Coolier - 新生・東方創想話

「この世に邪悪の手が伸びて、か弱き人らに襲い来る。涙が大地に落ちるとき、嘆きが空に響くとき、遥けき雲の彼方からいかづち纏いやって来る。悪を倒せと鳴り響く、正義の心が鳴り響く。怒り悲しみ全てを背負い、今、放たれる正義の光! その名はッ、必殺ッ……

2009/12/26 00:50:57
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サァンダアアアアアァァァァァッ、クロオオオオオォォォ―――――ゥスッッッ!!」

「ぴぃ」

 

 天空に舞う姿は竜宮の使い、『永江 衣玖』。腕を大きく横に伸ばし、頭の先からつま先まで
ぴん、と伸ばした背。その身を包む雷光は叫びのとおり十字を貌り、二条の紫電は凄まじい音と
ともに空を切り裂いている。

 それは果たして怒りなのか。だとするとその相手は大地で紅色型姉吸血鬼式地対地防御法を用いて
己が身を抱え込んでいる非想非非想天の娘、『比那名居 天子』であるのか。その光景を見ればまた
天子が我侭を言い出して雷を落とされたのだろうと納得する者もいるだろう。だが、事情はそれとは
異なる。



 ひとしきり放電したあと、ふわりと天子の側に立つ衣玖。しゃがんだままではあったがその気配を
察した天子は顔を上げた。視線の先にはいつものような穏やかな顔の衣玖。

「と、このように、師走の二十四日の夜から二十五日の未明の間、その年に天に唾吐くような酷い
悪事を為したものや、公衆の面前にあるにも関わらず不埒な愛欲模様を曝け出す連中に、文字通り
正義のいかづちを落とす存在こそ、”超人サンダークロス”というそうです。その技から名を取った
ようですね」

「あ、ありがとう衣玖。あなたが”クルシメコロシマス”を知っていてよかったわ。そんな恐ろしい催し
だったなんて……」

 どうやらクリスマスが歪みに歪んで天界へと伝わったらしい。超人サンダークロスの服装が赤い
のは、悪人や聖夜を性夜と勘違いしたような輩の血で染まっているからだ、ということになっている。
ただ、確かに衣玖に伝わるまではカップルに天誅かますような存在ではなかったはずなのだが……。

 天界はイケメンたくさんですよ、という言葉に惹かれて竜宮の使いになったはいいものの、天人どもは
悟ってて欲がなかったり、あるいは天人どうしで伴侶になったりしていて関係を進ませることができない。
それどころか不良天人のお守りを押し付けられることで更にめくるめくアバンチュールのチャンスは遥か
天竺よりも遠くになってしまった恨み辛みが関係しているのかどうか……それは定かではない、ということに
しておこう。

「ねぇ、衣玖」

 重石である不良天人の娘が、珍しく不安そうな顔を向けて言う。

「私も……あんな異変を起こして、皆に迷惑かけたから、サンダークロスにお仕置きされちゃうのかな?」

 困り果てたときに出る悲しげな笑い顔。あの異変をきっかけにして天子の交友関係は大きく改善
されたのだが、やはり心のどこかにわだかまりとして残っているらしい。それを知っているからこそ、
衣玖は優しい笑顔で答える。

「そうですね……。総領娘様は大いに反省なされましたから大丈夫だとは思いますが、もしかすると……」

「……そう、ね。いかづちで灼かれる感覚はあなたの力で十分知ってるつもりだけれど……あなたと
違ってきっと容赦なんてしてくれないわよね、サンダークロスは」

 今にも泣きそうな天子の笑顔を見て衣玖は一つ息を呑む。天子の心の底にいつも孤独と悲しみが
こびりついている。それを完全に理解することはできないが、せめて痛ましい空気を和らげたいと、
衣玖は切に思っている。

「ご安心ください、総領娘様」

「ん?」

「たとえサンダークロスが総領娘様に襲い掛かろうとも、この衣玖、永江の衣玖が守ってみせますから」

 力強さを内包した笑みできっぱりと言い切った衣玖。少しだけ呆けたような顔をしていた天子が、
少しだけ頬染めつつ、他人にはあまり見せない純真な笑顔。蓮華の花のほころぶようだと衣玖は
思った。

「ありがとう、衣玖」

「いえ、当然のことですからお礼なんて……。と、ところで総領娘様」

 少しだけ気恥ずかしくなったのか話題を変えようとする衣玖。天子は口では何も言わないが、次の
言葉を待っているような顔をのぞかせる。

「今のが恐ろしき”クルシメコロシマス”でございましたが、全く同じ日に良く似た名の”クリス・トーマス”
という催しもございまして」

「なぁに、それもまた恐ろしいものなの?」

 違う。それだと弟にフィリップ・トーマスがいることになる。それだけならばまだいいがっ。

 どうやら歪みきったクリスマスが空中分解を起こし、天界に墜落してしまったようだ。かなりの
大惨事である。もちろん衣玖も天子も己らが大きな間違いを起こしていることには気づいていない。
いないまま、話が進む。

「いいえ。”クリス・トーマス”は”クルシメコロシマス”とある意味対になっているといっても過言では
ございません。その日は、その年よい事をしていた人たちに、”聖ジャックニクラウス”という方が
プレゼント……まぁ、ご褒美ですね、そういうものを上げるということです」

「へぇ……」

 興味を引かれたのか天子の表情がにこやかになる。

「ねぇ、衣玖。そのプレゼント、って何?」

 天人にしてはあまりに即物的だが、もとより不良天人である。むしろそういう素直な部分を自分に
見せてくれるからこそ、衣玖は天子を愛しているのである。しかし、愛でも解決できない問題はある。

「それが……申し訳ありません総領娘様。無知なゆえにそれが何であるかまではお答えできません。
……”聖ジャックニクラウス”曰く”デカケルトキハ、ワスレズニィ”とのことですので、旅に必要なもの
ではないかと」

「知らないんじゃ仕方ないわね。……あぁ、もしかしたら靴下なのかも。下界でアリなんとかいう魔法
使いのベッドの脇に靴下が置いていたとか聞いたことがあるわ」

「なるほど、一理ありますね」

 推理が逆回転しているようだ。いまのところ関係ないがとりあえずアリス、『アリス・マーガトロイド』の
名前は覚えてあげてほしいところ。しかしどうやらアリスはサンタを信じているらしい。そっとしておこう。

 そんなアリスは放っておくとして、急に天子の顔に陰がかかった。衣玖が何故を問う前に、小さく
天子が呟く。

「でも、私なんかのところに、くるわけないよね」

 小さな呟きではあったが、それは狂おしいほどの苦悩が潜む言葉。衣玖の眉がハの字に下がるが、
軽々しい否定の言葉など出る由もない。天子のしたことは幻想郷の後の世にまで影響を及ぼすもの。
万が一要石が引き抜かれれば、幾多の命が奪われる大地震が起こることは確定している。その娘を
”いい事をした”などと言えるものは、勿論いない。だからこそ、衣玖は。

「おそらくは」

 偽りなく、答えた。

 そうよね、と地面に顔を落として天子が呟く。それを見ずして、衣玖は言葉を繋げる。

「けれど、”聖ジャックニクラウス”が来ない代りに、この栄えある”クリス・トーマス”の日、この、
衣玖が総領娘様のお心をお慰めする……つきまして、何かお願い事があれば誠心誠意応える、
というのではダメですか?」

 はっ、と天子が顔を上げる。そこには天子の心にかかった黒雲を吹き飛ばすような、爽やかな
表情、そして冷え切った天子の心を温める、太陽のように暖かなまなざしがあった。

 いつもいつも我侭ばかり言って困らせているはずの衣玖が、自ら我侭を聞こうとしている。それが
彼女からのプレゼントなのだろう。それを知って、思わず涙が出そうになるのをぐっ、とこらえて
笑顔で天子はこう言うのであった。









「んじゃキンキンに冷えたメッコールとネーポン1ダース速攻買ってこい」

「空気読めえええええ! ンッサァンダァァァァァッ、クロォォォ―――――ゥスッッッ!!」

「しぎゃぴいいい!?」

 稲妻が激しく天子の体を撃った。



























「じょ、冗談だったのに」

「言っていい冗談と悪い冗談があります! ……で、本当はなんと仰りたかったのですか?」

 黒焦げの天子を見ながら、心の中で、どうせろくでもないことでしょうけど、と付け加えた衣玖。
天子が困ったような、照れたような顔で、上目遣いのままポツリと呟いた。

「……あのね。今日一日、ずっとそばにいて」

 稲妻が激しく衣玖の心を打った。









 
「お任せください!!」

「何故服を脱ぐ」



   +   +   +   +   +   +   +   +   +   +   +   +   



 わしのクリスマスは26日まであるぞ(仏教徒だからクリスマスを波動何とかと間違えています)。
オッサンだけにしか分からないネタを交えつつ、オッサン、もとい、白でした。

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コメント



0.2740簡易評価
3.100名前が無い程度の能力削除
ヤバイ、天子の言葉に悶えた・・
7.100名前が無い程度の能力削除
題名が長すぎる。言いたいことはそれだけだ・・・
8.100奇声を発する程度の能力削除
天子が可愛すぎる!!

あと、題名が長すぎです…。
11.100名前が無い程度の能力削除
作者、それアリスちゃう、ロリスや。
13.90名前が無い程度の能力削除
ページ開いて一番上の茶色いスペースが太すぎるww
16.100名前が無い程度の能力削除
題名長っww

仏教における「苦裡済ます」とは…
24日と25日、子供は一人で家の中で過ごし、心身を鍛える。
その途中で一度でも泣いてしまうと「サタン」が来る。
ってけーねが言ってた。
17.100名前が無い程度の能力削除
どうでもクリスマスを葬り去りたいかあんたらはwwww
19.100名前が無い程度の能力削除
そりゃ服なんて脱ぐに決まってるよ脱がない方がおかしいうん
20.100名前が無い程度の能力削除
作者名が正方形になってるwww
幻想郷のクリスマスはどんな感じなんでしょうねぇ。
本来のしっとりムードなものかも。
23.100名前が無い程度の能力削除
アリスのところには未だ魔界の皆様がプレゼントをこっそり届けているんですねw
24.100名前が無い程度の能力削除
ネーポンは幻想入りしたけど、メッコールなら普通に俺ん家の冷蔵庫に常備されてるんだぜ?
28.100名前が無い程度の能力削除
天子のボケが予想通りすぎて吹いたw
29.100名前が無い程度の能力削除
くそ、天子が可愛すぎる
衣玖さんでなくとも一肌脱がざるを得ない
35.100名前が無い程度の能力削除
最後だけ綺麗にまとめりゃ、許されると思うなよwww
41.80ネコ輔削除
ミーハーな衣玖さんってのも珍しいが、なんか違和感ないのが実に良い。
相手がいなければわたくしなんていかがでしょう、いえ、サンダークロスは結構です。
とりあえず私がおっさんに片足突っ込んでるってことはよーく判りました。
48.100名前が無い程度の能力削除
やだ、この天子かわいい///
\キャーイクサーン/
49.100名前が無い程度の能力削除
いくてんは素晴らしい。もっと流行るべき。

アリス宅には赤い服来た人が毎年歩いて来てそうだwww
50.90名前が無い程度の能力削除
題名に負けたわ……
59.90ずわいがに削除
わしらのクリスマスはまだまだこれからじゃ……!
60.無評価名前が無い程度の能力削除
サンダークローw
61.100名前が無い程度の能力削除
てんこの「ぴぃ」でもう死んだ
64.100名前が無い程度の能力削除
負けでいい
68.100名前が無い程度の能力削除
聖ジャックニクラウスで吹いた
73.100名前が無い程度の能力削除
題名が長い!
あ、お話は面白かったです
76.90名前が無い程度の能力削除
出落ちもはなはだしいwwまあ、予想してクリックしましたがww

天子がかわいいのと、最後の落とし方が非常に巧い。
87.100名前が無い程度の能力削除
ネーポンとメッコールww
88.100名前が無い程度の能力削除
すいません、笑ってしまいました。