牢獄に窓はなく、鉄格子の向こうから零れてくる灯りだけが小町を照らしていた。
石畳の床は冷たく、特殊な素材で作られた鉄格子は頑丈で温かみが全く無い。通気性など欠片もないおかげで風だけは吹き込んでこないものの、冬場の冷たさはそれで凌げるようなものではなかった。
与えられた毛布にくるまり、座り込みながら目を閉じる。眠ったら死ぬぞと雪山なら言われただろうけど、ここにはそんな優しい言葉を投げかけてくれる人はいなかった。
見張り番の巡回もなく、会話の一つも聞こえてこない。
当然の如く、面会などあるはずもなかった。いや、本当はあるのかもしれない。だけど、今の小町は誰かと面会できるような状況に無かったのだ。
「四季様、どうしてるかな」
呟いた言葉は、白い息と共に消えていった。
明日、四季映姫は小野塚小町を裁く。
罪状は裁判官に対する暴力行為。被告人小野塚小町は、第六十八法廷の裁判官に対して非道な暴力を振るい、後遺症が残るほどの怪我を負わせた。被害者の裁判官は是非曲直庁が管理する病院に運ばれたものの、完全な治療は難しく、もはや職務に復帰することは絶望的と診断された。
閻魔に対する暴力行為でも重罪だというのに、職を辞するほどの怪我ともなれば極刑も免れない。事実、十王たる初江王の査問委員会でも極刑が妥当という報告書が上がってきていた。
極刑、即ち死罪である。
無論、死神の首を撥ねた所で完全な死には至らない。件の裁判官とて、命に別状は無いのだから。
特殊な断頭台を用い、首ではなく魂を断つ。そうすることで初めて、死神は完全にこの世界から消えていなくなる。禁忌を犯した閻魔や死神は、必ずこの断頭台によって処刑されてしまうのだ。
各閻魔に支給された部屋の中。大量の書物と幾ばくかの書類に囲まれ、四季映姫は深々と椅子に座りながら目を閉じている。無駄に重厚な机の上には、査問委員会からの報告書と、明日の日程についての書類が置かれていた。
「なんという茶番ですか、これは」
閻魔にして裁判官たる四季映姫とて、十王の一人たる初江王への反論など許されるはずもない。報告書とは名ばかりで、いわば命令書と呼んだ方が適切である。是非曲直庁は小町を死罪にしろと言ってきたのだ。
映姫の担当は幻想郷である。そもそも、死神の裁判など担当していない。
だが、是非曲直庁には一つの不文法があった。
『死神の不祥事に関しての裁判は、上司である閻魔に裁かせる』
裁かせると言っても査問委員会で裁量すらも決定されているから、実質は書類を読み上げるだけ。事実、映姫はどうして小町がこんな不祥事を犯したのかも知らない。それが分かるのは、法廷で浄玻璃の鏡を覗きこんでから。
一刻も早く知りたいのだと主張したところで、どうせ携帯の許可は降りないだろう。どういうわけだが、今回の事件に関しては一切の情報が映姫の元へと届いてこない。おそらくは、相手方の閻魔にも非のあった可能性が高いだろう。余計な知識を入れられては困ると、上層部辺りが判断したのか。
しかし、だからといって何かが変わるわけでもない。例え相手が大悪人の閻魔であろうと、罪は罪なのだ。情状酌量の余地はなく、死罪は既に決定している。
「馬鹿馬鹿しい……」
明日の法廷で注目されるのは、小町に対する判決ではない。四季映姫という裁判官が、如何なる判決を下すのかという一点だ。そこにもしも同情や手心を加え、裁量を緩めるようなことがあれば、映姫にも何らかの処分が下される。
要は小町に対しての裁判ではなく、映姫に対しての裁判なのだ。部下の不祥事をどう裁くかによって、映姫の進退も決まってしまう。
もしもこの判決が絶対であるならば、自らの進退を賭してでも無罪にする可能性はあった。全ては浄玻璃の鏡を覗いて見ないと分からないが、少なくとも映姫には小町が無闇に暴力を振るうような死神だとは思えないのだ。
だが、そこでの判決など何の意味もない。不祥事を犯した死神に対しての裁判は二審制で、初審での判決はさほど重要視されないのだ。仮に映姫が無罪としたところで、このままだと二審で死罪を言い渡されるだろう。
だからこそ呟くのだ。ああ、なんたる茶番かと。
「いっそ、喋る花でも置いておけばいいのに」
明日の審理に限って言えば、是非曲直庁が求めるのは優秀な裁判官ではない。与えられた書類をそのまま読める、お喋り人形なのだ。
自らの無力さを痛感しながら、映姫はそのまま沈黙を続ける。
今の彼女に出来ることなど、何があったのか想像を巡らせる程度のことだった。
浄玻璃の鏡の携帯許可も下りず、小町との面会も申請すらできなかった。全てが遮断されている中でも、映姫は何とか真相を暴けないものかと東奔西走していたのだ。
事実が分かったところで、どうせ判決は覆せない。だが、法廷になるまで何も分からないというのは我慢ならなかった。普段の裁判ならば、審理の前にある程度の情報は集められている。それと浄玻璃の鏡で見た過去を吟味して、公正なる判決を下すのだ。
いきなり鏡を手渡され、あらかじめ決められた判決を述べよ。閻魔に対する冒涜である。到底、許せるようなものでもなかった。
例え判決を覆せずとも、せめて何があったのかは知りたい。非があったのは小町だけで、本当に相手は何もしていなかったのか。
「お待たせしました。こちらが第六十八法廷の裁判官に関する資料。そして、こちらが昨日の幻想郷における三途の川を渡った幽霊のリストです」
これも却下されるかと思ったが、受付の死神はあっさりと資料を手渡した。些か拍子抜けする思いもあったが、手にはいるのならそれに超したことはない。
封筒に入れられた資料を取り出し、中身を確認する。
『阿頼千手(あら せんじゅ) 第六十八法廷担当裁判官』
さすがに個人情報までは載っていないものの、これまでに担当した事件に関しても色々と記載されていた。主に外の世界を担当しているらしく、中には歴史を揺るがした程の偉人を裁いていたこともあるらしい。
ただ、これだけでは何も分からない。被害者の情報と言っても、タカが知れているのだから。
本命はもう一つ。当日、小野塚小町が三途の川を渡していた幽霊のリストだ。
被害者は何故か、三途の川で小町に斬られた。これが是非曲直庁の庁舎であれば違和感はないのだが、三途の川となれば首を傾げる。
だがそれも、二つの情報を合わせれば疑問ですら無かった。
「あの?」
いつまでも立ち去らない映姫に、受付も不審な目をしている。なにせ、要求したのは庁内でも噂になっている二人なのだ。訝しがるのも無理はない。
「いえ、何でもありません。確かに受け取りました」
適当な礼を述べ、自室へと足を向ける。二人だけでなく、映姫に関しても色々と注目が集まる時期だ。ただ廊下を歩くだけで、すれ違う閻魔や死神が好奇心の入り交じった視線を向けてくる。
煩わしい話だが、いちいち注意をする気分にもなれなかった。足早に廊下を抜け、ようやく自分の部屋へと辿り着く。
扉を開けたところで、映姫は言葉に詰まった。
誰もいないはずの部屋の中に、袈裟姿の坊主が座っていたのだ。不遜にも、机の上であぐらをかきながら。
「やあ、映姫ちゃん。遅かったね」
身なりは整い、風体は真面目を絵に描いたような人物だけど中身は風船よりも軽い。映姫は目の前の人物を知っていた。
当然だ。是非曲直庁に勤めていながら、この人物を知らないはずもない。
「初江王様……私の部屋で何をされているのですか?」
初江王。言わずとしれた査問委員会の委員長であり、小野塚小町に極刑を下した当人でもある。
十王はそれぞれが閻魔王を名乗っているのだが、全員とも同じ呼び方というのは実務に支障をきたす。それゆえに実質は閻魔王なのだけれど、それぞれが昔の名前で呼び合っているという不思議な状況が生まれてしまったのだ。
冷たい言葉を意に介した風もなく、初江王は巫山戯たように禿頭を叩いた。
「いやあ、だって文殊ちゃんをデートに誘ったんだけどさ。これが全然なびいてくれないわけ。だから寂しくなってさ、映姫ちゃんとこに来たの」
文殊とはおそらく文殊菩薩のことであり、宗帝王の事に他ならない。邪淫の罪を裁く閻魔をデートに誘うなど、同じ十王でなければ処刑されて当然だ。
「残念ですが、私はとても忙しいのです。お相手でしたら、他の十王の方々をお誘いになってください」
「ああ、そうだよね。映姫ちゃん忙しいよね。だってさ、色々と調べてるんだもん」
口調は軽いが、目つきは鷹のように鋭い。射抜かれた方は、ただ竦むしかなかった。
どれだけ軽薄な性格をしていようと、十王は十王だ。一介の閻魔ごときでは太刀打ちできるはずもない。
「もしかしてと思うんだけどさ、俺の判断に不満でもあったの? 査問委員会、何か間違っちゃってた?」
「い、いえ……ただ、何も聞かされていないので自分の方から情報を集めようかと」
嘘はついていない。閻魔たるものが偽りを述べるわけにもいかないから、当然と言えば当然の話だが。
初江王の視線は映姫を射抜き、やがて持っていた封筒にも向けられる。しまった、と思った時にはもう手遅れだった。封筒には管理する部署の名前が書かれている。十王の眼力の前では、それだけの情報で書類の中身は全て見通されたことだろう。
彼らの洞察力を侮ってはいけない。
「ふうん、そりゃあ情報を渡さなかったのは悪いと思ってるけどさ。でもでも、この事件と幽霊は関係ないと俺は思うがね」
被害者に関して調べることは不思議でも何でもない。むしろ、それすら与えてくれない初江王を責めたくなる。
だが、幽霊に関しては。確かに一見すれば奇妙にしか思えないだろう。
「些細な情報でも、一応は集めておこうかと思いまして……」
「ああ、殊勝な心がけだ。映姫ちゃんは相変わらず閻魔の鑑だね。感動したから、代わりに良いことを教えてあげよう」
机から下りた初江王が、子供でもあやすかのように腰を屈めた。さほど身長の低くない映姫であっても、初江王の高さには敵わない。
鷹のような目を狐のように細め、優しげな口調で言う。
「被害者のさ、千手いるじゃん。あれを裁判官に推薦にしたのって、俺なんだよね」
閻魔に相応しい神を選抜するのも、かつては閻魔王の役目であった。しかし全員が閻魔王を名乗るようになり、自然と十王全てが閻魔を推薦できる仕組みに早変わりしたのだ。
それに関しては秘匿性が守られおり、誰が誰を推薦したのかは分からない。
だから全く知らなかった。
「もしも千手が不祥事を犯していたとするじゃない。そうしたらさ、俺にも責任があるわけよ」
死神の責任は閻魔に及び、閻魔の責任は十王に及ぶ。至極当然の原理なればこそ、初江王が部屋で待っていた理由も自ずと理解できてきた。
「分かるよね、映姫ちゃん。千手の不祥事は俺の不祥事でもあるわけ。まさかさ、俺に逆らおうとか思ってないよね」
もしも被害者が不正な事に手を染めていたとしたら、浄玻璃の鏡は悪事を見逃さない。審理の最中に、映姫は知るだろう。だがそれを暴露するということは、ひいては初江王に喧嘩を売るということ。それを確認させる為に、わざわざこうして映姫の部屋までやってきたのだ。
軽薄な口調とは裏腹に、目は全く笑っていない。
「まぁ、仮に何か言ったところで当の本人はベッドの上だし。責任能力はもう皆無なんだよ。不正があったとしても、わざわざ裁くようなこともないじゃん」
「ですが、あなたの責任はどうなるのですか?」
「ん?」
威圧感は衰えない。それでも、どうしても映姫は言いたいことがあったのだ。
「閻魔の責任は十王の責任なのでしょう。でしたら、あなたにも取るべき責任があるはずです」
笑顔を絶やさぬまま、初江王は言う。
「映姫ちゃんは怖いなあ。そして真面目だな。じゃあ、しょうがないや」
屈めていた腰を伸ばし、見下ろされた。
「明日の法廷、浄玻璃の鏡は使用許可が下りないだろうね」
「なっ!?」
「だって映姫ちゃんたら、何だか被害者や俺に対して敵意があるみたいだもん。有ることないことでっち上げられて浄玻璃の鏡に映っていたなんて言われたら、みんなが困るじゃない? だからさ、明日は浄玻璃の鏡抜きで判決をしてよ。どうせ、もう決まってるんだから良いでしょう?」
一切の情報を与えられず、おまけに浄玻璃の鏡も見ることができない。全ての真相を闇に葬ったままで、小町に判決をくだせと言うのか。
これだけ隠匿を続けようとしているのだ。間違いなく、千手という閻魔にも何かしらの非があったのだろう。それも初江王に絡むほどの、何か大きな不祥事が。
悔しげに見上げたところで、初江王が怯むはずもない。楽しげに禿頭を叩きながら、映姫の横を通り過ぎていく。
「ああ、一応の忠告はしとくけどさ。これ以上、余計なことを調べないほうがいいよ。、映姫ちゃんが欲しがるような物は全く見つからないと思うからさ」
意味深な言葉を残し、初江王は部屋を去っていった。
震える身体を押さえながら、慌てて封筒の中身を確認する。重要視していた、もう一枚の書類。小町が当日、渡した幽霊のリストに目を通した。
そして、初江王の言葉が真実なのだと知らされる。
書類にはただ一言だけ。
『該当の資料、火事により焼失』
曰く、阿頼千手は裏で不正なことをしていた。
曰く、閻魔の中には生者と取引をして、多大な金と引き替えに生き返らせている者がいる。
この二つの噂話を耳にしていた映姫は、だからこそ幽霊のリストを欲しがった。もしも生前に閻魔と関わっていそうな人物がおり、その人物が多大な金を有しているのなら。あるいは、そこに何かしらの取引があったのかもしれない。
生き返らせる為にはまず、三途の川で一度幽霊を逃がさなくてはならなかった。戯けた幽霊を蹴落とすことすらある職場だ。失踪する幽霊がいても不思議ではなかった。
千手は小町に幽霊を逃がすよう頼み込み、それを断られたから襲いかかった。必死に抵抗した小町は思わず、持っていた鎌で千手を斬ってしまう。それが思いの外に効いてしまい、彼は酷い後遺症を負ってしまった。
自分の考えたストーリーではあるが、果たしてこれが正しいのかは分からない。浄玻璃の鏡も使用できなくなったいま、頼れるのは己の頭脳だけだというのに。
いかな名探偵だって、まったく情報がなければ何も推理できない。ましてや、映姫はただの閻魔だ。与えられた情報を吟味し、そこから判決を導くのが職務。推理や考察などは専門外なのだ。
駄目もとで各所も当たってみたが、いずれも成果は得られない。閲覧不可能なものもあれば、リストのように情報自体が削除されているものすらあった。千手の具合を調べようにも、担当していたのはかの泰山王。十王たる一人で、医療関係の責任者でもある。
その泰山王は福引きで特賞を当てたらしく、部下に全てを任せて旅行へと行ってしまった。そして肝心の資料はやはり、閲覧不可。
ここまで隠匿しながら実は清廉潔白でしたなどというオチがあるわけもなく、調査を続けるにつれて疑惑は確信へと変わっていった。
だが、これだけでは何の意味もない。情報を秘匿しているから妖しいだなんて、法廷で言ったらその場で解雇されてしまう。法の庭で効力を発揮するのは、確固たる証言と証拠、それと浄玻璃の鏡のみ。あやふやな状況証拠など、鼻息一つで吹き飛ばされる。
「分かっていても、どうすることもできないなんて……」
千手と初江王が何か不正を働いていたのは間違いない。だが、それが何なのか全く分からずにいた。
徒労だけを背負い込み、部屋へと戻ってくる。さすがにまた妖しげな坊主が机に座っているということもなく、出てきたままの部屋だった。
「おや」
机の上に青蓮華が咲いていた。土もないのに何故咲いた。首を傾げる。
とにかく奇妙な物と縁があるらしい、この机は。
『映姫さん』
「うわぁ!」
蓮華が喋り、思わず後ずさる。魑魅魍魎が跋扈する幻想郷においても、喋る花とはまだ出会ったことがない。居てもおかしくはないのだが、実際に出会ってみると奇々怪々としか表現できなかった。
『驚かせて申し訳ありません。あなたと直接会うわけにもいかないので、この子の身体を借りることにしたのです』
女の人か、はたまた声の高い男の人か。蓮華から聞こてくる声に、映姫は聞き覚えがあった。
「もしや、宗帝王様ですか?」
『はい、いかにも』
是非曲直庁の中でも、宗帝王の性別に関しては禁忌中の禁忌とされている。映姫を閻魔に推薦したのは宗帝王なのだが、その映姫ですら本当の性別は知り得ていない。声で性別を判断できないのも、無理からぬ話なのだ。
たとえ容姿を直接見たところで、いやむしろ見た方が判断は困難を極める。それを面白がっているのか、宗帝王は何故か巫女の衣装をいつも着ていた。そもそも十王でまともな服装を日常で着ている者は少なく、初江王にしたって正装をしているのは畏まった場だけだ。
『どうしても、あなたに伝えておきたいことがありました。初江王に関することです』
何度も脳内で繰り返してた言葉が聞こえ、慌てて姿勢を正す。
『単刀直入に申しましょう。彼は死者の蘇生に手を貸して、あちらの世界の人間から多額の報酬を受け取っていました。勿論、千手は彼に協力している閻魔の一人です』
言い方から察するに、初江王のお抱え閻魔は一人や二人ではないのだろう。それらの殆どが関わっているとなれば、これは是非曲直庁を揺るがす大事件になりかねない。まさか、それを防ぐために映姫へ連絡をしてきたのか。初江王に関しては何も言うなと。
『勘違いをしているかもしれませんが、私は映姫さんに警告をするつもりはありません。ただ、彼のやり方はあまりにも卑怯すぎる。確かに、私達はあなたの裁きで進退を決める権限を持っています。だからといって、全ての情報を秘匿していいわけではない。浄玻璃の鏡すら持ち出しを禁ずるなど、本来ならあってはいけないことです』
「……宗帝王様のお力で何とかなりませんか」
『残念ながら、初江王は査問委員会の委員長ですから。こういった事件に関しては、彼の方が権力を持っているのです。これが性的な乱暴であれば私の所にお鉢が回ってきたのでしょうけど』
宗帝王が裁くのは邪淫。性的な暴力ともなれば、その管轄は違ってくる。
だが、小町が振るったのはただの暴力なのだ。
『何も知らぬまま、鏡すら見ることなく裁きを下すなど映姫さんも不本意でしょう。だから、せめて真実の一端をあなたに教えようと思ったのです』
「有り難きお心遣いに感謝します」
『いえ、今回はあくまで特例です。今後はこのような手心を加えるつもりはないので、その点も気を付けてください』
「勿論です」
蓮華の花は微動だにせず、ただ花弁を天井に向けている。外の気配を探りながらも、映姫は宗帝王の話に耳を傾けた。
『事の発端は千手の手違いにありました』
死神は元々、さして地位のある職業ではない。閻魔の下働きのようなもので、降格させられて死神になる者がいるくらいだ。
担当者たる閻魔のみならずとも、閻魔そのものの命令を断ることには勇気がいる。小町とて、何度か映姫以外の閻魔から命令を受けることがあった。大抵は受けつつも、曖昧にこなして怒られるのだが。
「なに、難しいことをしろと言っているのではない。いつのものようにサボるか、あるいは私に協力してくれれば良いだけの話よ」
「そう言われてもねえ、最近サボりすぎて四季様に怒られたばっかりだし」
三途の川のほとり。これから仕事でも始めようかと思ったら、いきなり閻魔から呼び止められた。映姫よりも身長が低く、墓場の骨が動き出したかと思うほど頬は痩けている。目はくぼみ、肌も心なしか黄色い。
栄養失調の患者がいれば、おそらくはこんな身体をしているのだろう。不健康をそのまま形にしたような閻魔の言葉に、先程から小町は困るばかりだった。
「ならば尚更簡単なことだ。とある幽霊を指定の場所で下ろしてくれればいい。口実はほら、何だってあるだろう?」
幽霊も聞き分けのいい奴ばかりではなく、中には暴れて迷惑をかける奴らもいた。そういう時は遠慮無く、蹴飛ばして川の藻屑にしていた。閻魔もこれには目を瞑っており、映姫ですら表だって注意してくることはない。だが、まさかやってくれと頼まれる日がくるなんて。
「下ろしてどうするのさ。三途の川なんだよ」
「そこまで話す必要もなかろう。それで、どちらだ。サボるのか、それとも下ろしてくれるのか。手違いで担当がお前になってしまったから、こんな面倒臭いことをしているのだぞ」
小町の担当は幻想郷の幽霊であるが、ごく稀に外の世界の幽霊を運ぶことだってあった。今日はたまたまその日で、はてさてどんな話をしてやろうかと頭を捻っていた時のことだ。この千手という閻魔が話しかけてきたのは。
それでいて、してくるのは不可思議な注文ばかり。さすがの小町もこれには辟易し、もう仕事が始まりますからと適当な言い訳で逃げようとするのだが千手もしつこい。
「待て! 普通に仕事をされたのでは困る! 貴様も死神の一人であるなら、閻魔の命令に従ったらどうだ!」
「いやあ、あたいの上司は四季様だけですから」
だから敬語も使わない。これで怒られたことはないし。
「何が四季映姫だ! あんな石頭の閻魔の命令より、私を優先させるべきだろうが!」
「そりゃあ確かに石頭ですけど、あなたを優先させる理由にはなりませんよ。ああ、もういいですか。いいかげん、幽霊達も待ってるみたいですし」
「いいわけがあるか! 私の話はまだまだ終わっていないぞ!」
強引に服の裾を引っ張られる。振り払ってやりたいのは山々だけれど、相手は閻魔だ。礼儀を振りまくつもりはないが、乱暴を仕返すことだってできない。出来れば穏便にお引き取り願いたいところだけど、相手方にその意志はないようだ。
「こんな事は言いたくないが、あまり逆らわない方が良いぞ。お前だって死神を続けていたいだろ?」
「どういうことで?」
辺りの様子を窺って、千手は小声で囁きかける。
「十王様のお一人、初江王様が関わっておられる。迂闊に断ろうものなら、お前どころか四季映姫の首だって飛ぶぞ」
ここでまさか、十王という名前が出てくるとは思わなかった。もしも本当だとすれば、脅しは脅しでなくなるだろう。並の死神ならここで怖じ気づき、千手の言うがままになっていた。
だが、生憎と小町は並の死神ではない。閻魔に関する忠誠心は、並よりも下だったのだ。
「十王様が相手だろうと、あたいには関係ないことだよ。命令したいなら、四季様を通してくれ。あの方の命令だったら、あたいは喜んで従うよ。サボるなという命令以外は」
死神としては失格だけれど、映姫に対する忠誠心だけは人一倍持ち合わせていた。十王の命令を聞かず、担当の閻魔にだけ従う。そんな死神、千手の人生においても一度たりとて出会ったことがなかった。
だから焦ってしまったのか、それとも元から悪意があったのか。
「貴様は知らないだろうが、四季映姫というのは到底閻魔という職業から程遠い所にいる女ぞ。忠義を尽くす必要などあるまい」
「四季様は閻魔の鑑だから、そうは思わないねえ」
「あやつの元になった女の話を聞いてもか?」
映姫は元々地蔵であった。それ以外の過去など、小町は一切知っていない。
それで良かった。映姫は何やら話したくなさそうだったし、無理してまで聞くような事でもない。それよりも好きな酒とか、好きな動物を知った方が遙かに役立つ。
だから衝撃は大きかった。
「あやつはな、人を殺めすぎて処刑された女ぞ。あまりに多くの者を殺めすぎたがゆえに、地蔵として封じられることになった」
千手は言った。憎い相手の悪口を言うように、愉しそうな顔で言った。
気がつけば、手の中の鎌が千手の首筋に当てられている。
「おお恐ろしい。殺人鬼の部下はもやはり殺人鬼であったか」
「黙った方が良いと思うよ。あたいの事はどれだけ馬鹿にされようが腹も立たないけど、四季様の悪口だけは許すわけにはいかないんだから」
愉快愉快と、千手は大笑いで腹を抱える。
「悪口ではない、事実を言ったに過ぎんよ。初江王様の御言葉だ。嘘偽りなどあるはずもなかろう。それを庇おうと言うのだから、もしやお主は誑かされておるのではないか?」
「黙れ」
久しくあげていない冷たい声も、熱に浮かされた閻魔には届かない。
頼みを断られた怒りも混ざっているのだろう。笑いを崩さず、千手は続けた。
「邪淫を禁ずる宗帝王の部下が、まさか担当の死神を拐かしていたとは知らなんだ。あの石頭も、閨ではさぞや良き声で啼くのだろう? それとも啼くのはお主の方か。気を付けよ、油断すれば手にかけられて首を落とされ」
「その口を閉じろ!」
咄嗟に振り上げた鎌はそのまま、千手の身体に向かって振り下ろされる。
血しぶきをあげながら、一人の閻魔が倒れ伏した。
三途の川に流れていく。赤い赤い閻魔の血液が。
愕然とする他ない。温厚な小町を怒らせたのは、映姫自身の事だったのだから。
悔しくもあるが、千手の言葉は真実である。かつて映姫の元となった地蔵は、多くの人間を殺めた者の魂を封じる為に作られた。参拝に訪れる者もなく、このまま朽ち果てていくものだとばかり思っていたのに。ふらりと現れた宗帝王が閻魔として推薦してくれたのだ。
当時はかなりの反発もあり、初江王も有り得ないと一刀両断にしたそうだ。それでも宗帝王の強い勧めのおかげで、はれて映姫は閻魔となることが出来た。
波瀾万丈に満ちた経歴なれど、それを大っぴらに語ることには躊躇いを覚える。だから小町には黙っていたのだけど、あるいは話してしまった方が良かったのかもしれない。小町は何も、映姫を馬鹿にされたから斬ってしまったわけでもないのだろう。
無論、それもあった。だが大部分は、そんな過去を認めたくないという拒絶の現れだったのではないか。千手の言葉を否定したくて、それが暴力となって具現化してしまった。
『千手のした行為は許されざるものです。精神状態が正常ならば、五官王によって裁かれているところでしょう』
罵詈雑言に関しては五官王の管轄だ。この事が明るみになったら、千手はその裁きを受けていたことだろう。あくまで、病院のベッドから出てこられたらの話だが。
『ですが忘れないでください。たとえ千手の言動に問題があろうと、初江王が不正を働いていようと。あの死神が犯した罪は消えることがないのですから』
そこに如何なる事情があろうと、閻魔への傷害は重罪である。しかも酷い後遺症を与えたとなれば、正当防衛でもない限りは死罪を免れることなんて出来ない。
机にもたれかかりながら、ぐったりと映姫は腰を落とした。頭の上から蓮華の声が聞こえてくる。
『少なくとも、死神に関しての判断で初江王は間違っていませんでした。もしも明日、あなたが死罪以外の裁量をするならば閻魔の職は辞して貰います』
それは即ち、死神として働いて貰うということだろう。小町が存命だとすれば、そういった未来もありかもしれない。だけど、現実はそれほど甘くないのだ。映姫が間違った判断をすれば、二審で死罪を言い渡されるだけ。
『そのつもりで、明日の裁判に臨んでください。それと、これは本当に特例中の特例ですが死神との面会を十分だけ許可します。急いで牢獄へと向かい、面会を済ませて帰ってきてください』
「良いのですか?」
『十王の問題に巻き込んでしまったわけですから、少しばかりの誠意だと思って貰えれば結構です。それよりも、早く行きなさい。時間は待ってくれませんよ』
ショックを受けている暇などない。急かされるように映姫は扉を開け、牢獄に向かって走り出した。
小刻みな足音にまさかと思った。
だけど、こんな所に来られるはずもない。明日の法廷における裁判官なのだ。みだりに被告人と会うだなんて、十王ならずとも誰だって許しはしないだろう。当の本人だて、規律は規律ですからとお目こぼしを却下する。
なのに、なのに。
「小町!」
鉄格子の向かい側に、映姫がいるのはどうしてだろう。
「四季様!」
映姫は悲痛な声で、小町は驚きの声で互いの名前を呼び合った。
訪れるはずのない訪問者。それが、どうして自分の所に。沸き上がった疑問を口から出すよりも早く、鉄格子を掴みながら映姫が崩れ落ちていく。慌てて駆け寄った小町が聞いたのは、謝罪の言葉であった。
「ごめんなさい、ごめんなさい……」
石畳の上に、転々と涙の跡が残っていく。
小町は悟った。映姫は全て、知ってしまったのだと。
浄玻璃の鏡でも使ったのだろうか。いずれは発覚することではあったのだが、まさかこれほど早くばれるとは思わなかった。気まずそうに顔を背け、頭をかく。
「四季様が謝ることじゃないですよ。悪かったのはあたいですから」
「違います。確かに手を出したあなたは悪かった。ですけど、その原因を作った私も悪かったのです。どちらか一方が悪かったわけじゃない」
そんな言い方をされては、反論など出来るはずもない。だって、それが真実なのだから。
泣きながら膝をつく映姫。そうしているとまるで、三途の川で現世に戻りたいと嘆いている幽霊のようであった。彼らがどれだけ願ったところで、もう現世に戻る方法などありはしない。それこそ、誰かが手をつくさない限りは。
だけど小町の場合は、誰が手をつくしたところで結末は変わらない。映姫のことだ。その点については分かっており、無駄な調査などしていないはずだ。
だからこそ、なのかもしれない。
明日の法廷を前にして、こんなにも弱々しい姿を見せているのは。
「許してくださいとは言いません。私は明日、あなたを裁きます。既に判決も裁量も決められた、茶番劇のような法廷で」
薄々は感づいていた。こういった判例が無かったわけではない。
以前も何度かあり、その全てが死罪であったのだ。小町だけ特例で、それを免れるわけもない。
「お願いですから、変な同情はしないでくださいよ。どうせ、あたいの運命は変わらないんですから」
「小町……」
わざわざ二審もあるのだ。映姫が判決を変えようものなら、どういう末路を辿るのかは赤子にだって想像がつく。
「ただ、一つだけ信じて貰いたいことがあるんです」
真剣な眼差しで映姫を見つめる。
どうしても、言っておきたいことがあるのだ。
「あたいは、後悔してませんから」
庁舎を抜け出し、映姫はある妖怪に会うために空を飛んでいた。
真摯な小町の笑顔が、胸の奥に突き刺さる。方法がどうであれ、小町は自分の為に怒ってくれた。だけど、自分は小町の為に何が出来る?
与えられた判決を読むだけか。そんなもの、むしろ小町を苦しめる。
泣いている暇はない。裁判は明日なのだ。
「ちょっと斬っただけなのに、こんな事になるとは思いませんでしたよ」
去り際に、小町はそう言った。死神の鎌が飾りであるならば、あるいはもっと軽傷で済んだのかもしれない。後悔はしないと言っておきながら、やはり心のどこかでは悔やむ声があるのだろう。
映姫に心労をかけまいと、懸命に笑顔を絞り出してくれたのだ。そこまで尽くしてくれた小町に、何もしないなんて許せない。
初江王の不正など、探っている場合ではなかった。あんなものは小町の死罪という現実から逃れようとして、探っていただけに過ぎない。宗帝王の言葉は正しいのだ。初江王の不正が明るみに出たからといって、小町の裁量が変わるわけではないのだから。
情報を秘匿したり浄玻璃の鏡を封じたりしたのも、要は自分たちの不正を知られたくないからだ。実は小町は何もしておらず、全ては偽装だったという可能性など無い。
「ん?」
牢獄を後にして、庁舎の廊下を歩いていた映姫が立ち止まる。ふとした違和感は、彼女の足を縫いつけるように止めた。
不正を知られたくないのなら、どうしてわざわざ映姫の部屋になど来たのか。しかも自分たちの不正を匂わせるようなことを言いに。正直なところ、あのまま何の障害もなく調査を続けていたとしても初江王の不正を暴くことはできなかっただろう。
問題の幽霊が誰か分かったところで、そもそも管轄が違うのだ。映姫が頼み込んでも、詳しい資料は元から手に入らなかった。それを知りつつやっていたのだから、現実逃避と言わざるを得ない。
初江王だって、そんな事は分かっていたはず。だとしたら、どうしてヒントのようなものを与えにきたのだ。
「ふむ……」
あるいは、浄玻璃の鏡を封じることが目的だったのかもしれない。閻魔達しか知らないことだが、あの鏡は幽霊だけでなく、その幽霊が影響を与えた人物達についても暴いてしまうのだ。それを見ることによって、善悪いかなる影響を与えたのかを調べる。
だからもしも明日、法廷で浄玻璃の鏡を覗き込んだとしたら。そこに映し出されるのは小町だけではないだろう。自分もそうであるし、間違いなく千手に与えた影響についても映し出される。
それを恐れた初江王は、わざわざやってきて婉曲的な方法で鏡を封じ込めた。不正を見逃せと言われて、素直に映姫が頷くわけもない。そうなれば、後は難癖をつけて使用許可を下ろさないだけだ。
俄に思い浮かんだ想像は、しかし妙な説得力を持っていた。だからどうしたと、一方では冷静な理性が文句をつけてくる。その理由が分かったところで、小町の為になるわけでもない。それよりももっと他に、出来ることがあるだろう。現実逃避はもう止めろ、と。
「しかし……」
もしも不正の現場を見られたくなくて、鏡を封じ込めたのだとしたら矛盾が生じる。仮に鏡があったとして、そこに千手の不正が映し出されたとする。しかし、それは何の意味も無いのだ。
明日、行われるのは小町の裁判。そこで千手の不正を訴えたところで、可愛い部下に情状酌量の余地を与えようとする醜い工作だと見られかねない。ともすれば、映姫は降格させられるだろう。
だとすれば、初江王は何を恐れたのか。鏡を覗き込んだ時、一体何が見えるのか。
廊下の真ん中で立ち止まっていた映姫。訝しげに周りが彼女を避けて通る中で、ふとした考えが頭をよぎった。小町のあの言葉を信じるとしたならば、ひょっとすると映姫も小町も宗帝王ですら知らない事実が残っているのかもしれない。
もしも、これが真実だとしたら。
やにわに、映姫は走り出した。
自分ではどうやったところで、それを示す証拠を手に入れる事が出来ないだろう。他の誰にだって不可能だと言い切りたいところだが、生憎と幻想郷はそれを許さない。
映姫の知る限りでは、それを可能とする人物が三人ほどいた。
時間を止める十六夜咲夜。無意識を操る古明地こいし。
そして隙間を操る八雲紫。
映姫は迷うことなく、紫の家へと向かったのだ。
幸いなことに、紫はまだ冬眠していなかった。
「え、閻魔様!? 私に、な、何か御用ですか」
あからさまに動揺してくれるあたり、やはり自分が苦手なのだろう。それはまあ、いい。
息が整わないうちから、映姫は紫に頭をさげた。
「この四季映姫。あなたに一生のお願いがあってやってきました」
あたふたと戸惑っていた紫も、映姫の態度でいつもの冷静さを取り戻す。
「何でしょうか。閻魔様の頼みでしたら、よっぽどの事でない限りは融通を利かせますわよ」
残念ながら、映姫が頼もうとしているのはよっぽどの事なのだ。
白と黒で言うならば、躊躇うことなく黒と言い切る。だけど、どうしても手に入れたい資料があるのだ。
たとえ、それが罪に問われることになったとしても。映姫は後悔しないだろう。
「是非曲直庁の付属病院に忍び込み、ある資料を手に入れてきて欲しいのです」
驚き顔の紫を、さて、どうやって説得したものか。
つつがなく開かれた審理は、整理券が配布されるほどの傍聴人を集めていた。死神が問題を起こして裁かれることは珍しくないものの、傷害事件となれば話は別だ。大概は賄賂やらで裁かれるのが常で、こういった傷害事件に関しては滅多に起こることがない。
それだけに注目も大きく、加えて四季映姫の知名度もあった。あの閻魔は果たして、如何なる判決を下すのか。裁量に手心を加えるのか。
査問委員会の決定が判決なのだと、是非曲直庁の誰もが知っていた。だから検事席にも弁護士席にも誰もいない。
唯一、十王専用の席に初江王と宗帝王が座っているぐらいだ。宗帝王は難しい顔で黙りこくり、初江王は軽薄な笑顔で裁判官の映姫を見ている。
「それでは、これより被告人小野塚小町の裁判を執り行います」
紫への頼み事は引き受けて貰えたものの、やはりどうしても時間が掛かるらしい。なにしろ相手は是非曲直庁だ。いくら大妖怪とはいえ、何の下準備も無しに忍び込めば裁かれる側に回ってしまう。
今か今かと待っていたのだが、とうとう法廷が開かれてしまった。後は、どうやって時間を稼ぐかなのだけど。
既に判決が下されている裁判を、どうやって引き延ばせというのだろう。
「被告人、小野塚小町を証言台に」
手錠と鎖に繋がれた小町が、平素と変わらぬ表情で証言台へとのぼった。騒ぎ出した傍聴人を鎮める為に、木槌を鳴らす。
「被告人、小野塚小町は被害者である阿頼千手に暴力行為を働き、後遺症を残すほどの怪我を負わせた。相違ありませんか」
小町は躊躇わず、真っ直ぐに映姫を見ながら言った。
「間違いありません」
そしてまた、傍聴人が騒ぎ出す。いっそこのまま、しばらく騒がせ法廷を中断させてしまうか。そんな邪な考えも浮かび上がるが、二人の十王がそれを許さないだろう。
木槌で鎮め、小町を見下ろす。
「判決を下す前に、被告人。何か言いたいことはありますか」
普段ならばすぐさま判決を下すのだが、映姫はどうしても時間が欲しかった。十王達もこれを咎めることはできず、しばらくの沈黙が続いた後で小町が口を開く。
「あたいは出来の悪い部下だったかもしれませんけど、四季様の下で働けたことを嬉しく思ってますよ」
これから死罪を言い渡されるというのに、小町が浮かべたのは笑顔だった。本当に、心の底からそう思っているような笑顔。
そして小町は頭を下げる。
「四季様。今までありがとうございました」
木槌を握りしめる手が震えていた。唇だって、身体だって、何かを抑えるように小刻みに震えている。
目の端が熱くなり、ともすれば涙がこぼれ落ちそうになっていた。
「で、では、被告人、小野塚小町、に、は、判決、を……」
鼻を啜りながら、途切れ途切れに言葉を紡ぐ。
どれだけ真摯な態度を見せようと、判決が覆ることはない。ここで映姫が手心を加えたところで、小町の責任は減ったりしない。
「あ」
震えが止まる。
そして脳内を自分の言葉が駆けめぐっていった。
『確かに手を出したあなたは悪かった。ですけど、その原因を作った私も悪かったのです。どちらか一方が悪かったわけじゃない』
死神の責任は閻魔の責任だと言っておきながら、知っておきながら。
映姫は全ての罰を小町に押しつけていた。罪を背負いながら、自分だけはのうのうと変わらぬ日常を過ごそうとしている。どうせ此処で何か言ったところで、何も変わりはしないのだと諦めながら。
なんのことはない。初江王の不正を暴いたところで、嘘を見抜いたところで、映姫は一番大事なものを見落としていた。
罰を受けるのは、小町一人だけではないのだ。
「四季映姫・ヤマザナドゥ。判決を読み上げなさい」
宗帝王の厳しい言葉に目を覚ます。再び騒ぎ始めていた傍聴人を鎮め、小町の顔を見た。
自分の下で働くことを感謝してくれた死神がいる。ならば、上司として取るべき責任はとらなくてはならない。
「判決を申し上げます。被告人、小野塚小町を有罪とし……」
一端の間をあけて、映姫は言った。
「減俸十五年を言い渡します」
小町は驚き、傍聴人達は場所を忘れたように大騒ぎを始めた。
初江王は面白そうに禿頭を叩き、宗帝王は冷たい視線を映姫に向けた。騒がしい法廷にあっても、その凛と澄ました声はよく通る。
「四季映姫。それがあなたの判決なのですね」
「加えて、四季映姫・ヤマザナドゥを死神まで降格処分とする。これを含めて、私の判決です」
宗帝王が顔をしかめた。
「死神だけではなく、自らも責任をとるという事ですか?」
「死神の責任は閻魔の責任。それが道理というものだと私は判断しました」
「むっ……」
真剣な映姫の言葉に、思わず宗帝王も黙り込む。
代わりに前へ出てきたのは、これまで静観を決め込んでいた初江王だった。
「いやあ、さすが映姫ちゃん。閻魔の鑑だね。死神の責任は閻魔の責任とか、そういうの凄く格好いいと思うなあ」
巫山戯た口調は相変わらずだが、鋭い目つきはいつも以上に引き締まっている。このまま終わって一番腑に落ちない閻魔がいるとすれば、それは初江王だろう。
「でもさ、それは通らないんだよね。ほら、一応は俺の部下が再起不能になってるわけじゃん。なのにさ、その程度の処罰が判決だとか言われたら据わりが悪いわけ。分かるでしょ?」
「ええ、勿論。本当にあなたの部下が再起不能になっていたらの話ですが」
核心をついても、初江王の笑顔は消え失せない。
それどころか尚更面白そうに、腕を組みながら大笑いをしてみせる。
「実に愉快だねえ、映姫ちゃんは」
「私はあなたを恐ろしく思いますよ。だって、これすらも計算していたのでしょう」
「はっはっはっ」
「おそらく此処で私が何も言わなかったとしても、後々にあなたが私の責を問うたでしょうね。いずれにせよ、死神降格は避けられなかったはずです」
小町は死罪として、映姫は権力のない死神に引きずり下ろす。そうすることによって、初江王の不正を暴ける者はいなくなるのだ。
「確かに、映姫ちゃんにも責任はあるよ。だからさ、後でそれを問題にしようと思っていたのは事実。だけど、それで死神の罪が軽くなるわけじゃないよ。傷害罪は傷害罪だ」
「ですが、単なる傷害罪でしたら死罪とまではいかないはずです」
少ないものの、前例だって幾つかある。再起不能にした事例に関しては確かに死罪を言い渡されていたが、単なる傷害罪の場合はいずれもが減俸か降格であった。
死罪にまで発展した案件は一つとしてない。
「そりゃあ、ただの傷害罪ならね。だけどさ……」
「言ったじゃないですか。本当にあなたの部下が再起不能になっていたらの話ですが、と」
「ふうん、俺が嘘をついていると?」
見下ろせる位置にいながら、映姫は初江王に見下ろされていた。思わず言葉に詰まりそうなるけれど、ここで引き下がったら今ままでの事が全て水泡に帰す。退くことはできない。あるのはただ、前進のみだ。
「浄玻璃の鏡を使用させなかったのも、被害者が再起不能でないことを知られたくなかったからですね」
「……いやあ、そんなつもりはなかったんだけどね」
「では要請しましょう。浄玻璃の鏡を此処へ」
黙っていた宗帝王も、この発言に頷いた。
「初江王、この要請を断ることはできないはずです。そもそも、鏡もなくして裁判など言語道断。いますぐ、浄玻璃の鏡を此処へ持ってきなさい」
厳しい言葉をぶつけられても、初江王は動じることもない。禿頭を叩きながら、威張るようにして言った。
「それがさ、保管係がミスしちゃってさ。浄玻璃の鏡、割っちゃったの」
「は?」
「なんと!」
驚く閻魔達をよそに、初江王だけが愉しそうに語っている。
「そいつの責任も後で問うことにするけど、映姫ちゃんの要請はとりあえず却下ね。作り直すには一日以上かかるし、それまで裁判を引き延ばすことなんて出来ない。まさか閻魔王の奴が持ってる鏡を借り出すわけにもいかないでしょう?」
確かに閻魔王も浄玻璃の鏡を持ってはいるが、それを持ち出すなど前代未聞だ。許可など下りるはずもない。
「ごめんね、映姫ちゃん。鏡さえあれば、俺の潔白も証明できたんだけどなあ」
白々しい発言に歯がみした。疑うまでもなく、初江王が何らかの手段で鏡を割ったのだろう。万が一、持ってこいと言われた時の為に。
「四季映姫。鏡がない以上は、あなたの発言を真実だと認めるわけにはいきません」
「そうそう、この法廷でものを言うのは証拠と鏡だけなんだよね」
閻魔の裁判では証拠をあまり重要視していない。鏡さえあれば、それで全てが分かるのだから。
だけど鏡は割れてしまった。
後に残されたのは証拠のみ。しかし、それすらも初江王は封じていたのだ。
一切の資料は手元になく、見聞きした情報とて全てが宗帝王からのものだった。
不手際だらけの千手とは桁が違う。もしも初江王が全て取り仕切っていたとしたら、そもそもこの事件は起きなかっただろう。不正は無事に終了し、目的の幽霊は見事に生き返っていた。
「証拠も鏡も無いんじゃあ、どうすることもできないよね。まぁ、判決はもう下しちゃったわけだし。死神の処分は二審で判断するとして、とりあえずは映姫ちゃんをどうしようかね。一応さ、俺も十王だからなあ」
「おそらくは五官王の管轄でしょうが、禁固刑は免れないでしょう」
「四季様……」
不安な声が聞こえてくる。振り向くまでもなく、それは小町のものだろう。
誰よりも映姫を心配していた小町にとって、この結末はあまりにも理不尽に見えたはずだ。
せめて、紫に頼んだ資料が届きさえすれば。
くしゃり、と腹に何かを押しつけられる。
ふと下を見てみれば、スキマから伸びた手が書類を映姫の腹に押しつけていた。
「ご依頼のもの、確かにお届けしましたわ。これで閻魔に貸し一つ、ですね」
最初は渋っていた紫も、閻魔に貸しが作れると気付いてからは協力的だった。何をさせられるのか、今からとても不安だけど。
机の下に小声で話しかける。
「まるで図ったようなタイミングですね。あなた、様子を窺っていたでしょう」
「何のことでしょう。私はただ、一生懸命頑張ってお届けしただけですわ」
「……そういうことにしておきましょう」
斬られた被害者は都合よく再起不能になり、調べようとした資料は都合よく紛失し、見ようと思った鏡は都合よく割れていた。
こんなご都合主義の事件には、都合よく現れた大妖怪の都合のいい資料こそが相応しい。
「どうしたの、映姫ちゃん?」
「いえ、初江王様の言葉を反芻していただけです。確かに、この法廷でものを言うのは鏡と証拠。鏡が割れたのであれば、残るのは証拠だけ」
押しつけられた書類を、見せつけるように掲げた。
「ですから、お望みどおり証拠を用意しましたよ」
「え?」
「これは、被害者である千手の診断書です」
映姫の言葉に初江王は笑う。当然だ。そんな大事な資料、映姫が手元に持っているわけはない。
「いけないな、映姫ちゃん。偽造は重罪だよ」
端から疑ってかかる初江王とは違い、宗帝王は真剣そのものだ。手招きするような仕草をした途端、書類が意志を持っているかのように宗帝王の手元へと飛び込んでいった。
それに目を通していくうちに、宗帝王の顔色が変わる。
「た、泰山王の判が押してあります……」
「馬鹿な!」
十王が一人、泰山王。初江王が査問委員会の委員長をしているように、泰山王は医療関係の総責任者を務めていた。彼の判が押されているということは、その書類が本物であることを何よりも証明している。
「嘘だと思うのならご覧なさい。初江王、あなたも知っていると思いますが十王の判は絶対に複製不可能。いくら映姫さんが努力したところで、この診断書を偽造することはできない」
軽薄な笑顔も、今ではすっかり昔の話だ。初江王の顔は青ざめ、信じられないものを見るような目つきで何度も何度も診断書に目を通している。
「そして何よりも問題なのは、そこに書かれている内容が映姫さんの推測と寸分変わらぬということです」
動揺する初江王に対し、映姫は告げる。
「お聞かせ願えますか、初江王様。全治一週間というのは再起不可能になるほどなのですか?」
「ううっ……」
「後遺症無しと書かれているのは、医師の診療ミスなのですか?」
「ぐぅっ……!」
「泰山王は旅行に出かけているそうですが、それもあなたが仕組んだことなのですね。もしも泰山王がいたとしたら、この事件に関して何か口を挟んでくるかもしれない。だからあなたは先手をうった」
「ぐぉぉぉぉぉぉ!」
書類を握りつぶしながら、憤怒の形相で映姫を睨み付ける。いくら脅したところで、いくら取り繕ったところで、もう全ては手遅れなのだ。
「初江王、どうやらあなたから詳しい話を聞かないといけないようですね」
法廷の視線を独り占めしていた初江王は、雄叫びをあげた後は俯いている。小刻みに震えながら、何度も何度も床を壁を叩いていた。
「諦めなさい、初江王。全ては終わったのですよ」
宗帝王の発言で、ピタリと震えが止まった。そして、気が付けばいつもの軽薄な笑みを取り戻していた。宗帝王の視線にも負けず、まいったまいったと大笑いで腹を抱える。
「いやあ、さすがは映姫ちゃん。閻魔の鑑だねえ」
追いつめられて、全てを暴かれて。それでもなお、この笑顔。
「色々と手は尽くしたんだけどね、やっぱり証拠には敵わなかったか。ははは、こう見えても閻魔は長いんだけど。まさか自分が証拠に負けて終わるとは思わなかったよ」
肩をすくめ、初江王は笑顔を絶やさぬまま言った。
「じゃあ、行こうか宗帝王。判決は既に下った。俺たちの出番はもう無いんだよ」
その時ばかりは、法廷中の誰しもが認めざるを得なかった。
この人は、間違いなく十王なのだと。
冷や汗の連続だった。底意地の悪い大妖怪がもっと早く診断書を渡してくれれば、これほど心臓に悪い戦いをしなくても済んだのに。
自室へと戻ってきた映姫は溜息をつき、慣れしたんだ椅子へ腰を降ろす。
だが、もしも紫が早く来ていたならば。自分はきっと、これから先もこの椅子に座り続けただろう。小町一人に罰を背負わせながら。
「狙っていたのか、それとも偶然だったのか」
大方、気付いていたのだろう。そうでなければ、それこそ都合がよすぎる。
背もたれに体重を預け、天井を眺めた。この光景も、明日になれば見ることができなくなるだろう。初江王が逮捕されたからといって、判決は変わらない。明日の法廷でもおそらくは、映姫が決めたそのままの裁量を下されるはずだ。
今の内に荷物を纏めておいた方が良い。ここは閻魔だけが使える部屋なのだから。
荷造りを始めようかと思った矢先、乱暴に扉が開かれた。
「四季様!」
「小町!? ど、どうしてここに!」
罪人は罪人。間違っても、閻魔の部屋に入ってこれるはずもない。
抱きついた小町をよそに、首を傾げる映姫だったが、静かに部屋へと入ってきた人物を見て納得がいった。
宗帝王は微笑みながら、仲良く抱き合う二人を観察している。
「法廷でも感じましたが、あなた方は本当に仲睦まじいのですね」
「サボり癖はありますが、信頼できる部下ですから」
「あなたも何かと労働力がいるだろうと思いましたので、一時的にですが拘束を解除しました。夜には牢獄に戻ってください」
人目も憚らず抱きついて、流す涙を映姫の服で拭いている。平素なら悔悟の棒で叩くところだけれど、死罪を免れたのだ。これぐらいは大目に見てやらないといけない。
「しかし、あれで良かったのですか。ただの傷害罪となれば、逆に罰の方が重すぎる。今でしたらまだ、死神への降格処分を緩めることだって出来ますが?」
「いいえ、それで良いのです」
映姫は首を左右に振った。泣いていた死神が、おもむろに顔をあげる。
「どうしてですか、四季様。このままだったら、四季様は閻魔でいられないんですよ!」
「一時とはいえ、私は全ての罰をあなたに押しつけようとした。その行為は間違いなく、白か黒かで言うならば黒なのです。私が犯した罪はあなたに全てを打ち明けなかったことだけではないのですよ。だから、この処分が妥当なのです」
既に決めたことだ。それは小町も理解しているのだろう。それ以上、何も言うことはなかった。
「決意は固いようですね。でしたら、私にも何らかの処分をくだすことにしましょう」
「宗帝王様!?」
厳しい顔で、目を瞑る。
「十王が裁判にかけられるような事があれば、何かしらの問題が起こるかもしれない。だから私は初江王の悪事を知りながら、裁くことを拒んでいた。これも立派な罪だとは思いませんか?」
十王の地位に穴が空けば、是非曲直庁は上へ下への大騒ぎになるだろう。現に、その兆候は現れ始めている。明日の裁判が終わったならば、間違いなく未曾有の大惨事がこの局を襲う。
もっとも、その頃には映姫も死神となっているのだが。
「死神の責任は閻魔の責任。閻魔の責任は十王の責任。私もそう思いますよ、映姫さん」
言うべきことを告げ、宗帝王は背中を向ける。
最後に一言。
「また、この部屋で会える日を楽しみに待っています。今度は、あなたが心おきなく働ける環境を作っておきますから」
そして宗帝王は去っていった。どうやら、明日の裁判もタダでは済まないようだ。
今から胸が苦しくなる。
「さて、小町。荷造りを始めましょうか」
「え、あ、はい!」
威勢の良い返事が気持ちいい。久しく聞いていなかったと思ったものの、よくよく考えれば小町が捕まったのは二日前の出来事だ。長い戦いに思えたのに、時間の流れは案外緩やかなものらしい。
書類を束ねる小町を見ていて、ふと映姫はある事に気が付いた。
「小町」
「はい」
「ひょっとしたら、私はあなたの後輩になるかもしれませんよ」
「えっ!?」
死神と言ってもやるべき仕事は多々存在している。中でも三途の川の船頭は不人気で、年がら年中人手不足だった。この時期に配属されるとしたら、間違いなくそこだろう。
どうやら、これからは小町のことを先輩と呼ばなければいけないらしい。規律に厳しい映姫のことだ。そこはしっかりとケジメをつけておく必要があった。
「気を付けておきなさい、小町先輩。今後は厳しい後輩が、あなたのことをずっと見ていますよ」
「うぐっ、注意します」
苦虫を噛みつぶしたような顔を見て、思わず吹き出してしまう。
それを見て、小町の方にも笑顔が戻ってきた。互いの顔を見合わせて、腹を抱えながら笑顔を交わした。
これから今まで以上に、顔を付きあわせるであろう先輩と向かい合いながら。
映姫の裁判は閉廷を迎えた。
この二人は良いなぁ。
全くこれだからおまえさんのSSはかっぱえびせん・・・
連座という制度、現在も無いわけではないですが、基本部下のやった責任を取るのは政治的な責任に過ぎないことのほうが多いわけですし、死神の責任を閻魔が取るということが法制度としてあるのなら、死神を落とすことで簡単に閻魔もひきずり落とすことが出来てしまうわけです。
ただ物語的にはこれでもよかったのかもしれません。映姫は過去に縁故採用されたようなもので、そのことに対する責任をとったような形にもっていっているようにも読めるわけですから。
また、各々の閻魔のキャラ立ちもパーフェクト
文句無しに100点です
主人公が裁判長というのもなかなか…
この後、映姫様は小町と同じ格好をして船頭をやるんですね!
思わず唸りました。文句なし!
初江王が逆栽の巌徒さんにしか見えないwww
最高の作品をありがとうございます
でも、単なるオマージュじゃなく、作品としてのクオリティも高いのはさすが
点数以外で感想を伝えられないのが心苦しいですが、とにかく面白かったです。
さぁ後輩から叱責されることになるこれからの小町の命運やいかに?w
緊迫感がありますね。
お見事!
文句なしです。
チート能力者揃いの東方でこんな作品を書けるとは
えーき様と小町の絆もみていて気持ちよかった
他にも言いたい事は沢山あるけど、これから三途の川に行って死神達の仲睦まじい姿を見てこなくちゃいけないから、これくらいで
個人的には、ゆかりんがイイ隠し味になってて良かったです。
この方の登場でだいぶ物語の雰囲気が柔らかくなった気がします、いい意味で。
あと42氏と被りますが四季様の身長を原作にあわせているのが嬉しいw
ゆかりんがチョイ役っぽかったけどいい味だしててGJ!
リアル主義の作風は大好物なので100点じゃ足りないくらいです。
次も楽しみにしています!
登場するキャラが皆良い味を出していました
この二人にはずっと良い仕事仲間であって欲しい
よかった!
とやかく言わず100点を付ける事が俺に出来る善行だな。
それじゃ何が起こるか分かったもんじゃない…
作者は事の瑣末を書く責任があるようだ
登場キャラみんなに持ち味・魅力があって最後までのめりこんで読んでしまった。
えーこまの株が上がりすぎて俺のハートがヴォルケイノ!
ブラボー
アレはアレで良かったですが、この作品も良かったです。
なんか胸が熱くなりました。
この二人のコンビ、探偵に転職しても良いのでは……小町ワトソンとかで。
出来の良い法廷ものミステリーとしての筋立てと、小町、映姫のキャラの魅力がまっすぐ伝わってきました。
あ。ゆかりんがそんな計算できないわきゃないか。
本当にギリギリだったのか…GJ!
そして読み終えて脱力
えいきっき好きの自分にとっては忘れられない名作になりそうです
面白かったです。
素晴らしかった!!
でも、小町の鎌は殺傷能力無かったはずじゃ?
あと、初江王は最後だけ急に潔くなったのは違和感がありました。
良くも悪くも軽妙すぎる語り口が原因なのでしょうね。
話の筋自体は面白かったです。なのにさらっとしすぎて胸に残らなそうなこの感覚は新鮮で、むしろもったいなく感じました。
裁判関係の手続きなどにすごく説得力があり、すごく研究されたのだろうなぁと思いました。
それにプラスして構成が素晴らしいと思いました。
また、是非曲直庁が病院を管轄しているのには驚きました笑
登場人物の半分以上がオリキャラなのに、まったく安心して読ませるあたり作者の力を感じました。
映姫さまが閻魔に大抜擢された理由など、匂わせておきながら真実が明かされなかったところは少し残念でした。
偉いさんだから誰も診断書すら見ずに決定?
んなばかな
でも、小町のために奔走する映姫は良かった