文々。新聞より抜粋。
異変退治のツートップともいえる、博麗霊夢と霧雨魔理沙が、何者かの手によって氷漬けにされた。
現在、幻想郷は異変と言って良いくらいの寒波に襲われており、この事件はおそらく、異変の犯人が起こしたものと見て良いだろう。
被害者二人に代わって異変解決を担当することになった八雲紫氏は、今までの異変とは異なる過激な手口に、「戸惑いを覚えてはいるけど、これは幻想郷の原理を危うくしかねない行いであり、毅然とした態度で立ち向かわなくてはならないわ」とコメントしている。
「さっむ」
博麗霊夢は、風のうるささに目覚めて二秒でそう呟いた。
もうそろそろ昼間だし、いい加減起きるかと布団を剥いだら、身も凍るような寒さに晒されたのだ。慌てて霊夢は布団に戻る。
「全く、何なのよ」
昨日までは比較的暖かかったというのに、今日のこの寒さときたら異様である。一体何だ。霊夢は理不尽に覚えて、しかめっ面になる。
ここまで寒くては起きて何かする気にならないからと、今日は神社の仕事も全部放り出して寝ようかと思って、霊夢は再び眠ろうとした。
が、その矢先、勢いよく縁側に続く障子が開かれて、外の冷たい空気が室内へ一斉に流れ込んできた。
「オイ霊夢! ……やっぱり寝てるんだなお前は」
「ねぇ、寒いから閉めてよ」
言われて、騒々しくやって来た魔理沙は障子を閉めた。厚手のコートにマフラー、耳当てまで付けた重装備だ。降っているのだろうか、帽子のつばの部分には雪が乗っかっていた。
魔理沙は霊夢に近づくと、人間芋虫を形作っている布団を、一息に剥いだ。
「ちょ、寒いじゃない!」
霊夢は慌てて布団を取り返そうとした。しかし魔理沙は布団を部屋の隅に放り投げると、霊夢の肩を掴んで言う。
「霊夢、お前ちょっと外を見てみろ」
「な、何よ」
「いいから」
魔理沙の剣幕に押された霊夢は、寒い寒いと震えながら、魔理沙が閉めた縁側に続く障子を開いて外を見る。
「うわッ」
霊夢は驚いた。
外は吹雪だったのだ。それも並大抵のものではない。霊夢が今まで見てきたものとは比べものにならないくらいの勢いだった。風で障子が揺れている。
道理で寒いわけだと納得し、そして霊夢はさらに驚く。縁側とほぼ同じ高さになるくらいまで、雪が積もっているのだ。こんな積雪は初めてのことだった。
幻想郷はどちらかと言えば寒いほうだが、それでも雪が積もることは多くないし、積もったとしても子供が喜ぶ程度でしかない。それがこの有様である。たぶん、幻想郷の歴史の中で初めてのことだろうと、霊夢は思った。
実際の所、現状はそんな暢気なものではない。このままでは、いつ雪で生き埋めになるか分かったものではない。
最悪、夏に新しくしたとはいえ、屋根に積もった雪の重みに耐えかねて、神社が倒壊するかもしれない。
が、霊夢は今、そんな事を考える余裕がなかった。それくらい驚いていたのである。
何より寒いので、霊夢は慌てて戸を閉める。凍えてしまいそうな寒さだった。
「どうだ、霊夢」
魔理沙は声をかける。
その言葉の意味を判断しかねて、霊夢はそのままオウム返しする。
「どうだ、って、何が?」
「異変だよ、異変。ここまできたら立派な異変だろう。だって考えてもみろ、今までこんな吹雪があったか?」
魔理沙の来訪の意図を、霊夢はようやく掴んだ。つまりは、この大雪を異変として捉えているのである。
そうして吹雪の中をわざわざ飛んできたということである。だが皮肉なことに、霊夢の勘は、全く働いていなかった。
勘が働いていない以上、これはただの大雪、ということである。しかし霊夢は、それにしては妙な違和感を覚えてもいた。
異変では無いのだが、かといって、普通の降雪でもない。二つは矛盾しているわけで、霊夢は奥歯に物の挟まったような感覚を覚えた。
「これ、異変じゃないわ」
「はァ!? ……なんてこった、飛んでくるだけ損だったってことか?」
「いや、でもねぇ……なんというか、こう、異変じゃないとも言い切れないような感じが……いや、違う、異変では無いんだけど……うーん?」
「おいおい、一体何を言ってるんだ? 異変なのか?」
「いや、異変では無いんだけどね……」
魔理沙は、しっかりしてくれよと言わんばかりの視線を霊夢に飛ばす。だが、いかな霊夢とて、分かっていないものは仕方がない。
何せよく分からないのである。頼れる勘は、ものすごく曖昧な返事を霊夢に投げる。「異変では無いがこれは変だ」と。
「うーん……」
「お困りのようね?」
霊夢のものでも魔理沙のものでもない声が、どこからともなく響いた。
あまりに突然のことだが、二人とも慣れっこなので、驚きはしない。
「紫、いつから居たのよ」
「そうねぇ、魔理沙が入ってきたあたりからかしら」
「最初からじゃない」
先ほどまで何もなかった所に、八雲紫が立っていた。神出鬼没の名を欲しいままにする彼女ならでは、である。
霊夢は紫に問いかける。
「あんたは分かってたりするの? 犯人が」
「いいえ、ちっとも。……ああ、ちなみに私ではありませんわ」
「何だ、てっきり知ってるのかと思って期待したじゃないか」
魔理沙は不満そうに口をとがらせる。だが、紫は余裕のほほえみを見せていた。
「それは貴女もじゃないかしら? この天気の中を飛ぶだなんて、正気の沙汰とは思えないのだけれど」
「む……」
そして紫は霊夢の方を向くと、言う。
「そうねぇ、今回は私も手伝わせてもらうとするわ。この吹雪じゃあ、まっすぐ飛ぶのも大変でしょう? まぁ、力尽くで飛んじゃう子も居るけど」
紫は魔理沙に視線を流しながら――魔理沙もそれに視線で返したのだが、どうも形勢は紫にあるようだった――続ける。
「だから、私の能力であちこち移動するのを手伝ってあげるわよ。そうでもしなきゃ解決できないわ、この異変は。……っと、異変かどうか分からないみたいだけど、そういうことにしておくわ」
「へぇ、あんたがねぇ、珍しい」
霊夢が返すと、紫の顔から笑みが消えた。
「私もねぇ、この雪にはうんざりなのよ」
「なんだ、お前のとこ何かあったのか?」
「ウチの屋根がね、雪の重みで、ね。まったく、とんでもない事をしでかしてくれる輩が居たものだわ――異変の起こし方っていうのをしっかり教えないといけないわね?」
そう言うと紫は、二人が肝を冷やすような笑みを見せた。
伊達に長いこと生きていないのである。
「ホント、敵にしたくないわね……まぁいいわ。とりあえず近場から当たりましょうか」
「あ、ああ。そうだな」
直視したくない笑みを浮かべる紫に、霊夢は声をかける。
「それじゃあ紫、とりあえず人里から回ろうと思うんだけど、いい?」
「ええ、当たり前田のクラッカーよ」
再び、文々。新聞新聞より抜粋。
なお、八雲氏からは、このようなコメントもいただいた。
「全く、許せないわ……こんな鬼モーレツな真似をするだなんて、やまだかつてない異変を起こしたイカレポンチを絶対見つけ出さないと。しかも、二人だけを狙って私はアウトオブ眼中。こんなメンチの切り方がある? 冗談はよしこちゃんよ、トンデモハップンも良いところだわ。藍の準備もバッチシだし、犯人を見つけ出してギャフンと言わせてみせるわよ」
ちょっとおこたにもぐってきますね
分からないままの方が良い事もあると思った。
あれ?俺今凄いギャップを感じてる
ごめん紫様、でも無理(キリッ 我が家では未だ前田式クラッカーは現役です(母上が……
あと、そこフラワーじゃなくてブッダw
(知ってる人、どれくらいいるんだろう)
紫さま気づいてー!異変の原因はあんたのその・・・あれ?ふさふさした尻尾の持ち主が来たようだ。
それは秘するが華かと。
駄洒落は永遠に不滅です。うまかったらうしまけるんです。
キビシィー!