この先には、前作「昼間の星」の設定が受け継がれています。もし宜しければそちらを先に見ていただけると嬉しいです。
少し前までは皆一緒だった。
一緒に悪戯を考えて、一緒にお酒を飲んで、一緒に悪戯して、一緒に怒った相手から逃げて。とにかくずっと一緒だった。
それが今は、一人ぼっち。
「……」
最初はスターだった。
ある日突然一人で何処かへ行ってしまい、その日を境にいつも一人で何処かへと出かけて行った。それも嬉しそうに。
朝早くから出かけて夕方以降に戻ってくる。始めは不思議に思い、後をつけてみようと何度も思った。だが実行はしなかった。
妖精はある種の不死であるが、不変ではない。
とくに自分たちのように他の妖精よりも力を持つものは、はっきりとした自我を持っている。異変という異質な気配に毒され、凶暴化する単純な妖精たちとは違う。スターが何を思い、何処へ行くのかということに自分たちが口を挟むのはおかしなことだ、と思ったのだ。
そんなことが続いたある日、図らずも鴉天狗の届ける新聞によって彼女が何処に居るのかが解ってしまう。
彼女は博麗の巫女の元に居た。大きく掲載されている写真にはとびっきりの笑顔で博麗の巫女に抱きついているスターが写っている。
そのときの衝撃は忘れない。何故、どうしてスターが霊夢に抱きついているのか。
鴉天狗の情報は大半がゴシップである。そう、ゴシップ。あの博麗霊夢がスターと恋仲にあるはずが無い。何度も何度も自分に言い聞かせた。その度に「ではこの写真はなんなのか」と自問自答した。
スターが笑顔で霊夢に抱きつき、霊夢も嫌がる表情はみせていない。つまりこの写真こそが、ゴシップではないことを照明しているのではないだろうか?
「どうしてよりによって霊夢なのよ……」
サニーミルクの頬を涙が伝う。
スターサファイアは大切な友達であり、仲間であり、家族だった。もしも彼女が誰かを好きになったのなら応援し、その想いが実を結んだのなら「やったね」と言っただろう。
だが、その相手は霊夢だった。
サニーもまた、スターのように霊夢のことを少なからず想っていた。いや、この記事を見たときサニーは確信した。胸が張り裂けんばかりの痛みは、自分に恋という感情を嫌でも自覚させたのだ。
その頃だった。
ルナチャイルドも、何処かへ行ってしまうようになっていた。しかもルナの場合は何日も戻ってこなかったり、戻ってきたときも真っ先にベッドへ向かい眠りについてしまうということを繰り返している。
サニーはというと、一人で家に居座り、二人がいつ戻ってきても良いように食事を作って待っている。たとえ自分が好きだった相手と恋仲であっても、たとえ自分の作った料理を無視して寝てしまわれても、彼女達はサニーにとって大切な家族。どんなに辛くてもやめなかった。やめてしまえば、そのときこそ自分たちは完全にバラバラになってしまうのではないかという不安を抱いていたからだ。
しかし不安は不安を呼び、心を壊す。そして次第に疑心暗鬼に陥る。それでも無理をしていたサニーはいつしか情緒不安定になり、引きこもりがちになっていた。
何のことも無い。ただいつも通り生活しているだけ。それだけだというのに「スターは自分を裏切った」「ルナは自分を見捨てた」などと自分でもくだらないと思うような妄想に囚われ、サニーは所構わず涙を流してしまう。
時には大声で泣き叫んだこともあった。サニーは自分がおかしな状態にあることを理解していた。だが、どうしようもないことも理解している。
そう。どうしようもないことなのだ。
ある朝のことだった。
サニーがいつものように一人で窓を開けると、家のすぐ目の前に向日葵が咲いていた。いや、ただ咲いているわけではない。何十、何百という向日葵が両脇に控え、道を作っているのだ。
―――なんでこんなに向日葵が?
こんな所に向日葵を植えた記憶は無い。となればスターかルナが植えたのだろうか。
―――でも、何のために?
道は遠くまで伸びているため、咲いている本数は数え切れない。
昨日までは咲いていなかった。となれば昨日の夜から今現在、朝までの僅かな時間に向日葵を植えたのだろうか。
―――誰が?
サニーが色々と考えているときだった。
突然一本の向日葵が目の前に伸びて来、まるで手を差し伸べるかのようにその葉を差し向けてきた。
「……エスコートでもしているつもりなの?」
向日葵に返事は無い。当然と言えば当然である。
サニーはしばらくいぶかしんでいた。向日葵がこうも動くなど考えられようが無い。しかし現に目の前で向日葵は道を作り、一本の向日葵は自分に葉を差し伸べている。
誰かの悪戯だろうか。たとえそうでなくても、誘われるままに着いて行くのはおかしなことだろう。
だが
「いいわ。行ってやろうじゃないの」
サニーは涙を拭い、外へ飛び出した。
空を飛んでも良かったが、折角道を作っているのである。サニーは歩くことにした。
久々に踏む土の感触。久々に全身に浴びる太陽の光。まるで初めての出来事のようにサニーは感じた。
―――それにしてもどこまで続いてるのよ。
向日葵が作り出す道は長い。もう少しで自分たちの家の存在する森から出るころだろう。
―――面倒だから空を飛ぼうかな。
何処へ続いているのか、そして歩いてどれほど掛かる場所なのか。少し空から見てみようと思いサニーは空へ飛び上がったのだが
「ん? 空に上がれない?」
足は地面から僅かに浮いているが、どれほど空へ上がろうとしても自分の体が高く舞い上がる事は無かった。
ふと足首に違和感を感じて見やると、そこには足首に巻きつく向日葵があった。
「な、なんなのよこれ!」
一向に足から離れない向日葵を引き剥がそうともがくサニーだが、結局無駄な行為に終わる。ところがサニーが諦めて地面に足をつくと向日葵は自然とほどけ、力なく大地に横たわった。
「……なにこれ?」
向日葵も力尽きたのだろうか?
サニーが再び空へ飛び上がろうとすると。
「何で急に元気になるのよ!」
向日葵はまたサニーの足首に巻きついた。どうやらこの向日葵、意地でも歩けと言っているようだ。
理由は解らない。
「わかった、わかったわよ! 歩けばいいんでしょ歩けば!」
サニーは半ば自棄になり、足取り大きくズンズンと歩き出した。目尻には薄っすらと涙が浮かび上がっていた。
「なに……ここ……」
向日葵が作り出す道を進んでいった結果、サニーは思わず言葉を失う景色をその目で見た。
見渡す限り一面の向日葵。一様に太陽に向かって頭を持ち上げ風に踊り、その周囲を手の平程の大きさしかないひまわり妖精達が楽しそうに飛び回っている。
まるで小さな幻想郷のようでもあった。自然溢れる世界に笑顔で飛び回る妖精。自分も少し前まではひまわり妖精たちのように笑顔で幻想郷を飛び回っていたものだった。
そんなことを思うと、また涙が頬を流れてしまう。
「あらあら。何がそんなに悲しいのかしら?」
突然話し掛けられ、サニーは声のした方向へ素早く視線を向ける。そこに居たのは、日傘を携えにこやかに微笑む緑髪の女性。此方へ向かってくるが、その動きが一々優雅な動作だった。
「余りに向日葵たちが美しいから思わず涙を流してしまったのかしら?」
「あんたには関係ないでしょ!」
涙を流している所を見られたのが恥ずかしく、声を荒げながら涙を袖で拭う。
「あら。関係なくはないわ。ここは私の領域だもの。ここに踏み込んでいる限り、貴方は私とお話しをする義務があるわ」
「……何なのよあんた」
「私? 私は風見幽香。幽香でいいわよ。貴方は?」
「そうじゃなくて―――」
「貴方の名前は?」
「……サニー。サニーミルクよ」
「サニーね。待っていたわよサニー。じゃあ、こっちへいらっしゃい」
有無をいわさぬ感じであった。
突然現れ、突然話し掛けてきたかと思えば、今度は突然背を向けて向日葵の奥へと進んでいってしまう。
「ま、まってよ!」
幽香が立ち止まったのはすぐだった。そこには一軒の家が建っている。彼女の家だろう。
「ちょっとそこに座ってて。今紅茶を入れてくるわ」
そう言って彼女は家のすぐ横においてある木のテーブルと椅子を指差し、家の中へ入っていってしまう。サニーは何故か幽香の言葉に反抗できず、言われたとおり椅子に座った。
幽香が紅茶を入れている間、サニーは手持ち無沙汰になり今日の出来事を思い出していた。
―――今日は色々あったわ……。何で向日葵が家の前で道を作ったり、向日葵が私の足を引っ張ったり……。
―――向日葵?
サニーは何かを思い出したかのように辺りを見回した。周囲の景色は一面の向日葵。
―――確かさっき、待っていたって……。
考えすぎ、というわけではなさそうだった。向日葵で道を作り、自分をここへ来るように誘導したのは間違いなく彼女だ。しかし解らない。
向日葵で道をどうやって作ったのか説明できない。歩くだけでもかなりの距離である。とうてい昨日の夜から朝までに終わるような作業ではないだろう。そして、もし彼女がこの場所に自分を呼んだのだとしても、その理由が無い。彼女は待っていたといっていたが、れっきとした初対面である。
「お待たせ」
幽香の声が思考を遮り、彼女はテーブルに紅茶を二つ置くと向かいの椅子に腰をかけた。温かいうちにどうぞ、と勧められサニーは紅茶に口をつける。
「―――!」
「美味しいでしょ。お気に入りのお店で買っているのよ」
「へぇ……」
紅茶の半分ほどを飲み干した辺りで、サニーは意を決して幽香に聞いてみることにした。
「あの」
「なに?」
「朝起きたら、家の前に向日葵が道を作っていたの。それ、もしかして幽香がやったの?」
「そうよ」
「どうやって?」
「私はね、花を操ることが出来るのよ」
「花を?」
「そうよ」
幽香は右手をテーブルの外へ伸ばし
「本当はこんな風にする必要はないのだけれど」
指を一度だけ、パチンとならした。その直後、テーブルの横に一際大きな向日葵が伸び始め、まるで早送りを見ているかのようにその大輪を咲かせる。
「これが私の能力よ」
「……もう一個聞いてもいい?」
「どうぞ」
「どうして私を呼んだの?」
最も疑問に思っていたことだった。名前も知らない初対面なのに、彼女は待っていたと言っていた。見たことも無い人なのに、向日葵を三月精の家の前に咲かせて道を作った。何故サニーがそこにいると知っていたのか。
「私は花を操れると言ったわね?」
「うん」
「同時にね、言葉も解るのよ。どんなに離れていても、花から木に、木から草に、草から花に、“彼等”が話す事柄がここへ伝わってくるの。そして、たまたま耳にしてしまったの」
幽香の表情が曇っていく。どこか悲痛な面持ちで、彼女はサニーから視線を逸らし向日葵の方を向く。
「森に住む妖精が、来る日も来る日も一人で涙を流し、終いには泣き叫んでいるって」
「……」
「泣くということは、とても良いことだと思うわ。恥じることではないわよ。それだけ貴方には感情というものが強く残っている証拠だもの。
でも、一人で泣くのは良くないわ。誰にも聞いてもらえず、わだかまりを心の中に残し続けることは絶対に駄目。
だから、話してみなさい。どんなことでも受け入れてあげるから」
「あっ……ああ……」
サニーは目頭が熱くなるのを感じた。
ずっと誰かに聞いて欲しかった。受け入れて欲しかったのだ。
「我慢しないで泣きなさい。今は私がいるわ。涙が枯れるまで泣いて、泣き尽くした後に話を聞かせてちょうだい」
「……うあ……あああああぁああぁぁぁぁぁぁぁ!」
サニーはひとしきり泣き、ことの経緯を幽香に話した。
霊夢を好きだったこと。家族同然の仲間が霊夢と想いを通わせていたこと。そのことによる葛藤。ばらばらになる三人組。未来への不安。
溜め込んでいたものを全て吐き出すように、サニーは話しつづけた。
気付けば日は傾いていた。
「なるほどね。事情は解ったわ。どうにかしてあげたい所なんだけど、こればっかりはどうしようもないのよね」
「ううん、いいの。聞いてもらえただけで結構楽になった」
「そう? そう言ってもらえると私も嬉しいわ」
「……ねぇ、そのうちまた話を聞いてもらってもいい?」
「なに言ってるの。明日にでもいらっしゃい」
「いいの?」
「花って言うのはね、語りかけてもらうと元気になるものなのよ」
そう言って微笑む幽香には、今までの張り付いた笑顔とは違う柔らかさと温かさがあるように思えた。
笑顔で見送る幽香に手を振りながら帰路についたサニーは、途中でまた下らない妄想に囚われた。スターが自分を見て嘲笑し、ルナが軽蔑の目を向けてくる。いつもならきっと泣き出している。だが、そのときは何故か、幽香の姿が思い出され自分を元気付けてくれた。
涙はもう流さなかった。
小さな客人が帰った後、彼女は深い溜息をついた。
最初は興味本位だったのだ。草花達が何かおかしな噂をしているのを小耳にはさみ、どんな人物なのか試しに呼んで見たのだ。そして会った結果幽香が思ったのは「余計なことをしなければ良かった」だった。
小さい体に似合わず重いものを心の中に溜め込んでいた。妖精たちはどうも精神的に幼い。自己解決の出来ない彼女達は、放っておけば発狂してしまう可能性さえある。
幽香は妖精や人間のように弱小な生物には極力関わらないようにしている。
何故か?
弱い種族は必ずと言って良いほど悲しい悩みを抱いてしまう。それを見ると、どうしても助けたくなってしまうからだ。今去っていった妖精も、例外ではない。
あの妖精は少しも笑わなかった。どこか暗い表情で、ちょっとしたことですぐ泣き出してしまう。彼女を助けるには、笑顔と元気を取り戻す必要がある。それには時間と、自分のような話し相手が必要になる。
「明日にでもいらっしゃい」と自分は言ったことを、今更になって後悔した。「明日必ず来い」と言うべきだった。
「私は医者じゃないのだけれど……」
日が沈み、項垂れる向日葵に語りかける。
向日葵達はただ「頑張って」と彼女に答えるだけだった。
サニーが太陽の畑に現れてから二週間ほどたった今
「それでね! 今日は魔法の森に行ってきたんだけど―――」
日に日に彼女に笑顔が戻りつつあり、涙を流すこともなくなってきた。元気に走り回ったり飛び回ったりと、きっとこれが彼女の本来の姿なのだろうと幽香は思う。
後は、もう一押しである。
「ねぇサニー」
「何、幽香?」
「今日は夜、空いているかしら?」
「うん」
「じゃあちょっと散歩に行きましょう」
「夜に?」
「ええ」
数日前、永遠亭という場所に住まう不死の医者に心の病の治療法について聞いてきた。その医者曰く、とにかくまずは話をして悩みを聞いてあげること。重要なのは相手に同意し、親身になって考えてあげることだという。そして彼女に楽しいと思う行為をさせること。これには「我儘とは違うわよ」と釘をさされた。そしてもう一つ、治療法を聞いた。
きっと、大半の者なら効果があるものだと彼女は言ったし、幽香も同意した。
「何で夜に?」
「夜だから意味があるのよ」
「ふーん」
「それまで何しましょうか?」
「弾幕ごっこ!」
弾幕ごっこは一分も経たずに終わってしまった。
そして夜。日は完全に暮れ、足元さえも全く見えない状態となった。
幽香は今日のこのときの為に用意した提灯に灯りを灯す。
「じゃ、行きましょうか」
「う、うん」
「どうかした?」
「いや何も! 別に恐くなんて無いし、ただちょっと真っ暗な中を歩くのって危ないなと思っただけで―――」
「ふふっ」
「あー! 酷い、幽香笑った!」
「気のせいよ……ふふっ」
「やっぱり笑ってるじゃん!」
初めて会った頃には考えられない程の反応に、幽香は思わず顔が緩んでしまう。
「あ、また幽香優しい顔してるね」
「優しい顔?」
「そう。たまに優しい顔してる。笑顔だけど笑顔じゃない感じの」
「私には良くわからないわ……って、そんなことより早く行かなきゃ駄目じゃない」
「そんなこと言われてもやっぱり恐くは無いけどなんていうか」
「言い訳は言いから、ほら」
幽香は提灯を持たない手をサニーに差し出す。
サニーはというと、幽香の手を見、次には幽香の顔を見、と交互に頭を動かしている。
「早く繋ぎなさいよ」
「あ……う、うん」
小さな手が幽香の手に握られる。
幽香はこのとき気が付いていないのだ。提灯の灯りに照らされるサニーの顔が、妙に赤らんでいたことに。
目的の場所は、太陽の畑からあまり遠くない場所にある。
人里の近くを流れる川。そこが幽香の選んだ場所だった。
「着いたわよ」
「ここは川……だよね?」
「そう。何の変哲も無い川。でも、今日は一味違うわ」
提灯の蝋燭を吹き消し辺りに暗闇が戻ると、サニーがまた慌て始めた。
「ちょっと幽香、何で灯りを消して―――」
「静かに!」
「むぐぃー!」
幽香の手で強引に口をふさがれたサニーは、しばらくの間何をか叫んでいたようだが、周囲の変化に気付き大人しくなった。
川の真上を飛ぶ蛍の群れ。その幻想的な光景は、さながら地上の星とでも言うべきであろうか。
また、何処からか音楽が流れていることにも気がついた。この幻想郷で音楽を演奏する者達はサニーにも心当たりはあったが、こんなにゆったりとした曲は初めて聴くものだった。
「綺麗……」
サニーの口から漏れた言葉、綺麗。それが出るということは、彼女にはちゃんとした感情が、感動する心があるということだ。きっと、彼女はもう大丈夫だろう。
不意に、サニーの頬を涙が伝っているのを幽香は見た。サニーもそれに気付いたようである。
「あれ? おかしいな……別に悲しいなんて思っていないのに……」
「涙は悲しいときだけに流れるものではないわよ。嬉しかったり感動したときにも流れるもの。私は貴方が羨ましいわ」
「え?」
「感動して涙を流せるのですもの。私の涙は、もうとうの昔に枯れ果ててしまったわ」
「何で?」
「長く行き過ぎたか、もしくは生物の命を奪いすぎたからかしらね」
「それ、どういうこと……?」
「私は数え切れないほど人間も妖怪を殺してきたわ。弄って、いたぶって、絶命するまで何度も何度も何度も何度も。この手も、どれほど血に染まっているか」
夜の帳は口を軽くしてしまう魔力を孕んでいるのだろうか。幽香は何故か溢れてくる言葉を止めることが出来なかった。
「サニー。貴方は、こんな私を軽蔑するかしら?」
「……」
二の句も告げられないほど、自分は彼女に嫌われてしまったのだろうか。いや、それならそれでいいのかもしれない。
自分と言う存在から彼女は開放される。こんな血に汚れた手で彼女の小さな手を握ってしまったことを後悔した。
「幽香、初めて自分のことを話してくれたね」
「え?」
「いっつも幽香は私の話を聞いてくれて、でも幽香は、自分のこと、何も話してくれなくて……私……私……」
大粒の涙がサニーの頬を伝う。
「それに今、幽香、私に不安を私に、ぶつけてくれたじゃない……。それが、嬉しくて……」
改めて思う。何故自分は彼女に聞いたのだろうか「こんな私を軽蔑するのかしら」と。何故こんなことを不安に思ってしまっていたのか。
幽香が結論を出したその感情は、彼女がまさか、と首をかしげるようなものだった。
―――私が? 妖精に?
そんな馬鹿な。まるで馬鹿馬鹿しい。
「私は、幽香のこと大好き……。軽蔑なんて、するわけ無いじゃない……」
「……!」
きっと、彼女に対して自分がやってきたのはこういうことだったのだ。不安を打ち明け、それに答えてもらう。たったそれだけのこと。それがどちらに転ぼうとも、自分は答えを見つけられ、心に溜まるものをスッキリと浄化できるのだ。
「ありがとう。サニー」
「ありがとうは、私の台詞よ……」
涙を流しながらもまるで太陽のような笑顔と、太陽ほど力は無くとも地上の太陽―――向日葵のような微笑は、その夜輝きつづけていた。
後日。
サニーは自分の家から荷物を引っ張り出し、引越しを始めた。
行き先は当然決まっている。
「幽香ー!」
声を掛ければ、微笑を向けてくれるその人の元へ。
舞台裏
「いいわねリグル。蛍をありったけ川に集めなさい」
「待ってくださいよ幽香さん。いくら私が蟲の王でもそんな無茶は―――」
「蛍という種族が滅びるのと、私の無茶を聞くのと、どっちが良いかしら?」
「すいませんでした! やります! やらせていただきます!」
「私が来たら静かな曲をながすのよ。間違ってもいつものように騒いだら……」
「騒いだら……」
「どうなるんですか……?」
「ゴクリ……」
「死刑に決まってるでしょプリズムリバー三姉妹」
「「「静かな曲を演奏させていただきます!!」」」
何してんですか幽香さんw
このかんじだとルナ編も期待していいんだろうか。
家庭崩壊的な三月精に寂しさを感じますが、元々が他人だったのですからいつかはこういう日が来てしまうのでしょうか。
この続きも楽しみにしています。でもその前にルナ茶ですか。
ルナ茶は誰が似合いますかねー。パチュリーの頭の三日月に興味を示してこっそり見てたら本から目を離さないまま「何そんなところでコソコソ見てるのかしら」とか言われたり。
ネグリジェっぽい服とか、酔っ払って二人で▲な口してたりとかで共通点あったりww
他のキャラであんまりイメージ湧いてこないな。誰かいい人いたらお願いします。
あと、あなた仕事速すぎwww
脱字らしきモノ
「~無視して寝てしまわれも~」→「しまわれても」
ではないかと。
次回が有りますれば楽しみに御待ちしております。
しかし舞台裏こええぇぇぇぇぇっ!
やっぱ幽香さん怖ぇ
ルナ期待してます。
この乗りだと、魔理沙かアリスかなぁ。楽しみにしてます!
こういう素直な幽香も見てていいなと思えました。
>>ペ・四潤様
「パチュリーの頭の三日月に興味を示してこっそり見てたら本から目を離さないまま「何そんなところでコソコソ見てるのかしら」とか言われたり。
ネグリジェっぽい服とか、酔っ払って二人で▲な口してたりとかで共通点あったりww」
その手があった! パチュリーが捨てがたい……。
「あなた仕事速すぎwww 」
誉め言葉として受け取ってよろしいでしょうか!?
>>謳魚様
「~無視して寝てしまわれも~」→「しまわれても」
前回二箇所も間違えたので、今回は三回も読み直したから間違いがあるわけな…………………………修正しました………………アー…………。
「次回が有りますれば楽しみに御待ちしております」
有難う御座います! もし次上がったときには見てやってください。涙流して喜びます。
>>舞台裏
何故かこんな光景が脳裏に浮かんだので最後に付け足してしまいました。ちょっとでも面白いと思っていただけたら幸いです!
>>次はルナですね、わかります。
が、がんばりまふる!
そうそう、ルナ茶。二人ともスリッパが似合いすぎだったりとか。鈍くさいとこあったりとか。音を消してたらパチュリーに「妹様とか魔理沙が騒いでも気にしないで読書できていいわね」とか言われたり。なんか他人とは思えなくなってきた。
手回ししてる幽香もまたよし!
ひとつ訂正ですが、三月精の名前は途中で区切りませんよ。
サニー・ミルク → サニーミルク
ルナ・チャイルド → ルナチャイルド
スター・サファイア → スターサファイア
が正しいです。
「三月精の名前は途中で区切りませんよ」
「えっ!?」と思い三月精を読み直しましたら、まさにその通りでした……。指摘有難う御座います。
今までのも全部修正しました。
舞台裏でフイタwww
続編期待してます!