「何やってるんですかっ!?」
守矢神社に、東風谷早苗の叫び声が響いた。
「何って……カレーを食べようと、準備をしていただけじゃないか」
悲鳴の原因、八坂神奈子は、一体何がいけないんだとばかりに、そう答えた。
「その手に持っているものですよ! 一体何のつもりですか!?」
「何のつもりって……カレーにマヨネーズかけるつもりだよ。何かおかしいか?」
早苗は、ふらり、とぐらつく頭を必死に支え、思考を整理した。
カレーにマヨネーズ?
ありえない。
どれくらいありえないかって言うと、いっぱいありえない。
思わず頭が残念な子になるほど、ありえない。
待て。もしかして『カレーニマ・ヨ・ネーズ(2050~2138)』の聞き間違えだったのではないか?
うん、それなら納得ができる。……できるか? できねーよ。
でも、とりあえずできるということにしておこう。
まだ誕生すらしていない未来人の名前とかだったら納得できる。
うふふ、その頃の私は、きっと誰よりも弾幕勝負が強くなって、里の人間の信仰の対象となっているのだわ。
ぶちゅううううううううう。
「ぎゃああああ! 現実が襲いかかってきた!」
「なんだい、さっきからうるさい子だねえ」
「うるさい!? そのマヨネーズをかける音の方が、よっぽどうるさいです! やめてください!」
「早苗……幻想郷は、全てを受け入れる。人間も、妖怪も、幽霊も。そう……カレーにマヨネーズも!」
「格好良く言わないでください!」
「いいじゃんかよー。好きなんだからさー」
早苗は、神奈子を睨みつけ、はっきりと言う。
「神奈子様……私はこの世で絶対に許せないものが、三つあります。一つ、コップの水にスプーンを入れること。二つ、カレーにマヨネーズを入れること。三つ、二つしかねーじゃん、って突っ込みを入れる輩です! あと、シーフードカレー」
「シーフードカレーは許してやってもいいんじゃ……」
四つじゃん。とは突っ込めなかった神奈子であった。
「あはは。早苗の、カレーに対する情熱も、すごいものがあるねぇ」
それまで傍観に徹していた諏訪子が会話に入ってきた。
「駄目だよ神奈子。せっかく早苗が、おいしく作ってくれたんだから、マヨネーズなんかかけたらさぁ」
「諏訪子様、わかってくれますか」
「そりゃあ、もちろんだよ。早苗が作ってくれたカレーだもん。おいしく食べたいよ」
「諏訪子様……ありがとうございます」
「なんだよぉ。私だけ仲間はずれかい?」
「しょうがないじゃないですか。神奈子様が変な食べ方するんですから」
「そうそう。全面的に神奈子が悪いよ。カレーをおいしく食べるには――」
びちゃびちゃびちゃびちゃ。
「――これだよ」
そう言う諏訪子は、カレーに醤油をかけていた。
「あんたも何してんだあああああっ!!」
守矢神社に、本日、二度目の大絶叫が響き渡った。
「よそのうちのカレーを食べにいきましょう」
翌日。早苗は二柱に向かい、そう告げた。
カレーにマヨネーズや醤油をかけることは普通だと、頑なに主張する二柱を納得させるために考えた結論が、それだった。
「どこの家庭も絶対にやってませんよ。そんなカレーレイプ」
「醤油はどこもやってるって。マヨネーズはありえないけど」
「醤油はないけど、マヨネーズはやってるだろう」
バチバチと火花を散らす二人。
なんだか情けなくなってくる早苗だった。
はあ、と溜め息を吐き、二人を促す。
「じゃあ、行きますよ」
そうして、三人はカレーを求め、飛び立っていった。
三人が、まず向かったのは、紅魔館であった。住人数が多い方が、より多くのカレーの食べ方を知ることができると思ったのだ。
「こんにちわー」
早苗は、門の前にいる美鈴に挨拶をする。
珍しい客に、美鈴は眉を上げて驚いたが、すぐに明るい笑顔となり、それに応える。
「こんにちわ! 珍しいですね。あなた方がいらっしゃるなんて」
「カレーを食べにきました」
「はい? ……ど、どういうことでしょうか」
早苗は慌てて続ける。
「ああ、すみません。言葉が足りませんでしたね。詳しく説明します」
「お願いします」
「私たちはー、咲夜さんが作るカレーをー、食べにー、来ましたー」
「ゆっくり言っても情報増えてませんから!」
どうすればいいのか、全然わかんねぇ。そう思った美鈴は、三人を館内へ案内し、後を咲夜に任せることにした。丸投げである。
早苗は、さっそく咲夜に事情を説明した。
「つまり、後ろの二人が、自分の食べ方は普通だと主張するものだから、他の家庭の食べ方を知ろうと思ってきたわけね」
「そういうことなんですよ」
「そして、いつも通りに食べてほしいから、紅魔館のみんなには事情を説明せずに事を運びたいと」
「はい」
咲夜は困ったように笑いながら言う。
「あなたも大変ね」
「いえ、そんなことは……はい」
「はい、って!?」
「はい、って!?」
軽くショックを受ける二柱。
「まあ、別にカレーを作るのは構わないわよ。最近作ってなかったしね」
「ありがとうございます」
あ、と何かに気付いたそぶりを見せる咲夜。
「でも、お嬢様に今日は花まるハンバーグって言っちゃってるのよ。あなたたちから事情を説明してもらえる?」
「あ、はい。わかりました(花まるハンバーグ……?)」
一同は、レミリアの部屋へと移動した。
コンコン――
レミリアの部屋の扉をノックする。中から、入りなさい、という言葉が聞こえてきた。
早苗は、恐る恐る扉を開けた。
「……し、失礼します」
「あら、ルイ……山の巫女じゃない」
「今なんつった? 今なんつったオイ?」
「ぎゃあ! 顔が怖い!」
「まあまあ、落ち着いてください」
キレる現代っ子、早苗。それを宥める咲夜。早苗の鬼のような形相を見たレミリアは、ぷるぷると蹲って頭を隠していた。
一悶着の末、コホン、と咳払いを一つ、早苗は話を切り出した。
「実は、お願いがあってきたんです」
「ほう。言ってみなさい」
威厳たっぷりに言うレミリアだったが、帽子の上からでもわかるくらいに、一部が腫れ上がっている。目には涙が、じわりと浮かんでいた。
「実は、ご相伴に預かりたいのですけど……」
「なんだ、そんなこと。別にいいわよ」
「いえ、それでですね、夕飯の内容をカレーにしてもらいたいのですよ」
「いやだーッ!!」
レミリアの目の前の空間に、ぽっかりと穴が開いた。
「今日は花まるハンバーグなのー! ぷるぷるの目玉焼きを乗せるのー!」
じたばたと手足を忙しなく動かすレミリア。もはやカリスマなど微塵も残ってはいなかった。
「そ、そこをなんとか! カレーに花まる乗せればいいじゃないですか!」
「それもそうね」
「はやーっ!?」
思わず早苗は、ずっこける。
「そうと決まれば善は急げよ。咲夜、PADカレーの準備をしなさい」
「PADカレー!? なんですかその歯に優しくなさそうなカレーは! 使い古されたネタはやめておけとあれほど――!」
「かしこまりました」
「いや、かしこまりました、ってあんた!」
レミリアは、呆れたような顔をし、早苗に向かって言う。
「あなた、何か勘違いしてるんじゃないの?」
「か、勘違い?」
「PADカレーとは、パーフェクトアンビリーバブルデリシャスカレーのことよ」
「あ、ああ、なんだ、そうだったんですか。私はてっきり……」
ほっ、と安堵の溜め息を吐いた早苗であった。
「それでは準備を致します」
そう言うなり、するする、と衣服を脱ぎ始める咲夜。
「ねえ、パーフェクトアンビリーバブルデリシャスカレーですよね? ねえ!?」
「咲夜、レディーなら着替えは、人の見てないところでしなさい」
「わかりました」
「わっ、消えた」
すっ、と音もなく、その場から消える咲夜。ひらりとトランプが一枚落ちた。意味あるのか? これ。
残された早苗は、トランプを眺めていたが、すぐに、はっ、と気付く。
「……ていうか! 時を止めて移動するくらいなら、時を止めて、ここで着替えちゃえばいいのにッ!」
戻ってきた咲夜の姿を見て、早苗は言葉を失った。
――露出を一切許さない、そのしなやかな肢体を覆う衣服。
――流れるような髪を柔らかく包み込む淡雪のような帽子。
――乙女の指先を頑として守る、ゴム手袋。
その姿は、そう――
「給食のおばちゃんンンンンン!?」
むっ、とする咲夜。
「何か問題でも?」
「いや、問題っていうか……ファンが減るっていうか……」
咲夜は、くるり、とその場で小さく回る。
しゃらん、と煌めきが舞った。埃も舞った。
「これぞまさしく、白衣の天使じゃないですか」
「自分で言わないでください! しかもそれってナースに対して使う表現ですからね!? 給食のおばちゃんに対して使う表現じゃないですからね!?」
はぁはぁ、と肩で息をする早苗。
「何か大変そうですね」
「あなたのせいです! はあ、もういいです。早くそのPADカレーとやらを――」
そこで、早苗は、ん? と思った。
「――あれ? アンビリーバブルのスペルってUから始ま――」
――瞬間、首筋に、ひたり、と冷たいものが触れた。
「ひぁっ」
(――そこまでです。お嬢様は、英語の点数が悪いんです。余り細かいことに突っ込まないでください)
(英国出身なのに!?)
何か納得がいかない早苗であった。
「では、早速作ってまいります」
そう言うと、咲夜は厨房へと向かって行った。
忙しないやり取りのせいか、早苗は疲労の表情を浮かべた。
「はあ……」
「あはは。何だか、お疲れ、早苗」
「諏訪子様……まあ、ご相伴に預かるのですから、これくらいの苦労はしないといけませんよね」
「料理とは全く関係ないところで苦労してたけどね」
「それは言わないでくださいよ、神奈子様……」
そんなやり取りをしていると、厨房に向かったはずの咲夜が戻ってきた。
不思議に思った早苗は、咲夜に訊ねる。
「あれ、どうしたんですか? 咲夜さん。何か忘れものでもしたんですか?」
「出来ましたわ」
「え?」
「カレー」
つい、とテーブルを指差す咲夜。つられてその先を見やると、本当に人数分のカレーが置かれていた。
「ええっ!? い、一体……?」
「私にとって、煮込む、や、置かす、といったものはありません。そうしようと思った時、その行動はすでに終わっているのです」
「は、はあ……」
わけがわからない早苗は、そう言う他になかった。
「どうぞ皆さん。おかけになってください」
一同は、言われるままに席に着いた。
「私の部屋なんだけど……」
レミリアの呟きは、見事に無視された。
「わあ、おいしそう」
早苗は、思わず声を上げた。
真っ白に輝き立つライスと、独特の香りを放つカレー。とろとろに煮込まれた野菜、肉。立ち昇る湯気。それら全てが、自分の中にある本能を、どうしようもなく掻き立てる。
――――食べたい。
それが全てであった。
今すぐにでもがっつきたい衝動を必死に押さえ込み、咲夜の顔を見やる。咲夜は、どうぞ、と言うように、にこり、と答えた。
それを合図に、いただきます、という声が上がった。
早苗は、ライスとカレーを半々に、スプーン一杯に掬い、口へ入れた。
瞬間、強烈な風味が鼻を突き抜ける――――ということは、なかった。
独特の風味は、確かにある。本場のカレーよろしく、コリアンダー、カルダモン、ナツメグなどの香辛料は、自身の存在をこれでもか、というほど主張している。しかし、それらの香辛料たちが、全く喧嘩をしていないで、上手く調和しているのだ。よく、一晩置かすと角が取れる、などという言い方をするが、このカレーに於けるまろやかさは、まさしくそれであった。
早苗の口から、自然に、素直な気持ちがあふれ出る。
「おいしい……」
にこり、という咲夜の笑顔は、完璧なメイドから出たものではなく、一人の少女のそれであった。
「本当においしいです、これ! どうしたらこんなにおいしいカレーが作れるんですか?」
「特別なことはしていません。隠し味を効果的に使っただけですよ」
「隠し味って?」
咲夜は、ぴと、と人差し指を口に当てると、茶目っ気たっぷりにウィンクをしてみせ、言った。
「隠しているから、隠し味なのですよ」
「――――」
咲夜のその仕草は、同性の早苗からしても、心を奪われてもおかしくない可愛らしさがあった。
「……なんてね」
「はうぅ……」
おどけるように、ちろっと舌を出す咲夜。
咲夜の連続技に、早苗の頭は沸騰寸前だった。
「生クリームとソースを、隠し味に使ったのですよ。生クリームを入れると、まろやかになり、ソースを入れると、味に深みが出るのです」
「な、なるほど……」
早苗は、茹で上がりそうになった頭を、ぶんぶんと振り、再びカレーに向き合った。
今になって、一口目のカレーの辛味が、じわりと舌に広がってくる。意識し出すと、結構辛い。しかし、生クリームのおかげか、ぴりぴりと舌を刺激するような辛さではなく、舌から胃へ、胃から体へ、ゆっくりと暖まっていくような、優しい辛さとなっている。
おいしい――
カレーがおいしい。それはもちろんなのだが、素材の一つ一つが味わい深い。
玉ねぎは、小麦色になるまで、しっかりと炒めたのだろう。微かに、しかし確かに舌の上を、バターの風味が流れていく。
じゃがいもは、口に入れたら、ほろりと崩れ、決してライスの邪魔はしない。
人参は、香辛料やバターに負けずに、そのものの甘さを存分に主張し、上手いこと辛みにブレーキをかけてくれている。
そして、肉。牛肉の、どっしりとした歯ごたえと共に、ひき肉がカレー全体の味わいを、より深くしている。
この、小さな皿の中にあるのは、宝の山だ。
おいしく食べてもらいたいという真心から生まれた、技術の結晶。
たかがカレー。されどカレー。
守矢神社の三人は、カレーに対する考えを改めていた。
「いや、本当においしいわ、これ……」
「本当ですね。同じカレーなのに、ここまで差が出るものなんですね」
「おかわりが欲しくなるね~」
三人の声に、レミリアは、ふふん、と笑みを漏らす。
「うちのメイドの優秀さがわかったかしら?」
「ああ。言うことないよ」
「憧れますねえ」
さて、という声と共に、レミリアは懐から何かを取り出した。
ぶちゅううううううううう。
「何してんだ!?」
「何してんの!?」
「何してるんですか!?」
レミリアの奇行に、三人は驚愕の声を上げる。
「何って……ケチャップかけてんのよ」
対するレミリアは、それが常識だろう、とでも続きそうな口調で言ってのけた。
「なんでこっちが"変な人を見るような目"で見られなきゃいけないんですか! カレーにケチャップって、どういうことですか! 逆転の発想にも程があります! 『よし、このカレーおいしいから台無しにしてやれ』っていうくらい斜め四五度の発想です!」
「ごちゃごちゃとうるさいわねぇ。吸血鬼がケチャップ使わないでどうすんのよ」
「アメリカのブラックジョークじゃないんだからっ!」
早苗は、自慢のカレーを台無しにされてしまった咲夜の心境を慮った。
さぞ無念であろう。しかも、やったのは自身の主。文句も言えまい。
そう思っていたのだが、見やった咲夜の顔には、憤りの表情が浮かんでいた。
「……お嬢様。恐れながら、申し上げます。カレーにケチャップをかけるとは何事ですか」
およ?
てっきり、咲夜はレミリアに忠実なメイドだと思い込んでいたが、言う時は言うのかもしれない。
早苗は、すごい勇気だなあ、と感心しながら、咲夜の言葉の続きを待った。
「カレーには、ケチャップではなくて、ニンニクですよ」
「って、あんたも違うわああああ!!」
守矢神社の三人は、次のカレーを目指して、ふよふよと飛んでいた。
「まさか紅魔館にケチャラーがいたとは……。しかも吸血鬼の主人に、ニンニク勧めるって、あの人、意外に馬鹿なの?」
早苗は、計算外だったとばかりに、うなだれた。
「やっぱり、どこの家庭も変わった食べ方があるもんなんだって、早苗」
「ありません! あれは例外中の例外です! ――ていうか神奈子様、その発言からして、自分が変わってるって認めてるじゃないですか!」
「空がきれーだなー」
殴りたい。
「で、次はどこに行くの?」
諏訪子が早苗に訊ねる。
「博麗神社に行こうと思います」
霊夢ならば、カレーに余分なものを入れる余裕もないだろうし(かなり失礼)神様相手にも、ずけずけと、ものを言ってくれると思ったのだ。
「博麗神社のカレーかぁ。……雑草とか入ってなければいいけどね」
神奈子も神奈子で、かなり失礼なことを言っていた。
「うちのカレーが食べたい?」
「はい、そうなんですよ」
「なんでまた?」
「えぇっと……」
飽くまで、普段食べているカレーを食べたいのだ。全てを語るわけにはいかない。
「ほ、ほら、私たちって幻想郷に来て日が浅いじゃないですか。外の世界ではカレーを食べることで、その人のことを理解するという風習があったのですよ!」
「いつから日本はインドに……?」
神奈子が、ぼそっと呟くが、早苗はそれを目で黙らせる。
霊夢は特に疑問に思うでもないようだった。
「ふーん。変わってるのねぇ。外の世界って」
「あ、あはは……」
「まぁ、別にいいわよ」
「本当ですか!?」
「何よ、大げさねぇ。――ちょっと準備してくるから待ってて」
「はい」
そう言って、霊夢は台所へと向かっていった。
「どんなカレーか楽しみですね」
「あれでいて、結構、料理は上手いらしいからね」
「ほぇー。そうなんだ。まぁ、ずっと一人で暮らしてればそうなるかぁ」
そんなことを話していると、霊夢が戻ってきた。
「あれ、もうできたんですか? ――って、そんなわけないですよね。咲夜さんじゃあるまいし」
霊夢は咲夜みたいに、時を止めたり、進めたりすることはできない。こんな短時間でカレーを作ることなんてできるはずがないのだ。
「さ、行くわよ」
ふわりと浮かぶ霊夢を慌てて追い、早苗は訊ねる。
「ど、どこに行くんですか?」
「さあ?」
「えええ……?」
霊夢は、そう答えると、何かを探しているようなそぶりを見せながら、ふわふわと飛んでいく。手には何かが入った風呂敷包みを持っている。
しばらくの間、ふよふよと、あっちへこっちへ飛んでいた霊夢だったが、突然、かっ、と目を見開き、一直線に進み始めた。
「な、なんなの? もう!」
早苗たちは、わけがわからないながらも、霊夢を追うしかなかった。
「見つけたわ」
「え、何がです?」
「あの家よ」
霊夢が見下ろした視線の先には、一軒の家が建っていた。
「あの家がどうかしたんですか?」
なんの変哲もない日本家屋である。
「わからないの? よく嗅いでごらんなさいよ」
「んぅ?」
すんすん、と鼻をひくつかせる早苗。すぐに霊夢が何を言っているのかはわかった。
「カレー、ですね」
「そう、カレー」
霊夢は、風呂敷から容器を取り出し、三人に渡す。
「はい。ご飯」
「ま、まさか……」
嫌な予感がした。
「いただきまーす」
「ああああああん! やっぱりィィ!」
霊夢は、その家から立ち込めるカレーの匂いをおかずに、ご飯を食べ始めた。
がつがつとほうばる霊夢。呆気に取られる守矢の二柱。涙が止まらない早苗。
他人の不幸は蜜の味というが、ここまでくると笑えない。
「神奈子様、諏訪子様……」
「……ん。何だい? 早苗……」
早苗は、二人に向かって語り出した。
「私が間違っていました。マヨネーズだろうと、醤油だろうと、ケチャップだろうと、ニンニクだろうと、なんだっていいんです。カレーがあるだけで、それだけで幸せなことだったんです」
あふれる涙を止めようともせず、早苗は言った。
「うん、そうだね……」
「私たちは、なんて贅沢だったんだ……」
そう言った二人の顔は、どこまでも落ち込んでいた。
三人は、霊夢からもらったご飯に手を付ける。
博麗神社のカレー(?)は、どこまでも涙の味がした――――
終わり
霊夢をここいちに連れて行きたくなった。
ライス700グラム手仕込みカツカレー食わせてやりたい。
ていうかこんな時間にここいちいきたくなった
そして咲夜さんは兄貴のように格好良い。
私の作品に感想を残していただき、ありがとうございました。
読ませて頂きました。
ちなみに私はカレーには生卵派です(ぇ
ギャグにしてはちょっとお堅い印象がありました。
一つ一つの情景描写が丁寧過ぎて、逆にそれがギャグに対する妨げになっているような気がしました。
それで、私はあんまり笑えませんでした。
完全に私の主観で申し訳ありません……。
お気に召さなかったらどうぞ聞き流して下さい……。
ただ……読んでてカレーが食べたくなってきたー!w 食の描写が相変わらず上手ですね。
それと自分の好みが少し諏訪子様と似てて驚きましたw
初日のカレーって味が物足りなくて、ついスプーン一さじ醤油を混ぜてしまうのです。
マヨネーズは許さん。
所々に出てくる二次設定が、なんか無理やり笑いを取りに挿入しているような唐突感がぬぐえなかったのでこの点数です。花まるハンバーグで+10点。
あとは醤油やケチャップの類は隠し味的な使われ方で用いられることが多いので
もっと奇を衒った物のほうがはっちゃけてた気がします。
後は我が家では隠し味としてウスターソース、インスタントコーヒーを少々。
マヨネーズ以外はソース類にこだわらない方が許せなくなるんじゃないでしょうかねw
前作のアイデアが逸脱してただけに、肩透かしを食らった気分でした。
なんで?って聞かれるとケチャップにソースとマヨネーズを入れて食う私の気持ちを考えろって感じです。
嘘です。
もうちょっと、カレーの描写みたく、ギャグも練りこんで欲しかったです。
次回も期待しています。
カレーにヨーグルトを入れて、つくりたてのカレーを一瞬で「一晩寝かせたあの味に」してしまう人が通ります。
葉月さんのSSは今回初めて拝見するのですが、流れるような綺麗な文体に感服しました。
やばい…話を読んでてカレーを食べたくなってきた。
素晴らしいインパクト、ナイスです。
でも給食衣装の神奈子様が作るマヨカレーなら食べてみたいかも!
あと、お嬢様の故郷はルーマニアで通ってるみたいですよ。あくまで、ツェペシュの末裔という二次設定ですが
そんな感じのタイトルの本を思い出しました。(持ってはいませんけどorz買いたかった…。
ビックリするほど今カレーが食べたくなってるw
チキン南蛮カレーなるものもあるようで、意外とマヨも悪くは無いのかも?
私は、梅干です。
うーん、確かに物足りない気分があるのは
あなたの作品が神憑ってるからですよぅっ!
あー、そういえば、ヴラド・ツェペシュの血は引いていないとか仰ってましたから。
何人かは不明なんでしたね。
ところで早苗さんは何か入れるんですかね?
常識にとらわれない解答が待っていそうです。
それにしても、葉月さんの作品を読むとお腹がすいていけないw
霊夢のカレーに泣いた
こんばんは
福神漬けからっきょうかなどちなみに私はサラサラ派で一味と胡椒をかける辛党
です。でもコックの人曰く最初は何もかけないで食べてもらった方が嬉しいとのことです。
ただギャグとしては中途半端
とても面白かったです。咲夜さんかあいいな。
ウチん家のカレーは、野菜も肉も入ってないかわりに
呪われてんのかってぐらいジャガイモを入れます。ジャガonlyです。
こってりドロドロしてて美味しいですよ。お試しあれ!
カレーに牛乳も結構いけますよ!
霊夢見て、かつて「どっ○の料理ショー」を見ながらご飯を食べていた自分を思い出しました。
霊夢のカレー事情が悲し過ぎるw
個人的にとても面白くて楽しめました。ギャグ、難しいとは思いますが、また挑戦してみてください!
ちょっとインド行ってくる
また葉月さんのギャグSS期待してます。
わあ、もの申された!
もっとやります!
>10
ここいち、おいしいですよね。
少食なので、ノーマルの量で残してしまいましたが……。
(友達に上げたので、もったいなくはない。ここ重要)
>11
ありがとうございます!
咲夜さんは格好よくも書けるし、可愛くも書けるので、幅広く使えます。
>早草さん
生卵……だと……?
ギャグというジャンルは、情景描写も、普段のそれとは変えなくてはいけないのですね……難しい。
聞き流しなんて、とんでもない。そういった意見は非常に貴重です(韻を踏んでみた。
お互い、切磋琢磨していきましょう!
>13
そうですね、紅魔館の後に、もう一家庭くらいあってもよかったかも。
オチが唐突すぎました。反省反省。
>食の描写が相変わらず上手ですね。
そう言ってもらえると本当に嬉しいですw
あと、から揚げにマヨかけて、カレーに乗せるとおいしいですよ(´・ω・)
>14
そうですね。定期的に笑いどころを入れようとして、二次設定に走ってしまった感があります。
地の文章や、掛け合いで笑いを狙えるようにならなくては……。
>15
くうう、なぜ「寝かす」という言葉を思いつかなかったんだろう……。
そうですよね、普通「寝かす」ですよね。
インスタントコーヒーですかー。どんな味になるんだろう。今度試してみます!
>設楽秋さん
どうもすいませんでした(響風
嘘です。申し訳ありませんでした。
今の実力では、これが精一杯でした……。
次は、もっと頑張りたいと思います。
>あるとさん
お褒めに預かり、光栄です。
文体、綺麗なんですかねー。自分ではわかりませんw
以前は、地の文章がイマイチと指摘されていたのですが、上達したのですかね。
>20
ありがとうございます。
これからも精進していきます。
>22
給食着の神奈子……いいですね!
>奇声を発する程度の能力さん
もちろん買いましたw
さすが東雲さん、すごく面白かったです。
買う時に、挨拶しちゃいました(*'-')
>27
実は、私も結構好きだったりします。上記のように、マヨだけじゃなくて、から揚げとセットですけどね。
>ワレモノ中尉さん
色々なジャンルに挑戦して、文章が上手くなりたいと思ったのです。
数をこなして、慣れないといけませんね。
>31
梅干! そういうのもあるのか(井之頭五郎風
今度試してみます。ちょっと怖い。
>35
ありがとうございました。
セリフ回しも、これからもっと磨いていきたいです。
>38
ありがとうございます!
早苗さんは……蛙とか蛇とか?
>39
ギャグはインパクトも重要ですね……。
学ぶべきことは多いです。
>44
もはやカレーと言っていいのやら。
>48
わあ、今までの全部間違えてた。恥ずかしい。
>50
私は、どろどろのあまあま派です。
キーマカレーとか大好きです。
一味っていうのもあるんですねぇ。
>56
勢いで誤魔化そうとしてるのに、その勢いがない。
反省します……。
>斗無さん
ドロドロカレーは好きですけど、呪われてるのはちょっとw
思わず画面の前で噴き出しちゃいました。
>71
○っちの料理ショー、面白かったですね。お腹が空く番組でしたw
>73
ただのご飯なのにっ。
>83
ありがとうございます!
そういう励ましの言葉をもらえると、本当にモチベーションがあがります。
>86
夕飯までには帰ってくるのよ。
>87
ありがとうございます。
恐らく次もギャグになりそうです。
この衝動は最早だれにも止められない。カレーには七味とラー油だろJK
銀○魂臭がプンプンするぜwww
・・・さて、某先輩がアップを始めた様ですw
なのにココイチには醤油が置いてねぇし学食じゃダチに変な顔されたッ!
このやるせない思いどうしてくれるんじゃマヨ派ぁッ!?
いや本当にマイノリティだったんです、醤油派orz
カレーが無性に食べたい・・・
辛っ!
10辛いってらっしゃいませ~。
>92
初めてのギャグということで、右も左もわからない。
とりあえず、手元にあった銀魂を真似てみようと、このような作品になった次第です。
>93
ココイチに醤油持参するんですよ!
「あいつ……やるな」
みたいな目で見られるかもしれませんよ。
>97
上手いこと空知ワールドの空気を醸し出せたかどうか不安でした。
色んな人のギャグを真似て、自分のギャグを創っていこうと思います。
ただし、マヨは許さん
それだけ
まずくない!決してまずくないぞ!
でも一番うまいのはやっぱ普通に食うことかな
生卵って人も結構いるんですねー。今度試してみよう。
マヨも許して!(泣
>105
普通に生まれて、普通に暮らして、普通にカレー食って、普通に死ぬ。
普通が一番ですね。
話が大きすぎましたか。すみません。
あの話ではカレーに卵、干しぶどう。ケチャップなどさまざまなものをかけて食うキャラがいて
カレーって色々な食い方があるのだなぁと妙に感動した記憶があります。
しかし霊夢のカレーには何も敵いませんね。恐ろしや。
あと。
>咲夜のその仕草は、同姓の早苗からしても、心を奪われてもおかしくない可愛らしさがあった。
早苗さんと咲夜さんの姓が一緒……
つまり二人はもう結婚しているということですね!?
おじゃる丸は観たことがないのですが、その回だけでも観てみたいものです。
カレー最強。
霊夢のは……カレーなんですかね?
>111
Exactly(そのとおりでございます)
…………嘘ですごめんなさい。誤字を見逃しましたorz
かく言う私もギャグには挑戦した事はある者の、全く手に負えず、自身の実力不足を痛感した口です。
今後とも、頑張ってください。
笑いは人によってツボも違うし、テンポや空気感が重要なので、学ばなければいけないことが本当に多いですよね。
奥が深いです。
ありがとうございました!
マヨネーズ最高!!でも、マヨかけたシーチキンサラダが一番いい。
ああ、あとやっぱ銀魂(アニメ)風味だったんですね、タイトルはなんかそんな気がしてました。
そうそう、カレーにはウスターソースを少量垂らすのもなかなかものですよ……。
醤油とケチャップは聞いたのも初めてだけど、合うのかすら。
醤油は普通にありますけど、ケチャップは聞いたことないですね。
うーん、さすがに合わない気がしますw
もっと読みたいって思った。
ケチャップは隠し味に使うことはあるが、直接かけるのは……
あとシーフードカレーに関しては早苗さんに同意。肉入れろ!肉!
カレーに肉は必須。そう思っていた時期が私にもありました。
その時期が今です。そしてこれからも!
いや、それ死角だらけじゃないですか?w
>139
玉子には砂糖が入ってるのが好きですw
なんだか想像したら怖いですwww
僕はケチャップです。
トマトはカレーに良く合うので、コクを深めたいときは食べるときにドバドバ入れます♪