Coolier - 新生・東方創想話

白き花は散って

2010/01/18 19:22:50
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 かつての私は空っぽだった。

 体は大きく、力だけが強く、野の獣と変わらぬように生きていた。

 否。断じて否――獣の方がまだものを考えていただろう。

 私は、ただ生きていただけだった。何も考えず何も感じず……木石と変わらぬ生。

 妖怪として人語を解すも誰かと語らうことはなくただ外敵を排する日常を繰り返した。

 私の棲みついていた山。今はもう名も思い出せぬ――そも名などあったのか。

 いつの間にか私はその山の主として祭り上げられていた。

 私の居場所を奪おうと襲い来る敵を倒し続けていたら私より強い者が居なくなっていたのだ。

 妖怪たちは私を守り神のように扱った。どのような敵が来ようと私が倒すと信じていた。

 私は彼らを守ったことは一度もない。敵対しないのなら襲わぬだけだ。

 その奇妙な勘違いにも私は何も感じなかった。間違いを正す気も起らなかった。

 山の主の名はどんどん大きくなっていった。周辺で山の主の名を知らぬ者は居なくなった。

 それでも私の空虚な生き方は変わらなかった。誰とも語りあうこともなく生きていた。

 しかし、それはある日突然変わる。

 人間が私の元を訪れるようになったのだ。

 いやあれはもう人間ではなかった。人間の形をした妖怪だった。

 邪法に染まり過ぎた人間の成れの果て。――魔法使い。

 彼女は人間のように私に話しかけてきた。名を名乗ったようだったが憶えていない。

 敵ではないようだったので私は襲わず彼女の話を聞いていた。返事はせずただ聞いていた。

 いずれ山の妖怪たちのように飽きるか諦めるかして帰るだろうと思っていた。

 案の定彼女は帰っていった。何をしに来たのかよくわからない。

 それを不思議に思うこともなく私はその場に居続けた。

 だが彼女は翌日も現れた。昨日と同じように私に一方的に話しかける。

 その内容は特別なものではなかった。

 山道が険しいですね。だんだんと暖かくなってきましたね。あなたの名を聞かせてくれませんか。

 この女は何がしたいのだろうと疑問に思った。

 初めて、私の心が動いた気がした。

 そういえば問われていた。答える。山の主と。

 答えると女は怪訝な顔をした。山の主という名なのですかとまた問う。

 私に名は無いと答えた。野山に生きる妖怪には珍しいことではない。

 それは悲しいと女は言った。悲しい? 意味がわからない。悲しいとはなんなのだ。

 私の顔を見て、女は顔を歪めた。何度か見たことがある。泣く寸前の顔だ。

 そもなんで泣くのか私は知らなかった。泣くと云う行為を理解していなかった。

 すると女は言った。私が名前をつけましょうと。

 名を付ける。それがどうしたのだろう。好きなように呼べばいい。虎だの山の主だの呼ばれたように。

 すっと女の手が私の顔に触れた。

 あなたの眼はとても綺麗ですね。まるで星のようだと女は言った。

「そうだ――しょう。星。あなたは星です。金色の星の瞳。あなたの名は星です」



 程なくして私は山を降りた。

 彼女に連れられて。

 それが――寅丸星と聖白蓮の出会いだった。


















 かくりと顎が落ちる。

 珍妙な落下感で目が覚めてしまった。……机に頬杖したまま眠っていたようだ。

 はて、寝ている間妙なものを見た。あれは夢か――否。聖の教えてくれた夢とはもっとおぼろげなものだ。

 あれはまだ憶えている過去の記憶。聖の教えてくれたものとは違う。ならば夢ではないのだろう。

 想起、というやつだろうか。過去を掘り起こす行為。寝ながらするものとは知らなかった。

 後で聖に訊ねてみるか――ああ、過去のこととはいえ間違いを見つけた。

 私は山を降りたのではない。寺に入ったのだ。

 聖白蓮が山の中に建てた人と妖怪の為の寺に。

「星ー、星居ますかー?」

 ん……聖に呼ばれた。またいつものあれだろうか。

 立ち上がり戸を開ける。

 ここは寺のお堂の奥。妖怪である私が住んでいることがばれぬように人払いの結界が張られている。

 聖はその結界を張った本人だ。何故いつも呼び出すのだろう? 聖の寺なのだから自由に入ればよかろうに。

 幸い人の気配は無い。表まで出て聖のところへ向かう。

「何かご用でしょうか聖」

「はい」

 いつもと変わらぬ満面の笑み。

「お散歩に行きましょう」

 またこれだ。どうして毎日私を誘うのかわからない。

「忙しかったでしょうか?」

「いえ。今日の分の写経は終わっています。行きましょう」

 応じれば深まる笑み。

 ……聖はいつも笑っている。笑うと云う行為がまだ私にはよくわからない。

 聖と共に暮らすようになってそれなりに感情を理解できるようにはなったのだがわからないことは多い。

 並んで歩き寺の周りを散策する。

「陽射しが強くなってきましたね」

 言われ天を見上げる。特に日光が苦手というわけでもない妖怪である私には大差は感じられない。

 そも夏は日差しが強くて当たり前だ。なんで態々言葉にするのだろうか。

 視線を戻すと聖の横顔が見えた。私よりも頭半分は低いだろうか、それでも人間としては背が高い。

 こっそりと覗き見ただけだが大概の人間はもっと小さかった。聖ほど背の高い人間は極稀に見かける程度。

 彼女は妖怪となった人間である。やはり妖怪故に立派な体を持つに至ったのだろうか?

「うん?」

 見ていることに気付かれた。

「すいません」

 あまりじろじろと見るのは無礼だ、と教わっていたのを思い出す。

「いえいえ。星も随分人間らしくなりましたねぇ」

「そうでしょうか?」

 言われてもぴんとこない。私はまだまだ知らないことだらけだと思う。

 彼女のように人間らしい妖怪とはまだ言えない。

「確かに……十全とは言えませんが」

「すいません。もっと上手く化けれればよいのですが」

 私は金髪金目――獣の相を色濃く残し、さらには並外れた体躯を持つこの姿にしか化けられなかった。

 どうにも変化の術と相性が悪いらしい。形こそ人のものだが十分に異形と言える。

 私に匹敵する体躯など鬼くらいしか見たことがない程だ。

「いいえ、それはよいのです」

 聖の言葉に首をかしげる。このような異形でもよい? どういう意味だろう。

「それにしかなれぬのなら、それがあなたのもう一つの真実の姿なのですよ」

 ……これが、私の真実の姿? つまり……人として生まれていたのならこの姿になったということだろうか。

 それとも化けていると気負わなくともこの姿を維持できることを言っているのだろうか。

「あなたは頭が硬いですねぇ。そんなに考え込まなくともよいでしょうに」

 苦笑されてしまう。しかし考えねばわからない。私は彼女ほどものを知らぬのだ。

「おや、蓮が咲いていますね」

 呟きに目を向ければ池に花が咲いていた。

「白い蓮……あなたの名ですね」

「おや、もう字を覚えたのですか?」

「はい。読み書きは一通り出来るようになりました」

「うーん。物覚えの早い……」

「はい。毘沙門天のお役目も大概は理解しました。まだまだ至らぬと思いますが」

 突然、聖の表情は曇った。何か、いけないことを言ってしまったのか。

 考えるがわからない。彼女が何か気に病むようなことなど……

「ごめんなさいね、星」

「え?」

 突然謝られても何故謝られるのかわからない。

 聖はよくしてくれている。私に学と住む家と名を授けてくれた。

 謝られることなど一つもない。

「毘沙門天の代理など押し付けてしまって」

 続く言葉は尚更納得がいかぬ。

「何を言うのです聖。私はそれで見聞を広められましたし、なによりようやくあなたに恩を返せるのですよ。

私にとってはいいこと尽くめです。謝られることではありません」

「いいえ。私は何も知らぬあなたに押し付けてしまった。先のあなたならもっとよく考えて選べたでしょうに。

私はただ……あなたから自由を奪っただけなのかもしれないと、そう思うのです」

 苦悩。そうだ、聖が浮かべる表情は苦悩だ。

 私のことで苦しみ悩んでいる。

 その悩みの原因がよくわからないのだが……私がよいと言っているのに何故彼女は苦しむのか。

 ただ、私は――

「聖」

 嫌な、気分だ。

「そのような顔をしないでください。私は……あなたは、笑っている方がいいと思う」

 何故笑うのか理解できない。私にはまだ真似できない。

 それでも、聖の笑顔は嫌いではない。彼女にとても似合っていると思う。

 笑顔でなく、こんな苦しそうにしているのは……とても――嫌だ。

「――ふふ」

 いつの間にか、聖は笑っていた。

「言うようになりましたね星」

「言う? 言葉は最初から」

「違いますよ。まったく、あなたは将来女泣かせになるかもしれませんねぇ」

 女……? 私も女だ。女泣かせ……?

 ……聖を泣かせると云うことだろうか?

「む、う。よくわかりませんが……よくないことのような気がします」

「ええよくありませんね。でもよいことでもあるのかもしれませんよ?」

「……さっぱりわかりません、聖」

「あなたが魅力的だということです」

 言って、彼女はにっこりと笑った。

 やはり――私はまだまだわからないことだらけだ。



 季節は巡る。



 夏は終わり秋。

 葉が散る季節。

 その日も聖は私を連れ出し散策に出向いていた。

 風が冷たくなりましたね、と彼女は言う。

 言われて気付く。言われねば気付かぬ程度の変化だった。

 元人間の彼女に比べ生まれからして妖怪である私は鈍いのだろうか。

 それでも……寒いとは、一応感じる。

「そうですね」

 応えると聖はまた微笑む。

「星はどんどん人間らしくなっていきますねぇ」

 以前にもそんなことを言われた。あの頃と変わらず私はそれを実感できていないのだが……

「昔よりもおしゃべりが楽しくなりました」

 彼女は笑ってそんなことを言う。

 楽しい。楽しい、か――それも私はまだよくわからない感情だ。

 でもそれでいいと思う。

 彼女が楽しめているというのならば、それでいい。彼女の笑顔が絶えないのならばそれでいい。

 私は……彼女の笑顔が好きなのだ。

「あ、今笑いましたね?」

「え?」

 己の顔に触れてみる。よくわからない。

「ふふふ、ようやくあなたの笑顔を見れました」

「聖、私は笑っていたのですか?」

「ええ、うっすらと。中々に素敵な笑顔でしたよ」

 笑う。彼女のように。私にはまだまだ遠いと思っていたのだが、笑えた?

 そんなことがあるのだろうか。私は笑うと云う行為を理解出来ていないのに。

 だが、彼女が嘘を吐く筈がない。ならば、私は……

「……私も、少しはあなたに近づけたのでしょうか」

 問いかける。

 己だけではわからない。聖に導いてもらわねば先に進めない。

「私を目指さずともよいのですよ?」

「ですが、私はあなた以外の人を知らない。私の心を動かしてくれたのは聖だけなのです。

あなた以外など……道が定まらない。木石のように生きてきた頃と変わらなくなってしまう」

「星」

 髪に触れられる感触。

 聖は彼女のそれより高い私の頭を撫でていた。

「焦らずともよいのです」

 優しく――指で髪を梳かれる。

「なりたい己が見つからぬのなら見つかるまで待ちましょう。焦り道を狭めることはない。

もっと時間をかけてゆっくりと先を見ればいい。今見えているのが全てではないのですから。

走らず歩きましょう。走っていては路傍の花を見逃してしまう。雲の流れにも気付けない。

星、私はあなたにもっと素敵に育って欲しい。私などよりももっともっと」

 彼女より、など想像の域を超える。

 知らぬことなど私には出来ない。そのようなことを望まれても応えられない。

「私はそれがなにより嬉しい」

 だが彼女の笑顔を見ていると……出来るのかもしれないと、思う。

 彼女の喜ぶ顔が見れるのなら頑張れると、思う。

「まずは素敵に笑えるようになりましょう」

「……はい」

「さ、お散歩を続けましょうか」

 彼女に手を引かれ歩き出す。

 笑えるように。ならば無駄に懊悩とするよりは聖を見て学んだ方がよいだろう。

 彼女の姿から、笑顔から学んでいこう。

 いつか……聖の望む私になれるように。

 ゆっくりと寺の周りを歩く。

「美しいですね」

「……うつく、しい?」

 彼女は散る葉を見つめてそう言っている。

 私も見上げる。赤く色を変えた葉が散っている。それだけだ。

「聖――私にはただ葉が散っているだけにしか見えません。今まで何百と繰り返されただけの風景です。

あなたたちの言う美というものは理解しているつもりですが、これは違うのではないでしょうか」

 問えば聖は微笑みを私に向ける。

「何故そう思うのです?」

「これは職人が作り上げたものではない。ただそこらにあるものです。

誰かが精魂込めて作ったものを美と言うのでしょう?」

 寺に寄進された品々が美しいということはわかる。

 どのようにして作られたのか想像も出来ない程精巧に作られた仏像や織物。

 あれらこそが美しいものだと思っている。

「間違っていますか?」

 何故か、聖は満足げに微笑みながらも首を横に振った。

「いいえ。間違っていません。でも間違っています」

 それは反対の言葉ではないのか?

 間違っていないのに間違っている……?

「……あなたの言うことは難しい」

「ふふ、あなたのそれは美の一面に過ぎないということですよ」

「一面?」

「毬を思い出してください。見れるのは表だけ。裏があるでしょう?」

「はぁ……ありますね」

「毬の刺繍は裏にもあります。表だけ見て美しいと言うのは滑稽ですよ」

 思い浮かべた毬をくるりと回す。裏側。隠れた部分の美。

「……これは、人間が作ったものの裏なんですか?」

「ある意味そうです。自然が作る美。人間が作る美の対極。裏表ですね」

 言って聖は苦笑した。

「どちらが表かは私にもわかりませんけどね」

「あなたにもわからないことがあるのですか」

「私の知っていることなどほんの一握りですよ。世界は広い。全てを知るなど何百年あっても足りません」

 途方もない話だった。それでは美一つとっても理解には及ばない。

 いつになったら私は彼女の望む域に辿り着けるというのだろう。

 聖でさえ知らぬことなど、私には……とても。

 気付けば、また頭を撫でられていた。

 それほどに不安げな顔をしていたのだろうか。

「少しずつ学んでいきましょう。あなたにはもっとこの世の美しさを知ってもらいたい」

 ――彼女に触れられていると心が落ち着く。不安が和らいでいく。

 少しずつ……ゆっくりと、か。焦らずともよいという彼女の言葉が甦る。

「私と一緒に勉強しましょう」

 ああ、きっと――彼女と一緒ならやり遂げられる。

 いつかきっと、彼女の望む私になれる。



 季節は巡る。



 秋は足早に去り山々が白く染まる冬。

 吐く息も凍る季節。

 私は寺で一人聖の帰りを待っていた。

 布教、妖怪退治の名目で出向き迷える妖怪を救済する聖の行脚。

 年に数度行われているそれの間私は寺を守っている。

 聖の居らぬ時に近くの里を襲う妖怪を追い払ったりして毘沙門天の威光を示していた。

 妖怪の救済を唱える聖にとってそれは矛盾とも取れる行いだったが……人間も救わねばならぬ。

 妖怪だけを、人間だけを救うのでは救いではない。争いの火種にしかならぬと聖は言っていた。

 彼女の理想とは、妖怪と人間が手を取り合う平和な世。争うことのない世界。

 世迷言だと誰にも言われる遠き理想。それを彼女は目指していた。

 ……多少は学が身に付いた程度の私でも、その理想は理想でしかないとわかる。

 あまりにも遠過ぎる。遥か古来より妖怪と人間の関係は変わっていないのだから。

 妖怪は何処まで行っても妖怪で、人間は何処まで行っても人間だ。

 それは――妖怪へと身を窶した聖が体現していることでもあった。

 彼女は妖怪となった人間。されどその心は暖かい陽の光に満ち溢れた人間のままだ。

「――人も……妖怪も、変われるのですか。聖」

 写経をしていた筆が乱れる。

 聖と共に生きるようになって数年。共に歩んで数年が過ぎた。

 されど救世の道は見えてこない。人間は変わらず妖怪に襲われ、妖怪は変わらず人間を襲っている。

 人間は無暗に妖怪を恐れ妖怪は無暗に人間を喰らう。

 私は……変われた。人間や妖怪を襲わずとも生きられるようになった。

 しかし全ての妖怪がそうなれるとは思えない。ましてや、人など。

 聖――私は不安です。

 あなたと離れるだけで疑問が湧き出して止まらない。

 あなたとならやり遂げられると信じたのに、あなたが傍に居ないだけで決意が揺らぐ。

 私はまだ、あなたのように妖怪を救うことすら為せない。

 ――――強大な妖力を感じる。

 見知った妖力と、見知らぬ妖力。

 一つは聖のもの。もう一つは……?

 立ち上がり表へ出る。

 不穏な気配は感じないが、これは一体何なのか。

 やがて雪の向こうに聖の姿が見えた。

「ただいま帰りました」

 変わった様子は見受けられない。ただ後ろに一人、妖怪を連れていた。

 気にはなるが……挨拶と申し送りが先だろう。

「おかえりなさい聖。留守の間に流れ者の妖怪を一匹追い払いました」

「……そうですか」

 浮かぬ顔をされる。

 心が痛む――私が彼女のように妖怪を説得出来ればよいのに。

「手傷は負わせていないのでまだそこらに居ると思いますが」

「では探してきます。あ、星、この子は……」

「よろしく先輩」

「?」

 にこりと笑いかけられる。先輩とはどういう意味か。

「この子は旅先で出会った妖怪で、村紗水蜜という子です。これから寺で共に住むことになりました。

細かいことは追々……私はその妖怪を探してきますのでよろしく頼みますね」

「わかりました。いってらっしゃい」

 聖を見送り、僅かに戸惑う。共に住む? そんなことは今まで一度もなかった。

 傷ついた妖怪を一時的に保護したことは何度もあったが共に暮らすようにはならなかった。

 妖怪の事情もあったし、なにより寺が妖怪だらけになっては人間の信心を得られないからだ。

 改めてその妖怪を見る。私や聖には及ばぬものの背の高い少女の姿をした妖怪。

 大きな錨を背負った人間にしか見えぬが、緑色の瞳が妖怪であることを物語っている。

 ムラサ、といったか。

「あの」

 声を掛け、言葉に詰まる。なんと言えばよいのだろう。

 思えば会話など……聖以外とはまともにしたこともない。

 迷っていると、ぽんぽんと気安く腕を叩かれた。

「お土産あるわよ」

 そうして私は何故か酒盛りに付き合わされることとなった。

 私はお茶を啜り、ムラサは持ってきた酒樽を開け呑み始める。

「ねぇ、本当に呑まないの?」

「私は仏門に帰依していますので……不飲酒戒は破れません」

「かぁー、酒の味も知らんとはかわいそうだねぇ。あーそうだ名前。名前ー。

私はさ、村紗水蜜。あなたは?」

 もう酔っ払っているようだった。赤ら顔で絡んでくる。

 一層酒は飲むまいと心に決め応じる。

「私は寅丸星。この寺で毘沙門天の弟子をやっています」

「毘沙門天! そりゃ凄いねぇ。悪鬼退治といやまず名前の出てくる神様じゃないの」

 まあ、間違いではない。毘沙門天像の多くは武将姿で邪鬼を踏みつけた形だ。

 仏敵を打ち据える鉾を持ち明王の如き憤怒の相を表している。

 私は、弟子とは名ばかりで――実際にはこの寺で聖と共に修行を積んでいるだけなのだが。

「ってことはそこの鉾と宝塔が毘沙門天の証なわけねー」

 部屋の隅に置かれた物を指差し彼女はへらへらと笑う。

 本物の毘沙門天に託された宝塔。毘沙門天と私の法力が籠められた法具だ。

 ……私の注いだ力は厳密には法力ではなく妖力なのだが。

 いや、まずは彼女のことを訊こう。何も知らぬまま酒盛りをしている場合ではない。

「あの、ムラサ。あなたはどういう経緯でこの寺へ?」

 聖が居ない以上彼女に訊くしかない。酔っ払いがどこまで話してくれるか不安であるが。

「あー私? 私はさぁ、聖に救われたのよ」

 酔いながらも答える声には熱が籠っていた。

 笑みが薄れる。

「私はずっと舟幽霊をやってたのよ。来る船来る船沈めてさ。殺伐としてて、嫌な毎日だった」

 僅かに、後悔する。

 訊いてよいことではなかった。傷を掘り返すような真似をしてしまった。

 そうだ、聖が連れて来たのだから彼女にだって深い事情があって然るべきなのに。

 突然ばしんと肩を叩かれる。

 驚き顔を上げればにっこりと笑うムラサの顔。

「そこに来たのがあの人! なんかすごい法力使って私を解放してくれてさ!

いやもう聖様々だわ! 本当に、感謝してもし切れないわ……怪物になり切った私の心を……救ってくれた」

 重そうに言いながらも彼女の顔に浮かぶのは笑顔。

 気にするなと言ってくれたのだろうか。

「これからは罪滅ぼしと御恩返しの日々だー、忙しくなるわぁ」

 晴々とした笑顔で彼女は言った。

 過去は過去と割り切り得られた今を大事にしようとしているのが伝わってくる。

 強い人だと、思う。私とは違う。私のような空っぽな過去じゃないのに彼女は綺麗に割り切っている。

 村紗水蜜。彼女はただ聖に救われるだけの妖怪では、なかった。

「あなたは?」

 問い返され、戸惑う。

 私には彼女のように語る過去など何もない。

 ただ空虚に生きてきただけで……聖に拾われなければ今も何かを思うことすらなかっただろう。

 語ることなど――何一つ。

「私は……」

 これが劣等感と言うものなのか、得体の知れぬ焦りを感じる。

 何を言えばいいのかもわからない。

「この山の主を」

 突き動かされるように事実だけを述べた。

 それ以上言うことが見つからない。

 ムラサはあれだけ話してくれたのに私はこれだけとは不公平に過ぎる。

「ははぁん。なるほどね」

 納得の声に首を傾げる。

「なるほど?」

 一言で納得されたのも疑問だが、何を納得されたのかも疑問だ。

「うん、聖に言われてたんだよ。あんたと友達になってくれないかって」

「……それが、どうなるほどになるのです?」

「いやほら、あなた強いじゃない? その上元山の主。まわりの妖怪は畏れとか、敬っちゃってさ。

あなたと対等の友達に、なんてのは無理でしょう」

 それは、そうだが。

 聖が言っていたことも驚きだがあっさりと言い当てるムラサにも驚く。

 兎角私は妖怪との付き合いが無い。会話をするのも聖だけなら共に生きるのも聖だけだ。

 私の世界には聖以外居ないと言っても過言ではない。

 しかし、ムラサに友達になれと? 友。言葉は知っているが……何の意味があるのか。

 聖のすることに間違いはないと知ってはいても疑問に思う。

 私は毘沙門天の役目を果たし聖の望む私になればよいだけなのに。

「道理でこんな無愛想な鉄面皮になるわけだよ」

 ……私でもそれが悪口だということくらいは知っている。道理とまで言うか。

 知らず睨んでいたのか、ムラサはへらへら笑いながら謝った。

 そのまま強引に肩を組まれる。

「これからは私が友達よ寅丸」

 ……とても酒臭いのだが――何故か、あまり嫌な気はしなかった。



 季節は巡る――



 雪解けの季節。

 草木は芽吹き春の訪れを知らせている。

 聖と出会い十年が過ぎた。

「くぁー……暇ねぇ」

 写経する横でムラサは大欠伸を掻いている。

 はっきり言って邪魔でしかない。

「山の麓から頂上まで走ったらどうですか。一人で」

「なにその寂しそうなの。なんか途中から面白くもないのに笑いだしそうで怖い」

「じゃあ往復十本で」

「余計壊れるわ!」

 飛んでくる手刀を軽く受け止める。

 ムラサは妖力は強大だが腕力は然程でもない。

 こと体術では私に勝てる道理はなかろう。

「なによその余裕の微笑み……ここで勝負つけようかぁ?」

「聖が居なくて寂しいのはわかりますがね。私に喧嘩を売っても聖は帰ってきませんよ」

 聖はいつもの行脚中。私とムラサはお留守番だ。

 だがここ暫く妖怪が里を襲うことはなく、私たちは寺に籠り切り。

 暇を持て余すのもわからないでもない。私は兎も角奔放な性格をしているムラサには辛かろう。

「むきー! なんでもかんでも見透かしたように! 寅丸のくせに!」

「どういう意味ですかそれは! なんで私の名がヘタレの代名詞みたいになってるんです!」

 思わず立ち上がる。私より七寸は背の低いムラサはそれだけで気後れしたのか後ずさった。

「ま、待った。ちょっと錨持ってくるから……」

「待ったなし。将棋と同じです」

「じゃ、じゃあ将棋! 将棋で勝負よ! うんこれなら公平!」

「腕力で行きましょうかたまには」

 ぱきぽきと指を鳴らす。丁度いい。ここのところ鈍ってしょうがないと思っていたのだ。

 ムラサ相手なら思う存分腕を揮える。

「大丈夫。痛いのは一瞬ですよ」

 一撃で意識を刈り取るから。

「ひひひひ卑怯者ー!!」

「あなたの自由にさせたら庭の池に沈めたりするでしょうが!!」

 殴りかかるが逃げ回られ当たらない。すばしっこいったら!

 走って追いかけても小回りの利くあちらの方が有利だ。

 っく、チビであることを有効活用しおって……!

「今なんかムカつくこと考えたね!?」

「考えましたよチビ!」

「私がチビなんじゃない! あんたらがデカ過ぎんのよ!」

 確かに私も聖も背が高い。でもムラサが小さいのは事実なのだ。

 ふふ、小さい小さい。

「なにしたり顔で呟いてんのよ!? 沈めんわよ!」

「あーあーきこえなーい」

「このアマぁっ!!」

 がしっ。

「あ」

 よし捕まえた。

「あの。寅丸さん? なんで私を抱えて池の方に」

「沈めようかなと。燈籠にでも縛り付けて」

「みぎゃー! 誰かー! だーれーかー!」

「仲がいいですねぇ」

「え」

「え」

 声に振り返れば聖が居た。

「あ、お、おかえりなさい」

「ただいま星。元気でよいですね」

「聖! いいところに! 助けっぶぁっ!?」

どぼーん

 ムラサは沈んだ。完。

「今回の行脚はどうでしたか?」

「……あの、ムラサが」

「がぼごぼごぼごぼっ!」

「あれはお気になさらず」

 にっこりと微笑む。

「ああ……こんな時に素敵に笑えるようになるなんて」

 笑っているような困っているような微妙な表情を浮かべる聖。

 その後ろに見慣れぬ姿があった。

「あの、そちらは?」

「あ、ああこの子は……」

「私は雲居一輪! こっちは雲山! よろしく!」

 元気のいい娘ですね。どうやら妖怪のようだが……うんざん?

「おおぅ」

 もくもくと煙のようなものが湧き出し形を成す。

 これは珍しい……入道か。

 厳つい顔をしているがその眼差しは真っ直ぐだった。

 ふむ。どうやらまたこの寺の同居人が増えるようだ。

「私は寅丸星。よろしくお願いします。一輪、雲山」

 目礼をする。今気付いたが、この一輪という娘は背が高い。

 聖よりも大きい。私ほどではないが……三寸は背が低い程度。

「これはまたムラサの奴が騒ぎますね」

 にやりと笑う。当の一輪は首を傾げる。

 ふふ、まあいずれわかることだ。

「とるぁまるぁっ!!」

 ざばっとムラサが池から這い出て来る。

「随分勢いよくぶん投げてくれたわねコンチキショウ!

しこたま頭打って溺死の前に撲殺されるところだわ!」

「いや小さくて投げ易かったんですよははは」

「こんの……! おうおう新入り。あんた知らないだろうけどこいつ昔ねぇ」

「ムラサ! 何を言おうとしてるんですか!」

「黙れ! 今じゃこんなんだけど昔は鉄面皮でむっつりですかしてたのよこいつ!

ちょっとでかいからってかっこつけてさ! 面白いよねあははははは………………

…………あなたもでかいわね」

「あーうん。気にしてるからあんまり言わないで欲しいなー」

 苦笑する一輪と肩を落とすムラサの対比が面白い。

 くっく、雲山とは比べ物にならないし、当分はこの寺で一番小さいのはムラサのままだ。

 っと。あまりムラサにばかり構っている状況じゃないか。

「それで、一輪? その僧形は」

「ああこれ?」

 問えば見せつけるように彼女はくるりと回った。

「私は聖の姐さんに惚れたのよ! その慈悲深い御心に! だから仏門にくだったの!

入道にさえ慈悲を見せるその深い懐……! 聖の姐さんに帰依するわ!」

 ……いやそんなに熱っぽく語られても。

 聖を見れば彼女は苦笑していた。

「私は帰依される程の者ではないと言っているのですが……」

 熱心な信奉者というわけだ。まあ、そう云う者が出て当然の行いをしているのだからしょうがない。

 謙虚な聖は困惑するだろうがそういうものだと諦めてもらおう。

「では一輪と雲山の歓迎会といきますか。ほらムラサ、何時までも落ち込んでないで料理してくださいよ。

あなた私が作ると文句言うじゃないですか」

「……うるさい。ほっとけ」

 あーもう。

 意味もなく身投げしかねない勢いで落ち込むムラサを抱えて寺に戻る。

 その間も一輪は聖になにやら熱心に語りかけ困惑させていた。

 ああ――これからまた騒がしくなるな。



 ――――そして数十年が過ぎた。



 騒がしく楽しく充実していた日々。

 聖と一輪と雲山とムラサと――私が共に過ごした数十年。

 いつの間にか私は笑えるようになっていて、空っぽだった心はどんどんと埋められていった。

 聖が居らぬ間も絶えず誰かが居て、私は独りになることはなくなった。

 孤独というものを忘れるには十分な月日。

 これからもそんな毎日が続くと信じて疑わなかった。

 永遠と蜜月が続くのだと信じ切っていた。



 私は知らなかった。

 蜜月とは――いずれ変わり終わるから月の字を冠しているのだと。












 冬の寒い日だった。

 前日から降り続ける雪は山道を閉ざし寺には誰も訪れない。

 修行も終えすることのなくなった私は木簡を読んでいた。

 古い歴史書の類だ。寄進されたのか聖の持ち物なのか定かではない。

 読み物としては十分。蝋燭に火を灯し黙々と読み耽る。

 風が強くなってきた――戸をがたがたと揺らしている。

 ムラサも一輪も雲山も聖に用事を頼まれて出かけているから……私が後で雪かきをしておかないとな。

 どうせやるなら人手は多いに越したことは無いのだが、聖にやらせるわけにもいかないし。

 がたりと一際大きく戸が傾ぐ。これは戸の修繕も必要かと顔を上げれば、聖が立っていた。

 ……見たこともない程に険しい顔をしている。

「聖……?」

 声を掛けると彼女は慌てて戸を閉め結界を張り直した。

 なんだ? 何故そのような真似を。ここの人払いの結界はまだ薄れてはいないのに。

「星、話があります」

 背を向けたまま言う。

 あまりにも重々しい声。

 部屋に入って来てから……聖らしくない。

 何時でも笑っていて、皆を和ませるいつもの聖らしさは何処にもなかった。

「星」

 問いかけようとした私は一言で止められる。

「間もなく人間たちがここを襲います。あなたは逃げてください」

 そんな、理解出来ないことを告げられた。

 ――襲われ――る? この寺が? 妖怪と人間の為に尽力してきたこの寺が?

「……なんですって?」

「私が邪法を使い妖怪と懇意にしていることが知られました。私は殺されるか、封じられるかするでしょう」

「何を言っているんです聖」

「この寺はもう妖怪たちにとって安全な場ではない。他の者は逃がしました。あとはあなただけです」

「待ってください」

「ムラサと一輪たちが不在でよかった。彼女たちは逃げろと言っても聞かぬでしょうし」

「待ってください!!」

 叫んでいた。

 聞きたくなかった。理解出来なかった。

 聖の告げる言葉が何一つ信じられなかった。

「な、人間が? ええと、なんですって? 人間が、あなたを、殺す?」

「はい」

 なのに、彼女はあっさりと肯定する。

「お別れです」

「――――っ!」

 激昂する。

「ならば、あなたこそ逃げるべきだ!」

 わからない。わからない……っ。何故彼女はそんな涼しげな顔をしていられるのだ。

 私に逃げろと伝えただけで落ちつけるのだ。まずは己の命ではないか。

 何故私に伝えただけで安心したかのように肩の力を抜ける!?

「逃げ切れません。私は多くの人に知られてしまった。知られるように布教してしまった。

これも、死を恐れ禁術に手を出した報いなのでしょう」

「報いなど! あなたはそれ以上の善行を積んできた! あなたは死ぬべき人ではない!」

「星、私はもう人ですらないのです。邪法に身を染めた魔術師……妖怪です」

「だからと言って死んでいい法など無いっ!!」

 聖の肩を掴んでいた。

 握り潰さぬようにするのが酷く難しい。彼女とは対照的に私は、力を抜くことなど出来ない。

 こんな、こんな――自ら死にに行くようなことを言う彼女を前に、力など抜けるものか。

「あなたは数多の人と妖怪を救った……! これから、まだ、救うべき人だ! 死んでいい筈がない!

それに報いと言うならあなただって救われていい筈だ! なんであなただけがそんな……!」

 何故。

 何故あなたは逃げようとすらしない。

 共に逃げてくれと言ってくれれば私は千里をも走ろう。

 共に抗おうと言ってくれれば万の軍勢でも打ち倒す。

 私がどれ程の恩をあなたに感じていると思っているのか。

 私はあなたの為なら死すら厭わない。

 なのに、何故……!

「死なないでください、聖……っ」

 もう――哀願だった。

「私は、まだ完全じゃない。毘沙門天の代理も満足に務められない。あなたの力が必要なんです。

ここに、あなたを必要としている者がいる。それなのに、あなたは死にに行くのですか……っ」

「……ごめんなさい、星」

「謝らないでください……! そんなの、望んでない……!」

 どうすればいい? なんでこんなことになった?

 わからない。ムラサに訊かねば。一輪と雲山に知恵を借りねば。

 どうすれば聖を救えるのだ……!?

 わからない、わからない――!

 未だ妖怪一匹救えぬ未熟な私では何もわからない……!

「そ、そうだ、このお堂に居れば、ここはあなたが私の為に張った人払いの結界がある。

ここなら人間たちをやりすごせる。その後に逃げて、顔も名も隠して生きれば」

「ここに火を放たれれば結界も意味を成しません」

「なら、今すぐ逃げましょう。私の足なら逃げ切れる。そうだ、ムラサの船に乗って海の向こうに」

「星」

 優しい声に遮られる。



「それでは私を殺そうとする人間たちの心が救われない」



 とても、優しい声で告げられる。

「――なにを、言ってるんですか、聖」

 異国の言葉のようだった。

「私が捕らえられず逃げれば、彼らは復讐を恐れ夜も眠れない。彼らは人間のふりをしていた私を知っている。

故に昼も私の復讐に怯え続けるでしょう。それでは彼らが憐れ過ぎる」

 するりと耳に入っても言葉として認識出来ない。

「私は彼らの為にも捕えられ始末されねばならないのです」

 よく知る聖の声なのに、言葉はまるで知らぬ響きだった。

 がくりと膝を折る。立ってなどいられない。

 指の先まで、力を抜かれてしまう。

「理解、できない」

 顔を上げることも出来ずただ言葉を漏らす。

「あなたは――己を殺そうとする者まで、憐れむのですか。救おうとするのですか」

 とても身近に居た筈の聖が、遠い。

 遠過ぎて触れることすら叶わない。

「これが私の選んだ道。私の生き方です」

 もう彼女の声は聞こえなかった。

「……星。ここは幻想郷に程近い地。もしムラサと一輪、雲山が帰ってきたら幻想郷に行くのです。

彼の地は妖怪の里と聞きます。そこならあなたたちも受け入れられるでしょう」

 どうすればいい?

 心の底で誰かが囁く。

 奪えばいい。

 誰かが囁き続ける。

 殺せばいい。

 冷たい感情の籠らぬ空虚な声で告げられる。

 妖怪らしく奪い壊し侵せばいい。

 ああ――そうだ。

 私は、妖怪だったんだっけ。

「――なら」

 俯いたまま口にする。

「なら、私が、殺します」

「……星?」

 聖の声が聞こえた。

 私の名を呼んでいる。

 この声が途切れるだなんて許せない。

 この声が奪われるだなんて認めない。

 ばきりと、変化の解けかけた指先に獣の爪が生じる。

 敵を引き裂き殺し食らう為の爪。

 彼女の敵を殺し尽くす為の爪。

「私があなたの敵を殺します。殺し尽くします。そうすればあなたは悩むこともない。

追われることもない死ぬこともない私が人間たちを殺し尽くせば済む話だ私がこの爪と牙で」

 頬が熱い。

 聖は、私の頬を打った手をそのままに私を睨んでいた。

「そんな真似は許しません」

 険しい顔で言う。

「星。今のあなたにそんな真似が出来ますか」

「なに、を。出来る。出来ます。あなたの為なら私は」

「嘘でしょう」

 そっと、床に突き立てられていた私の手を取った。

「――こんなに手を震わせて」

 獣の相を見せる手。凶器としか云えぬ爪を持った手を彼女は抱き締める。

「あなたは……共に生きた人を殺せるような子じゃない。愛した人を殺せる子じゃない。

あなたは、毘沙門天として守ってきた人間を殺せない」

 ――違う。

 私は、殺せる。殺せるんだ。あなたの敵なら誰だって。

 なのに、彼女に抱き締められる手は震えていて。

 かちかちと歯を鳴らす口は何も紡げないで。

 なんで。どうして私は。

 相手は敵だ。誰だろうと彼女を害するのなら敵でしかないのに。

 なんで私は――震えているんだ。

「ごめんなさい星」

 全身を震わせる私を彼女は抱き締める。

 彼女の胸に顔を埋めても私の震えは止まらない。

「あなたにこんな辛い思いをさせてしまって」

 暖かいのに。

 彼女の熱が伝わり寒くはないのに。

 がちがちと、牙の伸びた私の口は鳴り続けている。

「星、あなたと過ごした日々は私にとって掛け替えのないものでした。とても楽しかった。

何も知らぬあなたに色んな事を教えた日々は――本当に、大切な思い出です」

 ひじ、り。

「私は子を生しませんでしたが……ふふ、あなたのこと、娘のように思っていたんですよ」

 ひじり。

「私の愛する子。どうか――生き延びてください」

 ひじり。



「星。あなたはあなたの生きたいように生きてください」



「あなたの幸せを願っています」




 ひじり
















 何日が過ぎたのだろう。

 聖が寺を出、自ら捕らえられ……あれは何日前のことだったか。

 あれから私は一歩も動けていない。お堂の奥。私の部屋に座り込んだまま動けない。

 ずっと彼女の言葉だけが頭の中を泳いでいる。

 私が――生きたいように? 聖、私はそれを教えられていない。

 私は毘沙門天としての生き方しか教えられてない。それ以外はまだ空だ。

 何もない。空っぽの、張り子の虎です。

 私は何を望めばよいのですか? 私はどう生きればよいのですか?

 教えてください。

 いつものように教えてください聖。

 お願いです。教えてください。聖。

 ――声が聞こえる。

 人間の声だ。

 寺まで助けを乞いに来た慣れ親しんだ声。

 里が妖怪に襲われている。

 人間は毘沙門天様助けてくださいと乞い続けている。

 毘沙門天。毘沙門天……? ああ、私のことか。

 人間は悔い続けている。白蓮様を追い払ってしまったから天罰が降ったんだと。

 びゃくれん? 誰のことだろう。なんでそんなことを悔いているのだろう。

 ……人間が、助けを求めている。

 毘沙門天を、私を求めている。

 ならば行かねば。

 聖にそう教えられた。

 私は毘沙門天として、衆生を救わねば。

 鉾と宝塔を手に飛び出す。

 里は既に火の海だった。

 妖怪は妖力を光の矢とし無暗矢鱈と放っている。

 あれでは火の回りも速くなる。止めねば。

 妖怪と誰かが空で戦っている。

 あれは――巫女? 空を飛ぶ巫女。噂に聞く幻想郷の博麗の巫女か。

 妖怪に匹敵する力を持つという幻想郷の調停者。

 ここは幻想郷に程近い地。誰かが助けを乞いに行ったのかもしれない。

 あ、と――誰に聞いたんだっけ?

 そんなことはどうでもいいか。巫女に加勢しよう。私は人間を守らねば。

 後光を発し逃げ惑う人間たちを背に回す。暴れ続ける妖怪の前に出る。

 歓声。毘沙門天様が来てくれたと騒いでいる。どうでもいい。

 敵を見据える。

 あ――ムラサに、一輪、雲山。

 敵って、彼女たちなのか。

 こんな時どうすればいいのかわからない。

 聖には無暗に人間を襲う妖怪は退治しろと言われた。

 出来るだけ殺さずに、追い払うに留めるようにとも。

 なら、殺さぬように攻撃しよう。大事な仲間を追い払おう。

 敵が強過ぎて手加減出来ず殺してしまっても――聖は許してくれた。

 今度もきっと許してくれる。だから私は私の出来ることを全力でやらねば。

 私を見て一輪は何事か叫んでいる。聞こえない。

 一輪と雲山が組むと厄介だ。先に一輪を仕留めなければ。

 飛ぶ。

 鉾を突き出す。

 硬い金属音――ムラサの投げた錨に止められる。

「なんのつもりよ寅丸」

 いつの間にかムラサは私に触れる位置まで迫っていた。

 錨が引き戻され、瞬時に私目掛けて振り回される。

 彼女の細腕からは想像も出来ない怪力、否妖力。

 筋力ではなく妖力で振るわれる巨大な錨は並の武器では防げない。

 鉾で受け流す。私の妖りょ、法力が染み付いたこの法具でなければこれだけで砕けていただろう。

 ――錨や鉾を振り回す距離ではない。ムラサは冷静さを欠いている。

「聖が捕らえられて、なんでまだあんたは――っ!」

「違う」

 爪を振るう。ムラサはそれを寸でで躱す。

「私は毘沙門天だ」

 宝塔から光の矢を放つ。錨に防がれる。

「……寅丸?」

 距離が開いた。これはもう鉾の間合い。

 もう一度鉾を構える。

「寅丸――あなた」

 彼女の声が遠い。気付けば、騒いでいた人間たちの声も聞こえない。

 戦っている内に随分離れたところまで来てしまったのか。

 それならそれでいい。もう充分に人間たちには毘沙門天の威光を示せた。

 後は彼女たちを退治すれば終わりだ。

「寅丸、なんで――なんであなたが」

 一輪が私を睨んでいた。

 なんで睨むのだろう。人を襲えば退治されるなんてわかりきったことなのに。

 聖だってそう言っていたじゃないか。

 怒りに総身を震わせ一輪は大きく腕を振るった。

「裏切ったのか、寅ま、な、雲山! なんで止めるのっ!」

 雲山の攻撃が来ると思ったのだが、来ない。

 雲山は一輪を抱えるようにして下がっていく。

 首を振っているようにも見える。

「一輪」

 ムラサのところまで一輪が連れて行かれると、彼女は口を開いた。

「寅丸はもう駄目よ」

 さっきから――なんなんだ。彼女たちは。

「……壊れてしまった」

 とらまるとは、誰の名だ。

「……え? な、何を言っているのムラサ。そんな、あの強い寅丸が」

 私は毘沙門天。私は星。それだけだ。

 彼女に与えられた役割。彼女に与えられた名。

 それしか持っていない。

 なのに、その名で呼ばれると頭の芯ががりがりと痛む。

 痛くて痛くて堪えられない。

「とら、まる」

 頬が冷たくなってしまう。

 目から何かが零れ落ちて頬を濡らしてしまう。

 だから、一輪――その名で呼ぶな。

 ……?

 何故、泣くのです、一輪。何故そんな顔をするんです、雲山。

 どうして、私を見て、そんな辛そうな顔をするんですか、ムラサ。

「終わりよ寅丸。私たちはもう抵抗しない」

 よかった。例え殺しても聖は許してくれるだろうけれど――それでも親友を殺すなんて嫌だった。

 がりんと、頭の奥が削られる。痛い。なんだろうこれは。

 しん――ゆう。そうだ。ムラサは、私の、しんゆうで。

 しんゆうって、なんだっけ。

 そうだ、こんなときは博識な一輪に訊けば、いいんだ。

 え、と。でも、なにを訊けば、いいんだっけ。

 ただ頬が濡れていく。

 何を考えても纏まらない。

 毘沙門天のお役目を終えた今、私の中は空っぽに逆戻りしている。

 追いついてきた巫女とムラサが何か話しているが何を言っているのかわからない。

「巫女よ。降参だ。聖白蓮を誑かし続けた悪魔だ。どこへなりと封じるがいい」

「……だから、こいつを見逃せと?」

「悪魔と取引する巫女など居ないでしょう? ――そいつは私たちの仲間じゃない」

 ムラサが私を見ている。泣き崩れた一輪を抱き締めながら私を見ている。

 綺麗だった緑の眼が、潤んで、涙が零れた。



「私たち妖怪の敵、毘沙門天よ」















 それから私は独り戦い続けた。

 寺を信仰する里が妖怪に襲われる度に毘沙門天の威光を示した。

 それは、聖に出会う前の私と変わらぬ日々。敵が来れば排除するだけの生。

 聖は居ない。一輪も雲山もムラサも居ない。次第に破綻していく。

 大群。強力な妖怪。はぐれ鬼の野盗。私の力だけでは及ばぬ敵。

 戦いは熾烈を極め私は宝塔を、鉾を失った。

 幾度も傷つき、鬼との戦いでは重傷を負わされもしたがそれでも戦い続けた。

 何故か私は死ぬことなくこうして生き延びている。

 ――……生き長らえてしまった。

 なんだ? 私は死にたかったのか? 戦いの中で果てることを望んでいたのか?

 望み。望みとはなんだったか。私がかつて望んだのは――なんだったのか。

 わからない。何もわからない。聖に教えられたことしかわからない。

 ならば、私は……毘沙門天を演じ続けるしかない。

 宝塔も鉾も失ったけれど、聖が望んだことを続けなければならない。

 私は、毘沙門天だ。彼女が望んだ――毘沙門天だ。

 そうして、戦い続けた。

 寺は無人のままだったが里の人間たちは甲斐甲斐しく手入れに訪れていた。

 幾度も威光を示した毘沙門天への信仰故か熱心とも言える頻度で寺は手入れされ朽ちることはなかった。

 聖の張った結界はまだ活きている。私は寺の奥に籠りながらそれをただ見ていた。

 ――やがて、それも絶えた。

 私のことを忘れたのか、世話をしていた者が死んだのか――ついに寺は廃寺となった。

 それから暫くして風の噂に村が滅んだと聞いた。

 妖怪に襲われたのか戦に巻き込まれたのかは知らぬ。ただ私に助けを求めには来なかった。

 忘れてしまったのだろう。あれから百年は過ぎた。神の威光も知らねばこの寺もただの無人の廃墟だ。

 信仰の絶たれた私は飢えを思い出す。妖怪として生きてきた頃は日常的に感じていたもの。

 人を獣を妖怪を襲い飢えを凌いでいた。畏怖の念こそが私の糧だった。

 飢えている。信仰が絶たれ私は糧を失った。飢えている。

 されど、なにかを襲おうとは思わない。そんなことは聖に習わなかった。

 聖は人を襲えなどと一度も言わなかった。だから駄目だ。

 飢えても動けない。私には糧を得る方法がわからない。

 糧は、信仰は聖が集めていてくれたから。



 そして――――飢えは、過ぎた時間は、私に正気を取り戻させた。



 あれから、何年が過ぎたのか。

 四季の移ろいだけを見るなら百年以上。

 百度以上も四季が移ろうのを見てきた。

 二百年に近い程の時間が過ぎていた。

 それでも――鮮明に思い出せる。

「……聖」

 笑って去っていった彼女を。

「一輪……雲山」

 泣いて謝る彼女とそれを包む彼の姿を。

 ごめんなさいと、あなたがどれほど辛かったかも気付かずに責めてごめんなさいと……

 彼女は封じられる寸前まで謝り続けていた。

「ムラサ――……」

 何も言わず涙を零した彼女を。

 多弁な彼女が何も言わなかった。

 ただ、壊れてしまった私の分まで涙を流すかのように泣き続けていた。

「――――聖……っ」

 私はもう駄目です、聖。

 あなたは私の幸せを願ってくれた。

 なのに、私は――許されない罪を、犯してしまった。

 友を、親友をこの手で追い詰め封じてしまった……!

 一輪を、雲山を! ムラサをっ!!

 私にはもう、幸せになどなる権利はない……っ

「私が、死ねばよかったんだ」

 聖。聖……私はあの時、あなたを助けるべきだった。

 あなたがなんと言おうと救いだすべきだった。

 それでどのように責められようと、この命を失おうと――今よりは、きっとましだったのに。

 私があなたの代わりに死んでいれば一輪も雲山もムラサも封じられることなどなかったのに。

「――何故です、ムラサ」

 何故あの時、博麗の巫女に私のことを毘沙門天だなどと言ったのです。

 何故あの時私もろとも封じられなかったのです。

 何故私を庇い、私だけを逃がしたのです、ムラサ――

「……っぐ」

 決まっている。

 そんなの、決まっている。

 あのからっとした笑顔の似合う舟幽霊は、私だけでも逃がそうとしたのだ。

 聖と一番付き合いの長い私が一番傷ついていると知っていて、傷を癒す時間を与えてくれたのだ。

 私は、そんな気遣いすら無碍にしてしまった。

 戦い尽くめだった。傷が癒える暇などなかった。

 こうして悔いるまで――何百年も掛かってしまった。

 悔いることにさえ、何百年も掛かってしまった。

「……う、うぅ……」

 私は――誰の願いをも、叶えられなかった。

 必死に謝り続けた一輪と雲山の声が届いたのは数百年後。

 ムラサが逃がそうとしてくれたのに逃げられなかった。

 聖の願いなど、何一つ叶えられなかった。

「うあ、あああぁぁぁぁぁ……」

 誰にも届かぬ嘆き。

 もう誰も居ない。

 私の傍に居てくれた人たちは皆どこかに封じられてしまった。

 私の力では彼女たちを探すことも、封印を解くことも叶わない。

 これも――罰なのか。

 罪深い私に与えられた罰。

 壊れたままならなんともなかったろうに、こうして正気に戻らせ苦しめる。

 ならば、生きよう。

 この罪を抱えたまま私は生き続けよう。

 飢えで果てるか誰かに殺されるまで生き延びてみせよう。

 罪に塗れた私が果たせる最後の願い。

 私に生き延びろと言った彼女の願いだけを、果たす。

 それが……私が己に科す、罰だ。











 習慣となっている写経を終える。

 残り少なくなった蝋燭の火を吹き消す。

 もう真夜中か――時間の感覚が狂っているのか、何時なのかよくわからない。

 溜息が洩れる。今日だけで幾度目か。すっかり癖になっていた。

 ずっと昔は、こうして一人でいることなど当たり前だったのだがな。

 ああ、駄目だ。一度孤独から離れた者は孤独になど戻れない。

 共に居てくれる人の暖かさを知ってしまってはもうこの寒さに耐えられない。

 酷く――疲れてしまう。

 飢えの所為もあったがそれ以上に心が耐えられぬ。

 否、飢えも心を苛んでいるのか――――


 かたりと戸が軋む。


 幽かに感じる妖力。

 どうということはない――片手間に殺せる程度の妖怪。

「失礼するよ」

 背にかかる鈴を転がすような声。

 幼さを残す少女の声音。

 振り返りその姿を見れば、可愛らしい声を大きく裏切る表情。

 顔のつくりこそ可愛らしく幼いものだが、強気に吊り上がった赤い眼に宿るものが読み切れぬ。

 不敵に笑うその佇まいは少女のそれではない。

「夜更けに妖怪が何用ですか」

「噂に違わぬ鋭い眼光だ――流石毘沙門天の化身と呼ばれるだけのことはある」

 問えば返ってくるのは皮肉気な声。

「噂? なんです、態々調伏されに来ましたか」

「血の気が多い。いや流石武神たる毘沙門天の化身と云うべきなのかな?」

「回りくどい。率直に言ったらどうです」

「私も単刀直入の方がやりやすい。乗らせてもらうよ毘沙門天殿」

 どこまでもこの少女は皮肉気だった。

 いくら喋っても顔に張り付く笑みは皮肉に歪んだまま。

 吐き出す言葉は全て捻じ曲がった皮肉混じり。

 正直、向き合うだけで腹が立ってくる。

 飢えと疲れがなければ、殴りかかっていたかもしれない。

 かつて、ムラサにしていたように。

 ああ、あいつも私を怒らせるのが好きだった。

 何度も、喧嘩をした。

「私は妖怪ネズミのナズーリン。あなたに仕えたいと思って訪ねたのだよ」

 少女の声に現実に引き戻される。

 ナズー、リン。変わった響きだ――いや、待て。

「仕える……? 妖怪のあなたが、私に? 何の冗談ですか」

「本気だよ。ほら、ネズミは毘沙門天の遣いだろう? そして、私は正にそれだ。

本物の毘沙門天からあなたに仕えるように遣わされたのだよ」

 出された名に戸惑う。

 毘沙門天。

 今更、今更――何の用だと言うのだ。

 全てが終わって何年経っていると思っている。

 私の力不足で何もかも滅茶苦茶になってしまってからどれだけの時間が過ぎたと思っている。

「……仮に、あなたが真実毘沙門天の遣いだとしても、私は」

「うん?」

「あなたが仕えるだけの器ではない。私は毘沙門天の化身などではなく……ただの代理で……」

 始めから、間違っていたのだ。

 私に毘沙門天の代わりなど務められる筈もなかった。

 私などを救おうとしなければ聖はあんなことにならずに済んだかもしれない。

 私はもう、誰とも関わっては……

「私が求めたのはあなただよ」

 皮肉など微塵も混じらぬ声。

「……え?」

 驚き顔を上げる。少女は、私を真っ直ぐに見つめている。

「勘違いしないでくれたまえ。私は毘沙門天の部下ではない。毘沙門天に仲介を願っただけの妖怪だ。

私は他の誰でもない、あなたの部下になる為にここに来た」

「ですが」

「風の噂に聞き、仕えたいと願った。あなたが毘沙門天であろうがなかろうが、関係ない。

私が求めたのは今此処に居るあなただ」

 少女は強い口調で――私に何も言わせずに言い切った。

 いつの間にか彼女の顔からは皮肉気な笑みが抜け落ちていて、真摯な目で私を見ている。

 赤い瞳。

「……でも……」

「私は狙ったら逃さぬのが身上でね。なんとしてもあなたに仕えたいのだよ。

名前を聞かせてもらえないかな? 『ご主人様』」

 少女はにこりと微笑んだ。

 なま、え。

 ずっとずっと昔、誰かに問われた。

 こんな風に、彼女も笑っていた。

「私、は」

 口にする。

 数百年誰からも呼ばれなかった名を。

 聖に与えられた名を。

「――寅丸星です」

 何故だろう。

 赤い瞳に見つめられる間だけ――

 僅かに、飢えが和らいだ。











四十三度目まして猫井です

白蓮さんと星さんの出会いと別れを捏造妄想してみました

設定txtには星さんは白蓮さんが封印される時も「取り乱したりはせず」と書かれていましたが

取り乱すことも出来なかったんじゃないかなぁと思い広がったお話でした

ここまでお読みくださりありがとうございました


※脱字修正しました

※1/19 脱字修正しました

※1/19 表現方法を完全に間違えていたので修正しました
と、投稿後一日以内だからセーフですよね……?
間違った状態のままお読みくださった方々に謝らせていただきます
申し訳ありませんでした

猫井でした
猫井はかま
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コメント



0.2290簡易評価
2.無評価名前が無い程度の能力削除
ナズの台詞をどこかで見たと思ったら出航前夜のサイドストーリー的な物でしたか。
星の心情が深く描写されていて、とても面白く、悲しいお話でした。
3.100名前が無い程度の能力削除
まさかの点数忘れ
5.100名前が無い程度の能力削除
なんという………
18.100名前が無い程度の能力削除
雰囲気が、素晴らしい。
20.80名前が無い程度の能力削除
おおぅ、いい雰囲気だ・・・
21.100名前が無い程度の能力削除
村紗と一輪はとらまるって呼ぶけれど、聖だけがしょうと呼ぶ
ならナズーリンは
24.100名前が無い程度の能力削除
良いですね。
やっぱり星ちゃんは真面目で可愛い。
30.100名前が無い程度の能力削除
流石のクオリティ。とてもいい。
32.100名前が無い程度の能力削除
グッときました。
捏造だろうと妄想だろうと猫井氏の、心に重きを置いた物語が大好きです。
34.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしいとしかいえない
35.100名前が無い程度の能力削除
心が揺さぶられる傑作。
この続きがゲーム本編だと想像すると、より一層楽しめる。
37.100名前が無い程度の能力削除
泣いた。リアルで。
猫井氏の物語はいつもこう…グッとくる。
41.100名前が無い程度の能力削除
震えたぜ。
42.100名前が無い程度の能力削除
人里襲撃からの盛り上がりが凄い、ビシビシきました