冷え切った空気に包まれた命蓮寺の境内を、ナズーリンは早足で進んでいた。
季節の変わり目には仕方のないことではあるが、朝夕の冷え込みはここ最近厳しくなるばかりだ。冬の張り詰めた空気とまではいかないが、それでも時折吹いてくる冷たい風は既に冬の匂いが感じられる。思わず身を震わせるような厳しい季節がもうすぐそこまで迫っている事は、誰が見ても明らかだった。
まったく、こんな日に仕事が入るなんてね。こういう日は炬燵でゆっくりするのが一番なのに。まあ、早く終わったからよしとするか。
そんな事を考えて一人苦笑しつつ、ナズーリンは命蓮寺に向かって歩いていく。
今から三十分ほど前、彼女は苦虫を噛み潰したような表情で命蓮寺を出た。彼女が楽しみにしていた炬燵でごろごろ計画は、急に頼まれた失せ物探しの依頼で駄目になってしまったのだ。
仕方なく依頼を受けたナズーリンは、いつもよりも手際よく仕事を進めた。尤も、その理由は「寒い中依頼主を待たせるわけにはいかない」などという立派なものではなく、単純に「こんなに寒い日に長々と探し物をするのが嫌だった」からなのだが。
ともかく、いつも以上に手際のいい仕事で探し物を見つけた彼女は依頼主にそれを届ける時もいつも以上に無関心を貫き通し、その結果いつも以上に早く命蓮寺に帰ってくることが出来たのだった。どうしても礼がしたいと言って聞かない依頼主に持たされた、一箱の蜜柑とともに。
ふふ、これを見せたらご主人様あたりが喜びそうだ。あの人は食べ物に目が無いから。
そんな事を考えつつ、ナズーリンは本堂脇を抜けて廊下へと上がる。
その時には既に、彼女の意識は奥にある居間へと向かっていた。命蓮寺で唯一、炬燵が置いてある部屋へと。
早く炬燵に入ってのんびりしたい。最早ナズーリンの頭はこの思いでいっぱいだ。時間もまだ早いし、誰にも気兼ねすることなく気ままな炬燵ライフを満喫できることだろう。
一人でのんびりと過ごす一時を想像しつつ、居間の前に辿り着いた彼女は勢いよく襖を開ける。
「あ、お帰りなさいナズーリン。朝からご苦労様でした」
けれども、炬燵には先客がいた。ナズーリンが独り占めできると踏んでいたその場所には、既にだらけた寅がいたのだ。布団から顔だけをちょこんと出したその寅は、ナズーリンを見つけるといつもよりも少しだけぼんやりした口調で声をかけてきた。
普段なら、主の言葉にすぐ返事をしたことだろう。
けれども、この時のナズーリンは返事を一瞬躊躇ってしまった。どういうわけか、漠然とした違和感を覚えていたのだ。何が原因なのかは分からない。ただ、星が居間でくつろいでいるこの空間のどこかがおかしいのは確かだった。
何とかしてその妙な感覚の正体を突き止めようとしたナズーリンの表情はすっかり固まってしまっている。それを見た星は、心配そうな口調で彼女に再び声をかけた。
「どうしたんですか? 何か困ったことでも?」
「い、いや、なんでもない。ただいま、ご主人様」
「ええ、お帰りなさい、ナズーリン。ところで、その荷物どうしたんです? なんだか随分大きいですが」
「ああ、蜜柑を依頼主の御老人に貰ったんだ。報酬なんて要らないと断ったんだが礼がしたいと言って聞かなくてね。なんでも、庭の木が今年は豊作だったらしく、味は保証すると言っていたよ」
「本当ですか!? じゃあ、早速いただいてみましょう!」
ずっと炬燵に潜ったままだった星が、蜜柑と聞いた瞬間勢いよく身を起こして目を輝かせる。
主のそんな様子を見て、ナズーリンは笑みを零した。
いつも通りのご主人様。何も変わった所なんてない。きっと、さっきの違和感も気のせいだったのだろう。
「な、何笑ってるんですか」
「いや、相変わらず食いしん坊だなと思ってね」
「だから、それは勘違いだと言っているじゃないですか! せっかくいただいたものを食べないなんて失礼でしょう? あくまでも、私はその御老人への感謝を表すためにですね」
「はいはい、わかったよ。じゃあ、いただいてみようか」
薄い微笑を浮かべつつ、ナズーリンは箱から蜜柑を取り出して星に手渡す。
「では、いただきます。……あ、おいしい!」
「どれどれ……ふむ、確かに甘いな。売り物にできそうなくらいだ」
「あー、やっぱり冬は炬燵に蜜柑ですよねー」
「まあ、否定はしないさ。寒い日くらいのんびりしたいという気持はよくわかる。けれどちゃんと仕事もしなくては……仕事? そうか、それだ!!」
星に倣って寝転ぼうとしていたナズーリンが突然声を上げた。彼女の声に、その大きく見開かれた瞳に驚いた星は思わず卓から身を起こし、向かいの従者に訊ねる。
「い、いったいどうしたんですか?」
「ここに来てから抱いていた違和感の正体がやっとわかったよ。ご主人様、どうしてこの時間にあなたが居間にいるんだ? 毘沙門天様の弟子としての仕事はどうしたんだ」
そう言ってナズーリンは星に鋭い眼光を向ける。
毘沙門天の代理を任されている星は、普段は基本的に本堂に待機している。いつ参拝客が来てもいいように、休日以外はほぼ一日中本堂で静かに座しているのだ。
当然、それはこの日も同じはずだった。けれども、本堂にいるはずの彼女は今こうして炬燵でのんびり過ごしている。どんな理由があったとしても、このような行為は自分の役目を放棄していることと同義である。毘沙門天に認められた者として、そのような振る舞いが許されるわけがない。
何を考えての行動なのかは知らないが、これは少しばかり厳しく問い詰める必要がある。そう考えたナズーリンは、いつも以上に厳しい態度で星に彼女の言い分を求めたのだった。
「……すみません。すぐに戻るつもりだったんです」
しかしながら、ナズーリンが自身の鋭い視線の先に見たのは主の瞳から零れる一筋の雫だった。どんな言い訳をしてくるのか、と内心楽しみにも思っていた彼女は一瞬気後れしてしまう。
「す、すぐにって、いつからここにいるんだい?」
「ええと……十分くらい前からでしょうか。本堂は風を遮るものがないからすごく寒いので、つい居間に来てしまったんです」
「しかし、その間に参拝客が来たらどうするつもりだったんだ」
「私もそれが気がかりだったんですが、いつもこの時間にいらっしゃる方はほぼいないので少しくらいならいいかなあと思ってしまったんです」
「なるほど。それで時間が経つうちに仕事の意識がだんだんと薄れていったわけか」
「その通りです……しっかりしないといけませんよね。はあ……」
そう言って俯いたまま星は黙ってしまう。主のそんな様子を見て、ナズーリンは大きく溜息を吐いた。
あまり知られていないことだが、寅丸星は極度の寒がりである。
今の姿になってかなりの年月が経過しているが、獣であった頃の習性や特徴は未だに彼女の体に染み付いている。厄介なことに、妖獣としての運命なのかそういった習性からくる行動は当人の意思でどうにかできるようなものでないことが多い。ネコ科の獣だった星が寒さを過剰に感じてしまうのも、その例の一つだ。
それに加えて冬の本堂は命蓮寺でも一、二を争うほど冷え込みの厳しい場所である。そこに待機するという行為は、寒さに敏感すぎる星にとっては苦行でしかない。
ほんの僅かな気の緩みだったんだ。状況を考慮すれば仕方なかっただろうし、厳しく言うべきではないのかもしれない。
俯く主を見ながらナズーリンはそんな事を思う。
けれども、これをこのまま放置しておくわけにもいかなかった。
いくら仕方のないことであったにせよ、星が代理の務めを一時的に投げ出してしまったのは事実だ。それに、これが癖になってしまえばいずれ“気の緩み”で許せる段階を越えてしまうかもしれない。そうなってしまっては、彼女の面目どころか立場すらも危うくなってしまう。ともすればそのような危機に陥ってしまう状況を、主人思いの賢将が見過ごしておけるはずがない。
なんとしても対策を練らねば。いや、今はご主人様を本堂に戻すのが先だな。まったく、これじゃあゆっくりもしていられないよ。
皮肉めいた苦笑いを浮かべつつ、ナズーリンは俯く星に声をかける。
「……なるほどね。まあご主人様らしいといえばそれまでだが、今回はそう楽観的に構えてもいられないな」
「すみません。私がしっかりしないといけないのに、また迷惑をかけてしまって」
「そんな事は気にしなくていいさ。それよりご主人様、早く本堂に戻ったほうがいいんじゃないか?」
「そ、そうですね。では、また」
そう言って立ち上がる星。慌てて居間を出て行く主を見送った後、腕組みをしたナズーリンは溜息を吐く。
考えてはみたものの、彼女の思考は行き詰まってしまっていたのだ。
ご主人様の寒がりを治せればいいが、それはまず無理だろう。刷り込まれた習性がその程度のものだったなら、いくらあの方だって我慢できたはずだから。
となると、本堂で防寒対策をさせるしかないが、どんなものが適切だろうか。暖房器具のようなものは置けないし、毘沙門天様の代理として行動しているのだからコートなどの厚着もまずい。そうなると手袋などの小物でどうにかするしかないが、手袋をした毘沙門天など只の笑い者だ。
毘沙門天の代理としての威厳を保ちつつ、ご主人様の苦痛にならないような策。ああ、そんなものがあるのだろうか。
その後も暫く悩んではみたものの、いい案が浮かぶことはなかった。
「……八方塞か」
ぼそっと呟きつつ、炬燵の中のナズーリンは仰向けに倒れる。考えるのが嫌になったのではない。こういう場面ではいくら頭を絞っても無駄だと、彼女は経験から理解していたのだ。
今考えたところで、出てこないものは出てこない。何か閃くのを待つしかないな。しかし、毘沙門天様もこういう時くらいお知恵を貸してくださってもいいだろうに。放っておかれたままではご主人様がかわいそうだ。
元の主にささやかな愚痴を吐きつつ、炬燵の布団を被る。首まですっぽりと包まれたその姿は、先程の星の体勢と何ら変わらない。彼女もまた、こうして過ごすのが好きなのだ。
全身を包む温かさに、自然と意識が薄れていく。
目が覚めたら、また考えよう。その方が絶対いい。
ぼんやりとした頭でそんなことを考えた後、ナズーリンは瞳を閉じ遠のいていく意識に身を委ねた。
「あらあら、ナズちゃんもそうやって炬燵に入るのが好きなのね」
数分後、いつの間にか眠ってしまっていたナズーリンを起こしたのは突然聞こえた白蓮の言葉だった。
慌てて飛び起きたナズーリンはあちこちを見回して白蓮の姿を探す。その様子を見た白蓮は、少し申し訳なさそうに声をかけた。
「あら、ごめんなさい。せっかくいい気持で寝てたのに起こしてしまったわね」
「い、いや、気にしないでくれ。それより白蓮、“も”とはどういう意味だい?」
「ほら、星もよく掛けてある布団にくるまったりするじゃない? やっぱり仲のいい二人は似るものなのねと思って」
そう言いながら微笑む白蓮。その笑みに恥ずかしさを覚えつつも、少し前まで曇っていたナズーリンの心は次第に晴れ渡りつつあった。
誰にも話したくない悩みだが、それで解決が遅くなっては意味がない。白蓮は信頼のおける相手だし、このタイミングで彼女がここに来たのだって偶然ではないのかもしれない。こうしていても仕方ないし、白蓮に相談してみるとするか。
そんな事を考えつつ、ナズーリンは白蓮に答える。
「別に、仲がいいわけではないさ。ところで、聞いてもらいたいことがあるんだが、この後時間を貰ってもいいかな?」
「ええ、大丈夫ですよ。午前の修行はもう終わったからいくらでも平気よ」
ナズーリンの表情から話の内容を察したのか、炬燵の空いている面に座った白蓮は柔らかい表情でそう答えた。その温かさに後押しされるように、ナズーリンは先程の出来事を全て包み隠さず話していく。
「……というわけなんだ」
「まあ、それはよくないわね。星も辛いでしょうし、なんとかしないと」
「なあ白蓮、どうすれば一番いいんだと思う? 私はやはり防寒具に頼るしかないと思うんだが」
「そうねえ……代理のお仕事の邪魔をしないようなものねえ……」
目を閉じて懸命に考えを巡らせる白蓮。彼女に希望を託していたナズーリンは、その姿を見て不安そうに溜息を吐いた。
やはり、白蓮でもいい案が見当たらないか。ああ、本当にどうすればいいんだろう。
そんな事を思うナズーリンの顔は、先程よりも明らかに曇っている。
ナズーリンの心に再び暗雲が立ち込めようとしていた、まさにその時。何かを閃いたように立ち上がった白蓮が、高らかに声を上げた。
「そうだわ! 手編みのマフラーなんてどうかしら?」
「マ、マフラー? それで威厳は守れるだろうか。それと、手編みには何か拘りでもあるのかい?」
「大丈夫よ。星の服で一番寒いのはやっぱり襟元でしょ? そこでマフラーの出番、というわけ。赤系統の色なら目立たないし、違和感もないでしょう。手編みに関しては、言わなくてもわかるでしょうから割愛しますね」
「いや、わからないから聞いたんだが」
「あら、自覚がないのね。大好きな人から貰うなら、既製品よりも手編みのほうがうれしくない?」
「だ、大好きな人!? 白蓮、君は私とご主人様のことを誤解しているようだが」
「はいはい、隠そうとしても駄目ですよ。本当にナズちゃんが星のことを何とも思ってないなら、そんなに頬を染めたりしないでしょ?」
むきになって否定するナズーリンの頬は、確かに紅く染まっていた。否定しきれない事実を突きつけられては、さすがの賢将も言葉を見つけられない。渋々口を閉じた彼女を見て、白蓮は微笑みながら言う。
「ふふ、二人とも本当にかわいいわね」
「……しかし、手編みにするとして、私が編むわけだ。私は今まで編み物なんかしたことがないんだが、なんとかなるものかな?」
「大丈夫、私が教えますよ。やったことがなくても一週間くらいあれば問題ないでしょう」
「本当か!? しかし、一週間はご主人様に寒い思いをさせたままということか……」
「でも、あげる時にすごく喜んでもらえるわよ? だからナズちゃん、やってみましょう。私を信じて、自分を信じて、いざ南無三!」
そう言って白蓮はナズーリンを励まそうと声を上げる。どうやら彼女のほうはすっかりやる気になっているようだ。その様子に少し気後れしつつも、ナズーリンは白蓮に笑顔で応えた。
「……ああ、やってみるとするか。よろしく頼むよ、白蓮」
「ええ、頑張りましょうね! お昼までは時間があるし、早速始めましょうか」
「ああ。今から毛糸を買ってくるから、白蓮は部屋で待っていてくれ」
「わかったわ。ああ、久々に腕が鳴るわね~」
うれしそうに微笑む白蓮に見送られ、ナズーリンは居間を出た。
里へと向かう彼女を、初冬の寒空が迎える。けれども、脇目も振らずに突き進むナズーリンは、もう先程のように身を震わせることはなかった。
それから約三十分後。臨時の編み物教室が開かれることとなった白蓮の部屋では、既にナズーリンにとっての戦いが始まっていた。
「そうそう、こっちの針に巻いた糸をもう一本に掛けて」
「こ、こうか?」
「ううん、そこはここを通すのよ」
「こっちか。よし……で、できた!」
「ナズちゃん、上手よ! まずは第一歩ってところね。あと五十歩くらい、頑張りましょう」
「ま、まだそんなものなのか……こんな調子では、いつご主人様に渡せるかわからないな」
ナズーリンは肩を落としてそう言う。
生まれつき探索などで外に出るが好きだった彼女は、今まで編み物をした経験が一切ない。編み針を手にするのだって、この日が初めてだったほどだ。そんな彼女がいきなりマフラーを編もうとしているのだから、それを遥かに高い壁と感じてしまうのも仕方ない。
すっかり元気をなくしたナズーリン。その様子を見て、白蓮は優しく声をかける。
「そう気を落とさないで、ナズちゃん。初めて編むんだから、時間がかかるのは当然よ。でも、一歩一歩確実に積み上げていけばちゃんとできるから。ね?」
「白蓮……ああ、そうだね。私が落ち込んでいる場合ではない。一刻も早くご主人様に渡せるよう頑張るよ」
「ええ、頑張りましょう。じゃあ次は、裏目にいきましょうか」
そう笑顔で言う白蓮に小さく頷き、ナズーリンは再び意識を編み針に集中させる。
笑顔で喜ぶ主の姿を思い描きながら、彼女は手を進めていった。
* * *
“聖白蓮の手芸教室・愛のマフラー編”が始まって数日経ったある夜のこと。
夕食を終えた後、ナズーリンは自分の部屋でせっせとマフラーの続きを編んでいた。
数日前はまったくの素人だったナズーリンも少しずつ編み物に慣れてきたようで、既に白蓮の指導がなくとも手順を進めていけるようになっていた。とはいえ、さすがに全てが頭に入っているわけではない。わからない部分は当然出てくるものだ。
けれども、ナズーリンは手を休めることはなかった。一刻も早く、星に応えてやりたいと思っていたからだ。
夜のうちに自分なりに編み、その過程でわからなかったことは昼間に質問する。その時に聞いたことをメモして、それを見ながら夜にまた編み始める。数日の間にいつしか形成されたこのサイクルに基づき、ナズーリンはとにかく編み続けていった。
この調子なら、あと数日で完成するだろう。ご主人様には苦労をかけてしまっているが、やっとそれに報いることができそうだ。
そんなことを考えて笑みを浮かべつつ、ナズーリンは手を動かし続ける。その滑らかな手つきは数日前のそれとは大違いだ。
主を想う気持をその手に乗せて、彼女はひたすら編んでいく。
「ナズーリン、ちょっといいですか?」
そんな折、静かだったナズーリンの部屋に突然声が響いた。それも、今しがた彼女が思いを馳せていた相手の声が。
黙々と針を動かし続けていたナズーリンは思わずびくりと身を震わせたが、すぐに冷静になって星に返事をする。
「す、少し待ってくれないか。ちょっと散らかっているから」
外で待つ星にそう告げつつ、マフラーを棚に隠す。
丁寧に畳んで、棚を閉めたときにはみ出ないように気をつけて。
細心の注意を払いつつ、なんとか落ち着きを取り戻したナズーリンはマフラーをしまおうとする。
そうしてなんとか毛糸とマフラーが棚に収まりきった、まさにその瞬間。
「……すみませんナズーリン、入ります」
突如放たれた星の言葉とともに、部屋の襖が開けられてしまった。
飛び上がりそうになりつつも反射的に棚を閉めたナズーリンは、その勢いでぐるりと回って星の方に向き直す。
「随分急ぎのようだね、ご主人様。少し待ってくれと言ったじゃないか」
「ええ、すみません。どうしてもナズーリンに聞きたいことがありましたから」
「聞きたいこと? 何かあったのかい?」
「やだなあ、忘れちゃったんですか? ほら、数日前に居間で相談したあの事ですよ」
星の言葉を聞いた瞬間、ナズーリンは思わず顔をしかめてしまった。真面目な主が強引に入ってきて訊ねた内容が内緒にしていたマフラーの件だったのだから、彼女の気持が顔に出てしまうのも仕方ない。
まったく、なんだってこういう時にばかり訪ねてくるかな、この人は。まあ、間が悪いのは以前から変わりないことだがね。
そんな事を考えながら、ナズーリンは平静を装いつつ星に答える。
「ああ、本堂にいるのが辛い病の話か」
「もう、病気じゃないんですから。それで、何かいい考えは浮かびましたか?」
「いや、どうにも思いつかなくてね。ご主人様には悪いが、もう少し我慢してもらうことになりそうだ」
「そうですか……」
そう言って俯く星。その姿を見て、ナズーリンは唇を噛み締めた。
ナズーリンの言葉を聞いた星の落ち込みようは半端なものではない。それはつまり、それだけ星がナズーリンを信頼しているということになる。それがわかっているからこそ、そんな彼女に何もしてやれない自分の現状をナズーリンは悔やんでいたのだ。
いっそのこと、言ってしまうか。いや、せっかくのプレゼントを事前に話してしまうわけにはいかない。
出来上がったマフラーを渡せば、ご主人様がそれまで抱えていた辛さは幸せになって吹き飛んでいくはずだ。そのためにも、今マフラーに言及することはできない。
ご主人様にとって、今が耐える時なんだ。もちろん、私にとっても。
そんな事を考えつつ、ナズーリンは視線を下に落とす。
俯いた彼女は、目の前の主がふと視線を机に向けたことにも気づかない。
それから少し間があった後、星は静かに口を開いた。
「……でも、ナズーリンならなんとかしてくれますよね」
突然の言葉に、ナズーリンは顔を上げる。いつの間にか少し潤んでいた瞳が見つめる先には、いつものように優しい笑みを浮かべた主の姿が映っている。それを見たナズーリンは、星につられるように頬を緩ませた。
ああよかった。こんなにもご主人様は私を頼りにしてくれているんだ。なんとしても、彼女の想いに応えたい。彼女には、ずっと笑顔でいてほしいから。
緩んだ頬をいつもの皮肉めいた笑みに切り替えつつ、ナズーリンは答える。
「ああ、当然じゃないか。困っている主の頼みをきくのは従者の役目だろう?」
「ふふ、そうですね。……あ、ナズーリン、ちょっといいですか?」
「妙な事でなければ」
「ちょっと、手相を見せてほしいんですが」
「て、手相? 随分と唐突な話だね」
「ついさっきまで手相の本を読んでいたんですよ。ですから私も見てみたいなあと思いまして。気分転換にもなりますよ、きっと」
「まあいいけど、素人にわかるものなのかね」
そう言いつつも、ナズーリンは両手を差し出す。掌を取り暫く見つめていた後、星は手を離しながら言った。
「……よし、覚えました。ありがとうございます、ナズーリン」
「ちょ、ちょっと待てご主人様」
「はい?」
「手相、見てないじゃないか。それになんだ、覚えたとは」
「え? あ、あの……えへへ、わかりませんでした。やっぱり私にはまだ早かったみたいです」
「まったく、だから言ったじゃないか」
「あはは……それでは用も済みましたから、私は部屋に戻りますね」
「ああ。おやすみ、ご主人様」
「おやすみなさい、ナズーリン。期待してますよ」
そう言い残して星は部屋を後にする。その表情は、訪ねてきた時とは打って変わってとてもにこやかだ。
彼女を見送った後、ナズーリンはほっと胸を撫で下ろした。
やれやれ、なんとか凌げたな。しかし、いきなり手相とはね。本当にご主人様はよくわからない人だ。
さて、あの人のためにも早く完成させないとな。
決意を新たにして、棚に隠した編みかけを取り出す。主の喜ぶ顔を思い浮かべて、再びせっせと針を動かす。
星をうまく凌いだことへの安心感と、彼女が喜ぶ姿を想像することで得る情熱。そういった感情が入り混じり未だ平常心を取り戻せていないナズーリンは、白蓮のメモが机の上にずっと出しっ放しだったことには気がつかなかった。
* * *
星の訪問から更に数日後の夜。ナズーリンは、星の部屋へと向かっていた。
夜間の冷え込みは、昼間の比ではない。今彼女が進んでいる廊下も、異常なほど冷たい空気に包まれている。
けれども、そこを早足で進む彼女は穏やかな笑みを浮かべていた。
この世でたった一つの、心の篭ったプレゼントを握り締めながら。
深い臙脂色は、星の服の色に限りなく近い。程よく長さもあって、彼女の首周りをすっぽりと包み込んでくれることだろう。全体的な仕上がりも、一週間前初めて編み針を取った者が編んだとは思えないほどの出来映えだ。これなら星もきっと喜んでくれるに違いない。
一週間分の思いの結晶を手にするナズーリンは、本当にうれしそうだ。
白蓮のお蔭ではあるが、しかしやってみればなんとかなるものだな。あの時諦めないでやってみてよかった。時間はかかってしまったが、これでやっとご主人様の気持に応えることができるよ。
そんな事を考えつつ、ナズーリンは星の下へ急ぐ。
うれしそうに微笑んでくれるであろう、主の姿を想像しながら。
「ご主人様、ちょっといいかな」
部屋の前に着いたナズーリンは、すぐさま星を呼んだ。一刻も早く、彼女にマフラーを渡したかったのだ。
けれども、星がよこした返事は妙なものだった。
「あ、あの、あと少しだけ待ってもらえませんか? もうちょっと、もうちょっとで終わるんです」
いったい何が終わるんだ、と思いつつナズーリンは苦笑する。けれども、さすがに無理に入るわけにはいかない。逸る気持を抑えて、彼女は星に答えた。
「よくわからないが、好きにしてくれ。ただ一言、ここはとても寒いとだけ言っておこう」
「ああ、すみません。あともう少し、ここを……できた!! ナズーリン、入っていいですよ」
主の許しを得て、ナズーリンは襖を開ける。
後ろ手に隠したマフラーを見せないよう気をつけながら、彼女は星の前に座った。
「すみません、待たせてしまって」
「いや、いいさ。ところで……ご主人様、以前あなたが話した本堂の件を覚えているか?」
「ええ、私から言い出したんですから忘れませんよ」
「それもそうだね。それで……その、やっぱり我慢できる範囲ではないんだね?」
「ええ、申し訳ありません……」
そう言って俯く星。
今しかない。そう自分自身に言い聞かせ、ナズーリンは後ろに回していた手を星の前に差し出した。
「あ、あの、ナズーリン? これは……」
「よかったら、使ってくれ。それを巻けば大分ましになるだろう」
「もしかして、手編み、ですか?」
「ああ。初めてだったから白蓮に協力してもらったんだ。それでも一週間かかってしまった。その間何もしてやれなくてすまなかった」
そう言ってナズーリンは頭を下げる。その様子を、星はうれしそうに微笑みながら見つめている。
「……うれしいです、ナズーリン」
星の言葉で、ナズーリンは顔を上げる。きっと笑顔でいるだろう主を想像しつつ、視線を前に向ける。
けれども、星の顔よりも先にナズーリンの目に飛び込んできたのは差し出された彼女の手と、大事そうに握られた手袋だった。
「え? ええと、あの、ご主人様?」
何が起こっているのかわからず混乱するナズーリン。普段は明晰な頭脳も、こうなっては最早働かない。ぽかんと口を開けたまま、ただ目の前に差し出された紺色の手袋を見つめるばかりだ。
その様子を見た星は、一際うれしそうに笑みを浮かべた。
「本当にぎりぎりでしたよ。今さっき出来上がったんですから」
「あ、あの、ご主人様、この手袋は、まさか私に?」
「ええ、もちろんそうですよ。ナズーリンが一生懸命マフラーを編んでくれたお礼です」
「だ、だけどなんで? ずっと内緒にしてたのに」
「あれ、気づいてなかったんですか。ほら、数日前にナズーリンの部屋に行ったでしょう? あの時に聖のメモが机にあるのを見ちゃったんですよ。覗くつもりはなかったんですが、目に入ったのが編み物のアドバイスだったのでピンときたんです。普段特に長話をしない聖とナズーリンが居間での件を境に途端に話すようになったのもあって、これはきっとナズーリンが私に編んでくれているのだと確信したわけです」
誇らしげにそう語る星。ナズーリンは放心状態でしばらく彼女を見つめていたが、やがて大きな溜息を一つ吐いた。
「……つまり、ここ数日はずっとばれていたわけか」
「ええ、そういうことです。ナズーリンが私のために内緒で頑張ってくれているのなら、お礼も内緒にしないとなあと思ったので黙っていたんですよ。やっぱり、プレゼントは内緒がいいですからね。ねえナズーリン、早速してみてくださいよ」
「ああ、そうだな。なら、ご主人様も巻いてみてくれ」
想いを込めた手編みの品を互いに渡し合った二人が、それぞれの品を身につける。
優しさに包まれるような感覚がたちまち二人の間に広がっていく。
「わあ、とってもあったかいです。臙脂色も綺麗だし、手触りもすごくいいですね」
「この手袋もとてもいいよ。紺色は気分が落ち着くし、指先の感覚を妨げないのが素晴らしい。普通の手袋はどうしても邪魔になってしまうが、これなら探し物をする時にもつけていけそうだ。それにしても、よくここまでぴったりのサイズに仕上げられるものだね。まるで私の手を測って合わせたような……ああ、あの時か」
「ええ、あの手相です。うっかり覚えたなんて言ってしまった時は焦りましたよ。でも、咄嗟に考えたにしては中々だったでしょう?」
そう言って微笑む星。本当に心から喜んでいるのだろう、その笑顔はいつも以上に明るく温かい輝きを放っている。
主のそんな姿を見て、ナズーリンは頬を緩ませる。
まあ、こういうのもありだな。
私はご主人様のことを思ってマフラーを編み、それを知ったご主人様はその礼として手袋を編んでくれた。お互いに想いを込めたものを、相手にプレゼントする。素晴らしいことじゃないか。
本当は礼なんて要らない、などと強がりを言ってみたい気持もあるが、今回は言わないでおこう。
ご主人様が心を込めて編んでくれた大切な手袋を、そんな強がりで手放したくないから。
「どうしたんです? ナズーリンがそんなにうれしそうに笑うなんて珍しいですね」
皮肉のつもりなのか、少しわざとらしい口調で星がそう声をかける。従者の口調を真似たのだろうが、彼女がやるとどうにも滑稽だ。
そんな主を見たナズーリンは、いつもの意地悪な笑顔に戻りつつ彼女に答えた。
「私だって、偶にはそんな時もあるさ。素直に感謝したくなる時もね」
「ナズーリン……」
「ありがとう、ご主人様。本当にうれしいよ」
「私も、すごくうれしいです。これなら、ずっと本堂にいても平気ですよ」
「いくら寒さが凌げるようになったからって、そのまま寝たりしないでくれよ?」
「もう、そんなことしませんよ! 私をなんだと思ってるんですか!」
「そうだな……手のかかる、大切な主ってところか」
「……一言余計です。まあ、大切に思ってくれているのはうれしいですけど」
「そういうご主人様はどうなんだ? 私をどう思っている?」
「え? やだ、恥ずかしいですよ」
「私だって言ったんだ。ちゃんとご主人様の口から聞きたいんだが」
意地の悪い笑みで星に迫りながら、ナズーリンは強い口調でそう言う。一見強気に見えるが、彼女の頬もほんのりと紅く染まっている。迫られている星はといえば、当然のように真っ赤な顔をしていた。
「さあ、言ってごらんよご主人様。皮肉を混ぜたければ好きにしていいから」
「……宝物」
「……何だって?」
「あなたは私の……私の、大事な宝物、です……」
消え入るような声でそう告げると、星は首元のマフラーを目の下辺りまで一気に引き上げた。
僅かに隙間から見える頬の紅が、マフラーの臙脂に浮き立つ。
主のそんな姿を見た瞬間、ナズーリンの頬が急激に赤みを増していく。
これは、卑怯だ。
心の中でそう呟いたナズーリンは星から視線を外し、彼女とは正反対の方向を見て呟くように言う。
「……ありがとう」
星は返事をしなかった。
聞こえなかったからではない。二人の間には、それ以上の言葉など要らなかったのだ。
お互いを大切に想う二人の心は、主従を越えた絆として既にしっかりと結ばれていたのだから。
翌朝。
相変わらず冬の寒さは猛威を振るっている。少し前までは辛うじて穏やかだった空気も、ここ最近は冬の張り詰めるようなものに変わってしまった。前倒しでやってきた寒さも、ついに本番に突入したというわけだ。
その寒空の下、星とナズーリンは境内を掃除していた。もちろん、それぞれの大切なものを身につけて。
「ふう、このくらいですかね」
「これで全部か。それじゃあ私は依頼主に会ってくるよ」
「ええ、気をつけて。手伝ってくれてありがとうございます、ナズーリン」
「別にいいさ。それよりご主人様、くれぐれもマフラーの件を話しすぎないように頼むよ。変な噂が立ったら面倒だからね」
「わかってますよ、私を誰だと思ってるんですか。私だってそのくらいの分別はあります」
そう言って胸を張る星。その仕草がなんだか頼りなく見えて、ナズーリンは思わず小言を零す。
「あなただから心配なんだが……」
「あら、早速してるのね」
「あ、聖! そうなんですよ、本当にあったかいんです。これも聖のお蔭ですね」
「案の定話しているじゃないか。まあ白蓮はマフラーのことを知っているから別にいいが」
「うらめしやー!」
「こんにちは、小傘ちゃん」
「こんにちは! うーん、なんで驚いてもらえないかなー……あれ? 星、そのマフラーどうしたの?」
「ふふ、これはですね、なんとナズーリンが」
「……ご主人様、あなたの分別はいったいどこへ飛んでいったんだろうね?」
「こんにちは! 今日も清く正しく、新聞の勧誘に来ましたよ!!」
「あら、こんにちは文さん。でも新聞は結構ですからね」
「むう、冷たいですねえ……お? そのマフラー、手編みですか?」
「よくぞ聞いてくれました! 実はナズーリンがですね」
「駄目だご主人様! そいつにだけは絶対に話すんじゃない!!」
思わず大声で叫ぶナズーリン。今星が話をしようとした相手を見れば、おそらくは誰もがそうしただろう。
けれども、その行為は文にとっては逆効果だった。ナズーリンの反応を見た彼女は途端に目を見開き、手帖にペンを走らせる。
「むむ、怪しいですね。いや、これは詳しく聞きたいなあ」
「生憎だが話すことはないよ。ね、ご主人様?」
「え? あ、は、はい! このマフラーはなんでもありませんからね!」
今頃思い出したのだろうか、星はわざとらしく否定する。その様子を見て大袈裟に溜息を吐くふりをした文は、いかにも心底残念だといわんばかりの口調で答えた。
「ならば仕方ありませんね。ああ、なんと残念なことでしょうか。……まあこれ以上話してもらえなくても、ナズーリンさんが星さんにマフラーを編んだという事実だけで十分おいしいネタなんですけどね♪」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! できたらこの事は記事にしてほしくないんだが……」
「大丈夫、悪いようにはしませんよ! それではお二人とも、お幸せにー!!」
営業スマイルを振り撒きながらそう言うと、文はものすごいスピードで空に舞い上がる。見上げる星とナズーリンを写真に納めると、そのまま山の方へ一直線に飛んでいってしまう。これでは、彼女を止める手立てはなさそうだ。
取り残されたナズーリンは肩を落として言う。
「はあ……どうやら、記事にされそうだね」
「ええ、そうですね。“命蓮寺のお似合いカップル”とか書かれるんでしょうか」
「あら、素敵じゃない! 今夜はお赤飯かしらね~」
「お赤飯!? なら私もおよばれしようかな」
「ふふ、ちゃんとお手伝いしなきゃ駄目よ?」
「はーい!」
「二人とも、ふざけないでくれ。真面目な話なんだから……なあ、ご主人様?」
「カップルか……いいですねえ……」
呆けた事を言いながら惚けている主を見て、再びナズーリンは溜息を吐く。
まったく……自由すぎるよ、この人は。
「……もういいや。私は行くよ、ご主人様」
「あ、はい! 気をつけてくださいね、ナズーリン」
星の言葉に応えるべく、背を向けたナズーリンは手を振る。その手にはめられた紺色の手袋を眺めながら、彼女は後ろでうれしそうに微笑んでいるであろう主との関係に思いを馳せる。
カップル、か。なんだか恥ずかしい響きだ。第三者が見たら、私達の関係もそう見えるのだろうか。
恋人。互いを愛し合い、互いのために生きる者達。そんな関係、今までは全く考えたこともなかった。恋焦がれるような感情も、恋い慕うような想いも、私にとっては無縁だと考えていたからだ。
けれども、もしかしたらそうでもないのかもしれない。私が気づかなかっただけで、既に私の心には恋という感情の欠片が芽生えていたのかもしれない。
ご主人様が喜んでくれた時、何ともいえない温かな気持になる。よくわからないが、これが恋なのではないか。そうだとしたら、私は既に恋を知っていることになる。
これはあくまでも仮説でしかない。確固たる根拠もなければ、それを確かめる術もない。けれども、もしも私の予想が確かならば。私が抱いていた感情が、特別なものであったのならば――
――ずっと前から、私はご主人様に恋をしていたのかもしれない。
まったく、妙な話だ。この私が、確証の取れないような曖昧な感情に悩まされるなんてね。
けれど、今は少しだけ信じてみようか。だって、もしこの感情が恋でないのならば、こんなに胸がときめくわけがないのだから。ご主人様の笑顔を見た時、礼を言ってくれた時、そして大切な宝物と言ってもらえた時。そういう時に感じるあの不思議な温かさが、特別な感情でないはずがない。信じてみる価値は、十分にあるはずだ。
少しずつでいいんだ。一歩ずつ、自分の気持を確かめていこう。もちろん、ご主人様と一緒に。
焦ることはないさ。私とご主人様は、確かな絆で繋がっているんだから。
一人穏やかな微笑を浮かべつつ、ナズーリンは両手を包む手袋を見つめる。そこから伝わる優しい温もりは、まさに星の温かな想いそのものだ。
大切なその想いを抱きしめて、ナズーリンは今日も寒空を行く。
ようやく動き出した、不器用な二人の淡い恋物語。
二人が本当の意味で結ばれるのは、どうやらまだまだ先になりそうだ。
良い星ナズでした!
こたつむり星ちゃんは頭にミカンを乗せているに違いない
命蓮寺のみんなと一緒にミカンが食べたいです。
≫「あなたは私の……私の、大事な宝物、です……」
私の…か、既にナズーリンは星ちゃんのものなんですね。まったくうれしいかぎりですよ。
あ、あと文さん新聞の定期購買契約していいでしょうか?