辛くなったら、隣にいてください。
それだけで私は、落ち着きますから。
切りたくなったら、止めないでください。
それは、私の、普通の人とは違う呼吸なのです。
苦しくになったら、そっと背中を撫でてください。
わがままかもしれませんが、こんな私を必要としてください。
●
今日の私、藤原妹紅は身も心もあなた様のために……などの吐き気を催す言の葉も、自分の口から這いでた言葉だと思わなければなんともありませんから。
今夜も私は客に媚び媚び、私を売ります。蝋燭の朱色が瞬く黒い部屋で男女の営みを。私が黄色く喘げば喘ぐほど行為は激しくなります。……まったく、私は呆れ返っていました。毎度のことながら思うのですが、こんな小娘の何処に興奮要素があるというのでしょうか。下世話な男が考えることを私は毛頭理解する気はありませんが、彼が汚らしいものであるということは分かります。私自身もそれ以上に穢れているという感覚も確かに健在です。
そもそも人成らぬものが、人の皮を被って人として生活する辛いものです。いくら食べなくても平気といえども、食べなくて生活していれば芸者のみんなにも疑われてしまい、また追い出されてしまいます。私の齢では何年も見てくれが変わらないというのはそれだけで十分異常なことです。人間というものは往々にして異常を嫌います。昨日と同じ今日はもちろん同じ明日でなければ怖いからです。もしそれを脅かす恐怖が隣接するのであれば、その原因となる可能性のある異物は排除するに限ります。そうして私はまたまた拒絶をされたので今、このような事をしています。
本当はこんな汚らわしいこと、死ぬほど嫌なのに。死ぬほど辛いのに。死ぬほど苦しいのに。怖くて怖くて堪らない。今はまだ、私は私は繋ぎ止めていられるけど……いつか私は私で無くなってしまうような……いつも背後から私を私自身が見ているという感じです。私の一挙一動をもう一人の私が唇を歪に釣り上げて、コケにするのです。助けて欲しいと、手を伸ばしても触れられもしない誰かに縋りつきたくて壊れそうなのです。声を聞かせてくれるだけで良いのです。私を見てくれればそれで良いのです。私を全て肯定してくれるそんな、優しい人に会いたい。
だけれども、そんな非現実的な事が実現するはずもないので、私はあらゆる負の感情を享受するしかないのです。
一時的にでも、誰か見ず知らずの人でも、私を、私の身体だけでも構いません。必要としてくれるなら……私はそれで構わないのです。あれ、矛盾してますか?
私の瞳から流れ堕ちる涙はだれのもの?
あ~あ、どうして私はどうしてこうなっちゃったんでしょうね。思わず笑っちゃいました。クスリ。
●
「……ん……ゥ」
喧騒で目が覚めました。嫌々目を開くと、すでに誰そ彼時特有の、緋色の光が満ち充ちています。朱色の夕日が山の陰に沈みかけているのです。寝起きには辛い光の刺激だったので、寝返りを打つと、地面に面している方の腕がとてもとても冷たいということに気づきました。ついでに痺れて満足に動かせないでいました。可笑しいですね。
「ふわァ~」
欠伸一つしたところで、ちょっとだけ考えます。此処はいったいどこなのでしょうか。視点の定まらない眼で見渡してみると、常日頃私を包んでくれる暖かい真白な褥の姿はどこに無く、代わりに夕日の暖かい薄膜で覆われているにも関わらず、心までも冷えきりそうな青色とも灰色ともつかない石畳の参道の上で私は寝ていたのです。ちょうど背を向けているところにはお化けが出そうな寂びれた社がかつては威風堂々としていたのでしょうが、今ではのっぺりと建てられているのでした。まぁ些細な問題です。寝る場所なんてどこでもいいのですから、正直地べたでも可、なのです。そんなこんなで、もう一度眠りたいので二度寝をさせてくださいな。
決意新たに視界を墨色に塗りつぶします。
しかし、自然と聞こえるガヤガヤという、人と人との火打石の如き音色がひどく不愉快です。自然発火で燃えちゃえばいいのに。星の神様に殺人を祈っていると、祭ばやしが風に乗って私の背後の竹林を揺していることに気づきました。太鼓の音が大地を揺らすという表現はあながち間違いでもなさそうです。
意地でも再び一度眠ってやろうと、瞼を先程より強く閉じます。……しかし耳に届く太鼓やらのざわめきやらが私の快眠導入を妨げます。……折角気持ちよく昼寝をしていたのになァ、と自分の神経過敏を恨みました。
あまりに快眠に適さない環境に私は二度寝を諦めました。
欲望とは反対に夢寐から現実へと移行してきた私の意識はまだ曖昧模糊絶好調であり、ほわほわと泡沫の如き思考で、今日は人里でお祭りがあるんだっけなァ、などと考えたのでした。
祭りがあるならあるで一向に構いませんが、それにしても本当に五月蝿いので、やるなら静かに葬式の様にやれ、と愚痴の一つも言いたくなりました。だけど、言いたくなるだけで独り言は滅多に言いません。それは寂しがり屋の証拠ですし、慧音曰く『独り言を言う人間は長寿』らしいですから。少しでも寿命を縮めないといけません……有るはずなんてないんですけど。……そろそろ詩的で自惚れの渦に溺れかけたので一時停止。
……なんだか首に違和感があります……。
が、恐らくはこんな硬いところで寝ていたので首が凝ってしまったのでしょう。うん、触れても違和感はありません。私はウーン、と伸びをしました。体中の骨がポキポキと鳴り、不健康だなぁなどと思い、
「妹紅?」
体の具合などどこ吹く風、突如締まりの無い間延びした声を聞きました。石段の下からです。
輝夜です。墨汁を垂らした様に長い長い黒髪に、健康そうな白い美肌が張り付いています。身に付ける桃色の織り物は風格と相まって、それは『姫』と称するに相応しい出で立ちでしたが、その顔色はとても悪く、息絶え絶えになりながら大量の汗を額に浮かべています。しかし聡明そうな凛とした顔に張り付く表情はいつもと同じで、彼女の二つの目には私が写っています。彼女は、しばらく私の顔を凝視した後、軽く眼を閉じて、
「あー……会いたくない奴と逢っちゃった」
などと、平生と変わらぬ口ぶりで言います。
……喧嘩を売っているのでしょうか。などとは口にしませんでした。今日は、なんだかそういう気分ではありません。いつもならば売り言葉に買い言葉で、そのまま殺し合い発展です。 それとも輝夜から私に一声かけてくるとは……考えたくもないですが私に何か用事でもあるのでしょうか? 疑問に思い訪ねてみることにしました。すると、
「なんとなくよ。視界に映ったから、一応ね。それにしても騒がしいわ……外界の愚民どもは、何を騒いでいるのかしら?」
……あららら。珍しいこともあるもので、返答から察するに輝夜も私と殺り合う気分ではないらしいです。それはそれで複雑です。てっきり私の質問なんて無視して、二言目には罵詈雑言が飛び出るかと思ったのに。
ところでこの世間知らずは、縁日の一つも知らないようです。なので私は思わず、縁日に行ったことないの? と、またも私らしからぬ事を口走りました。……何故このような質問を投げかけたのか、それは私に分からない以上誰にもわからないのですけど。
「ないけど……貴女に関係ある?」
輝夜は小首をかしげました。その仕草を思わず愛惜しいと思ってしまった自分が悔しいので、考え直しましょう。可愛く振舞う、その動作が相変わらず憎たらしいです。思わず年齢を考えろ、と言いたくなりました。お決まり道理、言いたくなるだけです。
「今日は祭り日だ。そんな日に殺し合いは無粋だろうよ。外界と戯れてはいかがかしら、姫様?」
私はたっぷり皮肉を込めていいました。
輝夜は軽く目を閉じ顎に手を当てて、いかにも『今悩んでますよ』という雰囲気でしばらく膠着していましたが、徐ろに口を開き、
「いいわよ」
輝夜は短く答えました。
●
昔、それは慧音と出会った頃のおはなしです。
彼女は私に言いました。『自傷は甘えであるからやめなさい』と柔らかに、でも確実に私の行為に反対したのです。その頃の私というものは、簡単にいえば自傷行為という呼吸行動を覚えて、依存してしまい繰り返し繰り返し自分を傷つけていました。鬱血する左手首も、今では傷も残っていませんが、当時は白い手首に紫色の蚯蚓が這い回っているようでボロボロした。今になって思い返してみると、哀れ水面に顔だけを出して酸素を吸い込む鯉のようでもありますね、と嘲笑うだけの成長はあります。だけど、痛覚が私に訴えかける痛みだけは本物であり、ごぼりごぼりと溢れ出る血液は『生』という不確かな霧氷ような概念を、唯物的に与えてくれるには十分過ぎるほどでした。痛くて痛くて、生きています。傷だらけでも生きています。それこそ、生きていくための必須行為なのでは、と思うほど多用したのです。まァ、それ以上に手首を切ることそのものが楽しかったというのもありますけどね。
話を元に戻すと『甘え』という主張は、所詮は真っ当で何不自由なく生きてきた人間の主張であり、彼女らなりの感性やら感情やらで、不気味で理解不能な行為をことを排除しようとする謂わば弾圧に他ならないのですが、大方発言者はその旨には一切気づいていません。価値観の押し付けなんて、無責任すぎて嘲笑に値します。畢竟、私に息をするのをやめろということなのです。死ねない私の呼吸は甘えだなんて……ね、笑っちゃうでしょ?
結局は貴女が辛いだけでしょう。
優しい言葉のその実、私の事はこれっぽちも想ってなんかいないのです。貴女や私の知り合いが私の死を悲しむことなんて、私は一寸足りとも知っちゃこっちゃないのです。
私を我儘だとか罵るのは勝手です。ですが、私の生き死には私の自由だという無謬の理は覆らないのです。あっ、私は死ねないので半分ほど自由を蝕まれているのでした。
……ともかくとして、慧音に甘えだとかなんとか説教された時、流石の私の摩耗しきった感情も、僅かばかりの怒りを覚えました。それはある意味奇跡です。私は『アンタには分かるはずない』と一蹴したのです。それに対して慧音は唯唯分かったような顔をして微笑むばかりでした。憐憫を含む彼女の一粲を見ているうちに、嗚呼やっぱりかァ、とひしひしと打ち拉がれたものです。
実のところ、彼女はまったく『私』という生き物を理解していないのです。否、理解した気になっているだけです。結局私と慧音では生きている世界……否、存在している世界が正反対な別モノだから無理もありません。生死の境を持つ者と持たない者の差なんて、遥か昔に分かっていた筈だったのに……少しでも私は慧音が私を理解してくれることを望んでいたとでも云うのでしょうか。そんな昔の事は覚えていません、と私は言い訳をします。
しかし現在では私は慧音と付き合うにあたり、腹立たしいとも、憎いとも、ありがたいとも、悲しいとも、そんな感情が湧いたことはありませんでした。謂うなれば無関心そのもの。謂わばお手玉をしているのです。唯唯、体裁上付き合っている友人というのが言い得て妙です。もちろんそんなことを表に出したことは一度もありません。
元より相互理解なんてシロモノは鎖の如く、人を縛るものでしかないと私は身を持って知っているのですから。私は他人に理解を求めません。同時に私は他人を理解したくありません。
同じものを同じように見る? 聞く? 感じる? 哂わせないでほしいです。
貴女が奪った紅と、私の持ってる紅は同じ色だって言い切れるのですか?
貴女が見ている空は青く澄み渡る様な空かも知れない。けれど私が見ている空は灰煙と胸を抉るような真っ赤な空なのです。
ほら、前提が間違っているのですから。ちゃんちゃらおかしいです。
仮に同じように見ているとしたら、それは二人共死んでいます。何故ならばそれは、二人だけの馴れ合いでしかなく、そこには理解という皮を被った虚栄心しかありません。もちろん虚栄心は、付き合いたいという証でもありますので大切なものですが、それだけでは人は死んでいます。
自我を持つものは対立するしかないのです。対立して相反し続けながら、お互いを一歩足りとも譲らないことが、確固たる相互理解なのです。しかもそれは同じ様な自我をもつ人でしかありません。私の場合は輝夜です。ですから彼女と話し合いなどの偽りめいた形ではなく醜さ剥き出しで殺しあうのです。
そして、慧音は私が死のうとする、例えば致死量の毒を飲むだとか、頭を手斧で思いっきり割ってみるだとか、自身の首をニクロム線で締めたりすると決まって『自殺なんかやめなさい。生きたくても生きられない人がいるのに』と説教しやがりますのです。
自殺する奴がいるから生きろという理論が通用するのなら、生きたくない人がいるから自殺しろ、でもいいはずです。
私は自殺を肯定します。自分を殺すことは悪いことではないのですから。
さてと。
物思いに耽っていたら、縁日盛りの大通りに着きました。
●
「妹紅、これ食べにくい」
「リンゴ飴を一口で食べようとするな、一応姫様でしょ」
下品にも林檎飴を一口で食べようと口を裂かんばかりに開いている輝夜に、正しいリンゴ飴の食べ方……そんなものが在るのかどうか疑わしいですが、ともかくそれを伝授してあげました。端からカリカリと削って食べいくのです。リンゴは後のお楽しみです。私の教えを、微妙な顔で頷いてから、それでも黙々と砂糖部分を口に運ぶ輝夜を見ながら、私はよしよし、と内心で頷いていました。慧音はこういう風に教え子をみているのかなァと、ワケもなく不可解な親近感を覚えたりしたわけで。
「……貴女は食べ物とか買わないの?」
不意に輝夜は私に問いかけました。なんとあの天上天下唯我独尊ナメんなよ丸出しの輝夜にも空気を読むということが出来たのです。そうです。輝夜が、焼き鳥やらたこ焼きやら焼きそばやらを貪っている間、私は何も食べていなかったのです。それを訝しんだのでしょう。蒼天の霹靂でしたが、私は、
「生憎、私は家金住民票全てがないの」
なんともいえない言い訳をしてしまいました。家と呼ばれる住処と、ある程度のお金はあります。住民票はありません。
「そ、じゃあ。すこし分けてあげる。ほら」
そう言いながらリンゴ飴の取っ手を私の方に向けました。
……どうしたというのでしょうか? こんな輝夜は気色悪いを通り越して、私が鏡の国にでも迷いこんでしまったと思い込むほどの豹変っぷりです。そしてその優しさが痛いです。誘ったのが私なので、私も空気を読み、
「……じゃ、一口だけいただくわ」
そう告げてから、輝夜の齧っている球体の反対側を一口だけもらいました。しかし拙いことに砂糖の固形部分を噛み砕くと同時に、誤ってリンゴの食物繊維部分も抉り取ってしまいました。気づいたときにはもう遅く、咀嚼されたものが食道を通って胃袋へと落下していく感覚が訪れます。
「う……ゥ」
気持ち悪い。身体が全力で拒絶します。『食べてはいけない』と、『今すぐ吐き出せ』とも。飲み込んだと胃が脳に指令を送った直後、慣れようのない吐き気がせり上がってきます。歯を砕かんばかりに思いっきり食いしばり、生唾を何回も飲み込みました。喉で百足がゆっくりとずるりずるりと這い回ります。目がカチカチになるまで見開いても、気持ち悪いものは気持ち悪いです。手先が震えて、痙攣して、まるで狂人の様な動きですが、ダメです。限界です。こらえきれません……。慌てて、リンゴ飴を輝夜に突き返すように差し出しました。
「……? 大丈夫?」
怪訝な顔をする輝夜を私は大丈夫だから、と片手で静止しながら、近くの林に駆け込み、おもいっきり嘔吐しました。甘酸っぱい液体が喉から一直線に口外へと溢れ出ます。体内が蠕動しているのがよく分かります。直後に粘液とも液体ともつかぬビタビチャッという落下音が、妙に耳にこびりつくのです。それを恥じること無く何度も何度も、舌が抜け落ちそうになるまで吐き続ける私は、嘸滑稽でしょうね、などとも思います。とろみを帯びた吐瀉物が薄暗い木陰に撒き散らされました。とは云うものの吐き出すものが先程嚥下したリンゴ以外はまったく何もないので胃液が主成分でしたが、無事に木の栄養になってくれると嬉しいです。ようやく収まったのか、呼吸も落ち着いていき、口から滴る最後の一条の粘り気のある漿液がゆっくりと地面に着陸しました。それを確認してから袖で口を拭いました。その瞬間ほっとしました。良かった血は出ていないね。
……誤解しているかもしれませんが、別に輝夜がくれたものだから食べられないということではないのです。ただ近頃……といっても百年程前からですが、食べるという行為そのもの自体が、私にとって忌むべきものになってしまったと申されますか、なんと言いましょうか。食べることは出来ますが、すぐに吐き出してしまうのです。食物から栄養を取るということ自体が、畏怖されるべき悪行のようだと錯覚してしまうのです。体中が拒絶していまうのです。ふと自分の視界が歪んでいることに気づきました。目に涙を浮かべています。自分の荒い呼吸が非常に五月蝿いのです。ゼェゼェとまるで病人の様に、奇怪に酸素を取り入れる動作そのものが気に触ります。眠りに差し掛かったときに耳元で乱舞する蝿の羽音ような……ともかくざわざわします。とっても耳障りで……自分の息が胸糞悪いです。いっそ殺してしまいたい。
少しばかり、休まないと駄目みたいです。そう判断して息を殺して暫くその場に蹲りました。どうも満足に座ることすら出来ないので手足を投げ出して、大木に寄りかかることにしました。唇の端から暖かい唾液と胃液の混合物を垂れ流しながらも、なんとこさ息は整ってきました。
五分も経ったころでしょうか。口から声が出ることを確認して、平気を装い輝夜の元へと戻ります。
「妹紅、どしたの?」
「いや、なんでもないよ」
抑揚の無い声で答えるのが精一杯です。
「ふ~ん。それよりもこのかき氷というのはとても不味いわね。これもあげるわ」
……かき氷なら大丈夫かな。ワケの分からない期待をしつつ、輝夜から透明なカップ受け取りました。真っ白に盛り付けられた雪のような氷の上に、真っ赤な液体が掛かっています。げんなりしそうですが、それをストローで口に運びます。……口の中で溶かしてからなら、なんとか食べられそうです。
かき氷を口に少量ずつ含みながら心底、やっぱり来なければよかったなァ、と思いました。
周囲の騒々しさの中を闊歩するたびに、強い嫌悪を感じます。横の輝夜の輝かんばかりの笑顔やら驚きやらを横目で見るのもまた然りです。誘ったことをひどく後悔しました。
人のざわめきが、人と触れ合う喜びの声が、堪らなく辛いのです。
歩けば歩くほど不快になるこの祭ばやしの中、私は不機嫌と不体調を必死に韜晦しながら不器用に歩いていかなければならないのです。それは人生とよく似ています。
昔のエライ人は言いました。人の救いは死のみだと、死だけが平等に訪れる解放の幸せであると。
だとしたら、私には救いがないのです。それは……なんといいましょうか、とても腹立たしいです。誰にこの怒りをぶつければいいのかも分からないまま、私は今日も生きています。生きている、と表現するのが正しいかどうかは神様にお任せします。
もしかしたら、ここに在るだけなのかもしれません。びっくりなことに今こうして考えている私はモノなのかも知れませんね。そこにあるリンゴ飴だとかぬいぐるみとかと何も変わりません。もしかしたら、リンゴ飴も何かを考えているのかもしれませんよ。
嗚呼……ここで思考に浸る藤原妹紅と名乗る女は一体誰なのでしょうか。私はどこから生まれてきたのでしょうか。父も母も存在しない藤原妹紅と名乗るこの人の皮を被った化物は一体どのように発生したのでしょう? 土から生えてきたのでしょうか。それとも、水から泡のように浮き出たのでしょうか。もしかしたら藤原多比能という女性が産み落としたのかもしれません。空虚な林檎が孕んだ、身代わりとも謂うべき藤原妹紅。うん……そのほうが雅ですね。よし、そうしましょう。私は林檎から生まれました。
視線を落として地面とにらめっこをしながら下らない考えに浸ります。
「あ、妹紅と輝夜さん! いいところに……!」
聞き慣れた声に応じるべく、視線を人がウジャウジャいるという私の不愉快な原因そのものの方向に向けると、慧音が血相を変えて私のもとに走り寄ってきます。変わらず背筋が凍るほど美しい白銀の髪を惜しげもなく左右に靡かせています。紺色に紫陽花を誂えた浴衣姿は、贔屓目に見てもとても可愛いと思います。いかにも女性らしい肢体と私を見比べると……なんともいえないような気分になりましたが。彼女の高揚した顔も走り乱れた浴衣姿と相まって二度、綺麗だなァと感じました。
「何かあったの?」
隣で輝夜が詳細を聞きました。
どうやら、白玉楼組が迷惑をかけているみたいです。止めてください。というのが言いたいことみたいです。
気乗りはしませんが、慧音と付き合っているふりをしているため、そのお願いを受け入れました。人で溢れかえっている大通りを全力疾走します。そして一つの鬼哭啾啾の塊を見つけました。その中心で踊っているというか暴れ狂っているのは、外国語でなにやら叫び散らす妖夢でした。頭に三日月型の紙製仮面を貼りつけて、服装も全体的に青いです。それに……なにやら刀を左に三本右に三本持っています。あれでどうやって切るのでしょうか?
「筆頭っ!!」
横で輝夜が叫びました。
「なに……輝夜知っているのか?」
「奥州筆頭よ……妖夢、恐ろしい子ね……」
「最近妖夢が、やけに薄い冊子の本を読むようになったと思ったら……精神不安定な年頃なのかしらね」
死人嬢(ゆゆこ)が麦種片手に呆然と呟きます。いや、あんた妖夢に飲ませただろ、と内心呆れました。
「うわぁ半霊桃色だ……しかも縦横無尽に暴れ狂ってる」
見れば妖夢も茹でダコ状態です。それをみて幽々子は一言、
「あらあらまぁまぁ、真面目な子ほど酔うとアレっていうけど……駄目な子ねぇ」
面倒くさいなァ。
「Are you ready!?」
妖夢は無差別に人に斬りかかろうとしています。
周りの人は怯えながらも、この状況を楽しんでいるように見えます。老若男女問わず笑顔をのぞかせヤジを飛ばします。
妖夢をなんとか宥めると、取り巻きは私たちを褒めてくれました。
…………。
…………。
……なんだかなァ……。
騒動に首を突っ込めば突っ込むほど、私の心はまるで氷の様に冷え固まっていきます。
常々思っていることですが、喧騒は幸せの象徴でもあります。人と人とが触れ合い分かり会えたという虚像を映しだす言葉の群れとでも謂いましょうか。
幸福が恨めしい私が陋劣なのは重々承知です。そしてそんな自分が嫌いなのです。幸せになりたい自分は、幸せに嫌われているので、このような空間では疎外感しかありません。
いつのころからか私は、どこか客観的で知ったかぶっているようでもあります。とっくの昔に当事者であることに疲れ果てているのですから、第三者の視点で見ても構わないというもっともな持論です。その感覚はどこか自分が自分でないような、例えるなら将棋を見ているかのような浮遊感の中に私は漂っているのです。
そんな私のふわふわと浮ついた気分を絡め取ろうと、数人の男が近寄ってきました。
……口調から察するに私を抱きたいようです。ふ~ん。
……。
……。
特別、断る理由もないので、とことこと付いていくことにしました。彼らの朝顔の様な笑顔を見ているうちに、人が本当に嬉しいことをしている時はこんなにも醜い顔をしているのかァ、と思い知らされました。歩いている最中も、彼らは服の上から私の躰を、喩えるならナメクジが飛蝗をゆっくりと通過するかの様な手つきで愛撫し続けました。悦楽とも気持ち悪いとも快感とも、そんな感情とは縁もゆかりもございません。ここにいるのは私ではないのですから。
誘われた先は喧騒から一方後ろの鬱蒼と茂る木々の中です。もう秋だというのにジメジメとした陰鬱な、まさに怪しい事柄をするにはお誂え向きの場所です。
手始めに彼らは無理矢理接吻をしました。彼の舌が私の口内を侵食します。カチカチと互いの歯が当たってしまいました。私の舌がちろりちろりと動きます。相手の歯やら頬の内側やら舌の裏側やらに当たります。それに加え彼の唾液で脳髄を溶けるかのような感覚が遥か過去から蘇ってきました。アア、嗚呼……あの時もこんな感覚だったなァ。女衒はお客様を喜ばして銭をもらう職業なのですから、私の出来る限り悦ばしてあげるべきであり、それが礼儀です。しかし流石に息が苦しくなったので口惜しげな表情で唇と唇を離すと、透明な漿液が舌先からとろり、と滴りました。こういう時に恍惚の表情を浮かべると男性は嬉しいらしいです。そう十壱番目の母に教わりました。私は一人の彼の首元に吸いこうと、
「――――――もこう?」
驚いて声のした方を目だけで追って見ると、白い顔だけが覗いていました。実際には途方もなく長い黒い髪が闇夜に溶けているだけなのですが、今の私の虚ろな感覚では青白い能面が宙に浮いているようにしか見えなかったのです。凝視してみれば紛れもなく、先程まで騒ぎの乗じていた、蓬莱山輝夜なるお人です。
輝夜は何やら罵りながら、私の手を引き、彼らを下衆野郎と毒突き、引き裂きました。私の手首を千切れるぐらい強く掴みながら、元の道に連れていこうとし、その際輝夜は一人の頭を粉々に砕きました。彼らの脳漿やら頭蓋の一部やらは私の頬に降りかかったので、人間の頭はとても暖かいなァと新鮮な驚きを得てしまいました。やっぱり、考えると熱が放出されるのでしょうか……などと邪なことを考えながらグイッと先程、自分の体液を拭いた時と同じ袖元で拭うと、どす黒い太い一本の紋様が出来てしまいました。それで気が付いたのですが、上衣に赤い色の反転が水玉模様の如く点々と付着しています。……他人の血で汚したというのと、自分の血で汚れたというのでは、どっちのほうが慧音に怒られないかなァ?
「なにしてんのよ……あんた」
輝夜が目を鋭くさせて私を問いただします。今までに見たこともないような形相をしています。これを般若と言わずしてなにを般若と言えばいいのでしょうか。私はこんな輝夜を今まで見たことがありません。ですが、なぜだか私は反省しなければいけないような気がしました。
「……」
「あなたね、少しぐらい自分を大切にしなさいな……あ、その格好は淫行罪で捕まるわね」
言いながら、輝夜は私の開いた胸元やら襟やらを整えてくれる素振りをしたので、別段拒絶することもないと考え、素直に彼女にされるがままにされました。テキパキと彼女の細くてしなやかな指先が私を普段の私に戻していきます。
その状況を私は、まるで着せ替え人形そのものだと思うと堪らず口元がゆるみ、笑ってしまいました。
「……何よ。なんで笑ってるのよ」
……別になんでもないわ。
答え、輝夜を見下ろしました。少しだけ亡き母上を思い出したのは内緒です。
●
夜は怖い、というと語弊があるかもしれません。夜に眠るのが怖いことなのです。そしてなにより朝起きるのが怖いのです。明日の私はどうなっているのでしょうか。打ち寄せては掻き消える波のように、現実は往々にして不安定な釣り照明なのですから帰納法の様に上手な規律が出来ていません。したがって昨日と今日が同じだったからといって、明日が同じという保証には到底なりえないのです。慧音に教わった例えを出すならば『なんとかの猫』……なんとかは忘れてしまいました。
明日の私は今日の私なのでしょうか。不安で不安で堪りません。
夜はとても怖いものです。
だから私は夜はいつも起きていることにします。少しでも、私が私でいる時間を長くしておきたいから。
既に満月は高く聳え、薄雲と花火の灰煙が紺色夜空を覆います。滅び行く星星も例外なく包まれましたが、それに少しだけキラキラと瞬いています。
私たちは、人気の全く無い神社の石段に私たちは腰掛けていました。無論私と輝夜です。冷え冷えとした人気のないような幽境の神社に、ひんやりとした石作りの階段の椅子は、人形の如く冷徹な私にも堪えました。なによりも真横に座る輝夜の無表情が、鉄格子のように私には見えたので、身震いがしそうです。まだ輝夜は怒っているのでしょうか。その横顔を覗くことは躊躇われました。
唐突に一陣の涼しい風が私の髪を梳かし、何本かの髪が私の首筋を撫でました。同時に花火が僅かに瞬き、一瞬後に色が私の耳を擽ります。
「……綺麗ね」
輝夜が小さく呆然と呟きます。私は、綺麗だね、とは答えずに思考に浸りました。
今まで見たことが無かったのでしょうか……そうか、ずっと篭もりっぱなしだったから外の文化を知らないのか、と一人納得しました。
私はあの出来事以来、ずっと外でした。
いつの時代も世は醜く、私の様な小娘が人間として生きていくにはとてもとても非道い世の中でした。
けれど全く正反対で、暢暢と生きていた輝夜に対してはあまり憎悪しません。近親憎悪もまた然りです。かと云って好きというわけではありません。彼女の幽閉同然の境遇を憐れんだことも一刻たりともありません。
何故、今になってこんなことを考えているのでしょうか。そして私は輝夜のことをどう思っているのだろうという、極々些細な自分の感情と向き合うなどという暴挙に出ているのでしょうか。しかし、今はそれに従ってみましょう。
もちろん愛してなんかはいない。
かと言って憎んでいるわけではない。
唯、淡々と私と輝夜という二人がいるだけ。
愛憎なんかとは全く違う、もっと深い感情で輝夜のことを思っているのでしょうか。もっと深いところってどこでしょう? 頭? 心? 身体?
やっぱり心なのかなァと結論をつけようとしていると、横から輝夜が私を呼びました。
「妹紅……いや、今は多比能って呼んだほうがいい?」
……どっちでも構わないわ。今の私はどっちでもないような気がしますから。多比能でも妹紅でもない私。
「そう、じゃあ多比能って呼ぶわね……貴女、戻りたいって思ったことはあるかしら?」
……どうだろうね。昔の私なら即答だろうけど、今の私にはわからないなァ。何せ何も考えてないのですから。自嘲一つ不敵にクスッとね。
「私たちはもう、戻れない」
……そう。本当に今日の輝夜はなにを言っているのだろう、心の底から思います、気持ち悪い。それは覚悟していた現実をありありと同じ立場の少女からさも全てを知ったかのような口振りで告げられたからなのかもしれません。
「私たちは、永遠を生き続けるの。刹那に咲いては散る花火を見ながら」
……そんなことは言われなくても分かっています。囀るな鶯が、と罵倒したいです。だけども今日は喧嘩厳禁ですから、八方美人で分かったようなふりをしている私はグッと堪えます。
「人なんて私たちにはとっては花火みたいなものよ。刹那綺麗に咲いたかと思ったらすぐに消し炭になって散ってしまう。でも、だからこそ美しいのよ。永遠という醜い私たちは見守ることしか出来ない。そうやってずっと見ているの。終端の刻までね」
そっか。
考えてみれば、それが真理だと気付かされました。博麗霊夢、八雲紫などなどが滅び去った後、否……それよりも、もっともっと先の未来も私たち二人は変わることなく、存在するはずなのです。そうなったら、私と輝夜の二人だけの幻想郷。考えると……なんて世界なのでしょうか。まるでアダムとイヴのようです。
慧音もいない寺子屋で教師の真似事をしてみたり、物も売っていない商店街で買い物をしてみたり、医者がいない匙屋でお薬を処方されたり……でも、必ず輝夜が隣にいるのです。
想像してみても、不思議と怖くはありませんでした。今のように隣に輝夜が居ると考えたら、なんとなく気が和らぎました。でも、
「少しだけ話を聞いてくれる?」
そんな私を誤魔化すために私は口を開きました。……なにを言おうとしているんだろう。
「…………なに?」
「悠久の昔話、ある少女がいたんだ。彼女は貴族の娘だった。琴の琴を上手に奏でる度に母親に褒められ、それを照れくさそうに笑ったりして。大和和歌の暗唱をするたびに父親に頭を撫でられて、それを誉と感じる極々平凡な貴族の娘だ。そんな少女はふとしたきっかけで不老不死になってしまった。本当に些細な……湖に小石が一つ落ちたぐらいの微細な出来事。でも確かになってしまった。初めこそ少女は喜んだ。自分が特別で、しかも皆の憧れの不老不死になったなんて、それこそ死んでも死にきれないぐらいの喜んだ。天運が自分にあって、世の中は自分を中心に回っているんだって妄信したりもした。でも、母が死に、父が死に、兄達が死に、姉達も死んでいく。気がついたら少女は独りだった。誰もいない黒い空間に取り残された。誰もいない、誰にも理解されることはない、孤独に打ち震える少女は、やがて訝しがられ、忌み嫌われるようになっていった。そこで少女はようやく気づいたんだ。……世は確かに自分を中心に廻っている、けれどもそこには自分独りしかいないんだって。それから少女は外界に異常なまでに憧れ、必死にすがりつこうとした。だけど何度も何度も失敗した。失敗なんてものは最初から分かっているはずだったのに、万が一の奇跡を信じて、幾百幾千も試した。愛を享受たり愛を拒絶して……躰を大事にたり躰を傷めつけて、殺めたり助けたり、犯したり冒されたり、恨んだり恨まれたり。そんなことを千年近くやってきたんだ。――ねぇ輝夜、この物語はどこで終を迎えるの? どこで綴じらるの?」
吐露吐露と、私は何を話しているのでしょう!? 答えなんて在るはずないのに……。
「自分で考えなさいな」
輝夜は『祭りに行く』と答えたようにそっけなく私に告げました。そう言ってくれた輝夜の横顔がとても優しくて……私は、私は今にも泣き出しそうになりました。
実際には少しだけ涙が溢れていたかも知れませんが、私は分からないぐらい顔が熱かったのです。
なぜでしょう。優しい偽りの言葉なら聞き慣れた筈なのに。
「……私は自分が嫌いだ。嫌いな自分が嫌いだ」
ぐしゃぐしゃな顔とぼろぼろな声で誰にいうでもなく、吐き出しました。
「私と同じね、私も貴方のこと大キライ」
「誰かお願いだから……私を殺してください」
「莫ァ迦」
輝夜は最後の一言だけ私の方を見ながら言いました。とても優しい瞳が私を写していました。そこには泣きじゃくっているまるで子供の様な奴が居ました。月光に照らされる彼女の天使のような微笑が私を侵しました。否応無しに侵食されます。
「……ねぇ、久しぶりにアレやらない? お互いの首を絞めあうやつ……。先に気を失ったほうが負けね」
輝夜がそんな提案をしてきました。輝夜なりの慰めなのかな、などとも思いました。
私は壊れたようにその意見に縋り、首を上下させました。私の了承行動を見るが早いか、輝夜の細くて綺麗な指が私の首に絡みつきます。お返しに私も輝夜の首を両手で包みます。とても暖かく輝夜の呼吸が文字通り手に取るように分かります。
せーので、互いにゆっくりと首を絞めていきます。ゆっくりと束縛されます。徐々に目がカチカチになって、喉からぴるぴると何かが口先まで這い上がりました。
苦い唾液が私の唇を湿らせていくのでした。暗転。
●
私たちは合わせ鏡。私と輝夜は永遠に存在し続ける似たもの同士。
どっちかが欠けたら、片割れはきっと死んでしまうでしょう。見てくれる人がいなくなってしまうのだから当然といえば当然です。ですが、二人共死ねないのです。
二人だけになった世界は、どんなに幸せなんだろう。
●
「……ん……ゥ」
五月蝿いなァ。ドンドンという微かな太鼓という体鳴楽器を打ち鳴らす音が聞こえます。そよそよと嫉妬しそうなまでに優しい軟風が横になっている私を通り過ぎ、横に茂る竹林を掻き撫でます。ムクリと倦怠感に包まれながら嫌々体を起こすと、眩しい夕日に目を刺さされました。いけません、夕方まで眠ってしまうとはなんていう怠惰なのでしょうか。きっと慧音がいたら怒るに決まっています、そうに違いありません。
……なにやら首に違和感を感じます……寝違えたのでしょうか?
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辛くなったら、隣にいてください。
切りたくなったら、止めないでください。
苦しくになったら、そっと背中を撫でてください。
死にたくなったら、何も言わずに見ていてください。
そうしたら、私はあなたに干渉しませんから。
気持ちの悪い私は消えますから。
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おわり
てるもこ協会って何。
投稿された時期もなんだか背後に巨大な存在を感じる。
マイナス要素多いな。
しかし文章が達者に狂ってていいんじゃないかなどと考えた次第。
無茶しやがって
諦念交じりの異形な寂寞が滲む如き面白さがあります。
が、何だか話の方向性が少し不統一かなという気がしてしまいました。
ずっとシリアス一本槍だと疲れるかもしれないし、
流れに緩急をつける意味でもゆるくて感じの描写はあっていいと思いますが、
某BASARAのパロディを挿入する必要性はあったのか?って感じです。
たとえば祭りの場面でさらっと進行し、
後半の重苦しい場面で比較的描写を濃くしてみるとか…でしょうか。
しかしながら、この互いに救われもしない妹紅と輝夜の関係性はかなりツボでした。
まるで出口の見えない相互依存的なてるもこですが、
作者さんの書く二人をもっと見てみたいなと素直に思えるのです。
説明しろよ
痛々しさがひしひしと伝わってくる妹紅の一人称がなんだか新鮮でした。