1、鈍色の女の子
冬も終わりに近づいた雨空の夜、命蓮寺では小さい酒盛りが行われていた。主催者は聖白蓮。意外と思う人も多いだろうが、幻想郷での復活を果たしてからというもの、聖は少し肩の力が抜けて、堅い人物ではなくなった。それでも未だに堅物ではあるのだが、昔よりは幾分かゆるくなったとかそういう意味である。
命蓮寺での酒盛りでは、皆そんなに飲まない。量を気にせずに飲むのは、基本的にザル気質である私と、悲しいことに酔っていないときでも酔っているような性格の所為で、お酒が入ってもそんなに気にならないぬえ。そしてお酒に弱いのに好きだから飲んで、たったコップ二杯分のお酒で潰れてしまう星だ。案の定、星はもうすっかり眠っている。可愛いなぁ。
「ねぇ、ムラサぁ。ムラサの考えていること分かるよ、私にもよーく分かる」
酒臭いぬえが私に寄って話しかけてくる。あ、酒臭いのは私もか。
「あれでしょう? 星って本当すぐ寝ちゃって、子どもみたいで可愛いよね。起きてるときは凛々しくて、寝てるときはあんなに縮こまっちゃって。ギャップってやつ。ホント隙無い」
「そうね」
ぬえがこういう風ににやけながら話しかけてくるときは、大抵ろくなことが起こらない。いや、というかもう確実にこれはいたずらを思いついた顔だろう。きっと今回のターゲットは星。ご愁傷様。
「そんな隙の無い彼女の弱点を見つけてしまおうと思います」
「何あほなこと言ってんのよ」
ほれ、見たことか。やっぱりそうだった。どうせ何かいたずらするのだろう。全く、これだからぬえは。
でも、でもね。私もなんとなーくその話に興味が無いわけじゃないんだ。いや、ホントなんとなーくであって、心からいたずらしたいなんて思ってないし。しかもターゲットが星だ。意外と弱点だらけの聖ではなく、完璧超人の星だ。彼女の欠点はおっちょこちょい。何、この可愛い属性。これでルックスも女から見れば格好いい、きっと男から見ても格好いい女性なのだろう。さらに加えてナイスなスタイル。だから、いやだからというわけでも無いのだけれど、そんな星の弱点に興味ある気がする。あくまで、気がする。
周りを見渡す。誰かに聞かれていては元も子も無い。
聖はお酒が入って暴走気味の一輪を説教している。星は寝ていて、ナズーリンは端っこで独り暗くなっている。ここの人皆お酒入ると面白いな。
今誰も私達に注意を向けてないことを確認した。
「で、具体的に何するのよ。いや、そりゃ私はいたずらよくないと思ってるし、別にそんなことに興味は無いんだけどね。ちょっと気になるくらいで……」
「はいはい、分かってますって。実はですねー、昔にちょっと弱点の欠片が見えたことがありまして」
「それは?」
「もしかしたら星ホラー苦手かも」
成る程、成る程。それは大いにありえるかもしれない。それどころか、きっと暗いのですら駄目だろう。今思えば星が寝るとき、月が出ていない夜は灯りを灯して寝ている。夜出歩くとき、いつも行灯を手にしている。命蓮寺内を夜歩くときも、小さい蝋に火を灯して歩いている。見方によっては物腰が丁寧で、態々蝋燭に火を灯す辺りマメということにもなるのだが、今こうしてぬえの話を聞いてしまった後そのことを思うと、単に怖いだけなのかもしれない。
「ある。それは大いにあるわ」
「でしょう?」
ふむふむ。ならばこれは試す価値があるかもしれない。
「問題はどうやってやるか、だけど……」
「任せなさい。この、キャプテンムラサに任せなさい」
「流石皆のキャプテン! 頼りにしてます」
会話終了。この後はいかに怪しまれずに行動を起こすか、である。ぬえと視線を合わせ、怪しまれないよう少し時間を置くことにした。
私は聖と一輪の元へ行き、ぬえはナズーリンに絡んでいる。
そうして半刻程過ぎた頃、もういいだろうと思い、私は立ち上がる。
「皆ーはい注目ー。今から私の人間だった頃の話を一つしたいと思います!」
やたらと自分のテンションが高いことに気がつく。よほど楽しみなのだろうか。いやいや、何を言っている。ちょっとだけお酒回ってきただけですよ、本当に。多分。
「おー! いけー! やれー!」
もう一輪は本当に訳が分からない。相当お酒が入っているようだった。
「それは興味深い話ね」
聖は相変わらず穏やかに笑う。
「……確かに」
終始ぬえに絡まれていても無視し続けて坦々と飲んでいたナズーリンが、体をずって近づいてきた。
残るはぬえと星。
私がぬえに目配せをすると、ぬえが星を起こしにかかる。
「ほらほら、星の大将。いまからムラサが楽しい話聞かせてくれるってよ? 人間の頃の話だって。レアだよ、レア。ほら、起きた起きた」
「うーん、ふぁい。ええっと、はい。起きましたよー」
可愛いなぁちくしょう。
さて、舞台は整った。今私は皆の前に立ち上がり、皆が私を見ている。星もしっかりと起きているのをチェックするのも忘れない。なに、失敗して怒られそうになったら酔っていた所為にしてしまえばいい。お酒、私の味方です。
私は部屋の明かりを消した。そして数本の蝋燭に火を灯して、少し雰囲気造りをする。
「な、なぜ消したのですか!?」
勿論声が上がったのは星からだ。可愛いなぁおい。
「人間の間では酒を飲むとき、真剣な話をするときはこうすると決まっていたので」
「そうだったかしら」
聖、余計なことを言わなくていいです。
「いやぁ、確かにそうだった。私もよく人を驚かせるのは夜やってたけど、いくつかの家はこんな感じで語り合ってたなぁ」
ナイスフォローぬえ! といいたいところだが、そんな分かり安すぎる嘘に誰が乗ってくれるのだ。
「そうなのねぇ、初めて知ったわ」
「雰囲気があっていいな!」
「……確かに」
思いのほか皆納得してくれたようでよかった。相当酔いが回っているようで。うん、やっぱり酒は私の味方らしい。
しかし当たり前の如く一人納得していない様子の星。よし、追い討ちをかけよう。
「あ、もしかして星は暗いの苦手ですか? でしたら戻しますが」
「いや、そういうわけでは……」
星が口ごもる。私は心の中でにやけた。これは本当に苦手だな、そう思ったのだ。加えて彼女自身はそれを隠している様子である。これはなんだか楽しくなってきた。なんていうんだっけ、こういう感情。さでずむ?
よし、準備も整った。キャプテンムラサ、推して参る。
「これは私がまだ人間で、小さい女の子だった頃の話なのですが」
なるべくゆっくりと、そして声の抑揚を抑えて話す。怖い話などしたことなかった自分には、雰囲気作りに関してはこれが限界。
まぁ、切り出したはいいけれど、何も考えてなかったというのが事実で少し言葉に詰まってしまう。
外では雨がしとしとと雨戸を打ち付けている。
これだ。今と同じような状況というのが、人の心理の底で怖さを倍増させるといつか聞いた。いける。後は適当に怖そうなことを並べていけばいい。
「丁度今日のように、雨がしたたる月も見えない暗い夜でした。私はいつも暗いのが恐かったので蝋燭を灯して眠っていました。いつものように蝋に火を灯し、いざ眠ろうとするとその日は不思議なことに蝋燭の火が直ぐに消えてしまったのです。最初は湿気てしまっているのだと思い、蝋を変えてみました。火がついたようなので安心して眠ると、やっぱり火はすぐに消えるのです。真っ暗な夜に、しとしとと雨の音だけがしました。少し怖かったのですが、仕方がないと思った私はそのまま眠ることに」
皆そろそろこれが怪談話であることを理解したのだろう、各々が私から発せられる続きを待っているのが分かる。星を確認。口を半開きにし、目はさっきまで寝ていたと思えない程に見開いている。怯えている様子は無いが、効き目は抜群なようだ。
「すると、外から急に物音がしたのです。誰かが歩いているような、そんな感じの。最初は家の誰かかと思いましたよ。何分人間の頃の記憶なのでよくは覚えていないのですが、兄弟も居た気がしますしね。ですが、なんだか私の部屋の前で止まったみたいなんですよ。まぁ、誰か私に用があるのかと思って、眠かったですし半ばキレ気味に障子を開けたのです。誰よって」
さぁ、物語は佳境だ。ここで間を置かないのがムラサクオリティ。間も開けすぎると、怖いものも怖くなくなってしまう。心を落ち着かせる隙なんてやるものか。
「そこには鈍色の喪服を着た女の子が立っていたのです。明らかにその目は無く、皮膚も所々腐りかけていました。そして、その女の子が言ったのです」
皆を見る。聖は口に手を当てて驚いており、一輪は雲山を抱いている。ナズーリンは相変わらず無表情で、星にいたっては上を向いて何かを小声で唱えてしまっている。仲間であるはずのぬえまでもが興味津々に話を聞いていた。そんな怖かったかな、この話。
「貴女の体、頂戴って。そうして私に掴みかかってきて、首を掴まれたところまでは覚えているのですが、その後気絶してしまったらしく後のことは分かりません」
そういい終えると、私は蝋の火をすべて消し、明かりをつけた。
「ムラサ、今の話すごかったわ。とっても面白かった。この場も盛り上がったわ。ありがとう」
聖に真っ先に声をかけられる。ははは。聖さん、貴女の弱点はそれですぜ。空気は読めるけど、気を利かせているつもりでたまに場違いな発言をしてしまうところ。
「ムラサ、すごい奴ね! 本当にすごい! うん、なんというか、怖かった!」
一輪はお酒が回っていてもう完全に暴走状態だ。いつもの口調は猫かぶりで、本当はこっちが素なのだろうか。しかしこれもお酒の席だから、仕方の無いこと。
「……確かに」
さっきからそれしか言ってない気がするが、彼女は今大変ダウナーな気分なのだ。それも仕方ないだろう。お酒、怖い。
さて、問題は星である。
星の方を見ると、真顔でこちらを睨んでいる。こ、怖い。
「ど、どうでした? 星」
「良くできすぎているくらい素晴らしい話でした。とても怖かったです」
真顔を崩さずに言い切られてしまった。中々強情だねぇ。しかしその表情はポーカーフェイスからは程遠く、筋肉の色々なところが強張っているのがわかる。
そしてそのまま各々また好きなように飲み始め、相変わらず聖は一輪に説教、星は眠って、ナズーリンは隅っこで静かにしている。
「ねぇ、さっきの話すごかったじゃん。ムラサすごいわぁ」
「あぁ、あれね。まぁたまたまよ、たまたま。ありきたりで怖そうな話を適当に繋いだだけだから」
どうやら良い出来だったらしく、私も自分がこんなことを出来たのにビックリしてしまっている。
「ねぇ、あれ本当の話?」
「んなわけないでしょ。それに前も話したとおり人間の頃の記憶なんて全然無いんだっての」
そうそう、それよりも。
「ねぇ、ぬえ。まだ星ねばってるわよね」
「そうね。そこで考えたのだけれど、後は私の正体不明の能力で今の話と同じように星で再現すれば、流石にアウトになるんじゃない?」
「いいね、それ最高」
いけない、私にもいつのまにかぬえのいたずら嗜好症がうつってしまったらしい。
私達は今晩星の寝込みに仕掛ける手順を話し合って、その日の小宴会を終えた。
その日の夜、私とぬえは命蓮寺の前で集合した。
「首尾はどう? ムラサ」
「ばっちりよ。予備の蝋燭全部湿らせてきた」
「よしよし。そろそろ時間もいい頃ね、行こう」
私達は星の部屋の前まで音を立てないように進む。
今回のいたずらを決行するに当って、少し迷った部分もある。なんで私がぬえといたずらをしなくてはならないんだろうか。そう思った。だけど理由は単純で、興味だ。普段完璧超人に見える星の弱点を暴きたい、そして暴いたのだから、その慌てる姿も見てみたいのだ。
部屋の前まで来た。音を立てないように待機する。すると星は日課であった修養を丁度終えたようで、これから床につくようだ。
さて、まずはなんだったか。そうそう、今ついている蝋燭を消さなければならない。
私は意識を集中して星の部屋の中を想像する。いつもの配置だったら、この辺りに蝋燭があるだろうなぁという場所に、少しだけ水分を集める。水を使える私だ。これくらいならお茶の子さいさい。
「ビンゴ!」
小声でぬえが言った。
部屋を見てみれば、障子からもれていた光が消えている。
部屋の中で動きが無かったので、諦めてそのまま寝るのかと思った矢先、星が立ち上がり予備の蝋燭を探しているのが分かる。時折部屋が明るくなるのは、蝋に火を灯そうとしているのだろう。そこにある蝋は全て湿っているというのに。
それでもさっきの会談話が相当効いているのだろう、何度も何度も火を試す。
やがて諦めたと思うと、今度は私達が居る廊下の方へ歩いてきた。
「まずい!」
障子が開く。
とっさの判断で浮いて天井に張り付いた私達は、星に見付かることは無かった。
星はといえば、左右を見回して廊下に誰も居ないことを確認するともう一度部屋へ戻っていく。本当にさっきの話を気にしているらしい。これはいける。
暫くして星の動きが無くなった。どうやら布団に入ったらしい。
「ぬえ、ぬえ。これからどうするのよ」
「任せなさいって」
そういうとぬえは自分の口に正体不明の種を放り込んだ。ぬえ自身が星にとっての正体不明となって、驚かせようという魂胆だろう。今の星がさっきの話を気にしているのなら、星にはぬえが鈍色の女の子に見えるはずだ。しかし、もしかしてぬえ? 等、正体がばれてしまえばぬえの力は解け、いたずらは失敗に終わる。まぁそのときはそのときか。
「これでよし」
全く不思議な力だ。私はもう目の前のぬえがぬえであることを知っているから、当たり前のようだけれどそれがぬえの形をしている。それでも今ここに居ない人から見たら、とりあえずぬえ以外の物に見えるのだろう。まぁ、あんまり異形すぎるとここの人達は慣れているから分かるかもしれないが。
「じゃ、行ってくる」
「頑張って」
そういうとぬえはわざと廊下を音立てて歩いた。私は慌てて死角に隠れる。
星の部屋の前でぬえが立っていると、ゆっくりと障子が開いた。本当にゆっくり。外を確認しながらゆっくり、ゆっくりと開く星。
いい感じに開きかけてきたところで、ぬえが障子に手をかけて一気に開ける。
「貴女の体、ちょうだぁい」
私から見れば、ただぬえがキモイ声を出して立ってるだけでも、今の星にはそうは見えないはずだ。鈍色の、女の子に見えるはず。
星は固まってしまった。全く動かない。もう少し怖がると思っていたのだが。
ぬえもこの反応は意外だったのだろう、少し固まってしまったがすぐに我に帰って慌てて行動を起こす。
ぬえが星の首を掴んだ。
「きゃあぁぁぁぁぁ」
今まで星から聞いたこともない頓狂な声が発せられたかと思うと、星は泣き出してしまった。力は星の方が強いから直ぐに振り切れるだろうに、パニックに陥っている星にその思考は無いらしかった。
「貴女の体、ちょうだぁい」
とどめと言わんばかりにぬえが星を引きずりながら部屋へ入る。部屋を覗いてみると、既にぬえは星の首を解放しており、ただ面白おかしそうに笑っているだけだった。
「あははははー、星って本当に怖いの駄目なんだー」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
一方の星はといえば、布団に包まってしまい、がくがくと震えているのが分かる。もう、何を謝っているのかも分からない。恐らくまだぬえのことには気づいていないだろう。
こうして、いたずらは成功に終わったわけだ。
「何事ですか!」
聖が駆けつけてきた。状況を見て恐らく事の大半を理解した聖に、ぬえと仲良く一発ずつ南無三。まぁ、この後聖に怒られるのも分かっていたことではある。
「いやーまさかあんなに怖がるとは。ホントいいもの見れたよねぇムラサ」
「そうねぇ。星がまさか怖いの苦手だったとは、思わなかったわ」
もう夜遅いというのに散々こっぴどく叱られた私とぬえは、私の部屋で宴会の二次会をしていた。お酒はちょいとお台所から拝借。まぁ、多分だけど、問題はないだろう。
「それにしても本当に良くできた話だったわ。ムラサってすごいのね。人を驚かせる才能あるんじゃない?」
「あんたに言われたくないわ。それにあれはたまたまだって」
もう何本飲んだのだろう、二人になってからだけでもかなりの量を飲んだ。私は平気だが、ぬえはそろそろ限界みたいだ。夜も更けた。丁度明かりに使っていた蝋も残り短い。そろそろお開きでもいいだろう。
「ぬえ、そろそろ私寝るわ」
「そう、じゃあ私今日ここでこのまま寝るから。お休み」
「ちょっと……」
どうやらもう寝てしまったようである。お酒が回っているとはいえ、本当にすぐ寝てしまった。
面倒くさいなぁ、と思いながらも二人分の布団を敷いて、ぬえを一つの布団の上まで引っ張り上げる。人の部屋で幸せそうに寝言を言っているのが何だか腹が立ったが、私も鬼じゃないのでなるべく起こさないように丁寧に布団へ入れる。
さて、私も寝るとしよう。最後に星の可愛かった怖がり様を思い出して、目を瞑った。
はて、私は寝ているのだろうか、それとも起きているのだろうか。しとしとと、雨が降る音だけが聞こえる。朦朧としてはいるが、意識が続く。寝ているのだとしたら、不思議な夢だ。自分が今夢に居ると分かっている。寝ていないのだとしたら、なんだか寝付けない。多分そういうことだろう。
目は開けられないけれど、ここは自分の部屋ということが分かる。手を伸ばすと隣にぬえが居る。じゃあこれは夢じゃないのかな。
しかしどのくらい時間が経ったのだろう。蝋燭の火が消えているのは分かるのだが、詳しい時間は分からなかった。
暫く眠れずに意識だけでふわふわ考え事をしていると、廊下から足音が聞こえてきた。
こんな時間に誰がとも思ったが、まぁトイレか何かだろう。眠たい私は一々深く考えるという行動を拒否していた。
気づけば足音は無かった。聞こえるのは、雨音のみ。あれ、今そこで誰か止まらなかったっけ。もしかしたら聖がまだ何か用があったのかもしれない。そう思った私は立ち上がり、障子を開けた。
「はい、何です……」
今まであった眠気が、一瞬で吹き飛ぶ。目の前に立っていたのは、私が話を作ったときに勝手にイメージした、鈍色の女の子。
「ぬ、ぬえ!?」
「ひゅー、ふぁ、どーだムラサ、参ったか」
最初はぬえがふざけて私にもいたずらしているものだと思ったが、ぬえの名を呼んでも後ろから寝言しか聞こえない。もしもこれがぬえの力によるものならば、私がぬえかと問えば力は解けるはずである。
星の仕返しか。いや、私はこんなにヒョロヒョロとした女の子を知らない。
長い髪をなびかせながら、女の子が私と目を合わせてきた。
いや、目が合うことは無かった。
私が宴会で話したように、鈍色の女の子に目は無かったのだ。皮膚も所々腐りかけているようだった。
「な、ナズーリンですか? それとも星?」
完全にパニックになってしまった私は後退しながら分かりきっていることを問い続ける。
鈍色の女の子も部屋に入ってきた。
急いで私はぬえを起こす。
「起きて! 起きてぬえ!」
「ムラサー謝れー」
ぬえは起きる気配を見せない。
「あなたのからだ、ちょうだい」
べだべたとした口調で、確かにそういわれる。嘘だ、嘘だ嘘だ。だって、私のあれは作り話だ。こんなこと、絶対にありえない。
「く、来るな!」
私は目一杯弾幕を敷く。しかし鈍色の女の子はすべてすり抜けてしまう。弾幕は虚しく壁に当って、特殊な魔法で守られている命蓮寺の壁は弾幕を吸収する。
「ぬえ! ぬえ起きて! ぬえぇ!」
足元で寝ているぬえを精一杯叫びながら弾幕を撃ち続ける。しかし鈍色の女の子は徐々にその距離をつめ、等々私の目の前まで来てしまった。
「あ、あ……あ」
「ひさしぶりね」
鈍色の女の子がそう言ったと思うと、首を強く掴まれる。それきり私の意識は途絶えてしまった。そこからのことは、覚えていない。
自らの精神を守るため今回のことも再び忘れたとしても首には謎の跡が……
ジュディってww日本人じゃないのかww
「さぁ、物語は架橋だ。」いいとこで橋架けちゃ駄目です。「佳境」
「障子に手をかけて一揆に開ける。」鍬や鎌を手になだれ込んできますww「一気」
ところで貴方のことは私の中ではなぜかドジっ娘で固定されているのでクールキャラと言われても無理です。
星さんはムラサの話の中でも怖がりなことに。
いい感じの小話でした。星さんはギャップが可愛いのです、アブソリュートジャスティスなのです
>4様
自分で何回も読み返しても、いまいち怖いのかどうか分からなかったので安心しました。
>6様
作中のムラサも言っていましたが、怪談物を作って「こわい」というコメント貰うのって本当面白いですね。やみつきになりそうです。
>ぺ・四潤様
そうしてまた忘れたころジュディはやってきます。
彼女は人工的な皮膚で、呼吸もネバネバなのでジュディです。噛み付きはしませんが。
誤字修正いたしました。ありがとうございます。
超絶クールキャラですよ。今流行のクーデレってやつです。え、嬉しくない? そんな///
>11様
こんなにも誤字が……。ありがとうございます。
そしてまたいつか同じように話すのかもしれません。
>12様
こいしちゃんとぬえは近い能力だと思います。両方とも認識にかかってくると思うので、いつかからませたいなぁ、と。好きなキャラ同士が仲良いのが好きなだけです。
な、なんか褒められてしまった。褒めても何も出すものないんだからっ///
……しまった。これはツンデレか。
星さんキャラソートでギリギリ12位でした。あんなに可愛いのに。
怪談in怪談! 焦るわ;ww
しかし亡霊がおばけ怖がるって……ムラサといい妖夢といいww
星ちゃんマジ可愛いですよね。こないだガチイケメンの友達が星ちゃんのコスプレしたら、滅茶格好良くてふきました。やっぱり星ちゃんも格好いい系なのでしょうか。
そうしてムラサはまたいつか同じ話を皆にするのかもしれませんね。周りはそれに気がついて、前も聞いたことがあるということを指摘する。
ムラサが昔あった出来事を思い出してそしてその日の夜に……。
なんてことがあったら怖いですよね。
これはつまり、怖い話をしたら本当に恐ろしい目にあった話を話したっていうお話なんですよね!?ね!?
いや、別に怖いとかそういうわけじゃないですけど、ほら……なんていうかさアレじゃないですか!
今日は小さい電気をつけて眠ることにします。
いやぁそういう反応一番嬉しいです。こういう作品書いたなぁって気分になります。
小さい電気が急に消えてしまったら、部屋の外にご注意ください。もしかしたら、鈍色の女の子が立っているかもしれません。まぁ、きっと何かされても覚えていないでしょうから大丈夫ですけどね!