山頂に新しく神様が来てからというもの、妖怪の山はいっそう賑やかになった。
ところどころから人工的な煙がもくもくと上がり、今日も私の仲間は面白いものを作ろうと熱心に励んでいる。
天狗様達も空を駆け回り、なんとも賑やかだ。
私はというと、暇つぶしに川沿いを散歩しているしだいだ。
妖怪は寿命が長い。躍起になって何かに取り組めば、することが本当になくなってしまう。だから、暇つぶしはとても大事なのだ。
妖怪の山が賑やかになり、木々が燃料として切り出されるようになってもまだ、妖怪の山の森には無数の木々が生い茂っている。
そして、この森の川沿いにはごく稀に外の世界のモノが落ちている。神社が越してきてからその頻度は結構増えた。
結界でも捻じ曲げて入ってきたのだろうか?一河童である私にはどうも想像がつかなかった。
「あら、にとりじゃない。こんなところほっつき歩いていったい何をしているのかしら?」
腕を組み、自分には想像もつかないことを考えながら歩いていると前方に人影が見えた。
暗い色をしたドレスに身を包み、異様な空気を漂わせる人物(正確には神だが)、鍵山 雛だ。
「ん、散歩よ。ついでに何かないかなと思ってね。雛は相変わらず厄いわね」
雛は周りの厄を集める神様だ。雛の周りには常に厄が漂い、人間であろうが妖怪であろうがその厄が降りかかってしまう。
だが、そこは幻想郷一を自負する発明家、私、河城 にとりなので自分が発明した機械でどうにかしている。
私と雛の間柄は結構長い。一時期は私も厄のおかげで厄介なことに見舞われたが、今では笑い話だ。
雛は厄神だ。先ほども言ったが、雛の周りにいると厄が降りかかる。そのせいで、雛は人間からも妖怪からも感謝され、倦厭されてもいた。
はじめは私に近づくなとおせっかいなことを言ってきたが、そんなことはどうでもよく私の発明で厄が私に降りかからぬようにしたいという好奇心からはじめは近づいていった。
今考えてみるとなんとも空気の読めない妖怪だ。うん、でもどうでもういい。
「あらそう。さっきもう少しいったところに何か変なモノが落ちてたわよ?にとり、興味あるんじゃない?」
雛は少しにやけながら言った。もちろん、興味はある。大いに。
なぜなら、雛の言う変なモノとは外の世界のモノであることが多いからだ。
前になぜ雛の周りにはこういうものまで集まってくるのかと聞いたとき、雛は持ち主に捨てられて厄でもついてたんじゃないかといっていた。
私から見ればお宝であるのに、それを捨てるなんてまったくもって信じられないものだ。
まさに、捨てる神あらば拾う神あり、だ(神は私ではなく雛だが)。
「ホント!?雛!案内して!」
私はこぶしをぐっと握り、目を輝かせながら雛に向かい、声のトーンを上げて言った。
「やっぱりね。いいわ、行きましょう。こっちよ」
雛はくるりと後ろを向き私の手をとり、私たちはそこへと向かうことにした。
その外の世界のモノのあるところへ、だ。
しばらく歩き、そこについてみると案の定なにやら見たこともないモノがそこにたたずんでいた。
硬く、冷たい身体で、丸っこい体に長い首、そして首の先には横に広い口のようなもの、そして極めつけは先が二股に分かれている尻尾である。
この尻尾は知っている。この尻尾の先端を湖の中にいる電気ナマズの妖怪の出す電気で動きだすのだ。
私自身、電気ナマズの出す電気は大嫌いだ。迷彩は壊れるし、なによりも、痺れる。
外の世界の機械を動かすために、いちいち電気ナマズに頼むのも面倒なので、私はこの外の世界の機械のためだけに電気ナマズから電気を大量に買っている。
買った電気を溜め込むものは、人間の住む村のはずれにある変わった店主の店に行って最近買ったものだ。人見知りの激しい私にとってはかなりの冒険であった。
「これ?何かしらねぇ・・・何かの生き物のオブジェかしら?」
雛は不思議そうにそれの口みたいなところを覗きながら言った。
雛も私とよくいっしょにいるので、外の世界の機械は電気を使わなくては動かないことを知っているの。
危険性が無い以上、それを知りたいと思うのは生きとし生けるもの(死人も入るか?)にとっては当たり前のことである。
「ん~。二股の尻尾があるから何らかのからくりがあるんだとは思うんだけど・・・」
私はそう言い、村はずれの店で買ってきたものを取り出した。
私のリュックのなかでもかなりにスペースをとる厄介な大きさのものだ。
「それ”ばってりー”って言うんだっけ?変なものよね。そんなものの中に目に見えない力を溜め込めるなんて」
雛は頭だけこっちに向けていった。確かに、私たちには電気というものはよく理解できていない。
それがどうしてこの箱にだけ溜めることができるのか、理屈はわからないが、今はそんなことはどうでもいいだろう。
雛は口の中をずっと覗いているが、何か入ってでもいるのだろうか。
私はそんなことを考えながら二股の尻尾を箱に取り付けた。
すると、それは急にゴーッ!とけたたましい大きな声を上げ、口を覗いていた雛に襲い掛かった。
雛は急なことに驚き手をバタバタとさせていた。
なにやら、喰われているようにも見えた。
「キャー!食べてる!私の髪食べてる!にとり!」
急にけたたましい音とともに雛を襲いだしたことに私も驚きながら、この尻尾のあるモノはバッテリーから離すと活動をやめることを知っていたので、とっさに尻尾を箱から離した。
すると、けたたましく大きな声を挙げ、雛に襲い掛かっていたモノはたちまち活動を止め、また静かになった。
あわただしさの後には静けさがくる。そう、それはもう気まずいほどに、だ。
雛は、というとしりもちをつき、目にうっすら涙を浮かべていた。むぅ、なんともかわいらしいやつだ。
そのままの格好で雛は言った。
「・・・ひどい目にあったわ。にとり、あなたのせいでしょう・・・?」
服をパンパンとはたき、立ち上がると雛は私に迫ってきた。
雛は怒ると周りの厄がいっそう大きくなるので、迫力はそれはそれはすごいものであった。
「いやぁ・・・まぁ・・・その・・・」
私はというと、なんともばつの悪そうな感じで相槌を打っていた。
雛の怒り具合に圧倒されていたのだが、なんとも情けないことだ。
「そ、それにしてもこれ、すごい大きな声ね!雛、襲われてたけど、大丈夫だった?」
私はどうにかして責任を雛を襲った張本人である外の機械にそらそうと雛に問いかけた。
雛も、ばつの悪そうな私を見たからであろうか、やれやれといった感じで表情を変え、返答した。
「うん・・・大丈夫ってことは大丈夫なんだけど・・・びっくりしたわ。なんか、吸い込まれそうな感じで。髪、痛んでないかしら?ああ・・・もう・・・」
吸い込まれそう?私は思った。
外のモノはなんだかんだ言って何か目的があって作られている。
手元を照らす為の丸くて透明なガラスの球体(これは私もすごく重宝している)、やたらと電気を喰うものを冷やす為の大きな箱など目的があって作られているものなのだ。
なのに、これは何だろうか?吸い込むという発想は、幻想郷においてはあまり無い。
なぜならば、人間は物を利用し、妖怪は物を壊す。これは、互いに外にベクトルが向いているからである。
吸い込むというものは、たとえば雛のように神様など超がつくほどのお人よししか使わないだろう。
外の世界の人間は幻想郷の神様レベルのお人よし集団なのだろうか?
それにしても、この機械は雛を襲った。
う~ん。どっちなんだろうか。これは頭を抱えさせるものだ。
と深く考え込んでいると、雛はなにやら機械をにやにやしながら撫でていた。
その様子があまりにも面白かったので、私はついつい笑ってしまった。
「雛、あなたそれ気に入ったんでしょう?さしずめ、同じく何かを集めるところが自分と似ているとでも思ったんでしょう?」
私が得意げにそういうと、雛も顔に笑みを浮かべながら言った。
「あら、にとりにしては勘が冴えてるじゃない。なんか、この子の存在がけなげに見えて急にかわいく見えてきちゃったわ」
雛は痛く気に入ったようだった。
しかし、私が見つけてきた外の機械はものの見事に魔改造され何もかもが妖怪級にパワーアップされる運命にあるのだ。
ご多分に洩れず、この機械も魔改造を施す予定だ。
「残念だけど、それ改造させてもらうわよ?」
含みを持たせた感じで私は言った。私は実はSなのかもしれない。
すると、雛はみるみるうちに表情を曇らせた。
考えていた反応とまるで同じだったので、私はなんだかしてやったりという気持ちになった。
うん。やっぱり私はSだろう。
「・・・やっぱり、これもイジるのね・・・」
雛はこういうときに押しに弱い。
これも彼女の性格からなのだろうが、私の知っている神様はみんな基本お人よしだ。
相手の気分を害さないようにするのは、特に雛にはよく見られると思う。
そこで、私は少し雛について考えた。
雛は神様なのでもちろん私よりも長く生きている。
私だってそれなりには生きているつもりだが、たぶん桁が一つや二つ違うだろう。
その長い間に、彼女はどういう暮らしを送ってきたのだろうか。
近づくだけで災厄に見舞われ、好んでは誰も近づかず、ひどい場合は会ったときに逃げる者もいるだろう。
そういうこともあり、雛はこの森でずっと一人で生きてきたのではないだろうか。
私は妖怪だが一人一種の妖怪ではない。
河童にも社会があり、仲間がいる。
しかし、雛にはそれがいない。厄を集める神というのならば、倦厭されながらも信仰がなくなることはまずないだろう。
永遠のときの中で、ずっと一人。
私と雛は妖怪と神様とまったくの別種だから、根本的に考え方が違うのかもしれない。
でも、仮に自分がそうであったのなら私にはそれを耐えうることが出来るとは到底思えない。
そう思った瞬間、私は複雑な感情を覚えた。
形容しにくいこの感情をなんと名づければいいのだろうか。
それは、今の私にはたぶん考え付かないだろう。
でも、今は私がいる。せめて、私が生きているときは雛と一緒にいようと思った。
「どうしたの?急に寂しそうな顔して?」
雛がそう聞いてきて私ははっとした。
理系というものは一度考え出すととことん考える節があるな、と私は思いながら答えた。
「いや~、これからどういう改造をしようか考えてたのよ。思いつかないから少し悩んじゃった」
そういうと、雛はこの機械がかわいそうだ!とプリプリ怒っていたが、いつものことなので結局は改造することになった。
「そうだ雛!今からうちに来ない?一緒にお茶でも飲みながらイジくり倒そうじゃないの」
後日、村はずれの店の店主にこの機械の名前を聞きに言ったところ『掃除機』というらしい。
なるほど、『相似機』か。言い得て妙だな、と思った。雛の気に入った、雛に似たこの機械にぴったりだ、と。
それから更に数日後、改造を施したこの相似機はあまりの出力のせいで一騒動起こしたのだがここはいつかの機会にでも。
雛もこのくらいのじゃじゃ馬だったら、と思うと背筋がゾッとしたのは内緒である。
でもまぁ謝っちゃうぐらいでしたら見直しましょうよ(汗
殊勝な態度も時と場合によってはその通りにとられませんから。
作品に関しては、どちらかといえば『ちょっと短すぎ』といったところでしょうか。雛とにとりの関係を表すのに、回想という手段を用いて簡潔に説明してしまい、話の山場を大幅に削ってしまっていますからね。
ここからは文法関連の突っ込み。
「!」や「?」のあとは、半角のスペースでもいいので開けましょう。文が詰まってしまい読みにくくなってしまいますから。
あと最後ににとりが「ソウジキ」と聞いた部分がちゃんと「掃除機」に変換されていることに違和感があります。そのあと「相似機」とにとりの中で誤変換してしまっているので、平仮名で書いたほうが違和感が無かったかな、と思います。
作品の雰囲気は悪いものではないですので、今後も期待してます。
友人に見せたら
「河童のことなかなかわかってるじゃん」ですって
欲を言うと
スペースと開行をもうすこしうまく使えればなーと
ともかく おもしろかったよありがとー