Coolier - 新生・東方創想話

ゆゆゆかの小部屋

2010/01/12 23:54:30
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"前作等の流れをくむためあとがきから読んでくださると混乱しないで済むかと"

「貴方のお嬢様の言葉を毎日聞くこと。
これが今の貴方が積める善行よ。」四季映姫・ヤマザナドゥから魂魄妖夢への言葉

 私こと西行寺幽々子(年齢不詳)は暇であった。
 「暇ね…」
 口に出しながらごろごろするくらいは暇であった。
 「ん~何か面白いことないかしらね~誰か新しい異変を起こすとか…」
 毎日毎日幽霊の管理とお茶を飲むのとごろごろすることが日課になってるとどうしようもなく暇な時もある。
 足が着物から出てしまっているが、そんな些末なことは気にせずにそこからさらにごろごろしようと体を捻る。
 
 「幽々子さま!はしたないですよ!」

 ペシッ、ペシッ

 足をたたき落としながらこちらを諫めてくるのは西行寺家の庭師、魂魄妖夢、主従の関係では一応あるがそんなことを真面目に気にするのはどこぞの閻魔様くらいだと思う。
 今は屋敷内を掃除中なのかかっぽう着に三角斤という古き良きおさんどん姿である。
 「ふふふ、まさかこの私が何も考えずに転がっていたとでも思っているのかしら?」
 顔だけ引き締めて妖夢に向き直る。
 「はい、凄くお暇そうに見えます。」
 その返事を聞くと残念そうにため息をつき、
 「はぁ~そんなんだから未熟なのよ!さて、他にも暇人がいないか探してくるわ」
 「はぁ…よくわかりませんが行ってらっしゃいませ」
 手をふりふり見おくっている妖夢、動かない幽々子。
 「…」
 「…幽々子さま?どうしました?」
 無言で手招きする幽々子、ほっぽっておくわけにもいかないので寄っていく妖夢。
 「ていっ!」
 ぽかっ
 「何するんですか、そんなんだと西行寺のお姫様は死ぬ前もまんまるだったって言われちゃいますよ」
 その発言はショックだったらしく幽々子は目を丸くして妖夢をみる。
 「ゆっ!…今夜はたくさん食べたいわね、具体的には5人前くらい」
 「それ、本当に用意するんですか?」
 「大丈夫よ、私の能力の敵ではないわ」
 呆れた顔をしながら何か妖夢がいう時に

 「食べ物って生きているのかしら?」

 二人以外の声がした。
 「あら紫、大丈夫よ。あなたが料理と食材の境界をいじれば食材が死なないまま料理になるわ。」
 「食べてあげるのが一番の供養になるわね」
 そのまま当たり前のように話し始める二人をみて
 「えっと、お茶でも入れてきましょうか?」
 どうしていいかわからず困った顔を浮かべて笑っている妖夢がいた。


 お茶が入り縁側で幽々子と紫が座っている。
 妖夢は剣の稽古ということで席をはずしている。
 「紫は今日はなにしに来たの?」
 「今日はあちらの世界で面白いものを見つけたから一緒にやろうかと思って」
 その面白いものにつられたのか幽々子の目が光る。
 「ほほう、あちらの世界の遊びね?どんなことをするの?」
 「向こうの世界に”●子の部屋”というものがあってね、自分の知らない他人をそこに呼びつけて相手に自分のことを話させるのよ」
 それを聞きながら、幽々子はもう乗り気である。
 「私たちがその●子をするのね、話を聞くだけじゃあ面白さが足りないから何かやってもらうってのがいいわね」
 「やる気があっていいわね幽々子、それじゃあさっそく呼びましょうか」
 紫がそういった時には二人の姿はそこにはなかった。
 

Guest1-最先端から傘お化け!?-
 
 「お腹すいたな~」
 あたし、から傘お化けの多々良小傘、人間の驚いた感情が主食の妖怪です。
 最近は大人から子どもまで驚かしても全然驚きやしない。
 この間幻想郷に迷い込んだ男なんか最悪で、渾身のうらめしやをしてやったっていうのに
 「ハフッ!ハフッ!妖怪少女きたこれ!てらもえす!ハフッ!ハフッ!」
 とよくわからない興奮をしてたから張ったおしたら
 「われわれの業界ではご褒美すぎるっ!アフターケアまで完璧でござるな!ふっ!ふっ!」
 と気持ち悪くけいれんしはじめたので思わず逃げてしまった。
 「はぁ~妖怪…向いてないのかなぁ…」
 落ち込みながら幻想郷の空を飛んでいた。


 「「いらっしゃいませお客様」」
 前に突然出てきた二人の女性はそんなことを言った。
 「え?へ?あたしですか?」
 思わず素で返事してしまった、いけない。常日頃から相手を驚かせられるように対応力は身につけないといけないのに。
 よし、まずは第一印象を取り戻すべく十八番のやつをやって驚いてもらおう。
 右手を顔の右下に、左手を顔の左横に、べろを出しつつ下から覗き込むような感じでそして声はか細く

 「うらめしや~」

 「「…」」
 
 あ、なんか失敗した。前から”何この子?”的な視線が二つ飛んできています。
 驚かれてるって言うより敵意がむんむんです。
 「えっと…あの、う、うらめし」
 「それ以上男性読者を味方につけようというのなら私にも考えがあります」
 傘を持ったほうがこちらを睨みながらそんなことをいう。
 すさまじいプレッシャーです、正直怖いです。
 これを教えてもらえればきっと明日から恐怖のフルコースが食べれそうです。

 「えっと、あの、どうすればそんなに怖くなれるか教えてくれませんか?」

 「「チッ」」
 目の前の二人がどんどん怖くなっていく!どうしよう!なんて聞けばよかったの!?
 「ちょっと紫さん、この企画いきなり失敗じゃなくって?」
 「そんなことないわよ幽々子さん、ここまで挑発してくる子に会えるのもなかなかないんじゃなくて?」
 「うふふ」
 「おほほ」
 お二人とも青筋浮かんでいます、もう帰りたいです。
 ですがこれはチャンスです、もっと恐れられる大妖怪になるには先輩にお話を聞くのが近道かと。
 「えっと、あのすいません。1つお聞きしてもいいでしょうか」
 そこで二人は思い出したように咳払いをすると
 「さぁ、お客様自己紹介をどうぞ」
 「名前とお悩みがありましたらどうぞ」
 いきなり言われて焦ってしまう。
 「えっと、多々良小傘、から傘お化けです。最近の悩みはみんなが私を怖がってくれないことです。」
 先輩方に失礼のないようにちょっと頭が下げ気味で上目で見るように…
 「ちょっと紫さん、”怖い”って意味教えてくれます?」
 「えぇいいわよ幽々子さん、用はその場にいたくなくなるような空気を作ればいいのよ」
 凄い、凄いためになる、目の前でいきなりガンつけられて逃げ出したいけど逃げれない。

 あたし、今怖いです。

 「す、凄いためになります、ありがとうございます」
 思わず尊敬のまなざしで見てしまいます。
 そしたら幽々子さんが何か思いついた顔をしています。
 「怖いことね…簡単に怖がらせることができるわよ?」
 え?そんな方法が!?
 「こんにゃくを使うんですか?」
 まさか最先端の技術がばれているとは…
 「使わないわよ」
 微妙な顔をされて否定されました。
 まさかこんにゃくを使わないで人を驚かすことができるなんて…
 素晴らしいです。
 「それは…どうやるんですか?」
 聞くと幽々子さんは口元を隠しつつにやりと笑って 
 「それはね、こうするのよ!」

 ズキューーーーーーーン!!!
 
 それは幽々子さんの顔が目の前というか口に口がくっついていて

 ズゾゾゾゾゾ

 おっと追加コマンドで空気が吸われてるぞー
 私はいったい何をしたらいいんだー

 きゅぽん

 「ふぅ、ごちそうさまでした」
 「えっ、ふえっ。おそまつさまでした」
 思わず頭を下げる。今いったい何が起きた?
 「確かに今のをやれば肝は冷えるわね」
 紫さんが呆れた顔で見ている。
 「えっと…いまのは…?」
 「ちゅーよ!」
 幽々子さんがえへんと胸を張って言いきった。
 「ちゅ、ちゅ、ちゅ、ちゅーですか」
 顔を真っ赤にして確認してしまう。
 「まったく、いちいち可愛いわね。それを里で嫁の前で旦那さんにやれば盛り上がること間違いなし!」
 「え?盛り上がるんですか?」
 盛り上がられても困るのですが…
 「あぁ、間違えたわ。怖がられること間違いないわね」
 おほほと笑いながらいい直す幽々子さん。
 「さぁ、幽々子。次のお客様がお待ちだわ、行きましょう」
 お二人が行ってしまう、最後に
 「二人ともありがとうございました」
 頭を下げて見送った。
 「天然が一番怖いわよね」
 そんな声が聞こえた気がした。

Guest2-七色のミラクルフルーツ-

 私、アリスマーガトロイドは悩んでいた。
 今日は早苗を呼んで私のうちで人形作成会を開いている。
 あの子がどうしても
 「私の誕生日に神奈子さまと諏訪子さまの人形を作ってあげたいんです!」
 っていうから今回は手伝いなしで独りで頑張ってもらっている。
 それは別にいい、ちょっと監督しながらあの子が頑張ってる姿が見れるのは凄く素敵なことだと思う。
 ちょっと手伝いたいけど、頑張りたいんですってまっすぐな目で見られたら、思わず抱きしめてしまったけど抱きしめてあげたくなるくらい可愛かった。
 もう一回やってくんないかな…

 目の前にあの顔を思い出して…ぎゅ。
 
 「アリスさん何やってるんですか?」
 後ろから当人の声が、私の恰好は前にちょうど誰か一人入りそうなわっかを両手で作って固まっている。
 
 「…」
 「…えっと…入りますね」
 
 そこのわっかにもぞもぞと頭を突っ込んでくる早苗。
 
 「えへへ」
 「ふっ」

 頭を出した早苗と見つめあう私、くそう、かわいいなぁコイツ。

 「お茶入れるの手伝いに来てくれたの?」
 「そうですよ~ちょっときりよくなったので見に来ました」
 
 まったく、この子の誕生日、人形の締め切りは明日なのだ。
 ちなみに聞かされたのは昨日。
 私がこの子の誕生日を知ったのも昨日。
 私だって何か用意したいのだが早苗の世話をしつつ同じ家で用意なんてできるわけない。
 さてどうしたものか。
 そんなことを考えながらボケーっと早苗の頭をなでていると後ろから袋が開く音が聞こえた。
 
 「今度のお客様は最初からとばしてるわねぇ、ぼりぼり」
 「幽々子、お客様の持ってきてくれたお菓子をいただきますもなしに食べるのは悪いわよ、ぼりぼり」
 後ろに何かいる、しかも凄く厄介そうなにおいがしている。
 早苗はすっかり目を細めて気持ちよさそうにしている、駄目だ、可愛いけど役に立たない。
 ここは私が頑張らねば。
 
 早苗の頭を軽く二回叩いてから、振り向いて二人の侵入者に向き直る。
 「ふえっ?」後ろから気の抜けた声が聞こえる。
 「普通お客って相手のうちに行くものだと思うけど?」
 「ぼりぼりごくごく」
 「幽々子、少しは喋る意思を見せなさい?大食いキャラになるわよ?」
 「ごくん、キャラづくりって大切だと思うの」
 片目をつぶって右手で形を作って顔の横に持ってくる。
 「少しは会話をしろ!」
 思わず突っ込んでしまった、こいつら絶対計算だろ!

 「まったく、何しに来たのよ」
 「ぼりぼりごくごく」
 「え?今度は紫が食べるの?」
 「ごくん、こういうネタは3度までは許されるのよ」
 クッキーを口元に持ってきて首をかしげる紫。
 やばいコイツラマジハラタツ
 「…ほら、次やったら追い出すわよ。それで今日はどういう趣旨の暇つぶしなの?」
 頭を押さえながら二人をみると二人とも別のほうを指さしている。
 そっちに目をやると、
 「ぼりぼりごくごく」
 早苗が食べていた、いけない、頭痛くなってきた。
 「早苗…三度目は怒られるから拾わないようにね?」
 「ごくん、だってこのままほっといたら、アリスさんの焼いたクッキー全部食べられちゃうじゃないですか」
 非難するような眼で紫と幽々子をみる早苗、だがさすがに家に入ってきて勝手に食べるような二人だ。涼しい顔だ。
 「美味しゅうございました」
 「結構なお手前で」
 「言いたいことはあるけど…どういたしまして」
 早苗があんなこと言ってくれるから怒りがしぼんでしまった、我ながら安いものだ。
 「それで?結局何しに来たのよ」
 「暇つぶしに幻想郷のみなさんに何か特技を見せてもらおうってことなのよ」
 「さぁ、何かあるのならみせてごらんなさい」
 こんな連中に見せるものはない、ささっとお帰り願おう。
 「あるけどないわ、ほらさっさと帰って帰って」
 「あらあら、それはないけどあるってことよね」
 「今はないけど後で見れるのかしら?それじゃあ後でまた来る?」
 ニヤニヤしながらこっちをみるババ…二人。
 「わかったわよ、今日はちょっと忙しいからまた後日来てくれれば人形劇でも見せるわよ」
 「今日は」
 「忙しい」
 二人は計ったように半分づつ区切って早苗と私を交互に見る、この息のぴったり感は凄いなとは思う。
 「あらあら、それじゃあなんで忙しいのかおねぇさんに話してくれる?」
 そこで早苗が横から入ってきた。
 「明日私の誕生日で、その準備してたんですよ」
 ね?という顔でこちらをみてくる早苗、その通りなんだけどね…
 「あら、明日は山の上の神社で宴会ね」
 「じゃあ明日はお酒ね、楽しみだわ」
 これで明日の誕生日は酒盛りに決定した、幻想郷には酔っぱらいしかいないからまず間違いないだろう。
 いよいよ何にするか悩んでしまう、ありきたりなものを用意してもお酒で忘れられてしまいそう。
 「どうしたんですかアリスさん?」
 頭をひねって悩んでいる私をみて早苗がそう聞いてきた。
 「いや、何でもないのよ」
 「何でもないって顔じゃないわねぇ」
 「明日何持っていこうかって顔だわ」
 鋭い、というかこいつら人の心読んでるんじゃないだろうか。
 「いいじゃないですかアリスさん、なにもなくても一緒に楽しみましょう」
 「さすがに祝われるほうは気前がいいわね、お酒を用意してくれるらしいわね紫」
 「あら、料理まで用意してくれなんて少し欲張りよ幽々子」
 この二人はどこまで面の皮が厚いんだろう?
 「お酒と料理は持ってきてくれないとだめです」
 笑いながら二人と話す早苗。
 う~ん、楽しいものねぇ。早苗が楽しめて、すぐに用意できるもの…
 「あっ!」
 思いついた!
 「どうしましたアリスさん?」
 「いや、明日持ってく物思いついたのよ」
 明日はゴリアテに乗っていこう、きっとそれだけでこの子は喜んでくれる。
 「え、凄い気になります、教えてください」
 袖をひっぱりながら顔を向けてくる早苗。
 「うふふ、明日の楽しみにしときなさい」
 物欲しそうな早苗の顔をみるのも楽しいものね。
 「あらあら、解決したらしいわよ」
 「それじゃあ私たちも準備に帰りましょうか」
 この二人が準備なんかするわけないからきっと従者の二人がするんだろう。
 「「それじゃあごきげんよう」」
 くそう、結局悩みが解決してしまった、年の功には勝てないわね。
 
Guest3-可愛い従者と撮影者-

 わたし、魂魄妖夢は最近困っています。
 別に幽々子さまの食事の準備が忙しいとか、剣の修行の果てが見えないとかそういった長い目で見ないとどうしようもないほうではなく、もうちょっと身近な明日あさってあたりにでも解決する(かもしれない)ほうの悩みだ。
 先日から射命丸文さんと、その…恋仲になったのはうれしいことで今のところ相思相愛なため何も問題はないんだが、この間こんなことを言われた。
 
 「妖夢さんがあまりにかわいいんで写真集を作りたいんですが、いかがでしょうか?」

 ものすごく期待した目で見られましたので断るのは忍びないのですが、ですがふぁっしょんというものに関しては小さいころから幽々子さましか見ていないので、和服の良しあしぐらいしかわかりません。
 服も基本的に手で縫っているので数もありませんし…
 剣の稽古ばっかやってきた報いがこんなところに来てしまいました。
 剣の道でははるか先を行く祖父の背中をなんとなく思い出しますが、きっとおじいちゃんもこっちのほうはだめなんだろうなぁ…年中同じのきてたし…

 「よーうむさん」

 うーむ、こういうことに詳しそうな人っていうと誰だろう?
 知り合いの顔を浮かべつつ指折り数えるが、う~ん知り合いの幅が狭い…
 
 「また、考え事をして気が抜けてますね。こういうときの顔が可愛くていいですよね、ではとりあえず一枚」

 
 カシャ

 庭の掃除をしながら遠い目をしつつ黙考していると、カメラの音が。
 あたりを見渡すとすぐ近くに文さんが来ていました。

 「やーこんにちは妖夢さん」
 「こんにちは文さん、今日は普通ですね」
 「普通というと?」
 「いつもはえっと、抱きついたり、キ、キスして来るじゃないですか」
 
 この人は何をいわせるんだ、恥ずかしい。
 カメラを少し持ち上げて、
 「今日はこいつがありますからね、あまり浮かれていると壊してしまいそうで」
 そう言ってカメラのレンズをこちらに向けてくる。
 「今何もしてないんで、おめかししてからにしてください」
 恥ずかしくて手でカメラのレンズを隠してしまう。
 「いやいや、妖夢さんはいつ見ても可愛いから大丈夫ですよ」
 「あーもう、文さん恥ずかしいですよぅ」
 「そうよねぇ、妖夢はいつでもどこか抜けてるものねぇ」
 
 え?今凄く聞きなれた声が後ろから聞こえましたよ。
 「妖夢ったら仲いいのねぇ」
 後ろから体重をかけて(その豊満な胸も押しつけて)きて腕を後ろから前に回しながら我が主がいたずらっ子のような笑顔を浮かべている。
 「幽々子さま、今お客様の前ですから」
 必死で取り繕って腕の中から抜けようとする。
 「それは大丈夫よ、ほら」
 「いらっしゃいませ、お客様、あら、本当にお客とは思わなかったわ」
 「八雲さんは本当に神出鬼没ですねぇ」
 「そんな嬉しそうな顔したってやることは変わらないわよ?」
 あっちもあっちで同じような顔をして文さんに絡んでいる。
 カメラについて聞いているらしい、無事で済めばいいが…

 「それで?妖夢はなんでおめかしする必要があるの~?」
 ぐわ、聞かれていた。たぶん、最初から聞かれてるんだろうなぁ。
 「えっと、それは写真集を作るかららしいですよ」
 「写真集?妖夢の?」
 自分で肯定するのも恥ずかしいけど…
 「えっとそうらしいです」
 「…欲しいわね」
 えっ?
 「幽々子さま?」
 「妖夢の寝顔や、お風呂シーンやそのたあんなのやこんなのが見れるのね」
 いけない、幽々子さまのまずいほうのスイッチが入っている気がします。
 「昔にカメラがあったらおしめの写真とか撮ってたのに・・・」
 本当にできた人に言われると冷や汗が流れるばかりです。
 このくらいやる気がある幽々子さまならわかるかもしれない。
 「ところで幽々子さま、おめかししたいのですが何かありますか?」
 「ほほう、そうねそうね」
 幽々子さまは一つ肯くと母屋のほうに向かった。
 半歩後ろを黙ってついていく。
 「うちにあるのは着物だけだからね、昔着てたやつでいい?」
 心なしか足が軽い幽々子さま。
 「えぇ、幽々子さまが貸してくださるのならありがたく着させていただきます。」
 「あら、期待が重いわ」
 全然重くなさそうな顔をして前を歩く。
 ある部屋の前で止まって振り向く。
 「ここね、さぁ選びましょうか」
 その顔はやっぱり子どもの様に楽しそうだった。
 

 しばらく和服を選んで、明日は宴会に行くから用意しておきなさいと言って幽々子さまはまた出かけて行った。
 幽々子さまに着付けをしてもらった和服を着たまま少し歩いていると、ぐったりとした文さんがいた。
 「文さんのほうは大変だったみたいですね」
 苦笑しながら話しかけると
 「…おぉう」
 変な声を上げながら自分の体をまさぐり始めた。
 「ど、どうしました文さん?」
 声をかけると気がついたように文さんが手を止めた。
 「さっき紫さんにカメラ持ってかれたんでした…目の前に世の中でもっとも美しいものがあるというのにとれないなんて…」
 そういいながらこっちの姿を頭の先から足の先まで見てくる文さん。
 「えっと、あの、恥ずかしいです」
 しっかり見てるから動くに動けないし、凄くそわそわする。
 「さすが幽々子さんですね、しっかり貴女用に作ってある。」
 え?
 「なに驚いた顔をしているんですか、長さがぴったりでしょう?身長も違いますしこれは妖夢さんのために作ってくれてたんじゃないんですか?」
 確かにそう言われればそうかもしれない。
 「わかりません、わかりませんけど…」
 なんか、凄くこみあげてきてしまいます。
 「わっ、私何かまずいこと言いましたか?」
 目の前で文さんが焦っている、そんな珍しい光景もおかしくて、
 「くすっ、本当に幽々子さまは凄いなぁ」
 幽々子さまに一人前と認めてもらうのが当面の目標です。
 涙をぬぐいながら改めて感謝した。

Guest4-鳥獣戯画全部狐狸-

 今日は朝から変な一日だった。
 まず紫さまが朝自分から起きてきた、もうこれだけで一大事なのに、
 「藍、今日は出かけてくるわ」
 何が起こったのかわからなかった、いや、異変があったりすると妖怪の賢者の異名に相応しい貫録を見せてくれるのだが、平時の紫さまはそれはもうそれはもう…言うと怒られるので言えないが。
 朝から遊びに行くのは橙だけだと思っていたので、
 「お弁当の用意はできていませんよ?」
 我ながら検討違いの質問をしたものだと思う。紫さまの微妙な顔をしている。
 「すいません、あまりに予想外だったもので」
 「…どっちが」
 朝起きてきたのも、出かけるのも予想外だという自覚があるのか…
 「…あえていうなら起きてきたほうで」
 そういうとちょっと不機嫌そうに唇を尖らせて、
 「昨日面白そうなの見つけたからちょっと幽々子と遊んでこようと思って」
 「幽々子さまと…どんなことをするんですか?」
 「なによ、そんな気になる」
 少し得意げになる紫さま。
 「えぇ、まぁ」
 場合によっては頭を下げに行く準備をしておかないと。
 「かくかくしかじかうまうまとらとら」
 「わかりました」
 説明する気がなかった。大惨事にならないことを祈ろう。

 
 紫さまが出かけて、昼ごろ紫さまの隙間伝言で、
 「明日は宴会をよそでやる」
 という素敵な伝言をいただいたので街へ買い出しへ。
 そこで見た珍騒動、これもまた…まぁ…変だな。
 
 香霖堂に寄っていこうと暖簾をくぐった瞬間空気が変わったのが見えた。
 「邪魔するよ」
 「…」
 「…」
 「…」
 「…」
 中にいたのは霊夢と魔理沙と店主の霖之助、それに傘の妖怪だった。
 構図としては正座の霖之助と傘の妖怪を椅子に座っている霊夢と魔理沙ではさんでいるという感じだった。
 まぁ正直巻き込まれたくないので、
 「邪魔した…」
 「いらしゃいませええええええええええええええええええ!」
 あまりにも必死な接客である、厄介事はなるべく避けたいがここの店主には世話になっている。
 あんな必死な形相をみたのは久しぶりだな、まったく、博麗は物騒だな。
 しょうがない、ため息をつきながら店主に向き直る。
 「…どういう状況なんだ」
 「実は…」
 話し始めようとした店主を目で遮る二人、目をそらそうとした妖怪の顎を御祓い棒で持ち上げる霊夢。
 どうみても893の動きである。アイコンタクトで魔理沙を促しているのがわかる。
 かわいそうに、もう正座組は涙目だ。
 「いや、よくわからないと言えばわからないんだけどな」
 自分に言い聞かせるように魔理沙が話し出す。
 「なんかこの妖怪が”うらめしやー”っていいながら香霖に、キスをしてだな。その辺りについてちょっと聞きだしているんだが」
 そこで目を細める、なかなか人間にしてはいい迫力が出てるじゃないか。
 「どうも要領をえなくてね、香霖が言うには珍しい傘を拾ってきたらいきなりキスされたらしいし、こいつは恐怖が欲しかったらしくてね。まぁとりあえず望みどおりにしてやっているところさ」
 どのくらいやっているのかわからないが店主の方は足のしびれが限界らしく足を少し崩そうとしているが、そのたびに魔理沙につつかれて姿勢をただしている。
 「ふむ、とりあえず、聞いてみるか。おい、から傘、名はなんという」
 呼ぶと妖怪が霊夢の顔をみる、霊夢が一つ肯くとお祓い棒を顎から外した。
 「えっと、小傘っていいます」
 「そうか、では小傘。何が目的でこんなことをした?」
 「あたし、恐怖が食料で、それでこうすれば怖がってくれるって、それで…」
 それで結果がこのありさまと、もう少し質問するか。
 「伝聞だな、誰かから言われたのか?」
 「えっと、凄い迫力のある幽霊の方と後はいきなり出たり入ったりすることができる人がやれって…」
 …犯人に心当たりがあるっていうか、確定した。
 その発言を聞いた瞬間、霊夢と魔理沙の視線が小傘からこっちに変わった。
 店主は「そうか…また紫か…」とあきらめた顔で虚空をみている。
 本当にお気の毒に、あの人に気に入られたからには大変だろう。
 「「おい、ちょっとお前の主人呼んでこいや」」
 目が笑ってない、顔が笑ってるのに目が笑っていない。
 頭が痛くなってきた。こめかみを手で押さえつつ、
 「こっちだってため息つきたいんだ、今頃幽々子さまと遊んでいるはずさ」
 「それならしょうがないわね、行くわよ魔理沙」
 「そうだな霊夢、いたずらにはお仕置きが必要だものな」
 いうや否や二人とも店の外に走っていってしまった。
 「災難だったな小傘、うちの主人が申し訳ないことした」
 頭を下げると小傘も立ち上がろうとした。
 したのだが足がしびれているらしくそのまま前のめりに倒れてきた。
 「いえ、そんなこちら、うひゃあ!」
 「おっと」
 それを支えてやるとつらそうな顔をしながら言葉をつなげてきた。
 「ほんと、助けていただいてありがとうございます~」
 「なに、それこそ本当に通りすがりだ。気にするな」
 それこそ本当に気にしないでほしい。お礼を言われるんじゃなくて文句を言われても何もおかしくはない。
 「かっこいい…」
 ぽーっとした顔でこちらをみる小傘、世話しがいがありそうな性格しているな。
 どれ、少しお節介でも焼くかな。
 「それよりも恐怖がほしいんだって?」
 「え?あ、はい、そうです。」
 「それならとりあえず夜に出たらどうだい?こんな真昼間から出てると驚いてくれるものも驚いてくれなくなるだろう」
 当たり前のことを言ったつもりだったのだが、
 「…目から鱗です!」
 目から鱗だったらしい、逆に予想外だった。
 「それに昼だと君の容姿は少しかわいらしいからな、驚かすにはやはり夜じゃないと向いてないだろう」
 「え、可愛い?」
 顔を赤くして俯いてしまう小傘。
 やばい、これは誉めすぎたかもしれない。
 視線が橙のこう、見上げる感じのものに近いものがある。
 「これにて失礼」
 すかさず手を離して逃げる。
 「えっ、あっ、ちょっとまって、ぶえ」
 最後の声はおそらく立てずにつぶれてしまったのだろう、くっ、世話してやりたい!
 だが、今日は用事があるので心を鬼にせねばならない。
 紫さまに「また拾ってきて…」と言われるわけにはいかないのだ。


 買い出しが終わって、なんとかなにも拾ってこずに帰ってこれた
 まったりとお茶を飲みたいところだが、落ち着いてしまうと紫さまが何やらかしたか心配になってしまうので明日の仕込みをすることにする。
 「まったく…」
 あの人の式になってから何回目かわからないため息をつく。
 
 仕込みが終わりさてお茶でも飲むかなと一息ついたときに玄関が開く音がした。
 「ただいま~」
 「おじゃまします~」
 紫さまと幽々子さまのようだ、紫さまは幽々子さまと一緒のときは玄関から入ってくる。
 一人のときはたまに土足のまま直接居間に飛んできたりする。
 今更隠す必要があるとは思えないが、主の意向とあらば尊重するのが従者の務め。
 「いらっしゃいませ幽々子さま、おかえりなさいませ紫さま」
 丁寧に頭を下げる。
 「こんにちは藍ちゃん、相変わらずいい尻尾ね」
 手をわきわきしながらしながら寄ってくる幽々子さま。
 「こら幽々子、藍は私のなんだからおいたしないでちょうだい」
 そう言って幽々子さまの手を抑える、紫さま。
 「離して~あの尻尾をもふもふするの~」
 手を動かして軽く抵抗する幽々子さま、でもお顔が笑ってらっしゃいますよ?
 「それじゃあ、お茶の用意をしてまいりますね」
 「縁側のほういいるからそっちにもってきてね」
 「はい、かしこまりました」
 二人の仲睦まじい様子を見ていたらやっぱり連れて帰って来るんだったかなとなんとなく思った。


 「はい、お茶です。」
 縁側で二人の間に空けてある隙間にお盆を置く。
 「ありがとうね藍ちゃん」
 「ご苦労様」
 二人から労いの言葉を頂けたが、少々聞きたいことがある。
 「いえいえ、大したことはしておりまりませんので。それでお二人ともちょっとお聞きしたいことがあるのですが」
 「あら?なにかしら?」
 「今日かわいそうな妖怪を見ましてね」
 まずはジャブ。
 「へ~どんな妖怪?」
 「から傘お化けでしたね、紫色のちょっと不細工な傘を持っていましたよ。」
 「あらあら、みた目でかわいそうだなんてひどいこと言うのね。」
 紫さまが茶化してくる。
 「あの手の妖怪なら多少崩れているほうが望ましいですよ、それに本体のほうは可愛らしかったです」
 「ということはやっぱり見た目が可愛くてかわいそうってことね。」
 幽々子さまがくすくす笑いながら指摘してくる。
 「まぁそうかもしれませんが、今回はそこじゃあないですね」
 「そうね、それじゃあ当てて見せるわ」
 紫さまは腕を組んでこちらをみた。
 幽々子さまは楽しそうにそれをみている。
 「藍、あなたは今日町にいたのよね?」
 「そうですね、そこで事件は起こりましたね」
 ん~と考えるポーズをする紫さま。
 「そういうことに巻き込まれるのは霖之助さんね。」
 「また紫か、といっていましたよ」
 反省してます?と目で聞くと、軽く首をすくめて、
 「どうせ余計なことしたんでしょ、傘を拾ってきたりとかね」
 やはり紫さまのほうが一枚上手ですね。
 「それにしてもその通りですね、大正解です」
 思わず紫さまに拍手をする。
 「ふふん」
 紫さまもご機嫌そうだ。だがそれを見て堪えきれなくなったように、幽々子さまがしゃべりだした。
 「くすくす、さっき魔理沙と霊夢にあったから答え合わせはすんでいるのよ」
 「あら幽々子、もうばらしちゃって」
 二人ともおかしそうに笑っている。
 「お二人とも楽しいのは結構ですが、あまりこういうことになりそうなことは慎んでくださいね」
 謝りに行くのは私なのだ。
 「藍は謝るのが好きねぇ」
 「好きでやっているんじゃありません!」
 まったくこの人は、いまだに何を考えてるかわからないことがある。
 「ふふふ、藍ちゃんヒントをあげるわね」
 「幽々子は甘いわね~」
 「4字熟語で言うなら自由奔放ね」
 「それをいうなら因果応報ね」
 「あら、大体あってるわよ」
 好き放題にやってきたからその報いが来たというところだろうか?
 「少々わかりかねます」
 「なら考えなさい。役に立つ式のほうが嬉しいわ」
 「紫は優しいわね~」
 「はい、精進します」
 二人の間ではしっかりと意思疎通ができているらしい、少しうらやましい。
 「なんにせよ、今日は楽しめたわ」
 「そうね、私もよ」
 正直けむに巻かれたような感じがするが楽しそうな二人を見てるとそれでもいいかなと思える。
 「さて、藍。そろそろお酒の時間よ、出してもらえる?」
 「かしこまりました」
 今はこの人たちの世話ができることを楽しもう、そう思った。
 

Host―いたずらの主犯―

 月を見ながらお酒を飲んで二人で座っていた。
 「いいわねぇ…」
 「ほんとねぇ」
 とくに言葉を紡ぐこともなく、二人でお酒を飲んでいる。
 何がいいというわけでもなく、何が悪いというわけでもない。
 そこに相手がいて自分がいる。安心でもあり不安でもある。
 心配でもあるし気にならないのも間違いがない。
 そこにいるのが当たり前で、いなくても当たり前。
 そんな当たり前の関係が今となりに座っている友人との関係だ。
 ただあることが望ましい、たまに遊んだりふざけたり意見を言い合ったり。
 そんな空気のように絶対的でありながら目に映らない大切な友人。
 「もうどのくらいになるかしらねぇ」
 「長いわよねぇ」
 言葉で話すのでなく空気で話す、お互いサトリの妖怪でもないがなんとなくわかる。
 ただ二人で座って酒を飲んでいた。


 どのくらいそうしていただろうか。
 「帰るわ」
 「送るわ」
 ほとんど同時に言っていた。
 「今宵もお酒がおいしかったですわ、妖怪の賢者さま」
 ふざけて幽々子がそんなことを言ってくる。
 「こちらこそ楽しく飲めましたわ、幽霊のお姫さま」
 二人とも静かにほほえみ、
 「じゃあ行きましょうか」
 「こちらへどうぞ」
 幽々子の手を取って隙間へ引っ張る。
 「それじゃあ行くわね」
 「よろしくお願い」
 マヨイガから西行寺家へ行くのは一瞬である。
 「それじゃあね」
 「また明日」
 そっと手を離すと幽々子はこちらに手を振って去っていく。
 マヨイガに戻るとそこにはかたづけをしている藍がいた。
 「お早いお帰りで」
 「まぁ、幽々子だしね」
 そういうとよくわからなそうな顔をして手を動かしている。
 わかるようになったらあなたも幸せ者よ。
 「それじゃあおやすみなさい」
 「はい、おやすみなさいませ」
 明日もまたいつもと同じで違う一日が始まる。
 「さて、何をしようかしらね」
 寝床に潜りながらそんなことをつぶやいていた。

 明日も幻想郷が穏やかでありますように…
ーまえがきー
君の瞳に現世斬 作者 お時間拝借さん(許可あり)
http://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1261415121&log=94

常識のちょっと外 作者 暁嬉 (前作)
 http://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1261592043&log=94

読む前に読んどけば面白いかもしれないです。






ーここからあとがきー
 読んでくれてありがとうございました。2作目です。
 書きたかったのはゆゆゆか、でもイメージしたら正直書きにくくてこうなった。
 よくわからなくなったwでも楽しかったです。こんな空気作りたいですよね。

 お時間拝借さんの文みょんは正直切られました、おもに瞳がw
 まったくみょんかわいいじゃないか、みょん。
 アリスもかわいいしまったく幻想郷は生きてるのがつらいですね。
 
 >>7
 ありがとうございます><
 完璧に小傘でした><
 この手の誤字は後いくつあるのやら…
 ガクブルガクブル
暁嬉
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コメント



0.480簡易評価
2.90名前が無い程度の能力削除
やだ藍傘かわいい
7.100名前が無い程度の能力削除
確か子傘じゃなくて小傘だった気がするのだが……
13.100名前が無い程度の能力削除
かわいいな小傘!

というか、藍……キスをすることについても注意しないと駄目だろ。
このままじゃ、夜に旦那さんにキスをするようになるだけだよw
14.90ずわいがに削除
あとがきのやつ二作品とも気に入ったやつだったんで、期待して読ませて頂きましたよ!
そしたら案の定面白いでやんのww

とりあえず“男”は自重しろwww