「誰が一番相手を怖がらせるのが上手いか勝負しないか?」
ここは悪魔の棲む家、紅魔館の地下。
フランドールの部屋である。
「えー、どうせなら弾幕ごっこがいい」
私の名前はぬえ、今のはフランドール。
最近まで地底に閉じ込められていたのだが間欠泉と共に再び地上に舞い戻ってきたのである。まあ今はまた地下にいるのだけど。
「弾幕ごっこならついさっきしたばかりじゃないか」
「ええ、ぬえが一番弱かったわ」
ふん、長い間眠ってさえなければこんな小娘なんかにやられはしない。
とはいえ最近の子は昔に比べて強くなっている気がするよ……。
「弾幕ごっこもいいけど妖怪たるものいかに相手を怖がらせるかも大切な事だと思うんだよね」
「いいわねー、私も弾幕ごっこはちょっと飽きてきたし面白そうだわー」
いまのはこいし、そもそもこの二人と会うきっかけである。
なんとこの小娘は出会いがしらに
(珍しい動物ねー、ペットにしてお姉ちゃんに自慢しよっと♪)
などと抜かしおった。まあそのときはなんとか勝ったからよかったが負けたときは想像したくないな。
しかし私の事をペットにしたいなんて言う奴と親交が深まるとは思わなかった。波長があったのだろうか。
「しょうがないわね。それで具体的になにをするのかしら?」
しょうがないと言いつつフランの顔つきは楽しそうだ、ちょっとは興味あったのかな。
「とりあえず私は正体不明の種を里にバラまいて人間達を恐怖のドン底に貶めようと思う」
「じゃあ私は平和そうな人間達を殺涼しよぉーと、考えただけでも胸がドキドキするわぁ♪」
「それなら私は人間達をきゅきゅきゅっとしてドカーンドカーンって」
「こらこら 私の前で物騒な作戦立てるんじゃないの」
私たちがどうやって人間達を怖がらせようか作戦を立てていると巫女があきれた顔をしながら言う。
ええと、この紅白の巫女は博霊の霊夢だっけ?
「まったく、そういう話は私のいないところでしなさい。それと"博霊"じゃなくて"博麗"よ」
いないところだったらいいのか、それも巫女としてはどうかと思うが。
まあこの巫女には逆らわないほうが懸命だな。
もう、地底に封印されるのはもう勘弁よー。
「しかし、フランに友達が出来たと呼ばれて来てみれば、まさかあんた達とはねぇ」
疲れた顔をしながら言う霊夢に、フランがにこにこしながら言う。
「意外だった?」
「お似合いよ、まったく一人でさえ厄介だと言うのにそれが三人集まるなんて頭痛がするわ」
はぁ~、っとため息をつきながら霊夢は言う。
厄介さで言ったらこの巫女に勝てる奴なんていないと思うが、仮にもExボスの私達と弾幕って服にごみひとつ付いてないとは・・・。本当に人間なのかこの巫女は?
「三人集まれば文殊の知恵って言うしねぇ♪」
こいしは笑いながら言う。
「あんた達の場合は文殊というより明王ね」
明王ってなんだっけ?
あとで聖にでも聞いてみるか。
「まぁ 私は用事があるからこれで帰るけど物騒な事はしちゃ駄目よ?やるならあんた達の身内にしときなさい」
そういうと霊夢はすぐに帰っていった。
「用事ってなんだろう?」
私はフランに尋ねる。
「どうせ神社に帰ってお茶飲んで寝るだけでしょ」
フランは飽きれた顔で言う。
確かにあの巫女にこれといった用事があるとは思えない、異変のとき以外はいつも暇そうにしているし、少しは参拝客 でも集める努力をしたほうがいいんじゃないのだろうか。
「さてどうするのかしら? 身内にやれって言われてもお姉さまにはいつもイタズラしているし」
というか私の場合身内には正体がバレバレだから脅かしようが無い。
あの茄子の傘の子みたいに「うらめしや~」とか言ってみるか?
いやいやそれで驚くわけが無いだろ、ムラサあたりに馬鹿にされそうだ。
「ならお互いの身内脅かすってのはどうかなー私もフランちゃんのお姉ちゃんイタズラしてみたい♪」
「ふむ、確かにお互いの身内ならある程度無茶やっても問題にはならないかも、私の正体もバレてないだろうし好都合だ」
「そうと決まったら膳は急げね、さっそくお姉さまを脅かしにいくわよ!」
「うん♪」
フランもこいしもノリノリだな。
私も散々弾幕ではやられたけど妖怪の本質なら勝っているってことを証明しなきゃ。
しかし、
「膳を急いでどうする、最近の若いのはことわざもまともにいえないのか」
「ふふ、お姉さまは私達を盛り上げる食材ってことよ」
――――
「最近あの子は楽しそうだわ、そう思わない咲夜」
ここは紅魔館の館の主、レミリア・スカーレットの部屋だ。
「あの子とはフランドールさまの事でしょうか?」
私は小さく本当に小さくコクリと頷いた。
あの子は霊夢たちが来るまで外の世界や他人という物に興味がまったくなかった、他人に興味がないと言う事は自分にも興味がないという事と同じだわ。
だってそうでしょ?他人の事すらわかろうとせずに自分というものがわかるわけがない。
自分を知ると言う事はそれだけ大変な事だ。
私もフランもそれをわからずにこの500年あまりを過ごしてきた。
結局、私もフランの事をわかっているようで何もわかってなかった。
家に閉じ込めておけばあの子は傷つかない、幸せに生きていけるずっとそう思ってきた。
傷つかないことと幸せな事は同義ではないというのに。
「あの子は変わったわ、昔と違って積極的に外の世界を知ろうとしている」
「ふふ、変わったと言えばお嬢様もそうですわ」
そうなのだろうか?
確かに霊夢と戦ってから変わったかもしれない、私も館以外の奴らと交わろうとなんてしなかったっけ。
今じゃ妖怪退治をなりわいとしている神社の巫女のところで宴会なんて、不思議なもんね。
「変わった人間だよ霊夢は、他人に興味が無いといいつつ最も多くの他者と交わっている」
口癖のように妖怪退治とか言っているくせに霊夢は全てを受け入れる、何色にも染まらない霊夢はどんな色でも受け入れることができるのかしらね。
こういう口ではツンとしているのってなんていうのかしらっけ? ツンデレだっけ。
ってあれ?
そこで私はある異変に気づく。
「咲夜、その空中に浮いたティーカップは新しい手品かしら?」
「いえ、私は何もしていませんが・・・」
空中に浮いたティーカップはまるで死にかけの蠅のようにぎこちなく中を舞い続けている、またフランが姿を隠してイタズラをしているのかと思ったがまったく気配がないし・・・。
と思ったら急にこっち目掛けて突っ込んで来た。
「あ"っぢぃ!!! ちょっと咲夜ー、なんとかしなさいよー!」
「言われなくても、ティーカップごとにき好きにはさせませんわ」
――――
「ただの危ない小娘と思ったがなかなかやるじゃないか」
メイドや吸血鬼にバレないように部屋の外からこいしの行動を見て私は素直に関心した、人間と言うのは正体不明のものを一番怖がるのだ。
空を浮くティーカップなんてまさに正体不明じゃないか、ちょっとシュールだけど。
「お姉さまは吸血鬼だけどね」
「そういう突っ込みはなしで」
「あら、咲夜がティーカップを掴んだわ、また時でも止めたのかしら」
「まあ正体はこいしだから無駄なんだけど、おっ今度はポッドが飛んできたな」
――――
「はぁ・・、 まったくそういうことね」
紅茶の味がしっかり付いた服を着ながら私はボソリとつぶやく。
「どういうことですかお嬢様?」
咲夜が尋ねる。まったく、時を止めるという便利な能力を持っているわりには肝心なときに役に立たない。
やっぱり人間は駄目ね。
「咲夜はそこで見てなさい、すぐ終わらせるから」
――――
「あははぁ おもしろーい♪」
お姉ちゃん以外の人にイタズラをあんまりしたことがないからこういうのは新鮮だ、紅茶をぶちまけたときのレミリアちゃんの顔面白かったなぁ♪
さて、ポッドや椅子、ロウソクや本当は怖いモケーレムベンベの本も投げ終わったし次は何を投げようかなぁ。
そうだわ、さっきのメイドが持っていたナイフを使って今度はレミリアちゃんの服をビリビリに破いてあられもない姿にしちゃおっと♪
そう思ってメイドのナイフを掴んだ瞬間だった。
<ガシッ!>
「え?」
「やっと捕まえたわ、散々私にいろんな物をぶつけてくれたお返しをさせてもらうわ」
私が捕まった? ありえない! 私の能力は無意識を操る力、姿だけでなく気配すらも消す、でも実際つかまってるしー。
「デビルイヤーは地獄耳でね、さっきあっちでフラン達がひそひそ話しているのを聞いたわ」
「えー、でもどうやって私を捕まえたのー」
フランちゃん達の会話が聞こえたからって私の居場所がわかるわけがない。
「ふんっ、この出来事があなたの仕業とわかれば簡単よ。パチェからあなたの能力は聞いたわ、あなたの能力は無意識を操る力、物を浮かす力ではない。だとしたら物を投げるのには一旦掴む必要があるでしょ?」
「まさかナイフを取った瞬間を狙ったと言うの?でもメイドの位置はあなたから死角だったからわかるはずないじゃないー」
「私にも便利な能力があってね、運命を見る力があるの。だから咲夜のナイフが掴まれる運命にあるのはわかっていた。あ とはあなたがナイフを取った瞬間を狙って掴めばいいだけ。ね?簡単でしょ」
「えーずるいーそんな能力あるなんてフランちゃんから聞いてないよー」
「まあいいわ、咲夜この子を掴んでおいて。さて次は・・・」
すっとドアの外を見た、私はシュっと風を切るように移動した。
「やばっ逃げるわよぬえ!」
フランはあわてて逃げようとするが当然そんな直ぐに逃げられるほどフランは素早くない、私はフランの手をガッチリ掴む。
「あらお姉さまご機嫌麗しゅう・・・」
フランは苦笑いをしながらこっちを見る。
「フラン今のあなたは本当に楽しそうね」
私の言葉が意外だったのかフランはきょとんとする。
「あなたを閉じ込めていたことを今では後悔してるわ、でも吸血鬼は不死の一族これから共にこの世界を楽しみましょ、いくらでも時間はあるわ」
「えーと私を閉じ込めてたことなら別に恨んでないって前に言ったじゃない、元々私も出る気はなかったしね、それにお姉さまと一緒ならどんな事でも楽しいわ」
「ありがとうフラン」
私は心のなかもモヤモヤが晴れた気がする、今度は二人で神社へ行こうかしら。
多分霊夢は迷惑がるけどなんだかんだで受け入れてくれるわ。
「ところでこの話の流れだと私は許してくれるのかな?」
「それとこれとは話が別よ」
「えーそんなー、ちょっとぬえ助け・・・っていないし。どこいったのよあいつ!」
『レミリア~』
「くっ、『レーヴァテ・・・』」
『ストレッチ!』
《ト"コ"ーン"》という音が紅魔館中を巡っていった。
――――
「まったくもう、バレちゃ駄目じゃないよこいしちゃん。いてて」
フランが頭を抱えながら文句を言う。結局あの後レミリアにやられたフランは気絶しちゃったんだよな。
しかし『レミリアストレッチ』だっけ? どうよそのネーミングは。
私たちは今地底にいる。
こいしの姉がここにいると聞いてやってきたのだが、正直私はもう地底はこりごりだ。
「えへへー、ごめんねーフランちゃん」
ごめんとこいしは言うがその顔はとても反省しているとは思えない、むしろ喜んでいるように見える。
「ぬえもぬえで直ぐにいなくなるしぃ、どこいってたのよまったく」
「んー画面外」
「なによそれ」
地底に閉じ込められてから危機察知能力と新必殺技『画面外逃亡(平安京の悪夢)』を身に着けるようになった。
「それで?こいしちゃんは結局お姉さまからどんな罰を受けたの?」
!? 私は驚いた、画面外から見ていたがあれはとてもじゃないが口にするわけにはいかない。
「それがねー凄かったのよレミリアちゃん♪まず私のパンツを脱がしてその後にねー」
「ちょっとストップ!ストップ!駄目だよこいし、18禁になるよ!」
「なによぉ、二人だけの秘密なんてずるいわね。いいもん、後でお姉さまから直接きくわ」
妹にあんな事を話せるのだろうか・・・。もしかしてこいしと×××したいがために気絶させたんじゃないか?
しかし、
「フランもなかなか大変な人生送っていたんだな」
レミリアとフランの会話を盗み聞きして私はそう思った、閉じ込められていたなんて私だけかと思ったが、初めてあったときから他人のように思えなかったのはそういう節があったのかな。
「別に、お姉さまが気にしすぎなだけよ」
そうフランは言うが顔はなんだか複雑そうだ。
「結局私もレミリア、まあフランの姉と会ったのよね、気絶したあなたを連れ出そうとしたとき見つかっちゃった」
「ふーん、それで何か言われたの?」
「帰り際に一言ね、(これからもフランをよろしくね)って」
そのときのレミリアの顔はとても暖かい笑顔だったように思える。
「気にしすぎなのよあいつは」
そう悪態をつくフランだが顔はどこか微笑んでいるように見えた。
ところで、
「前から思っていたんだけどさあ」
私はこいしに尋ねる。
「なーにー?」
「飛びづらくないの?そのグリコのポーズ?」
「そんなことないよ、ぬえもやってみなよー♪」
やってみろと言われたが正直恥ずかしくてやりたくない。
近頃の若い奴は変なポーズで飛ぶのが流行っているのかと最初は思っていたがどうやらこいしだけのようだし・・・。
「それに飛びづらいと言ったらぬえのその生理的に受け付けない羽にいわれたくないなー」
「ええ!? カッコイイじゃんこの羽、それに変な羽の事でいったらフランもそうだろ」
「あんたに言われたくないわ!」
「フランちゃんの羽は可愛いもん、ねーフランちゃん♪」
「ねーこいしちゃん♪」
ひどい言われようだ・・・。生理的に受け付けないなんて初めて言われたかも、ムラサはカッコイイって言ってくれたんだけどなあ。
きっと今の若い奴とは美的感覚が違うんだろう、きっとそうだ・・・。
――――
騒がしい地底の都から外れた寂しい場所にその館はあった。
地霊殿、地獄の怨霊も恐れる少女、さとりとそのペットたちの住む館である。
「こいしはまた地上かしら?」
私はペット達が地上の巫女から貰ってきた緑茶を飲みながら尋ねた。
最近は紅茶しか飲んでなかったけどたまにはこういうお茶もいいわね。
「はい、そのようですね」
この子は私のペットであり怨霊の管理である燐、最近はよく空と一緒に地上へ出かけるようだ。
「誰にも興味を示さなかったあの子がねぇ」
こいしも昔は私と同様に他人の心が読める妖怪だった。
しかしあの子は私と違って心が弱かった。
あの子は自分の能力で他人に嫌われるのが耐えきれず自らの心を閉ざしてしまったのだ、その結果周りの住民からは嫌われることはなくなった。
私はそれが不憫で仕方なかった。
誰からも嫌われないと言う事は同時に誰からも好かれないという事。
好きの反対は嫌いじゃない、無関心なのよ。
「あの巫女が来てからね ふふちょっと妬いちゃうわ」
こいしの心を開くために私はあの子にペットを与えた。
それによってこいしの心も他人の心を受け入れるようにはなったが本当に気持ち程度だった。
私がいままで長い時間をかけて駄目だったのをあの巫女はたった一回の弾幕でこいしの心を開いてしまったわ。
「変わった巫女ですわ」
今のは空、私に黙って地上を灼熱地獄に変えようとした不届きものである。
まったく、そういう面白そうなことは私にも相談しなさいよ、まあ流石に止めはするけどね。
しかし、ふふっ確かに変わった巫女だわ。
私の能力を知って(喋る手間が省けて楽だわ)ですって、そんな奴今までいなかったわよ。
「好きの反対は無関心、でもあの巫女は誰に対しても無関心なくせに誰からも好かれる、よくわからないね心って」
結局私は他人の上辺だけの心を読むことで相手を知ったつもりでいたのだ。
妹の心もわからなかったくせに心を読む妖怪だなんて笑っちゃうわね。
そういえばこいしが言ってたっけ
(生物は考えてるだけで行動してるわけじゃない、本当の心は無意識で決まるのよ。無意識だから誰も気が付かない、自分にも当然お姉ちゃんにも・・・。
だからお姉ちゃんは本当の心がわからない、意識だけを読むお姉ちゃんには絶対わからない。)
こんな私にこいしと仲良く出来ることなんて出来るのかしら・・・。
「大丈夫ですよさとり様、こいし様となら今からでもきっと仲良くやれますよ」
「さとり様とこいし様はお似合いの姉妹ですわ」
「あら?燐も空も相手の心が読めるのかしら」
そう私が訪ねると燐と空は笑った。
「わかりますよ、だって」
「さとり様の顔に書いてありますもの」
そう燐と空が言うと私はふっと微笑んだ。
――――
「はい!とうちゃーく」
「はぁ、地底にはロクがいないんだな」
私は悪態づく、ここに来る途中橋にいる奴には妬ましい妬ましい言われて攻撃されるし、途中の鬼にはなぜかいきなり弾幕を仕掛けられるし散々な目にあった。
「でもみんな強くて楽しいわ、また帰りにあの鬼と戦おうかしら」
フランは本当に楽しそうだったな、どの戦いの先陣を切って挑みにいったし。
若いものは体力があっていいねぇ、正直私はもうくたくただわ。
でも、
「せっかくここまで来たんだ、私の本気を見せてやる」
「なーにーぬえ、今までは本気じゃないみたいな言い訳はみっともないわよぉ、散々弾幕でゴミクズのようにやられたくせにー」
ひどい言われようだな・・・。
「もうちょっとオブラートに包んでよ」
「んーじゃあ生ゴミのような」
「ああんもういいわよ、だいたいこいしここに来た目的忘れてない?弾幕じゃなくてあなたの姉を怖がらせるのが私の目的よ」
「えーそうだっけ?」
まったくこの娘と来たら・・・。
まあいい、この私が最怖の妖怪だと思い知らしてやる、くっくっく昔の血が騒ぐ。
「お姉ちゃんを脅かすなんて簡単よ。鈍感で臆病だからいつも私が後ろから脅かすだけで死にかけのゴキブリのようにピクピクしてるんだもん♪」
女の子がゴキブリって・・・。
まあいい、私の正体不明の能力はどんな生物でも恐怖する。
鈍感で臆病ってならなおさら好都合だわ。
「ふふ、じゃあちょっと行って来る、姉の失禁姿を見ても驚かないのよ」
「えーでもお姉ちゃんの失禁姿なら凄い見てみたいかも♪」
この姉不幸者め。
――――
ビクンと燐と空が後ろへ飛びのく、この突然の来訪者に驚いているようだ。
「さとり様!バケモノですよ!今まで見たことないような!」
「うにゅ~ 目玉がー巨大な目玉がー」
バケモノねぇ・・・。
どうやら燐から見ると「この子」はどうやらこの三つの頭を持った大きな犬に見えるらしい、けろべろすって言ったっけそういうの?
空は・・・どうやら巨大な目玉に見えるみたいだわ、なんで目玉が怖いのかしら鳥って種族は。
「ふふ、どうだ驚けー」
驚けと言われてもねぇ、あなたについている変な羽がシュールすぎて無理だわ。
このまま燐と空の怯えている姿を見ているのも楽しいのだがさっきから「助けてさとりさまぁ」と心で訴えかけてくるのでさすがに可愛そうに思えてきた。
空なんてもう失禁寸前だし・・・。
「しょうがないわね」
私はすっと立ち上がった。
(ふふ、驚いてる驚いてるこいしちゃんの姉はあの真ん中の小さい子かな、たっぷり驚かしてやるんだから)
「ええ、私がこいしの姉ですよ、あなたは?」
(やっぱりそうか、ぬえの威信がかかっているんだ、ここは頑張らないと)
「ふむ、ぬえと言うんですか、私は怖くないのですがペット達が可愛そうなのでそろそろやめてくださる?」
(ふんっ、ここでやめるわけないじゃないか、ってあれなんで私の名前知ってるんだ?)
「あら、こいしから聞いてなかったのですか私の能力?」
(そういえば聞いてなかったな、ってさっきから私の心を・・・ )
「そう心が読めるんですよ私、(そんあぁ正体不明がウリなのにそれじゃあ正体バレバレじゃないかぁ)」ですか。
「(こうなったら隣の二人だけでも失禁させてやる)ですか。私も見てみたいのですが可愛そうなのでね。また別の機会に見せて貰うわ」
「(ここでやめたらぬえのプライドがぁ)ですか。やめてくれないならあなたのトラウマを掘り起こさせて貰いますわよ?ふふ多分失禁じゃすまない、よくて精神障害ね」
こ・・・これは相性が悪すぎる。正体不明の種がまったく役に立たないじゃないか・・・。
というかセリフ全部取られてるし。
こいしも何が鈍感で臆病だよ~、考えてみればあいつの能力なら後ろから近づけて当然だろー。
しかしトラウマを掘り起こす?
「それだけは勘弁してー」
「ならさっさとその正体不明の種とやらを解除しなさい」
流石に地底に閉じ込められたときのトラウマを掘り起こされるなんて絶対に嫌だ、私は仕方なくこの子の言うとおりにした。
「燐、空起きなさい。これがこの子の正体よ」
私は後ろで白目をむいてるペット達を起こした。
「あれ?巨大な犬は?」「うにゅ?巨大な目玉は?」
「全部あの子の仕業よ、あなた達は幻覚みたいなものを見せられていたの」
私がそういうと燐と空は急に強気な顔をした。白目をむかされたのが相当頭にきたのだろうか。
「やってくれたわねぇ、死体にして地獄の釜に投げ込んでやろうか」「いえいえお燐、ここは私の核の力で消し炭にしてやるわ」
「う・・・これはまずいかも」
ぬえが後ずさりをする。
まったくさっきまで失禁寸前まで怯えていたものとは思えないわね・・・。
しかし、
「駄目よ二人とも、この子はこいしの友達なのだから丁寧に扱ってあげなさい」
「うにゅ?そうなんですか?」
「へーお姉さんがこいし様の友達なんですか」
二人がきょとんとした顔でぬえを見る。
「こいし、どうせ近くにいるのでしょう、出てきなさい」
私がそういうとこいしが物影の置くからすっと出てきた。
「えへへ♪お姉ちゃん凄いわーこんな早くバレるとは思わなかった」
「まったくちゃんと説明してよねえ、心が読める奴相手に私の能力が効くわけないじゃないの」
ぬえがこいしに悪態を付く、まったくこの子の言う事を信用するなんて馬鹿ね。
「こいしの友達でしょこの子は」
「そうだよー。ぬえって言うの、とっても面白い妖怪なのよ♪」
こいしが笑顔で言う。
「本当に変わったわねあなたも」
私がそういうとこいしはきょとんとした顔をする。
「前まで友達なんて作ろうとしなかったのに、今のあなたは楽しそうだわ」
「そんな事いったらお姉ちゃんもだよー」
「えっ?」
こいしの言葉がちょっと意外で驚く。
「お姉ちゃんだって前までは館に引きこもって動物達としか触れ合わなかった。でも今は違う、地底の住民や地上の住民とも積極的に触れ合うようになった。上辺の心だけじゃなくその中の本当の心も読もうと頑張ってるじゃない♪」
私も変わったか、まったくそうは思わなかったわ。
結局私よりもこいしのが他人の心を見れいたってことかしら。
「こいし?」
私はこいしに尋ねる。
「今の生活は楽しいかしら?」
私の問いに対してこいしは少し考えた後
「うん♪楽しいよお姉ちゃん」
と満面の笑みで答えた。
なんだかこいしのところも複雑なんだな、ただの変な子かと思ったけどこいしはこいしでいろいろな事があったみたいだ。
ところで完全に私空気だな、逃げるなら今のうちかな。
「あ、ちょっと待ってください」
うっ、そういや心読めるんだっけ、こっそり逃げようとしたが無駄に終わってしまった。
「せっかくなので歓迎会でもやらせてください、燐や空もいることですし。」
ん?なんかお仕置きでも受けるのかと思ったら歓迎会だって?それなら逃げることもないな。
ってあれ?
「なんで私の服に手を掛けているのかな?」
「あら、歓迎会って言ったじゃない。大丈夫悪いようにはしないわ、ふふっ私得意なのよあいての事を気持ちよくするの」
えーちょっと待った歓迎会ってそういう事?
「燐も空も最近構ってあげられなくてご無沙汰ですしね。丁度よかったわあなた達も来なさい」
「ハーイ」「ハーイ」
そういとあのペット達も服を脱ぎだして・・・。
「ちょっとこいし助け・・・、ってなんであんたも服脱ぎだしてるんだよ!あんたはこっち側だろうが。」
「んー私もぬえとそういう事したいと思ってたし丁度良いかなって♪久々にお姉ちゃんともしたかったし♪」
クッこうなったらフランに助けを求めるしかない!
そう思ってフランを呼ぼうと思ったがまったく返事が返ってこない
「フランちゃんならさっき鬼に呼ばれてまた弾幕してたわよ♪」
本当に自由だな・・・。ああんもう仕方ない、
「煮るなり焼くなり好きにするがいい!」 ですか。
「私のセリフを取らないでー」
――――
「だらしないわねぇぬえは」
フランが悪態をつく、私を見捨てて鬼なんかと戦っていた奴に言われたくない。
「でもぬえの鳴き声は素敵だったわよー♪」
こいしがすっきりとした笑顔で言う。
「まったくひどい目にあったよ」
「でも気持ちよかったのでしょ♪」
私は黙った、確かにさとりとこいしのテクニックは凄かったが、ってそんな事はどうでもいい。
「それより今度はフランの番だからね」
「あーそれなんだけどね、もういいかしら」
フランがちょっと疲れ気味に言う。
「ええ!?ちょっとどういうことそれ」
「さっき地底で鬼と弾幕したらもう満足しちゃったのよ」
相変わらず勝手な事を言う娘だな。
「ちょとこいし、どう思う?」
「んー私も満足かなー、ぬえで充分楽しんだし」
まったく・・・、最近の若い奴は身勝手だ。
「だいたいここでやめたら誰が一番か決まらないじゃないか」
元々誰が一番相手を怖がらせるのが上手いのか勝負したんだ。
ここでやめたら意味がない。
「一番も何も、あんた達どっちも失敗しているじゃないのよ」
「でも猫とカラスは怯えさせるのに成功したわ」
私は誇らしげに言う。
「何ドヤ顔してるのよ、その後見事に返り討ちにあったじゃない。あなたの鳴き声笑えたわ」
「ああんもう!」
せっかくぬえの威厳を取り戻せたと思ったに・・・。
そうこう話しているうちに私たちは神社の真上あたりまで飛んできたようだ、ここはあの紅白の巫女の神社だっけ。
「そういえば霊夢は何をしているのかしら」
フランがふと思い出したように尋ねる。
そういえば忙しいとか言っていたっけ、どうせ寝てるだけだと思うがついでだし見に行ってみるか。
――――
「あら?起きてるわね」
フランがちょっと驚いたように言う。
「だから忙しいって言ったじゃないのよ」
起きていたのはちょっと意外だけど特に忙しいようには見えない。
「お茶を飲んでいるだけじゃないか」
「だーかーら、お茶を飲むのに忙しいのよ」
相変わらずこの巫女の考えることはよくわからない、お茶を飲むのに忙しいなんて初めて聞いたよ。
「それで?あんまり無茶してないでしょうね」
「してないよー、逆にお姉ちゃん達に返り討ちにされちゃった。でも楽しかったわ♪」
こいしが笑顔で言う。
「あんた達はいつも楽しそうでいいわね」
「ふふっ、あなたのおかげよ霊夢」
そういうフランに霊夢は首を傾げる。
「何が私のおかげなのよ?」
「あなたが来てからよ、私やこいしの世界が変わったのは。誰に対しても平等なあなたは全てを受け入れてくれるわ。心を閉ざした私たちの心も受け入れてくれる。
だから私たちも心を開くことが出来たわ。本当にこの世界を楽しめるようになったわ。ありがとう霊夢」
そうフランが言うと巫女はフッと笑った。いやみ的な笑いはなくその顔は少し優しそうに見えた。
この巫女もこんな笑いができるんだと私は素直に思った。
私はこの中だと一番の年長者だがこの幻想郷だとまだまだ新参者だ。
こいしやフランのことすらもまだよくわかってない。もっとこの二人の事を知りたいなと、三人で微笑んでいる姿を見て私は思った。
ただ、やはり初投稿という事で、会話文が続いていて誰が喋っているか分からない、
会話文・地の文が説明的過ぎる部分がある、などの読みやすい文章の工夫が足りない事、
改行後は1文字空ける、三点リーダの使い方などの文章の基本的な書き方が出来ていないです。
こういった所を勉強して、たくさんSSを書いていけばとても良いものになるのではと思います。
また三人娘のお話が見てみたいですね。
何回か推敲しましたけどまだまだ甘かったみたいですね……。次回は気をつけます。
>>16
ありがとうございます。
基礎が出来てなかったのは不味かったですね……。
次回は読みやすいような文章を書けるよう精進します。
ぬえの羽は作者の心の声なのかw
そしてほのぼのと思いきやエロスね