Coolier - 新生・東方創想話

眠る門番

2012/09/02 16:42:59
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「ぐうぐう」
湖にそびえ立つ大きな館の門の前。緑色のチャイナ服を着た赤毛の少女が門柱に体を預けて寝息を立てている。彼女は、ほんめーりん。紅魔館の門番である。

「わはー、めーりん。またおねむなのだー」
「今日は天気もいいし、昼寝にはちょうどいいのかもね」
「コイツはいつ来ても寝てるよ。あたいとちがってさいきょーじゃないから油断してるんだろうけど。そうだ、これで落書きしちゃおう!」
「だ、だめだよ、チルノちゃん!…あぁ、あとで怒られるよ」
いつの間にか集まってきた妖精やら妖怪やらに囲まれていた。しばらくわいわいやっていたがチルノが筆で何ごとか悪戯書きした後、満足したのか湖を飛び越えて去っていった。
門番の額には、「肉」と書かれていた。

「よう、来たぜ。…なんだ、また寝てるのか。まぁ、私としては寝ててくれた方が楽でいいんだけどな。ん?おでこに落書きか…。ほいほいっと」
しばらくして白黒の魔法使い、霧雨魔理沙がやってきた。彼女は懐から筆を取り出すと、門番の帽子に付いている「龍」のマークと額にある「肉」の落書きとの間に「の」と書き加えた。
「じゃーな、めーりん。通させてもらうぜ」
「ぐうぐう」
堂々と隣を通る魔法使いに対し、門番は寝息で答えた。

「はぁ…」
そんな様子を館の窓から見ていた十六夜咲夜は、深いため息を吐いた。
「全く、あの子は門番という自覚がないのかしら」
別に彼女は門番の少女を嫌っているわけではない。しかし、その能力については甚だ疑問を持っていた。妖精たちにはいい遊び相手にされ、訪問者は警戒している様子も無くほいほい通してしまい、おまけに弾幕ごっこもお世辞には強いとはいえない。
完璧で瀟洒なメイド長にとってはそれがいささか気に入らない。
「こんな調子では、いざという時に頼りにならないわ…。警備を強化するようお嬢様に打診してみようかしら」
咲夜は最近の警備状況について、特に気をかけていた。先日、人里に買出しに行った帰り道、紅魔館へと続く道の手前の森から不穏な気配を感じていたからだ。1人で歩いている咲夜に襲いかからないところを見ると、特段凶悪な妖怪ではないのだろう。だが、感じ取れた気配は10体程度。集団で攻めてこられるといささか手こずるかもしれない。森の中に姿を隠し紅魔館の様子をじっと伺っている妖怪の気配に、咲夜はちょっとした不安を感じていた。

「必要ないね。うちにはちゃんとした門番がいるじゃない」
警備の見直しの申し出に対し、紅魔館の主レミリア・スカーレットは一蹴した。
「それに館にはおまえやパチェ、なによりこの夜の王たる私がいる。これ以上何が不安なんだ?」
「いえ、お嬢様のおっしゃる通りです」
確かにそうだ。仮に館に乗り込まれても自分たちがどうにかすればいいだけのこと。自分は何を怯えていたのだろう。
「では、失礼いたしますわ」
不安を覚悟に変えた咲夜の背後に再び主の声がかけられた。
「ああ、そうだ。今夜は博麗神社で宴会があるそうだ。私とパチェも参加するから、咲夜も準備しておきな」
咲夜の心は瞬時に不安で満たされた。

「いい?これからお嬢様達と出かけてくるから、何かあったら小悪魔なり妖精メイドなりを神社に寄こしなさい。…聞いてるの?めーりん。暢気に寝てる場合じゃないのよ!」
夕刻、門前にて咲夜が門番に小言を言っている。
「ぐうぐう」
それを聞いているのかいないのか、寝息で答える門番。
「…いくわよ咲夜。早くしないとレミィが不機嫌になるわ」
パチュリーに促され、咲夜は主のいる空中へと飛び上がる。
「ぐうぐう」
眠りながら手を振っている門番を振り返り、ますます不安に襲われた。

「もぐもぐ。それでねー、空を飛んでたら、変なのがいたのだー」
今夜の博麗神社は賑やかだった。普段は姿を現さない面子も参加しているようだ。魔理沙やアリス達の輪にいた咲夜は、背後から聞こえてくるルーミアの話が気にかかった。
「あたいも見たよ。なんか気持ちわるかったね。ま、さいきょーのあたいの相手にはならないけど」
「ちょっといいかしら。それって、森の中にいた奴らのことでしょ?どんな様子だったか教えてくれないかしら」
唐突に背中から話しかけられて、ちょっと首をかしげたルーミア達だったが、咲夜の方に振り向いて答えた。
「森の中?わはー、そっちのよわっちそうなのじゃないのだ。」
…よわっちい?思わぬ返答に今度は咲夜が首をかしげた。

「ぐうぐう」
夜になっても眠り続ける緑のチャイナ服の少女。その様子を伺っていた10体の妖怪が森から姿を現した。先刻、彼らの上空を吸血鬼とその従者が飛び去って行ったのを見た。狙っていた館の中には主であろう吸血鬼は居ない。門番は多少厄介そうだが数の暴力で押し切れるだろう。そう考えた妖怪達は紅魔館の襲撃を決め、湖を渡る真っ直ぐな道をじっくりと進んでいった。
「ぐうぐう」
門番はこちらにまだ気づいていないようだ。道も半ばに来たところで、突然大きな地響きと共に両脇の湖面が揺れた。
何ごとかと周囲を見渡す20の赤い瞳は、瞬く間に上半身ごと消え去った。
湖中より突如として現れ妖怪達を飲み込んだ巨大な大蛇が館を睨みつけている。
「ぐうぐう」
寝息はまだ聞こえている。

「それでな、私が目を開けるとそこには鍋のふたに乗ったブタが飛んできて………ん?なんだよ、咲夜。今いいところなのに」
霊夢や紫に向かって昨晩考えていたジョークを披露していたレミリアは、オチの言う前に咲夜に袖を引っ張られ、不機嫌そうに振り向いた。
「それどころじゃありませんわ。一刻も早く館に戻りましょう」
「なんでさ?」
焦る咲夜と対照的にレミリアは悠然としている。
「湖に大蛇の化け物が棲みついていると聞きました。チルノやルーミアだけでなく、魔理沙もその姿を見ていたというので間違いないと思われます」
「それがどうした?そんなものが夜の王に敵うとでも?」
呑気なレミリアに苛立つ咲夜。
「お嬢様の相手にならないことぐらいは私も分かります。ですが!今の館には力の制御のできないフラン様しかいないのですよ!よもやフラン様が大蛇を撃退したとして、館が無事で済むとは思えませんわ」
レミリアと同等の強さを持つフランであれば、侵入者の撃退など難しくはないだろう。しかし、その撃退劇の果てには館も妖精メイド達も木端微塵に吹き飛んでいるに違いない。
「ですので、館に入られる前に私たちで防がなければ…」
と言いかけた咲夜の口をレミリアの指が遮った。
「そのとおり。入られる前に『私たち』で防げばいいんだろ」



門前に迫った大蛇はいまだその巨大な半身を湖中に沈めており、鎌首をもたげ館をねめつけている。その二つの大きな赤い眼に宿るのは、純粋な破壊衝動だけである。自分の居る湖に目障りな建物が建っているので食らいつくしてやろう、という衝動。それを実行に移すため、凶悪な敵意を剥き出しにして頭を門に向ける。
いつの間にか、門からは寝息は聞こえてこない。
代わりに、たんっという地を蹴る音がして、自らの頭上が少し重くなる。
そっと頭に小さな手が置かれる。両の眼を頭上に向けると、そこにかがんでいる赤毛の少女と目が合う。
その瞳からは、先ほど自分が宿していた敵意をはるかに上回る明確な殺気が伝わってくる。
大蛇は皮肉にも蛇に睨まれた蛙のように動けなくなる。
ふと、頭上の手が大きくなったような気がした。全身を現していない巨大な大蛇よりも、さらに巨大に。
その掌より感じ取れる気から今まで経験したことのない死の恐怖に駆られ、湖中に逃げ帰ろうと身を翻した瞬間、閃光とともに大蛇の化け物は内部から四散した。
辺りに飛び散ったその体は、体液の一滴でさえ、門の中に入ることはできなかった。



「ほらね、慌てて帰ってくる必要なんてなかったのよ」
しばらくして館の上空にやってきたパチュリーが呟いた。
「だから言ったろう。ぐーすか寝てるアイツを門に置いているのは何故だと思う?強いからだよ。今は滅多なことじゃその力は見られないけどね」
「……私の認識が浅はかでした」
満足げに笑う主の言葉に、咲夜は何も言い返すことはできなかった。
「ま、ごっこ遊びの方はよわっちいみたいだけどね」
大蛇の頭を湖に放り込んでいた門番は、三人の姿を見つけると何ごとも無かったかのように、にこやかに手を振ってきた。


「ぐうぐう」
湖にそびえ立つ大きな館の門の前。緑色のチャイナ服を着た赤毛の少女が門柱に体を預けて今日も寝息を立てている。
彼女の名は、紅美鈴。その名を持って「紅魔の盾」。紅魔館の門番である。
ここまで長文をお読み頂きまして誠に有難うございます。
初投稿につきお見苦しい点、多々あるかと思います。
ご批評頂き、今後の勉強とさせていただきたいと思う次第です。
もぐもぐるーみあ
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コメント



0.430簡易評価
1.無評価名前が無い程度の能力削除
紛うかたなき短文です
2.無評価名前が無い程度の能力削除
>ここまで長文をお読み頂きまして誠に有難うございます。
え?感覚大丈夫?
3.80名前が無い程度の能力削除
よくみる話だけど文章自体は読みやすくてよかったと思います。
次はオリジナリティと、もう少し読みごたえのある内容にしてみてはどうでしょう?
上の幼稚なフリーレスは気にすることないですよ。
頑張って下さい。
5.20名前が無い程度の能力削除
ありがち
6.10名前が無い程度の能力削除
話が平凡過ぎて面白みが無いし、この程度の量で長文と呼ぶのはどうかと…
長文ならこれの6~7倍の量は欲しいかな
9.80詐欺猫正体不明。削除
和める話、とても大切だと思います。
つぎもがんばってねー。
10.80名前が無い程度の能力削除
シンプルイズベストですな。変に捻ってぐだるよりはよいかと。
11.60名前が無い程度の能力削除
定期的に補充される美鈴強キャラ話。

ありがちといえばそれまでですが、文体の柔らかさなど良い部分も光る良い話でした。
13.70こーろぎ削除
いい感じでした。
ただ文章でなんとなく最後どうなるかわかってしまいやすいのが残念でした
19.50名前が無い程度の能力削除
もうすこし、お話を膨らませてもよかったかなと、おもいます。
たとえば、勝てる相手だったとして、フランちゃんが乱入していたらどうなるかな、とか。
21.100名前が無い程度の能力削除
龍wのw肉ww
ダメだww(笑)