11月 9日
夜ごはん:うさぎのおにく
きょうからにっきをかくことになった。
もう子どもじゃないんだからって、お母さんが言ってた。
でもただかくんじゃつづかないから、夜ごはんを書きなさいって。
きょうはうさぎのおにくをたべた。おいしかった。
お父さんはあんまりすきじゃないみたい。
わたしにちょうだい。
11月 10日
夜ごはん:うなぎ
お父さんがもってきたうなぎをたべた。
でも、どうして。お母さんはおこってた。
ようかいって言ってたけど、なんのことかな。
よく分かんないや。
おいしいのにな、すきじゃないのかな。
11月11日
夜ごはん:おなべ
大ごちそう。たくさんたべた。
お母さんはおやさいもちゃんとたべなさいって。
わたしだけじゃないよ。
ごちそうさま。
11月 12日
夜ごはん:おうどん
きょうのごはんはおうどんだった。
やけどして、あんまりよく分からなかった。
でもまえにたべたときはおいしくなかったとおもうから、いいや。
11月 13日
夜ごはん:おうどん
このまえもおうどんだったのに。
でもそれをいったらお母さんにおこられるので、がまんした。
おさけをのんだお父さんがおこられてて、がまんしてよかったとおもった。
お母さん、こわいもん。
おうどんはやっぱりおいしくなかった。
11月 15日
夜ごはん:おでん
きのう、にっきをかくのをわすれちゃった。
お母さんはみないから、だいじょうぶかもだけど。
あれ? それなら、にっきをかかなくてもいいのかな。
でもいいや。さいきん、たのしくなってきたから。
きょうはおでんだった。
あしたはもっとおいしいから、たのしみ。
11月 16日
夜ごはん:おでん
おいしいはずのおでんがおいしくなかった。
お父さんとお母さんが、けんかしたからだ。
あしたはおいしいごはんがいいな。
11月 17日
夜ごはん:なし
お父さんのばか。
11月 18日
夜ごはん:おうどん
お父さんはかえってこなかった。
おいしくない。
おいしくないおいしくない。
ぜんぜんおいしくない。
11月 19日
夜ごはん:おにぎり
さむい。くらい。こわい。
お母さんどこに行っちゃったの。
どうしてわたしににげろなんて言ったの。
どうしてつれてってくれないの。
おにぎり、つめたい。おいしくない。
11月 20日
夜ごはん:おにぎり
お母さん、わたし、やくそくちゃんときいてるよ。
一日一こだけしか、おにぎりたべてないよ。
にっきもちゃんとかいてるよ。
だからほめて。
ねえってば。
11月 日
夜ごはん:おにぎり
おきたらまっくらだった。
どこ。なんじ。なにもわからない。
お父さんがはなしてくれたようかいのはなしをおもい出して、こわくなった。
お父さんの、やっぱりばか。
お母さんも、おんなじくらいばか。
月 日
夜ごはん:きのこ
おいしいけど、おいしくない。
つかれた。ねむい。
おやすみなさい。
月 日
夜ごはん:きのみ
おなかへった。おなかへった。おなかへった。おなかへった。おなかへった。おなかへった。おなかへった。おなかへった。おなかへった。おなかへった。おなかへった。おなかへった。おなかへった。おなかへった。おなかへった。おなかへった。おなかへった。おなかへった。おなかへった。おなかへった。おなかへった。おなかへった。おなかへった。おなかへった。おなかへった。おなかへった。おなかへった。おなかへった。おなかへった。おなかへった。おなかへった。おなかへった。おなかへった。おなかへった。おなかへった。おなかへった。おなかへった。
月 日
夜ごはん:くさ
おなか。
月 日
夜ごはん:つち
が。
月 日
夜ごはん:いし
へった。
月 日
夜ごはん:なし
月 日
夜ごはん:なし
月 日
夜ごはん:ずーっとなし
月 日
夜ごはん:みつけた
月 日
夜ごはん:にんげん
おいしかった。
月 日
夜ごはん:とり
たくさんいたから、たくさんたべた。
だからおなかがいたい。
くちばしとつめがひっかかって、もっといたい。
月 日
夜ごはん:
なにをたべたのかよくわからない。
あまりおいしくはなかった。
月 日
夜ごはん:うさぎ
やわらかい。
もっともっともっともっともっと。
月 日
夜ごはん:にんげん
くさっていたけど、せっかくだからたべた。
まあまあだった。
いきてたらもっとおいしかったのに。
いきてるにんげん、もっとこないかな。
月 日
夜ごはん:むし
むしゃむしゃ。
ぐちゃぐちゃ。
ばりばり。
ごくん。
ごちそうさま。
月 日
夜ごはん:いぬ
へんなにおいがした。
へんなものをたべて、まざったにおい。
どうせならおいしいものをまぜたらよかったのに。
だったらわたしはおいしいのだろうか。
きになったけれど、いたそうだからやめた。
ためすのはさいごにしておこう。そのためにも、もっとたべなくちゃ。
あしたは、なにをたべよう。
◇
久々に仕事をした帰りに、見知った顔が石に腰掛けているのを見つけた。
近付くと、何やら上機嫌によく分からない鼻歌を歌っているのが聞こえた。泥まみれの手帳のようなものを手に持って、万年筆をもう片方の手で弄んでいる。
里の近くで見かけた以上放っておくわけにもいかず、私は渋々声をかけた。
「妖怪がこんな所で何やってるのよ」
「あー、霊夢。日記書いてるのー」
「それは見れば分かる」
問題は、妖怪には無縁そうなものをどうしてこのルーミアが持っているのかということだ。
私がそれを聞くと、ルーミアは書く手を休めないまま答えた。
「森の中に落ちてたから拾ったの。最近暇だから、人間の真似事してもいいかなって。途中まで書いてあったけど、別にいいよね」
「森の中に? ちょっと見せて」
無造作に放られたそれを受け止めて、ぱらぱらとめくる。最初の方を見れば、この日記の持ち主がどういう運命を辿ったのかは大体分かった。
いずれにせよ、これは遺品という事になるのだろう。だとすれば、面倒だが届けないわけにはいかない。
しかしその前に、私には一つ聞いておかねばならない事があった。
「ねえ、ルーミア」
「んー?」
「あんたが書き始めたのは、どこから?」
かなり怖い
何処からとも考えられるし、どう考えたとしてもちょっと怖い。
とてもおもしろかったです。
気持ち悪いのが凄く気持ちよかったです
シンプルイズベスト。面白かった。
それよりも餓死した子の死を悼みます
餓死かどうかは分かりませんでしたね;;
定番のネタのようにも見えましたが、思ったよりオチが定番でないのが楽しかったです。色々考えるのが。
関係ないですが、一番最初のうさぎのおにくで、「ああ誰か食われたな」とかいう変な読みをしてしまいました。
かわいいなぁ人食い少女かわいいなぁ
読んでおもしろかったと久々に思いました。ありがとう。
妄想するだけで、御代わり三杯ぐらいできますね。それが食尽少女だとしても。
最後の台詞。霊夢の顔色を思うだけで、ゾッとします。
あー、楽しかった! 楽しませて貰いました。ありがとうございます。
素晴らしい。
途中までも怖かったけど最後で一気に鳥肌が…
どこまでが日記の持ち主の書いたものなのだろうか。
読み返すのにもシンプルで良いですね。
面白かったです!
これは全部抜粋かも知れなくて、夜ごはんがいぬの日が最後とも限らないんですよね
どこで切り替わったか、それとも切り替わっていないのか、それぞれ想像すると面白い
……女の子が変化したのがルーミアってことはないですよね?
その辺がわかりにくくてもやもやしたのも含めて(想像の羽が広がるということでもあるのでしょうが)、この点数で失礼します
その全てが素晴らしい!
あなた様の書くこんなお話をもっと読んでみたいものです。
どちらにせよあまりいい結末は来なさそうですね。
幻想に必要なのは物語であって、答えではないですものね。
いくつか「日記にかかれた文章」としては(著者が精神に異常をきたしているとしても)不自然なモノがありましたが、
そこを気にしなければ、スラっと読めて仄かに余韻や考察を残してくれる良い作品でした。
お父さんがはなしくれた→お父さんがはなし「て」くれた かな
拾ったていうかその場で遺品をもって帰ったという
別にそれだけ小説ならではのトリックでいいんだけど、霊夢が最後に
問いかけてるのがアウト。
霊夢は日記を見てその筆跡の違いに気づける立場であり、なのに質問してるのは不自然だから。
前の持ち主を誰もみていない
でまさにコメ欄の人たちと同じ違和感を感じたから
霊夢は問いかけた、と思っていた私は百点をおいていく
【このコメントは美味しく食べられました】
こういうの好きです。
ルーミアがどこから書いたか霊夢には解らない=筆跡に変化が見られない…ってことは…
ところで、最初のほうのうさぎやうなぎは本筋に関係ないんだろうけど、タグのせいで妙に緊張した。
こういう、視覚的にわからない小説故のギミックは面白いです。
:とり でみすちーが逝ったと思って、
あれー?幽々子サマー?と思ったが
幻想郷の文化水準は明治前期がモデルだったような…
それなら一般人がウサギ食っても別におかしかないよな
さすがに鳥をナマでダイナミックに踊り食いはどうだろう
個人的には日付けが消えた辺りからルーミアに渡ったかと思うんだが…
元の持ち主はどーなってるんだろ
リアルさ皆無
けど咀嚼音の描写は必要なかったんじゃないかな?
日記なんだし、ちょっと露骨に感じられた。
細部を伏し、想像させるホラーはとても好きです。
久々に読みましたが、やはり怖い。シンプルだからなおさら。
良かったです。
長い年月を生きる妖怪には日付の認識が薄い。
まぁそんなところかな。
面白かったです。
おもわずうむむとうなってしまう