※過去作品の設定は含みません。
※少し勝手な解釈もありますが、そこら辺はご愛嬌をば。
私……アリス・マーガトロイドは、現在幻想郷で暮らしている。
日々新しい人形を作り、たまに人里で人形劇のショーをやったり、紅魔館の魔法使いと小さなお茶会をするのが、この長い年月の間の暇つぶしのようなものである。
しかし、彼女は今目の前にある戸棚の前で座り込んでいる。
魔法使いは、肉体の成長は止まっている。
それ故に、酷過ぎる肉体の損傷でなければ死ぬことはない。
これは紅魔館の魔法使いもそうであるし、他の魔法使いも同様である。
そのはずなのに、私の大親友だった魔法使いは死んでしまった。
人間をやめ、魔法使いにまでなって「恋」を求めた大親友は、結局はその命を自ら絶ってしまったのである。
しかし、それも何百何千年もの前の話。
今の私には、もう思い出となった話であるし、もう触れようとも思わない内容であった。
あの時のように、数年もの悲しい日々をまた繰り返したくないから。
それなのに……それなのに、彼女の「恋」の終わりを、今になって知りたくなったのである。
しかし、今更であるが本当に昔の話である。
彼女は自分の家も焼き払い、自分のいた痕跡すらも消していなくなってしまった。
彼女の入り浸っていた香霖堂も焼き払われ、博麗神社にも彼女に関する品は何一つ見つかることはなかった。
だが、私には一つだけ心当たりがあった。
それが彼女の死後二日目に届いた、自動転送の封筒である。
あの時は裏に書かれた「霧雨魔理沙」という名前から彼女が生きているものだと思って本当に喜んだが、中にあった手紙の最初の一文に『この手紙を読んだってことは私が死んだってことだな、ハハハ』まで見た瞬間、目の前にある戸棚へと入れてしまったのである。
流石に冗談とも思えず、そして彼女が死んだことが裏打ちされたようで、もう見ようとも思えなかったのである。
でも、あれが彼女の「遺書」であるという確信が深まっていくうちに、自分が彼女を裏切っているように思えて仕方なかったのである。
しかし、それも今日までにしよう。
一つ深呼吸をして、引き出しを開け、封筒から少し黄ばんだ手紙を取り出し、また一つ深呼吸をして、私は数百年ぶりに彼女の文字を読み始めた。
『
この手紙を読んだってことは私が死んだってことだな、アハハ。
一応、腐敗を防ぐ魔法が掛かっているからアリスがコレ見て泣きながら放置しても多分大丈夫だ、うん。
まあ、手短に書かせてもらうぜ。
恥ずかしい話なんだがな、この手紙を書いたのは私が自殺……命が消える一週間ぐらい前だと思うんだ。
この意味は分かるだろ? まあ、そこは察してくれ。
とりあえず、簡単に言うと私は「恋」の魔法使いだ。
知ってると思うけどな。でも、最後は「恋」の魔法で死んじまったんだ。
私は「恋」のために人間をやめ、「恋」のために生きることをやめたんだぞ? 面白い話だろ!
でも、後悔はしていない。私は「恋」の魔法使いで最後までいたかったから。本当にそれだけなんだ。
身勝手な親友でごめんなさい。そして、最後のお願いです。
アリス、私の「恋」の終着点を……本当はあの人に送りたかったんだけど、貴方だけには知っていて欲しい。
私の生きた、その意味を知って欲しい。だからお願いします。その意味は、この場所へと埋めてあります。
これには特殊な魔法がかかっているので、多分腐敗してはないでしょう。お願いします。
私の親友、大好きなアリスへ。
』
気がつくと私は、彼女の手紙に書かれた場所へとやってきていた。
最初は何故かと思ったが、指定してあった場所が無縁塚なのをみて、きっと彼女の愛した彼との思い出の地なのだと理解した。
きっと彼女は、ここで彼と将来を約束しあったのだろう。
そして、一つ思い出す。
あの手紙にあった『この意味は分かるだろ?』という一文である。
そういえば彼女は、魔法使いとなってからしばらくして、言葉遣いを変えたのだった。
戻したと言った方が正しいのかも知れないが。
弱い自分を誤魔化したくて強気な言葉遣いをしていたが、上辺だけの強さから卒業したからだと彼女は言っていた。
だとすると、もしかしたら彼女は自分を支えられないほどに心が折れていたのかもしれない。
彼が死んで、その現実から乗り越えられなかったのかもしれない。
誰からも気づかれず、心配されず、勝手に大丈夫だと思い込まれて……それなら、私はひどい間違を犯してしまったのではないか。
でも、彼女が私に伝えたい事がるのだと言った。
ここで悔やんでも仕方ない。
私は、掘り起こした手紙の束を、震える手を叱咤しながら静かに読み始めた。
『
霖之助さんへ。
私が貴方と結ばれて、本当に楽しくない日々等ありませんでした。
貴方はずっと無愛想で、出会ってから何も変わらずにいましたが、私は貴方のおかげで変わることが出来ました。
半人半妖の貴方と最後まで一緒にいたくて、魔法使いにまでなりました。
今ではそんな自分すらも誇らしく思います。
そう、この貴方への強い思いが私の「恋」の魔法そのものです。
この魔法は誰にも崩されない、誰にも汚されない、そして貴方も私も裏切らない。
貴方の妻として、「恋」の魔法使いとして、これ程までに嬉しい気持ちはありません。
ですが、私は「恋」の魔法の強さに押し潰されてしまいました。
貴方がいなくなって、私はどのように歩き、呼吸し、動けば良いのか分からなくなってしまいました。
それほどまでに、この「恋」の魔法は強かったのだと思います。
私は「恋」という魔法が、全ての生き物を強くしてくれるものだと思っていました。
ですが、今の私は「恋」に弱ってしまっています。
だから私は、自分の「恋」を終わらせるために、この世界からいなくなろうと思います。
私の「恋」は、貴方への思いの強さから強くなり、貴方への思いの強さから弱くなりました。
ああ、愛しい霖之助さん。
貴方を香霖と呼んでいた頃は兄のように慕っていましたが、霖之助さんと呼ぶと、やはり私も恋する乙女なのだと思います。
私を最後まで愛してくれて有難うございます。
私の好きな貴方のままでいてくれて有難うございます。
私はとても幸せです。
この命、無くしてしまうことを貴方はどう感じるでしょう?
ですが、これだけは言えます。
きっと、貴方も私が死んだら同じことを思うのでしょう。
私は貴方、貴方は私。
だから、今からそちらへと向かいます。
では――また、会いましょう。
「恋」の魔法使い、霧雨魔理沙より。
』
あれから何時間たっただろう。
私は、読み終わってからずっと座り込んだまま黙っていた。
あの文章から、いかに彼女が彼を愛していたのかが分かる。
しかし、それだけだ。
これを私に見せたかった理由は何なんだろうか?
それがどうしても分からない。
彼女が「恋」の魔法使いであったことを、私に伝えたかった本当のことは何なのだろうか?
彼女は「恋」に生きて、死んだだけなのだろうか?
でも、今の私にはいくら考えても分からないのかも知れない。
だから、ゆっくり探してみよう。
弱くも強くもなる、不思議な魔法の本当の意味を――。
別に手紙だからって改行してはいけないという作法は無いでしょう……。
そこさえなければ最後まで読んだと思いますけど。
ブっ飛びすぎて正直自分にはついていけませんでした。
霖之助信者ってスゲー…
恋に生きて恋に死ぬ、目的の為なら手段は選ばないで全力で!なんて自分勝手で無責任な魔理沙らしくて良いよ
簡単にですが、返信コメントを書かせていただきます。
>1様
有難うございます。
個人的には賛否両論というより否の方が多いと思ってたので嬉しいです!
これからもよろしくお願いします
>6様
最初のアリスにあてる手紙でしょうか?
すみません、アレは本来改行するべきでした……
二回目は改行しているのに、次の機会アレば気をつけますOTL
>7様
確かに、ぶっ飛びすぎた内容でしたね(笑
こういう感じの「恋」っていうのは、どんな恋何でしょうね。
次はもう少しまとめた感じで書いてみたいと思います。
>8様
こういう話は見たことがなかったので、書いてる自分自身も少し新鮮味があったりしました(笑
>10様
正解の無い問題ってのも難しいですよね。
相手の捉え方、肯定否定で変わるものって世の中にいっぱいありますしねっ
>12様
コレより先も少し手を加えようと思ったのですけど、やはり正解とか以前に自分自身悩んでしまいまして。
このような問いかけという形で微妙な終わり方となってしまいました(汗
「恋」って言葉を使いすぎかなあ、と思う。
なんだかくどい。