耳元と自分の体を強く叩く音と共に、私の身体は波に包まれた。 体がゆっくりと下に降りていくのが気持ちよくて小さく微笑んだ。もともと暗い色をしている海は、下へ下へ下るにつれ、空のように真っ黒に染まっていく。まるで頭を上げて空を眺めているような気分だった。
すべてが真っ黒なのは、空も海も同じであるようで、とても気に入った。月の海には、地上の海とは違い、何も住んでいない。だから、今降りてきた私に見えるのは、果てしなく広がる波と荒々しい岩だけ。そのすべてがとても嬉しくて、懐かしくて私は涙を流してしまった。
もちろん私の涙は海がなめたので、目には何も残らなかった。同時に耐え切れず海の上に遡る自分の帽子を掴もうと手を伸ばしたが、特に帽子に大きな意味を見いだせず、再び手を下ろした。自分の体と同じだった帽子は、自分とは違って海が嫌いだったようだ。 それも仕方がないことだった。
このまま沈んでいけば、最後に私に残るものは何だろう。ふとそんな考えが頭をよぎった。息が詰まってもがき苦しんで死んでいくのか、海に飲み込まれて存在自体が消えてしまうのか、それとも生命のない海に唯一存在する生命になるのか。
考えれば考えるほど、かなり楽しい想像が自分の中に満ちてくる。うん、それも悪くないわね。私は思いっきり笑いながら、満足感に満ちて体から力を抜いた。目をゆっくり閉じると、体に何かが触れた感じがした。別に気にしたくなかったので、そのまま気を抜いた。
***
再び目を開けると、自分は海ではなく、見慣れた海岸に横たわっていた。海のように真っ黒だが、緻密に光が刻まれた空を見て、自分を掴む波の感触がなくなったことを惜しんだ。
その代わりに自分の身体に触れる別の感触がある場所に首を向けると、そこには私の妹の依姫が思いっきり濡れたまま水を垂らし、唇を噛み締めながら私を見ていた。私は独り言のように声をかけた。
「依姫、どうしたの?」
私の声を聞いた依姫は、落ち込んだように下がっていた肩を無理やり持ち上げ、私に大声を上げた。
「お姉様はいったい何を考えているのですか! 海に落ちるなんて、いくら私たち綿月家が海が懐かしいとはいえ、どうして......」
どうして、その言葉だけを繰り返す依姫は、泣くことも怒ることもできず、ただただ私を掴んだ手を震わせた。ああ、怖かったんだね。怖がらせてごめんね、と私はそう言うべきだったのかもしれない。謝りながらあの子をなだめるべきだったのかもしれない。 しかし、私はただこの一言を流しただけだった。
「気持ち良かったわ、貴方もどう?」
そんな私の言葉を聞いて、依姫は頭を下げて呟いた。
「一人で行かないでください......」
「うん......そうね......」
私は首を回して空を見た。やっぱり同じような真っ黒でも、空より海に抱かれたいと思った。 もちろん、依姫には言わなかった。 その瞬間、なんだか寂しくなった。
私は視線を海の方に向けた。海は私の視線を待っていたかのように、しっかりと受け止めてくれた。私は離れなかった。ああ、やっぱりさっきまで味わった感触をもう一度味わいたい。
すべてが真っ黒なのは、空も海も同じであるようで、とても気に入った。月の海には、地上の海とは違い、何も住んでいない。だから、今降りてきた私に見えるのは、果てしなく広がる波と荒々しい岩だけ。そのすべてがとても嬉しくて、懐かしくて私は涙を流してしまった。
もちろん私の涙は海がなめたので、目には何も残らなかった。同時に耐え切れず海の上に遡る自分の帽子を掴もうと手を伸ばしたが、特に帽子に大きな意味を見いだせず、再び手を下ろした。自分の体と同じだった帽子は、自分とは違って海が嫌いだったようだ。 それも仕方がないことだった。
このまま沈んでいけば、最後に私に残るものは何だろう。ふとそんな考えが頭をよぎった。息が詰まってもがき苦しんで死んでいくのか、海に飲み込まれて存在自体が消えてしまうのか、それとも生命のない海に唯一存在する生命になるのか。
考えれば考えるほど、かなり楽しい想像が自分の中に満ちてくる。うん、それも悪くないわね。私は思いっきり笑いながら、満足感に満ちて体から力を抜いた。目をゆっくり閉じると、体に何かが触れた感じがした。別に気にしたくなかったので、そのまま気を抜いた。
***
再び目を開けると、自分は海ではなく、見慣れた海岸に横たわっていた。海のように真っ黒だが、緻密に光が刻まれた空を見て、自分を掴む波の感触がなくなったことを惜しんだ。
その代わりに自分の身体に触れる別の感触がある場所に首を向けると、そこには私の妹の依姫が思いっきり濡れたまま水を垂らし、唇を噛み締めながら私を見ていた。私は独り言のように声をかけた。
「依姫、どうしたの?」
私の声を聞いた依姫は、落ち込んだように下がっていた肩を無理やり持ち上げ、私に大声を上げた。
「お姉様はいったい何を考えているのですか! 海に落ちるなんて、いくら私たち綿月家が海が懐かしいとはいえ、どうして......」
どうして、その言葉だけを繰り返す依姫は、泣くことも怒ることもできず、ただただ私を掴んだ手を震わせた。ああ、怖かったんだね。怖がらせてごめんね、と私はそう言うべきだったのかもしれない。謝りながらあの子をなだめるべきだったのかもしれない。 しかし、私はただこの一言を流しただけだった。
「気持ち良かったわ、貴方もどう?」
そんな私の言葉を聞いて、依姫は頭を下げて呟いた。
「一人で行かないでください......」
「うん......そうね......」
私は首を回して空を見た。やっぱり同じような真っ黒でも、空より海に抱かれたいと思った。 もちろん、依姫には言わなかった。 その瞬間、なんだか寂しくなった。
私は視線を海の方に向けた。海は私の視線を待っていたかのように、しっかりと受け止めてくれた。私は離れなかった。ああ、やっぱりさっきまで味わった感触をもう一度味わいたい。
取り残されそうになって焦っている依姫がかわいらしかったです