――――ふんふんふ~ん。
魔法の森の小さな家から可愛らしい女の子の鼻歌が聞こえる。
今日は――クリスマスイブ。
外の世界では、年に一度の聖なる夜である。
幻想郷にあるこの魔法の森もこの特別な夜を祝福しているのか、いつもより強い魔力に満ちていた。
その小さな家の窓には、二つの人影が蝋燭に照らされていた。
台所に向かって立っている少女は―― 七色の魔法使い、アリス・マーガトロイド。
もう一人、椅子に座っている者がいる。
蝋燭の光の影になっているため、その表情をうかがい知ることは出来ない。
だが、彼は飽きもせずにじっとアリスのことを見つめている。
「やった! やっとできたわ!」
アリスの小さな、喜びに満ちた声が響いた。
彼女は彼に見えないように手元を隠しながら、くるりと回れ右をした。
手を後ろに回したまま、もじもじしながらアリスはテーブルの前に立った。
彼は彼女を見つめ続けている。
アリスは彼の視線から逃れるように目をそらし、思い切って口を開いた。
「ねぇ、あなた。ほら、今日はクリスマスじゃない? だから……ね、これを用意したの」
そう言って、アリスは後ろに回していた手をそろそろと前につきだした。
アリスは震えながら次の言葉を紡いだ。
「これ――クリスマスケーキ! あなたと一緒に食べたくて朝から一生懸命に用意したの!」
その手には可愛くデコレーションされたケーキが小さな皿にのっかっていた。
アリスは、はにかみながらケーキをテーブルの上に置いた。
「ほら! 前にあなたが好きって言ってた、チョコレートケーキよ。今切ってあげるわ」
アリスはそう言って、台所から包丁を取ってきた。
そして、ゆっくりとした手つきでケーキを切り分け始めた。
ふと、ケーキを切る手が止まり、アリスは申し訳なさそうに呟いた。
「ちょっと小さくて物足りないかもしれないけど……ね。今晩はこれくらいでちょうどいいかなって」
彼はアリスの顔を見つめたままであった。
アリスは恥ずかしそうに小さく笑いかけ、そのままケーキを切り分けた。
――すると唐突に、アリスは包丁を握った手を止めた。
そして、小さく切り分けたケーキをスッと小皿にのせ、包丁を脇に置いた。
ケーキを皿にのっけたまま数秒間――いや、数分間経っただろうか。
アリスは目を伏せながら、おずおずと彼に話しかけた。
「それでね、えっと……」
だんだんと語尾が小さくなり、再びもじもじし始めた。
――また少しの間があった後、意を決したかのように顔を上げた。
アリスの顔はまるでりんご飴のように真っ赤であった。
そして、しどろもどろになりながらも彼女の願いを彼に伝えた。
「たっ、食べさせて――あっ、あげるわ! ほら、ケーキ!」
アリスは照れ隠しか、彼の了承も取らずに手元にあるケーキをフォークで分けた。
そのまま、器用にフォークの上にケーキをのせて、目の前につきだした。
「ほらっ、あ~~~ん!」
アリスは頬を真っ赤に染めながら、そのケーキがフォークの上から消えるのを待った。
――数分が経過したが、彼は動かなかった。
彼の顔を見つめながら、アリスは手に持ったフォークを胸元まで戻した。
アリスの肩は――震えていた。
そして、彼から視線を反らし、声を絞り出した。
「ねぇ――」
アリスは彼に呼びかけながら、フォークの上にのったケーキを皿の上に置いた。
そのまま、顔を伏せ椅子から立ち上がり、そして――
――ドンッ!
「私がこんなにおめかしして、自然にふるまっているっていうのに――どうして、何もしゃべらないのよ!」
小さな部屋の中に叩かれたテーブルの音とアリスの叫び声が木霊した。
脇に置いてあった包丁は床に転がり落ち、皿の上のチョコレートケーキは崩れ、テーブルを汚した。
しかし、アリスはそんなこと気にも留めず、まるで壊れた人形のように床に崩れ落ちた。
「ここまでしたって言うのに…… どうしたら…… どうしたら、答えてくれるのっ……!!!」
アリスは恨み事を呟きながら、床を叩いた。
その気持ちが納まるまで、床を叩き続けた。
――ズルッ
アリスが何度も床を叩いた衝撃で椅子に据え付けられた『人の形』がずり落ちた。
――ゴトッ
床に叩きつけられた『ソレ』の蝋で固められた部分が、はがれ落ちた。
その下には――――
完
魔法の森の小さな家から可愛らしい女の子の鼻歌が聞こえる。
今日は――クリスマスイブ。
外の世界では、年に一度の聖なる夜である。
幻想郷にあるこの魔法の森もこの特別な夜を祝福しているのか、いつもより強い魔力に満ちていた。
その小さな家の窓には、二つの人影が蝋燭に照らされていた。
台所に向かって立っている少女は―― 七色の魔法使い、アリス・マーガトロイド。
もう一人、椅子に座っている者がいる。
蝋燭の光の影になっているため、その表情をうかがい知ることは出来ない。
だが、彼は飽きもせずにじっとアリスのことを見つめている。
「やった! やっとできたわ!」
アリスの小さな、喜びに満ちた声が響いた。
彼女は彼に見えないように手元を隠しながら、くるりと回れ右をした。
手を後ろに回したまま、もじもじしながらアリスはテーブルの前に立った。
彼は彼女を見つめ続けている。
アリスは彼の視線から逃れるように目をそらし、思い切って口を開いた。
「ねぇ、あなた。ほら、今日はクリスマスじゃない? だから……ね、これを用意したの」
そう言って、アリスは後ろに回していた手をそろそろと前につきだした。
アリスは震えながら次の言葉を紡いだ。
「これ――クリスマスケーキ! あなたと一緒に食べたくて朝から一生懸命に用意したの!」
その手には可愛くデコレーションされたケーキが小さな皿にのっかっていた。
アリスは、はにかみながらケーキをテーブルの上に置いた。
「ほら! 前にあなたが好きって言ってた、チョコレートケーキよ。今切ってあげるわ」
アリスはそう言って、台所から包丁を取ってきた。
そして、ゆっくりとした手つきでケーキを切り分け始めた。
ふと、ケーキを切る手が止まり、アリスは申し訳なさそうに呟いた。
「ちょっと小さくて物足りないかもしれないけど……ね。今晩はこれくらいでちょうどいいかなって」
彼はアリスの顔を見つめたままであった。
アリスは恥ずかしそうに小さく笑いかけ、そのままケーキを切り分けた。
――すると唐突に、アリスは包丁を握った手を止めた。
そして、小さく切り分けたケーキをスッと小皿にのせ、包丁を脇に置いた。
ケーキを皿にのっけたまま数秒間――いや、数分間経っただろうか。
アリスは目を伏せながら、おずおずと彼に話しかけた。
「それでね、えっと……」
だんだんと語尾が小さくなり、再びもじもじし始めた。
――また少しの間があった後、意を決したかのように顔を上げた。
アリスの顔はまるでりんご飴のように真っ赤であった。
そして、しどろもどろになりながらも彼女の願いを彼に伝えた。
「たっ、食べさせて――あっ、あげるわ! ほら、ケーキ!」
アリスは照れ隠しか、彼の了承も取らずに手元にあるケーキをフォークで分けた。
そのまま、器用にフォークの上にケーキをのせて、目の前につきだした。
「ほらっ、あ~~~ん!」
アリスは頬を真っ赤に染めながら、そのケーキがフォークの上から消えるのを待った。
――数分が経過したが、彼は動かなかった。
彼の顔を見つめながら、アリスは手に持ったフォークを胸元まで戻した。
アリスの肩は――震えていた。
そして、彼から視線を反らし、声を絞り出した。
「ねぇ――」
アリスは彼に呼びかけながら、フォークの上にのったケーキを皿の上に置いた。
そのまま、顔を伏せ椅子から立ち上がり、そして――
――ドンッ!
「私がこんなにおめかしして、自然にふるまっているっていうのに――どうして、何もしゃべらないのよ!」
小さな部屋の中に叩かれたテーブルの音とアリスの叫び声が木霊した。
脇に置いてあった包丁は床に転がり落ち、皿の上のチョコレートケーキは崩れ、テーブルを汚した。
しかし、アリスはそんなこと気にも留めず、まるで壊れた人形のように床に崩れ落ちた。
「ここまでしたって言うのに…… どうしたら…… どうしたら、答えてくれるのっ……!!!」
アリスは恨み事を呟きながら、床を叩いた。
その気持ちが納まるまで、床を叩き続けた。
――ズルッ
アリスが何度も床を叩いた衝撃で椅子に据え付けられた『人の形』がずり落ちた。
――ゴトッ
床に叩きつけられた『ソレ』の蝋で固められた部分が、はがれ落ちた。
その下には――――
完
怖いですな
どうせならあーでもないこーでもないと思考錯誤してる様(狂気やらグロやら)を長々と書いてほしかったです
他人の視点からみた見た描写があれば尚良し
…あんまり好きなジャンルじゃないけど