天高く馬肥ゆる秋。つまりは食欲の秋。
と見せかけて運動の秋である。冬になってしまえば炬燵の魔力から逃れるのは困難。であるからして、秋のうちに遊びためておこうと考えるのが万国の子供に共通する考えだ。
ここ、命蓮寺もその例にもれず、お子様二人は広い庭で遊びに全力を尽くしているようである。
多々良小傘と封獣ぬえ。水色と黒。特徴的な二人の服装だが、短めのスカートという点では共通している。すっかり冷たくなっている秋の風がその裾を大きく揺らすが、二人は全く頓着せず、広い庭の一角、命蓮寺から少し離れた場所で18.4メートルの距離を隔てて対峙していた。
「ふっふっふ……遂にこの時が来たね。このときのために特訓して身につけた新必殺技、ドラゴンスクリューナックルスペシャルシュートぬえスペシャルを見せてあげるよ。覚悟しな、小傘!」
ぬえの手に握られるは小さな白い球。俗に軟球と呼ばれているよく弾む弾だ。それを見せつけるように前につきだし、ふふん、と鼻で鳴らした。
その様子を見た小傘もさる者、新必殺技という単語に動揺した様子もなく、言葉を投げ返す。
「ふっ、覚悟するのはぬえの方だよ。私が今この時のために何の策も練ってこなかったとでも思ってるの? それにその新必殺技とやら、すぺしゃる二回も言ってるじゃん。しつこいんだよ。ねみんぐせんすなさすぎ」
「……言ってくれるね。二晩寝ずに考えた名前なのに」
「えっ、あ……その、ごめん。だからその、泣かないで?」
「な、泣いてなんかないやいっ!」
ぐしぐしと乱暴に目元を手で拭う。
秋も深まってきたこのころであるから、空気は乾燥しきっている。投手にとって乾燥は手の滑りを増加させ、最悪の場合はすっぽ抜けという事態すら起こりうる。よって、その行動は手を湿らせるという合理的な目的の元に行うものだ。ぬえは自身の行動をそう思うことにした。
その様子を困ったように見ていた小傘だったが、ぬえの元に走り寄るなどということはしない。それはこの勝負を冒涜する行為だと知っていたからだ。
居心地悪そうに待つこと数分、ようやく涙を手にまぶし終えたぬえが顔を上げた。
「……ふふ、滑り止め完了だよ。これで万に一つも小傘の勝ち目はなくなったね」
「いや、泣いてたよね?」
「泣いてない!」
「……まぁ、そういうことにしとこうか」
むきー、と喚くぬえを流し、ふう、とため息を吐いて地面に描かれた長方形の中に入る。そのすぐ前には特徴的な形をした五角形が描かれており、小傘はそれを左手に持った傘の先で軽く叩いた。
もう一度深く息を吐いた。斜に構えながら、五角形の先にいるぬえに傘を向ける。
「私だって特訓したんだからね。その成果、見せてあげる」
「ふん、その減らず口がこの後開きっぱなしになるかと思うと楽しみで仕方ないよ」
「ご託はいいから、さっさと投げなよ……茄子麻呂、お願いね」
そして小傘は手に持った自らの分身を優しく撫で、右肩に担ぐようにして構える。
空気が変わる。先ほどまでのどこか軽い雰囲気は消え去り、重苦しい沈黙だけが落ちる。
しかし、その様子を前にしてなお、ぬえの顔には楽しそうな笑みが浮かんでいた。
「……へぇ、特訓してきたというのはあながち嘘じゃないみたいね。―――いいだろう、見せてあげるよ」
そう言ってぬえは大きく振りかぶった。
途端にその小さな体から発せられる気合いの炎。小傘はぴくりと眉を僅かに動かしたが、体は微動だにせずに静かにその時を待つ。
「これが……っ」
足を大きく振り上げる。
「ドラゴンスクリューナックルスペシャルシュートぬえスペシャルだー!」
長い技の名前を高らかに、滑らかに宣言しながら足を振りおろし、大地を踏みしめたと同時に腕が鞭のようにしなった。放たれたボールは、轟、と風を切りながら小傘に迫る。
小傘は目を見開いた。先ほどまでのボールとは文字通り違う。先ほどまでは白球と呼ぶにふさわしい球だったのに、それがどうだ、今は禍々しく蠢く闇がボールを覆い、一回り大きくなっているではないか。
小さく舌打ちが漏れる。どうやらぬえは能力を使ったようだ。これでは球本体を見極めて当てることはできない。仕方ない、あれを使うっ!
この間、実に0.05秒。
そして小傘は大きく傘を振る。しかしそれは無情にも空振りとなり、ボールが後ろにてんてんと転がって―――行かなかった。
「―――んなっ!」
「いよいしょー!」
傘本体から生えた、から傘お化けを象徴する大きな舌。それにがっちりと正体不明ボールは絡めとられていた。ぬえが驚きの声を上げるが、小傘はそれに構わず勢いそのままに一回転し、力いっぱい振りぬいた。舌から放たれたボールは慣性に従い、山なりの軌道を描いて飛んで行く。
ぬえは呆然とボールの行方を見送っていたが、その軌道の頂点に達する辺りで我に返り、小傘に詰め寄った。
「ず、ずっこいよ! 今のナシ!」
「えー、ぬえだって能力使ったじゃーん」
「そ、それはそれ! これはこれ!」
ぎゃーぎゃーきゃーきゃーぴーちくぱーちくでゅるでゅる。正体不明の鳴き声を奏でながら言い争う。
肩で息をするぬえと、平然と佇む小傘。誰の目にも勝敗は明らかだった。
「はぁ、今回は私の負けでいいよ……ボール、取り行かないと」
「そだね。これで私の355勝341敗212引き分けだねー」
「……次は負けないからね」
「ふふん、やれるもんならやってみるがよいわ―」
二人は歩き始めた。ボールを取りに行かなければならない。ぬえはうなだれながら、小傘は上機嫌にからころと下駄を鳴らせながらスキップするように歩みを進める。
「それにしても、ずいぶん流暢にしゃべるよね、あんな片仮名言葉」
「いやまぁ、練習したんだけどね。噛まないように。……センスないって言われたけど」
「あう、だからごめんって……」
「……ま、いいけど。それにしても、小傘の噛み具合は異常だと思うよ?」
「そうかな?」
「そうだよ。ほら、言ってみな? ドラゴンスクリューナックルスペシャルシュートぬえスペシャル」
「ど、どらごんしゅくりゅーなっくるすぺしゃるしゅーとぬえすぺひゃる」
「……これはひどい」
「そんなしみじみ言わないでもー」
他愛のない話をしながら二人で歩きまわり、ボールを探す。
命蓮寺のすぐそばまで行って、軒下まで探したが見つからない。ぬえは少し疲れたように息を吐き出し、腰に手を当てて小傘に向き直る。
「小傘、ほんとにこっちに来たの?」
「うん、間違いないよ」
「といってもなぁ……あらかた探し終えたし……ん?」
きょろきょろとあたりに視線を彷徨わせていると、換気でもしているのだろうか、開いている戸が目についた。そこは命蓮寺の主とも言うべき、聖白蓮の居室。
外はあらかた探し終え、あるとしたらこの命蓮寺の中か、それとも小傘が方向を間違っているか。
寺の中、特に聖白蓮の部屋には重要なものがたくさん置いてある。命蓮寺設立にあたって幻想郷の管理者と交わした条約を記した文書、高そうな掛け軸、よくわからない壺、などなど。であるからして、そこにボールが飛びこんでいるとは考えたくなかった。
しかし、小傘が間違っていた方がいいか、と聞かれればそうではない、とぬえは答えるだろう。
命蓮寺を開くにあたって作った庭、そのすぐ外には茂みが広がり、行方不明となってしまったボールを探すのはえらく手間が掛る。一回そんなこともあったが、結局見つからなくて命蓮寺のメンバー全員で探すことになった。だから小傘が間違っているということもなるべくならあってほしくない。
とはいえ、そんなことを言っていても仕方ない。どちらでも面倒なことになることを覚悟し、ぬえは近くにある方から可能性をつぶしにかかる。腰にあてていた手をおもむろに上げ、件の部屋へと指を向けた。
「ねえ、あそこにあるんじゃない?」
「ん? あの戸が開いてるとこ?」
「そうそう、あそこに飛び込んじゃったんじゃないかな」
「そうかもね。行ってみよっか」
小傘は言われるままにそちらへ向かって行き、縁側で下駄を脱いで素足で廊下を歩く。ぺたぺたぺたぺた。
「あ、待ってよ小傘」
小傘とは違い、少し寒くなってきた気候に合わせてブーツをはいているぬえは、脱ぐのにも時間がかかる。紐を上から緩めていき、全てを緩めて廊下にあがったときには、小傘はすでに聖の部屋の前にいた。
しかし様子がおかしい。目は一点を見つめ、全身びたっと固まり、顔面まで蒼白になっている。服の色とも相まって全身蒼白だ。ぬえはその様子に首をかしげながら彼女に近づき、声をかける。
「小傘? どしたの?」
「えっ、あっ、うん、ぬえ? その、私、急用思い出しちゃった。だから、またねっ!」
「え、ちょっと小傘?」
声をかけた途端に慌て、下駄の存在も忘れて裸足のまま飛び去ってしまった小傘の背中を、ぬえはポカンと見送った。
しかし、すぐにぬえは気付く。何か衝撃的な光景がそこに広がっているのだ、と。つまりは。
「逃げられた……っ!」
地団駄を踏んで悔しがるが、すでに後の祭り。彼女が飛んでいった方向を見ても、その影はすでに米粒ほどの大きさもなくなっている。全速力で逃げているのだろう、これでは追いつくことすらかなわない。
「小傘……今度会ったら覚えときなよ」
床板が悲鳴を上げ始めたところで踏みつけるのをやめ、彼方の空を睨みつけてひとりごちる。
とはいえ、いつまでもそうしているわけにはいかない。ある程度のことなら覚悟していたが、これはそれ以上のようだ。ぺろり、と小さく舌を出して親指を舐める。そして、ぱん、と自らの頬を張って気合いを入れなおした。
「よし……いくよっ!」
戸の前までの2,3歩の距離を一足飛びで詰め、部屋の中を見やる。
左を見る。机の上―――問題なし。右を見る。鏡台―――問題なし。右奥を見る。襖―――問題なし。左奥、掛け軸―――問題なし。その下。壺―――
「……あうとー」
掛け軸のかかっている床の間、そこには台から落ちて見事なまでに粉々になっている壺と、そのすぐそばに転がる白球。
こうなっていることは最悪の事態として想定してはいたものの、実際に目にしてみると随分と堪えたようだ。その惨状に、目を瞑って天を仰ぐ。ああ、天は我を見放したー。
はぁ、と前を向き直り、部屋に入って後ろ手に戸を閉める。途端に包まれるお日様のような聖の香りに頬が緩みそうになるのを何とか抑え、その壺の前に膝をつく。
「うわぁ、見事に粉々」
近づいて見てみれば、遠くで見た以上に悲惨な状況が目に入る。とりあえずボールをポケットに押し込み、その破片をひとかけら手に取った。
角度を変えながら、灰色に塗られているそれをまじまじと見つめる。
「……お米でくっつくかなぁ」
ぽつりと呟きが漏れる。その言葉を試すべく昼食の残りのご飯を求めて立ち上がり、厨へと向かった。
そして帰ってきた。
どたどたとなりふり構わず廊下を駆け、スパーンと戸をあけて部屋に身を滑り込ませ、同じくスパーンと閉めた。
―――やばいやばいやばい。
ぬえは焦っていた。厨で夕飯の支度をしていた村紗から聞いた話によると、例の壺は聖が大層気に入っていて、何度も磨いている様子を見たことがあるという。見たところ壺自体は大した物ではないが、何か思い入れがあるのだろう、とのこと。
それを聞いたぬえは村紗が変な目で見てくることにも構わず炊飯釜に手を突っ込んで一握りの米を持って厨から走り去り、今に至る。
常日頃から怒ることなど全くない聖であるから、もし怒らせてしまった場合は予測不可能。悪戯で迷惑をかけてしまった時も、めっ、と額をつつかれるだけで済んでいるが、今回は話が違う。なんせ、聖が大切にしているものなのだ、怒らないはずがない。
一直線に割れてしまった壺に駆けより、走りながら握りつぶして既に粘り気の出ているそれを破片の断面に張り付け、接着しようとする。が。
「ああっ」
陶器の自重により、手を離すとすぐに取れてしまう。そのことがさらに焦りを呼び、手が震えだした。
かちゃかちゃと破片同士がぶつかり合う音に追い立てられ、もう一度、もう一度と繰り返す。
時を忘れてその作業に没頭していたぬえだったが、戸の外から聞こえてくる柔らかな足音に顔を上げる。とん、とんとリズムよく床板を叩くそれは、まさしく聖のもの。
―――まずいまずいまずいまずいっ!
なんとかしないと、と立ち上がって右往左往し、唇に指を当てて混乱を抑えながら考えを巡らせる。
米でくっつける作業を続行する―――却下、時間がない。破片をすべて吹き飛ばし、なかったことにする―――却下、そんなこと、余計に聖を怒らせるだけだ。能力を使う―――時間稼ぎにしかならないが、これだ!
急いで破片を集めて台の上に置き、それを正体不明にした。その一帯を包む黒い塊を見ながら、手に残った米を口に突っ込む。
「ふう。と、ぬえ? こんなところでどうしたの?」
「あ、えと、聖、お帰り」
「はい、ただいま」
一口に米を飲み込んで静かに戸をあけて入ってきた聖に向き直り、帰宅の挨拶を交わす。
ひきつった笑みを浮かべて迎えるぬえと、にっこりと笑って返す聖。と、そこで聖は何かに気づいたようにぬえに歩み寄り、その顔に手を伸ばした。
早くもばれたか、とぬえは咄嗟に身を強張らせる。が、そのぬえの内心を余所に、その白い手はぬえの頬に触れた。
「ほら、ぬえ。ご飯粒ついてたわよ? ふふ、食いしん坊さんね」
「あ、うん、えへへ」
笑ってごまかす。ぬえ自身その笑顔がひきつっているとは思ったが、聖はそのことには特に触れず、ぬえの頭を撫でくり回し始めた。
現在置かれている状況も忘れ、その感触にしばし酔うぬえであったが、聖の発した、あら? という言葉に再び固まる。
「あれは……」
手を頭に置かれたまま下から聖の顔を見上げてみれば、その視線はやはり自らの後ろ、壺だったものが置いてある場所に向けられていた。
「……前衛芸術?」
どうやら聖にとっての正体不明物体は前衛的な芸術品に見えるらしい。そのことに、少しだけ本当の笑みが漏れ、緊張がほぐれる。が、状況は全く変わっていない。少し緩みかけた顔を引き締め、口を開く。
「うん、そう。ただの壺じゃ味気ないなと思って、ちょっと改造してみたの。どうかな」
「そう。ありがとうね、ぬえ。でも……」
そこで言葉を切り、少しかがんでぬえと目を合わせる。
「でも、私は元の壺の方が好きだったかな」
「そっ……か」
「うん、ごめんね。気持ちは嬉しかったんだけど」
もどして、くれる? と微笑を湛えたままぬえに語りかける。
ぬえはしばし返事をせずに、聖の目を見つめる。穢れを知り尽くしたからこそ持つことが出来る、澄み切ったその瞳。それを見ていると、全てを見通されている、隠し事はできないような気分になる。
ぬえは俯き、言葉を押しだす。
「……わかった」
そしてぬえは術を解く。俯いていて詳しくはわからないが、目の前にいる聖が息を呑むのを感じた。
「ごめん、なさい」
「……事情を、説明してくれる?」
何も言わずに頷き、俯いたままにポケットをまさぐり、白球を取り出して聖に見せる。
「なるほど、ね」
聖はそれだけで全てを理解したようで、それだけ言うと姿勢を正し、すっ、と手を持ち上げた。
それを見てぬえはまたも身を強張らせた。大事にしていた壺を割ってしまったのだ、罰は罰として、然るべきものを受けなければならない。今回ばかりは額にめっでは済まないだろう、来るべき衝撃に備えて目をぎゅっと瞑る。
「だめじゃない、めっ」
「あうっ」
しかし、来たのはいつも通りのおでこをつつくアレ。ぬえは呆然としながら、それにしても派手に壊れたわねー、と壺だったものに歩み寄って膝をついた聖の背に言葉を投げる。
「ね、ねえ聖? これだけ?」
「え、これだけって?」
「その、おしおき」
聖は、その言葉を受けてぬえを振り返る。目をまん丸に、きょとんとした顔を作っている。何故そんなことを言われたのか本当にわからないようだ。
「そうよ? なんで?」
「だってその壺、大切なものなんじゃないの?」
聖はようやく思い至ったとばかりに、ああ、と漏らす。そのまま何度かうんうんと頷き、いつも通りの頬笑みをぬえに向ける。
「そうね、大切なものよ」
「だ、だったら―――」
「ぬえ? なんで私がこれを大事にしてたか、知ってる?」
「え? ……いや、知らない、けど」
微笑をそのままに、またもうんうんと頷く。そしておもむろに立ち上がり、ぬえの眼前に正座する。ぬえもそれに従い、腰を下ろした。
そして、聖は語り始める。
「あの壺はね、ぬえ。この命蓮寺を設立する際に人里の皆から貰ったの。……ここの人間はいい人ばかりね。本当、いい所だわ」
「……」
「続けるわよ? その時に言われたのが、『この壺と共に貴女方がありますように』、だったわ」
「……でも、割っちゃった」
「そうね、割れちゃったわ。でもね、ぬえ。然るべきところに頼めば、直すことはできるのよ」
もちろん、元通りにはならないけどね、と結ぶ。その言葉に、ぬえは強く唇をかみしめた。
「それでも。直った物は、元々のそれよりも強くなるのよ。ばらばらになっても、またくっついてより強く結びつけられる。……素敵だと思わない?」
「でも、割れないに越したことはないんじゃ―――」
「ぬえ?」
ぬえの言葉を遮り、膝立ちになって頭をかき抱く。その豊満な胸に顔をうずめ、ぬえは何も言えなくなってしまった。
「ぬえは、元々私と関係ないわよね?」
「……」
「でも、ここにいる。いてくれる。……その証、ということにはならないかしら。ぬえがここから出て行ったとしても―――」
「そんなこと、ありえない」
「ありがとう、ぬえ。もしもの話よ、もしもここから出て行ってしまったも、ぬえがここにいた、という証は残るわ。―――いつまでも、それこそ私たちと共に、ね」
そして沈黙の帳が下りる。
聖に包まれながらおとなしく頭をなでられ、背中をさすられていたぬえだったが、しばらくすると恐る恐る聖の体に手を回した。
「……ごめんなさい」
「だから、いいのよ、ぬえ」
「それでも、ごめん。割っちゃったのは事実だから」
「……そうね」
再び静寂。
夕の日の、紅く、赤く彩られた部屋に、二人は佇んでいる。
「それにしても、聖って怒らないよねー」
日も落ち、赤に代わって紺色が支配する世界。燭台に灯された火が、ぼんやりと二人を映し出す。
ぬえは正座で座っている聖の上に座り、後ろから抱かれている。先ほどまでの暗い様子はなく、ぱたぱたと足を上下させながら言葉を紡いだ。
「仏の顔も三度まで、っていう諺があるけどさ。聖の仏の顔はいくつあるのかな?」
「あら、知らなかったの、ぬえ?」
冗談で発した言葉に律儀に反応してくれる聖に苦笑を浮かべつつ、ぬえはその続きを待った。
が、次に聖が発した言葉で再び固まることになる。
「私の仏の顔は、108式まであるのよ?」
End.
聖さん優しいお母さんみたいでかわいいです
聖は優しいカリスマ持ち!!!!
それに手の掛かる子ほどかわいいものです。より多くの繋がりは親密さをも育むでしょう。
少しばかり臆病で、少しばかり不器用で、でも心根は素直。ぬえってひょっとしてカナリ凄クネ?
まだ何年も経ってないだろうに908戦ってどんだけやってんだwww
あ、そうそう、ぬえちゃん。今度は私がバッターボックスに立ちますので足を大きく大きく振り上げて
「ドラゴンスクリューナックルスペシャルシュートぬえスペシャル」お願いします。
落ちで吹きいて後書きでとどめをさされたw
聖は激怒した……らどうなるんでしょう、ホント
よいお話でした。
謝りに行くのって大抵ピッチャーだよね。なんでだろうね。
ひじぬえ、いいよね。
つまり3回イタズラをしてひじりんの仏の顔が一式だから、ぬえは240回もイタズラをした事になるのではないかと、考えて・・・ラストで盛大に吹いたww
感服いたしましたw
ところで打った小傘にも聖のお仕置きが必要なのではないだろうか