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「お嬢様、紅魔館史上最大の一大事でございます」
「ふぁい?」
冷蔵庫の中のプリンをつまみ食いしていたレミリアの後ろで、
美鈴はとても深刻な表情を浮かべていた。
「……このプリンがパチュリーの物とか?」
「違います、とにかく来てください」
「えっ! ちょっと待って! まだ半分も食べて無いのにぃぃぃぃーーー……」
美鈴に羽を掴まれ、引きずられていくお嬢様、
廊下をずかずかと進みながら、向かう先は客間である。
「お嬢様、すこし前に来客用にソファーを購入したことは覚えていますか?」
「ソファー? ああ、咲夜がなんか言ってたわね、もっちりなんとかソファーだったかしら?」
「もっちりふかふかふんわりひろびろスーパーデラックスソファーです」
「……で、そのソファーがどうかしたの?」
「実はですね、そのソファーで……」
美鈴は客間の扉の前まで来ると、人差し指を口元に立て、
静かにするようレミリアに促しながら、そっと扉を開いた。
「咲夜さんがお昼寝してるんです」
「…………」
ぐわし、とレミリアの小さな手が美鈴の頭を鷲づかみにした。
「脳味噌をぶちまけて死ぬか、頭を潰されて死ぬか、選べ」
「どっちも同じだと思います……って待ってくださいよ、珍しいとは思わないんですか?」
「人間が眠るのは普通の事でしょうに」
「じゃあお嬢様は咲夜さんが寝てるところみたことあります?」
「そんなの当然よ……あら?」
ふと自分の記憶を振り返り、レミリアは頭を捻る。
「無かったわ」
「ですよね、私も記憶にありません」
そして二人は引き寄せられるように抜き足差し足で咲夜の元に寄る、
彼女は極上のソファーに横になり、子供のように丸待って眠っていた。
「かわいい寝顔ですねぇ」
「……くだらない、主が起きているのに寝ているなんて従者失格よ」
「まぁまぁそういわずに、きっと疲れてるんですよ」
「知ったことじゃないわ、ほら、起きなさい咲――」
それはレミリアが咲夜を起こそうと、その右手を顔に向けて延ばした瞬間の事だった。
「ん……お嬢……様……」
「っ!」
「すぅすぅ……」
突然の寝言にレミリアの羽がピンと釣り上がる、そのまましばらく固まっていたかと思うと、
やがて小さく震えだし、静かに客間から飛び出していってしまった。
「お、お嬢様……?」
美鈴が呆気に取られつつも、再度咲夜の寝顔を楽しもうと振り返る、
しかしその時にはすでにレミリアは客間へと戻ってきていた、
それも青い顔を浮かべたパチュリーを脇に抱えながらである。
「……はい、断音結界を張ったわ、これで咲夜に対する外からの音は遮断されるはずよ」
「ふぅん、これでどれだけ騒いでも咲夜には影響は無いのよね?」
「ないわよ、まったく……突然連れてきて静かにさせるとか、何がしたいのよ」
「決まってるじゃない、叫ぶのよ」
「叫ぶ?」
レミリアは問いに答えると、軽く息を吸い込んだ。
「咲夜マジプリティー!!」
「咲夜さんマジプリティー!!」
「……私はそんな理由で酸欠に追いやられたのね」
パチュリーは額に手を当てつつ溜め息を付く、
後ろではレミリアと美鈴がひっきりなしに叫び続けていた。
「ああもう、起きたら覚悟しなさいよ」
そう言いつつ、パチュリーは咲夜の頬をつんつんとつついた、
しかしそれが新たなる犠牲者を生むこととなる。
「あむっ」
「むきゅっ!?」
「んむ……んちゅ……ちゅぱ……」
「む……むきゅきゅ……!」
赤子のようにパチュリーの指をしゃぶるその姿をみて、パチュリーは何かを奪われる、
やがて客間にあるただ一つの窓の前に、三人は一斉に並び立った。
「咲夜マジプリティーーー!!」
「咲夜さんマジプリティーーー!!」
「咲夜マジプリティーーゲホゴホッ!!」
それは三人の心が一つになった瞬間である。
「ふふ、プリティね……」
「これだけで紅茶が何杯でもいけそうですよね」
「たまには本以外を眺めるのもいいわ」
三人は対面のソファーに並んで腰をかけ、咲夜を楽しみつつ紅茶を味わい、
時には紅茶を楽しみつつ咲夜を味わいながら、至福の時をすごしていた。
「多分時間を止め忘れたんでしょうね、ぐっすり眠ってますよ」
「うっかりさんねぇ咲夜は、しょうがない子なんだから……うふふ」
「室温を調整したわ、これでもっと心地よく眠ってくれるはず」
レミリアも美鈴もパチュリーも、とても微笑ましい表情を浮かべていた、
しかし突然、何ものかが窓ガラスをハリウッド映画さながらにぶち破りながら客間に現れた。
「咲夜がマジプリティと聞いて永遠亭から走ってきたわ!」
『八意永琳!?』
続けざまに客間の扉が縦横無尽に切り裂かれ、その奥からまた一人姿を現す。
「咲夜さんがマジプリティと聞いて庭師を辞めてきました!」
『魂魄妖夢!!』
さらには天井を突き破ってまで現れる者も。
「咲夜さんのマジプリティな場面を写真に残しませんか!?」
『射命丸!!』
そう、彼女達は紅魔館の外に存在する十六夜咲夜を愛する者達、
レミリア達のマジプリティな叫び声を聞いた以上、駆けつけざるをえないのだ。
「ふ、貴様達に見せるマジプリティなどない……と、言いたいところだが」
突如現れた三者をレミリアは威圧しながらも、言葉を続ける。
「咲夜のプリティさは全員で等しく堪能すべき、そうは思わないかね?」
『イエス! イエス! イエス!!』
レミリアは喋りながら新たなソファーと紅茶の準備を終えていた、
同じ者を愛でる者同士、たまにはこういうカリスマサービスも必要なのだ。
「うふふ……プリティだわぁ、長年生きてきた中で最高のプリティね」
「私も咲夜さんみたいなプリティな寝顔ができるようになりたいな……」
「あれっ、もうフィルムがありませんね、しからば網膜に焼き付けるとしますか」
咲夜の寝顔を堪能する者、しめて六名、
全員が至福の表情を浮かべつつ熱い吐息をぽつりぽつり、
しかしながら、永遠に続くと思われたその時もやがて終わりを迎える。
「ん……」
目覚めである、すでに美鈴が咲夜の睡眠を確認してから三刻が経っていた、
六人は訪れたこの時に少しの寂しさを感じながらも、
この幸せを与えてくれたプリティなメイド長の目覚めに満面の笑顔を送る。
「んふぁ……お嬢様……?」
「おはよう、咲夜」
「おはようございます、咲夜さん」
「おはよう、よく眠れたかしら?」
「ふふ、おはよう」
「お、おはようございますっ」
「おはようございます、もしよろしければお目覚めの一言をいただけますか?」
「……ふぇ?」
その予想だにしない状況に咲夜は固まっている、ピクリとも動きはしない、
やがて色々と察したのか、徐々に顔を赤らめはじめた、それから数秒が過ぎて
ようやく動き出したかと思うと、口をパクパクさせながらさらに顔を赤くする、
そして一度うつむくと、両の手で真っ赤になった顔を覆い、泣いて鳴いた。
「ふ……ふぇぇぇん……」
『咲夜(さん)マジプリティ!!』
異論は認めない。
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パチュリーが指をしゃぶられたときの反応とか咲夜さんとか良いですね。
後書きも面白かったです。
あとがきが…………www
フランかわいそうだなwwwww
何気に銀髪高いし(笑)
>>私のプリン……
フラン……(;ω;)ウゥ...
フランかわいそうにwww
だがなぜ魔理沙が来ない
咲夜さんマジプリティ!
ときに、ふらんちゃん、お兄さんがプリンをあげるからこっch
フランちゃん、逆に考えるんだ。
『お姉さまが半分残したプリンで間接キスktkr』
と考えるんだ。
あと61に神降臨w
マジプリティーwww
あれ? キーボード打ってるだけなのにテンションあがる
フラン、どんまい…w
そして後書きwwww
フランちゃん、トホホ
イヤッホォォォゥ!!咲夜さんマジプリティー!!!
マジプリティー!!!!!!!!!!!!!!!!!
咲夜好きのえーりんとか俺得すぎるでしょう
誰も見てないよね?よし…
咲夜さんマジプリティーーー!!!
でも、これがいい。
フランドールは怒っていい