タグにもあるとおり、このお話は非常に重いです。
零
幽々子の背中は何も語らない。それは千年前の話だ。
幽々子の背中は何も語らない。ただ黙って血塗られた屋敷を眺めているだけだった。紫も傘を肩にかけ、黙ったまま幽々子の後ろ姿と屋敷を見つめているだけだった。
紫がひと冬眠っているあいだに、西行寺家の屋敷は変わり果てた。紫が眠りに入る前も屋敷は静かだったが、今はそれ以上に冷たく、重い無音に包まれていた。屋敷の壁には血痕がこびりついていた。
柔らかな春の匂いにのって、死の匂いが屋敷からふわりと漂ってきた。春の暖かな日に照らされて、屋敷の黒い影と黒い血がくっきりと紫の視界に浮き出てきた。木々を撫でる風の音以外に物音は何もなかった。
幽々子は扇を開いてその光景をじっと見つめていた。
彼女は何を思っているのだろう? 想像することすら紫にはためらわれた。幽々子は言葉をいっさい口にしない。彼女には動きもなく、ほとばしる思いもなかった。知りたいと思って幽々子の正面に回り込む勇気も、紫は持ち合わせていなかった。
幽々子と紫のあいだには、重く長い沈黙が幕を下ろしていた。
やがて幽々子が扇を閉じ、体を動かしはじめたのが紫に見えた。幽々子は顔を自分の方に向けようとしている、と紫は感づいた。
幽々子の表情が知りたい? 知りたくない? ――こわい。
紫の思いとは裏腹に、幽々子の動作は川のように紫を押し倒そうとする。首を回して、幽々子は紫にその顔を見せた。
その瞬間、紫の胸の中で恐怖がぞっと顔を出した。
それは、さっきまで紫が見ていた幽々子の顔ではなかった。たしかに幽々子の顔の要素は正しくもとの位置に置かれていた。丸い目も、柔らかな鼻も、薄い唇も。けれど、それはもう幽々子の表情をしていなかった。誰か紫の知らない作り手が幽々子の表情を分解して、紫に背中を向けているあいだに再構成したようだった。
表情の欠片もない。理性があっても、感情はひと欠片もなかった。目には光が灯っていなかった。
こわい。
紫の心が彼女を恐れ、無意識に逃げようとする。
どうしてこうなってしまったのだろう。自分の知らないあいだに、西行寺家は誰かによって滅ぼされてしまった。冬眠していたから? 私のせい? 自分は幻想郷を、そして人を護ることができない? 幽々子の顔を見るたびに、紫の胸の内で罪の意識と恐怖が入りまじり、紫を苦しめてきた。
だからその日以来、紫は幽々子が苦手だった。できることなら、会いたくなかった。
けれど、どうしても会わなくてはいけないことが起きてしまった。だから紫は白玉楼にいる。西行寺幽々子の隣に腰掛けて。あの長い冬の原因を探るために。
一
左手に半開きの扇を持って、幽々子は桜餅を右手でつまんで口に入れた。閉じた傘を縁側に立てかけ、閉じた扇を膝の上にのせて、紫は右手にお酒の入ったお猪口を持っていた。
桜は少し前に満開を過ぎて、今はもう大部分の桜が散りはじめている。長い長い冬のあとにやって来た春の風は暖かく、少し暑いくらいだった。
「春は遅く来ても、桜が散ってしまうのはいつも同じ時期なのね」
幽々子は桜餅をのみ込んでそう言った。少し寂しそうに笑うその顔は異変の名残のように見える。紫は皮肉をこめた笑いを口先から出して、幽々子に言った。
「あなたが異変を起こして、お花見できる時間が少なくなったのは残念ね」
「あら、あなたはお花見が満開の桜を見る行事だと思っているの?」
幽々子は次の桜餅に手をのばしながら、紫に首を向けて意外そうに言った。そしてまた幽々子は桜餅を口の中に放り投げる。さっきからどれほど食べているのか紫には見当もつかない。少なくとも大皿に山のように盛られていた桜餅があと二個でなくなりそうだ、ということだけはわかる。
紫は呆れたようなため息をついて言った。
「幽々子はそういうごちそうを食べるためにお花見をしているのだと思っていたわ」
「なあに、失礼ね。私をそんなに風情のない人だと思っていたの」
幽々子は桜餅をのみ込んで、横目で紫に視線を移した。紫は扇を広げて口もとを隠した。やがて、幽々子は視線を紫から桜に移した。そして流れる吐息のような歌を詠った。
「散ればこそ いとど桜はめでたけれ 憂き世になにか 久しかるべき」
紫はしばらく黙って、幽々子が静かにゆるやかに詠うその歌を聴いていた。詠いおると、しばらく春の沈黙が続いた。幽々子が先に口を開いた。
「古の歌でも、桜が散るのを詠むものは多いわ。たとえばこの在原業平のようにね」
「それは日本人の血の流れなのかもしれないわね。それこそ、歌というものが生まれる以前から」
幽々子は紫を見つめた。
「ねえ、どうして日本人はこうして桜を見て感傷に浸れるのかしら。散ったからといって、桜の木が死ぬわけではないのよ」
幽々子はぱちんと音を立てて扇を閉じた。紫は口もとを隠したまま言った。
「さて、どうしてかしら」
幽々子は紫を見つめたまま、冷たく笑った。
「あなたはまるですべてお見通しみたいね」
紫は黙って、目元に笑いを見せた。
幽々子は縁側から静かに降り立ち、ゆっくりと歩き出した。幽々子の背中の影がいつもより濃いように、紫には見えた。幽々子は音も立てずに西行妖のそばに立ち、そっと手を添えた。
「今年も西行妖は満開にはならなかった」
そう言う幽々子の表情は、西行妖に溶け込んでしまいそうに見えた。幽々子は紫に背を向けて、西行妖に語りかけるように言葉を口にした。
「あれだけ妖夢に春を集めてもらったのに、八分咲きにすらならない。まるで満開になるのを嫌がっているようにも思えるのよ」
紫の鼻に淡く薄い匂いが漂ってきた。西行妖の花びらが一枚、空から紫の膝に滑り落ちた。花の色は死装束のように薄かった。
幽々子の後ろ姿は何も語らない。それはあのときと同じように。だから紫は尋ねずにはいられなかった。
「ねえ、幽々子」
紫が呼びかけても、幽々子は紫に振り返らなかった。それでも紫は続けた。幽々子には私の声が届いているはずだと、強く信じて。
「西行妖が満開になることを、あなたは望んだの?」
薄い死装束の花びらが紫の視界を通り過ぎた。それは濃い黒い血に染まった屋敷の光景を紫に思い出させるのに十分すぎた。
二
「西行桜」
扇を閉じたまま、歌姫は西行桜に手を添えて語りかける。
「どうしてあなたは花を咲かせるの? 私の家は滅んでしまった。私の愛する人はみな死んでしまった。あなただけよ、そうやって幽雅に花を咲かそうとしているのは」
幽々子の目に涙はなかった。悲しく聞こえるのは言葉だけで、その声も顔も息づかいも体の動きも、どこにも感情の動きはなかった。達観的な老婆のようにさえ見えてしまう。
紫は扇を開いて口もとを隠し、黙って幽々子の後ろに立っていた。二人は西行寺家の屋敷の庭にいた。紫の背後には、死の匂いに満ちただけの屋敷がある。屋敷の中で誰かが死をまき散らしたときから、屋敷の時間は凍りついて動かない。
長い沈黙が二人のあいだに続く。やがて、紫は意を決して幽々子に尋ねた。
「私を恨んでいる?」
できるかぎり淡々とした口調を保つようにして紫は言う。
「私があなたの家を守れなかったことを、恨んでいる? 正直に話してほしいの」
幽々子は紫に顔を向けて、ぞっとするような冷たい微笑を浮かべた。そして首を横に振った。
「恨んでなんかいないわ。あなたはいつものように冬眠していたのだから。こういうことがあったことさえ知らなかったのでしょう?」
紫は重い首を縦に振った。幽々子はまた言う。
「それにいつかはどんなに栄えた家でも滅びてしまうもの。これは人間の真理よ。だから、もともと誰かを恨む理由を私は持ち合わせていないわ」
「真理?」 紫は扇を閉じた。「歌姫のあなたが何の真理を知っているというの?」
「生があるからこそ死がある」
幽々子は紫の問いかけに即座に答えた。
「私は、いろんな場所に行って、いろんなことを見てきて、いろんなことを学んだわ。でもその中で絶対唯一の不変の真理があるとしたら、やっぱりそういうことなの。生きているものはいつか死ぬ」
紫をじっと見つめたまま、幽々子は続ける。
「花の美しさを私はこよなく愛した。青々とした木々のたくましさをこよなく愛した。なにより、人の生きる光をこよなく愛した。それはそれでみな愛すべきものなのよ。けれど、私はその姿の一面しか見てこなかったことに、今気がついたの。私は生きる美しさしか見てこなかったのよ」
また長い沈黙が二人のあいだを川のように流れていく。
「それで、あなたはどうするの?」
幽々子の冷たい視線を頬に感じながら、紫は幽々子に尋ねた。
「殺すの? あなたの家を滅ぼした人たちに、死の復讐をするの?」
「なら、あなたはどうするの?」
幽々子は紫の質問に答えずに尋ね返した。その口調は静かだったが、鋭く紫の胸に突き刺さる。
「あなたこそ、私の家を滅ぼした人たちを殺すの? 賢者として、幻想郷のために、愛する者を守るために殺すのね。『殺す』という言葉を使ったからには、あなたがいちばんそうしたいのでしょう?」
紫は顎をわずかに引いた。幽々子はふっと軽く息をついて続けた。
「それとも、妖怪として復讐するの?」
幽々子の目がじっと紫をとらえて離さない。変わらない目の暗さが紫にずっと恐れを与えつづけている。
紫は扇を開いて口もとを隠した。
「そんなことをするわけないわ。私は誰も殺さない」
「そうよね」
幽々子は閉じた扇の先端を紫に刺すように突きつけて言った。
「しないというのとはまた違う。あなたはそうすることが『できない』のよ。ただそれだけの話」
そして、また何度目かの長い沈黙が生まれる。紫にはどうすることもできない。彼女にできるのは、二人を包む沈黙を無理やり中から引き裂くことだけだった。
「帰るわ」
薄情だと思いながらも、紫はそう言わずにいられなかった。
「あなたが私を必要とするときは――」
そこで紫の言葉は途切れた。言葉を先に紡ぐことがどうしてもできない。その言葉の先に何かを粉々にしてしまうほど恐ろしいものが潜んでいるような気がした。
幽々子は光のない目で紫を見つめている。紫はなんでもないというふうに手を横に振った。そして、開いたままの自分の扇に長く息を吐き、それから幽々子に向かって言いなおした。
「とにかく私もやることがあるの。また明日来るわ」
幽々子は西行桜に背を預けた。そのとき、紫には天を突くような大きさの西行桜がわずかに揺れたように見えた。
「さようなら」
幽々子は静かにそう言った。
「さようなら」
もう一度、幽々子は同じ言葉を口にした。紫はうなずかず、ただ黙って幽々子に背を向けて歩きはじめた。背を向ける間際に見た西行桜は、薄い色の花を咲かせたばかりだった。
屋敷に背を向けて歩きつづける紫の胸に、ある予感が不鮮明な雲のように生まれた。
「幽々子は死を選ぶのだろう」――。
その予感はいやにはっきりとしたものに思える。自分の愛する人たちをすべて失って、それでも生きようと思うものだろうか。おそらくは、自分もあとを追うようにして、自らの生を絶つ。生きるための光を失ってしまったら、もうそこには死しか残されていない。
紫は後ろを振り返ろうとした。幽々子の最後の姿を、もう一度目に焼きつけておこうと思った。
それでも、紫は思いなおして視線を眼前の幻想郷の風景に打ち込んだ。春を迎えている幻想郷から目を離すことは許されない。
幽々子の意志は紫の胸に受け入れていくしかない。残酷だが、紫ができるのはそういうことだけだ。何が幻想郷のためになるのか。幽々子の家を滅ぼしたものの命を奪いとることが幻想郷のためか。それは違う、と紫の半分は否定する。死は何も生み出さない。
幻想郷はすべてを受け入れる。それはとても美しいように見えて、何よりも残酷だ。血塗られた歴史さえも負の感情さえも受けとめるしかない。それが紫のつくりあげた「幻想郷」という空間なのだから。そして、彼女はその幻想郷の「賢者」なのだから。
――なにが賢者よ。
紫は大きな音を立てて扇を閉じた。
三
翌日の夜、紫は約束どおり西行寺家の屋敷に足を踏み入れた。
屋敷の入り口と建物は、昨日と同じように死の匂いが充満していた。不自然に大きく響く足音を気にしながら、紫は通路を通り抜けて、幽々子の亡骸があるはずの庭にたどりついた。そこで幽々子の亡骸を見納めて、それですべてが終わるはずだった。
庭にある桜の花は開きはじめていた。それは死と対照的な生の強さを象徴しているように思えた。そして、幽々子の死を暗示しているはずのものだった。
たしかに幽々子は昨日と同じ場所にいた。西行桜の木の下。紫が予想していたのと同じ場所だった。幽々子ならここを死に場所に選ぶはずだと思っていた。そこで幽々子は崩れた正座で座っていた。
けれど、そこには血が流されていなかった。死に満ちた屋敷には血が溢れているのに、その血は幽々子のまわりにも服にもどこにもない。
幽々子は目と口を軽く開いたまま、微動だにしなかった。その顔から表情が失われている。幽々子を見た瞬間、紫はまた全身の肌が粟立つような感覚を覚えた。幽々子を見た瞬間に誰でも気がつくことと、そして軽く開かれた目が紫の体に恐怖の衝撃を与えた。
幽々子の目は虚ろで、何もその瞳には映していなかった。紫の方を見ているようにも思えないし、屋敷全体を眺めているようにも見えないし、空を仰いでいるようにも見えなかった。ただ、紫がぞっとするような感覚だけがそこにある。
こういう目が人間にできるものなの?
紫は屋敷から庭に降りながら、震える声で呼びかけた。
「ゆゆこ」
けれど、幽々子は仏像のように反応を示さない。もう一度呼びかけてみる。
「幽々子」
それでも、幽々子は微動だにしなかった。
紫は傘をとり落とし、幽々子の前に跪いた。そして幽々子の肩に手をかけ、体を揺らしながら彼女の名前を呼んだ。幽々子の身体は紙でできているように軽かった。
「幽々子、幽々子」
二度、三度呼んだところで、幽々子の瞳孔が閉まっていくのがわかった。そして、その瞳は紫の方に向けられた。紫は幽々子をゆするのをやめたが、肩から手は離さなかった。
「幽々子、あなた生きているの?」
幽々子は少しの間紫の姿を見ていたが、やがて淡々とした声で言葉を口にした。
「来たの」
口だけが動いて、顔に表情は戻らない。操り人形よりも冷たい言葉だった。紫は何も言わずにうなずいた。幽々子は軽く息を吸って、また言った。
「さようなら、と二回言ったはずよ」
紫は幽々子から手を離し、膝を地につけたままとり落とした傘を拾った。一度立ち上がり、幽々子の隣に腰を下ろして、西行桜に背を預けた。息をついてから紫は言った。
「さようならというのは、私とこの世に向けて、でしょう?」
幽々子はその言葉を聞いて、弱々しい笑いを漏らした。
「あら、気づかなかったの」
幽々子は扇を胸から取り出してわずかに開いた。
「それは少し違うわ。賢者も案外鈍いわね」
幽々子はそう言って目を伏せた。紫は幽々子の言葉を無視して尋ねた。
「ずっとここにいたの?」
「ええ、昨日あなたと別れてから、ずっとこの西行桜の下で」
幽々子が目を開いて、紫の方に首を向ける。紫は顔をそらせず、けれどそれ以上のことをどうやって訊けばいいのかわからなかった。幽々子がまた口を開いた。
「どうしてここで自刃しなかったか、あなたは私にそれを訊きたいのでしょう?」
紫は自分の胸中が幽々子に見透かされているような気分になった。紫は自分の扇に手を伸ばし、それを広げて口元を隠した。くぐもった声で幽々子に言う。
「ええ、そうよ。理由を私に教えてくれないかしら」
幽々子は少しだけ目を見開いて、またすぐに冷たい微笑に戻った。ただ、そこにわずかな影が差しているように見えた。影を見せたまま幽々子はつぶやく。
「ずるいわね」
何が、と紫が訊く前に幽々子は言った。
「その扇子であなたは自分の心を靄の中に隠すのね」
でも、その心は隠されているだけでどこかには存在している。幽々子の言葉が紫に突き刺さる。紫の心がどこにあるかを知っているかのように、幽々子は紫を狙い撃ちにする。その姿は見えないままで。
それでも紫は扇を閉じなかった。閉じることができなかった。しばらくして幽々子が口を開く。
「そうするなら、私はまだあなたの質問に答えることはできないわ」
幽々子は左手を紫の膝元に置いた。その手にはわずかな重さを感じることができた。
「それに、最初からあなたは私に訊きたいことなんて何ひとつないはずよ。ただ、知らないふりをしているだけ。決めることを私に預けようとするだけ」
幽々子はそう言って、小さく息を吐く。
「まだ時間はあるわ。あなたはゆっくり決めればいいのよ」
幽々子は紫をじっと見つめる。口元を隠したまま、紫はその視線を受けとめようとする。そして幽々子に尋ねる。
「決めるって、何を?」
幽々子は微笑むだけで答えようとしなかった。幽々子は静かに目を閉じ、扇も閉じて胸元に入れた。
その次の日も、またその次の日も幽々子は西行桜の下に座っていた。そのたびに同じようなことが繰り返された。意識を失った幽々子を揺さぶり、同じような会話をして、そして最後には紫が扇を広げて終わる。
変わっていることは、幽々子の顔から少しずつ血の色が失せていくことだった。頬の肉は質感を失い、顔は青白くなっていき、目の下には濃い隈が青黒くできはじめていた。
そして、西行寺の庭も日がたつにつれて少しずつ変わっていた。桜の蕾が花を見せ、誇らしげにゆっくりと開いていった。そのうちに庭の空は桜色で埋まるようになり、庭にある桜はみな満開になった。
ただひとつ、西行桜を除いて。
「西行寺家にそのようなことがあったのですか」
小さな庵の中で白髪の剣士は思わずため息をつき、左手で自分の額をおさえた。
「大変嘆かわしいことだ」
紫は彼の隣に座って、差し出された緑茶を啜っていた。目の前の囲炉裏の火がじきに姿を隠そうとしていた。
長いあいだ剣士は自分の額をおさえて囲炉裏を見つめたまま、黙っていた。庵の小さな窓から沈みかけた夕陽が射し込んでその顔に深い影を映し出していた。紫は消えていく火を見つめたまま、剣士が言葉を口にするのを待っていた。
そして紫が待っていたとおり、剣士は顔を上げて紫を見て、口を開いた。
「しかし、どうして私にそのようなことを話すのですか」
落ち着きのある声だった。
「私は西行寺家とは何の関わりもないただの剣士です。それこそ、西行寺家と関係のあった人間に話せばよろしいでしょう?」
「それではどうしてもいけないのよ」
紫は閉じた扇を両手に持って言った。
「あなたが幻想郷で一番の剣の使い手だから。なにより、あなたは普通の人間と結ばれていないから」
「それとこれと、どうつながるのですか?」
紫は自分の扇を見つめて言った。
「幽々子の護衛となってほしいの」
紫は顔を上げて剣士の顔を見た。剣士は表情を変えず、口を固く結んで紫を見ていた。しばらくして、その重い口を開いた。
「私は今、別の家の護衛にあたっています。その頼みは聞き入れられるものではありません」
「わかっている。正確に言えば頼みたいのはあなたではなくて、あなたの息子よ」
「どういうことですか?」
「言葉通りよ」
紫は口の端をつりあげた。
「あなたの二番目の息子を、私がさらっていくということよ。そう遠くもないうちに」
少しの空白の時間のあと、剣士は音をたてて立ちあがった。そして脇にある短刀に手を伸ばして言った。
「紫さま、いくらあなたでもそのようなことを認めるわけにはいきません」
剣士は鞘から刀をわずかに抜いた。刀身が夕日を受けて紅に光る。紫は剣士を見て冷たく笑う。
「あら、どうして。私は人間ではなくてよ?」
「異常だ。あなたが何を考えているのか、私には到底理解できない」
「理解できなくて当然。私は妖怪なのよ」
紫は静かに立ち上がり、刀を手に紫をにらみつける剣士の前に立った。そして、左手で刀の鞘の部分を掴んで言った。
「あなたにはわかると思うけれど、刀は人殺しの道具。その白楼剣も同じ。刀は人を殺す道具よ。でも、それは人を護る道具でもある。刀で人を切ることは、同時に人を護ることでもあるのよ」
紫は右手に持っていた閉じた扇で、剣士の両手を素早く打った。剣士は驚いて両手を離し、短刀は紫の手に渡った。紫は刀を鞘に戻し、それをスキマの中に放り込んだ。そのかわり、別の刀を隙間から取り出した。
「白楼剣は少し借りるだけ。使ったらすぐに返すわ。それから、あなたにはこの楼観剣を渡すわね。いつかの刀工が丹精こめてつくったものなのよ。そのときがきたら、あなたの息子に渡してちょうだい」
放り投げるようにして紫は刀を剣士に渡した。剣士はその刀を胸で抱えるようにして紫を見つめる。そして、ようやく口を開いた。
「紫さま、どうしてあなたはこのようなことをするのですか。私には何もわかりません」
「どうしても知りたいなら、あなたはそれを尋ねる権利がある。そしてあなたは知りたいということかしら?」
「私の息子のことだけでも教えていただきたいのです」
紫は長いため息をついた。
「あなたの息子を幽々子の護衛につける。半霊であるならば、幽々子を長いあいだ護れる。そう思って、あなたの息子を選んだ」
「しかし、幽々子さまも人間。私の息子が成熟する前に――」
紫は扇を剣士につきつけ、言葉をさえぎる。
「幽々子はもう、人間ではないわ」
何か言いたげに口を動かそうとする剣士に、紫は扇を突き立てる。
「言えるのはこれだけ。あとはあなたとあなたのご子息の目で確かめるのよ」
紫は剣士に突き立てた扇を下ろし、剣士に背を向けた。剣士は呆然としたまま紫の背中を見つめる。おそらくは、自分にひどい仕打ちをした妖怪の必死さを感じていたのだと紫は思う。
スキマの中にあるはずの刀を紫は思う。自分にはもう、どこにも選べる手段がない。
西行桜の木の下で座っている幽々子を見たときから、私はやるべきことを理解していたのかもしれない。ただ、私に覚悟がないだけの話だったのだ。あのとき、幽々子はもう死装束を着ていた。自刃こそしないが、最初から幽々子は死ぬ気だった。
でも幽々子、あなたの考えていることはすべてわかっていても、私はそこに壮絶な矛盾を感じずにはいられない。あなたはどうして自刃しないの? 自刃しなければ、どうしてあなたはそこに座りつづけるの?
紫の背後で剣士が泣き崩れるのが聞こえた。紫は唇を噛んで、背後の剣士の泣き声が続くのを聞くことしかできなかった。紫は――妖怪である紫は――そうするしかなかった。たとえ、人を悲しませることになっても、自分のために、そうする以外の選択肢がなかったのだ。
四
「いつまでもこうしていられないの」
雪のように白い顔をした幽々子の声はかすれていて、ほとんど声になっていなかった。
「死ぬなら今日。これ以上あなたに残された時間はないのよ」
幽々子はそう言って、しかし口をわずかに動かして、余裕の笑みを浮かべた。紫は幽々子の姿に思わず目を伏せたくなった。
もう西行桜以外の桜はすべて散ってしまった。満開になっていないのは西行桜だけだった。それはずっと耐えつづけるように満開を拒み、四分咲きのままで留まっていた。濃い色の花はそのまま散ってしまいそうに見えた。
右手に持った扇を閉じたまま幽々子の前に立ち、紫は言った。
「聞かせてくれないかしら、あなたの答えを」
「わかっているくせに」
幽々子は目を細めて冷笑した。紫は表情を動かさない。
「幽々子、あなたの中だけではしょせん妄想に過ぎないの。私にはその境がわかる。だからあなたの口から直接聞きたい」
幽々子は目を閉じて、静かに言った。
「虚しいの、何もかも。生きることも、それから死ぬことも。生と死に一喜一憂する、そんな感情から私は離れてしまいたい」
「だからあなたは死ぬの?」
幽々子は目を閉じたまま首をわずかに横に振る。
「肉体的にはそうなるわ。でも、死ぬわけではないの。私は誰を殺すわけでもない。他人も自分も。私は誰を護るというわけでもない。だって、そうでしょう。自分の命を絶つのは、そうしなければ自分の存在を護れないから。でも今の私はそうじゃない。もう自分の存在すら消し去ってしまいたいの」
幽々子はそこで言葉を切り、苦しそうに呼吸を取り戻そうとした。吐息の音すら紫には聞こえなかった。紫の表情は変わらない。冷淡に幽々子に尋ねる。
「あなたは生と死の輪廻から逃れたいの?」
幽々子はかすかに目を開いてうなずいた。真っ白な唇から微笑が失われていった。幽々子の口がわずかに開き、そこから言葉が滑り出た。
「そろそろあなたの決断を聞かせてほしいわ」
細く開かれた幽々子の目は、それでも紫を見据えていた。紫は顎を引いて幽々子を見つめ返す。長い時間が経ってそれから紫は差していた傘を閉じて地面に落とした。そしてスキマから白楼剣を取り出し、その先端を幽々子に向けた。
「私の答えは」と紫は冷たく言う。「あなたを殺すことよ」
幽々子はまた唇の端を軽く持ち上げて言った。
「ずいぶんとご立派な決断ね」
それから幽々子は目を閉じた。それ以上の言葉を口にする気はもうないのだろう。そのまま幽々子はまた微動だにしなくなった。紫は刀の先端を幽々子に向けたまま、一歩一歩音も立てずに幽々子に歩み寄った。そして、刀の先端が幽々子の胸に触れたあたりで、歩み寄るのをやめた。
長いあいだ、沈黙が続いた。
紫の手が震えはじめ、顔に表情が現われはじめた。時間とともに自分の覚悟が削られていくのを紫は感じた。刀を幽々子から少し遠ざけ、紫は堪えきれずに言った。
「間違っているわ、こんなこと」
刀にまで紫の震えが伝わっていった。紫の意志ではもうどうにもならないことだった。少しの空白のあと、幽々子が目を開いた。
「何が間違っているというの?」
幽々子は紫が震えている姿を見て、また冷たい微笑を浮かべた。
「あなたが何を間違えるの?」
「何もかもよ」
紫は自分の声まで震えはじめていることに気がついた。少しでも気を許せば刀をとり落とし、地面に自分が跪いてしまうように思えた。いつのまにか紫の息は荒くなっていた。
「私はあなたを救いたかった。あなたを死なせたくなんてなかった……殺したくなかった!」
あふれそうになる涙を必死に抑えて紫は幽々子に向かって叫んだ。
「どうして、どうしてこんなことになってしまったの。私にはわからないわ、幽々子」
「あら、幻想郷の賢者がらしくないことを言うじゃない」
幽々子はまた笑う。
「小さな女の子でもわかりやすいように、私がもう一度語ってあげる」
幽々子は小さく息を吐いて話しはじめた。
「私は人の死を見るのがいちばん嫌いなの。たぶん、私の能力も多少は関係していたのだと思う。だから、私は自分の力を忌み嫌ったわ。人を死に誘う力なんて、私はほんとうに欲しくなかったの。私は自然をこよなく愛した。そうすれば、生の美しさに私は囲まれて、そのうちに忌み嫌っている死のことなんて忘れてしまうのではないかと、そう思っていたの」
歌姫の姿で旅をする幽々子を紫は思い出す。
「歌に命をこめて、自然の美しさを詠うのはとても心地よかった。けれど、その心地よさの中で漂っているうちに、私の中でますます死は恐れるべきものとなり、手を触れることすらできないものになっていた。それなのに、私はそのことに気づかないふりをずっと続けてきた」
花のような笑顔を浮かべる幽々子を紫は思い出す。
「そういうときに、あの死の屋敷を見てしまったの。あのとき、生を愛していた私の心は粉々に砕かれてしまったわ。どうにもならないの。生きようと思うことすら、私にはできなくなってしまった。かつての桜の美しさは、今は私に何も語りかけてくれない。私が生きているものからは何も享受できなくなってしまったのよ」
表情をなくしてしまった幽々子を紫は思い出す。
「生きることを虚しいと思っているのに、それでもまだ私の中では死は手を触れたくないままなの。生きることも、死ぬことも嫌なの。もう何もかもが嫌なの。私はただ消えてしまいたい。桜の花のように薄くなって、生も死もないところに――」
幽々子はそこで言葉を切った。そしてそのまま目を閉じて、深く息をついた。喉からかすれた音が聞こえた。彼女には話す気力ですら多く残されていない。
「あなたを」
紫は言葉をふりしぼるようにして口を開いた。
「あなたを消えさせはしない。私があなたを殺すから」
その言葉を口にした瞬間、紫の震えは止まる。もう一度刀を握る手に力が戻ってくる。瞳がしっかりと幽々子を見据えることができるようになる。迷うことはもうどこにもない。
「私が死の杭であなたを繋ぎ止める。だって、私は――」
紫がそこまで言ったところで、幽々子が再び目を開いて紫の言葉をさえぎった。
「そんな甘い考えなら、あなたに人は殺せないわ」
そして、幽々子は息だけで笑って言った。
「私を死に繋ぎ止める? 笑わせないでちょうだい。あなたがわたしを殺そうとしているのは、私のためではないでしょう。あなたが、そうしなければ生きられないから殺すのでしょう?」
幽々子は目を開いたまま続ける。
「繋ぎ止められるのはあなた。結局のところ、あなたは賢者でもなく妖怪でもない。ただの少女なのよ」
紫は幽々子の胸に刀を衝き入れた。
多くはなかったが、それでもたしかに血は流された。幽々子の白い死装束に、刀が刺さっているところから赤い鮮血の染みが広がっていった。それは西行桜の下に座っている幽々子がたしかに生きていたという証拠になった。そして同時に、その血が失われれば、幽々子が死ぬということも示していた。
幽々子の顔はより白くなる。ただ、唇にはわずかに赤みが差した。蒼白の顔が紫を見つめている。紫もその顔から目をそらさない。死装束の胸元がすべて赤く染まったところで、幽々子は震える唇を動かし、口を開いた。
「ねえ……ゆかり……」
紫は黙って幽々子を見据えたまま、首をわずかに動かした。幽々子は右手で扇をとり、最後の力でそれをすべて開いた。かすれた声よりもさらに弱くなった空気の震えが、最期の幽々子の言葉だった。
「おなかが……すいたの……」
紫ははっとして目を見開いた。刀を持っていた手が緩み、刀は幽々子の胸から抜けて音を立てて落ちた。紫は思わず跪き、幽々子の名前を叫んだ。
その瞬間、西行桜のすべての花がいっぺんに満開になった。空が突然鮮やかな桜色に染め上げられたかのようだった。そして、満開の花が少しずつ散りはじめていった。花びらが一枚一枚、ゆるやかに桜から流れてくる。
地面に膝を置いたままの紫は、西行桜を見上げた。そして、そこに圧倒的で限りない鮮やかな美しさを見た。それは最期の幽々子の言葉を反映しているかのようだった。
さまざまなことが現実と幻想の境を行き来した。幽々子の肉体が西行桜に吸いとられたこと、幽々子の魂が人のかたちを失ってつたのように西行桜に絡みついたこと、西行桜が少しずつ色を失って妖になってしまったこと――。幻想時間が宇宙のように西行妖のまわりを包みこんだ。
すべてが終わったとき、幽々子の身体は西行妖に封印され、西行妖は幽々子の亡骸に封印されて、幽々子の魂が霧のようにかろうじてそこに漂っていた。
紫は傘を手にとり、立ち上がって西行妖の根元に指を向けた。霧の魂はひとつに集約され、再び幽々子としてのかたちは取り戻した。幽々子だった魂は、目をつむったまま身動きひとつしなかった。
かたちを取り戻したのを見て、紫は再び崩れ落ちるようにして地面に腰を下ろした。
しばらく紫のまわりの時間は止まっていた。時間を無理やり動かしたのは、紫の背後で響く、ふたつの乾いた足音だった。
「今際の桜というのはこれほど美しく咲くものでしたか。けれど、もうこの桜は二度と満開にはならないのでしょう」
白髪の剣士は紫の背後でそう言った。隣にはまだ年端もいかない少年がいた。紫は地面に両手をつけたまま、体を震わせている。剣士は長い吐息をつき、腕組みをして西行妖を見上げた。そこには真っ白な桜がわずかについているだけだった。
紫の膝に涙が落ちた。紫は声を上げることすらかなわず、嗚咽を漏らした。紫の背後から高い声が聞こえた。
「父上、どうしたのですか? あんなに桜は美しく咲いたのに、あの方が泣いているように私には見えます」
剣士は少年の頭に手を置いて、そっと撫でた。
紫は地面を見つめたまま思った。
幽々子、どうしてあなたは私に「決めさせた」の? ずるいわよ。私が刀を衝き立ててから「おなかがすいた」なんて。どうしてあなたは私にその意志を見せてくれなかったの?
少なくとも、あなたはまだ生きる意志を捨てていなかったのに――私は――。
地面に転がっている白楼剣に、黒ずんだ血がこびりついていた。
五
幽々子は紫に振り返った。
「私が望んだことよ」
幽々子はそう言って口もとをふっとゆるめる。
「満開の姿を知りたい、そんな興味本位の部分もあったわ。でもそれよりもずっと強く私を突き動かすものがあった」
わずかに色のついた花びらが舞い降りて、幽々子の袖に寄り添った。幽々子はそれを左手で優雅につまみ、右手の扇を半開きにした。
「たぶんね、妖忌に聞いた満開の姿を、私の身体が求めているのよ。それは今の身体ではないけれど、いつかどこかにあったはずの身体。そう、もしかしたら私が死ぬ前の身体かもしれないわ」
幽々子はつまんだ花びらを顔の前まで持ち上げて、ゆっくりと表裏を眺めた。裏も表も変わらない、一枚の花弁であることを確かめるように。花びらを見つめたまま、幽々子は言った。
「桜はどうして散るときがいちばん美しいのだと思う?」
紫はその問いに何も答えなかった。身構えるように腕で体を抱いて、幽々子の自答を待った。しばらくして、幽々子はふっと息を吹きかけ、花びらから手を離した。花弁は地面に向かって規則正しい拍を刻みながら不規則な軌道で落ちていった。幽々子が口を開いた。
「死を連想させるからじゃないのよ。死は生と矛盾するものではないわ。輪廻とも違う。生と死は表裏一体のものなの」
花びらが地面に落ちた。幽々子は地面から桜の木の枝に視線を移しながら続けた。
「花びらの裏側を誰もが知っている。だからこそ散るときがいちばん美しいの。桜が地から芽生え、立派な木となり、緑の蕾をつけ、大きく花を咲かせ、散る。桜の花びらは散るまでつぼみと枝とずっと寄り添ってきた。それまでの生を誰もが知っているから、散るのを見て万感の思いに浸れるのよ」
幽々子は西行妖を見つめながら左手で扇の端をつまみ、半開きの扇をすべて開いた。そこには散る花びらとともに、桜の木が描かれていた。
「私はいつかきっと春を集めるわ、もう一度。どの桜にも負けない美しさを誇る、西行妖の桜が散るさまを見るために」
幽々子は力強くそう言って、それから紫に視線を移し、じっと紫を見つめて言った。
「満開になったときは、紫、あなたも私といっしょに花見をしてくれる?」
何かが強く紫の胸を打つ。紫は手に持っていた傘を落とす。懐かしい姿がそこに重ねられている。開かれた扇の美しさが目に沁みる。紫の喉は焼けるように熱くなる。
幽々子、西行妖が桜として満開になるとき、あなたはもうこの世にいられなくなるのよ。だから、あなたが西行桜の満開の姿を見ることは、かなわないことなの。その願いは、どこまでいっても決して叶うものではないのよ。
そんな思いはあっても、紫の友の笑顔は桜のように輝く。歌姫が小さく口を動かして歌を詠む。
「散る花を 惜しむ心やとどまりて また来ん春の たねになるべき」
紫の目から涙が静かに流れる。
「あら、紫、どうして泣いているの?」
幽々子は目を細めてやさしく笑う。紫は両手で目尻を拭うが、それでも涙は止まらない。少し上ずった声で、紫は幽々子に言う。
「いつか、きっと、あなたと見るわ、どんなことがあっても西行桜の満開の姿を――」
それ以上は言葉にならない。紫は声を上げて泣きはじめる。
どうして泣くのだろう。紫にはわからない。
幽々子の死の姿? やさしい微笑? 思いは渦巻く。桜の花びらが散るように。
幽々子がそっと紫に歩み寄り、その頭を胸に静かに抱く。そのやさしさにまかせて、紫は幽々子の胸の中で泣く。少女のように、ただ、泣く。
ともあれ、紫と幽々子のやり取りに惹かれました。
お読みいただき、ありがとうございます。
「今回限り」……というのは多少語弊があるかもしれません。
この二人は頭が良すぎるんです。「どこまで考えてるんだろう」と、私の想像を超えるほどに。
ということで、キャラクターの推理にちょっと私の限界が見えてしまったわけです。
この雰囲気はたぶん残ります。体に染みついてしまったようなので。
面白かった。これもまた幻想郷の一つのエピソードとして俺の胸に保管させて頂きます。
二人の関係を考えるのは難しかったです。
ただの旧友、そんな簡単なものではない気がして。
なんとなく、二人には罪を共有している雰囲気がありそうなんですよね。
こんな関係の紫と幽々子もいいね
紫とゆゆさまの想いは、幻想を、越える。