・この作品は『かみさまっ!! ~大国主編~』の続編です。
始めにそちらをご覧になってから読まれる事を推奨します。
前回の復習のあらすじ……諏訪子の暴走×姫様カリスマ×○スラー=八岐大蛇!
* * *
「豊姫! 開けろ!」
「くっ……」
力を注ぎ込む。
『月の海(表)』と『幻想の山(妖怪の山)』が『繋がり』、人一人入れる大きさのホールが開く。
「……これだけ?」
「無茶、言わないで……手紙一つ、落とすので、やっとなのに……」
既に力の半分を持って行かれている。
無理も無い。いくら神隠しの論理を把握しているからとはいえ、幻想郷はアウェイ。
大結界が在る以上、悠々と入る事は出来ない。
「仕方ないねぇ……兎数羽と神数柱、私に続け」
諏訪子がホールに飛び込む。
刹那―――
「んな!? 豊姫、何の真似だ?!」
豊姫はホールを閉じた。
「スイマセン……力尽きました」
頭の中に念話が響く。
「ふざけた真似を……勅命だぞ!?」
倒れた直後御縄に付く豊姫。これでいい。
命令違反であることなど、百も承知。
しかし……間違っている事に従う様な教育など、師から受けてはいない!
「くそっ!」
単独突入となる諏訪子。
守矢神社の鳥居の上に着地する。
「まあいい。コイツがいれば、な」
似てはいるが、何時もと違う奇妙な帽子を撫でる。
全体的に黒く、目が血走っていた。
諏訪子はさてと帽子を宙に投げ、高速神言を始めた。
「―――、――――、――……さて、いっちょ暴れしようか。八つ首」
―――オオオオオオオオー――――ン……
―――禍々しき、咆哮。
彼女は平和な幻想郷へ災厄を持ち込んだ。
* * *
紫と藍は博麗神社へ、大結界の強化を急いだ。
結界を喰い破られるという最悪の結果だけは防ぐ為だ。
「おい! 紫!」
「萃香!」
酒呑童子―――伊吹萃香が神社から飛び出してくる。
「この感じ、真逆!?」
「ええ……貴女の御爺様よ」
萃香は息を呑んだ。
「どうして……」
「諏訪子の莫迦が呼んだのよ。まったく……ゴメン。退治手伝って」
「手伝ってって……私が敵うわけ無いじゃないか!」
ましてや、自身の祖父と対峙するなんて。
「霊夢が戦っていても?」
「ええ!? なんでよ!?」
「成り行き。いいからさっさと行って!」
くそっと悪態を付き萃香は『山』へと向かった。
それを見届け、紫は別所へ向かう……多分、この異変を『何事も無く』収束出来るキーマンの下へ。
一方永遠亭を対策本部にし、永琳と輝夜、鈴仙は兎妖を使い各所へ勧告をしていた。
その他の面々は『山』へ飛んだ。
ただ、てゐだけは里に向かう。守護獣―――上白沢慧音への報告と『あるモノ』を取りに。
「ハクタク!」
「因幡か!? この圧力(プレッシャー)、一体?」
「厄介事が起きた! 今すぐ里を『隠せ』! 人間達が喰われる!」
「何だと!?」
神奈子の話によると、諏訪子が言っていた『ゲゲル』とは一方的な人間狩りの惨殺ゲーム。
真っ先に狙われるのは人里だろうとの事。
てゐは詳細を話した。
「なんて事を……しかし、また守矢か……何とかならんのか?」
「後で説教でも何でもして! 今はアンタの力も必要なの!」
慧音のスペル―――『三種の神器 剣』は八岐大蛇に対し、相性的には抜群だ。
「里を守る為なら構わないが……時間がかかるぞ」
「じゃあ、急いで! ああ、あと姫さんは屋敷に居る?」
「ああ、姫さんか。今は命蓮寺の方々と民の避難誘導をしているが」
「わかった!」
てゐは姫―――小兎姫を探した。
人間達の誘導をしていた為、存外容易く見つかった。
「姫!」
「てゐ! これはどういうこと!?」
「話は後! 『杵』の持ち出し許可を!」
「……そこまで深刻なの?!」
頷く。
小兎姫は少々考え、鍵を渡した。
「ちゃんと、返しなさいよ」
「わかってる! ありがとう!」
屋敷へ急ぐ。
そのまま地下室、錠を開け宝具庫へ。
「あった……真逆、また使うことになるとはね……」
およそ『杵』というには禍々しすぎる槌。
神話時代にとある神が采配を振う為に用いたと言われる審判の槌。
てゐはそれを握り、『山』へ飛んだ。
そして、『山』……
「おいおい……デカすぎやしねえか?」
「文句言わない。月の軍勢が来なかっただけマシよ」
タケルが天を仰ぐ。まさに大蛇(オロチ)だ。
現在現場には神奈子、タケル、大国主、そして霊夢がいる。
「動かないわね」
「なんだ? 整備不良か?」
「んなわけないでしょ。」
「……」
大国主は八岐の一頭を見つめた。
「……あそこに、曲神がいる」
「ッ!! ……諏訪子」
一際デカい蛇の頭に諏訪子が座っていた。
此方を見降ろす形で、ニヤついている。
「よ! 皆の衆!」
「諏訪子、てめぇ……何のつもりだ」
「それを言うかい、建御名方。お前が『嘗て』、私の『国』に対してやったことと同じだよ」
「ッ!! ざけんな!」
「やめな、タケル。アイツのペースに乗せられるだけだよ」
策士。
そんな言葉が浮かんだ。
「私の合図一つで幻想郷(此処)は御釈迦だが……それじゃ、つまらん。
あくまでゲームだ。一応最終通告。大国主、大人しく囚われる気は?」
「下らない」
「良かった。これで心置きなく―――」
―――風符『天狗道の開風』―――
「―――おっと……何のつもりだ」
疾風。
「射命丸」
「シャメ!」
「文!」
「はーい。毎度おなじみ……って言いたいところですが、今日は任務」
竜巻とともに現れる風神少女―――射命丸文。
頭の一つを巻き込み、霊夢達の前に舞い降りた。
「手を貸すわ。霊夢」
「助かる」
「なに……山を荒らす不届き者に、正義の鉄槌をね」
警備隊のマフラーを靡かせる。
カメラは何処にも持っていなかった。それだけ真剣なのだろう。
そして、更に。
「お待たせ!」
「大国主様! 加勢します!」
「ったく……厄介事を」
萃香とてゐ、そして慧音がやって来た。
諏訪子がニヤリと笑う。
「いいねぇ。そろそろ始めようか」
一同が構える。
そして―――叫んだ。
「やれッ!! 倭の国を恐怖させたその力、見せてみろ!」
―――キシャアアアアアアアアアアァ!!
「散開!」
『応!』
幕は上げられた。
* * *
紫は森と人里の狭間にやって来た。
普段はスキマから入るこの店だが、今日は正面からの来店、いや訪問だ。
古道具屋―――香霖堂。
―――カランカラン。
「いらっしゃい」
何気無い顔で迎える店主―――森近霖之助。
「珍しいね。いや、奇跡かな。君が正面来店なんて」
「……分かってやっているの?」
何の事だかと本読み始める霖之助。
「この圧力、わからない?」
「ああ……『見えてる』よ。だから何だい?」
「率直に言うわ」
「ヤダ」
まるで分かりきっているかのように、答える。
紫は唇を噛む。コイツは……こんな時まで……
「霊夢が戦っているわ」
「何時もの事だろう?」
「慧音が戦っているわ」
「……何時もの事だろう」
「文が戦っているわ」
「…………何時もの事だろ」
次第に弱まる声。
「私が、何故貴方の下にそんな危険な『モノ』、預けているか……分かる?」
「……さぁ」
「選ばれたからよ。貴方が」
「……」
紫は部屋の隅にある『剣』を見つめる。
「また、逃げるのね」
「ッ……僕は、弱いからね。どうやっても抗えない壁ってモノが在るんだよ」
まるで泣き出しそうな子供の様な声。
「『剣』だったら持って行ってくれ。どうせ、天下取りなんかの器じゃなかった。
そうだ! 妖夢にでも渡せばいい。彼女なら」
「嘘」
泳いだ目で何を言っても通用しない。
「そうね、貴方は何時だってそうやって失っていく……
妖忌も魅魔も夢幻館の連中も阿七も阿弥もみとりも人間だった頃の慧音も……自分の母親でさえ」
「アンタに何が分かる!!」
激情。
「アンタに……何が……」
「……」
「逃げんな!」
扉。一つの大きな影。
「天満……」
「天、満さん」
天魔・天満が立っていた。
「霖……戦え」
「僕は」
パシンッ……
乾いた音。眼鏡が飛ぶ。
「お前の戦い方ってもんが在るだろ。
それに……何の為に俺が稽古付けた? 妖忌が稽古付けた?
手前の力、使いこなす為だろ!? ああ!?」
胸倉を掴む。軽い霖之助の身体は簡単に引き寄せられる。
「女が戦ってんだ! 男だろ! 手前は!」
「……」
「……クソッ。腑抜けが!」
一向に目を合わせない。
天満は突き放し、踵を翻した。
「霖よぉ……今のその姿見たら、昔のお前知ってる奴らはガッカリするだろうな。
見損なったぜ」
そう言い放ち、翼を広げ『山』へ飛び立つ天魔。
紫は何も言えず立ち尽くしていた。
「『剣』を―――天叢雲剣を貸して」
神器・天叢雲剣に手を伸ばす紫。しかし、掴めなかった。
何故なら。
「いいよ。紫さん」
「霖、之助……」
霖之助が剣を手にしたから。
「悔しいけど……僕は、男なんだ」
「霖……」
「魔理沙は無事かい」
スキマを開く。
紅魔館、大図書館。どうやら七曜の魔女の下を訪れていたようだ。
何やら『山』へ行こうとしているが、門番と魔女が押さえている。
彼女達は事の重大さに気付いているようだ。一介の『人間』が参加できない事を理解している。
「ええ」
「そうか……」
手に力を込める。
「藍の背中を貸すわ。特別よ」
「感謝するよ。さあ、行こうか!」
少年、リンの……いや、青年、森近霖之助の戦いが再び始まる。
* * * * * * * *
―――酔神『鬼縛りの術』―――
暴れ出した八岐大蛇に総攻撃をかけて四半刻、まったく効果が無かった。
「くそっ! 流石私の爺さんってか!」
「莫迦なこと言ってないで、攻撃続けな!」
「あいよ!」
一人一頭でも全く歯が立たない。
というか、物量的に不可能だ。善処しているのは慧音だけ。
「ふんっ!」
「キシャアアアアァ!」
具現化した神器により切り刻まれていく大蛇。
やはり相性か。
「ふーん……アレは厄介だな……」
諏訪子は慧音を見つめていた。
成程、神器か。因果関係で敵うわけが無い。
だったら、別の手よ!
「それ! ―――祟神『ミシャグジ・ラッシュ』――― 行け!」
祟符『ミシャグジさま』の具現化版。赤口白蛇の群れが慧音へ襲いかかった。
「慧音! 行った!」
「何!?」
振り向く。目の前に脅威が―――
―――凱風快晴……フジヤマヴォルケイノオオオオォ!!―――
―――ブリリアントドラゴンバレッタッ!―――
―――消し飛ぶ。
「何!?」
二つの影。
「つ、月の使者・蓬莱ブラック」
「月の使者・蓬莱ホワイト!」
……
「「二人は月キュア!!」」
……
「闇の力の下僕たちよ!」
「と、とっととおウチに……って言えるかああ!」
「あ! もこたん、打ち合わせと違うじゃん!」
「ふざけんな! 幻想郷のピンチだからこの服まで着せられて来たっていうのに……完璧白けてるだろ、これ!」
「ふふふ、永琳と徹夜して作った衣装……やっと御披露目ね!」
「だああああ! 騙されたぁ―――」
―――バクンっ……
あ、喰われた。
「も、妹紅ぉ!」
「慧音、放って置きなさい」
半分呆れてる霊夢。
一同も見なかった事にして戦闘を続行した。
大蛇に加え、ミシャグジの群れまで現れて泥沼化する戦況。
大国主が呟く。
「タケル、神奈子。まず奴の胴体を止めねばならない!」
「ああ、今は留まっているが……動き出されたら厄介だ」
「およよ、既に神社が……」
「金なら出してやるから、な?」
半ベソかいてる神奈子。
「二柱は撹乱してくれ……その隙に、私が準備をする」
「準備って……親父殿! 真逆、『アレ』やる気か?!」
「ふむ……ただ、『媒体』が無い」
一同は首を傾げた。
『アレ』? 『媒体』? 何の事だ。
「大国主様。『アレ』とは……」
「『媒体』って何よ」
ミシャグジの群れを牽制しながら、大国主に近寄っていった。
神(男)はサングラスをクイッと上げ、口端を釣り上げた。
「私の渾名の一つだよ。何処の連中かわからないが、私は嘗て……」
「お喋りも其処までよ! 八岐大蛇! 前進だ!」
猛々しい咆哮を挙げ、ゆっくり、しかし大きく前進を始める大蛇。
建御名方、八坂刀売神が境内に御柱を突き立て、ストッパーをかける。
しかし、時間の問題の様だ。
「キシャアアアアアアァ!!」
「チィ! 霊夢君! てゐ君この辺りで雲が、特に『入道雲』が集まる場所を知らないか!?」
「なんで!?」
「言っただろう……渾名、と」
さっき途中で終わっただろう、という言葉を呑み込む。
しかし、『入道雲』と言われてもそんな都合良く……
「「いた!!」」
入道―――雲居雲山。当に入道の塊。
「連れてくるから10分……いや5分待ってて!」
「『連れて』くる?」
大国主は首を傾げた。
がしかし、待たされるからには其れなりの期待はしよう。
だが5分とは……中々、無理難題を仰る。
「てゐ君、やれるかい?」
「だ、大国主様と一緒なら!」
「ふふ、言ってくれる……行くぞ!」
「はい!」
レーザーを弾幕る大国主。そして近づくミシャグジ達を杵で祓っていくてゐ。
何処となく息が合っていた。
其れに負けじと神奈子、タケルも前に出る。
「親父殿、やるじゃねえか……よっしゃ! 神奈子、併せろよ!」
「ったく。合点!」
―――神祀『エクスパンデッド・オンバシラ・二重奏』―――
辺り一面の御柱。
大蛇の顔面をタコ殴りにした。流石に進撃できなくなる。
諏訪子は舌打ちした。
「やってくれる……だが、まだまだァ!」
何処からともなく桃を取り出す。
「ほろ酔い位が丁度好かろう!」
大蛇の口に桃を放る。
刹那、圧力が増大した。
「あ、あれは!」
「知っているの、慧音?!」
御決まりのセリフで返す文。
「仙桃! 中国の酒気を含んだ桃だ!」
「何故、奴がそんなモノを!?」
「ははは! サボっている門番を脅して貰ったぁ!」
何処からともなく大きなクシャミが聞こえた。
「やれ!」
「キシャアアアアアアァ!!」
動きが乱暴になる。
酒の麻酔もかかり、痛みを気にせず突き進む大蛇。
「クソッ……文。いや、文『さん』!」
「……そう呼ばれるのも、久しいわね。いいわ、やりましょ!」
慧音が文の後ろに回り込み、妖力を溜め込んだ。そして―――
―――光符『アマテラス』―――
あろうことか、文に向けて放つ。しかし文は避けず、符を掲げた。
―――塞符『天孫降臨』―――
まるで、太陽。
アマテラスとニニギの重奏が八岐大蛇を襲う。
「「どうだ!」」
レーザーと大量の弾幕の壁に押され、うろたえる大蛇。
二人はハイタッチをした。
だが……これだけやっても均衡。このままでは奴が『山』から降りてしまう。
せめて、頂上まで押し戻せれば。
「むっ!?」
―――ピチュリー―ンッ!!
「大国主様?」
「皆、上へ! 急げ!」
「え?」
大国主の声に一同は急上昇した。
諏訪子は何事かと目を見開く。そして……『台風』を見た。
―――ゴオオオオオオオォ……
んな!?
―――キョエエエエエエェ……
アレは!?
「ウリャアアイイイイイィッ!!」
「て、天魔だとォ?!」
八つ首の中心に神速の蹴りを撃ち込む天満。
秒速50キロの直撃を受け吹っ飛ばされる大蛇。諏訪子は緊急離脱した。
「遅かったじゃない」
「すんませんね……莫迦を殴ってきましたから。それにヒーローは遅れてやってくるもんでしょ?」
「……莫迦はおめーだ」
「あ、文さん……」
苦笑する慧音。
この妖達は、まったく……
「おう、天魔の。良い蹴りじゃねえか」
「神様も御立派な柱ですこと……えっとそちらの、イケメンさんは?」
「俺の親父だよ」
「宜しく」
ああ、成程……大国さんか。
「天魔ぁ……やってくれたなァ、オイ。妖怪風情がよォ!」
「おお、オッカナイなぁ……諏訪子様よぉ。悪いけど、山の平和を乱す輩は……神様だろうが『蛙』だろうが、許さねえ!
チル坊にでも冷凍されちまいな!」
「き、貴様ぁ……」
肩を振わせる。
諏訪子は帽子をはるか上空に投げ、叫んだ。
「何時まで寝てる! 駄蛇! さっさと奴らを喰い散らせ!」
妖力を込め、叩き起こす。
しかし……起き上れはしない。あの図体だ。一度転べば相当の力が働かない限り―――
クルン。
―――……なんで?!
「これは……ハハハ! ツイてるぁ! ありがとよ! 腹の中の莫迦二人!」
「アイツら、余計な事を……」
萃香と慧音が頭を抱えた。
腹部を見ると……確かに、ジタバタが見える。せめて死なないんだから、溶かされてくれればいいものの。
さて……ピンチだ。
「よし、今度こそ! 進め、八岐大蛇!」
「キシャアアアアアア!」
再び進撃が始まった。
* * *
所変わって人里。
霊夢は一匹の妖怪を探していた。寺には居ない。
となると……里の警備。
「何処に……居た!」
『山』側の関所。数名の妖怪が固まっていた。
新参の寺―――命蓮寺の面々。
「えっと……入道使い!」
「霊夢ちゃん!」
住職―――聖白蓮が気付いた。
事の詳細を聞こうと、引き止め……られなかった。
「コイツ、借りてく!」
「え、あ、何でえええええぇぇぇ……」
尼―――雲居一輪が霊夢に手を引かれ、連れて行かれてしまった。
「あれ、一輪が……」
「……仕方ありません。私達だけで里(此処)を守るのです」
「「「「はっ!」」」」
白蓮は察した。
何かある。彼女はきっと意味の無い行動はしない、と。
メンバーは陣を組み直した。
* * *
一方、月本部。
豊姫、依姫は監禁室で事の成り行きを見つめていた。
望遠の神器を使い、スクリーンに戦闘が映し出される。
「くそっ……王は何を考えている?」
「依姫……多分、だけどアレは、偽の勅書よ」
「え?」
直後、玉兎が部屋に駆け込んできた。
「と、豊姫様! やはり、仰っていた通り、純血派の策略でした!」
「何だと!?」
「やはり、ね……」
レイセンは裏を取っていた。
王に、そして親しい仲間を頼って。
「王曰く、『は? 何それ? 聞いて無いぞ……おい! ウズメ! どういうこった!?』、だそうです!」
「やれやれ、ね」
これで自分は晴れて無罪。
しかし、未だに問題は続いている。
「八岐大蛇とは……私が行けば、一撃なのに……」
舌打ちをする依姫。須佐オジを降霊すれば、一発。しかし、自分が奴らに手を貸すことはできない。
確かに、奴らは忌まれる存在ではあるが……何という、不条理。
画面上の大蛇は留まる事を知らないようで、のた打ち回る様に進撃していた。
「はぁ……依姫。問題無いわ」
「は? 何を?」
「彼が、大国主が、ただカリスマだけで第一級封印指定になっていると思って?」
成程。
「それに……師匠もいる。たかが蛇如きにやられる連中じゃないわ」
「そうか。加え、幻想郷(あそこ)は八雲のテリトリー……」
「ふふ、良いじゃない。私達を駒と言い張っていたあの曲神さんも駒として働いて貰いましょう」
……流石、御姉様。師匠にも負けず劣らずの黒さ。
「精々、私達の戦力分析の駒になってね……『ケロちゃん』さん」
* * *
「お待たせ!」
「遅いぞ! 霊夢!」
人里二里手前で戻ってくる霊夢。そして一輪。
大国主が叫んだ。
「『入道』を! 早く!」
「え!? 何?!」
「いいから! あの雲親父出しなさい!!」
為すがままに、雲山を呼び寄せる一輪。
大国主は、良い雲だと微笑み―――雲山の中に突っ込んだ。
「だ、大国主様!?」
『ふふ……てゐ君、言ったろ? 私は嘗て―――』
* * *
霧の湖。
妖精達は固まって、脅えていた。
妖精というものは邪気に敏感で、大地の化身たる彼彼女らは大いに影響を受ける。
現在、紅魔館の門前で館の住人に保護されている妖精が殆どだった。
各々、私達消えちゃうの……怖いよぉ……と泣きついている。
そんな中、一匹の妖精がただあの怪物を凝視していた。
「ち、チルノちゃん……早く紅魔館の中に」
一匹の妖精が呼ぶ。
しかし、氷精―――チルノは動かない。
どのくらい其処に居ただろう。彼女にはわからない。
門の前には彼女一匹だけとなった。
「アナタは、逃げないの?」
曇天の空の下数名の人妖が出てくる。
門番長―――紅美鈴。メイド長―――十六夜咲夜。主―――レミリア・スカーレット。その妹―――フランドール。
誰が言ったか分からないが、そんなの関係無い。
チルノは答えた。
「……莫迦ね。友達を守れなくて、何が最強よ」
「ククク! 最高だ! 氷精!」
「チルノカッコいい!」
姉妹が楽しそうに笑い、門番とメイド長は苦笑。
「ああ、それでこそ……私が認めた『リーダー』だ」
黒い塊が現れる。
「ルーミア」
「よっ」
ふわふわと地面に降り立つ。
レミリアがジト目で告げた。
「……アンタが行けば一瞬じゃない」
「貴女もね……無粋だよ。そういうの。『運命』見たから……行かないんでしょ?」
「ハハ、分かってるじゃないか」
そうだ。面白いモノが見れると微笑むレミリア。
「あ……ミスティアの歌が、聞こえる」
フランドール呟いた。
微かだが、力強い、何処か懐かしい歌が聞こえた。
そう、それはまるで……
「奨励歌(YELL)ね。まったく、こんな時に呑気だこと」
咲夜が苦笑する。
しかし、チルノが首を振った。
「違うよ。メイド長……これは、ミスチーの『戦い』さ」
「え?」
意味がわからない。
はて、と首を傾げる咲夜。一同はその仕草を見て、笑いが零れた。
「わかりますよ、何れ」
美鈴が頭を撫でる。可愛く頬を膨らます咲夜。子供扱いするなと言いたいのだろう。
「あ……」
チルノは、声を挙げた。
目の前に揺らめく『それ』を見て驚愕したからだ。
人型の『それ』は、生ぬるくて気持ちの悪い蒸気を放ち、大蛇を見下げるようにゆらゆらと動いていたのだ。
いつものように寒く、いつものように、だが歪騒しい冬の山。
彼女は人型の『それ』を見上げて、呟いた。
「だいだらぼっち、だ」
だが、そこがイイッ!
たまに入る小ネタがシリアルブレイク
佳境っぽいんだし少しは控えた方が…
次回に期待!
このメンバーなら大歳神様と言われる秋姉妹も来るか?
最初は記紀神話関係キャラ周りだけの話かと思っていたら、予想以上におおごとになりましたね。
次回も楽しみです。
勢いに任せて書くのはいいですがもう少し丁寧に書いたほうがよろしいかと
霖之助が動く!?天満のライ○ーキックwwwそして輝夜と妹紅wwお前ら何してんだよwww帰れよwww
なんか幻想郷全体を巻き込んできましたね。それによってなんか内容が薄いな、と自分には感じます。
ぶっちゃけ紅魔館本編に組み込まず、サイドストーリーにしても良かった気がします。
とはいえ続きが楽しみです。
・3番様> 頭の中では年中無休黒歴史状態ですw
・7番様> 十王……閻魔の方ですか。記紀神話は勉強しているんですが、難しいですね……頑張ってみます。
・8番様> あらま、すいません。てるもこは後で活躍してもらいたいなぁ、と。
・9番様> いや、赤のリッ○ディアスですww
・12、14、23番様> 誠に申し訳ありません。努力します。
・18番様> 穣子は相性最悪なので出そうか出すまいか悩んでます。姉は……色々設定張ってるので、いずれ。
・22番様> 大事過ぎて収集が(オイw 姫様はもこたんと一緒だと、ね!
・24番様> 霖之助の戦いが難しい所です。てるもこは……うん! 紅魔は正直チルノのダイダラボッチ話を出したかったノリみたいなものが、です。
次回はクッション置くかもしれません。では!
は、早く続きを・・・!
ところで、ゲゲルに対しては誰もツッコミは無しですか?
そうですねwゲゲルwww諏訪子様はグロンギ語を使えるようですww