死に物狂いでマイケルのスリラーをトランペットで吹きまくるメルラン姉さんを目の前にして、ダンスが苦手な私は冷蔵庫の中のプリンをいつ食べようかと考えながら、正規のゾンビ振り付けを踊れるわけもなく、パラパラで踊るしかなかった。
さっきちょっとクリスマスプレゼントにリッケンバッカー325V63/12か50万円をくれと姉さんに土下座しただけだ。
そんな私にトランペットを耳元で奏でてくれたね。
姉さんは困るとすぐにトランペットを吹くんだ。それでなんでも解決すると思ってる。
幻の音を奏でる私と、幻のギターを巡った躁から始まる小夜曲。
プリンにリリカと自分の名前を書いておいたかどうかは大した問題ではなかった。
困ったら踊ればいい。
メルランサウンドで強制的に脳内麻薬がどぷどぷ沸き立たされる私の頭が出した答えだった。それが。
あいつは森近、そして霖之助。店は香霖堂。
エレキギターが私の心を鷲掴みにしていた。
トランペットを鳴らし続けるメルランを背負いながらパラパラを踊りつつ入店する私は言った。
リッケン325頂戴、何が何でも。
また来たのかい、そこまで言うなら40万でいいよ。霖之助は言った。
2万しかないんだ。私は言った。
無理だね。霖之助は言った。
メルランを投げつけた。
衝突のショックで死に物狂いで吹きまくられるトランペット。私はプリンを家に帰ったら食べようかと考えていて、メルランが演奏するブラック・オア・ホワイトをパラパラで踊るしかなく、森近そして霖之助はムーンウォーク。
メルランはよく私の買ってきたプリンを勝手に食べちゃってたよね。私が怒ると思ったのかな。誤魔化すつもりだったんだろうね。空き容器に茶碗蒸しが注入されていた事があったよ。気づかずに茶碗蒸しにカラメルをかけると、カラメルをかけた茶碗蒸しの味がするんだよ。
2万にしてよ。私は言った。
ポゥ! 霖之助は言った。くるっとターンして眼鏡を投げ捨てた。
なんか楽しくなってきた。
私はすかさず店の隅に置いてあったリッケンを手に取り、ブラック・オア・ホワイトのメインフレーズを弾いた。
霖之助は手と脚をシャカシャカ動かして、アォ! と言ってズボンのチャックを上げ下げし、股間に手をあてたまま、腰をセクシーにくいっくいっとした。
ストーブの利いた店内はすこぶる暑かった。汗が球になって弾けた。
私は髪が発汗でズブ濡れになるまで弾きまくった。魂が熟れて爆発しそうなほど弦をしごいて音を迸らせた。
霖之助も膝が立たなくなるまで踊った。ズボンのチャックが壊れてしまうほど上げ下げしたし壊れても上げ下げした。
メルランも吹き疲れて酸欠になり、青い顔でぐったり横たわっていた。ぴくぴくしていた。
三人の汗で床に水たまりが出来ていた。
私と霖之助はライブをやり終えた極度の興奮状態のまま、数限りなくハイタッチをし、際限なくハグを繰り返し、メルランはぴくぴくした。
ねえブラザー、リッケン325おくれ!
もちろんだシスター、持っていってくれ!
リッケン325とぐったりしたメルランを背負って家に帰ったら、華麗にルナサが私のプリンをカラメルかけて食べていた。
いつにも増して暗い顔でスプーンを口に運んでいた。
「このプリン……カラメルをかけた茶碗蒸しの味がする」ルナサは言った。
私はぐったりしたメルランを投げつけた。
鳴り始めたトランペットは死に物狂い。曲はビリー・ジーン。
次からプリンを買ったら絶対にすぐに食べてしまおうと誓いながら、こみ上げる熱い情動をそのままリッケンに託して掻き鳴らした。ルナサも根暗な奴が無理にハッスルする時の顔でテーブルの上にお立ち台になって扇子を振り、いつの間についてきていた霖之助は膝の関節が外れそうなステップを踏んだ。
十二月の冬の夜。二十五の日。
トゥナイト・イズ・クリスマスなのに。
ケーキも七面鳥もなく。プリンもどきだけが、ルナサのボディコン盆踊りと霖之助のビリージーンステップによってテーブル上でぷるぷる孤独に揺れていた。私たちには必要だった。ケーキとかシャンパンとかが。
紅魔館のクリスマスパーティに行こう。
私たち四人は帽子を左手で目深に押さえ、右手をまっすぐ水平に伸ばし、片膝を持ち上げたつま先立ちのポーズで、紅魔館の門番の前に降り立った。
あなたたちには招待状を出していないはずですが。門番が言った。
何故出さなかったんだ。ルナサがポージングしたまま言った。
去年みんな吐くまで踊らされたので。門番が言った。掃除大変だったんですよ。
ルナサが指を鳴らすと同時に、私はリッケンを頭痛がするほどハウリングさせてから、メルランを投げつけた。
ミュージックスタート。今夜はビートイット。
死に物狂いのトランペットが門番の脳みそに脳内麻薬をどっぷどっぷ溢れさせれば、門番は途端に私たちと同じポーズを取った。彼女は涙目だったが、ビートに合わせて肩を揺らし、館へと続く石畳を滑るような足裁きで私たちを先導しダンシング&ウォーキング。
そしてエントランスに仏頂面で待ち構えていた咲夜がナイフを投げてくる前に、美鈴が問答無用でメルランを投げつけ、周りにいた妖精メイドの数人を巻き込んだりしちゃって、今度は咲夜がメイドを伴って先頭になり仏頂面のまま手足を気持ち悪いくらい活き活きとシャカシャカさせつつ、長い長い廊下を移動、途中でパチュリーとレミリアとフランドールと遭遇しメルランが投げられ、私ら全員ゼログラビティ状態な超前屈で飛行しながら立食パーティ会場に飛び込み、大ホールにトランペットとギターのサウンドを響かせれば、霊夢 魔理沙 ルーミア チルノ レティ 橙 アリス 妖夢 幽々子 藍 ミスティア 慧音 てゐ 鈴仙 永琳 輝夜 妹紅 萃香 射命丸 メディスン 小町 映姫 静葉 穣子 雛 にとり 椛 早苗 神奈子 諏訪子 サニー ルナ スター 衣玖 天子 キスメ ヤマメ パルスィ 勇儀 さとり 燐 空 こいし ナズーリン 小傘 一輪 雲山 村紗 星 白蓮 ぬえ、が一斉に呆れるくらい髪を振り乱して素早くスピンを決め、それぞれ手にしていた飲み物や食べ物の皿と一緒にホァオ! と帽子を放り投げた。
メリークリスマス。
なんなんだよこれはwって言うべきだって気がしたのでなんなんだよこれはwと言っときますね
リリーが絶賛春告げ中の幽香とリグルにメルランを投げつけたい。
メルランを投げつけよう
すごい勢いに乗せられ、一気に読んでしまいました!
それよりもさっきからスリラーが脳内再生されて止まないんですがどうしたらいいですか?
「……いいわリグル。夢幻館(ウチ)のパーティーにいらっしゃいな。そこの妖精達も」
メルランは投げつけるモノwww
おりんりんがいるのなら
旧地獄にノリのいいのがいっぱい居た筈
これは横スクロールシューティングゲーム、R(リリカ)-TYPEの前フリなのかと思ったが、
スペルはLyricaだった。
……いや、このSSを読んだら言わなきゃいけないような気がして
・・・変なフレーズが頭に張り付いて困る。
どうしてこんなの書けるんだw
しかし、ルナサまではじけるとは世も末だなwww
でも爆笑したから俺の負けだ
とりあえず踊ればいいんですね!? やっほう!
このハイテンション、やばいなあ。
キーボードに紅茶が少々かかり完璧に負けたことを悟った
このリズム感。