珍しいことに、静かだった。
守矢の神社のお昼時。ちゃぶ台を囲む二柱と一人が、静かに昼食を口に運ぶ。
誰ひとり何も話すことなく、もくもくと。
仲が悪いということではない。むしろ家族のように仲睦まじい彼女達に、何故か今日は会話が無い。
喧嘩をしたというわけではない。もちろんたまには喧嘩をするのではあるが、そのあときちんと仲直り。長年連れ添ってきた神様と、彼女達を奉る風祝には、そういう関係がある。言葉に出来ないような、そんな密な関係。
だからこそこの静かな昼食に、妙な違和感を覚える者もいるだろう。常日頃笑いの絶えない神社をよく知る者なら、尚更だ。
しかしそれは杞憂に過ぎない。そしてそんな違和感を、食事中の彼女達は感じてなどいない。
いくら親密だからといって、自分の全てを洗いざらい話す必要性は無い。この神社には、きちんとそれぞれのプライベートというものが存在していた。
早苗だけの。神奈子だけの。諏訪子だけの。
他が入る事はほとんど無いであろうプライベートに、ずかずかと入り込む事を彼女らはしない。意識的になのか無意識的になのか、密な関係を保つために必要な「壁」が、彼女達にはある。
静かな昼食の席、それぞれの間には「壁」があった。
早苗が、神奈子が、諏訪子が。それぞれのプライベートの何かしらを考えながら、早苗が作った昼食を食べている。いつも通りの、おいしいご飯。
カチャカチャと食器の音だけが、茶の間に広がる。晴れた今日の空の下で風が吹けば、さらさらと流れる葉の音がときどき。
「いただきます」と揃って言ってからそれっきり、誰も何も話していない。そんな心地のいい、静かな時間だった。
そんな中ふと、早苗は思い出した。麓の神社の巫女、霊夢に頼まれていた事がある。
分社を置いてほしい、との事だった。彼女にしては珍しい、神社絡みのお願い。
参拝客が少しずつ増え始めた守矢神社。その神社の分社が、博麗神社にはある。博麗神社を訪れる人は、同時に守矢神社の事も知るのだ。
この幻想郷で博麗神社を知らない者はそうそういないだろう。が、博麗神社を参拝する者もまたそうそうはいない。参拝客は圧倒的に、守矢神社のほうが多い。
それに目を付けた霊夢が、逆に博麗神社の分社を守矢神社に作ってほしい、そう言ったのだ。
「あんたんとこの神様に頼んどいてよ」と頼む霊夢の言葉に、早苗は首を縦に振った。
そんな事をふと思い出した。忘れないうちに尋ねておこうと早苗は口を開く。
「ねぇ、お母さ……」
早苗のそんな言葉が、静けさを破った。
神奈子の、諏訪子の箸が止まる。二柱で顔を見合わせて、そして早苗のほうを、じっと見る。
自分が何を言ったのか、早苗はようやっと気付いた。
顔を真っ赤にして、神奈子の顔を、諏訪子の顔を見る。何とも言えない、けれど優しい笑顔。それが痛くて、真っ赤な顔のままで早苗は俯いた。
「なんでも……、ないです……」
「……そうかい」
か細い早苗のそんな言葉に、神奈子はその一言を返す。そしてそれからにやにやと、神奈子が言った。
「どっちが、お母さんだい?」
「……どっちでもいいじゃないですか」
「いいや、よくない。神奈子と私、どっちが早苗のお母さんかこの際はっきりと……」
諏訪子もそんな風に言う。けらけらと軽い笑い声が上がった。
「どっちもお母さんでいいですよ、もう!」
「ん? 照れてる?」
「照れてませんっ!」
真っ赤な顔のまま反論する早苗。食卓が、笑い声に包まれた。
やっと賑やかになった昼食の席、無くなった壁と沈黙、皆がもう一杯ご飯をよそった。二杯目を食べている間は賑やかな時間。笑い声が途切れる事は、なかった。
守矢の神社のお昼時。ちゃぶ台を囲む二柱と一人が、静かに昼食を口に運ぶ。
誰ひとり何も話すことなく、もくもくと。
仲が悪いということではない。むしろ家族のように仲睦まじい彼女達に、何故か今日は会話が無い。
喧嘩をしたというわけではない。もちろんたまには喧嘩をするのではあるが、そのあときちんと仲直り。長年連れ添ってきた神様と、彼女達を奉る風祝には、そういう関係がある。言葉に出来ないような、そんな密な関係。
だからこそこの静かな昼食に、妙な違和感を覚える者もいるだろう。常日頃笑いの絶えない神社をよく知る者なら、尚更だ。
しかしそれは杞憂に過ぎない。そしてそんな違和感を、食事中の彼女達は感じてなどいない。
いくら親密だからといって、自分の全てを洗いざらい話す必要性は無い。この神社には、きちんとそれぞれのプライベートというものが存在していた。
早苗だけの。神奈子だけの。諏訪子だけの。
他が入る事はほとんど無いであろうプライベートに、ずかずかと入り込む事を彼女らはしない。意識的になのか無意識的になのか、密な関係を保つために必要な「壁」が、彼女達にはある。
静かな昼食の席、それぞれの間には「壁」があった。
早苗が、神奈子が、諏訪子が。それぞれのプライベートの何かしらを考えながら、早苗が作った昼食を食べている。いつも通りの、おいしいご飯。
カチャカチャと食器の音だけが、茶の間に広がる。晴れた今日の空の下で風が吹けば、さらさらと流れる葉の音がときどき。
「いただきます」と揃って言ってからそれっきり、誰も何も話していない。そんな心地のいい、静かな時間だった。
そんな中ふと、早苗は思い出した。麓の神社の巫女、霊夢に頼まれていた事がある。
分社を置いてほしい、との事だった。彼女にしては珍しい、神社絡みのお願い。
参拝客が少しずつ増え始めた守矢神社。その神社の分社が、博麗神社にはある。博麗神社を訪れる人は、同時に守矢神社の事も知るのだ。
この幻想郷で博麗神社を知らない者はそうそういないだろう。が、博麗神社を参拝する者もまたそうそうはいない。参拝客は圧倒的に、守矢神社のほうが多い。
それに目を付けた霊夢が、逆に博麗神社の分社を守矢神社に作ってほしい、そう言ったのだ。
「あんたんとこの神様に頼んどいてよ」と頼む霊夢の言葉に、早苗は首を縦に振った。
そんな事をふと思い出した。忘れないうちに尋ねておこうと早苗は口を開く。
「ねぇ、お母さ……」
早苗のそんな言葉が、静けさを破った。
神奈子の、諏訪子の箸が止まる。二柱で顔を見合わせて、そして早苗のほうを、じっと見る。
自分が何を言ったのか、早苗はようやっと気付いた。
顔を真っ赤にして、神奈子の顔を、諏訪子の顔を見る。何とも言えない、けれど優しい笑顔。それが痛くて、真っ赤な顔のままで早苗は俯いた。
「なんでも……、ないです……」
「……そうかい」
か細い早苗のそんな言葉に、神奈子はその一言を返す。そしてそれからにやにやと、神奈子が言った。
「どっちが、お母さんだい?」
「……どっちでもいいじゃないですか」
「いいや、よくない。神奈子と私、どっちが早苗のお母さんかこの際はっきりと……」
諏訪子もそんな風に言う。けらけらと軽い笑い声が上がった。
「どっちもお母さんでいいですよ、もう!」
「ん? 照れてる?」
「照れてませんっ!」
真っ赤な顔のまま反論する早苗。食卓が、笑い声に包まれた。
やっと賑やかになった昼食の席、無くなった壁と沈黙、皆がもう一杯ご飯をよそった。二杯目を食べている間は賑やかな時間。笑い声が途切れる事は、なかった。
中学生でやったことあるZE
…中学のときやらかしたよ orz
俺も中学に言ったわw
タイトルだけでお話の内容が全て分かってしまったので、あまり楽しめませんでした。
もっと分かりにくいタイトルだったら楽しめたかと思いますが……。
…まあ、私も中学の時にやっちゃいましたけどorz
既に「……」と言葉が失速している故に、この行は不要と思いました
今ではいい思い出だよ。
友達にお母さんって言っちゃった時もある…
あんときは恥ずかしかった
全然変な空気にはならなかったけど