「私が寺にいた時と人間はまったく変わっていない」
目の前にいる紅白の巫女に言った言葉、彼女からは自分に似た匂いを感じた。
妖怪も人間も関係ない、平等な世界を望んでいると思った、いい友達になれると期待した。
でも彼女は再び自分を封印すると言った。
ソレを本当に残念に思った、まだ人間に危険視されているのか、と
でもだからと言って大人しく再封印されるつもりはない、そんな事はさせない。
自分を慕ってくれる皆ががんばってくれたおかげで自分の封印は解かれた。
封印されるとしても、せめて皆にその恩を返すまでは封印なんてされてなるものか!
「誠に薄く、軽挙妄動であるッ!」
荒事は好きではない、でも、ここは引くわけにはいかない。
聖の気迫に先程まで緩んでいた霊夢の顔も引き締まる。
膨大な聖の魔力を感じて、簡単にはいかないと悟ったためだろう。
「いざ―――」
先程まで何も感じなかった少女から凄まじい力を感じて聖も身構える。
確かにこれならば再び自分は封印されてしまうかもしれない、見た目はまだ年若いのに末恐ろしくも感じる。
だが、見た目に騙されてはいけない、彼女は今まで出会ったどの対魔師よりも優れている。
聖は自分の最後の言葉が開戦の合図になると悟った。
それは向こうも同じだろう。
ならば告げなくてはいけない、こんな日のために封印されていた時暇潰しに練習した最後の決め台詞を
『南無三!!』と決めポーズ付きで言えば開戦だ。
聖は息を大きく吸い込んだ。
そして
「なむしゃん!!」
噛んだ。
それはもう見事に噛んだ。
――
弁解させてほしかった。
他人と話をするなんて本当に久しぶりなんだ。
封印されている間ずっと一人だったんだ、言葉を発する機会は本当になかったんだ。
だから本当に誰かと話せるのが嬉しくて舞い上がっていたし緊張だってしていたんだ。
「………………」
「………………」
気まずい沈黙が流れた。
空気が重い、巫女の冷ややかな視線が痛い。
それでも聖は頑なに真面目な顔を貫き通す。
「……アンタ今、台詞噛んだでしょ?」
「か、噛んでません……」
聖は目を逸らした。
「………………」
「………………」
会話がいちいち止まる。
巫女の視線が本当に痛い。
でも、言ってないって口にした以上聖も引くに引けなかった。
せっかくシリアスな雰囲気だったのに今更間違いましたって言うのはなんだか恥かしかった。
「……でも今絶対『なむしゃん』って言ったでしょ?何よ『なむしゃん』って?」
「い、言ってないですー、ちゃんと『南無三』って言いましたー」
「いや、でもさ……」
グダグダになり始めた中で霊夢のツッコミは後ろからの叫び声に掻き消された。
『何を言うか!!』
「っ!?」
霊夢がその声に驚き振り向けば道中で戦ったナズーリン、星、村紗、一輪達がいつの間にか揃っていた。
その光景に霊夢は驚いたが、聖も同じ様に驚いた、自分を助け出してくれた彼女達がそこにはいたのだ。
『貴女達何時の間に?』と言おうとした聖の言葉は彼女達の声にさらに掻き消された。
「聖がそんな馬鹿みたいな事で嘘を付くわけないじゃないか!!」
ナズーリンの言葉に聖は『うっ』と顔を引き攣らせた。
「そうです、聖こそは真の聖人、嘘など吐きません!!」
星の言葉に聖は『あぅ』と顔を逸らした。
「そうだそうだ、私の様な自縛霊にさえ慈愛を見せた方がそんなつまらない嘘を吐くものかー!!」
村紗の言葉に聖は『うぐっ』と身を折った。
「そのとおり、姐さんは唯の雲の雲山や特に特徴のない私にだって優しくしてくれる程心の広いお方だぞ
その方を馬鹿にするのは私達が絶対に許さない!お前が聞き間違っていただけだ!!」
自虐の涙を流す一輪の言葉と雲山の頷く姿に聖は『フっ』と折った身を皆から逸らした。
全員の言葉を聞き霊夢は溜息をついた。
「……大分信頼されてるのねアンタ」
言って聖の方を見ると彼女は何故か背を向けてプルプルと震えていた。
「み、皆お願い、今私に優しくしないで、ちょっと本気で泣きそうになるから……」
聖はちょっと泣きたくなってきていた。
自分の言い間違いをここまで本気でフォローされると恥かしいを通り越して居た堪れなくなってくる。
「そ、そんな姐さん勿体無いお言葉です」
「そうですよ聖、私達は皆貴女のために頑張ったんです、どうか笑顔をみせてください」
「嘘吐き呼ばわりしたこの巫女なんて私達で退治しちゃいますから!」
「いや、別に私は嘘吐きなんて一言も言ってないわよ?」
村沙の言葉に思わず霊夢はツッコミを入れるが彼女はまったく聞いていない。
「さぁ、鼠達出ろ、あの巫女を倒すぞ」
「いや、ちょっと落ち着きなさいよアンタ達……」
霊夢の言葉を無視して、四人は敵対心剥き出しで霊夢を囲む。
聖はさらに申し訳ない気持ちでいっぱいになってくる。
「貴女達、お願い、ホント止めて、泣きそうだから……、その人は間違ってないから、本当は私の言い間違……」
「流石聖!何て慈悲深い方だろう!!」
「まったくだ、あの人間を庇うため自らが言い間違いだったと言うとは!」
「そんな、聖そんな事で嘘を吐かないでください!」
「姐さんの慈悲深さは本当に凄い!!」
「あ、いや、ちょっと?本当にね、私が……」
聖は何とか皆を鎮めて自分が本当に噛んだだけである事を伝えようとするが
『流石聖、何て謙虚なんだろう!!』
まったく話を聞いてくれなくて、その態度にコイツらは実は解っていてわざとやってるんじゃないかな?
とか聖は疑い始めた。
そして聖は
「あ、う、あぅうぅぅ……」
そんなあまりにも真っ直ぐな皆の信頼が痛くて、霊夢に本当申し訳なくて、そしてあまりにも恥かしくなって
とうとう皆から顔を背けて泣き出した。
その姿を見た四人は
『貴様、聖を泣かせたなー!!』
さらに霊夢に敵対心を剥き出しにする。
「アンタらの頭の中はどうなってんのよ!?」
霊夢の言い分はもっともである。
聖はもう霊夢の言葉に頷くしかなかった、本当に何考えてんだコイツら?頭の中どうなってんだ?
『すいません、すいません私のせいで本当にすいません』と心中で霊夢に謝罪する。
四人の後ろからペコペコ頭を下げている聖を見て霊夢もすっかり冷めてしまった。
「はぁ……、もういいわよ、私が悪かった事でいいから、疲れたから帰るわね?」
霊夢は周りを取り囲む四人にも聖にも何もせず本当そのまま帰っていった。
聖は申し訳なくてしょうがなかった。
自分がちょっと意地をはったばっかりにまさかこんな事になるなんて誰が想像できるだろうか?
――
「聖、本当に封印が解けてよかった」
「うん、ありがとう、星」
敵がいなくなり四人は殺気を鎮めて、星が皆を代表して聖との再会を喜ぶ。
聖は複雑な表情で星を抱きしめた。
そんな二人を見てふと一輪が言う。
「それにしてもいくら姐さんが慈悲深いと言っても、あの巫女の態度は許せない」
「……え?」
いきなり何を言いだすのだろうこの子は?
聖が不安に思った時、隣にいた村紗も一輪の言葉に深く頷く。
「そうね、自分の聞き間違いのくせに『私が悪かった事でいいから』だなんて
何様のつもりかしら?頭の上に錨でも落としてやろうかしら?」
「そ、それは本当に止めてあげてください、本当に私が言い間違っただけだから……」
「ふむ、聖は本当に謙虚だな、だが、それでもあの巫女の態度は許せない、錨が駄目なら兵糧攻めだ
さぁ行け、可愛い鼠達あいつの家の食料を食べつくしてこい」
ナズーリンは大量の鼠を放す。
「それも止めて!!」
聖のその言葉に四人は驚き顔を見合わせて再び
『流石聖、何て慈悲深い方だ!!』
聖は笑いが込み上げてきた、面白いわけではない、どちらと言うと自虐的な笑みだ。
もう止めてくれ、私が悪かった。
私がつまらない意地をはって嘘吐いたから貴女達はフォローしてるんでしょ?
私が悪かったから、ごめんなさい本当にもう勘弁してください。
「もう、止めて、本当に私が言い間違えただけなの……」
その聖の言葉に四人は同時に頷き
『流石聖、まだあの人間を庇うなんて何て謙虚で優しいんだ!!』
空気読まない四人の叫びが法界に響いた。
――
その後何かにつけてはこの時の事で叫ぶ寺の住人にとうとう嫌気がさして四人の前から聖は姿を消した。
東方星蓮船、完
目の前にいる紅白の巫女に言った言葉、彼女からは自分に似た匂いを感じた。
妖怪も人間も関係ない、平等な世界を望んでいると思った、いい友達になれると期待した。
でも彼女は再び自分を封印すると言った。
ソレを本当に残念に思った、まだ人間に危険視されているのか、と
でもだからと言って大人しく再封印されるつもりはない、そんな事はさせない。
自分を慕ってくれる皆ががんばってくれたおかげで自分の封印は解かれた。
封印されるとしても、せめて皆にその恩を返すまでは封印なんてされてなるものか!
「誠に薄く、軽挙妄動であるッ!」
荒事は好きではない、でも、ここは引くわけにはいかない。
聖の気迫に先程まで緩んでいた霊夢の顔も引き締まる。
膨大な聖の魔力を感じて、簡単にはいかないと悟ったためだろう。
「いざ―――」
先程まで何も感じなかった少女から凄まじい力を感じて聖も身構える。
確かにこれならば再び自分は封印されてしまうかもしれない、見た目はまだ年若いのに末恐ろしくも感じる。
だが、見た目に騙されてはいけない、彼女は今まで出会ったどの対魔師よりも優れている。
聖は自分の最後の言葉が開戦の合図になると悟った。
それは向こうも同じだろう。
ならば告げなくてはいけない、こんな日のために封印されていた時暇潰しに練習した最後の決め台詞を
『南無三!!』と決めポーズ付きで言えば開戦だ。
聖は息を大きく吸い込んだ。
そして
「なむしゃん!!」
噛んだ。
それはもう見事に噛んだ。
――
弁解させてほしかった。
他人と話をするなんて本当に久しぶりなんだ。
封印されている間ずっと一人だったんだ、言葉を発する機会は本当になかったんだ。
だから本当に誰かと話せるのが嬉しくて舞い上がっていたし緊張だってしていたんだ。
「………………」
「………………」
気まずい沈黙が流れた。
空気が重い、巫女の冷ややかな視線が痛い。
それでも聖は頑なに真面目な顔を貫き通す。
「……アンタ今、台詞噛んだでしょ?」
「か、噛んでません……」
聖は目を逸らした。
「………………」
「………………」
会話がいちいち止まる。
巫女の視線が本当に痛い。
でも、言ってないって口にした以上聖も引くに引けなかった。
せっかくシリアスな雰囲気だったのに今更間違いましたって言うのはなんだか恥かしかった。
「……でも今絶対『なむしゃん』って言ったでしょ?何よ『なむしゃん』って?」
「い、言ってないですー、ちゃんと『南無三』って言いましたー」
「いや、でもさ……」
グダグダになり始めた中で霊夢のツッコミは後ろからの叫び声に掻き消された。
『何を言うか!!』
「っ!?」
霊夢がその声に驚き振り向けば道中で戦ったナズーリン、星、村紗、一輪達がいつの間にか揃っていた。
その光景に霊夢は驚いたが、聖も同じ様に驚いた、自分を助け出してくれた彼女達がそこにはいたのだ。
『貴女達何時の間に?』と言おうとした聖の言葉は彼女達の声にさらに掻き消された。
「聖がそんな馬鹿みたいな事で嘘を付くわけないじゃないか!!」
ナズーリンの言葉に聖は『うっ』と顔を引き攣らせた。
「そうです、聖こそは真の聖人、嘘など吐きません!!」
星の言葉に聖は『あぅ』と顔を逸らした。
「そうだそうだ、私の様な自縛霊にさえ慈愛を見せた方がそんなつまらない嘘を吐くものかー!!」
村紗の言葉に聖は『うぐっ』と身を折った。
「そのとおり、姐さんは唯の雲の雲山や特に特徴のない私にだって優しくしてくれる程心の広いお方だぞ
その方を馬鹿にするのは私達が絶対に許さない!お前が聞き間違っていただけだ!!」
自虐の涙を流す一輪の言葉と雲山の頷く姿に聖は『フっ』と折った身を皆から逸らした。
全員の言葉を聞き霊夢は溜息をついた。
「……大分信頼されてるのねアンタ」
言って聖の方を見ると彼女は何故か背を向けてプルプルと震えていた。
「み、皆お願い、今私に優しくしないで、ちょっと本気で泣きそうになるから……」
聖はちょっと泣きたくなってきていた。
自分の言い間違いをここまで本気でフォローされると恥かしいを通り越して居た堪れなくなってくる。
「そ、そんな姐さん勿体無いお言葉です」
「そうですよ聖、私達は皆貴女のために頑張ったんです、どうか笑顔をみせてください」
「嘘吐き呼ばわりしたこの巫女なんて私達で退治しちゃいますから!」
「いや、別に私は嘘吐きなんて一言も言ってないわよ?」
村沙の言葉に思わず霊夢はツッコミを入れるが彼女はまったく聞いていない。
「さぁ、鼠達出ろ、あの巫女を倒すぞ」
「いや、ちょっと落ち着きなさいよアンタ達……」
霊夢の言葉を無視して、四人は敵対心剥き出しで霊夢を囲む。
聖はさらに申し訳ない気持ちでいっぱいになってくる。
「貴女達、お願い、ホント止めて、泣きそうだから……、その人は間違ってないから、本当は私の言い間違……」
「流石聖!何て慈悲深い方だろう!!」
「まったくだ、あの人間を庇うため自らが言い間違いだったと言うとは!」
「そんな、聖そんな事で嘘を吐かないでください!」
「姐さんの慈悲深さは本当に凄い!!」
「あ、いや、ちょっと?本当にね、私が……」
聖は何とか皆を鎮めて自分が本当に噛んだだけである事を伝えようとするが
『流石聖、何て謙虚なんだろう!!』
まったく話を聞いてくれなくて、その態度にコイツらは実は解っていてわざとやってるんじゃないかな?
とか聖は疑い始めた。
そして聖は
「あ、う、あぅうぅぅ……」
そんなあまりにも真っ直ぐな皆の信頼が痛くて、霊夢に本当申し訳なくて、そしてあまりにも恥かしくなって
とうとう皆から顔を背けて泣き出した。
その姿を見た四人は
『貴様、聖を泣かせたなー!!』
さらに霊夢に敵対心を剥き出しにする。
「アンタらの頭の中はどうなってんのよ!?」
霊夢の言い分はもっともである。
聖はもう霊夢の言葉に頷くしかなかった、本当に何考えてんだコイツら?頭の中どうなってんだ?
『すいません、すいません私のせいで本当にすいません』と心中で霊夢に謝罪する。
四人の後ろからペコペコ頭を下げている聖を見て霊夢もすっかり冷めてしまった。
「はぁ……、もういいわよ、私が悪かった事でいいから、疲れたから帰るわね?」
霊夢は周りを取り囲む四人にも聖にも何もせず本当そのまま帰っていった。
聖は申し訳なくてしょうがなかった。
自分がちょっと意地をはったばっかりにまさかこんな事になるなんて誰が想像できるだろうか?
――
「聖、本当に封印が解けてよかった」
「うん、ありがとう、星」
敵がいなくなり四人は殺気を鎮めて、星が皆を代表して聖との再会を喜ぶ。
聖は複雑な表情で星を抱きしめた。
そんな二人を見てふと一輪が言う。
「それにしてもいくら姐さんが慈悲深いと言っても、あの巫女の態度は許せない」
「……え?」
いきなり何を言いだすのだろうこの子は?
聖が不安に思った時、隣にいた村紗も一輪の言葉に深く頷く。
「そうね、自分の聞き間違いのくせに『私が悪かった事でいいから』だなんて
何様のつもりかしら?頭の上に錨でも落としてやろうかしら?」
「そ、それは本当に止めてあげてください、本当に私が言い間違っただけだから……」
「ふむ、聖は本当に謙虚だな、だが、それでもあの巫女の態度は許せない、錨が駄目なら兵糧攻めだ
さぁ行け、可愛い鼠達あいつの家の食料を食べつくしてこい」
ナズーリンは大量の鼠を放す。
「それも止めて!!」
聖のその言葉に四人は驚き顔を見合わせて再び
『流石聖、何て慈悲深い方だ!!』
聖は笑いが込み上げてきた、面白いわけではない、どちらと言うと自虐的な笑みだ。
もう止めてくれ、私が悪かった。
私がつまらない意地をはって嘘吐いたから貴女達はフォローしてるんでしょ?
私が悪かったから、ごめんなさい本当にもう勘弁してください。
「もう、止めて、本当に私が言い間違えただけなの……」
その聖の言葉に四人は同時に頷き
『流石聖、まだあの人間を庇うなんて何て謙虚で優しいんだ!!』
空気読まない四人の叫びが法界に響いた。
――
その後何かにつけてはこの時の事で叫ぶ寺の住人にとうとう嫌気がさして四人の前から聖は姿を消した。
東方星蓮船、完
しかしなんて可愛いひじりしゃん!
いっけね、噛みました。
そんなフレーズが浮かんだ。
好意は度をすぎれば、時として相手にとってきついものとなる、と。
ただ単純に面白かったですw
今回の話でそれがよくわかったよ>書き主感謝
霊夢涙目www
命蓮寺一家の馬鹿っぷりといい、聖の可愛さといい、文句なしです。
スランプの時は、こういう作品を読むに限る!
愛されすぎてて羨ましいですw