Coolier - 新生・東方創想話

霧雨,眠る

2021/10/07 18:17:55
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 昼でも暗い森なのに夜になると何も見えないな。そう独り言を呟きながら、霧雨魔理沙は籠いっぱいに入った茸を背負いながら帰路についていた。
 さすがにこの重さじゃ箒にものれないからなぁ。まだ香霖は起きてるかな。そんなことを考えながら慣れた足つきで森を進んで行く。
 少し経つと開けた場所に一軒家が見えてくる。外からだと小さいように見える建物だがその実、中には雑貨やマジックアイテムが所狭しと詰め込まれているマイハウス兼、霧雨魔法店なのである。


 戸を開けると前から飼っているツチノコが足元にすり寄ってくる。
 とりあえず先ずは夕飯だ。さっき取ってきた茸でスープを作ろう。
 鍋に食用の茸を入れて軽く味付けをして煮込む。
 煮込んでいる間に実験用の茸を選別していく。とりあえず斑模様のやつ、派手な色の物は新しい魔法の材料になる。いちいち分けるのも面倒くさいが、これも修行のうちだと自分に言い聞かせながら黙々と仕分けていく。
 鍋から良い香りが漂ってきた。食にはそこまで頓着はないが、魔法だと思えば意外と簡単に美味い飯が作れる。これも魔法のおかげだな!
 軽く食事を終えたら、早速新しい魔法の開発だ。


自宅の庭、星空の下で自分の弾幕にアレンジを加えながらひたすらに研究を続ける。弾幕に美しさばかりを求めるものもいるが、やっぱり弾幕にはパワーだぜ!圧倒的なパワーには勝手に美しさがついてくるんだ。そう自分に言い聞かせながら宙に向かって星を飛ばしつづける。
自分には才能が無いとは思わないが、やっぱりあいつらに追い付くには、いやあいつらを追い抜くにはがむしゃらに努力を続けるしかないんだ。そしてゆくゆくは本当の魔法使いになれるように。
 幾ばくかの時間が流れ、体が重くなってきた。そろそろ寝るか。
 片付けを終え床に就くと、よほど疲れていたのか少女は泥のように眠ってしまった。



 窓から射す陽光を浴びながら目を覚ます。そのまま朝食を作るためにベッドから起き上がる。なんとなく頭が重いような気もするが、あまり深く考えずにキッチンに向かう。
 いつもと同じように茸料理を作りながら着替えを済ませるた。昨日は沢山茸が取れたからな、香霖にも持っていこう。
 食事を済ませた後、鏡を見ながら念入りに髪を梳かす。いつも香霖堂に行くときは綺麗な服を着て行っているけど、今まで香霖が気づいたことはないだろうな。


 香霖堂に着き、中へ入ると森近霖之助はいつもと同じように椅子で本を読んでいた。
「よう、香霖また読書か?」
「やあ魔理沙、今日はずいぶん早いんだね。まだ開店準備中だよ」
 そんなこと言ったらいつも開店準備中だろ… 声には出さずにツッコミを入れる。
「今日は土産を持ってきたんだぜ。感謝してくれてもいいぜ?」
「ふーん、何を持ってきてくれたんだい?」
「茸だぜ」
「茸か…ちょうどいい。今から何か作ろうと思ってたんだ。ありがたく頂くよ」
「というか魔理沙、顔色が悪いようだけれど平気かい?」
「べつにどうってことな…」
 言い終わる前に体から力が抜ける感覚とともに魔理沙は地面に倒れこんでしまった。
「魔理沙!気を…」
 香霖の声は途中で途切れてしまった。



 ふと目を覚ますとふかふかのベッドにいることに気づいた。目を開けた私を見て香霖はひどく安心したようだった。
「魔理沙どこか痛むところはあるかい?」
「いや、平気だぜ。もう頭の重みもとれたみたいだしな」
「頭の重み…? 魔理沙、もしかして体調が悪いのに僕のところに来たのか?」
「別に体調が悪いって程じゃなかったんだぜ?」
 実際ただ疲れが溜まってただけみたいだしな。
「魔理沙…、いつも夜遅くまで魔法の実験やら何やらやってるんだろう? あまり無理はしないでくれよ?」
「わかってる。次からは気を付けるよ」
 分かってはいるが、この情熱を抑えることは出来ない。魔法使いになると言い、家を飛び出してから一度も忘れたことのないこの情熱を。
 そんな気持ちを知ってか、香霖はそれ以上何も言うことはなかった。


「もう陽が落ちそうだけれど腹は空かないかい?何か作ってあげよう」
 確かに窓の外から赤々とした光が差し込んでいる。
「じゃあ粥が食いたいぜ、茸入りでな」
「わかった、少し待っていてくれ」
 そう言って香霖はキッチンへと向かっていった。
 確かにこの頃根を詰めすぎたかもしれない。香霖に迷惑をかけてしまったのは少し申し訳ないな。


 少しして、香霖が器に入った茸粥を持ってきた。
「これを食べたら今日はもう休んだ方が良い。まだ顔色がよくないよ」
「わかってるぜ」
「本当かい?」
「本当だぜ」
 粥を食べながら、暫し談笑をした。


 腹に何か入れると猛烈な眠気が襲ってきた。
「なぁ香霖、今日は迷惑をかけたな。申し訳ないぜ」
「いいんだよ。僕にはいくらでも迷惑をかけてもらって構わない。だけど無茶だけはしないでくれ」
「わかったよ。今日で懲りたしな」
 …。
「香霖?私はもう大丈夫だから帰ってもらっても平気だぜ?」
「いや、今日は泊まらせてもらうよ。病人を放って帰るわけにはいかないからね」
 こうなると香霖は意地でも動かない。
「わかったぜ、ありがとうな香霖」
「お礼はいいよ。とりあえず今日はもう休むといい」
安心感の中、瞼がゆっくりと重くなってきた。
もうすっかり陽は落ちていた。
今回は霧雨魔理沙に焦点を当てて書いてみました。お読みいただければ幸いです。
じょうろ
https://twitter.com/JJJsousaku
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コメント



0.150簡易評価
1.90名前が無い程度の能力削除
良かったです。香霖の優しさがあたたかいです。
2.100ガニメデ削除
前作から更に面白くなっていて驚きました。これは更に自作が楽しみですね!
3.100南条削除
面白かったです
お土産にキノコを持ってくる魔理沙がかわいらしかったです
6.90奇声を発する程度の能力削除
良かったです
7.無評価じょうろ削除
コメント、評価ありがとうございます