博麗神社。そこは幻想郷の秩序を保つ巫女が住む場所。
よくこの場所を訪れるのは霧雨魔理沙という魔法使いぐらいなものだが、宴会があれば幻想郷中のあちらこちらから鬼、妖怪、神など様々な種族が集まる。その所為もあってか、普通の人間は殆ど近寄らず普段は閑散としている。
「ふぅ。お茶は美味しいし暇なのは平和な証拠。良いことだわ」
そんな神社の母屋から少女の声がする。
彼女こそが博麗霊夢。彼女を良く知るものは「お茶中毒者」という印象を持っていることもある程お茶を飲んでいる。無論、本人に自覚は無いが。
今日もまた、一日中母屋の縁側でお茶を飲んで一日が終わると思っていた昼下がり。
「こんにちは。霊夢」
珍しい出来事が起きた。
「はー……。お茶なんて久しぶりだわ。最近お酒ばっかりだったから」
「ふーん」
一応来客であるのでお茶を出した霊夢だったが、隣に座っている人物をよくよく見れば何故ここに居るのかと、不思議に思う他なかった。
彼女は数多いる妖精の中でも名前を持っている数少ない一人。
スターサファイア。
三月精と呼ばれる三人組の一人で、いつも三人でよく悪戯をしに現れるのだが今日は珍しく一人だった。
「で、何しに来たわけ?」
「……つれないのね」
「当然でしょ。いつも悪戯をしに来る妖精がわざわざ一人で私の所に来るなんて、死ぬ覚悟は出来ているのかしら?」
「妖精は死なないわよ」
まるで某花使いの挨拶のような発言だったが、スターは軽く流してしまう。普通に会話できるあたり、別段落ち込んでいるわけでもない。
もしかすると彼女は囮で、姿を消して残りの二人が何処かに潜んでいるのではないかと思い周囲の気配を探ってみるが、当りは無い。どうやら悪戯を仕組んでいるわけではないらしい。
「今日は私一人よ」
周囲を気にしていた霊夢に気付いたのか、スターはお茶を啜りながら言う。
「何しに来たのか、と問われれば理由があって来たと答えるわ」
「その理由は?」
「ぶほっ! ゴホ! ごほっ……そんなの言えるわけ無いじゃない!」
何故か途端にむせるスター。お茶が気管に入ったのだろうか。スターの顔は少し赤みを帯びていた。ついでに何故か怒鳴られた。理不尽である。
「ふぅん。ま、悪戯じゃなければ何でも良いけどね」
しばらく霊夢はスターと隣り合わせでお茶を飲んでいた。
―――別に新たな発見って訳じゃないけど、こいつって妖精にしては結構大人しいのねぇ。
霊夢の知っている限り妖精というのはいつも小うるさく、悪戯のことしか考えていないような連中ばかりである。あの大人しそうな大妖精ですら、実は結構アクティブな性格だと知ったときは驚いたものだった。てっきり妖精たちの悪戯を諌める姉さん的なものだと思ってばかりいた。案外スターの方がその役目に適しているのかもしれない。
「あんた達妖精って、何で悪戯するの? 本能?」
何となく疑問に思っていたことだった。
何故妖精は悪戯をするのか。
「質問に答える前に聞いていい? 私って霊夢から見たら悪戯者?」
「うん」
「……」
何をあたりまえのことを、と霊夢は思い即答した。
今まで三人で現れては様々な悪戯をしてきて、これが悪戯者に見えなかったら何だというのか。
心なしかスターが項垂れている気がするのは気のせいだろうか。
「……二種類に分けられるわ。
妖精は自然の権化。自然のある限り妖精に終わりは無い―――死なない。永遠というもの程つまらないものは無いわ。だから暇つぶしとして悪戯をする。これが一つ。
もう一つは、ちょっかいをだして自分の存在をアピールしたいというものね。自然とは、人間が何気なく素通りする道端の木や花。あまりに“自然”すぎて人はその存在を忘れがちになる。だから自然の権化である妖精を通して自分の存在をアピールするのよ。もっと構ってくれって。もっと私を見て、ってね」
「へぇ。あんたって結構賢いのね」
「………鈍感………」
「え? 何?」
「何でもないわよ!」
ボソッと呟いたかと思えば、今度は突然立ち上がった。そして何故かまた怒鳴られてしまう。
なんとなく理不尽だ。
「何でもないわよ!」
何となく苛立ちがつのっていた。ただ、半分は自己嫌悪である。
彼女にとって自分とは「悪戯してくる迷惑な妖精」というものでしかないということが判明した。これは早急に改善する必要がある。
―――でも、幾らなんでも鈍すぎるわよ……。
『もっと構ってくれ。もっと私を見て』
何気なく付け足したつもりだったが、ほんの少しも気付いていないのであれば酷い話である。どれだけ自分が勇気をだして言ったことか。
ある種の告白めいたものだ。気付いてもらえない時ほどのピエロ感といったらこの上ない。
「今日はもう帰るわ!」
―――何で私はこういうときに冷静になれないのかしら……。
ついつい勢いで帰宅宣言をしてしまう。本心ではもっと彼女と話していたいのに、だ。だがここで立ち止まったら余計変な妖精と見られるだろう。スターが空へ飛び立とうとしたそのときだった。
「えっ?」
不意に背後から身体を抱きしめられていた。
他でもない。博麗霊夢に。
「れ、霊夢っ! 何して―――」
「私は鈍感じゃないわよ」
耳元で霊夢はそう囁き、首を背後に向けた私が見たのは
「―――」
悪戯っぽく微笑む霊夢の顔だった。
「~~~!」
声にならない声を発し、霊夢の腕を振り切って空へ飛び立つ。きっと今、自分の顔は熟れたトマトも真っ青な赤色に染まっているだろう。
「暇ならいつでも来なさいよ! 悪戯しなくても構ってあげるし、あんたを見てあげるわよ!」
「……お、大声で言うなー!」
青く澄んだ昼下がりの空の中に、星の叫びは溶けて消えた。
後日。
やけに霊夢にべったりな妖精の姿が目撃されたという。
ゴシップ好きな鴉天狗の書く新聞の一面には
『博麗霊夢に熱愛発覚!! 相手は妖精のスターサファイアか!?』
という大きな文字とともに、今までに無い笑顔のスターが写されていた。
だがいい!実にいい。
しかし霊夢さんドSだな
新たな黒髪カポーの誕生にイやっほぃ!
いつも悪戯しながらも去り際にチラッと霊夢を見るスターの寂しそうな目に気づいていたのでしょうか。
ゆうかりんにはやっぱりひまわりが似合いそうなサニーでしょうか。妹のようにチョコチョコ元気に後をついていくみたいな感じで。続きや別キャラ勢も楽しみにしています。
時々誤字がありました。
「お茶が器官に入った」気管です。
「初投降です」いきなり白旗揚げちゃ駄目ですww「投稿」
あと、よく言われるので「・・・」は「……」のほうがいいかもしれません。
大妖精もなんかおとなしめに見えたがなぁ…2、3コマしかいないが
>>ペ・四潤様
「投降」→「投稿」
まさかー。幾ら私が⑨でもそんな間違いは……間違ってる!
修正しました。
「・・・」→「……」
ちゃんと変換したし何かの間違いで……もう一段階変換できる!
修正しました。
「ゆうかりんにはやっぱりひまわりが似合いそうなサニーでしょうか。妹のようにチョコチョコ元気に後をついていくみたいな感じで」
そのアイディア貰ったー!
>>謳魚様
が、がんばりまふ!
最初の魔理沙の字が、『魔理紗』なっとりますぞ。
「最初の魔理沙の字が、『魔理紗』なっとりますぞ」
本当だ! ま ち が え て る!
修正しました。
スターが結構好きな俺としては、黒髪同士百合百合してくれると非常にご馳走なわけで。
タグを拝見した時点でニヤニヤしっぱな俺病気なわけで。