Coolier - 新生・東方創想話

死神の心

2009/11/24 02:31:49
最終更新
サイズ
22.04KB
ページ数
1
閲覧数
778
評価数
3/8
POINT
330
Rate
7.89

分類タグ

これはオリキャラを含みます。
それでも読んでいただければこのまま進みくださいませ。















 幻想郷は今日も天気良く日が照り付ける。

「今日も良く仕事したし、そろそろ休憩にしますかね」

 幻想郷の渡し守りである小野塚小町はそこそこに仕事を終わらせ涼しい木陰に腰を下ろし
柔らかく流れる風の音に耳を澄ませながら目を閉じる。






ふいに声が掛かる。 
「……まち……小町、あなたが今出来る善行はなんですか?」
「……休憩をしっかり取る事ですよぅ……」





「起きなさい、小町!」
「は、はい! っと……美沙華じゃないか、脅かさないでおくれよ」
「相変わらずのようね、小町」


 休憩という名のサボりを妨げたこの女性は小町より前から幻想郷担当の死神であり
死者の魂をこの三途に連れて来る任務を受け持っている。
小町とは見た目も性格も正反対であるが妙に気が合う友であった。


「ほら、仕事持ってきてあげたから頼みますよ」
「……あたいはまだ休憩途中なんだがね…」
「もう十分でしょう? 四季様にまたお説教を受ける事になる……いいのかしら?」
「……はいよ……わかったわかった、後は任せておきな」
「それでいい、じゃあね小町」
そう言うと美沙華は軽く手を振り去っていった。


「やれやれ…まぁ、この魂は大丈夫なようだね」
そう小さく呟くと魂達を舟に乗せ川を渡る。



「……早かったですね? 小町?」
「おっと、これは四季様がわざわざお出迎えとはありがたいですねぇ」
「小町は何時も何時も……まぁ、今日はいいでしょう」
「……どうしたんです?」
「少々、問題が起きているのです……」


 四季より告げられた事は小町にとっても大きな問題であった。
最近、死者の魂が予定されている人数より多くの者がこの三途に送られている事が判明したらしい。
担当の死神達には死ぬ予定の者を記載した帳簿が渡されておりミスは無いはずである。
とは言え、妖怪やらが居るこの幻想郷である以上、不確定要素があることは否めない。
四季の言うには、どうもそれだけではない妙なうわさがあり、それを調べて解決しなければならない。
それを任せる人物こそ、小町だという事である。



「……はい? 四季様、なんであたいが?」
「この件、少々私にも思うところがあるのです……が、あえてあなたに任せてみたいのです。
もちろん拒否権はありませんので早速幻想郷に向かうのですよ」
「えぇ~、あたいの人権は?」
「ありますよ? でも、あなたは私の可愛い優秀な部下……私はとても期待しています
ではそういう事で任せます」

 しぶしぶながらも引き受けざる得ない小町は幻想郷の人里に降り立つ、今回の件、何から調べたものか

さっぱりではあるが、人間に深く関わる事である以上、人里にて情報集めが一番効率がいい
そういう事である。
では情報集めをと考えた所でどう聞けばいいと頭を悩ませ始めた所に声が掛かる。


「おい、そこの者、何の用だ?」
「ん? あたいは小野塚小町、死神さ……ちょいと訳ありで人里に来たんだがね」
「そうか……私は上白沢慧音、獣人だ」
「へえ、あんたがね……四季様から聞いてるよ、人間と共生してる獣人だってね」
「閻魔様から? そうか……でも、死神であるおまえが人里にとは
……案内せねばならない魂でもあるのか?」
「あたいはその担当じゃない、ちょいと調べ事があるだけさ」
「そうか、私も村長から頼まれている事があってな、調べ始めたところだ」
「ふむ……それ聞いて良いかい?」

 その内容は村人の突然死が最近になって多発し大騒ぎとなっていること。その調査を里の知恵者であり
妖怪にも顔が利く慧音に依頼してきたという事であった。
慧音も噂には聞いており、何らかの仕業ならば調べて見なくてはと思っていた訳である。
そして、それは小町が四季より受けた命令も同様の事変であり、両者の目的は一致していた。
小町にとっては人里に詳しい人物、慧音にとっては魂の案内人たる死神
ここにお互いの理にかなった協力者が揃った。


「んじゃ、早速何から調べてみるつもりだい? あてがあるならいいのだけど」
「私が知る情報、と言うより聞いたことだが……
急死した村人の家から黒い影が出てきたと言うのがある」
「影ね…そういえば、妖怪に居なかったかい? そんなやつ」
「宵闇の妖怪、ルーミアのことか? 
あの子は違うと思うぞ、実際死んだものは食べられていないのだからな」
「となると、少なくとも食用として襲われ死んでいるという可能性はないということか」


 今ある情報はどれも決定的ではなく噂程度の内容でしかない、
二人は今回急死した村人達の家を回って調べてみる事が近道だろうとの結論に至る。
二人で数軒を訪ねて見るが痕跡はほとんどない、ただそこには悲しみに暮れる家族だけが印象に残る。

「さすがに解っていた事だが辛いな…」
「……そうだ…な、死神…いや、小町 おまえもそう思うか」
「あたいだって仕事柄死者を送るわけだが、誰かを残して渡る魂の辛さは感じるさ……」
「うむ……確かに小町達死神は死者を案内しなければ魂は永遠に彷徨う
…その役割と我等の受ける印象の違いは小町達にとっても辛いな」
「…仕方ないさ、それも含めてあたいの仕事さ」

 そんな話をしながら新たな情報を集めるため里を歩き続ける小町達の前に数軒の民家が見えてくる。
その一軒では先日亡くなった老人の葬儀が行われていた
そしてそれを距離を開けて見つめる赤い着物の女性…美沙華がそこに居た。
彼女はこの老人の魂を三途に案内する為にこの場に居るようであった。
二人が近づくとこちらに気がつき、複雑な表情をしながら挨拶をする。


「あら、小町と…あなたはただの人間ではなさそうね、こんにちは」
「やぁ、美沙華お役目お疲れさん、紹介するよ、こちらあたいの協力者の慧音さ」
「初めまして獣人の上白沢慧音だ、私も協力してもらっているような物だ」
「こちらこそ、私は曼珠花美沙華と申します…えと、協力者とは?」
「美沙華も噂くらいは知ってると思うけが、魂が異常に送られてくる事
それをあたいが四季様に調査を依頼されたのさ、でこの慧音も調べてるって事で手伝ってもらってるのさ」
「なるほど……慧音さん、小町の手伝いよろしくね、この子意外と抜けてるから」
「……あぁ、もちろん私の受けている依頼でもある、しっかり解決しなければならない」
「ええ、そうね…じゃ、小町、私は彼の魂を案内するから後は任せたわよ」
「誰が抜けてるだい? あんたこそしっかり任せたよ」


 美沙華は民家の裏手に回り語りかけるように言葉を呟くと彼女の前に鈍く光る靄が現れる
それこそがそこの老人の魂であった。
その靄に美沙華は慈愛に満ちた表情で優しく話し掛ける、魂は静かにその言葉を受け入れる。
話が終わると美沙華はこちらを軽く見、会釈をするとまるで居なかったように姿を消した。
小町いわく、死神はあまり人前に現れるものではないので各自対応した能力を持っているとの事だった。
慧音は小さな違和感を感じては居たがまだそれが何か解っては居なかった。
今日一日で里をある程度回ってみたがこれと言った収穫も無く時は進む。

「なぁ、小町、何か引っかかる事はあったか?」
「ん~……無いな、里の中でこれだけ広範囲となれば厄介すぎるな、慧音は何かあるかい?」
「ほんの少し……な、だがまだ何とも言えないと言う所だろう」


そんな会話をする二人の前に意外な人物が舞い降りる。
「小町、何か解りましたか?」


「あ! 四季様、何でこんなところに?」
「閻魔様、お久しぶりです」
「ええ、慧音それに小町、ご苦労様……その様子ではまだこれと言った情報は無いようですね」
「四季様、どうにも情報が集まらなくて苦労してますよ」
「小町、しっかりなさい……まだ始まったばかりでしょう。
……そうですね、慧音、この件はあなたが核心に一番近い……私からもしばらく協力を願います」
「はい、解決に全力を尽くします」

 四季は慈愛に満ちた顔で二人の様子を見て取るとまだ仕事があるのでと去っていった。

「四季様、慧音にも頼んできたね、大変だなぁ慧音」
「うむ……だが、他人事ではないぞ小町、お前だってそうだぞ?」
「解ってるよ……四季様がこれだけ念を押すんだ、あたいだってさすがに……ね」

- - - - -

 その後も数日掛けて二人はより詳細に調べ続けると幾つかの気になる点があることに気がつく。
まず、病気に罹っており苦しんでいる者が多く居た
治る見込みは無い者が多いようだがまだ死ぬ予定ではない者。
それに、犯罪に関わっている者も多く居る。

その時、小町は深い意味もなく一言呟く。
「犯罪者ねぇ……閻魔様じゃあるまいし、裁いてるつもりなのかね」

 いくらかの情報は集まってきたがまだ解決には足りない、二人はその日の調査を終了させる。

- - - - -

 慧音は先日まで解った情報を元に調べてみたい事があった、
先日の四季の言葉『あなたが核心に一番近い』この言葉が引っかかり続けていた。
その核心という部分に慧音は数日前から気になる事があった。
先日出会った小町の友である美沙華、彼女に会った時小さな違和感そこに何かある、そう感じていた。
どこに行けば出会えるなど何のあても無い、だが、彼女は何かを察していたように目の前に現れる。

「おはよう……かしら、慧音さん?」
「おはよう、美沙華さん……でも、何故あなたがここに?」
「それはあなたに会いにです、あなたが私に聞きたいことがある……そんな気がしました」

 慧音は違和感の正体を包み隠さず美沙華に問う。

「あなたは先日小町よりの話が出た時、わずかだが悲しみと辛そうな感情以外に焦りも私には感じられた
……私はこれでも子供達に勉強を教える立場でな表情からその様は機微を多少なりとも解るのだ」
「……そう、ですか……お聞きしたいのですが慧音さんは人間が好きですか?」
「あぁ、私は人間でもあり獣人でもある、それでも人間側に居たいと思う、私は人間が好きだ」
「……私達死神も人間が好き……だから早くこの異変を解決したいと思ったのです」
「なるほど……な、それが死神達の仕事だからではなく、人間に対する思いでもあるのだな」
「ええ、そうですね」
「あの後もう一度会った時、あの時はあなたから感じたのは大きな慈悲の心
今ならその意味も解る気がする」
「ええ、死に逝く者の感情を思えばこそ……ですよ」

 慧音は美沙華の言葉を聞きながら最後に聞いてみたい事を口にする。

「気を悪くするかもしれないが、今回の異変、私の推測を聞いてもらって良いか?」
「……ええ、お聞きします」
「今回の異変、妖怪の仕業でも、まして人間の仕業にも見えない。
そして、閻魔様が小町という死神に解決を任せる、閻魔様もこの件で動いている」
「ええ……そうですね」
「それだけで思うのは我ながらおかしいと思うが、死神が関わってる気がしているのだ」
「それは……」
「もちろん、何の証拠も無いが、先日あなたと会った時にうまく言えないが何かを感じた」
「……小町には? それは伝えたのですか?」
「いや、まだ私の思い過ごしである可能性もあるのに言えないよ」
「なるほど……解りました、私にも多少心当たりがあります、明日慧音さんと小町
二人でここで合いましょう」
「心当たりがある? ……一人で大丈夫なのか? 手伝うぞ?」
「いえ、私だけで動いたほうがいいと思います、では明日」

 
 そう言うと美沙華は軽く会釈すると以前と同じように消えるように去った。
慧音は小町と合流すると美沙華との会話を説明した、小町は『まさか死神が関わってるって?』と
それはないだろうと笑い飛ばすだけであったがなにか思うところがあるのか黙り込んでしまった。

「実はさ、昨日四季様に状況報告したんだがね、そこで言われたのさ……
『小町、この件はあなたにとっても辛い事になるでしょう』ってね
それで慧音からそれを聞くとね、無関係じゃないなと思うのさ」
「閻魔様がそう言っていたのか……美沙華が何か掴んでいるとしても胸騒ぎしかしないな」
「ああ……それはそれとして慧音、明日そういう事なら帰るよりこっちにいたほうがよさそうだと思う、
そこでだ泊めてくれないか」
「は? 私の家にか?」
「そう、それが一番楽だろう?」
「ま、まぁ……かまわんが何もないぞ、それで良ければな」
「いいよいいよ、ありがとうよ、慧音」

- - - - -

「ここが私の家だ、何もないが、ゆっくりしてくれ」
「書物の山があるな、里の先生らしくていいじゃないか」
「これでも教える側だからな、大変なんだぞ……この問題も早く解決しないと寺子屋も再開できん」
「そうだな、まっ……明日美沙華が何か情報を持ってくるさ」

 二人は夕食を軽く済ませると言葉を交わす。

「なぁ、小町? 死神達は人間に好意的だと美沙華から聞いたがお前もそうなのか?」
「そうだね、私の場合は友愛と言ったところだがね
……美沙華はちょいと事情が違うけどね、まあそれは本人から聞けばいいさ」
「ふむ、それは聞いてみたいものだな」
「まっ、人間に好意的と言うのは本当さ」
- - - - -

 翌日、慧音達は美沙華との約束の場にて待つ。
ほどなく、美沙華がその場に現れる……二人は美沙華を確認すると近づく。
だが、美沙華の言葉によりそれは中断される。

「小町、そして慧音……そのまま聞きなさい」美沙華は二人に語る。
「慧音、結論から言います……あなたの思う通り死神が関わっています」
「そんな……嘘だろう、そんな事が死神がする訳がない!」
「いえ、嘘も何も私がその当事者です、これは事実です」
「そんな! 美沙華、あんたがそんなことできるはずが無い!」
「小町……人は変わるものなのよ、私達死神だってね……さぁ、止めて見なさい」
「美沙華、一言聞かせてくれ……あの時の顔はどっちなのだ?」
「……死に逝く者に向ける慈悲はある、だがそれでもしなければならない事があった……どちらも私」
「そうか……小町、お前は少し下がれ、私が止める」
「な! 慧音、待ってくれよ……美沙華、お前何を言ってるのか解ってるのか?」
「ええ、もうこれが真実、そして今私を止めなければまた繰り返される、ただそれだけよ」

 美沙華より告げられた言葉は二人に迷う時間を与えない。

「美沙華、小町に友を傷つけさせたくは無い、私が相手でも良いか?」
「ええ、私を止められると思っているのならどうぞ」
「止めて見せる……行くぞ!」

「国符『三種の神器』」 剣 勾玉 鏡を具現化させると美沙華と向かい合う。
「慧音……こんなことになって悪かったわね、でも私も引けないの」 美沙華は薙刀を構える。


 お互いに武具を手にすると慧音が先手を取る。
剣を振るうが美沙華は余裕を持ってその切っ先を弾く、そしてその隙を見逃さず切り込む。
慧音は辛うじて防ぎ距離をとる。

「思ったよりはずっといい動きですよ、慧音」
「……見くびられたものだな、だがまだまだだ」

 しかし、この一撃で慧音は今の時点の差を否応無く感じ取っている。
だが慧音も引けない、ここで止めなければ小町が戦わざる得ない
だがそれはさせたくないと再び向き合う。
戦いは弾幕は鏡が弾き、互いの武器を打ち合わせ激しさを増す、
そして慧音は押され続け衣服に血が滲む。

「慧音、もういいでしょう……引いてください、あなたには私の相手は無理なのです」
「解っている、それでも引く訳には行かない、友を戦わせたくは無いのだ!」
「……そうです……か」
「慧音! もういいあたいが止める、あんたはもう無理するな」小町が叫ぶ。
「……小町、無理するな、止めて見せるから」
「もういいです、これで終わりましょう」

 美沙華はそう告げると新たな武具を発現させる。

『暗招黒煙』 そう告げると美沙華の手の平に闇の玉が現れる、
まるで宵闇の妖怪に見えた現象はこれであろう。
そして、それは次の瞬間大きく広がり美沙華と慧音を飲み込み小町を孤立させる。
 
「慧音!!」小町は叫ぶ、だが返事は無い。

 闇が再び美沙華の元に収束する、そして美沙華は脇に慧音を抱えて小町に告げる。

「受け取りなさい、慧音は死にました」そう言うと小町に慧音を放る。



「嘘だろ? 慧音?」小町は慧音を抱きとめると呼びかけるが反応はまったく無い。
「小町、あなたも死神なのですから解るでしょう、すでに魂はありません」冷たく言い放つ。
「……認めない、認めてたまるか! 美沙華! 何をしたのか解ってるだろうな!」
慧音を抱え、美沙華を見上げ小町は吼える。
「ええ、あなたの友達の命、頂きました……それだけです」
「慧音……すまん、あたいが迷ったばかりにあんたを失うなんて……美沙華はあたいが必ず止める、
見ててくれ」小町は鎌を手にすると美沙華に接近する。
「それでいい……さぁ、私と戦い私を止めてみなさい」

 小町が美沙華と空中で向かい合い戦いを始めようとした時、その場に四季が現れる。

「四季様!」二人は四季に目を向ける。

「小町、そして慧音……美沙華、これがあなたの選んだ方法……なのですね」
「はい、私にすでに迷いはありません」四季の目を見据え、そう答える。
「四季様、慧音が……」小町は四季に目線を一瞬だけ合わせるとうつむき言葉を詰まらせる。
「小町、慧音は私が見ますからあなたは美沙華を止めてください……任せていいですね?」
「はい、あたいが必ず美沙華を止めて見せます……命に代えても!」新たに決意を漲らせ美沙華を睨む。

 小町は鎌を構えるとその重さに違和感を感じる。
(なんだ? どうしちまったんだ? すごく重く感じる)

「小町、よそ見してる暇はないわよ」美沙華はそう言うと武器を振り下ろす。
「解ってるよ、あんたに負ける訳には行かない!」だが、何時もの倍を越える重さに反応が遅れ辛うじて

弾くに止まる。
「遅い!」「まだだ!」お互いに距離をとって弾幕を放ち、その隙に互いが飛び込み火花を散らす。


- - - - -

「小町、この戦い辛いでしょうが乗り越えてくれると……私は信じています」
四季は慧音を膝に抱え見上げる。

 四季は慧音の魂を見据えるとまだ完全に失われていない事を察する。
慧音の持っていた勾玉の効果で辛うじて術の掛かりを弱めたのだろうか……それとも……
少なくとも慧音は完全には死んでいない、
言うなれば深い闇の底に閉じ込められているといった状況である。
四季は魂を戻す為にその術に入り込む。

「ここが美沙華の作り出した空間……なのですね、早く慧音の魂を助けなければなりませんね」
 そこはひたすら闇が続く空間であった、そしてしばらく歩くと闇だけの空間に光る物が見えてくる。
「あれは?」四季は警戒しながらその光に向かうとそこに慧音が伏しているのを見つける。
「慧音! 大丈夫ですか?」四季は慧音に寄り添うと声を掛けた。
「う……、え、閻魔様?」弱弱しくも慧音は声に反応し答える。
四季はこの状況を見ても、美沙華が掛けた術は慧音を殺すというよりは一時的に無力化させる程度である

と判断した。
それは慧音の言葉によって確信となる。
「閻魔様、美沙華は小町の手によって死ぬつもりです、彼女は私に今回の真相を告げていきました」

 今回の異変は美沙華が起こした物であり、その罪はすでに四季に告げてある事。
死神という立場を汚した以上、閻魔の手を借りて裁かれるではなく消滅する事。
小町にその役目をさせるのは心苦しいが死神は死神にしか裁けない。

という事であった。

四季はその言葉を聞いて一言「真相はもう少し違うのですけどね」とだけ言うと戻りましょうと告げる。

- - - - -

 小町と美沙華は互いの力を激しくぶつけ合い、戦いが激化していた。

「美沙華、あんたが何を思ってこんなことをしたのかまだ解らない
けれどね……ダチを殺されてるんだ仇はきっちり取る!」
「それでこそ小町よ、迷わず全力でかかって来なさい……私も全ての力で迎え撃つ!」

美沙華の薙刀は鋭くそして重い、小町は直撃しないよう受け流し続けその隙に反撃を入れる。

「ぐっ!!」直撃はしなかった物のかなりのダメージを負った美沙華は距離を取って身構える。
「美沙華、あんたじゃ私を殺す事は出来ない……諦めて真相、全て答えてもらうよ」
「……断るわ、私は最後まで戦いあなたを倒す、さぁ……続きをしましょう」
「そうかい……残念だよ、美沙華」
小町は鎌を振り上げ再び突撃し、美沙華も薙刀に力を込め振りぬく。

……
…………
鎌は美沙華を切り抜け小町の手からすり抜けるように大地に落ちる。

「……本当に残念だよ……美沙華」小町のその表情は見えない……ただうつむきそう呟く。
「ありがとう、小町……これで私も救われるわ」美沙華は崩れ落ちるように地に落ちる。


地に落ち、血に染まる美沙華に小町は背を向けたまま呟く。
「なにが救われるだ…よ、あんたどこまで勝手なのさ!!」




「小町、辛い任務でしたがお疲れ様」そう四季の声が掛かる。
「四季様……」小町は振り返れず搾り出すように呟く。
「……すまんな、小町」

「…え? け、慧音?」小町は慧音の声に振り向く。
そこには四季に肩を借りながらも立ち上がる慧音の姿があった。
「どういうことだい? 慧音は美沙華に魂を消されたんじゃないのかい?」
「小町、美沙華は元から慧音を殺しては居なかったのです
……彼女の術によって一時的に封じられていたと言うべきですね」
「じゃ……じゃあ、あたいは」小町は動揺を隠さず四季に詰め寄る。
「今回の真相を語ります、あなたも聞きたいでしょう」四季は慧音を支えながら語る。

「あなたも知っているように、美沙華が今回の不自然な死者の原因です
……が黒幕はほかならぬ私と同じ閻魔です。
物事は美沙華が人間を愛しその者が病に伏した時始まったのです」
「美沙華が……確かにその件は聞いたことがありますが、それが?」
「死神はその男性を迎える為この地に着きましたが、
美沙華がその死神を迎え撃ち追い返したのですそして、運命を変えた
これは本来の形ではない、許される事ではないのですが
当時の閻魔がその件を隠し美沙華に取引を持ちかけたのです」
「取引? それこそ大問題じゃないですか」小町は声を荒げる。
「そうですね、その閻魔は今のように死者の管理が決められていない事を利用し、
自らの成績を上げる為美沙華を利用した
つまり…今回のように死者を作り出していたのですよ
……その時は調べられずに計画は成功しました、が」
「今度はそうは行かなかった……のですね、閻魔様」
「そうです、今回は美沙華がその計画を私に伝えてきたのです……ずっと後悔してきたのでしょう、
確かに閻魔に死者は一任されていますが
悪事は必ず裁かれます、まして私達閻魔、死神がその法を変えるなどあってはならないのです」
「それじゃ、美沙華は……」
「彼女の行いは確かに間違っていた、でもそれを利用した閻魔こそが本当の悪です」
「四季様、あたいは……その美沙華を」
「解っています、ですがあなたも傷ついています、この件は私に任せて休みなさい
……慧音、あなたも無理をしては駄目です
この件は必ず私がその閻魔を法の下に裁き、亡くなられた方々に報います」
「しかし……いえ……解りました、お任せします閻魔様」

四季はそう二人に伝えるとそこに横たわる美沙華を抱き上げると小町に慧音を頼み去っていった。


- - - - -

 ほどなく二人は慧音の家に着いた。

「ありがとう、小町」
「……慧音」小町はここに来てようやく口を開いた。
「どうだ、今日も泊まっていかないか、その傷では手当てをしなければならないからな」
「すまないね…」

……
…………
「これでいいだろう」慧音は小町の手当てを終わらせると小町の言葉を待った。

「なぁ、慧音……」数日しかまだ交流がない慧音から見ても今の小町は別人のような感じであった。
「なんだ? 話してみるがいい」そう静かに小町を見つめる。
「あたいは、あんたが美沙華に殺されたと思って美沙華を切った、
美沙華はあんたを殺したように見せてあたいに本気で戦ってほしかった……
でもさ、それでもたまらなく寂しいんだ……あたいはもっと他の方法があったんじゃないかって」
小町はさっきまでうつむき悲しそうな顔をしてはいたが涙は見せなかった、
でもその言葉を口に出した時自然と涙が溢れていた。
「……小町、そうだな、お前の悲しみは痛いほど私にも解る
……他の方法があるのなら私も共に考えてやりたかった……すまん」
「あいつはさ、私の友達だったんだ……その苦しみを理解してやれなかった……」
「気休めにしかならないかもしれないが、
美沙華はお前に自分の罪を裁いてもらえて良かったと本当に思っていると思う
私が美沙華に魂を封じられた時、美沙華はこう言った

「小町は、友達をとても大切にする、たとえ短くても長く付き合っていてもそれは変わらない
                   最後にあの子に看取ってもらえれば私はそれが一番の幸せ」

 とな、あの言葉は本心だ、そしてお前はそれを美沙華にしてやれたのだ、悲しむなとは言わないでも
彼女にとって、お前はその望みを叶える事が出来た、それは間違いないのだ」
「そう……なのか……な」
慧音は大粒の涙を流す小町を優しく抱きしめた。



 朝になると小町はすっかり元通りの表情を造り四季の元に向かう。
「慧音、ありがとうよ、四季様からこの件の結末を聞いたらまた報告に来るよ」
「ああ、待ってるからな……小町」


~~彼岸~~

「四季様、小町戻りました」
「お疲れ様、小町、今回の働き見事でした」
「で、その、結末はいかように?」
「今回の首謀者である閻魔は閻魔の任を解き罪を永遠といえる時間償わせます。
そして美沙華……彼女はすでにあなたの手によって裁かれました」
「……はい、確かに私の手で美沙華は消滅しましたね……」
「ふふ、小町、あなたは自分の武具の事も見えていないのですか?」
「へ? あたいの鎌ですか? 確かに今回かなり重かったかなと……」
「そう、それですよ」
「むう? なんか変わったかな……と、あっ!!」
「そう、あなたの鎌に私の持つ悔悟棒の効果を今回に限りつけました……もう解りますね?」
「そ、それなら……美沙華は」
「ええ、あなたに罪を裁かれ転生の輪に乗りました……消滅などはさせてないですよ」
「し、四季様!!」小町は四季に喜びのあまり飛び掛ると四季はそのまま倒される。
「こ、こら……小町、ここをどこだと思っているのですか、反省なさい!!」
「す、すいません、四季様! ……じゃぁ、早速慧音にこれを報告しないといけないので失礼します」
「え? 仕事はどうするのですか?」
「今日は休みます、では、失礼します!」そう言ってささっと小町は去っていった。
「……やれやれ、あとでお仕置きですね」そう言いつつも四季も笑みがこぼれていた。

彼岸には今日も曼珠沙華が風に揺られながら綺麗に咲き誇っている。
3作目の投稿です。
今回はオリキャラを含めたSSで評価もかなり厳しいと思いますが
読んでいいただけて改善点などを頂ければ幸いと思います。
風月灯篭
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.160簡易評価
4.30名前が無い程度の能力削除
特にオリキャラに悪いところがあったわけではありませんが、
存在が浮きすぎてるために完全に展開が読み切れる内容になっていました。
5.60名前が無い程度の能力削除
あー、ストーリーはすごくいいです
キャラクターも立ってます

ですが……少々淡々としすぎているかと
なので厳し目の点数を
7.80名前が無い程度の能力削除
逆に淡々としているところが好きだなぁ。
うん、十人十色。

にしてもスペルカードって人を斬ったりできる……所謂殺傷能力ってあったかしら?
8.無評価風月灯篭削除
感想、採点ありがとうございます。
>4さん
確かにひねりが足りなくて落ちが読める内容になってしまいました。
>5さん
山を作るのが下手で見せ場が弱く終わってしまっていると言う評価でしょうか、ここはもっとうまく作りたい所です。
>7さん
見る方によって評価と言うのは変わると言う意味でもまさに十人十色ですね。
より楽しんでもらうためにも見せ場をうまく作る努力をしたいと思います。

3作目となりますがもう少しここで作品をあげてみたいので
もうしばらく参加させて頂ければ幸いと思います。
またよろしくお願いします。