「咲夜さん、私を使い魔にしてください!」
「とりあえず落ち着きましょうか、うん」
そろそろ寝ようかなと思ったら、いきなり小悪魔がやってきて、これである。
確実にベッドが遠のいた。
そもそもアレだ、ドアをノックされたときに帰ってもらうべきだったのだ。開けた途端に滑り込んでくるとは……。
私の部屋に堂々と居座る小悪魔は、相談に乗ってくれるまで帰りませんからね的雰囲気をぷんぷんと臭わせている。
とってもめんどくさそうだ。これ、ひょっとして徹夜になるのかなぁ。胃が痛む。
「で、何がどうしてそうなるの?」
そもそも小悪魔はパチュリー様に使役される身だ。二人の関係から考えて、パチュリー様が死にでもしない限り、使い魔契約の解除なんて無いはず。そして仕える主人がいる限り浮気できないというのが、使い魔というもの。
つまり、小悪魔は私と契約できないはずなのだ。
「それが、パチュリー様ったら、私との契約を解除するって言うんです」
小悪魔は半ベソである。
別に解除されたって、魔界に送り返されるだけで、死にはしないんだからいいじゃない。
そういう感じのことを言ったら、怒られた。
「なぁーにを言ってるんですか! 私が生まれて初めてお仕えした場所ですよ、紅魔館は! 最期まで添い遂げたいじゃないですか!」
「そ、そう。ごめんなさい」
最後のほうが不穏なニュアンスだったのは気のせいだろうか。多分わざとなんだろう、小悪魔だし。――そんな悪戯仕込めるくらいなら、案外余裕あるんじゃない?
「まあ、それはともかく。何だって契約解除なんかになったの?」
「それがサッパリ。指示された本を棚から取って持っていったらいきなりですよ」
「本?」
「ゴッホの画集とコッホの伝記です。何でそんなもの読もうと思ったのやら」
偉い人の考えることは分かりませんねぇと言わんばかりに、小悪魔は肩をすくめた。
私には彼女の考えてることのほうがよっぽど分からない。……いや、パチュリー様もどっこいだった。ひどい主従だ。
「ふぅん。で、何で私を?」
「ええ? 考えても見てください。パチュリー様は置いとくとして、まずお嬢様と妹様」
そう言って、小悪魔は指を二本立てた――親指と薬指を。辛そうだ。
「命が幾つあっても足りませんって」
立てた指を折った。
「美鈴さん」
また指を立てた。今度は一本――小指。
ふざけてるのかふざけてないのか良く分からない。
「私だって主人は選びます」
バッサリ叩き斬って折った。ひどい言いようだ。選ぶんだったら何故パチュリー様にしたのかと。アレも大概ひどいだろうに。
「そこで咲夜さんですよ。適度にカリスマがあって適度に安全で、適度に強い。何で私貴方に仕えなかったんでしょうね……」
「それ、私の意志で拒否していい?」
「何を言うんですかッ! 同じ釜掘った仲じゃないですかッ!?」
最悪だ。この子最悪だ。
いくらなんでも、その発言はひどすぎる。
「やっぱり、パチュリー様と和解して、契約を続けていくべきだと思うわ」
「うう、でも怒らせた原因が分からないんですよお……」
何故こっちをチラチラ見る。
何故そんな期待した目を向ける。
その身体から、相談に乗るまで帰ってあげませんよと言わんばかりの空気がぷんぷんと漂っていた。
「……ああもう、分かった分かった。一緒に考えてあげるから、直前の状況を教えてちょうだい」
「ありがとうございます、えっとですねぇ――」
「小悪魔、小悪魔!」
「はいはい、灰かぶりはシンデレラ。何でございましょう」
「おほんっ、ごほん! ごほんッ!」
「あ、本ですか、分かりました。何を持ってきましょう」
「ゴッホ! こっほ、ゴッホゴッホ! こっほ!」
「ゴッホとコッホについてですね。画集と伝記から適当なのを見繕ったのでよろしいでしょうか?」
「うん、ウンッ! うん! ごほんっ、おほん、ゴッホ! こっほ」
「了解しました、行ってきまーす」
「こ、小悪魔ッ……」
「まったく、どうしてやら」
「おまえわざとだろう」
「とりあえず落ち着きましょうか、うん」
そろそろ寝ようかなと思ったら、いきなり小悪魔がやってきて、これである。
確実にベッドが遠のいた。
そもそもアレだ、ドアをノックされたときに帰ってもらうべきだったのだ。開けた途端に滑り込んでくるとは……。
私の部屋に堂々と居座る小悪魔は、相談に乗ってくれるまで帰りませんからね的雰囲気をぷんぷんと臭わせている。
とってもめんどくさそうだ。これ、ひょっとして徹夜になるのかなぁ。胃が痛む。
「で、何がどうしてそうなるの?」
そもそも小悪魔はパチュリー様に使役される身だ。二人の関係から考えて、パチュリー様が死にでもしない限り、使い魔契約の解除なんて無いはず。そして仕える主人がいる限り浮気できないというのが、使い魔というもの。
つまり、小悪魔は私と契約できないはずなのだ。
「それが、パチュリー様ったら、私との契約を解除するって言うんです」
小悪魔は半ベソである。
別に解除されたって、魔界に送り返されるだけで、死にはしないんだからいいじゃない。
そういう感じのことを言ったら、怒られた。
「なぁーにを言ってるんですか! 私が生まれて初めてお仕えした場所ですよ、紅魔館は! 最期まで添い遂げたいじゃないですか!」
「そ、そう。ごめんなさい」
最後のほうが不穏なニュアンスだったのは気のせいだろうか。多分わざとなんだろう、小悪魔だし。――そんな悪戯仕込めるくらいなら、案外余裕あるんじゃない?
「まあ、それはともかく。何だって契約解除なんかになったの?」
「それがサッパリ。指示された本を棚から取って持っていったらいきなりですよ」
「本?」
「ゴッホの画集とコッホの伝記です。何でそんなもの読もうと思ったのやら」
偉い人の考えることは分かりませんねぇと言わんばかりに、小悪魔は肩をすくめた。
私には彼女の考えてることのほうがよっぽど分からない。……いや、パチュリー様もどっこいだった。ひどい主従だ。
「ふぅん。で、何で私を?」
「ええ? 考えても見てください。パチュリー様は置いとくとして、まずお嬢様と妹様」
そう言って、小悪魔は指を二本立てた――親指と薬指を。辛そうだ。
「命が幾つあっても足りませんって」
立てた指を折った。
「美鈴さん」
また指を立てた。今度は一本――小指。
ふざけてるのかふざけてないのか良く分からない。
「私だって主人は選びます」
バッサリ叩き斬って折った。ひどい言いようだ。選ぶんだったら何故パチュリー様にしたのかと。アレも大概ひどいだろうに。
「そこで咲夜さんですよ。適度にカリスマがあって適度に安全で、適度に強い。何で私貴方に仕えなかったんでしょうね……」
「それ、私の意志で拒否していい?」
「何を言うんですかッ! 同じ釜掘った仲じゃないですかッ!?」
最悪だ。この子最悪だ。
いくらなんでも、その発言はひどすぎる。
「やっぱり、パチュリー様と和解して、契約を続けていくべきだと思うわ」
「うう、でも怒らせた原因が分からないんですよお……」
何故こっちをチラチラ見る。
何故そんな期待した目を向ける。
その身体から、相談に乗るまで帰ってあげませんよと言わんばかりの空気がぷんぷんと漂っていた。
「……ああもう、分かった分かった。一緒に考えてあげるから、直前の状況を教えてちょうだい」
「ありがとうございます、えっとですねぇ――」
「小悪魔、小悪魔!」
「はいはい、灰かぶりはシンデレラ。何でございましょう」
「おほんっ、ごほん! ごほんッ!」
「あ、本ですか、分かりました。何を持ってきましょう」
「ゴッホ! こっほ、ゴッホゴッホ! こっほ!」
「ゴッホとコッホについてですね。画集と伝記から適当なのを見繕ったのでよろしいでしょうか?」
「うん、ウンッ! うん! ごほんっ、おほん、ゴッホ! こっほ」
「了解しました、行ってきまーす」
「こ、小悪魔ッ……」
「まったく、どうしてやら」
「おまえわざとだろう」
誰の!?
「親指と薬指を立てる」出来ねえwwwwwwwww
親指と薬指?無理だった、薬指がプルプル震えたわw
できねぇ
あ、できた。