「お邪魔するぜ」
「お帰りはあちら」
今日も魔理沙はやってきてくれた。
珍しいことに手にはバスケットを下げている。
「あー。ちょっと気が向いてな」
言葉とともに手を突き出してきた。
見ればバスケットにクッキーがつめられている。
ちょっと凝った布に包んで、リボンを掛けて。
人形の装飾を行う私から見ても、時間がかかったのが見受けられた。
魔理沙の土産はキノコや魔法具なんかと相場が決まっていて、お菓子というのは初めてになる。
珍しいこともあるものだと顔を上げると、魔理沙は驚いたように帽子を下げた。
帽子を下げてそっぽを向いたまま私にまくし立てた。
「まあほんと、気が向いただけでな!
最近は研究も順調だし体調もいいし勉強も進むし!
ほんとやることがなくってひまな時間が有り余ってて!
なんとなーく手慰みにやっただけなんだが作りすぎて!
ほら捨てるのもなんだし」
「そんなに一生懸命言い訳しなくてもありがたくいただくわよ」
素っ気無く言いながら、バスケットを受け取る。
と、そのまま魔理沙の手を握った。
「なっ、なんだよ」
びくっと震えてバスケットを落としそうになる手を、そのまま両手でつかんでよく見た。
もともと、魔理沙の手はそれほどきれいではない。
薬草の調合、キノコの栽培、箒の操縦等、手を酷使する仕事は枚挙に暇がない。
さらには大パワーの八卦炉を直接扱うため、火傷もよくしている。
しかし、この特徴的な太い線状の火傷はごまかせない。
「あんた、天板素手で触ったでしょう」
「いやこれは八卦炉の火力を上げすぎて……」
「こんな特徴的な火傷を間違うはずないでしょうが」
そのままバスケットを横において魔理沙の手を引く。
「軟膏塗ってあげるからこっち来なさい」
「たいしたことないんだぜ」
言いながらも魔理沙はこっちについてきた。
振り返るとまだ帽子を下げている。
やはり、クッキーを作るのは初めてなのだろう。
未熟さ故の傷を知られて恥ずかしいのだろうか。
軟膏を取り出し、魔理沙の手にすりこみながら言う。
「初めて作るときに失敗するのは恥ずかしいことじゃないわ
明日にでも教えてあげるから、しっかり覚えなさい」
魔理沙といっしょに料理するのも楽しいかもしれないわね。
そんな期待をしながら、まだ帽子で顔を覆う魔理沙を見るのだった。
アリスの手は白くてきれいだ。
透けるようなきめ細かい肌と、ピンクのかわいらしい爪がいつも甲斐甲斐しく動いている。
その目的は人形作りや、お菓子作り、料理なんかと様々だが、共通しているのは女の子らしいということだ。
私の手はいつも荒れている。
薬草にかぶれ、胞子にまみれ、箒を操ってはタコができている実用一点張りの手だ。
私自身はそれを卑下したことはないが、同じ魔法使いのアリスの手と比べてため息をつくことはある。
だからバスケットを差し出した手に、アリスの手が重ねられたときにはびくっとした。
アリスの繊手が私の無骨な手を覆う。
背筋を甘い感触が通り抜けて、顔が熱くなる。
さわられてるとこと、心臓が、だんだん熱くなってじんじんする。
アリスが私の手を握ってまじまじと見ているのを感じて、帽子を握る手に力が入った。
アリスがなにかをいって私の手を引っ張るから、そのままそれに従った。
なんかしゃべった気もするが、よくわからない。
移動する間も、アリスは手を放してくれないからだ。
動くたびにこすれる手と手が、肌と肌が、私を冷静な気持ちにさせてくれない。
きもちいいけど、どきどきする。
そんな気持ちを悟られたくなくて、私は帽子を顔に押し付けた。
アリスが軟膏を取り出して私の手にすりこむ。
ぬるぬるした触感が、さらさらの手で私のざらざらな手の上を動く。
その感触に、変な声をあげそうになって慌てて唇をかむ。
耳が熱くて仕方がないのはきっと気のせいだ。
アリスの手が、やさしく私の肌を弾き、こする。
指の間や関節の節目、手の筋まで丁寧に軟膏を塗りこむ。
手のひらのいろんなとこがくすぐったくて、熱くなってくる。
きっと軟膏のせいに違いないなんて、自分もだませない嘘をついてごまかす。
これほど耐えている私に、アリスは容赦ない言葉を投げかけるのだ。
「はい、反対側」
「お帰りはあちら」
今日も魔理沙はやってきてくれた。
珍しいことに手にはバスケットを下げている。
「あー。ちょっと気が向いてな」
言葉とともに手を突き出してきた。
見ればバスケットにクッキーがつめられている。
ちょっと凝った布に包んで、リボンを掛けて。
人形の装飾を行う私から見ても、時間がかかったのが見受けられた。
魔理沙の土産はキノコや魔法具なんかと相場が決まっていて、お菓子というのは初めてになる。
珍しいこともあるものだと顔を上げると、魔理沙は驚いたように帽子を下げた。
帽子を下げてそっぽを向いたまま私にまくし立てた。
「まあほんと、気が向いただけでな!
最近は研究も順調だし体調もいいし勉強も進むし!
ほんとやることがなくってひまな時間が有り余ってて!
なんとなーく手慰みにやっただけなんだが作りすぎて!
ほら捨てるのもなんだし」
「そんなに一生懸命言い訳しなくてもありがたくいただくわよ」
素っ気無く言いながら、バスケットを受け取る。
と、そのまま魔理沙の手を握った。
「なっ、なんだよ」
びくっと震えてバスケットを落としそうになる手を、そのまま両手でつかんでよく見た。
もともと、魔理沙の手はそれほどきれいではない。
薬草の調合、キノコの栽培、箒の操縦等、手を酷使する仕事は枚挙に暇がない。
さらには大パワーの八卦炉を直接扱うため、火傷もよくしている。
しかし、この特徴的な太い線状の火傷はごまかせない。
「あんた、天板素手で触ったでしょう」
「いやこれは八卦炉の火力を上げすぎて……」
「こんな特徴的な火傷を間違うはずないでしょうが」
そのままバスケットを横において魔理沙の手を引く。
「軟膏塗ってあげるからこっち来なさい」
「たいしたことないんだぜ」
言いながらも魔理沙はこっちについてきた。
振り返るとまだ帽子を下げている。
やはり、クッキーを作るのは初めてなのだろう。
未熟さ故の傷を知られて恥ずかしいのだろうか。
軟膏を取り出し、魔理沙の手にすりこみながら言う。
「初めて作るときに失敗するのは恥ずかしいことじゃないわ
明日にでも教えてあげるから、しっかり覚えなさい」
魔理沙といっしょに料理するのも楽しいかもしれないわね。
そんな期待をしながら、まだ帽子で顔を覆う魔理沙を見るのだった。
アリスの手は白くてきれいだ。
透けるようなきめ細かい肌と、ピンクのかわいらしい爪がいつも甲斐甲斐しく動いている。
その目的は人形作りや、お菓子作り、料理なんかと様々だが、共通しているのは女の子らしいということだ。
私の手はいつも荒れている。
薬草にかぶれ、胞子にまみれ、箒を操ってはタコができている実用一点張りの手だ。
私自身はそれを卑下したことはないが、同じ魔法使いのアリスの手と比べてため息をつくことはある。
だからバスケットを差し出した手に、アリスの手が重ねられたときにはびくっとした。
アリスの繊手が私の無骨な手を覆う。
背筋を甘い感触が通り抜けて、顔が熱くなる。
さわられてるとこと、心臓が、だんだん熱くなってじんじんする。
アリスが私の手を握ってまじまじと見ているのを感じて、帽子を握る手に力が入った。
アリスがなにかをいって私の手を引っ張るから、そのままそれに従った。
なんかしゃべった気もするが、よくわからない。
移動する間も、アリスは手を放してくれないからだ。
動くたびにこすれる手と手が、肌と肌が、私を冷静な気持ちにさせてくれない。
きもちいいけど、どきどきする。
そんな気持ちを悟られたくなくて、私は帽子を顔に押し付けた。
アリスが軟膏を取り出して私の手にすりこむ。
ぬるぬるした触感が、さらさらの手で私のざらざらな手の上を動く。
その感触に、変な声をあげそうになって慌てて唇をかむ。
耳が熱くて仕方がないのはきっと気のせいだ。
アリスの手が、やさしく私の肌を弾き、こする。
指の間や関節の節目、手の筋まで丁寧に軟膏を塗りこむ。
手のひらのいろんなとこがくすぐったくて、熱くなってくる。
きっと軟膏のせいに違いないなんて、自分もだませない嘘をついてごまかす。
これほど耐えている私に、アリスは容赦ない言葉を投げかけるのだ。
「はい、反対側」
悪くないですね。これから頑張ってくださいな。
もうちょっと読みたいなぁと思えた作品でした。
ただ、気になった場所が。
「天板」触ったでしょ>「鉄板」の間違いかなにかでしょうか??
けど、そんな誤字なんて関係ないほどスッキリ読めました。
オーブンの中に入れる鉄製のトレイのことです
魔理沙かわいいよ魔理沙
としかいいようがない。
もっと読ませろ!!
アリスの可憐さを出汁にして魔理沙の可愛らしさを描写する作者様の技量に感服。
どうぞもっとやれ。
しかし短すぎる。
この感じで長編を読んでみたいです。
道理で甘すぎると思ったんだぜ畜生
まりさかわいいよ