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こくり、と酒を一口煽った時の事、
勇儀は何か背中ににぶい衝撃を感じた。
誰かの手でも触れたのかと、そこに空いている右手を回してみる、
ぬるり、と生暖かい物が感じ取れた。
手についた紅い物を、勇儀は真っ先に口へと運んだ、
酒の肴にいい、と笑いながらである。
パルスィはその顔を醜く歪ませていた。
彼女には我慢がならなかった、
好意を抱いている相手が自分以外の者と談笑している、
それだけの事が我慢できなかった。
紅く染まった勇儀の背を見て、パルスィは笑みを浮かべる、
頬を片方だけ釣り上げ、狂ったような笑みを。
勇儀の背の紅い液体を人差し指ですくい、
同じ物を味わっていると他の者に見せつけるように、自らの舌に擦り付ける。
「妬みは最高の調味料ね……」
「甘いね、いちごジャムかい?」
「出来立てよ、熱いでしょう」
妬みの味は、甘露の如く。
――――――
二人は大きな布だけに包まれ、激しく重なりあっていた。
その口から、熱い吐息が漏れる、
肌にうっすらと浮かんだ汗が、身体がぶつかりあう度に
水音をかなで、密室にその音を響きわたらせる。
意外にも音を上げていたのは勇儀だった。
パルスィに組み伏せられ、その両の手は空気と床を力無く掴むだけ、
二人の足は複雑に絡み合い、動かすこともできなかった。
パルスィの両手が勇儀の身体を掴む、
汗で滑り、幾度と外れながらもその腕は勇儀の身体へと回され、
勇儀の首元にパルスィの八重歯が何度も突き刺さる、
口に広がるわずかな苦味が、パルスィの嗜虐心をさらに燃え上がらせた。
「サウナは苦手なんだってばー!」
「ダメよ……あなた一人だけ楽になるなんて許さない!」
「離しておくれぇぇぇ……!」
勇儀がわめき、もがき、どんなに許しを請うても、
パルスィは精魂尽き果てるまでその身体を離すことはなかった。
―――――
ごり、ごり。
パルスィの手に握られた鋸が、重苦しい音を響かせる。
断っているのは、勇儀の身体の一部、
ひきつっているようにも見える笑みを浮かべながら、ひたすらに引いて、引いて。
勇儀は何も喋らない、目を閉じて、ただただ沈黙していた。
やがて、ごとん、と響いてそれが床に落ちる、
パルスィはそれを拾い上げると、近くに置いてあった鍋の中に入れた。
砂糖、醤油、みりん、あらゆる調味料で、
パルスィはそれに味をつけ、調理していく。
柔らかくなるまで煮込んだそれを、切り分けて、一口つまむ、
美味しい、彼女の表情はそう語っていた、後は食べるだけ。
「おつまみできたわよ」
「お、待ってたよ!」
「今回の味付けは結構うまくいったと思うんだけど」
「そうかいそうかい、いやー、やっぱ何も無いときは角を食べるに限るねぇ!」
また生まれてくるのだから。
―――――
勇儀は見られていた、常に見られていた。
酒を呑むところを、飯を食うところを、歌うところを、踊るところを。
家で、外で、店で、温泉で、この地底のありとあらゆるところで。
良いところも、悪いところも、何一つ余すことなく。
パルスィは見ていた、常に見続けていた。
歩くところを、休むところを、笑い、泣き、怒り、悲しむところを。
細道で、屋根で、窓で、物陰で、この地底のありとあらゆるところで。
好きなところも、嫌いなところも、何一つ逃すことなく。
「パルスィ、デートなんだからそんなとこにいずにこっちきな」
「は、恥ずかしいのよ! 先に行ってなさいよ!」
「……ったく、ほら来な!」
「ぱるっ!?」
勇儀は傍らから、パルスィも傍らから。
―――――
ある日、勇儀はパルスィに全てを奪われた。
勇儀は白い装束に身を包んでいた。
彼女を知るものはみな涙し、歯を食いしばる、
ある者はその顔を両手で覆い、ある者は天を見上げて悲しみに叫んだ。
ある日、パルスィは勇儀の全てを奪った。
パルスィは黒い装束に身を包んでいた。
彼女を知るものはみな妬み、拳を握りしめる、
ある者はひたすらに憎悪の視線を送り、ある者は今にも襲いかからん雰囲気だった。
パルスィは、化粧で整えられた勇儀の頬をそっと撫でる、
笑みを浮かべ、自らに注がれる妬みの心地よさに身を震わせる。
もう誰も勇儀を手にいれることはできない、
パルスィだけの物、パルスィだけの勇儀。
「ふふふ、一生幸せにするわ」
「わ、私が婿役じゃ駄目だったのかい?」
「似合ってるわよ花嫁衣裳、綺麗すぎて妬ましいぐらい」
「そうかい……照れる、ねぇ」
もはや、二人を分かつものは何もない。
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あとがきwww
後書きで大爆笑wwwww
いちいち穿った展開を構成するあなたの構成力には感服でござる。
そんな私は勇パル派
しかし結婚式はすぐわかった。パルスィにはスーツも似合うね!
もっとやれ
相手の3人が誰だかわからんがGJ。もう一度負かしてやってください。
2828して見てたら吹き出したwww
勇マリでもいいがな!
そんな私は雛パル派
勇パルで続きみたい♪
>「ぱるっ!?」
ここで死んだ