!-注意-!
・当作品は2010/12/31 23:30から2011/01/01 00:30の一時間で執筆されました。
・プロットはありません。勢いです。
・ポメラの『タイムスタンプ』機能により、地の文に執筆中のリアルタイムを挿入してあります。これにより、作者のせっぱ詰まった臨場感を体験できるというすぐれものです。まあすてき。
・上記により日本語と展開がおかしいですが、お許しください。
・おさけおいしい!
!-注意終わり-!
2010/12/31 23:31
私は激怒した。
師走というくらいだから、走らなきゃいけない。と、無意識的に思った。それを行動に起こしていない自分に激怒したのだ。
走らなければ。具体的にはドラマティックなものがいい。それも感動を呼ぶような、素敵な物語こそがふさわしい。
つまりメロスだ。
「というわけでお姉ちゃん。今から適当に走ってきます」
「そうですか。ところでなぜ私は縛られているのでしょうか」
「お燐、お空。今から走ってくるわ、愛のために。年明けまでに帰ってこれなかったらお姉ちゃんを好きにしていいわよ」
リビングのソファの上。縛り上げられたお姉ちゃんを見て、二人の目の色が変わった。2010/12/31 23:34
「なん……だと……」
「フュージョンしていいの? いいよね、答えは聞いてない」
「いいよいいよ。じゃあ後はよろしく」
俄然生き生きとしだした二人をおいて、颯爽と部屋を飛び出した。
さあ、走らなければ。メロスだったかエロスだったかのために。
「いやあの、こいし? え? ちょ、どうして二人ともそんな事を考えるの、え、まって、なにこれこわい」
芋虫状態で身をよじるお姉ちゃんは、どうみてもおいしそうな餌にしか見えなかった。ご愁傷様。2010/12/31 23:36
◆
まずは全速力で山の神社に向かうことにした。
遠すぎず近すぎず、それなりに走った満足感を得られる所と考えた結果である。もちろんさっきでっちあげたプロットのせいではない。2010/12/31 23:38
神社は年の瀬らしく大勢の妖怪で賑わっていた。
というか超盛り上がってた。なにやらステージらしきものが境内に作られていて、そこを中心に天狗やら河童やらが暴れ回っている。
ステージには大きな照明やらアンプリファイアやらと一緒に、爆音でヘヴィメタルをプレイする風祝がいた。髪がウニのごとく逆立ててあって、般若のようなメイクなので、一瞬誰だかわからなくなった。2010/12/31 23:40
「大晦日といえばカウントダウンライヴ、カウントダウンライヴといえばエックス! 常識に捕らわれない東風谷早苗が――いや、SANAEが妖怪の山に破滅の美学をもたらします! 気合いいれてこおおおい!!!!」
耳が壊れるほどのシャウトで客を煽ったSANAEに、観客たちがメロイックサインと猛烈ヘドバンで答える。よくわからないけど楽しそう。
ステージには他に数人の天狗がこれまた派手な格好でギターやらを手にしていた。その中で一人だけ浮いているドラマー、見覚えのある新聞記者が、上半身裸(サラシ有り)でドラムを叩き始める。2010/12/31 23:42
「"新聞とってKURENAI"だーっ!!!!!」
なにやら新しい曲が始まった。
しかし私はそれを背に、神社の中へ入ることに決めた。もちろん時間が残り少ないからだ。それにうるさいのは好きじゃないし。あとわかりにくいネタで時間を無駄に使うと後が詰まるからって無意識が言ってるから。2010/12/31 23:44こんな時間だし。
適当に母屋のふすまを開けると、炬燵と神様と河童がいた。
「あけましておめでとうケロちゃん」
「いやまだあけてないし。それにケロちゃん言うな、諏訪子だって」
にこやかに会話を交わし、私も炬燵に足を入れる。あったかあったか。
部屋の片隅ではこれまた見覚えのある河童が、死んでいるかのように眠っていた。燃え尽きたぜ……とか言ってた。
「ああ、にとりね。一昨日から徹夜で会場設営してたの。死ぬほど眠いからここで冬眠するって」
「へえ」
最近の河童は冬眠するらしい。ケロちゃんはしないのかな。2010/12/31 23:49
しばらく炬燵でのんびりしていると、誰かが慌ただしく襖を開けて入ってきた。
「大変です諏訪子様! 文が、あやが……! 『幻想郷最速のドラムテクを見せてあげるわ』とか言ってドラム壊す勢いで叩いて失神しちゃった!」
ツインテールの天狗が、上半身裸の新聞記者その一を抱えて慟哭した。たしかほたてとか言う新聞記者その二だ。
「そんなとろまで本人に似せなくてもねえ。とりあえずそのへん転がしとけばいいんじゃない?」
「で、でも! 代わりのドラマーがいないとライヴが! 最後のエックスジャンプをみんな楽しみにしてるのに!」
投げやりに答える神様に、ほたてが反論した。なにをいってるかよくわからないけど、とにかく代役が必要らしい。ちなみに件の新聞記者は「でも!」のあたりで床に投げ捨てられていた。なむさん。2010/12/31 23:57
「しょうがないわね……私の出番か」
「えっ」
「こうみえても若いときは太鼓のケロちゃんと恐れられたものよ……血がたぎるわ!」
「えっなにそれこわい」
「よし、いくわよはたて! 屋根を突き破っちまえええ!!」
突然ケロちゃんが炬燵から出ると、そのままほたてを連れて屋根を突き破って外へ行ってしまった。やれやれ。2011/01/01 00:00
と、ここで大事なことを思い出した。そういえば時間がやばい。というか過ぎてた。
「しまった……余計なネタに時間を使いすぎたのね」
すぐさま私は思考を本筋に戻した。
まずは結婚だ。そして走って、川を渡って、山賊を倒して、全裸だ。
そう、全裸だ。やばい全裸やばい。
とりあえず寝転がってる河童と、投げ出された天狗を強引に抱き合わせた。ついでに手をぎゅっと握らせてやる。
「結婚おめでとう!」
祝福しろ。結婚にはそれが必要だ。
そんなことより時間がないので私は神社をあとにした。展開が投げやりなのは無意識のせいなのでしょうがない。2011/01/01 00:04
◆
走る。わき目もふらず走る。
地霊殿でネチョ的な目にあっているかもしれないお姉ちゃんのためだ。自分のためでもあるけど。ほら、年の始めは笑いからっていうし。多少あぶなくても大丈夫だ問題ない。
道中にあった川はふつうに飛び越えた。
いや、冬に泳ぐとかばかだし。めんどいし。
山の麓から地底に入る。
地底はどこもかしこも新年に浮かれており、めいめいが酒などを飲んでそこらじゅうで盛り上がっていた。
とりあえず山賊だ。川を渡って、山賊で、全裸だ。2011/01/01 00:07
走りながら"いかにも山賊"な妖怪を探すが、なかなか見つからない。
面倒だ。そうだ、私が山賊になればいいんじゃね?
「パルパルごめんね!」
「ふへっ?」
ということで、目に付いた橋姫の服をはぎ取った。
一緒に酒を飲み交わしていたらしい鬼や土蜘蛛が、口をぽかんと開ける。無意識を使っていたので、はためには橋姫が突如全裸になったように見えているらしい。
「気の毒だが全裸のためだ!」
偉大な先人のネタを拝借しつつ、大騒ぎを背に再び走った。まったく新年は地獄よねフゥーハハー。2011/01/01 00:11
◆
気がつけば時間を一〇分ほどオーバーしていた。
できるかぎりの早さでお姉ちゃんの元へ走る。走る。そろそろタイプミスが多くて死ねる。疲れた。
と、私に併走する影が。
「こいしさああああん!!! なんかいつのまにか『結婚おめでとう!』とか言われてたんですがマジ身に覚えないんですけど?」
天狗だった。いつのまにか上半身裸から白いドレスに着替えているうえ、顔を真っ赤に染めて飛んでいた。今の私には理解できない。
「なんですかこれちょっといくらなんでも展開が強引すぎませんか!?」
「おめでとう……! おめでとう……!」
「いや本当に勘弁してください。新年早々とんだ悪夢ですよ! はたてなんて『書き初めは"河城文"がいい、それとも"射命丸にとり"がいい、それとも――』とかハイライト消えた目で言ってくるんですよなんですかこの修羅場」
「かき……ぞめ……?」
ここでぴんときた。すごいアイデアを。
そうだよ、お姉ちゃんを全裸にして、そこで書き初めすればいいんじゃね? ほら、はねつきとかで罰ゲームに筆でやるじゃない。あれの応用よ。うわやばいこれ興奮する。
問題はすでに時間をオーバーしていて私にお姉ちゃんをネチョネチョする権利が消えていることだ。どうしようか。
そうだ、今の時間は2011/01/01 00:20だからまだなんとかなる気がする。時計が二〇分速まってたことにしよう、うん。
2010/12/31 23:50。
おk。
「見えるっ! 恥霊殿の入り口が見えるわ! あなた筆持ってない?」
「持ってますけど、一応記者ですし」
「気の毒だが全裸のためよ! 筆はもらうわ!」
併走する新聞記者から、筆を奪い取った。
そのまま弾幕をまき散らして彼女を吹き飛ばし、トップスピードで恥霊殿につっこむ。2010/12/31 23:53
◆
リビングでは今まさにお姉ちゃんが剥かれようとしていた。やっぱりみんな考えることは同じなんだね。
「来たわ! 帰ってきたわよ!」
高らかにそう言うと、お燐とお空が露骨に残念そうな顔をした。大丈夫、残念なのはこれ書いてるひとだから。
すぐさまお姉ちゃんの縄をほどき、そのまま熱い包容を交わすことにした。
「ただいまお姉ちゃん!」
「こいし……」
意外なことに、抵抗はなかった。
それどころか私のわがままに怒った様子もない。
困ったような顔で私を見るお姉ちゃん。
緊縛の跡の残る手首をさすりながら、静かに口を開いた。
「約束どおりに帰ってくるとは、思ってませんでした」
「なにいってるの? いや、たしかにオーバーしたんだけどね。それはまあ無かったことにしたから、うん」
なんでそんなこと言うんだろうなーと思って、ふと気がついた。
そういえば約束通り家に帰るなんて相当久しぶりだ。いつもは帰る時間を知らせないどころか、お姉ちゃんの「いついつまで帰ってきてね」っていう期限すら守れていない。
そりゃあ、そんな顔するよね。こんなときだけ律儀に守ったら。
急に胸がきゅうっとなった。恥ずかしいことに、心がいっぱいになっちゃたんだな。申し訳なさとか、感謝とか、そんなもので。
「こいし、」
「あー、なに。それに……ほら、一応ここが私の家だし。こういう時くらい一緒にいようと思って、うん」
ここで新年の鐘が鳴った。2011/01/01 00:00
よし、と顔に力を入れた。
伝えたいことは、ひとつ。
「あけましておめでとうお姉ちゃん――ことしもずっと、一緒だよ?
お姉ちゃんは、一瞬だけ泣きそうな顔になった。いや、気のせいかもしれないけど。
私も少しだけきゅっとなったので、誤魔化すみたいに笑ってみた。
「ええ、よろしくね。こいし」
お姉ちゃんもそういって、微笑んでくれた。
燐も空も、一緒になって笑ってみた。
そうなったらなんだか、全部いいかなって感じになった、
それでいいじゃない、こんな話なんてね。
じゃあ、あけましておめでとう。
「さてと――書き初めでもしようか」
「なんか嫌な予感が……え、ちょっとなぜ服を、」
「続きはwebで」
終わろう
早速だけど脱いで下さい!
全裸にはそれが必要だ!
いいぞもっとやれ
そしてパルスィのその後を書く、それが今年初の貴方が出来る善行ですw
普通に面白かった件。
結婚おめでとう! の流れで吹いたww