※ゲームボーイ世代の人は、赤青緑、金銀にカラーリングされたソフトを思い出しながら読むといいかもしれません。
GBA世代、DS世代も同様です。
それ以上の方も、ちょっとまえにそんなゲームがあったことを思い出しながら……
博麗神社。
それは人と妖怪が巫女の下に集う場所。
正月の時期は、連日連夜の宴会が続いていた。
それは、いつかの宴会異変を思い出させるほどの騒ぎ。
当然ながらそれに比例してお賽銭も入る。
宴会とは、博麗の巫女にとって稼ぎ時でもあるのだ。
しかし、だがしかし。
稼ぎ時というものは、稼げないときがあってこそ『稼ぎ時』と呼べるのだ。
加えて、祭りの後というものはさびしいもの。
この二つが導き出すものが……サビレ道一直線の博麗神社である。
住人の巫女を除いて人っ子一人いない境内。
十分な手入れの行き届いていない庭。
掃除だけは行き届いているのか、埃ひとつ舞っていないが、それは「今まで誰も来ていない」ことと等記号で結ばれる。その証拠に、長い長い階段には足跡ひとつ付いていない。
社内の奥の和室で、このスーパーサビレ神社の主である博麗霊夢は倒れていた。
「貧困……poor……hingkong……」
エセ中国語で訴えるほどの貧困が、この大していたいけではない少女を襲っていた。
ほとんどの収入をお賽銭と異変解決料でまかなっていた彼女だが、宝船事件が解決してからたいした異変も起こっていない。
正月を過ぎてからのお賽銭の備蓄も尽きようとしている。
昼ごはんを抜くようになり、朝と夜が味噌汁一杯だけになってからもう一週間、そろそろ腹の虫が見事なオーケストラをかなで、名演奏で世界に飛び立とうとするところだ。
これで金も稼げるんじゃないかと一瞬本気で思ってしまうほど困窮しているこの状況が、霊夢には恨めしい。
頬を触ってみると、すこしこけ始めている。胸を触ってみると……ない。いやこれはいつものことだ。ちくしょう。
しかし、霊夢には日課がある。お賽銭確認だ。
ちょっと前までは希望になっていたのだが、最近では絶望になってきた。
当然、お賽銭が一円も入っていないからだ。
今の霊夢なら、賽銭箱に1円玉が入っているだけでもそれを糧にどこまでも飛んでいけるだろう。
「そうよ、今日こそは、一円、いえ一銭くらいは入っているはずよ……」
半分くらいは自分に言い聞かせながら歩き出す霊夢。その服はボロボロだが、言い聞かせた故の希望の光が眼にともり始めていた。それがまやかしだと、自分でもわかっているのに。
同時に、霊夢は今の行動になんとなくいやな予感を感じていた。果たして自分の行動は正しいのだろうか、今賽銭箱に触れると危険なのではないか……。
しかし、賽銭箱に何かが入っているかもしれないと思った瞬間、そのいやな予感を霊夢は全力で忘れることにした。
生来の巫女としての能力がお賽銭に負けた歴史的瞬間である。
よろよろと素敵なお賽銭箱の目の前まで歩き、渾身の力をこめて賽銭箱を持ち上げる。賽銭箱の開け方は博麗大結界の解き方に告ぐ秘密であり、描写できないのが残念である。
果たして、賽銭箱は開けられた。
それは、本来彼女にとって喜ばしい結果になるはずのものだった。
しかし、その一枚の硬貨を見た瞬間、霊夢の脳の中の『目覚めてはいけないもの』がその首をもたげ始めていた。
タイガー&ホース。
俗に言うトラウマというやつである。
賽銭箱から出てきたのは……一枚の5円玉。
本来なら喜ばしいはずのもの。5円玉という価値は、霊夢が想像のみのものと割り切っていた額のまさに5倍。
しかし、霊夢は一枚の5円玉を見た瞬間、瞳孔が一瞬で開いた。
思い出してはいけないキオク。
はるか遠いころ。
1枚の5円玉が……。
ゆらゆらと振り子のようにゆれて……。
その奥には、ヤブにらみのいやな眼が……
神社の賽銭箱を落として気絶した霊夢を発見したのは、たまたま神社に来た魔理沙であった。
異常事態だと即座に判断した魔理沙は永遠亭の永琳を捕まえた。
「特に目だった病気があるわけではないわね……」
幻想郷最高の医者は只者ではなく、手早い動きで霊夢の異常を検索していく。
「熱も出ていないし、外傷もない。あえて言うなら受身を取れなかったことでちょっと後頭部にコブが出来ているのと……栄養失調はいつものことね。ウドンゲ、いつもの」
「わかりました師匠」
いつもの、とは霊夢を回復させるための食料のことである。霊夢が栄養失調で倒れることはこの時期になると日常茶飯事といえた。永琳が慣れた手つきだった細大の理由でもある。
「とはいえ、程度は低い……倒れたのは、おそらく別の理由ね」
永琳が、集まってきたギャラリーに向き直る。日常茶飯事とはいえ、心配する人間がいないわけではない。その中には、ちょっと前に外の世界から幻想郷に引っ越してきた早苗の姿も見られた。
「べ、別の理由? それはどういうことなんだ?」
魔理沙の言葉に永琳が答える。
「彼女が倒れたのは、何かしらの精神的なものが原因よ……現場は保存してる?」
「そりゃもうバッチリと」
脇から出てきたのは幻想郷の新聞屋、射命丸文。
河童脅威の技術力によってすでに現像の済ませてある一枚の写真を取り出す。
「お賽銭箱に……これは、5円玉?」
「そのようですね、霊夢さんにとってはうれしいことなのでは?」
本来喜ぶべき事態で、霊夢が倒れるということ、それはいったい何を意味するのか……。
「うれしくて脳の回路がショートしたのか?」
「だったら宴会の次の日霊夢は死んでいるわ、5円玉であることが重要なのよ」
魔理沙の頓珍漢な推理をあっさり否定し、永琳の灰色の脳細胞が回転を始める。
「実験を始めるわ、ウドンゲ、5円玉を用意して頂戴」
「はい、師匠」
鈴仙が奥に引っ込んでいく。
「さて……これはどういうことかしらね」
数分後。霊夢の病室で永琳は実験を開始した。
当の霊夢は永遠亭特製薬膳料理をもふもふと食べて、つやつやとしていた。久々の昼ごはんである。
「あ゛~~~~、美味い。人生の味ね」
本人は「もう少しいけるんじゃないか」と思っていた矢先に倒れたので、ちょっとだけ得した気分だ。
そんなところに永琳が現れ、何事かと思ったところ……永琳はいきなり目の前に一枚の5円玉を差し出してきた。
「ひぃッ!」
霊夢は箸を落とし、頭を抱えた。
「あれ……なんでひぃッ!」
自分が5円玉におびえたという事実を認めたくなかったのか、改めて顔をあげると永琳はずずいっ、と5円玉を霊夢の目の前に差し出す。そうすると、先ほどと同じ反応。ガクガクと震えている。
「ふぅむ……では、これはどうかしら?」
次に永琳はお盆の上にジャラジャラと5円玉を置いた。その数ゆうに数十枚。
その音を聴いた瞬間、ガクガクと震えていた霊夢の眼に輝きが取り戻された。
「え!? こんなにくれるの! 本当に!?」
がばっと身を乗り出して5円玉たちを手でかき集める。
「いいのかしら? 5円玉よ?」
「これだけあれば明日も昼ごはんが食べられるわよ!」
「なるほど……えいッ♪」
永琳は、懐から1枚の5円玉を取り出して霊夢の目の前に突きつけた。
身を乗り出した姿勢のまま、霊夢はゆっくりと崩れ落ちた。
「なるほど……やはりそういうことね」
「あの、どういうことなのでしょうか?」
ドアをあけたのは早苗だ。
「本来実験中の病室に、勝手に入ってはいけないものなのだけど……まぁいいわ」早苗の背後に魔理沙がいることも確認しつつ、永琳は推理を公開することにした。
「やはり、霊夢の心には一種のトラウマがあることが明らかになったわ。おそらく、1枚の5円玉がそのトリガーよ」
「そりゃどういうことだ?」
「それは一体……」
「私にも原因はわからないわ。むしろあなたたちに聞きたいくらいよ」
原因までは永琳もわからなかった。早苗はともかく、魔理沙が知らないということは、魔理沙と知り合う前の、もっと幼少時のトラウマだろうか。
「そんなのわかるわけないだろ。だが……怪しいやつは一人知っているぜ」
八雲紫だ――魔理沙はそう答えた。
「こういうときには真っ先に霊夢を連れて行くはずのヤツが出てこない。冬眠中とはいえ、だったら藍が出てくるはずだ。霊夢の子供のころを唯一知っているのが誰かって言われたらそりゃぁ紫だろう。だからヤツが怪しい」
確かに、魔理沙の言うとおりであった。日常茶飯事となった霊夢の栄養失調のとき、連れて行くのは大体紫であった。それが、今回に限っては出てこない。おそらく魔理沙以外にも怪しんでいる人妖がいるだろう。
「なるほど……このトラウマの原因があの八雲紫にある、と?」
「多分そうだろう」
「じゃあ、八雲紫と5円玉、しかも1枚だけ……というのには何か関係があるというのかしら?」
う~~~~ん、と考え込む魔理沙。冷静に考えてみればそうなのだ。八雲紫と5円玉に何の関係があるのか、まったくわからない。
「そういや、トラウマといえば専門家がいたな」
「専門家ですから、霊夢さんが倒れるほどのトラウマを顕現させるのは、危険だと判断されるのでは?」
トラウマの専門家古明寺さとりのことを魔理沙は指摘したが、早苗がその危険性を取り上げる。
トラウマとは強力なもので、弾幕という形で表現しているのは表現を和らげているのだ。いわゆるさと倫というヤツである。霊夢が倒れるほどのトラウマを顕現させると、さと倫に触れる可能性は非常に高い。
「実際に聞いてみればいいんじゃないか?」
「あ、聞いてきます」
早苗が病室を出て、ギャラリーの中からさとりを探そうとすると、本人がうずくまっていた。
「しょうごろりしょうごろりしょうごろりしょうごろりしょうごろり……」
なにやら怪しい言葉をぶつぶつと唱えている。無論眼は死んでいる。3つ全部だ。
どうやら霊夢の心を読んだらしい。そうでなくても、彼女を今使うことは出来まい。
早苗は病室に戻る。
「やはり、さと倫をオーバーしているようです」
「そうか、だったら……行くぜ」
「どこへ?」
魔理沙は身支度を整え、早苗があけた病室から出て行こうとする。
「マヨヒガだ。お前も来い。直接聞きに行く」
マヨヒガ。
かの柳田邦夫が伝説として取り上げられた桃源郷。
幻想郷の一部の住人は、ちょっと空を飛ぶだけで簡単にいけるのだ。わぁお得。
と言っている場合ではない。ここに親友たる霊夢のトラウマを作り出した原因があると思うと、そんなことも言っていられない。
「ここがマヨヒガ……」
「意外とチンケなところだろ?」
何度も来ているであろう魔理沙だからこそそう思うのだろうが、早苗はここにくるのは初めてである。
「そうでもない……ですけど……」
チンケという言葉を否定しきれない自分も、早苗は感じていた。
外の世界から幻想郷という強烈過ぎる環境変化を体験したからそう見えるだけだと心の片隅でわかっていながら、あの「我が家にゲームボーイがやってきた!」クラスの衝撃はそうそう訪れまい、ということもわかっていた。ちなみに実際にゲームボーイがやってきた当時早苗の周りのクラスはすでにプレステをやっていた。そのときばかりは情報に疎い二柱の神を恨んだものだ。
つまり、幻想郷の風景を見てからマヨヒガの風景を見ても、早苗にはたいした感慨がわいてこなかったのである。
そんなことを考えていると、魔理沙が『何か』に気が付いた。
「なんだありゃ? ……あんなところに、草むらなんてあったか?」
「草むら? ……あぁ、そりゃマヨヒガだから草むらくらいあるんじゃないですか」
「紫の家の庭に、か? 手入れも雑で、動物なんか入り放題……変な草むらだぜ」
草むらの近くには、大きな屋敷……というにはちょっと小さい民家が建てられている。あれが紫の家だろう。たしかに、距離的には屋敷内と考えて差し支えないだろう。そんな草むらからちらちらと見えるは、子ネズミや子ハトなど……確かに、何かが怪しい。
「私はあそこを調べてくる。早苗は中に入って紫を叩き起こして来い!」
「え、家宅捜索はあなたの領域……」
「ホレがんばって来い」
そう残して、魔理沙はほうきの角度を変化させ、草むらへ急降下していく。
「……わかりましたよ、それが幻想郷の常識なんですね」
早苗は一人納得し、紫の家の玄関に向かって飛んでいった。
さて、草を巻き上げつつ怪しい草むらへ降り立った魔理沙。
草むらは魔理沙の腰まで覆い、今の服装では少し歩きずらそうだ。
「気にしてられっかよ」
帽子のつばを上げ、魔理沙は捜索を開始した。
前に行った時――桜異変のときは、こんなものには気が付かなかった。
魔理沙は異変のときにちゃっかりトレジャーハンター家稼業を行っていたから、調べていないのはここだけだと確信できる。
大幅な立替を行ったのならば話は別だが、そこは何も知らない早苗が怪しいものをみつけてくれるだろう。
目的は紫が霊夢に何をしでかしたか。お宝を探しているわけではないのだ。
ものの数十分。
魔理沙が草むらに足を取られたり、スカートをうっかり破いて涙目になったりしながらも注意深く探索を続けていたそのとき。
――一瞬、絡め取られるような視線を感じた。
「な、何だ?!」
首筋の異様な感覚に思わず魔理沙が振り向くと、そこには異様な存在が現れていた。
背は魔理沙より少し高いくらいだろうか、人型をしている。しかし、全身真ッ黄色の人間がいるはずない。加えてエリマキ状の白く長い体毛があり、その顔には特徴的な鷲鼻がついている。さらに通常の耳はなく、とがった獣耳が存在した。
そして、魔理沙の眼にそれ以上に焼きついた特徴が二つ。
その眼。
異様にいやらしい、ヤブにらみの人間のような眼。
さらに、左手に持っている……糸で垂らしてある5円玉。
理性的にも感情的にも、魔理沙はコイツが霊夢のトラウマの原因であるかと判断した。
本能で察知したのだ。
こいつはロリコンだと。
「てッ、手前か!」
即座に箒を構え、八卦炉を準備する。
しかし、魔理沙は犯人を見つけたはいいものの、この犯人に対してどう対処すればいいのかわからなかった。
人間でないのは確実だが、ここまで中途半端に人間していない生物は始めてといえた。そもそも、何をしてくるのかもわからない。妖怪に分類するとしかないにしても、何の妖怪なのか判断しかねる。
魔理沙が手をこまねいているうちに、犯人は空いている右手をワキワキさせ、鼻息を荒くしながら近づいてくる。
「トゥリィィィィィィ……トゥリィィィィィィ……」
「く……えぇぃ! 動くのは撃ってからだ!」
危険を感じ、八卦炉にエネルギーを充填させた魔理沙は、懐からスペルカードを取り出し、高らかに宣言する。
「さぁ行くぜ! 恋符『マスター』……」
勢いよく犯人に照準を合わせた八卦炉から、魔力がぷっつりと途絶えた。
いや違う、八卦炉そのものが、ない!
その代わり、魔理沙の両手に掲げられていたのは……木の実であった。
「な、なんだと……!」
犯人のほうを見てみると、なんと犯人の右手にはしっかりと魔理沙の八卦炉が握られていた!
「くそ、なんかトリック使いやがったな!」
しかもまずいことに、八卦炉には自分が充填したエネルギーが貯められている。
今の八卦炉なら、魔砲を無理やり使う必要などない。それを向こうも察知したようだ。
……投げつければいいのだ。
「逃げるしか――ない!」
そう判断するのと、犯人が八卦炉を魔理沙に投げつけるのは同時だった。
草むらを揺るがす大きな魔法爆発が起こる。
土煙、切れた草がもうもうと舞い上がる中、煙をまとって魔理沙が飛び立つ。
「ちっ、さすがのヤツも飛べはしないだろう!」
八卦炉を取り返そうにも、すぐにすりかえられてしまっては元も子もない。
とはいえ、魔理沙は魔法や弾幕の発動、その大部分を八卦炉に依存している部分がある。
「とはいえ攻撃手段がなければ……うッ!」
黄色い犯人をねめつける魔理沙だが、犯人が突然念をこめるような動作をしてきた。
「トゥゥゥゥゥゥリィィィィィィィ……」
5円玉がゆっくりと振られる。
そうすると、魔理沙のまぶたが重くなっていく。眠気だ。
「な、なんだ……っておおおお!」
眠気によってバランスを崩し転落しそうなところを、魔理沙はなんとか持ちこたえる。
「そうか! 霊夢は子供のころこいつの催眠術にやられたのか!」
とはいえ、今のヤツの目標は魔理沙だ。みんなを魅了するロリコンボディがにくい。
このままでは狙いさえつけられない。近づくことすら困難だろう。
「この魔理沙さんが、動きながら撃つことを考えることになるとはな!」
角度をつけた旋回をしながら、魔理沙はじりじりと犯人との距離をつめていく。
証拠はあがっているも同然だ、コイツさえ捕まえて、紫にケリをつけさせる。
それだけは、ヤツの催眠術でもどうしようも出来ないのだ。
「あぁ、またやっているんですか……」
静かな八雲家が、轟音に揺れる。
外では緊迫した戦闘が繰り広げられているのだが、早苗は気が付かない。
ただ一人数学の計算をしていた藍に、挨拶をした早苗が事の顛末を聞きだそうとすると、藍はあきれたようにため息をつきながら、
「紫様に直接聞いてくれ。口外無用といっているのだが……おそらく本人に聞いたほうがあなたにとっては早かろう」
「あなたに、とっては……」
「紫様は地下にいらっしゃる。なんなら他の部屋の様子も見に行ってかまわない。そうすればあらかたわかるだろう」
「はぁ……そうですか、わかりました」
とはいえ、他人の家なので勝手もわからず、早苗は地下にいるというわけである。
地下とはいえそこそこに暖かいらしく、肩を出している早苗の服装でも寒いとは感じない。まるで、人間のためにこしらえたかのような地下であった。その地下で、轟音が響いたというわけである。
「結局力技……まぁ幻想郷の常識なら仕方ないですね」
早苗は気にせずに地下を探索することにした。
さっそく、名前の書いてあるドアに出くわしたが……
「いじっぱり?」
とても名前には見えない。いじっぱりなんて名前の人がいたら、その人はあまりに恥ずかしくて非常に慎ましやかな性格になってしまうだろう。
聞き耳を立てようと耳を近づけると……たくさんの人間のうめき声がする!
「うぅ……うぉぉ……」
「俺は……こんなところ……平気なんだからな……!」
早苗はとっさに悲鳴を飲み込むため、口を押さえた。
八雲紫も人食いであることを、改めて思い知らされた……と早苗は思った。
霊夢もこんなところに閉じ込められてしまっては、トラウマにもなろうというもの。
……というところで、早苗は気が付いた。
5円玉関係ない。
安堵と同時に、「いじっぱり部屋」の特徴が思い起こされる。
1.男の声しかしない。つまり、あの部屋には男性しかいないと思われる。
2.実際に、性格がいじっぱりな人間が入っている。
「まさか……」
早苗は地下室全体をざっと見回すと、予想通りの光景が広がっていた。
「ひかえめ」「ようき」「おくびょう」「おっとり」「ゆうかん」「せっかち」etc……
この地下室は、神隠しにあった人間の男性を性格ごとに分類する部屋だったのだ。
「しかし、何でこんなことを……」
やっぱり5円玉関係ない。
謎を考えつつ、早苗が進んでいくと……何も書いていないドアを見つけた。
「この部屋は一体……」
聞き耳を立ててみると、誰もいないようだ。
加えて、ドアも開いている。
早苗は一瞬の決断で、ドアを開き中に入った。
――そこに広がる風景を見て、早苗はすべてを理解した。
「なるほど……そういうことですか」
早苗の脳裏に思い浮かぶは、神奈子様がゲームボーイと一緒に買ってくれた、赤青緑のゲームソフト。周りがバイオハザードに明け暮れている中、守矢神社ではヒトデマニアの飯塚雅弓に悪戦苦闘していた。一生懸命最初の相棒でヤツを倒したとき、守矢神社の間では「飯塚雅弓はゾンビより怖い」という結論が出た。
その部屋にあるたくさんのボールは、それらの思い出を喚起させるものであった。
一方魔理沙は賭けに出た。
犯人から発せられる催眠音波や変態音波をかわしているくらいだったら、自分の体に残っている魔力を全開放し、ヤツにぶつけるしかない。
そのためのカードはただ一枚である。
魔理沙は高らかにそのカードを宣言しようと急旋回し、目標に向かって突っ込む。
「やるしかねぇ!」
――彗星『ブレイジングスター』!
白昼に現れた黄色い彗星は催眠音波やら変態音波やらをかき消し、全速力で犯人に突っ込んでいく。
これをかわされたら、魔理沙に魔力は残っていない。
(これがかわされたら、マジでやばいぜ。奴隷にされちまう……!)
魔理沙は奴隷は欲しいが奴隷にはなりたくなかった。しかもこんなロリコンの。
そんな魔理沙の人生を賭けた一撃は……突如スキマから現れた白い手によって止められた。
「ウチの家族に何をする気?」
リボン付きのスキマから出てきたのは、紫色のファッションに身を包んだ胡散臭い女にしてこの事件の首謀者、八雲紫であった。
「おいおいそんなものが家族かよ、人間の尊厳はどうした?」
「私妖怪よ」
「じゃあ人型の意地だ」
「彼も人型じゃない」
すべて、ブレイジングスターを受け止められながらの会話である。
これ以上の魔力の漏洩を抑えるため、魔理沙はスペルを解除し草むらへ降り立った。
「紹介するわ、彼は八雲黄(おう)、八雲家の一員にして、博麗の巫女の婿を選別する大事な存在よ」
「おいおい、婿は早すぎるだろうよ」
「選んでおくことにこしたことはないわよ、博麗の巫女の婿たるには、各能力すべてが最高の値を示し、性格も次代の巫女の父親としてふさわしいものでなくてはならない。八雲黄は6Vという至高の才能を探すための狩人よ」
魔理沙はかなり真剣に、紫の言うことが理解できなかった。
「6Vだか六虫だが知らないが、相手くらい選ばせてやれよ……大体こいつが原因で、霊夢は5円玉恐怖症になっちまったんだぞ」
「幻想郷を存続させるためには、仕方のないこと」
「どうやらお前はぶん殴らないと話のわからない悪い子みたいだな」
「出来るかしら?」
魔理沙にとっては出来る出来ないの問題ではない。ほかならぬ霊夢のためならばこそ、出来なくてもやらなければいけないことがあるのだ。
「やってやろうじゃ……ぐッ!」
眩暈。
それは、八雲黄の催眠術によるものだった。
「今のあなたは催眠術すら回避できない……そんなことでは私に触れることすら出来ないわ」
倒れ伏す魔理沙。
「さて……このじゃじゃ馬はどうしてくれようかしら……」
紫が魔理沙へ近づこうとしたそのときである。
「そこまでです!」
「その声は……青いの!」
紫の背後に立っていたのは、早苗である。
「あなたの常識、私が覆して見せます!」
早苗はそういって高らかにスペルカードを宣言する。
その瞬間、スペルカードから赤と青の光が短い間隔で明滅していく!
「奇跡『夕暮れのでんのうショック』!」
明滅する光に、さすがの紫も目がくらむ。
いや、今の紫だからこそ効いている。
「くっ……あなたならポ○モンの世界を知っていておかしくはないわね!」
しかし、早苗はすかさずもう一枚のスペルを宣言し、「部屋で見つけたボール」をかかげ、足を大きく振り上げる。
「青と白の縞々?!」
紫が奇跡の等高線を見た瞬間に出来た隙を、早苗は見逃さなかった。
「これが幻想郷の常識よ!」
――血糸『おとなのおねえさんにマスターボール』
紫が気が付いたときには遅かった。
彼女の目の前で紫色のボールが開かれたと思うと、まばゆい光があたりを覆う!
……光の奔流が収まったときには、その場にあるのは紫色のボールのみ。
その中には、小さくなった紫が収まっていた。
早苗はボールを拾い上げ、高らかに宣言する。
「八雲紫、ゲットだぜ!」
「……はぁ」
あまりの展開についていけないのは魔理沙である。さっきまでこっちを奴隷にする気満々の紫が、人の拳ほどのボールに吸い込まれていったのだから。
「もう大丈夫です。これならしばらくは出てこられませんから」
「いやまぁそうだろうよ。いったい何がどうしてどうなっちまったんだ」
「それは後でゆっくりと話すとして……」
早苗はある方向を向く。
そこには、こっそりとその場を抜け出そうとした八雲黄がいた。
「あのロリーパーが、霊夢さんのトラウマを作り出した張本人ってことでいいんですよね?」
「本人から聞いてはいないが、100パーセント確実にそうだな。それとロリーパーってなんだロリーパーって」
「コイツの本当の名前です。保証もされているんですよ」
「そいつはよかった、ところでだ」
魔理沙は懐から八卦炉を取り出す。ドサクサ紛れに拾っておいたのだ。
「ちょうどコイツをぶっ放したい相手が近くにいるんだ」
「私もちょうどスペルカードを撃ちたい存在が近くにいるんですよ」
二人がいっせいに、クルリと八雲黄、いやロリーパーに振り返る。
それはそれは見事な青筋であったといわれている。
「トゥ……トゥリィィィィィィィ……」
――恋符「マスタースパーク」!
――大奇跡「八坂の神風」!
マヨヒガで、2度目の爆発が起きた。1度目よりも大きな爆発だった。
事件は収束していった。
あれから紫は四季映姫その他幻想郷古参OGsに説教を食らい、霊夢のトラウマを治すと同時に性格ごとにより分けられた霊夢の婿候補も解放。
霊夢は普段どおりお賽銭に一喜一憂する日々が続いているが、5円玉が入っていてもおびえることはもうない。
むしろ5円玉をもてあそんで一日を過ごすことさえ出来るようになったのだ。それはそれで危ない人一直線な気がするが、気にするヤツは誰もいない。紫がちょっと説教を食らうだけである。
「お賽銭は人生……」
うっとりと5円玉を見つめる霊夢を見れば、霊夢にしばらくお婿さんはいらないと思うだろうし、お婿さんのほうから逃げ出すだろう。
また、ロリーパーこと八雲黄も、紫に境界をいじってもらい、四角いチップのようなものに変えることになった。
そのチップは香霖堂で預けられているが、幻想郷の少女たちは誰も触れようとしない。あのチルノでさえも、である。
主人は「また厄介なものを引き受けられてしまったか」とあきれつつも慣れた調子で厳重に地面に埋めていた。賢明な判断である。
しかし、事件自体は収束したが、新たな関係が生まれた。
すなわち、守矢一家と紫との関係である。
「神奈子様! ポ○モンは実在したんです!」という早苗の故意の天然に、事情をすべて知っている二人が乗らないはずはなく。
今日も今日とて「マスターになるための特訓」が守矢神社で繰り広げられていた。
守矢神社に行けば、名物「グレートアックスサイズのヒトデを持った飯塚雅弓に襲われる八雲紫」というわけのわからないものが見られ、人々を楽しませているそうである。
奇跡があればヒトデも飯塚雅弓もちょちょいのちょいだとか。奇跡すげぇ。
幻想郷は平和である。
どこがだ。
話がまとまってなくて分かりにくいよ・・・
ポケモンの知識がないと駄目なのかな?
注意書きをしてくれるか、ぽけもん知識がない人間にもわかる
文章にするかしてくれませんか。
>「奇跡『夕暮れのでんのうショック』!」
ポリゴン?
変わらずの石やパワー系も集めているんでしょうかw
ノリは割と良かったと思うので60点で勘弁して下さい。
あとマヨヒガは橙の住んでいる所ではありますが、紫と藍は住んでいないのでご注意下さい。
わりと嫌すぎる設定がされていて、容姿もなかなかアレな感じなんだ
知ってる人間にしか理解できないっつーのはどうかと思いました まる
乱数調整無しで6V性格一致とかムリゲーww
色違い出すよりも難しいけど、パワー系アイテムと変わらずの石で6v性格一致を出すのをサポートはできる。さらに、サファリゾーンは高個体値の奴が多いから、物によっては利用できる。
道具交換はスリーパーの「トリック」でしたっけ?
ネタはあらかたわかりましたが、やはり無理矢理色が強い気がします。
あと五円玉とポケ○ンですぐにロリーパーだとわかった俺は異常なのかしら