Coolier - 新生・東方創想話

不夜城ベッド

2010/01/20 20:16:09
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レミリアがまず夕方おきて最初にやることは何か。
 飯ではない。歯磨きでも無い。体操でもない。おはようの挨拶でもない。
 棺桶のフタを開けるのだ。

 そりゃそうだろう、誰だって毛布をめくって起き上がってその一日が始まる。
 レミリアの寝床は吸血鬼なので棺桶、というだけの話だ。
 つまり、フタが開かなければ一日は始まらないのだ。







 ガンッ ガンッ







 開かない。





 開かない!!




 レミリアの棺桶は年代ものである。
 なんと340年前のものだ。
 母に買ってもらったばかりの時は嬉しくて毎日磨いていたが、今や宝物でもなんでもなくただの棺桶。
 すっかり錆び付いていたのだ。

「あ、き、な、さ、い、よっ!」



 ガンッ ガンッ ガンッ ガンッ ガンッ



 棺桶は開かない。
 何故だ、300年以上付き合ってきた仲じゃないか。
 これが反抗期というものか。それとも最近構ってやらなかったからグレたのか。
 それは悪かった、明日久しぶりに遊んでやろう。
 どこで遊ぶ? 遊園地か、動物園か。
 どっちも幻想郷には無いが。
 ねぇ……頼むからひらいてよ……。
 私たち家族でしょう?
 後ろめたいことはないわ!心を開いて!

 さぁ、私の胸に飛び込んできなさい――――!!

 ……手を広げようとして棺桶の渕で指を突いた。痛い。
 もう怒った!
 貴方がその気ならこっちだって願下げよ!

「家出してやるぅぅぅぅぅ!!」

 バァン!!



 レミリアのデーモンキングクレイドルによって棺桶のフタは粉々に砕け散った。



「あ…………。」





「貴方ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「なにやってんですかお嬢様。」

 …………。

「おはよう咲夜、今日もいい天気ね。」
「おはようございますお嬢様。今日も脳天気ですね。」

 ちなみに今は夜である。

「……貴方それが言いたかっただけでしょ?」
「そう言うお嬢様は何がしたかったのですか?」

 しまった! うまくごまかせたと思ったのに!

「その……棺桶が壊れた。」
「見ればわかりますわ。」
「いや、だからさ、その……か、買って?」
「では、買ってまいりましょう。」

 よしごまかした!
 ……多分。







 その朝。

「咲夜……これは何?」
「ベッドですわ、お嬢様。」
「べ…………。」

 ベッド。
 吸血鬼には縁のないものだ。
 いやそれ以前に。

「なんでこんなに赤いのかしら。不気味なんだけど。」
「!?」
「いや何その反応。赤なら好きだとか思ってたの?」
「ああ、紅じゃないと駄目ですか。」
「違うわよ。んなこだわりないわよ。貴方私を何だと思ってたの。」
「まさかお嬢様はレミリア・レッド様だったんですか!?」
「違うから!どういう勘違いしたの!名前じゃなくてベッドの話をしているの!」
「何か問題でも?」
「ええ。色が非常に気に入らないわ。」
「新鮮な人間の血をふんだんに使用した綺麗な色だと思いますが。」
「血染めだったの!?余計に不気味だわ!」
「大丈夫です。血液99.8%の無農薬、感染症の心配もありません。」
「ツッコミ所が多すぎる!何一つ大丈夫じゃないわよ!なんでそんな薄気味悪いような事を平然と口にできるの!?貴方本当に人間!?」
「お嬢様に言われたくないですよ!!」
「な、なんでそこだけキレるの!?ちょっとびっくりしちゃったじゃない!」

 少し息を整えて。

「分かった。ベッドはもういいわ。それ以前に私はベッドで寝るつもりないし。」
「えーまじすか。」
「…………まぁマジなのよ。とにかく、私は棺桶を買ってこいと言ったでしょう。」
「しかしお嬢様、ぶっちゃけ棺桶なんて売ってません。幻想郷にはそんなならわしありませんからね。」
「あーそうか……。でもさ、主人のワガママ叶えるのも従者の役目じゃない?」
「確かにそうですねぇ。わかりました。まぁ旧棺桶を元にすれば材料も少なくて済みそうですし、作る、もとい直しましょう。お時間をいただければ。」
「流石は咲夜、よろしく頼むわよ。それで、完成するまでの私の寝床は?」
「ベッドで。」
「嫌。」
「ワガママ言わないでください。」
「たった今ワガママを承諾してくれたのに!?」
「偉ければなんでも叶うと思わないことです。」
「なんで上から目線!?」
「まぁ実際偉いですからね。」
「何を言い出すの!」
「知らないんですか?財布を握っている人が1番偉いんですよ。」
「預けてんのよ!」
「実際握っている以上はどう扱おうと私の勝手ですわ。」
「従者を間違えたっ!?」
「まぁまぁそう言わずに。どこの家庭でも一般的な事ですよ。私がお母さんで、貴方がお嬢様、もとい大黒柱のお父さん。」
「むぐ……妙に的確な例えね。」
「ええ。ですが、まだ例えに過ぎないのも事実……なので籍を入れに行きましょう。」
「なんで!?発想がぶっ飛びすぎてついていけないんだけど!?」
「理屈など不要です!私はお嬢様を愛している、他に何か問題がありますか!?」
「性別的に大いに問題があるわ!」
「大丈夫、リードしますんで。」
「誰が性的にと言ったのよ!」
「さぁ!今夜は私と一緒に不夜城ベッドインです!(今夜は寝かさないぜ的な意味で)」
「分かった分かったもうベッドで寝るから離せ触れるなさっさと棺桶作れぇ――――!!」








(ああ……まったく)

 その1日の、1番最後にすることは何か。
 妄想タイムである。
 人妖関係なく、99%以上がやっているであろう事だ。
 もっとも、今晩の私に関しては寝心地の悪さをごまかすためでもあるが。
 寝床につき、目をつむる。
 体を休めると、動くのは頭だけとなる。
 そうすると、思考に集中が偏る。一番勉強がはかどる瞬間かもしれない。
 できたらいいなぁ、睡眠学習。

 そんなわけで、だ。

 なんであんなのがうちのメイド長なんだろう。
 確かに頼りになるけど色々問題点(主に性格、もとい性癖?)がありすぎて一々疲れるのだ。
 確かに真面目過ぎるのもあれだが、なんというか必要以上に馴れ馴れしいというか……。
 いや、馴れ馴れしいだけならいい。パチェのような友人関係のような感じであればなにも問題はあるまい。
 そう、美鈴だ。美鈴くらいが調度いい。
 多少の無理も聞いてくれるし、適度に忠実で優しいし、気も利く。(確かそんな能力だった気がする。)
 今度気が向いた時にでも咲夜と交換してみようか。
 ……にしても眠れない。
 枕が変わると眠れないのと一緒だ。まぁ私はそんな繊細でもないが、棺桶からベッドだ。凄まじい差である。
 まず柔らかい。
 これは間違いなくボ〇ルド。
 でも鉄臭くはない。
 これは間違いなくファブリ〇ズ。
 あと広い。
 これから寝るというのにスペースが無駄。持て余す。
 しかも天井が高い。
 なんか落ちてきそう。目を開けたらなんかが顔を覗き込んでいたり……天井になんか張り付いていたり……。
 ……いや、幻想郷的には何もおかしくは無いか。
 だが、それはそれで落ち着かない。
 あらゆる生物の二大もっとも無防備な時は"食べてるとき"と"寝ているとき"だ。
 わざわざ寝ている姿を曝す意味が分からない。
 それこそ、棺桶に入り、他の棺桶と一緒に並べておけばカモフラージュになるし、棺桶が半ダースもある縁起でもない部屋は真の勇者もびびって逃げ出すに違いない。
 まぁワ〇ロックがお目当てなのなら図書館に案内するが。















「おはようございますお嬢様、今朝はよく眠れましたか?」
「無理。」

 即答してやった。
 だが実際そうである。
 かなり寝不足だ。

「ちなみに棺桶の方はもう一日お時間をば。」
「えー……。んなもん時間操ってパパっと作りなさいよ。」
「パパと呼んでほしいんですか?」
「言ってねぇよコラ」
「冗談ですよ。ですが、時間を操るにしても限界があります故。もうしばらくお待ちください、ダディ。」



神槍「スピア・ザ・グングニル」



 って外したし。
 時を止めて逃げたか、便利だなぁ。
 肝心な時に役にたたないのが玉に傷か。









 そしてまた、私はベッドに向かい合う。

「また会ったわね。」

 ベッドは答えない。
 真っ赤なベッドは依然私の部屋の隅に鎮座していた。
 まがまがしいオーラを放つそれは、見るだけで私の眠気を吹き飛ばす。
 まるで寝れない。寝るための道具なのに入れば最後、私に眠ることを許さない。
 永遠の夜を与える寝具、故に不夜城ベッドと呼ぶ。
 もっとも、私が寝るのは朝だが。

「上等じゃない。」

 昨日は思考に逃げた。
 しかし、今日の私は逃げない。
 ベッドを、全身で受け止めよう。
 真の強者は、いつでも己を試している。
 それた己の限界を知るためだ。
 真の強者は、勝利に価値は無い。
 敗北が、己の限界だからだ。
 ならば、己が敗北するその時まで挑み続けるのが強者。もとい、天才。
 だから私は逃げないのだ

 毛布をめくる。紅い生地の下にはまた、紅い生地があった。
 腰をかける。足を乗せ、勢いよく毛布を引き、私は悪魔に身を預けた。

「…………!!」

 鋭利な刃物のごとき冷たさが体を包んだ。
 ひやりと、冬の気温に冷やされた布が私の体温を奪う。
 暖かさは眠気を助長する。しかし、冷たさは眠気を阻害する。
 なんてことだ、先手を打たれたのだ。
 眠気はもうすっかり覚めた。冷めているだけに覚めた。
 だが、まだ負けちゃいない。誰だって目を閉じていればいつかは寝る。
 ここからは我慢勝負だ。あまり好ましい勝負ではないが、逃げは許されない。
 私は……勝つ!!








 なんだというのだ。
 これは一体、なんだというのだ。
 この暖かさはなんだ!
 全てを包み込むような暖かさ。聖母にも勝るとも劣らない包容力。
 馬鹿な。さっきまであんなに冷たかったのに、何故、今になってこうも私を優しく包み込んでくれる?
 まさか……これこそがツンデレだというのか。
 いや、それはきっと違うのだろう。
 そう、これが彼(?)の本質なのだ。
 私が冷たく当たった。彼から目を背け続けた。
 だから、冷たく感じた。
 私は後悔した。謝った。心の奥底から彼に謝った。
 すると、次第に気が楽になっていき……。

 気付けば、寝ていた。













「お嬢様、棺桶出来ましたよ。」
「!?」

 レミリアは硬直した。否、世界が硬直した。
 なんてことだろう。私は今、ベッドに心身を預けている状態である。
 そこに、彼が帰って来てしまった
 それは、浮気現場に突如出張から帰って来た夫が現れたかのごとく修羅場。
 棺桶が私に問い掛ける。何をしているんだ。
 ベッドは棺桶に返す。お前こそ何なんだ。
 私は二人をどうすることもできない。
 全て私のせいだ。私がケリをつけなければならないのに。
 私は何をすればいいのだ。
 どちらかを拒絶しろというのか。
 出来ない。私には、出来ない……!
 ……ごめんなさい。レミリアはとんだ浮気女です。
 こんな……こんな私に……どちらかを愛する権利も無いっ!!

 私は紅魔館を飛び出した。








「霊夢……私、仲直りしてくるわ。」

 深夜、刻々と眠る時間が迫る中、私は博麗神社で霊夢に言った。
 霊夢は眠たげな目で答えた。

「うん。今すぐ帰れ。」
「思えば……結局これも逃げだったのよね。昨日逃げないと決めたのに、私はなんてことをしてしまったのかしら。こんな問題の先送りに何の意味なんてないのに。きっとこれは、誰かがケリをつけられるような問題じゃないんだと思う。けど、だから私が罪を背負わなければならな
「いいからさっさと帰れってんのよボケ!いい加減眠いのよ!」










 私が帰ると、ベッドがいなかった。
 ホワイ、何故、どうして?

「妹様が"いらないの?じゃあ私が貰うー"って。」

 そしてそこには棺桶が一つ、残っていた。
 棺桶は、私に言った。お帰り、と。
 だから私はただいま、と返した。
 迷う必要など無かったのだ。
 大事なのは外見でも、中身でもない。

 "絆"なのだ。

 私は二代目相棒を軽く撫で、よろしく、と呟いた。
 咲夜は私の肩にそっと手を置いて言った。

「二代目お母様と呼んでもいいんですよ。」
「お前は黙ってろ。」






 美鈴との交換の件、本気で考えてもいいかもしれない……。
①まずは美鈴を何かに張り付けておきます。
②足元に大きめの容器を置いておきます。
③私(咲夜)が服を脱ぎます
④セクシーポーズをとります
⑤×××します

「そしたらあら不思議、数十分で大量の血が
「美鈴の血だったのかよ!?」

そのころのフラン
「美鈴の匂いがする~♪」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 タイトルを思いついてあとはオールアドリブでした
過剰睡眠摂取症候群
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コメント



0.3260簡易評価
11.90名前が無い程度の能力削除
色々とひでぇwww
12.80ぺ・四潤削除
「おはようございますお嬢様。今日も脳天気ですね。」
あまりの違和感の無さに一瞬スルーしてしまった。
19.100名前が無い程度の能力削除
>えーまじすか。
いい感じにはっちゃけてるなぁ。
27.100名前が無い程度の能力削除
小悪魔=ベ○マスですねわかります
28.100名前が無い程度の能力削除
すげぇwww
こんなに笑ったのはひさしぶりだwww
32.80名前が無い程度の能力削除
主従関係フランクってレベルじゃねぇw
33.80名前が無い程度の能力削除
籍を入れにいきましょうに吹かざるを得ないwww

だが後半若干失速気味かなぁ…
35.100名前が無い程度の能力削除
>私はお嬢様を愛している、他に何か問題がありますか!?
何の問題もないな
37.80名前が無い程度の能力削除
タイトルおいしいです
中身もおいしいです
38.80名前が無い程度の能力削除
>えーまじすか。

何この瀟洒な従者
46.100名前が無い程度の能力削除
これがパーフェクトメイドか……さすがだな
47.100名前が無い程度の能力削除
センス抜群すぎるwww
56.100名前が無い程度の能力削除
めーりんが大変なことに……

フラめー、レミめーフラグすか?

咲夜さん、さすがとしか言いようがないな。
57.100名前が無い程度の能力削除
……変態だぁ!! (褒め言葉w)
61.90玖爾削除
>おはようございますお嬢様。今日も脳天気ですね。
違和感に気付かない、それだけ無駄が無ひといふことで有る。
かういふのを「瀟洒」といふのだと、正に実感した。
65.無評価名前が無い程度の能力削除
素敵な咲夜さんだ。
70.90ずわいがに削除
あとがきのせいで10点上がってしまったorz