2月14日、何の日かみんなは知ってるかしら?
いや知ってるよね。知らないはずがないもの。賽銭箱から溢れているチョコレートを見てわかるとおり、今日はバレンタインデーよ☆
なんでも起源は当時、ローマで禁じられていた兵士の結婚式を挙げた為に処刑されたウァレンティヌス司祭だとか。まあどうでもいい話だけどね。
私、魅魔が気にしているのは目の前で手紙を読んでいるめでたい巫女のことよ。
東方十二憑 ~ Monster Organize Calendar.
弐憑ノ朝 ~ February.
「えっと……『ワタシタイモノカアル ヨウサイアトテマテ』ねぇ。要塞跡ってあそこよね?」
ふふふ、随分と不思議そうな顔をしてるわね。そりゃあ、あそこは私とあんたにとって忘れられない場所だしね。
ちなみに何故カタカナで濁点が無いかというと、正体がばれないように『たいぷらいたー』とかいう機械で書いたからなのよ。
指先一つで綺麗な字が書けるなんて便利な機械だわねぇv
「渡したいものは大体想像がつくけど……お茶飲みながらチョコばかり食べるのもだるくなるし、気晴らしに行ってみましょうか?」
霊夢は食べかけのチョコと飲み終わった湯飲みを床において、ふよふよと外へと飛び立ってしまった。
よしよし、今のところ私の計画通りね。こちらも早く先回りしないと……
……その前に賽銭箱のチョコを全部食べとこ☆ 悪霊にチョコ鼻血とか関係ないし☆ 余計なものは始末するに限るわ♪
東方封魔録 ~ The Story of Eastern Wonderland.
「悪霊呪殺バレンタイン ~二人の口にチョコを♪ 二人の心に呪いを~」
「久しぶりに来たけど、相変わらず訳の分からない物だらけでボロボロね~」
こっちはあんたを誘導するのにボロボロだよ……
全く、道筋は忘れているだろうとは思っていたけど…… ここまで方向音痴だったとは思わなかったよ!
立て札や誘導工作を徹底的にしないと明後日の方向に飛んでいくんだからこのお惚け巫女は!
……まあ、いいか。私の手で霊夢を動かしていると思うだけでとても心地よい気分になるし♪
さて、後は霊夢の前に現れてコレを渡すだけね。うふふ……霊夢と二人きり……
「しかし、ここもいつの間にかチョコ臭くなったわね…… 巨大チョコエッグにチョコの噴水。やっぱ来なければよかったかも……」
ああっ! 帰らないでおくれよ、霊夢!! ここまで誘導してあげた私の親切をチョコの泡にする気なの?!
そして私がこの日のために用意したコレはどうなるんだい! 私の手で始末しなければいけないのかい? それは……あまりに残酷じゃないかい!!
……って、巨大チョコエッグにチョコの噴水? ちょっと待ちなさい!何でここにそんなものがあるのよ?!
「レイムダ」「レイムガ」「キタヨ」「ワタシタチニ」「アイニ」
「きゃあっ! チョコエッグが喋ったっ?!」
び、びっくりしたぁ……5つのチョコエッグが急に片言で喋りだすんだもの。
あ、そういえば思い出した。こいつら要塞の防衛システムじゃないかい。メタ的に言うなら東方封魔録3面ボス。
まさか自身をチョコでコーティングするとはね。あいつ等、意外とやるわね……
「バレンタイン」「ダカラ」「チョコデ」「デコレーション」「カワイイ?」
「か、かわいいんじゃないかしら? 大食い妖怪が見たら一口で食べちゃいそうなぐらい」
うん、霊夢のいう通りね。私も思わず抱きしめてペロペロしたいほどだし。
でもね、霊夢。その何気ない一言がみんなを狂わせるのよ……ほら。
「タベチャイタイ?」「ウレシイ」「ハズカシイ」「レイム」「ダイスキ♪」
「じゃあ何で下の台座にから、エネルギーっぽいものが集まっているのかしら……?」
「ウケトッテ」「チョコレーザー」「ワタシタチノ」「アイノカタチ」「レイムチョコマミレ♪」
「ひょえええ~~~~?!」
ちょっと、チョコレーザー出すとかどれだけ魔改造しているのよ! あれは完全に暴走してるわね。
霊夢は何とか避けてるようだけど……あっ、今、袖にチョコがかかったじゃない!!
「ちょっ、やめっ……ひゃわあっっ?!」
さすがの霊夢も大ピンチね。こうしちゃいられないわ! 今すぐ助けに……
「ちょぉぉぉっと待ったです!!」
ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
「ぎゃああっ! チョコの噴水が盛り上がって下から戦車がっ?!」
あーもー! また紛らわしい展開に!!
にしても、チョコレートフォンデュの砲塔の戦車ってどうなのよ?!
「夢見る戦車娘、里香! 『ちょこふぉん=DU』とともに華麗に登場なのです!!」
「里香?! 里香ってあの1面雑魚のEX雑魚の戦車娘の……」
「雑魚じゃないです! ボスなのです!! とにかく霊夢をチョコ塗れにするのはあたいなのです!!」
「あんたもかい?!」
あんたもかい!? 霊夢をチョコ塗れになんかしたら、甘くてセクシーに……
……はっ?! つい想像してしまったわ!! 恐るべしチョコ霊夢!!!
「さあ、チョコバースト主砲、ショコラレーザー機銃、そしてポリフェNOUL-XXを食らって、みんなチョコ塗れになるのです!!」
「ワタシタチガレイム」「チョコマミレニスル」「ジャマスルナ」「フォンデュセンシャガ」「バナナイレルトウマイ」
「ぐぬぬ~、負けないのです!!」
ドゴンドゴンッ! ピチュンピチュンッッ!! ベチョチョチョチョチョッ! ババァーンッッ!!
「むぁーもーやだー、このステージ!!」
「ほらっ、こっちだよ、霊夢!!」
「み、魅魔っ?! あんたまで何でこんなところにっ?」
「説明は後だよ。チョコ塗れになりたいの?!」
「それは嫌だ。助けてミマー!!」
チョコレート色の弾幕が飛び交う中、私は霊夢の手を掴み、引っ張り、奥へ奥へと進んでいったわ。
奥へ奥へとね……
****** ふたつきなのかー ******
「ここまでくれば……はぁはぁ……チョコレートは飛んでこないでしょ……」
「そうね……ふぅふぅ……チョコはしばらく見たくないわね……」
ここは靈魔殿かしらね。私と霊夢が再び戦った場所……色々と思い出深いわね。
けど、チョコは見たくないって……渡しづらくなったわね。どうしよう……
「ところでさ、霊夢は何であんなところにいたの?」
「ふぇ? ああ、誰かが要塞跡に来いって手紙を寄越してさ。それでチョコに食べ飽きたところだし、退屈潰しに来てみたら……これだったわけよ」
「ははは……そりゃ災難だったね」
全くだよ。折角二人きりになろうと大抵の奴等が知らない場所を選択したって言うのにさ。
「で、そういう魅魔はなんであの場所にいたわけ?」
「いや……その……実はあの手紙書いたの私なのよ」
「え……?」
「あ、でも、あいつ等とは関係ないからね! 私もまさかあいつ等もいただなんて思ってもみなかったから……」
「う、うん、分かったから落ち着いてよ」
「お、落ち着いてるよ私は!」
いやどう見ても落ち着いて無いよ私! 霊夢にアレを渡すだけなんだからそんなに緊張すること無いじゃない!
以前と同じように悪霊と巫女の関係で堂々と渡すのよ!!
「それで? 私を外まで呼び出して何のようなの?」
「えっと……えっと……じ、実は渡したいものがあって……」
「言っとくけどチョコじゃないでしょうね? さっきも言った通りチョコはしばらく見たくないから」
「ち、違うよ! そんなビターな……じゃなくてベタな展開になるわけ無いだろう! バレンタインだからって!」
やばい、マジでヤバイ! アレはまさにチョコレートだから、今の霊夢に見せるわけにはいかない。
でも、どうするよ。今日渡さないとバレンタインの意味が無いし……どうする、どうする私?!
「明羅♪ はい、あ~ん♪」
「あ、あ~ん……なんか恥ずかしいな……」
「いいじゃないか、誰も見て無いんだし♪ それより私の手作り弁当美味しい?」
「ああ、今日はバレンタインなのか魔理沙の弁当がいつも以上に美味しい気がするな」
「きゃはは♪ あたいうれしい♪♪」
「昔の口調に戻ってるぞ、魔梨沙」
「はっ、恥ずかしいぜ……」
急にピンク色の雰囲気が流れてきたと思ったら、イケメンサムライと私の馬鹿弟子じゃないか。
こんなボロボロの神殿でシート広げてピクニックとか、どんなバレンタインの過し方よ。悪くないと思うけどさ。
あ、霊夢もなんか呆れてるし……
「明羅さんと魔理沙、いつの間にか出来てたのね……」
「ああ、知らなかったよ。我が弟子ながら……」
どうも明羅も魔理沙も二人の世界に入っているようで、私達の存在を完全に排除している。
少しは気付けよ。⑨ップルが!!
「しかしこんな神殿が周りにあったとは……なかなかいい場所じゃないか?」
「私の周りじゃ他に知ってるのは霊夢と魅魔様ぐらいだしね。けど今は二人ともいないし……♪」
ごめん、魔理沙。今まさに二人のすぐ傍にいるよ。
「チョコレート交換しようぜ。口移しで♪」
「何でそう恥ずかしいことを平然といえるんだ!」
「わ、私だって恥ずかしいよ。でも……明羅だから……こんなこと言えるんだぜ」
「か、かわいいこと言うな。にやけてしまうだろ……」
明羅のにやける顔か……すっごい見たい!
「にやけてもいいぜ。どんな顔しても明羅はかっこいいんだし♪」
「かっこいいって……私はこれでも乙女なんだが……」
「私のほうが乙女だぜ、うふふ……」
「しょうがないな、魔理沙は……」
って、明羅っ! その手にした魔理沙の手作りっぽいチョコをどうする気だい! あーっ、口に放り込んだ!!
魔理沙も魔理沙で目をつぶるな! 口を差し出すな!!
「甘すぎて見てられないわ! 帰りましょ、魅魔!!」
「同感だね。ここに残っても私達邪魔なだけだし!!」
背中に二人のキスシーンを置き去りにして、私達は神社へと帰っていった。
もう勝手にしてなさいよ……
****** ふたつきなのかー ******
「結局神社に戻ってしまったねぇ。折角外まで呼び出したのに……」
「いいじゃない。私は自分の神社が一番落ち着くのよ♪」
うん……まあ……そうね! 私も今じゃ神社の方が住み慣れているし♪
おかげで思考も冷静になって名案も思いついたわ。霊夢にチョコを食べさせる方法を……
「で、魅魔は私に何を渡したかったの?」
「何も言わずに左手を差し出して頂戴」
「えっ、それって指輪?!」
「何も言わずに!」
私が怒鳴ったら霊夢も黙って左手を差し出してきたわ。
かわいいわね……霊夢の手。小さくて細くて指輪が奥まで入りそうだよ。
それで私は右手で霊夢の左手を隠して、薬指に指輪をはめ込むの♪
「あ……れ……?」
はめ込む……振りをするの☆ それで呆気を取られた霊夢の唇に向かって……左の薬指を突き入れてあげる♪
「えいっ☆」
「っ?!」
「舐めて頂戴♪」
「……んん」
ふふっ、ちょっとびっくりさせちゃった♪ それでも素直に舐めてくれる霊夢は優しくてかわいいね♪
あっ、ちょっとそのちゅぱちゅぱ気持ちいいかも^ ^
「あっ、甘い……やっぱりチョコレートじゃない……」
「チョコは見たくないんでしょ……だから……不意打ちで指移し……」
「……意地悪ね」
「私は悪霊よ☆」
むくれる霊夢もかわいいよ。あぁ……本当に私は彼女に夢中なんだなぁ……
「んっ……」
「んぐぅ?!」
ちょ、っと……そこからキス……する?! やだ……霊夢の……舌が……
「はぁ……甘いわ……チョコ……」
「でしょ? ふふっ、驚いた?」
「ええ驚いたわ。大胆なのねぇ……」
「私は人間よ^ ^」
生意気……凄く生意気よ、霊夢。でも、好き。私はあんたの全てが大好きv
「霊夢……好き……」
「知ってる……わ……」
「嘘……でしょ……」
「私も……魅魔が……好き……」
「大嘘……じゃない……そんなの……」
ああ、そういえばチョコに呪いをかけたんだっけ? 心が張り裂けそうになる呪いを……
だから好きって言わないと苦しくなるのよね。だから言い続けるわ……呪いが解けるまで……
「霊夢……好き……」
「魅魔……大好き……」
大好きなんて言われたわ。悪霊を呪い殺そうとするなんて、酷い巫女ね。
夜になったら呪い返してやるわ……ほ・ん・き・で・ね♪
しかしこの表現法……ケータイ小説風とでもいいましょうか?よく知りませんが
まあそれが確立している以上
それを受け入れられないのは、私が古い人間だからでしょうか?
まぁ、幻想郷がすべてを受け入れるとて
初めは反発が起こるものですし
異変の後は受け入れられるものですからねぇ