフランドールにも悩み事があった。
「はぁ…。 お姉様を泣かせたい…。 カリスマで満ち溢れたお姉様の綺麗な顔を色々な液体でぐっちゃぐちゃにしたいよぉ…」
悩み事は、姉の泣き顔を見たいというものだった。
もちろん、いつも高飛車で高圧的な姉の弱った姿を見たいという可愛いレベルのものではない。なんかもう邪神とか呼べそうな真っ黒な感情だった。
「お姉様どうやったら泣いてくれるかな…」
そんな真っ黒な欲望を満たすべくフランドールは普段使わない頭をフル回転させる。湯船に浸かりながら腕を組んで首を傾げて考えた。
しかし、なかなかいい案が出ない。
よくよく考えてみると、姉が泣いたところなど一度も見たことがなかったのだ。
おやつをフランドールに取られた時も、パチュリーと喧嘩した時も、咲夜が寝込んだ時も、巫女に負けた時も泣いた事はなかった。
そもそも、姉は悲しんだり辛かったりした事などあるのだろうか。フランドールは、姉が怒っている姿は見たことがあるが、悲しんでいる姿は見たことがなかったのだ。
「…。 どうしたらいいのか分からないや…。 でも、お姉様の泣き顔、見たいなぁ…」
フランドールは、悩んだ。悩んで考え抜いた。
しかし、姉を泣かせる妙案は思いつかない。
彼女は湯船に顔の半分を沈めて口から空気を吐いてブクブクさせる。
そんな事をしても、いい案が浮かぶわけではないが気晴らしにはなるだろう。
そうして5分くらい経っただろうか。フランドールは一つ思いついた。
「あっ、そうだ!! 分からない時は聞けばいいんだよねっ!」
彼女は顔を半分沈めていた湯船から一気に立ち上がり、水しぶきを撒き散らしながら浴槽から飛び出した。
そして、風呂場の扉を乱暴に開けて、適当に体を拭いて服を着て愛用の帽子をかぶって図書館へと向かった。
その途中、可愛らしい妖精メイドがいたのでスカートの中を覗いておいた。白だった。写真に収めた。
ーーーーー
「お姉様を泣かせたい」
「帰れ」
動かない大図書館ことパチュリーはフランドールに、にべもない言葉を発した。それどころか一瞥もせずに読書を続ける。
パチュリーはいつも冷静で紅魔館の頭脳的ポジションである。よく触手を出すのに使われる。
そんな彼女は普段から他人より読書を優先される傾向にあり、周りもそれを理解している。
しかし、来て早々帰れなどという態度を取られたフランドールは面白くない気分になった。
ちなみに、フランドールに自分の発した言葉がパチュリーに帰れと言われた要因であるという自覚はない。
「ねぇねぇパチュリー。どうしたらいいかな?」
フランドールは、めげずに声をかける。しかし、パチュリーは無視。
何度かフランドールが声をかけるが、パチュリーは全て無視。
パチュリーは面倒なことに巻き込まれたくないと思っていたので、無視する事を決め込んでいた。
どうせ、子供っぽいフランドールのことだ。無視し続けたらそのうち飽きて帰るだろう。我慢しないといけないのは煩さだけ、とパチュリーは高を括っていた。
が、しかし、その認識は甘かった。
「えいっ!」
「…。 えっ?」
フランドールが何か言った。
その次の瞬間、パチュリーは股間に一抹の風を感じた。
風と言ってもここは地下の大図書館。そうそう簡単に風など起こらないはずだ。
しかし、現にパチュリーの股間に風が起きた。なぜ、風が起こったのか。
「パチュリーのパンツ壊しちゃった。てへぺろ」
パチュリーのパンツがフランドールの力によってキュッとしてドカーンされたから風が起こった。
パチュリーはその事実を認識してから一瞬で顔が赤くなるのを自覚した。
「なにしてるの!?」
「うふふ、パチュリーの赤面かわいいね。 食べちゃいたい」
「なに言ってるの!?」
「パチュリーって、いつも暗い表情してたから、恥ずかしがってる表情ってすごくギャップがあってかわいい。 蹂躙したい」
フランドールはカメラをスカートの中から取り出してパチュリーを撮り始めた。
突然の行動にパチュリーは咄嗟に顔を両手で覆った。
それで恥ずかしさが紛れるわけではないが、少なくとも赤面した表情を取られることは無いだろう。これで、フランドールが写真を撮るのは諦めるはずだとパチュリーは考えた。
「ねぇ、パチュリー…。 狙ってるの?」
しかし、パチュリーの思惑は外れた。フランドールはカメラの連射機能を使ってフラッシュをたきまくってパチュリーを撮りまくっていた。パチュリーが顔を隠す前よりすごい勢いだった。
「ふ、フラン、や、やめて…」
「うふふ、パチュリー、何を恥ずかしがってるの? それはもしかして私を誘ってるの?」
「何を言ってるのよ…」
「ノーパンのまま顔だけ隠して弱々しい声で震えるように懇願するなんて、誘ってるとしか言いようがないよね! つまり、私がこのままパチュリーを襲っても合意だよね!」
「ひっ!?」
「パチェチュッチュレロレロ」
パチュリーは、恐怖した。
何を言われているのか分からなかったし、何をされるのかも分からなかった。
パチュリーは、気がついたら大図書館の天上を見ていた。
何か、色々なものを失っていくのを感じたが、ただ涙を流すことしかできなかった。
フランドールが去ってから約一時間後、大図書館の真ん中でノーパンのままミニスカのメイド服を着せられたパチュリーが、すすり泣いていたのを小悪魔によって発見された。
ーーーーー
「お姉様を泣かせたい」
「妹様!?」
フランドールはパチュリーを無理矢理コスプレさせて泣くまで写真を取り続けたところで、ようやく姉を泣かせたかったのを思いだした。
そして、その方法を普段役に立つ事がなさそうな門番に聞きに来ていた。
「あの、妹様、お嬢様を泣かせたいのはなぜですか?」
しがない門番は、喧嘩でもしたのだろうかと考えていた。
しかし、事実はそんな甘っちょろくない。邪神もびっくりな単なる欲望である。
「どうしてってそれは、お姉様の泣き顔がかわいいに決まってるからじゃない。 だって、あのカリスマよ。 あの凛々しい顔が恐怖に引きっつって壊れていくと思うと…。 うふふ」
「…」
これはヤバい。なんとかして止めなければお嬢様に色んな意味で危機が訪れる。ここは門番の意地を見せる時だと門番は思った。
しかし、具体的にどうしたらいいのかは、さっぱりわからなかった。何かいい案はないかと頭を悩ますが無駄なようで、考えが浮かばない。
「ねぇ、何かお姉様を泣かせるいい手段はないかな?」
「う、うーんと…。 そ、そうですねぇ…」
「そうだ! お姉様が寝ている棺桶を外に放置して、朝になったら起こすってのはどうかな?」
「ダメですよ! 泣く以前に日光で気化しちゃいますから!」
「じゃあ、銀のナイフでぶっさして、杭で心臓を打つ!」
「死んじゃいますって!」
「ぶー、じゃあ、どうすればいいの?」
「そ、それは…」
門番は、悩んだ。お嬢様を泣かすなど許されないだろうし、そもそも、お嬢様を泣かす手段など思いつかない。
だが、そんなことではこの暴れん坊の妹君は納得しないだろう。
そんな事を考えながらチラチラと顔色を確認していたら、フランドールが舌なめずりをして門番の目の前に立って見上げてきた。
「ねぇ、門番さんっておっぱい大っきいよね?」
「ふぇ?」
「…。 うふふ、パチュリーのよりずっと大っきい。 ほんと、さっきからチラチラとこっちを見てきて、何を期待してるんだか…」
「あ、あの、妹様?」
「うふふ」
門番は、一抹の風を胸に感じた。
要は、ブラジャーをフランドールの能力によって破壊されたのだ。
しかし、門番はその事実を認識しきれていない。
「へ?」
「ねぇ、おっぱい揉ませて」
「ファ!?」
そこで門番は初めて自分のブラジャーがなくなっていることに気がついた。
誰がやったのか。もちろん、目の前のフランドールに他ならない。
門番は、本能的に後ずさった。それをフランドールは息を荒くしながら手をワキワキさせて追い詰めていく。
「い、妹様! 何かお気に召さないことがあったのでしたら謝ります!」
「逆よ。あなたのおっぱい気に入ったの。 中華まんもみもみ」
「や、やめませんか? ここ、外ですし…」
「うふふ。 外だからいいんじゃない。 興奮するでしょ?」
「ひっ」
門番は、逃げ出した。今まで居眠りや敗北をして門をくぐられた事はあったが、自ら門から逃げ出すのは初めてだった。
門番として、決して逃げない。門番は今までその誇りを胸に戦ってきた。しかし、それもこの恐怖の前には無意味だった。
吸血鬼から逃げられるはずもなく、門番はあっけなく捕まった。
捕まった後、門番は暴れたが力の差は歴然で、一瞬で抑え込まれた。
その後、色々されたが、門番は星をただ眺めることしか出来なかった。
夜が明けてからノーブラの門番が目に光を失ってしゃがみこんでいるのを見張りの妖精メイドによって発見された。
ーーーーー
「お姉様を泣かせたい」
「あらあら、妹様いけませんよ」
門番のおっぱい。通称もんぱいを揉みしだいたフランドールは、メイド長の咲夜へ直接部屋に尋ねて相談に来ていた。
咲夜はもう寝る準備をし終えたところだったらしく、にゃんこ模様の寝間着姿であった。
しかし、流石は瀟洒な従者と言われるだけあって、そんな状態でも嫌な顔一つせずに対応している。
「どうしてー?」
「イタズラはいけません」
咲夜はフランドールの身長に合わせてしゃがみ、じっと目を見ながら諭すような声で言った。
寝る前だったのにも関わらず、優しそうな微笑みも忘れないあたり人間でメイド長を任されているのにも納得できる。
「イタズラじゃないよ」
「では、お嬢様に構って欲しいのですか?」
「ち、違うよ! お姉様が普段見せない泣き顔が見たいだけだよ!」
「ふふふっ、そうですか」
咲夜は必死に否定するフランドールの頭を優しく撫でる。
なんだか子供扱いされていると感じたフランドールはむくれつらになった。
「あら、申し訳ありません。 撫でられるのはお嫌でしたか?」
「そうだよ。 子供じゃないんだから」
「そうですか。 では子供ではない妹様…。 いえ 、フランドール様はきっと人を泣かすなどといった子供じみたイタズラなど決してしないでしょう。 子供でなければ、そんな低レベルな事はしませんよね?」
「うぐっ…」
「では、大人なフランドール様、お休みなさいませ」
咲夜はそれだけ言うと、立ち上がってフランドールに背を向けた。
フランドールは、咲夜のパジャマの裾をきゅっと掴んで行かせないようにした。そして、上目遣いにじっと見つめる。
「フランドール様、人間の私はもう眠たいのです。 今寝なければ明日に支障が出てしまいます」
「咲夜って、すごい意地悪なんだね…」
「あらあら、意地悪だと思われてしまいましたわ。 悲しいです」
「…。 そういえば、咲夜って泣かないよね? 悲しいのに泣かないの?」
「そうですね。 もっと悲しかったら泣くかもしれません」
フランドールは舌なめずりをした。このメイドを泣かすことができたらきっと姉も泣かせるだろう。今まで、パチュリーと門番にあんなことやこんなことをした時泣いていたから、咲夜に同じことをしたら泣くかもしれない。
フランドールはそう考えた。
「うふふ、咲夜って、すごく優しい笑顔をするよね?」
「ふふふっ、ありがとうございます」
「その時の唇に吸い付きたい」
フランドールは、咲夜に飛びついた。吸血鬼の身体能力から言って、ほぼゼロ距離の人間を逃がすことはない。
しかし、飛びついた先の咲夜は消えていた。代わりにふかふかの枕があった。フランドールは、枕とキスすることになった。
フランドールは何が起きたのか分からずしばらく枕を抱きしめていたら、頭を小突かれた。
「めっ!」
フランドールは咲夜に人差し指で頭を小突かれた。
どうやら、時を止めてフランドールから逃げ、そのままだと壁に当たったりして怪我をしてはいけないから枕を代わりに置いたのだろう。
そんな事はどうでもいい。それよりも、咲夜の怒り方だ。
唇を奪いに来た相手に、めっ、の一言と少し小突くだけで済ましてしまった。
これには流石のフランドールもびっくりで、きょとんとした表情で咲夜を見ることしかできなかった。
「もう、おませさんはいけませんよ」
「あ、はい」
「ふふふっ、分かっていただけたら結構です」
またフランドールは咲夜に頭を撫でられたが、今回は抗議の目を向けることができなかった。
フランドールは凄い気恥ずかしさを覚えて、俯いてしまった。
「大丈夫ですよ。 お嬢様は妹様の事を考えていらっしゃいますよ。 だから、イタズラなどなさらなくても、お嬢様は妹様に構ってくださいますよ」
「う…。そ、そんなんじゃないんだけどね!」
「ふふふっ、そうですか」
「本当だよ!」
「そうですか」
「…。 信じてないよね?」
「いえいえ、信じてますよ」
フランドールは、逃げ出した。
これ以上咲夜といると変になりそうだったので、咲夜の部屋から出て行って地下室へ逃げ込んだ。
咲夜は逃げるフランドールに向かってお休みなさいとだけ言ってベッドへ向かった。
ーーーーー
「お姉様を泣かせたい」
「本人がいる前で言うことじゃないわね」
フランドールは地下室で頭を冷やしていたら、本命の姉がやってきたのだ。
吸血鬼は本来夜の生物なので、人間の咲夜より夜更かしである。
「お姉様ってかわいいよね」
「フランほどではないわ」
「もー、お世辞ばっかり」
「そうでもないわよ」
レミリアが地下室にやってくることは、フランドールが閉じ込められていた時からあったことだ。
そして、変な会話もよくしていた。お互いに褒めあったり、突拍子もないことをいきなり言ったり、などなど。なので、泣かせたいと宣言してもいつも通りなのだ。
「ねえ、お姉様って、少女趣味?」
「どういうことよ」
「だって、館にいるのみんな女の子じゃん。 門番もパチュリーも咲夜も妖精メイドも」
「あぁ」
紅魔館は確かに女の子ばっかりだ。格好を気にするレミリアが、ガタイのいい男を雇ったりしないのはフランドールには不思議だった。
もしかしたら、男に嫌な思い出があるのかもしれない。その理由を聞けば姉を泣かせるヒントになるかもしれないとフランドールは考えた。
「なんで、少女ばかりがこの館に住んでいるのかって、それは私がかわいいと思った子を雇ってるからに決まってるじゃない」
「そ、そうなの」
フランドールの思惑は外れた。
ただ単にレミリアが女の子大好きだっただけだった。
本当に女の子が好きなのか、レミリアは羽を大きく広げてニタリという笑みを浮かべていた。心なしか息も荒い気がする。
フランドールはちょっと引いた。
「ほんとあの子たちかわいいわぁ…」
「あ、あのー…」
「あぁ、もちろんフランは別格よ。 私が一番愛してるのは貴女だから安心していいわ」
「えっと、ありがとう?」
「あら、信じてないの? わかったわ。 証拠をとってくるから待ってて」
レミリアは一人早合点して地下室を飛び出て行った。
フランドールはちょっと気持ち悪かった姉に呆気にとられていたので、声を掛けることができなかった。
だが、フランドールは姉がいない今こそ姉を泣かせるために落ち着くチャンスだと思いなおして深呼吸をする。
姉が少女趣味だと分かって少しびっくりしたが、自分も似たようなものだと言い聞かせ心を落ち着かせる。
お姉様をきっと泣かせてみせると決意を胸にフランドールは地下室の扉を睨みつけた。
「待たせたわね!」
地下室の扉が壊れそうな勢いで開けられた。姉が来たと思い、ぎゅっと握りこぶしを作る。
しかし、勢いよく開けられた扉には姉ではなく箱状の何かが現れた。扉から入るかどうかギリギリの大きさの箱だった。
「ほら! フランのアルバムと成長記録よ!」
箱の後ろからレミリアの声が聞こえた。どうやら、あの箱の中身全部がアルバムと成長記録らしい。
どう見てもあの箱はクローゼットなみのでかさはあった。
「お、お姉様? 多すぎない?」
「えっ、これここ最近十年分よ?」
「マジか」
フランドールは驚きのあまり真顔になった。
「さぁ! 見ましょう!」
「うん」
あまりの衝撃に姉を泣かせることが頭から抜け落ちてしまったのか、フランドールは素直に言われたとおり、アルバムを開いた。
するとそこには、自分の寝顔、着替えている姿、食事の時スープを零して驚いている表情、本を読んでいる時の横顔、姉の残り汁で光悦としている表情、etc…、が写っていた。
もちろん全てフランドールの写真である。
「えっ、これ、私、撮られてるの気づいてないよね?」
「そうね、フランの自然な姿を写真に収めたかったのよ」
「う、うん…」
大丈夫、フランドール。お姉様はおかしくない。別に盗撮くらい、残り汁で喜んでた自分に比べればかわいいものだ、とフランドールは自分に言い聞かせた。
それより、残り汁で喜こんでたのを気づかれていたのかと焦ったが、わざわざ写真に収めてアルバムに載せて見せてくるくらいだから、姉は気にしてないだろう、とフランドールは自分に言い聞かせた。
言い聞かせながら、アルバムを静かに閉じた。
「あら、もうアルバムはいいの?」
「う、うん。 それより、成長記録見せてほしいな」
フランドールは、アルバムをこれ以上見ると変なものが出てきそうだから、見たくなかった。
だから、さっさと次の物に手をつけたのだ。
自分の成長記録など少し気恥ずかしい気がしたが、この危ないアルバムよりはマシだろうとフランドールは思っていた。
「はい、これが成長記録よ」
「ありがとう」
フランドールは一冊の成長記録を受け取ったが、その表紙がおかしい。
表紙には、第120季2月10日から第120季2月17日と書いてある。つまり、この成長記録は一週間分しかない。
ちなみにこの記録帳はパチュリーの図書館にある本並みの厚さがある。
この記録帳で誰かを殴ったら殺れそうだ。
「ね、ねぇ、お姉様、これ、私の成長記録だけなんだよね?」
「もちろん」
大丈夫、フランドール。お姉様はおかしくない。きっと、大好きなお姉様の愛がいっぱい詰まってるのだ、とフランドールは自分に言い聞かせながら、記録帳を開いた。
ーーーーーーーーーー
2月10日、午後5時
フランドールの身体的成長。
身長、0.01021mm上昇
体重、0.015kg減少
健康状態、総合的に良好
血圧、80〜114吸血鬼hg
血中魔力、5429吸血鬼bcg
平均的な吸血鬼の成長速度よりやや遅め。
ーーーーーーーーーー
…。
普通の成長記録だ。変なところは特にない。
フランドールは安堵した。安堵して、読み進めていった。
ーーーーーーーーーー
胸囲、0.00000003um上昇
腰周り、0.00000035um上昇
おしり、0.000001um上昇
肌のはり、0.0000001モチモチ減少
肌のツヤ、0.00054ツヤツヤ減少
月経、約二週間と三時間後
ーーーーーーーーーー
…。
気持ち悪いとフランドールは思った。だけど、別にスリーサイズや月経を記録するくらい、変なことではないとフランドールは自分に言い聞かせた。
言い聞かせて読み進めた。
ーーーーーーーーーー
午後5時過ぎ、フランが起床。
とりあえず、ベッドの匂いを嗅ぐ。匂い的に少し甘酸っぱい汗の香りを確認、健康である証拠だ。匂いから察するに月経は周期通りきていない。素晴らしい。今日は自家発電の形跡なし。少し汗を確認するために舐めてみたが、匂い同様健康。問題なし。
午後5時13分、フランの着替え。
ぷくっとした柔らかそうな肌。肌の色は良好、いつも通り問題なし。一人で着替えられるようになってから今日で半年が過ぎた。妹の成長を喜びつつ、私の手から離れていくようで少しさみしくなった。もちろん、フランが脱いだパジャマの匂いを確認。ベッドと同じ匂いである。問題なし。
etc…
ーーーーーーーーーー
「うわぁぁぁぁああああああ!!」
「フラン?」
「えっ、なにこれ!? 気持ち悪!気持ち悪い!」
「あら、どうしたのかしら?」
「どうしたのかしら、じゃねーよ!」
「そんなに声を荒げるなんて、レディらしくないわよ」
「お姉様のストーカーじみた行為よりはマシだよ!」
「そんな事ないわ、もっと読み進めればきっと私の深い愛をフランは理解してくれるはずだわ」
「いやいや、おかしいよ。 匂いとか嗅がないよ普通」
「健康診断の一種よ」
「えー…」
「全部フランの為よ」
「わ、私のため…。 えへへ…」
「ほら、読み進めて」
「うん!」
フランドールは姉の言葉を信じた。大好きな姉。そんな姉が妹である自分に嘘などつくはずがないとフランドールは自分に言い聞かせた。
ーーーーーーーーーー
午後5時45分フランがトイレ。
まずは匂いを確認。基本だ。水洗後なのではっきりとは分からないが、独特のアンモニア臭が僅かに香る。健康な証だ。…
ーーーーーーーーーー
「ふっざけんな!!!」
「フラン?」
フランドールは、激昂した。今まで自分は他人の下着を破壊したり、恥辱に塗れた女の子の写真を撮ったり、おっぱい揉んだりしたが、流石におしっこの匂いを嗅ぎ始めるとは思わなかった。
「おしっこの残り香を嗅ぐとか頭おかしいんじゃないの!?」
「えっ、検尿知らないの?」
「いやいやいやいや、これ検尿って感じじゃないでしょ!?」
「いや、検尿よ」
検尿。確かに尿で健康検査をするのはそこまでおかしな話ではない。
そう考えると別に不思議じゃない気がしてきたフランドールだった。
「検尿…。 うん、検尿ね…」
フランドールは、自分に言い聞かせた。
ーーーーーーーーーー
午後6時フランとご飯。
軽いフレンチトーストと紅い紅茶だった。フランは少し急いで食べたのか、柔らかそうな頬っぺたに食べカスをつけていた。咲夜が取ろうとしたが、私が急いで代わりに取る。そして食べる。フランの味がした。健康状態は良好。基本である匂いも問題なし。今日も一日楽しいな。
ーーーーーーーーーー
「日記か!」
「フラン?」
「日記じゃんこれ! お姉様の日記になってるじゃん!」
「フランの食べカス美味しかったわよ」
「聞いてねぇわ」
「ほら、続き続き」
続き、と言われてもこの記録帳の時期のフランドールはまだ毎日を地下室でダラダラと過ごしているだけだった。
この時期のフランドールは、ご飯の時紅魔館のみんなと一緒に食べていたが、それ以外の時間は基本的に地下室で誰かが来るのを待っていたか一人で遊んでいたかの二択だった。
なので、フランドールは、これの続きは面白くないだろうなと思いながらページをめくった。
ーーーーーーーーーー
午後7時25分 フランの地下室暮らし
フランドールは本を読んでいた。ベッドに寝転び、足をパタパタさせながら読んでいた。これはやばい。かわい過ぎる。とりあえず、写真に収めておいた。パンツを確認。色、ポジション、柄、総合布面積は完璧。基本である匂いも問題なし。すこし舐めておいた。ひゃんっとフランが呻いたので素早く隠れる。味は健康的だった。
ーーーーーーーーーー
「おぃ、お姉様」
「レディが胸ぐらをつかんではいけないわ」
「あの変な、ねとぉっとした奴はお前の仕業か。 毎回すげェ怖かったんだからな」
「ふふっ、フランは怖がりね」
「いいから一発殴らせろ」
「暴力はいけないわ。 騙されたと思って最後まで読んで」
フランドールは、振り上げた拳を力なく下ろした。ぶん殴りたかったが、姉が自分を謀ることはしないだろうとフランドールは自分に言い聞かせた。
ーーーーーーーーーー
パンツは衛生上最も注意すべき箇所である。そのため、非常に入念なチェックが求めらるのであるって、けーねが言ってた
ーーーーーーーーーー
「慧音が言ってたら仕方ないね」
「そうよ、これは必要なことだってわかってくれた?」
「うん!」
「ほら、続き続き」
ーーーーーーーーーー
8時10分フランのブラジャー
今日は月に一度のフランのブラジャーソムリエタイムだ。一週間前はパンツ、二週間前はナプキン、その前は靴下である。
ーーーーーーーーーー
「お姉様、すごく読みたくない」
「騙されたと思って読んで」
「いや、嫌な予感しかしないし」
「ほら、この関連項目を読んで」
これは新手のセクハラではないかとフランは思ったが、大好きな姉がそんな愚かなことをするはずがないと自分に言い聞かせた。
そして、姉の指差す部分を読んでみた。
ーーーーーーーーーー
※フランのブラジャーソムリエとは。
フランのおっぱいの成長を感じるため、かつフランの健康状態を確認する行為の一つである。まず、基本である匂いを確認する。そして、味を確認。そこからフランの健康状態を察する。次に試着。そこからフランのおっぱいの成長具合を目だけでなく肌で感じる。決して変態的な意味はない。
ーーーーーーーーーー
「お姉様」
「どうしたの?」
「タヒね」
「あら、別に普通よ。 貴女のブラジャーを誰が買ってると思ってるの?」
「咲夜」
「そうだけど、サイズは誰が測るのよ」
「…。 あ、そっか」
「でしょ? これは必要な行為なのよ」
「うん…。 そうだね」
ーーーーーーーーーー
フランのブラジャーを持ち出す。全部で十着。全てをベッドの上で広げると、凄まじく壮観だった。私はその感動が冷めない内に、基本である匂いを嗅ぐ。フランのブラジャーの匂いは太陽のような香りを放っていた。それは、私の目の前にまるで花畑が広がるほど芳醇な香りで、私を異世界へと誘ってゆく。少し興奮したが落ち着いてもう一度匂いを嗅ぐ。素晴らしい。流石フラン。続いて味だ。少し舐める。素晴らしい。興奮する。私は湿ったそれを秘所に当て…
ーーーーーーーーーー
「うわぁああああああああああああ!!!」
「フラン?」
「気持ち悪い! 気持ち悪い!!」
「あら、そうかしら?」
「お姉様がこんな変態だったなんて信じられない!」
「落ち着いて、フラン」
「落ち着けるか!」
フランドールは近くにあったものをレミリアに投げつける。地下室にあるものなので、枕とかベッドとか、後は持っていた記録帳くらいしか投げる物はなかったが。
投げつけられたレミリアは特に何も言わず、落ち着いている。
「ダメよ、フラン。物は大切に扱いなさい」
「うっさい! 私の部屋から出ていけー!!!」
「全部貴女の為なのよ」
フランドールは物を投げつけるのを止めた。
そして、優しい微笑みをする姉をじっと見つめる。
「…。 私の為?」
「そうよ」
「私の為か…。 それなら仕方ないよね! えへへ…」
フランドールは、両頬っぺを両手で挟んでやんやんと言いながら、腰をクネクネさせる。
フランドールはチョロかった。
「フラン、一つお願いがあるんだけどいいかしら?」
「なぁに?」
「ちょっと健康を確かめるためにフランの涙が必要なの」
「え? 泣けって言うの? 嫌よ」
「フランの為よ」
「…。 じゃあ仕方ないよね!」
フランドールは、満面の笑みで姉を見る。
今まで、変態的な事をされていたのに、気持ち悪い姉だと思っていたのに、フランドールは自分の為と言われると嬉しくてたまらなくなる。
フランドールは、姉が大好きだったのだ。
「じゃあ、いい声で泣いて…。 私の可愛い可愛いフラン…。 うふふ」
フランドールは、気が狂っていた。
あまりにも姉が好き過ぎて、姉の言うことなら何でも聞いてしまうのだ。
それがどんなに理不尽でも、意味がわからなくても、気持ちが悪くても…。
あと、少しくどいところに日本的な湿度と狂気を感じました