・ ムラサ好きな方注意。ちなみに私はムラサが好きです!
・ 具体的には昔のムラサがちょっと黒いです。あと、ムラサの元ネタである『幽霊船ムラサ』を捻じ曲げまくってます。
・ さらに原作星蓮船のキャラ設定、星輦船の内装等を多少(?)無視しております。
流星群の降り注ぐ海
私は死んだのではないのだろうか。乗っていた船が沈没し、逃げ遅れた私はそのまま船と共に海の底な筈である。
でも不思議と意識が続く。
それともこれが彼の世というものだろうか。
死にたくない、死ぬのが怖い。自分が何でも無くなっちゃうようで、本当に怖い。
上も下も、右も左も真っ暗な海だ。意識は続く、体も動く。
どうやら私は幽霊か何かになったようだった。
1、妖怪水蜜
私は毎日海の底から上を眺めていた。真っ暗な海の中にいつもある小さい光。太陽の光がちょっとだけこの海の底にも届いている。それをただずうっと眺める毎日。
体が動くのだから、海から出ようとも思った。だけど何故だかこの海から出られない。正確には、この沈んだ船からそんなに離れることが出来なかった。
意識もあるし、何故だか息も苦しくないので、最初の内はとっても楽しかった。
だってすぐ目の前にあるのは大きな沈没船だ。中を探すのだってわくわくしてしまう。それはまるで、昔読んだ冒険譚の主人公になった気分だった。毎日毎日沈没船の船内を探索するばかり。時々珍しいものを見つけては、それを眺めて楽しんでいた。
でも次第にそれにも飽きてしまう。
いくら大きな沈没船とはいえ、一ヶ月もあれば船なんて探索しきってしまう。もう多分この船に探してない場所なんて無い。
あぁ、また暇になってしまった。
だったら、やることは決まっている。
船を探索しきってしまったのなら、新しい船を探索すればいい。
長い間海底に居たからか、自然と船が海面を横切っているときが分かるようになっていた。あとは、簡単だ。不思議と私は船の沈め方を知っていた。特に何かをするわけではない。沈め。そう頭で念じるだけで、船は海面で暴れて、沈んでくる。
そうして沈めた船は三日間くらいだけ放っておくのだ。そうしないと人間がまだ死体になりきって無くて、気持ちが悪いから。
人を殺している、という罪悪感はあった。でもそれも退屈が強くなってくると段々と薄れてきてしまい、まぁいっか、と思えてしまう次第である。
段々と船を探索するのも飽きてきた。だってほとんどの船って作りが一緒だし、中に居る人間の持ち物なんてそんなに面白い物は無い。
そう考え始めると、船を探索するのに飽きたという事実は一層強まって、私はまた暇をもてあますようになってしまった。
暇だ。暇から解放されたい。
なるべく水面に近いところまで行っては、小さな太陽の光に憧れる。時々曇りや雨の日があって、光が見えない日もあったけど、また数日経てば陽は上る。上って、私に昼と夜を教えてくれるのだ。
太陽は私に今は昼ですよと教えてくれるけれど、真っ暗な深海でそれは月に見える。確かお月様ってこんな感じだったはずだ。真っ暗な夜を照らす限られた光。
その僅かな太陽の光を受けて、小さい魚達がきらきらと光っている。それはやっぱり無理があるけれど、暇でしょうがない私は魚達を星と思うようにしていた。
「全部うお座。なんつって」
何だか恥ずかしくなって、慌てて口を塞いだ。今思えばこんな身体になってから初めて口にした言葉が、こんな下らないことなんて。
でもどうして今まで気づかなかったんだろう。私は喋れるのだ。今まで回りに喋る存在が居なかった所為か、私は喋るということを忘れてしまっていた。
そうと分かった私はこれで暇が紛れると思い、ただ独りで色々なことを喋っていった。
次第にそれは詩になり、唄となる。
昼間太陽が昇っている日に限って、なるべく海面近くまで行って唄を唄った。そうして毎日を私は過ごしていたのだ。
「水難事故で落とした小さい命
縛り付けられた小さな身体
死んだ瞬間なんて覚えていない
気づけば私は闇の中
出ることなんて叶わない
遠かった空はもっと遠くなる
太陽はまるで月のよう
月なんてちっとも見えやしない」
唄を唄うと不思議と船がよってくる。一隻二隻、次々と船が集まる。
「何にも無い海の底だからこそ唄えばいい
唄えば皆が寄ってくる
独りなんて寂しすぎると思うから
私は唄い続ける
さぁさぁ今宵は何隻沈むかしら
ちゃんと底の空いた淦取り(あかとり)用意したかしら
淦取りを貸して
私が水を掬ってあげる
淦取りを貸して
でもその水は船の中に」
沢山の船が集まった。皆、私に操られたみたいに沢山集まった。
「独りは悲しい暗いのも悲しい
だから皆一緒に流星群を作ろう
私も出来れば笑いたい
今の私には
笑いながら過ごすなんて出来ないから」
金切り声にも似た声を出して叫ぶ。そうすると集まった船は全部沈むのだ。
ほらほら、今日も沢山の船が沈む。人が沢山死ぬのはあんまりにも忍びないことだけれど、それでも私はこれしかすることがないから、沢山唄って沢山沈めるのだ。
ほらほら、きれいでしょう。落ちてくる沢山の船の白い部分が、僅かな太陽の光に反射して真っ暗な海底では流星群みたいになっていて。今日は月もきれいで相変わらず星もきれい。さらには流星群ときた。これだけの流れ星だ。願いなんていくつあっても足りないくらい。
「ここから出たい、本物の星を見たい、笑って過ごしたい。ここから出たい、本物の星を見たい、笑って過ごしたい。ここから出たい、本物の星を見たい、笑って過ごしたい」
うん、とりあえずの願い事はこのくらいかな。本物の流れ星じゃないし、叶わないってことくらい知ってるんだけど。
じゃあ何で人を殺してまでこんなことするのかというと、理由は特に何にも無かった。
最初は私の道づれになればいいと思った。でもどの死体も起き上がることなんて無く、腐敗していくばかり。どうやら私がたまたまそうなっただけのようで、そんなことはとっくに理解していたけれど、やることも無いので暇つぶし程度に続けているだけなのだ。実際のところ、そこそこに楽しい。
暫くこんなことを続けていると、流石に地上の人々も気づき始めたのか、この海に中々人が寄り付かなくなった。それは私の言わば遊び道具であった船が来なくなることを意味していて、またもや私を暇にさせた。自業自得なのだけれど。
そうして暇だ暇だと過ごして約半月くらい経ったころだろうか、ある日の昼、一隻の大きな船がこの海にやってきた。
今までに見てきた船とは比にならない大きさの船に心を躍らせる。
私は迷うことなくその船を沈めることにした。
沈め。
念じると、船が海面で暴れる。中々沈まない。どうもこれは様子がおかしい。最初の内は大きいから沈ませるのに時間がかかっているものだと思っていた。でも、この感じはどうやら違う。何かに護られているようなそんな感じがする。
でもここいら一帯の海は私自身だ。力なんていくらでもある。念じて駄目なら、物理的に船を沈めればいい。私が腕を上に上げると、海面には数本の水柱が立っていた。
腕を振るう。
轟音とともに水柱は船に殺到した。
しかしどうやら向こうも中々やるようで、何かに水柱が消されてしまった。
そこで漸く私は理解した。
この船に乗っているのは何かの術者であることを。人が寄り付かなくなったこの海に術者が現れたということはどういうことを意味するかを。つまりは人々が術者に私を退治するように依頼したのだ。
あぁ、成る程。私はどうやら人々の間で言うところの幽鬼になってしまっていたのか。
しかし何だろう、この満たされている感じ。何だろう、この胸の奥から湧き上がるふつふつとした感情。可笑しい、本当に可笑しい。私は今日ここで殺されるかもしれないというのに、何故だかわくわくしてしまっている。
今まで何の刺激も無く、ただ無力な者達を沈めてきたのとは訳が違う。それはまるで私の大好きだった冒険譚のラストシーンのよう。どっちかと言ったら私が悪役なのが残念だけれど、それを踏まえてもこの高ぶる気持ちは抑えられない。
どうすればいいのかな。かかってくるが良い、とでも言えばいいのだろうか。いやいや、そんなの私らしくない。ここは、私らしく行こう。
私らしく、唄を唄おう。
「水難事故で落とすは大きな命
縛り付けられるはどちらの身体か
死んだ瞬間なんて分からない
気づけば一方は闇の中
逃げることなんて叶わない
遠い空は届かぬ存在に
太陽を月にたとえ
月の光など忘れてしまえ」
船の状況は手に取るように分かる。相手は三人。三人とも強い力を持っているようだ。雰囲気で分かる。突然聞こえてくる唄に驚きながらも、聞いている。私が攻撃の手を緩めているから、三人はお互いがお互いの方位に注意を向けて聞いている。
「最期になるかもしれないからこそ唄えばいい
唄えば皆を巻き込める
皆一緒の方が楽しいと思うから
私は唄を紡ぐ
さぁさぁ今宵はどちらが沈むかしら
ちゃんと底の空いた淦取り(あかとり)用意したかしら
淦取りを貸して
私が水を掬ってあげる
淦取りを貸して
でもその水は船の中に」
船の人達は私の唄を聞いて操られるなんてことは無かった。そうこなくては面白くない。これはただの、私なりの場を盛り上げるだけの茶番。だってこんなにも楽しいんだもの。こんな気分、久しぶりな気がする。
「独りは寂しい暗いのも寂しい
だから皆一緒にここに住もう
笑いたいから道づれにしちゃうよ
今のままじゃあ
笑いながら過ごすなんて私には出来ないから」
金切り声を上げる。今まで出したことの無い全力。私を、この海全てを使って望む、戦い。
船の上の人達なら十分観察した。認めよう。彼女達は私よりも強い。でもそれはフェアな戦いのときの話。この海に私は無限にある。負けるはずが無い。
船なんて簡単に飲み込んでしまう荒波を起こす。それでも船は沈まない。
水柱を船に叩きつける。水柱はことごとく迎撃されてしまう。
海水を打ち上げて、大量の雨を降らす。船に水は着水しない。
成る程、どうやら船に何かをするのは難しいらしい。彼女達を何とかしなければ。
あんまりやりたくなかったけれど、水の一つ一つに力を籠める。霊力みたいなものか、これで水の一つ一つは触れるだけで人を殺めるだけの物になったはずだ。こんなことやったことは無かったけど、私はこの方法を知っていた。
さぁさぁ、ここからは本当に殺しにいくよ。貴女達を殺してから、船を貰うことにするよ。皆殺したらまた独りになっちゃうのは寂しいけれど、私は幽鬼だから殺さなくちゃいけない。悪役はやっぱり悪じゃなきゃ話としてはつまらない。
霊力を籠めた水柱を次々と船の上にいる人達に殺到させる。一つ残らず迎撃する三人。本当に強い。
ならこれならどうだろう。今度の雨は全てが槍だ。今度の雨は、体なんて簡単に貫くぞ。
三人に降りかかる無数の槍。それも全て弾いてしまう。それぞれが霊力を使って体の回りに薄い壁を創っているようだった。
ならば一打を大きくしよう。雨粒の密度を上げて、数は少ないけどちゃちな壁なんかでは防げないようにする。
それでも一人は物ともせず、残る二人は数が少なくなったとは言え、見切れるような攻撃では無いはずなのに避けている。
じゃあ、これはどうだろう。海底に沈んでいる沢山の今まで沈めてきた船のアンカーを、水の力で持ち上げる。そして船のありとあらゆる方向から三人に沢山のアンカーを投げつけた。
上方と左右からの囲むような攻撃。しかもパワーもある。これならひとたまりもあるまい。
しかし相変わらず一人はピクリとも動かない。この人は一頭強い。ならば後回しだ。
そう考えた私は、強い三人の中でも恐らく一番力が弱いと見た一人に水柱とアンカーを殺到させる。
「ナズーリンッ!」
見事にアンカーがナズーリンと呼ばれる人に命中し、その小さな体は海の中へと吹き飛んできた。
私は今叫んだ人が集中を欠いたのも見逃さない。こういうときは常に集中してなきゃ死んじゃうのに。よほどこの人にとってナズーリンと呼ばれる存在は大切らしい。それでも、戦いの中で集中を欠いたときはもう死んでいるときである。アンカー一つをその人の後ろから高速で投げつけた。
予想通りアンカーは当った。その人は船の上で転がりながら数回跳ねた。復帰する暇など与えない。とどめに水柱を殺到させる。どうやら人間では無いらしく、はるかに硬いようで外傷はほとんど無いようだ。それでも戦闘不能にするには十分すぎる攻撃ではあったらしい。
「すみません……聖」
そうか、残る一番強い人は聖と言うらしい。
とりあえず、この倒れた人は海に回収しておこう。水柱に動かなくなった二人目を、海に放り出させる。
「ナズーリンッ、星……」
どうやら二人目の金髪は星という名前か。ナズーリンと星は海に沈んだ。後沈めるのは聖とその船だけ。でも問題はその聖だ。仲間が立て続けに二人もやられたらうろたえて当然なのに、この聖という人は二人の心配はしているものの、本人に隙が生まれるということは無かった。
大粒の雨も効かない、水柱も効かない、アンカーも効かないとあってはどうしたものか。思案していると、聖の行動に変化が起きた。
なんと聖が船から海に降りてきたのだ。飛び込んできたのではない。ゆっくりと、降りてきた。
海に入ると、聖を囲うようにして球形に霊力の壁が張られ、海の水が入っていないのが分かる。
ためしに水全部を使って圧迫してみる。やっぱりその壁はびくりともしない。今判明した。私はこの人には勝てない。だって、そうでしょう。海、私の全てを使って押しつぶそうとしたのに、全然効いてないんだもの。まぁここで退治されても、何だか最後は楽しかったからいいかな。悪役は退治されてこそ、悪役だしね。
聖が近づいてくる。ゆっくりと、その距離を縮めてとうとう私の目の前まで来てしまった。
私は覚悟を決めてあがく。どうせこの下に沈んでる船から遠くへ行けないんだ。逃げたって、逃げれる範囲が決まっていればすぐに捕まってしまう。
「聖ぃぃッ!」
叫び声を上げて、本当に最後の最後に全力を出してみる。やっぱり駄目だ。目の前の球形はその形を崩すことなど無かった。
聖を見ると、困ったように笑っている。この状況下で笑っている。それはなんて暖かな笑顔だっただろう。この冷たく、暗い海の中でとても暖かく感じる笑顔だった。微笑み。そう表現するのが丁度合っている。
「こんばんは、ムラサさん」
「な、何。それ私のこと?」
目の前の聖とやらは私を見てムラサと呼んだ。それは私が死んだときに乗っていた船の名前で、私の名前ではない。あぁ、でもそうか。きっと私を船の妖怪として認識しているんだろう。だから、ムラサなのか。
いや、そんなことよりも驚くことがあるだろう。何と聖が私に挨拶をしてきたのだ。どこまでも、穏やかに。
「少し、お話しいいかしら」
何を言っている。お前は私を退治しに来たのだろう。私は沢山人を殺し、退治される。だから私はこうして必死に抵抗しているんじゃないか。まさか妖怪を退治しに来ておいて、仲間の命を助けてくださいなんて言うつもりじゃないだろうな。殺し、殺される。妖怪と人間というのは殺しあう関係だ。妖怪退治に犠牲はつき物だろうに。
「まさかあのナズーリンとかいう奴と星とかいう奴を助けろと言うんじゃないだろうな」
「あら、その口ぶりだとやっぱりまだ生きてるのね。よかった、きっとそうだと思ったわ」
驚きを通り越して、何だか腹が立つ。あの二人は私との殺し合いで負けた。なら、殺されるのは当然だろう。どうせ私も目の前の聖とやらに殺されるのだ。昔人間だった自分が言うのもなんだけど、人間って何て愚かなんだろう。
「ふざけるな! 自分は私を殺しにきといて、それで仲間がやられたら助けろ? 随分と調子がいいものだな」
「私達は貴女を説得に来たのです。だからお話ししたいのだけれど」
「何を言ってるんだ、お前は現にッ……!」
はたと気づいて口を止める。そういえば、向こうは誰一人として私に攻撃してこなかった。あれだけの力を持っていたのだ、あの二人も、この人も、決して私が居るところが分からなかったわけでは無いだろう。ではどうして攻撃してこなかったのか。まさか本当に説得をしにきたとでもいうのだろうか。いや、そんなはずは無い。私には分かる。目の前の奴は何かしらの術を心得ているようだが、人間だ。先の二人はどうやら妖怪の類のようだが、私のしっている文学にも人間が妖怪を連れて旅するものもあった。あの二人は人間側の妖怪。この人間は、他の力の無い人間達から雇われた術者。きっと、きっと私を騙そうとしているのだ。よくある話で、殺さず捕らえてきたら賞金をはずむとかそういう感じで。
「落ち着いたかしら?」
「それ以上しゃべりかけるな! こいつらを殺すぞ!」
あんまりやりたくはなかったけれど、私が目の前の聖に手も足も出ないのだから仕方がない。人質を取らなければ、自分が死んでしまう。まだ私は、死にたくない。笑って過ごしたい。夜空に浮かぶ星もまた見たい。ここから出たい。その積もり積もってきた願いが叶うまで、私は死ぬわけにはいかない。
気を失っているナズーリンと星の体を、私と聖の間まで持ち上げる。壁にするように。
人質を取ったのに、聖は穏やかに笑う。少し困ってるような顔をしているものの、その顔はまるでやんちゃな子どもに手を焼く母親のような笑みで、やっぱり腹が立つ。
「そんなことはやめて頂戴。それに貴女にそれは出来ないわ」
「話しかけるなと言っている!」
「貴女は分かっているはずよ。その二人を今殺してしまったら、一線を越えてしまうということが」
「うるさい! どうせ今までだって散々人を殺してきたんだ。今更躊躇なんてしない!」
「そうね。貴女は確かに沢山の人々を殺めてきた。でもそれは、妖怪だから人を襲うというある意味食物連鎖のようなもの。ここで二人を殺せばそれは殺人」
「関係ない! それ以上喋るな! ここから出てけ!」
私は星という方の周りの海水に霊力を籠めて、その体を潰す準備を整えた。後は私が念じるだけで、この妖怪は死ぬ。
「それと、それだけは止めたほうがいいわ。いくら私でも、その二人を殺されたら自分を保ってる自信が無いの。目的も忘れて貴女を殺してしまいそうだわ」
聖と目が合う。温厚そうに見えた聖から初めて感じ取った背筋を走る悪寒。目の前の人間は圧倒的な威圧感を持っていた。お前なんてすぐに殺せる。そう語っているように見えた。その目は同時に、何だか今私のしていることがとてもいけないことのような気にさせる。
全てを悟っているような目を見据えている内に無性に腹が立ってきた。話し合いをしにきたとかいって、結局私には選ぶ道は無いじゃないか。結局そうやって力で押さえつけているんじゃないか。
話し合い? 内容なんて目に見えている。どうせ命だけは助けるからおとなしく付いて来い、とかそういうものだろう。
あぁ、やっぱりなんて人間は汚いんだろう。本当、汚い。人質を取った自分が言えることじゃないかもしれないけれど、それでも人間は汚いと思う。特にこうやっていい人ぶってる人が一番むかつく。人の心配して、自分の身を守れないようなこの星とかいう奴にもむかつく。同じ妖怪の癖に、仲間が居てこんなにも思われてるナズーリンにもむかつく。そして何より、こんな奴等に勝てない自分が一番むかつく。
「あああ……」
もっと強くならなきゃ、私は死んじゃう。願いを叶える前に、私死んじゃう。生きるにはどうしたらいい? 目の前の人に勝てれば、万事解決だ。
私は意を決した。全てを以て、聖に挑もう。
しかしこのままでは勝てない。どうしたらいい。そうか、目の前のこの二人を取り込んでみてはどうだろう。多分そしたら聖よりも強くなると思う。でもどうやって取り込むのかな。食べればいいのかな。
私は頭を振る。
違う。そんなことがしたいんじゃない。でも、聖には勝ちたい。だったら私はなんで二人を食べないの。それは分からない。
いけない、思考が何だかおかしな方向に行き始めた。
食べてはいけない。食べるしかない。
話し合いに応じるべきだ。信用できない。
じゃあ、逃げる。逃げれるわけが無い。
挑む。挑んでも殺されるだけだ。
死にたくない。だったら力を得ろ。
矛盾した思考が私を支配する。頭が痛い。ぐるぐる回る頭の中で、私は理性を保つのに必死だった。
気を抜けば、理性はどこかに飛んでいってしまいそう。勝ちたいという欲で、意識が吹っ飛んでしまいそう。
なぜならば、私は知っているから。理性を飛ばせば力を得ることが出来ると。妖怪の本能に任せて、私のそのものの特性にまかせて攻撃すれば、或いはあの壁を壊すことが出来るかもしれないと。
理性を飛ばせば、聖に勝てるかもしれないと。
「う、あ。ウウァアァァアァアアァアアアアァァァアァァアアァッッ!!」
頭が揺れる。もう意識なんてほとんど無い。それは私のあがき。理性を捨てる直前になって、そうしてはだめだ、と思った。だから、あがき。
海一杯に広がる金切り声は、理性を離すまいとする私の精一杯のあがきだった。
当然海は荒れる。海底でもそれが分かるほど荒れていた。水流は入り乱れ、小さな竜巻がそこら中に出来ている。一帯にいる魚達は皆息絶え、意識のないはずの人質達も苦しそうに顔をゆがめる。岩が崩れる。海底に沢山あった船は、私の声が届くやいなや、ぼろぼろとその形を崩していく。もう、私は。
いけない!
ぎりぎりのところで強く思いとどまる。
「はぁ、はぁ、はぁ」
私は何とか理性を保っている。それでもこの胸の奥から湧き上がってくる闘争心は、どちらかといえば妖怪の本能に近いものだと思う。どうやら私は本当にぎりぎりのところで留まれたようだ。さらに幸いなことに、理性をはき捨てる直前までいったからか、先ほどよりははるかに自分に力があるのが分かる。それは、目の前の聖には及ばずとも、あの壁くらいは破って一泡吹かせるのには十分すぎる力に思えた。
「よかった。やっぱり貴女は留まってくれると思ってたわ」
「うるさい! こっから出て行け!」
私は聖に挑みかかった。
2、月が照らしている
暗い、暗い水の底。周りにあるものは月に見立てた太陽と、満点の星空に見立てた魚の群れ。それと沢山の船。船の中には多分腐った死体が沢山あるんだろう。そんな考えるだけで鬱になりそうな空間の中で、私は生きてきた。生前の記憶なんてほとんど無い。水蜜という名前と、自分のお父さんのように立派な船長になって、そうしてお話に出てくる冒険家のように世界中を旅してみたいという夢があったことくらい。でもこうしてここにいることを考える辺り、どうやらその夢はなくなってしまったようだ。今の夢は三つ。ここから出て、本物の星を見て、笑って生きること。どれも難しそうだ。とても私には出来そうに無い。だってここは暗闇だ。神とまであがめられた太陽でさえ、その光は遠く、この海底には平等に届かない。強い常闇にはそれでもありがたい光で、やっぱり太陽は神様みたいだったけれど、あんなにも空が遠い。
なんてここは暗い世界なんだろう。
あまりもの眩しさに目を覚ます。目を開けるとそこは見知らぬ天井。辺りを見回せば、どこかの船の一室のようである。海底には船が沢山ある。その内のどれかだろうか、そうとも一瞬考えたが私は驚くべきことに気づいてしまった。
「み、水、水が無いっ」
そして、妙に明るかった。いつも暗いところで生活していた所為か、目が慣れていなくて目を開けていられない。見れば天井には灯りがともっている。
それにしても、ここはどこだろう。
確か私は聖に負けた。完敗だった。そうして気を失った私は、この見知らぬ部屋にいる。この揺れる感覚は、船だ。夢の世界だろうか。もしかしたら私は死んでしまって、これが天国とでも言うのだろうか。だとしたら、なんともありがたい。元々死んだ後は何も無いと考えていた少女が、海で死んだら妖怪となって生き返り、次は術者に殺されたと思えば今度は天国で意識が続くと来た。
頭痛がする。馬鹿な考えをやめて、ここがどこなのか確認することにした。いつのまにか、服も動きやすいルーズな服に変わっている。
あれから私はどうなったのだ。聖達はどうなったのだ。
とりあえず部屋からでることにした。部屋を出ると見慣れない廊下が続いている。それはまるで大きな屋敷に作られた廊下のようで、確かに感覚は船の上だけれど本当に偉い武士の住居のようにも感じた。
長い長い廊下を歩いていく。ようやく目が明るさに慣れてきて、暫く開けていても大丈夫なようになってきた。
廊下の突き当たりの部屋に人の気配を感じる。私は恐る恐る障子を開けてみた。するとそこには聖がいたのだ。修養、というのだったか。何か勉強のようなものをしている。
「気がついたのね」
後ろ向きのまま声をかけられて驚いた。しかし何故聖がここにいる。
ここはどこなのだ。
聖がこちらを向いて座りなおす。私も座るように促された。何となく、畏まって正座をする。
「うん、特に何も無いようでよかったわ。それに、今度こそちゃんとお話できそうですね」
何がよかったのだろう。私が特に問題なかったこと? 本当にそうだとしたら、とんだお人よしだ。私は聖の表情を読み取ろうと、聖を睨みつける。無論、まだこいつらを信用していない。というか、出来るわけないだろう、普通。
「ここは、どこ?」
聖を睨みつけたまま気になっていたことを全て問いただすことにした。それでも、貴女は私の味方か、なんて質問はしない。そんなの、敵だろうが味方だろうが、はい味方ですって答えるに決まってる。
「ここは星輦船といって、私達が普段移動のときに乗ってる船よ。何だか普通に生活できそうな感じで、いい船でしょう?」
「本当か。私をどうやって海底から引き剥がした? どうやっても離れなかったはずだが」
「あぁ、それならね、貴女は地縛霊だったから。私も困ったのよ。でね、ナズーリンが機転を利かせてくれて解決したの。幽霊船ムラサを星輦船の新しいキャプテンに任命します。ってためしに言ってみたら、今度は貴女の体がひゅーってこの星輦船から離れられなくなっちゃったみたいよ。ようは、貴女の縛られてた対象を変えてみたら成功したってことね」
「は?」
そんな話が信じられるとでも思っているのか。
「何をばかなことを言っている。そんなことありえるものか」
「私だって驚いたわ。貴女きっと、船になんらかの愛着を持って幽霊になっちゃったのね。だから船が変わっても、船であることはかわらないから、今度はこの星輦船の地縛霊になったってところかしらね」
ということは、今私はあの海底から解放されたということか。まさかこんな方法で外に出られるとは。
顔が無意識ににやける。それを直ぐに引き締めた。冷静に考えればこの人は私をここに縛り付けることに成功したのだ。もう私はここから逃げられない。
「この後私はどうなる。私を誰に引き渡すんだ」
もしかしたら海底から出なかったほうが幸せだったかもしれない。これから私は酷い仕打ちを受けるのだろう。まぁ、私もそうされるだけの酷いことをしてきたのだけれど。
「えっと、そのことについて考えたのだけれどね。貴女ここから出られなくなっちゃったじゃない? だからね、ここに住むしかないと思うの。貴女何か信仰している宗教はあるかしら」
「いや、生前の記憶はあんまり」
「なら丁度よかったわ。これで話がまとまりそうよ。貴女を正式に入門者として迎えます」
目の前の人は何を言っている。話が飛躍しすぎていて全然付いていけない。
「意味が分からない。何故捕らえたのに宗教に入門しているんだ。そんなつもりは無いし、修行も嫌だし、勉強もそんなに好きじゃない。お前は私を退治しにきたのでは無いのか。殺さず捕らえることに成功したお前は、私を誰かに引き渡すんじゃないのか」
「さっきから何を言っているの? あぁ、そうね。そう思われて当然よね。私はね、人間と妖怪が共に笑って過ごせる世界を作りたいの。人間だって食べられるのは痛いし、妖怪だって退治されるのは痛いわ。人間も妖怪も、同じように血を流して、同じように涙も流す。なのにどうして共に生きることが出来ないのかしら。そう思い始めたらきりが無くて、それで気づいたらその日を夢見て考えに賛同してくれる妖怪を匿っていたわ。だから貴女を誰かに引き渡すなんてことしないわよ。依頼してきた人にはとりあえずもう害はなくなりましたって言うだけにするわ」
この人を暫く見ていて分かった。この人の目や笑みに濁りは一切みられない。恐らくその口から述べていることは全て真実なのだろう。素晴らしい考えだとは思う。だが、問題点も沢山ある。
「妖怪の一部がそれに賛同しているのはいいとして、人間への浸透はどうなっている。そう簡単には頷いてくれないだろう」
「そうなのよ。たまにあんまり刺激を与えすぎないよう、濁して言ってみるのだけれど、いい返事は返ってこないわね」
それはそうだ。私だって自分を殺すかもしれない存在との共存なんて嫌だ。
どちらかといえば、その考えには賛同しかねる。近くに違う存在がいれば、自分たちの身を守るために一方を攻めるのは生物として当然の行動だ。例えば人間だけで見ても、違う国が隣にあったらいつ侵略を受けるのが怖いから、侵略を受けるその前に攻撃をして滅ぼしてしまおう。そういう考えから起こるのが戦争だ。どちらか一方が死ななければ、どちらか一方は生きることが出来ない。それの規模が国と国という大きな規模から、妖怪と人間のように種族というもっと大きな規模になるか、一匹の妖怪と一人の人間のように個人という小さな規模になるかの話である。どのみち、どちらかが殺すという事実に変わりは無い。
「その考えには賛同できない、入門は出来ない。そういったら、どうなる」
「そのときは納得してくれるまで何日でもかけて説得するわ」
この人がそういうのだから、きっとそうなのだろう。
「私の今まで重ねてきた罪は重いぞ。そんな妖怪でも大丈夫なのか」
「勿論それに関しては重ねた罪の重さに比例して善行を積んでもらいます。貴女は特に厳しいものになるでしょう。それと、私が目指す先は妖怪と人間の共存。だから入門したらそれ以降は人間を食べないでね」
そんな馬鹿な話があるか。もし私が人間で、この妖怪は沢山の人を殺しました。でもそれだけの量に見合う善行も積んできました。なので許しましょう。なんて言われたら許せないに決まっている。
それでもなんだか、不思議なことにこの人についていってもいいと思い始めている自分がいた。この人は本当に心の底から望んでいる。それは本当に素晴らしい世界だと思うし、理想も高いけれど、この人なら出来る気もする。
「どうかしら。入門してみる気無い?」
「考えておく」
今はまだ、自分の置かれた状況が把握できていないから濁した返事にとどめておく。
「いい返事を早く聞かせて頂戴ね。安心するわ。あぁ、それと、この船は家だと思って使ってもらって構わないわ。事実もうここは貴女の家よ」
それだけ聞くと、私は部屋を後にする。
よもやと思ったが、どうやら聖は本当に私を救おうとしているらしい。これから聖についていけば、本当に救われるのかもしれない。さっき私が濁した返事をした理由は一つ。なんだか恥ずかしかったからである。向こうは初めから私を説得させるつもりで来ていたのに、私は最初から一方的に盛り上がってしまっていた。人質を取るという私の中の正義に反する行為までしてしまった。
認めよう。聖という人は素晴らしい人だ。
だからこそ、私のような人が近くにいていいものかと思ってしまう。
廊下を歩く。どうやら私は本当に聖とやらに救われてしまったらしい。礼儀としては入門したほうがいいのだろうか。いやでもしかし、いずれ私のような者が聖の近くにいることが人間たちに知られたら、聖はどうなる。彼女はそれを分かってはいると思うが、これ以上迷惑かけたくないというのも事実だった。
暫くのんびり廊下を歩いていると、目の前から星とナズーリンがやってくるのが目に入った。
「おや、目が覚めましたか。うんうん、少し心配でしたが、この船でも動けているようなので安心しました」
「全く、気がついてみたら今度は貴女が気絶していると来たから、心配していた」
言葉が見つからない。この人達は私を心配してくれているから、何か言うべきなんだろうけれど、私はこの二人にとんでもないことをしてしまった気がするから。何だか、申し訳ない気持ちで一杯だ。
「丁度いい。今からナズーリンと月を見に行こうと思うのですが、貴女もどうです?」
「今日は満月だが、月食らしくてな。珍しいものが見れると思うんだ」
なのにこの人達は私を月見に誘ってくれている。私は彼女達に言われるがままついていくことにした。
船の扉を開けるとそこに広がるのは満天の星空。真っ暗な夜空に沢山の小さな粒があって、その真ん中には一際明るい月がある。
海底を思い出す。海底も確かにこれに近い感じでは見えていた。太陽を月にたとえ、魚を星にたとえ。しかし、本物の月はなんて綺麗なんだろう。本物の星は、なんて数が多いんだろう。
本当に綺麗だ!
周りは同じように暗いけど、それは全然違う暗さ。夜、濃い闇につつまれているこの船は、満点の星空が包み込み、さらには満月が照らしている。そして何より、この船はどこかを目指して進み続けているのだ。
美しい。世界はこんなにも美しかった。たった、たったのちょっと海の上へ出ただけでこんなにも美しいものなんて、思いもしなかった。月がこんなにも明るいんだ。太陽はさぞまぶしかろう。
一刻ほどだろうか、暫く無言で月を見ていると、船の中から聖が出てきた。修養を終えたのだろう。
「あら、今日は月食と聞いたけれど、まだ始まってないみたいね」
「満月も綺麗なものですよ」
聖が出てきて少し身構えたが、どうやら入門を催促することはしてこないらしい。別に私も入門が嫌というわけではない。ただ、まだ迷っているのだ。
「ムラサ、貴女は月を見て何を思うかしら」
「……綺麗」
「そう言ってもらってよかったわ。海底からじゃよく分からなかったでしょう。あ、でもちょっと海も神秘的で綺麗よね」
「見飽きれば綺麗なものも綺麗じゃなくなる」
「それもそうねぇ」
私が入門することによって、この人のこの笑顔を壊してしまう気がするから、今はまだ言わないでおこう。
聖が出てきてすぐに月食は始まった。最初に気づいたのはナズーリン。本当に少しずつ、目での確認は難しいくらい月が欠けている。月食。それは本当にただの十六夜の月みたいなだけで、ちょっとかけただけだったけれど、珍しいという事実があいまってかとても綺麗に見える。
「ご主人、流星群だ」
急にナズーリンが立ち上がって正面を指差す。その先を見ると、沢山の流れ星がこの海に降り注いでいる。私は私がしてきたことを思い出した。船を沈めて、それを流星群にみたてて、よくお願い事をした。そのときの願いは今でもよく覚えている。海から解放されたいということ、本物の星を見たいということ、笑って過ごしたいということ。
今思えば二つは聖の手によって叶えられてしまった。ならば、今私が願うことはたったの一つ。笑ってすごしたい。皆に聞かれるのは恥ずかしいから、心の中で三回呟く。
「ナズーリンは本当に目がいいですね。聖は願い事とかありますか?」
傍らで星達が話しているのに耳を傾ける。
「あるわ。全ての人間と妖怪が楽しく笑って過ごせますようにって。そのためには尽力を尽くします」
「聖らしい願いです」
「まったく、ご主人といい聖といい、ここにはそういう人しかいないのか」
私は何だかもう自分が情けなくなってしまった。何を自分は迷っていたのか。何を自分は悩んでいたのか、一気にあほらしくなってしまった。
私が一緒にいたらとか、聖が悲しんでしまうとか。そんなこと、とっくにこの人は理解し、覚悟しているんだ。それを、私が勝手に気を使って、気を使っているようで実は困らせているだけ。
「ムラサも何か願い事ってあるのですか?」
星が私に聞いてくる。私は、この人達に恩返しをしたい。礼儀とか、そういうのを抜きで聖についていきたかった。そしてその理想の先が失敗だろうが、成功だろうが、何となくこの人達といれば笑って過ごせるような気がしたから。私までもが自然と笑顔になってしまうから。
「私の願いは、私にも、その、聖のお手伝いをさせてほしいということです」
だって、こんなにも今ここにいる人は皆笑っている。
あれから数ヶ月。すっかり打ち解けることが出来た私はすることも無くぼうっとしていた。ただのんびりと月を眺める。聖のお寺の屋根でだらしなく寝そべって、空を見上げる。
そうそう、こういう真っ暗な中で月が照らしているような日は、よく海底にいるころは唄を唄ったっけな。
でももう詩を覚えてない。思い出す必要も無いほどに、私は今幸せに過ごせているのだ。
「ムラサー、準備が整いましたー。行きますよー」
下で星が呼んでいる。今日は私がここへ来てから初めて“妖怪退治”へと向かう日。どうやら西の方の鵺という妖怪のところへ行くらしい。
小さい悪戯ばかりを好んでする、所謂困ったさんらしい。新しい仲間が出来ることを思うと、何だか心踊る。
それと、もう一つ楽しみがあった。今日は初めて私がキャプテンとして船を動かす日。聞くところによると自動操縦で何もすることは無いらしいのだが、それでもなんだか嬉しくて堪らない。
私は鼻歌まじりに星の待つ下へと降りていった。
人も妖怪も、望むものは皆無いものねだりだ。人は海底を神秘的だという。それは人が海の中では呼吸が出来なくて、海底の全てをまだ知らないからだ。私は今こうして地上にいる方がよっぽど世界は美しく見える。それは私が生前の記憶がほとんど無くて、妖怪になった後も海底のことしかよくしらないからで、数ヶ月経った今でも地上の全てを知っているわけでは無いからだ。人も妖怪も皆月を見て綺麗だという。それはやっぱり月のようにどこまでも遠くにあるものは、触れることすら叶わないからなわけで。
それでも私は得なほう。海底も知ってるし、地上もこれから知ればいい。人間も知ってるし、妖怪も知っている。辛いことも知ってるし、楽しいことも知っている。
だから、今の私にはこれと言って強い願望は無いのだ。精々聖の理想が現実のものとなるように願うのがいいところ。
つまるところ、私は今それなりに幸せなのである。
まあ、それはともかくムラサ好きの自分にとっては
凄く良かったです!
そこまで書いてなぜへにょるっ…!
その洋楽ってもしかしてメタ○カですか?
>奇声を発する程度の能力
ムラサいいですよね。ですが彼女の弾幕にはいつも泣きを見ています。星や聖は結構得意なのに、ムラサにはいつもごっそりと持っていかれております。原曲もハンパ無い。
楽しんでいただけたようで、よかったです。
>6様
しゅ……集中力が続かなかったでござる。書いている間に楽しくなってきてしまって、なんだかテンションがやっほぅってなってしまったのでござる。
妄想が止まらないです。
>9様
「アンガーアンカー」を私は初めて聞きましたが、調べてみたらメルにも出てきていたようですね。メル昔気になってた時期もあったので、今度読んでみようか。
>11様
船長はもう本当に最高です! 星蓮船メンバーは皆心がイケメンすぎて困ります。
その通りです。メ○リカでございます。賛否両論ありますが、私は名曲だと思っております。
中二病が嫌いで東方がやれるかってんだ!
うお座以外の星座もみえたのかもしれませんね。星の海、素敵な言葉です。
中二病、そう。究極の中二病なんですよ。漫画では命を張った超壮大なバトルとか大好きですし、誰かを守る! とかそういう臭すぎるくらいが本当は好きなんです。中々難しいですね。今すんごいデッカイの書いているので、もし時間がありましたら目をお通しください。まだまだ先でしょうけど。頭を揺らして喜びます。