Coolier - 新生・東方創想話

ただ貴女の隣に居たいだけ

2010/01/30 01:43:31
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注意
この作品は作者の過去の作品とまったくもって関係ありません。
が、作者が早苗さんと文さんはラブラブなのは生きる為に息を吸うように当然と頑なに信じているため、当然のように二人は顔見知りで仲良しです。

そんな話ですのでそれでも問題がない方は、そのままお読みください。










冬。
野山から緑は悉く失われ、世界を白く染め上げる季節。
しかし、それでも太陽は変わらず天に昇り、世界をその輝きと温もりで包み込む。

それは、真冬になっても変わらない。
それは、どこであろうと変わらない。





「くぁ……」

そんな陽射しに照らされて、射命丸文は噛み殺せなかった欠伸を吐き出しながら、腕を振り上げ大きく伸びをする。

「文さん、眠いんですか?」

そんな文に声を掛けるのは、東風谷早苗。
ここは妖怪の山の山頂の守矢神社、その縁側。

今日も今日とて、何時ものように境内の掃除をしている早苗の前に、文はふらりと現れた。
何時ものように立ち話もなんだからと、さも当然のように縁側に座らせ、台所からお茶請けと湯飲み一式を用意していた。

そして、いざ準備完了と縁側に戻って文の横に腰を下ろしてみれば、それはとてもとても眠そうに文が欠伸をしていたのである。

「作業を積み込みましたので……多分、三日は寝てないんじゃないか……と」

こしこしと目をこすりながら、文が涙目で答える。
いつも自信に満ちている彼女にはあまり似つかない、幼子のように無防備な顔。
瞼はとろんと垂れ、頭はフラフラ左右に揺れる。

誰がどうみても、眠そうである。

「み、みっか……」

やや引きつった顔で早苗はその日数を口にする。
その日数は、イコール自分が文と顔を合わせなかった日数である。

寂しくなかったと言えば、それは嘘になる。
文の存在が自分の中でそれだけ大きなウェイトを占めている。
早苗は今更それを否定はしないし、むしろ微笑ましく思っている。

そんな想いを押し隠し、文を見つめながらクスリと笑う。
普段ならその仕草で文に問い詰めらそうだが、今の文にはそれを察するだけの集中力もないようである。

「妖怪だから出来る無茶ですからね。人間にはオススメしません」
「でも、それなら自宅でゆっくり休めばいいのに……」

文と少しでも長く一緒に居たい。
だが、文の都合や状態を無視してまでもそれを求めるほど早苗は自己中心的ではない。

「そんな状態でわざわざ神社に来なくても、別に拗ねたりしませんよ私」

でも、一つ嘘をついてしまった。
早苗は心の中でそれは嘘だと苦笑する。
拗ねはしないが、実際は寂しかった。

「私は……仕事といえど、その……会えないのが辛かったですよ」
「ふぇ?」

早苗は、あまりにも間抜けな声で反応してしまった。

お、おおおお落ち着け、落ち着きなさい東風谷早苗!
これは文さんの罠よ、睡魔と言う麻薬が文さんを蝕んでいるのよ!
でなければ、二人きりとはいえ真昼間から文さんがこんな事言うわけない!

そんな考えとは裏腹に自分の顔が赤く紅く染まり、あっという間に熱に蝕まれていく様を、早苗は実感していた。
そう、つまり、文にストレートにそんな事を言われたのが嬉しくて堪らない。

――ここで文さんを押し倒すのは、文さんが悪いんです。こういう事いうから。

そんな思考が早苗の脳裏をよぎる。
抱きしめていいものか?押し倒していいものか?キスは?私室につれこんでならOKなのか?
そんな不埒で不健全な妄想に悶々と悩まされている早苗の肩に、文は額を押し付ける。

「あ、文さん!?」
「早苗、非常に厚かましいのは重々承知ですが」
「は……はい」

この角度では早苗は文の表情をうかがい知ることは出来ない。
というか、明らかに今日の文はおかしい。
礼儀正しくはあるがどこか飄々としており、信用し辛い。
それが何時もの文。
つまりは鴉天狗の特色である。

だが、今日の文はどこかがおかしい。
眠気の所為で間違いないのだが、それにしても素直で甘え上手なのだ。

人前では、ネタになるから嫌だと必要以上の接触を拒む文にはあるまじき言動なのだ。

「少しだけでいいから、寝かせて」
「え!?って、あ……」

どんな告白かと思ったら、睡眠の申請であった。

しかも――

「……駄目なんていわないですけど、許可する前に寝ないで下さいよ」

早苗が返答する前に、文は早苗からずり落ちるように縁側に横になると、そのまま全く動かなくなってしまった。
これでは百年の恋も冷めるというものだ。
自分が文さんを愛想を尽かすなんて天地が逆転しようありえないと、心の中で早苗はノリツッコミをしてみるが、少しだけ虚しい。

そのうち、すやすやという表現に相応しい、可愛らしい寝息が聞こえてきた。
早苗は文に出来るだけ振動が伝わらないように横にずれると、改めて文を観察する。

「三日寝てないという割には、髪は綺麗だし肌つやつやだし良い匂い……」

文が熟睡してる事を良い事に、早苗は文の髪に顔を埋めてみる。

よく烏は汚いと言うイメージが定着しているが、それは間違いである。
かくいう早苗も幻想郷に着て初めて知った事だが、烏は非常に綺麗好きな鳥であり、くるっぽーと鳴く平和の象徴として名高い鳥のほうが不衛生……とは文の言葉である。
故に、ごく一部の例外を除いて鴉天狗は非常に清潔さを大事にする。

曰く、寝起きの覚醒に、午前中の汗を流すために、就寝前の息抜きに、最低でも日に三回、お風呂もしくは水浴びをするという。
ネタを求めてそれなりに広大な幻想郷を日々駆け回っていると言うのに、それだけ入浴を行うというのはある意味異常である。
あるいは、幻想郷最速たる鴉天狗だからこそ出来る芸当なのか。
早苗の疑問は尽きないが、現実に文はいつでも綺麗さっぱり、スカートに皺なんてないし、シャツはパリッと仕立てあげられている。

そんな姿で無防備な姿を曝しているのだから、相当疲れているのだろう。

「流石の妖怪でも、掛け布団ぐらいはないと風邪引いちゃうかも。でも……」

そこでふと、早苗は考える。

「お触りしたいなぁ……ハグハグしたいなぁ……でも、それで文さんが起きちゃったら嫌だし……」

地味に、そうとても地味に、早苗は考える。
三日間、早苗は文に会えなかった。
お話もしてなければスキンシップも、相手の姿を見ることすらなかった。

いざ会えたと思えたら、いつも以上に甘えてきて、なおかつさっさと寝てしまった。
生殺しだ。
幾日も砂漠を放浪し、漸く見つけたオアシスが蜃気楼だったような酷い仕打ちだ。

しかし、そんな体を押してまでも此処に来てくれたこと。
そしてこの神社で、自分の目の前で、これほど無防備な姿を許してくれていると言う無言の信頼。
だから、今の彼女の安らぎを、自分の都合で壊したくない。
それはその信頼に対する激しい裏切り。

「あ、そっか。えへへぇ……こうすればいいんですよね」

そこで、早苗はひらめいた。
彼女の眠りを邪魔せず、彼女の側に居る方法を。

それは、自分も文と同じ布団で文の隣で、文の体を抱きしめて、眠るという事を。

「今日ぐらいお仕事お休みしてもいいですよね?神奈子様、諏訪子様……」

空を見上げれば良い位置に太陽がある。
どこまでも蒼い空が続いている。
布団で外気を遮れば、直ぐにでも睡魔が襲ってくるだろう。

そう確信した早苗は、すぐ用意したお茶請け一式を台所に戻し、代わりに自分の部屋から薄い毛布を持ってくる。
密着すれば、二人ぐらいならいけるだろうという考えの元である。
サイズは問題ない。
早苗が文の横に寝そべり、文の体を抱き寄せても、彼女はそのたびに若干息を詰まらせはしたが、安眠を妨害する程ではなかった。

だから、ほんの少しだけ、早苗は自分に素直になってみることにした。

「あのですね、これぐらいは許してくださいね?文さん」

早苗は目を瞑る前に一言文に謝罪すると、そっと自らの唇を文にそっと捧げる。
ほんの一瞬、ほんの少し、ほんの僅かな接触だけの、軽いキス。
でも、三日間会えなかった寂しさを詰め込んだキス。

「おやすみなさい、文さん」

その行為に満足すると、自分の頬の熱を再認識しながら、早苗は思考を止めた。
四度目です。
今回は比較的短編で挑んで見ました。
いや、ホントはゆかれいむなお話を書いていたのですが、息抜きで短編を書いてみたらサクサク出来たのでさくっと投稿してみました。
やっぱり私は、あやさなしか書けんのかなぁ……と、思ったりしたり。

自分の想いに正直な作品をつくり、そしてそれが自分じゃない誰かの琴線に触れてくれれば、それ以上に嬉しいことはないと、自分は信じてます。

それでは、また何か機会があればお会いしたいと思います。
書き方が安定しないなぁ(苦笑)
マサキ
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コメント



0.1370簡易評価
1.100名前が無い程度の能力削除
>早苗さんと文さんはラブラブなのは生きる為に息を吸うように当然
禿同
3.100名前が無い程度の能力削除
お久しぶりです、相変わらずのあやさなでとても満足です!
ぐうの音もでないわ
25.90名前が無い程度の能力削除
甘いあやさな大歓迎です。
読みやすくて、ほっこり温かな気持ちになりました。
26.90名前が無い程度の能力削除
程よい甘さで大満足です。
32.80ずわいがに削除
このワガママなら二柱もお許しになるだろうw

ちなみに俺なんかは風呂に入ってるときが一番ストーリーを思いつきやすいんで、執筆に詰まった時とか無駄にシャワー浴びたりしますねww
39.80名前が無い程度の能力削除
イチャイチャはしていないけれど、二人の関係が甘美と分かる素敵な話ですね。
続きが読みたくなってしまいました。